(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】運動療法装置
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
A61H1/02 Q
(21)【出願番号】P 2022577153
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2021021244
(87)【国際公開番号】W WO2022254672
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-12-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217021
【氏名又は名称】馬場 進吾
(72)【発明者】
【氏名】水庫 功
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 一之
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-526541(JP,A)
【文献】特開2006-000271(JP,A)
【文献】特開2018-033619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61N 1/36 - A61N 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の運動対象部位を機械的に運動させる運動装置と、
前記運動対象部位に含まれる一対の拮抗筋に対して前記運動対象部位の形に無関係に電気刺激を与える電気刺激装置と、
を備え、
前記電気刺激装置が一対の前記拮抗筋のそれぞれに同時に電気刺激を与えながら、前記運動装置が前記運動対象部位を機械的に運動させ、
前記電気刺激装置による一対の前記拮抗筋
のそれぞれに同時に与えられる電気刺激は
、一対の前記拮抗筋のそれぞれにおいて収縮が発生しない電気刺激となっている運動療法装置。
【請求項2】
前記運動装置は、
回転可能なペダルと、
前記ペダルを回転させるモーターと、
を有し、
前記運動装置は、前記ペダルが回転することによって、前記運動対象部位を機械的に運動させる請求項1に記載の運動療法装置。
【請求項3】
前記電気刺激装置は、
一対の前記拮抗筋の一方に対応して前記運動対象部位に設けられる第1電極と、
一対の前記拮抗筋の他方に対応して前記運動対象部位に設けられる第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極のそれぞれに同一の値の電流を同一のタイミングで供給する給電装置と、
を有している請求項1または請求項2に記載の運動療法装置。
【請求項4】
前記給電装置から前記第1電極および前記第2電極のそれぞれに供給される電流の値は、3(mA)~10(mA)である請求項3に記載の運動療法装置。
【請求項5】
前記給電装置から前記第1電極および前記第2電極のそれぞれに供給される電流の周波数は、20(Hz)である請求項3または請求項4に記載の運動療法装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、身体の運動対象部位に電気刺激を与える運動療法装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペダルと、膝角度センサと、電極と、制御装置と、を備えた運動療法装置が知られている。ペダルには、ペダルこぎ運動を行う使用者の脚の先端部が乗せられる。ペダルは、使用者の脚によって回転する。膝角度センサおよび電極のそれぞれは、使用者の脚に取り付けられる。膝角度センサは、使用者の脚における膝の角度を測定する。膝角度センサの測定結果は、制御装置に入力される。制御装置は、膝角度センサが測定した膝の角度の情報に基づいて、電極への電流の供給を制御する。電極に電流が供給されることによって、使用者の脚に電気刺激が与えられる。使用者の脚が伸びる場合には、使用者の脚の大腿四頭筋に電気刺激が与えられ、使用者の脚が曲がる場合には、使用者の脚のハムストリングに電気刺激が与えられる。これにより、ペダルこぎ運動を行う使用者の脚の力が強くなる。その結果、使用者の脚の筋肉が鍛えられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の運動療法装置では、膝角度センサまたは電極が使用者の脚における膝の角度または筋電流を測定し、測定された膝の角度または筋電流に基づいて制御装置が電極への電流の供給を制御する必要がある。その結果、運動療法装置の構成が複雑で調整項目が多いという問題点があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、運動療法装置の構成を簡素化することができる運動療法装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る運動療法装置は、身体の運動対象部位を機械的に運動させる運動装置と、運動対象部位に含まれる一対の拮抗筋に対して運動対象部位の形に無関係に電気刺激を与える電気刺激装置と、を備え、電気刺激装置が一対の拮抗筋のそれぞれに同時に電気刺激を与えながら、運動装置が運動対象部位を機械的に運動させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る運動療法装置によれば、運動療法装置の構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る運動療法装置を示す構成図である。
【
図2】
図1の運動装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1の電気刺激装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1の電極に供給される電流の波形を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る運動療法装置を用いた運動療法を受ける前後の使用者の筋力の比を示す表である。
【
図6】
図5の使用者の筋力の比を示す棒グラフである。
【
図7】実施の形態1に係る運動療法装置を用いた運動療法を受ける前後の使用者の筋力の比を示す表である。
【
図8】
図7の使用者の筋力の比を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る運動療法装置を示す構成図である。実施の形態1に係る運動療法装置は、運動装置1と、電気刺激装置2と、運動療法装置の使用者3が座る椅子4と、を備えている。なお、運動療法装置は、使用者3によって掴まれる図示しないハンドルをさらに備えてもよい。
【0010】
運動装置1は、使用者3の身体の運動対象部位を機械的に運動させる。実施の形態1では、使用者3の身体の運動対象部位を使用者3の脚とした例について説明する。なお、使用者3の身体の運動対象部位は、使用者3の脚に限らず、例えば、使用者3の腕であってもよい。
【0011】
電気刺激装置2は、使用者3の身体の運動対象部位に含まれる一対の拮抗筋に電気刺激を与える。実施の形態1では、電気刺激装置2が電気刺激を与える一対の拮抗筋の一方を大腿四頭筋とし他方をハムストリングとした例について説明する。なお、電気刺激装置2が電気刺激を与える一対の拮抗筋は、大腿四頭筋およびハムストリングに限らず、その他の一対の拮抗筋であってもよい。
【0012】
運動装置1は、運動装置本体11と、運動装置本体11に回転可能に設けられた一対のペダル12と、一対のペダル12のそれぞれに1個ずつ設けられた一対の固定部13と、を有している。固定部13は、使用者3の脚の先端部をペダル12に固定する。固定部13は、ペダル12に固定されたバンドから構成されている。バンドが使用者3の脚の先端部に巻きつけられることによって、使用者3の脚の先端部がペダル12に固定される。
【0013】
実施の形態1に係る運動装置1は、一対のペダル12と、一対の固定部13と、を有しているが、1個のペダル12と、1個の固定部13と、を有している構成であってもよい。
【0014】
図2は、
図1の運動装置1の構成を示すブロック図である。運動装置1は、モーター14と、運動装置制御部15と、運動装置記憶部16と、運動装置操作部17と、運動装置操作表示部18と、をさらに有している。
【0015】
モーター14には、一対のペダル12が接続されている。モーター14に電流が供給されることによって、モーター14が駆動する。モーター14が駆動することによって、一対のペダル12が回転する。したがって、モーター14に電流が供給されることによって一対のペダル12が回転する。
【0016】
運動装置制御部15は、予め定められた制御プログラムを実行する。運動装置制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)から構成されている。運動装置制御部15は、モーター14に供給される電流を制御する。これにより、運動装置制御部15は、一対のペダル12の回転を制御する。
【0017】
運動装置記憶部16には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶されている。運動装置記憶部16は、例えば、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)から構成されている。運動装置記憶部16は、運動装置制御部15の内部に設けられてもよい。
【0018】
運動装置操作部17が操作されることによって、運動装置制御部15には、ペダル12の回転数、ペダル12が連続して回転する時間などが設定可能となっている。ペダル12の回転数としては、15(rpm)~30(rpm)が設定可能となっている。
【0019】
運動装置操作表示部18は、例えば、液晶パネルから構成されている。運動装置操作表示部18は、運動装置操作部17によって設定された内容などを表示する。
【0020】
モーター14、運動装置制御部15および運動装置記憶部16は、運動装置本体11の内部に配置されている。運動装置操作部17および運動装置操作表示部18は、運動装置本体11の表面に配置されている。
【0021】
運動装置1は、モーター14が駆動することによってペダル12が回転する。なお、運動装置1は、自動運転モードと他動運転モードとの間で切り替え可能となる構成であってもよい。自動運転モードとは、モーター14が駆動することによってペダル12が回転する運転モードである。他動運転モードとは、使用者3のペダルこぎ運動によってペダル12が回転する運転モードである。
【0022】
図1に示すように、電気刺激装置2は、電気刺激装置本体21と、使用者3の脚に取り付けられる複数の電極22と、電気刺激装置本体21とそれぞれの電極22とをつなぐ複数本のケーブル23と、を有している。
【0023】
それぞれの電極22は、平電極となっている。拮抗筋が伸縮する場合に、拮抗筋が皮膚に対して移動する。これにより、拮抗筋が伸縮する場合に、脚のモーターポイントが皮膚に対して移動する。電極22における脚に接触される面の大きさは、拮抗筋の伸縮によって拮抗筋が皮膚に対して動いた場合に、電極22が脚のモーターポイントに対向したままとなる大きさとなっている。これにより、拮抗筋の伸縮によって拮抗筋が皮膚に対して動いた場合であっても、脚のモーターポイントに電極22から電気刺激を与えることができる。
【0024】
図3は、
図1の電気刺激装置2の構成を示すブロック図である。電気刺激装置2は、給電装置24と、電気刺激装置制御部25と、電気刺激装置記憶部26と、電気刺激装置操作部27と、電気刺激装置操作表示部28と、をさらに有している。
【0025】
給電装置24は、複数の電極22のそれぞれに電流を供給する。
図4は、
図1の電極22に供給される電流の波形を示す図である。電極22に供給される電流の波形は、パルス波形となっている。また、電極22に供給される電流の波形は、指数関数的漸増波形となっている。電極22に供給される電流は、時間の経過とともに、電流の目標値ITに指数関数的に漸増する。電極22に供給される電流のパルス幅T1は、予め設定された値となっている。電極22に供給される電流の周期T2は、予め設定された値となっている。
【0026】
複数の電極22のそれぞれは、給電装置24に対して互いに並列に接続されている。これにより、複数の電極22のそれぞれには、給電装置24から電流が供給される。給電装置24から複数の電極22のそれぞれに印加される電圧値、電流値および周波数、並びに印加のタイミングは、互いに同一となっている。なお、給電装置24から複数の電極22のそれぞれに印加される電圧値、電流値および周波数、並びに印加のタイミングは、電極22毎に調整することが可能となっている。
【0027】
図3に示すように、電気刺激装置制御部25は、予め定められた制御プログラムを実行する。電気刺激装置制御部25は、運動装置制御部15と同様に、例えば、CPUまたはMPUから構成されている。電気刺激装置制御部25は、給電装置24から複数の電極22のそれぞれに供給される電流を制御する。これにより、電気刺激装置制御部25は、使用者3の脚に与えられる電気刺激を制御する。
【0028】
電気刺激装置記憶部26には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶されている。電気刺激装置記憶部26は、運動装置記憶部16と同様に、例えば、RAMまたはROMから構成されている。電気刺激装置記憶部26は、電気刺激装置制御部25の内部に設けられてもよい。
【0029】
電気刺激装置操作部27が操作されることによって、電気刺激装置制御部25には、電極22に供給される電流値、電極22に供給される電流の周波数、および、電極22に印加される電圧値が設定可能となっている。また、電気刺激装置操作部27が操作されることによって、電気刺激装置制御部25には、電極22に供給される電流のパルス幅および電極22に電流が供給される1秒間当たりの回数が設定可能となっている。また、電気刺激装置操作部27が操作されることによって、電気刺激装置制御部25には、1回の運動療法における電気刺激の回数または電気刺激が行われる時間が設定可能となっている。
【0030】
電極22に供給される電流値としては、3(mA)~10(mA)が設定可能となっている。電気刺激が大腿四頭筋に与えられる場合の電流値が10(mA)以下である場合には、電気刺激による脚の伸びが発生しない。また、電気刺激がハムストリングに与えられる場合の電流値が10(mA)以下である場合には、電気刺激による脚の曲げが発生しない。電極22に供給される電流値は、電極22が取り付けられる運動対象部位に対応して変化させることが望ましい。電極22が脚の大腿部に取り付けられる場合には、5(mA)~7(mA)が望ましい。電極22が脚の下腿部に取り付けられる場合には、3(mA)~6(mA)が望ましい。
【0031】
なお、電気刺激による脚の伸びが発生するように大腿四頭筋に電気刺激を与える場合には、電極22に供給される電流値としては、50(mA)を超える値が必要である。また、電気刺激による脚の曲げが発生するようにハムストリングに電気刺激を与える場合には、電極22に供給される電流値としては、50(mA)を超える値が必要である。
【0032】
電極22に供給される電流の周波数としては、5(Hz)~50(Hz)が設定可能となっている。電極22に供給される電流の周波数としては、20(Hz)が望ましい。電極22に供給される電流の周波数が20(Hz)である場合に、電気刺激による運動対象部位の筋疲労が発生しにくい。これにより、電気刺激による運動対象部位の筋収縮のコントロールが容易となる。電極22に供給される電流の周波数が50(Hz)以上である場合に、電気刺激による運動対象部位の筋疲労が発生しやすい。これにより、電気刺激による運動対象部位の筋収縮が持続しなくなる。
【0033】
電極22に供給される電流のパルス幅T1としては、250(μs)~350(μs)が設定可能となっている。電極22に供給される電流の周期T2としては、20(ms)~200(ms)が設定可能となっている。電極22に供給される電流の周波数としては、50(ms)が望ましい。
【0034】
電気刺激装置操作表示部28は、例えば、液晶パネルから構成されている。電気刺激装置操作表示部28は、電気刺激装置操作部27によって設定された内容などを表示する。
【0035】
給電装置24、電気刺激装置制御部25および電気刺激装置記憶部26は、電気刺激装置本体21の内部に配置されている。電気刺激装置操作部27および電気刺激装置操作表示部28は、電気刺激装置本体21の表面に配置されている。なお、運動療法装置は、運動装置本体11と電気刺激装置本体21とが一体に形成された構成であってもよい。また、運動療法装置は、運動装置操作部17と電気刺激装置操作部27とが一体に形成された構成であってもよい。また、運動療法装置は、運動装置操作表示部18と電気刺激装置操作表示部28とが一体に形成された構成であってもよい。
【0036】
実施の形態1に係る運動療法装置では、電気刺激装置2は、4個の電極22と、4本のケーブル23と、を有している。4個の電極22のうちの2個の電極22のそれぞれを第1電極221とし、残りの2個の電極22のそれぞれを第2電極222とする。
【0037】
2個の第1電極221は、使用者3の左右の脚のそれぞれに1個ずつ取り付けられる。第1電極221を脚に取り付ける方法としては、例えば、第1電極221を脚に貼り付ける方法、脚に取り付けられるサポータに第1電極221を取り付けることによって、第1電極221を脚に取り付ける方法が挙げられる。第1電極221は、使用者3の脚における大腿四頭筋に対応する部分に取り付けられる。第1電極221に電流が供給されることによって、使用者3の脚の大腿四頭筋に電流が供給される。
【0038】
2個の第2電極222は、使用者3の左右の脚のそれぞれに1個ずつ取り付けられる。第2電極222を脚に取り付ける方法としては、例えば、第2電極222を脚に貼り付ける方法、脚に取り付けられるサポータに第2電極222を取り付けることによって、第2電極222を脚に取り付ける方法が挙げられる。第2電極222は、使用者3の脚におけるハムストリングに対応する部分に貼り付けられる。第2電極222に電流が供給されることによって、使用者3の脚のハムストリングに電流が供給される。
【0039】
電極22に電流が供給されるタイミングは、ペダル12の位置と無関係のタイミングとなっている。したがって、大腿四頭筋およびハムストリングに対して脚の形に無関係に電気刺激が与えられる。脚の形には、脚が曲がっている形、脚が伸びている形が含まれる。
【0040】
ペダルこぎ運動における脚が伸びる場合だけでなく脚が曲がる場合にも、第1電極221に電流が供給される。第1電極221には、電気刺激による脚の伸びが発生しない値の電流が供給される。したがって、ペダルこぎ運動における脚が曲がる場合に第1電極221に電流が供給されても、ペダルこぎ運動が電気刺激によって妨げられない。
【0041】
ペダルこぎ運動における脚が曲がる場合だけでなく脚が伸びる場合にも、第2電極222に電流が供給される。第2電極222には、電気刺激による脚の曲げが発生しない値の電流が供給される。したがって、ペダルこぎ運動における脚が伸びる場合に第2電極222に電流が供給されても、ペダルこぎ運動が電気刺激によって妨げられない。
【0042】
次に、実施の形態1に係る運動療法装置を用いた運動療法について説明する。まず、使用者3は、椅子4に座り、使用者3の脚の先端部をペダル12に固定し、第1電極221および第2電極222を使用者3の脚に取り付ける。
【0043】
その後、使用者3は、運動装置1を操作して、ペダル12を回転させる。これにより、使用者3の脚がペダルこぎ運動を開始する。ペダル12が回転する場合に、使用者3は、自分の意思で脚を動かす必要がない。したがって、運動装置1によるペダルこぎ運動は、使用者3にとって、完全に受動的な他動運動となる。
【0044】
その後、運動装置1によるペダルこぎ運動が開始されてから予め設定された時間、例えば、3分間が経過した場合には、使用者3は、電気刺激装置2を操作して、第1電極221および第2電極222に電流を供給する。これにより、使用者3の脚に電気刺激が与えられる。電極22に供給される電流値は、電気刺激によって使用者3の脚に屈伸が発生しない値である。したがって、第1電極221および第2電極222に電流が供給された場合であっても、ペダルこぎ運動を行う使用者3の脚には、ペダルこぎ運動を行うための力が発生しない。
【0045】
電極22に供給される電流値が、電気刺激によって使用者3の脚に屈伸が発生しない値であることによって、運動装置1による使用者3の脚のペダルこぎ運動は、スムーズに継続される。
【0046】
その後、電気刺激装置2による電気刺激が開始されてから予め設定された時間、例えば、130秒が経過した場合には、電気刺激装置2による電気刺激が終了する。電気刺激の終了に合わせて、使用者3は運動装置1を操作してペダル12の回転を停止させる。以上により、実施の形態1に係る運動療法装置を用いた運動療法が終了する。なお、使用者3の体調悪化など運動の継続が困難な事態が発生した場合には、使用者3は、予め設定された時間を待たずに電気刺激装置2および運動装置1を操作して、電気刺激およびペダル12の回転を停止させることができる。
【0047】
発明者は、実施の形態1に係る運動療法装置を用いた運動療法を受ける前後の使用者3の筋力を測定した。
図5は、実施の形態1に係る運動療法装置を用いた運動療法を受ける前後の使用者3の筋力の比を示す表である。
図6は、
図5の使用者3の筋力の比を示す棒グラフである。
図7は、実施の形態1に係る運動療法装置を用いた運動療法を受ける前後の使用者3の筋力の比を示す表である。
図8は、
図7の使用者3の筋力の比を示す棒グラフである。
【0048】
図5~
図8において、「Control」は、トレーニングを行わない者の群であり、「Passive」は、受動的な等速性のペダルこぎ運動のみを行った者の群である。また、
図5~
図8において、「EMS」は、姿勢が仰臥位であり安静時に電気刺激のみを行った者の群であり、「EMS+P」は、電気刺激を行いながら受動的な等速性のペダルこぎ運動を行った者の群である。また、
図5~
図8において、運動療法を行う前の筋力の値に対する運動療法を行った後の筋力の値の比を用いて、筋力の値が示されている。また、
図5~
図8において、「Mean」は平均値であり、「SD」は標準偏差である。
【0049】
図5~
図8に示すように、脚に電気刺激を与えながら脚を機械的に運動させる運動療法を行った場合の筋力の増加は、脚を機械的に運動させるのみの運動療法を行った場合の筋力の増加よりも大きい。また、脚に電気刺激を与えながら脚を機械的に運動させる運動療法を行った場合の筋力の増加は、脚に電気刺激を与えるのみの運動療法を行った場合の筋力の増加よりも大きい。
【0050】
以上説明したように、実施の形態1に係る運動療法装置は、使用者3の脚を機械的に運動させる運動装置1と、使用者3の脚に含まれる大腿四頭筋およびハムストリングに電気刺激を与える電気刺激装置2と、を備えている。運動療法装置は、電気刺激装置2が大腿四頭筋およびハムストリングのそれぞれに同時に電気刺激を与えながら、運動装置1が脚を機械的に運動させる。この構成によれば、膝角度センサが使用者3の脚における膝の角度を測定する必要がなく、膝の角度に基づいて制御装置が電極への電流の供給を制御する必要がない。その結果、運動療法装置の構成を簡素化することができる。
【0051】
また、実施の形態1に係る運動療法装置は、運動装置1が使用者3の脚を機械的に運動させる。これにより、麻痺によって使用者3の脚が自由に動かすことができない場合であっても、使用者3の脚を機械的に運動させながら、使用者3の脚に電気刺激を与えることができる。その結果、麻痺によって脚を自由に動かすことができない使用者3であっても、運動療法装置を用いた運動療法を行うことができる。
【0052】
また、運動装置1は、回転可能なペダル12と、ペダル12を回転させるモーター14と、を有している。この運動装置1は、ペダル12が回転することによって、使用者3の脚を機械的に運動させる。この構成によれば、使用者3の脚を機械的にペダルこぎ運動させることができる。
【0053】
また、電気刺激装置は、第1電極221と、第2電極222と、第1電極221および第2電極222のそれぞれに同一の値の電流を同一のタイミングで供給する給電装置24と、を有している。第1電極221は、使用者3の脚の大腿四頭筋に対応して使用者3の脚に設けられる。第2電極222は、使用者3の脚のハムストリングに対応して使用者3の脚に設けられる。この構成によれば、使用者3の脚の大腿四頭筋およびハムストリングのそれぞれに同一の値の電流を同一のタイミングで供給することができる。
【0054】
また、給電装置24から電極に供給される電流の値は、3(mA)~10(mA)である。この構成によれば、大腿四頭筋およびハムストリングに与えられる電気刺激では、脚の屈伸運動が発生しない。これにより、運動装置1による使用者3の脚のペダルこぎ運動が電気刺激装置2による電気刺激によって妨げられることを抑制することができる。
【0055】
また、給電装置24から第1電極221および第2電極222に供給される電流の周波数は、20(Hz)である。この構成によれば、大腿四頭筋およびハムストリングの筋疲労が発生しにくくなる。これにより、大腿四頭筋およびハムストリングの筋収縮のコントロールを容易に行うことができる。
【0056】
なお、実施の形態1では、運動療法装置が用いられる身体の運動対象部位としては、使用者3の脚を例に説明した。しかしながら、これに限らず、運動療法装置が用いられる身体の運動対象部位としては、例えば、使用者3の腕であってもよい。
【0057】
また、実施の形態1では、脚を機械的にペダルこぎ運動させる運動装置1の構成について説明した。しかしながら、これに限らず、脚を機械的に屈伸運動させる運動装置1の構成であればよい。
【符号の説明】
【0058】
1 運動装置、2 電気刺激装置、3 使用者、4 椅子、11 運動装置本体、12 ペダル、13 固定部、14 モーター、15 運動装置制御部、16 運動装置記憶部、17 運動装置操作部、18 運動装置操作表示部、21 電気刺激装置本体、22 電極、23 ケーブル、24 給電装置、25 電気刺激装置制御部、26 電気刺激装置記憶部、27 電気刺激装置操作部、28 電気刺激装置操作表示部、221 第1電極、222 第2電極。