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特許7461514高軌道角運動量モード数の渦電磁場を合成する方法
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  • 特許-高軌道角運動量モード数の渦電磁場を合成する方法 図1
  • 特許-高軌道角運動量モード数の渦電磁場を合成する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】高軌道角運動量モード数の渦電磁場を合成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/30 20060101AFI20240327BHJP
   A61B 5/0507 20210101ALI20240327BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20240327BHJP
   G01S 13/89 20060101ALI20240327BHJP
   H01Q 3/04 20060101ALI20240327BHJP
   H01Q 21/20 20060101ALI20240327BHJP
   H04J 99/00 20090101ALI20240327BHJP
【FI】
H01Q3/30
A61B5/0507 100
G01S7/02 216
G01S13/89
H01Q3/04
H01Q21/20
H04J99/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022574707
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 CN2020112154
(87)【国際公開番号】W WO2022007148
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】202010641809.8
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522471179
【氏名又は名称】中科星河(山東)智能科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】蒋海波
(72)【発明者】
【氏名】陳子君
(72)【発明者】
【氏名】宮玉彬
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼陽
(72)【発明者】
【氏名】王少萌
(72)【発明者】
【氏名】桂承波
(72)【発明者】
【氏名】付江南
(72)【発明者】
【氏名】何欣洋
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107290728(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107645068(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/30
A61B 5/0507
G01S 7/02
G01S 13/89
H01Q 3/04
H01Q 21/20
H04J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦電磁場を合成する方法であって、
N個のアンテナユニットで円形のアンテナアレイを構成し、円形のアンテナアレイを回転させて、各アンテナユニットの位相を調節することで渦電磁場を合成し、Nは1以上の整数であり、
前記方法は、
N個のアンテナユニットを1つの円環上に均一に配列して円形のアンテナアレイを形成する第1ステップと、
N個のアンテナユニットが、初期位置において初期位相を有する電磁波を発射する第2ステップと、
アンテナアレイを回転させて、N個のアンテナユニットが発射する電磁波の位相を調節するとともに、位相調節後の電磁波を発射する第3ステップと、
前記第2ステップ及び前記第3ステップで発射した電磁波を重畳して渦電磁場を合成する第4ステップとを含み、
前記第1ステップは、更に、合成しようとする渦電磁場のモード数α’を決定し、仮想合成するアンテナアレイの要素数Nsを決定することを含み、Ns=kN、k>0であり、且つkは整数であり、
前記第2ステップにおいて、第nアンテナユニットが発射する電磁波の位相はα’*{2π(n-1)/N}であり、1≦n≦Nであり、nは整数であり、
前記第3ステップの具体的な操作方法として、アンテナアレイを円環の中心軸周りに所定の方向へ回転させ、N個のアンテナユニットは当該回転後の位置で電磁波を発射し、
アンテナアレイは合計s回回転し、1回あたりの回転角度は2π/Nsであり、アンテナアレイのi回目の回転後に、第nアンテナユニットが電磁波を発射する位相はα’*{2π(n-1)/N}+α’*(2π/Ns)*iであり、
s=k-1、1≦i≦sであり、前記所定の方向は時計回り又は反時計回りであり、
前記アンテナユニットは直線偏波アンテナであり、前記第3ステップにおいて、前記アンテナアレイが回転するたびに、各アンテナユニットは、更に、アンテナアレイの回転とは反対の方向に2π/Nsだけ回転する必要があることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第3ステップにおいて、前記回転は精密ロータリーテーブルで制御され、
及び/又は、前記円形のアンテナアレイの半径は調節可能であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記円形のアンテナアレイの半径は、合成しようとする渦電磁場のモード数又はシステムのイメージングの必要性に応じて調整可能であり、前記システムは超解像バイオメディカルイメージングシステム、通信システム又はレーダーイメージングシステムであることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の方法で合成される渦電磁場の、超解像バイオメディカルイメージング、通信又はレーダーイメージングにおける使用。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の方法で合成される渦電磁場を、超解像バイオメディカルイメージング、通信又はレーダーイメージング用機器の製造に適用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高軌道角運動量モード数の渦電磁場を合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軌道角運動量(Orbital Angular Momentum,OAM)は、渦電磁場の重要な物理量の一つである。研究の結果、異なるモードの渦電磁場は、互いに直交することでより多くの情報を変調可能なことがわかっている。そのため、研究者らは、軌道角運動量を有する渦電磁波(Vortex Electromagnetic Wave,VEW)の通信分野における応用について幅広い研究を展開している。軌道角運動量を有する渦電磁波の放射場は、ビーム内で差分を有して分布する。且つ、渦電磁波の位相は規則的な分布特性を示し、その位相波面はビーム軸を取り囲む空間螺旋型構造を有する。このような位相分布の空間差分は、連続する異なる方位角から複数の平面波が同時に照射された結果とみなすことができ、ビーム内のターゲット識別に対し物理的基礎を提供するものである。
【0003】
現在、軌道角運動量を有する渦電磁波は、無線通信、レーダーイメージングにおいて幅広い関心を集めている。従来のレーダー電磁波の遠方界は平面波に類似しており、広帯域信号を発射することで距離の高分解能を取得する。また、レーダーとターゲットを横方向に相対運動させて形成される仮想合成開口によって方位の高分解能を取得する。これに対し、実開口のレーダーは、同一ビーム内の方位輻射信号が同じであるため、高分解能イメージングの実現が難しい。
【0004】
そのほか、従来の方法では、アンテナユニットを円環上に均一に分布させる。よって、円環の半径が固定されている場合には、アンテナ数を増加させることで、形成される渦電磁場のイメージングモード数を増加させられる。しかし、実際の応用プロジェクトにおいて、アンテナは一定の体積を有しており、円環は一定の半径を有しているため、配置されるアンテナ数には限界がある。従って、形成される渦電磁場のモード数にも限界があり、結果として、実際のシステムにおけるイメージング分解能が制限される。
【0005】
特許文献1は、単一のアンテナで複数モードの渦電磁波を生成する方法を開示している。当該方法は、以下を含む。即ち、等速円周運動を行う単一アンテナモデルを単一のアンテナで構築し、単一アンテナモデルを円形アンテナアレイと同等として、同等の円形アンテナアレイの放射電界を分解する。つまり、円形アンテナアレイの放射電界をフーリエ級数で展開することで第m高調波の放射電界を取得し、簡略化により異なるモード数の渦電磁波を取得する。具体的に、当該特許では、フーリエ展開により第m高調波を取得し、第m高調波の放射場を簡略化することで、モード数がmの渦電磁場を取得している。しかし、当該特許の方法では、モード数がmの独立して存在する渦電磁場を直接得ることはできず、モード数がmの渦電磁場成分を含んでいるにすぎない。実際には、直接取得される何らかの渦電磁場であれば、いずれであってもフーリエ展開により一段と高モードの渦電磁場を取得できる。従って、実際の応用における当該特許の意味は大きくはない。そのほか、当該特許が開示する複数モードの渦電磁波を生成する方法は、時間tに直接関係するため、得られる第m高調波の放射電界は時間tの制約も受ける。
【0006】
渦電磁場は、無線通信、レーダーイメージング分野以外にも、バイオメディカルイメージング分野に応用され、疾病の診断や治療に新たな考え方を提供することが期待されている。しかし、現在のところ、渦電磁場をバイオメディカルイメージングに応用したとの報告は見られない。そこで、実際の応用における渦電磁場に対するニーズを満たすために、少ないアンテナ数で、必要に応じてイメージングモード数を自在に制御し得る渦電磁場の直接合成方法を研究し、バイオメディカルイメージング、レーダーイメージング、無線通信等の分野において渦電磁波を更に利用することには非常に重要な意味がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許第109936391号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、少ないアンテナ数で、アンテナアレイの回転及びアンテナユニットの位相調節によって、必要に応じ、高モード数、高モード純度の渦電磁場を直接合成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、渦電磁場を合成する方法を提供する。前記方法は、N個のアンテナユニットで円形のアンテナアレイを構成し、円形のアンテナアレイを回転させて、各アンテナユニットの位相を調節することで渦電磁場を合成する。なお、Nは1以上の整数である。
【0010】
更に、前記方法は、N個のアンテナユニットを1つの円環上に配列して円形のアンテナアレイを形成するステップ(1)と、N個のアンテナユニットが、初期位置において初期位相を有する電磁波を発射するステップ(2)と、アンテナアレイを回転させて、N個のアンテナユニットが発射する電磁波の位相を調節するとともに、位相調節後の電磁波を発射するステップ(3)と、ステップ(2)及びステップ(3)で発射した電磁波を重畳して渦電磁場を合成するステップ(4)とを含む。
【0011】
更に、前記ステップ(1)は、合成しようとする渦電磁場のモード数α’を決定し、仮想合成するアンテナアレイの要素数Nを決定することを含む。また、N=kN、k>0であり、且つkは整数である。
【0012】
更に、前記ステップ(2)において、第nアンテナユニットが発射する電磁波の位相はα’*(2π(N-1))/Nである。なお、1≦n≦Nであり、nは整数である。
【0013】
更に、前記ステップ(3)の具体的な操作方法として、アンテナアレイを円環の中心軸周りに所定の方向へ回転させ、N個のアンテナユニットは当該回転後の位置で電磁波を発射する。
【0014】
アンテナアレイは合計s回回転し、1回あたりの回転角度は2π/Nである。アンテナアレイのi回目の回転後に、第nアンテナユニットが電磁波を発射する位相はα’*2π(n-1)/N+α’*2π/N*iである。
【0015】
s=k-1、1≦i≦sであり、前記所定の方向は時計回り又は反時計回りである。
【0016】
更に、前記アンテナユニットは円偏波アンテナである。
【0017】
更に、前記アンテナユニットは直線偏波アンテナであり、ステップ(3)において、前記アンテナアレイが回転するたびに、各アンテナユニットは、更に、アンテナアレイの回転とは反対の方向に2π/Nだけ回転する必要がある。
【0018】
更に、ステップ(1)において、前記N個のアンテナユニットは1つの円環上に均一に配列される。
【0019】
更に、ステップ(3)において、前記回転は精密ロータリーテーブルで制御される。
【0020】
及び/又は、前記円形のアンテナアレイの半径は調節可能である。好ましくは、前記円形のアンテナアレイの半径は、合成しようとする渦電磁場のモード数又はシステムのイメージングの必要性に応じて調整可能である。
【0021】
本発明は、更に、上記方法で合成される渦電磁場を提供する。
【0022】
本発明は、更に、上記の渦電磁場の、超解像バイオメディカルイメージング、通信又はレーダーイメージングにおける使用を提供する。
【0023】
本発明は、更に、上記の渦電磁場の、超解像バイオメディカルイメージング、通信又はレーダーイメージング用機器の製造における応用を提供する。
【0024】
本発明において、「*」は乗算を表す。
【0025】
本発明で提供する渦電磁場を合成する方法で採用されるアンテナユニットは、円偏波アンテナとしてもよいし、直線偏波アンテナとしてもよい。アンテナユニットが円偏波アンテナの場合には、制御方法として、アンテナアレイを回転させて、各アンテナユニットの位相を調節する。また、アンテナユニットが直線偏波アンテナの場合には、制御方法として、アンテナアレイを回転させて、各アンテナユニットの位相を調節するとともに、アンテナアレイが回転するたびに、各アンテナユニットをアンテナアレイの回転とは反対の方向に同じ角度だけ回転させることで、各アンテナユニットの偏光方向が同じとなるよう保証する。
【発明の効果】
【0026】
従来技術である特許文献1が開示する単一のアンテナで複数モードの渦電磁波を生成する方法と比較して、本発明では、フーリエ展開により一段と高モードの渦電磁場を取得する必要はない。また、本発明は、必要に応じて所望のモード数の渦電磁場を直接取得可能である。且つ、特許文献1が開示する複数モードの渦電磁波を合成する方法は時間の制約を受ける。また、当該特許には、アンテナを位相調節する過程が存在せず、独立した高モード数の渦電磁場を直接生成することができない。一方、本発明における高モード数の渦電磁場を合成する方法は、アンテナが存在する空間位置及び位相にのみ関係し、時間とは関係しない。よって、本発明の合成方法は時間の制約を受けない。
【0027】
本発明で提供する高軌道角運動量の渦電磁場を合成する方法は、簡単で操作しやすい。本発明の方法を用いれば、必要に応じて、目標モード数の渦電磁場を生成可能である。少ないアンテナ数で、アンテナアレイの回転及びアンテナユニットの位相調節により高モード数の渦電磁場を直接合成することで、イメージングシステムの方位分解能が向上する。また、本発明の方法で合成して得られる渦電磁場は、超解像イメージングの実現に有利なだけでなく、顕著に高められたモード純度も有する。
【0028】
本発明の方法で合成される渦電磁場は、レーダーイメージング、無線通信分野に応用可能なだけでなく、特に、超解像バイオメディカルイメージングにおいて顕著な優位性を有する。よって、本発明の方法で合成して得られる渦電磁場は、超解像バイオメディカルイメージング、レーダーイメージング、無線通信等の分野において非常に良好な応用可能性を有する。
【0029】
言うまでもなく、本発明の上記内容に基づき、当該分野における一般的な技術と知識及び慣用の手段に従って、本発明における上記の基本的技術思想を逸脱しないことを前提に、その他様々な形式の修正、置換又は変更を実施してもよい。
【0030】
以下に、本開示の具体的な実施形態によって、本発明の上記内容を更に詳細に説明する。ただし、この点について、本発明の上記主題の範囲が以下の事例にのみ限られると解釈すべきではない。本発明の上記内容に基づき実現される技術は、いずれも本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、異なる観測距離(50mm、100mm)における渦電磁場の純度比較であり(Aは振幅、Bは位相である)、アンテナアレイが8要素、アレイ半径が140mmの場合を示す。
図2図2は、本発明の実施形態1で合成した渦電磁場の振幅(上図)及び位相分布(下図)であり、観測面が80mm*80mm、観測距離が400mmの場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明で使用する原料及び機器はいずれも既知の製品であり、市販の製品を購入することで取得した。
【0033】
(実施形態1:本発明における円偏波アンテナによる渦電磁場の合成方法)
1.8つの円偏波アンテナを半径140mmの円上に均一に分布させ、円環を精密ロータリーテーブルで制御した。本実施形態では、モード数が10の渦電磁場を合成したい場合に、仮想合成するアンテナ要素数は32とした。即ち、本実施形態では、8つの円偏波アンテナを用い、要素数が32の仮想合成円形アレイを仮想合成して、モード数が10の渦電磁場を合成した。
【0034】
1回あたりのアレイの回転角度、アンテナユニットの位相調節の角度は、仮想合成する原型アレイの要素数、合成しようとする渦電磁場のモード数、元のアンテナアレイの要素数を決定したあとに決定可能であった。演算の結果、アンテナアレイ全体は3回回転させる必要があり、1回あたりの回転は2π/N=2π/32=π/16となった。
【0035】
2.初期位置において、8つのアンテナユニットを、それぞれ、A、A、A、A、A、A、A、Aとした。この場合、Aが電磁波を発射する位相はα’*{2π(n-1)/N}、即ち、10*{2π(n-1)/8}、1≦n≦8であった。且つ、nは整数とした。このとき、アンテナアレイ全体から発射された電磁場は、図2のC1列に示す通りであった。なお、C1列の上図は電磁場の振幅、C1列の下図は電磁場の位相分布を示す。
【0036】
初期位置における電磁スペクトルの発射が完了したあと、環状アレイ全体を時計回りに2π/32=π/16だけ回転させて、2回目の電磁波を発射した。この場合、Aの位相はα’*{2π(n-1)/N}+α’*(2π/N)、即ち、10*{2π(n-1)/8}+10*(2π/32)であった。このとき、アンテナアレイ全体から発射された電磁場は、図2のC2列に示す通りであった。なお、C2列の上図は電磁場の振幅、C2列の下図は電磁場の位相分布を示す。
【0037】
2回目の電磁スペクトルの発射が完了したあと、環状アレイ全体を再び時計回りに2π/32=π/16だけ回転させて、3回目の電磁波を発射した。この場合、Aの位相はα’*{2π(n-1)/N}+α’*(2π/N)*2、即ち、10*(2π(n-1)/8)+10*(2π/32)*2であった。このとき、アンテナアレイ全体から発射された電磁場は、図2のC3列に示す通りであった。なお、C3列の上図は電磁場の振幅、C3列の下図は電磁場の位相分布を示す。
【0038】
3回目の電磁スペクトルの発射が完了したあと、環状アレイ全体を再び時計回りに2π/32=π/16だけ回転させて、4回目の電磁波を発射した。この場合、Aの位相はα’*{2π(n-1)/N}+α’*(2π/N)*3=10*{2π(n-1)/8}+10*(2π/32)*3であった。このとき、アンテナアレイ全体から発射された電磁場は、図2のC4列に示す通りであった。なお、C4列の上図は電磁場の振幅、C4列の下図は電磁場の位相分布を示す。
【0039】
最後に、4回発射した電磁スペクトルを重畳することで、モード数が10の渦電磁場を得ることができる。即ち、アンテナアレイ全体から発射された電磁場をモード数が10の渦電磁場に合成した。図2における(C1+C2+C3+C4)列に示すように、(C1+C2+C3+C4)列の上図は電磁場の振幅であり、(C1+C2+C3+C4)列の下図は電磁場の位相分布である。
【0040】
(比較例1:従来の方法を利用した渦電磁場の合成)
従来の方法を利用して、8つの円偏波アンテナを半径140mmの円上に均一に分布させ、電磁波を発射して渦電磁場を合成した。なお、モード数は-N/2<α<N/2を満たしていた(Nはアンテナユニット数)。
【0041】
従来の方法では、モード数の合成にあたり、-N/2<α<N/2を満たす必要がある(Nはアンテナユニット数、αはモード数)。そのため、従来の方法では、8つのアンテナユニットを使用した場合、最大でモード数が3の渦電磁場を合成可能であるが、8つのアンテナユニットを用いてモード数が10の渦電磁場を合成することはできない。これに対し、本実施形態1では、8つのアンテナユニットを用いてモード数が10の渦電磁場を合成することに成功した。このことは、従来の方法と比較して、本発明の方法が、より大きなモード数の渦電磁場の合成を実現可能なことを意味している(図2を参照)。本発明の方法を用いれば、より高いモード数の渦電磁場を取得したい場合、要素の回転回数を増加させ続けるとともに、アンテナユニットに対し然るべき位相調節を実施すればよい。
【0042】
且つ、イメージングシステムの方位分解能は、渦電磁場のモード数の増加に伴って向上するため、本発明の方法を使用すれば、イメージングシステムの方位分解能を向上させることも可能である。このことは、渦電磁場の超解像イメージングを実現するのに有利であり、超解像バイオメディカルイメージングに適用し得る。
【0043】
そのほか、従来の方法と比較して、本発明の方法で合成される渦電磁場は、より高いモード純度も有する。図1から明らかなように、比較例における従来の方法を用いて合成した渦電磁場と比較して、本発明の方法を用いて合成した渦電磁場は、モード純度がより高く、イメージングノイズがより低く、イメージング性能がより良好であった。
【0044】
以上で述べたように、本発明は、高軌道角運動量モード数の渦電磁場を合成する方法を提供する。本発明の方法を用いれば、必要に応じて、目標モード数を制御する渦電磁場を生成可能である。少ないアンテナ数で、アンテナアレイの回転及びアンテナユニットの位相調節により高モード数の渦電磁場を直接合成することで、イメージングシステムの方位分解能を向上させる。また、本発明の方法で合成して得られる渦電磁場は、超解像イメージングの実現に有利なだけでなく、顕著に高められたモード純度も有する。よって、超解像バイオメディカルイメージング、レーダーイメージング、無線通信等の分野において非常に良好な応用可能性を有する。
図1
図2