(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】紙幣取扱装置及び故障判定方法
(51)【国際特許分類】
G07D 11/235 20190101AFI20240327BHJP
【FI】
G07D11/235
(21)【出願番号】P 2023508208
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2021011929
(87)【国際公開番号】W WO2022201292
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 圭太
(72)【発明者】
【氏名】菅原 論平
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-168790(JP,A)
【文献】特開2005-033559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/00 - 11/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の歯を持つ搬送モータを有するフィールドリペアユニットと、
前記フィールドリペアユニットの振動を検出するセンサと、
前記振動に基づいて
、前記搬送モータの歯の欠落の有無を判定する判定部と、
を具備する紙幣取扱装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記振動を周波数解析し、前記周波数解析の解析結果において最大の振幅レベルを有する周波数成分の周波数が基準値未満であるときに、前記
歯の欠落が発生していると判定する、
請求項1に記載の紙幣取扱装置。
【請求項3】
複数の歯を持つ搬送モータを有するフィールドリペアユニットを
具備する紙幣取扱装置における故障判定方法であって、
前記フィールドリペアユニットの振動を検出し、
前記振動に基づいて
、前記搬送モータの歯の欠落の有無を判定する、
故障判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙幣取扱装置及び故障判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ATM(Automatic Teller Machine)等の紙幣取扱装置の中には、個別に交換可能なフィールドリペアユニット(Field Repair Unit)を有するものがある。フィールドリペアユニットの一例として、紙幣の入出金を行う入出金部、紙幣を一時的に収容する収容部、金種毎に紙幣を収容する収容カセット等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィールドリペアユニットに故障が発生すると紙幣取扱装置の使用が困難になってしまう。
【0005】
そこで、本開示では、フィールドリペアユニットの故障を検出できる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の紙幣取扱装置は、フィールドリペアユニットと、センサと、判定部とを有する。前記センサは、前記フィールドリペアユニットの振動を検出する。前記判定部は、前記振動に基づいて前記フィールドリペアユニットの故障の有無を判定する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、フィールドリペアユニットの故障を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施例1の紙幣取扱装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施例1の振動データの周波数解析結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。実施例において同一の構成には同一の符号を付す。
【0010】
[実施例1]
<紙幣取扱装置の構成>
図1は、本開示の実施例1の紙幣取扱装置の構成例を示す図である。
【0011】
図1において、紙幣取扱装置1は、紙幣2を入出金する入出金部3と、入出金部3から入金された紙幣2を一時的に収容する第一収容部4と、第一収容部4から搬送された紙幣2を鑑別する鑑別部5と、鑑別部5から搬送された紙幣2を一時的に収容する第二収容部6とを有する。また、紙幣取扱装置1は、鑑別部5から搬送された紙幣2を収容するとともに排出することで紙幣2を還流する還流部7と、厚みや長さが異常な紙幣2や破損した紙幣2等を収容するリジェクト部8とを有する。
【0012】
入出金部3から入金された紙幣2は、第一収容部4に収容された後、鑑別部5で鑑別される。鑑別部5で異常が検出された紙幣2は、鑑別部5からリジェクト部8に搬送されて収容される。一方で、鑑別部5で異常が検出されなかった紙幣2は、第二収容部6に収容される。
【0013】
入出金部3から入金された紙幣2に対して返却処理が行われる場合、第二収容部6に収容された紙幣2は、入出金部3に搬送され、入出金部3から返却される。一方で、入出金部3から入金された紙幣2に対して入金処理が行われる場合、第二収容部6に収容された紙幣2は、ら第一収容部4に搬送され、第一収容部4から鑑別部5に搬送された後、鑑別部5から還流部7に搬送され、還流部7の収容カセット7a,7b,7c,7dに金種毎に収容される。
【0014】
また、還流部7に収容された紙幣2が出金される場合、還流部7に収容された紙幣2は、還流部7から鑑別部5に搬送された後、鑑別部5から第二収容部6に搬送されて第二収容部6に収容され、第二収容部6に収容された紙幣2は、入出金部3に搬送され、入出金部3から出金される。
【0015】
入出金部3、第一収容部4、第二収容部6、収容カセット7a~7d、及び、リジェクト部8の各々は、個別に交換可能なフィールドリペアユニットの一例である。入出金部3、第一収容部4、第二収容部6、収容カセット7a~7d、及び、リジェクト部8の各々は、紙幣2を搬送するための搬送ローラと、搬送ローラを駆動するための搬送モータとを有する。入出金部3、第一収容部4、第二収容部6、収容カセット7a~7d、及び、リジェクト部8の各々は、搬送モータを有するため、搬送モータの回転時に振動する。
【0016】
入出金部3には振動検出センサ51Aが取り付けられ、第一収容部4には振動検出センサ51Bが取り付けられ、第二収容部6には振動検出センサ51Cが取り付けられ、リジェクト部8には振動検出センサ51Hが取り付けられている。また、収容カセット7aには振動検出センサ51Dが取り付けられ、収容カセット7bには振動検出センサ51Eが取り付けられ、収容カセット7cには振動検出センサ51Fが取り付けられ、収容カセット7dには振動検出センサ51Gが取り付けられている。
【0017】
また、紙幣取扱装置1は、判定部52を有する。
【0018】
以下では、入出金部3、第一収容部4、第二収容部6、収容カセット7a~7d、及び、リジェクト部8を「フィールドリペアユニット」と総称することがある。また以下では、振動検出センサ51A~51Hを「振動検出センサ51」と総称することがある。
【0019】
振動検出センサ51の一例として加速度センサが挙げられる。判定部52は、ハードウェアとして、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により実現される。
【0020】
<紙幣取扱装置の動作>
各フィールドリペアユニットに取り付けられた振動検出センサ51の各々は、時間の経過に伴って継続的に各フィールドリペアユニットの振動を検出し、振動の値を示す時系列データ(以下では「振動データ」と呼ぶことがある)を判定部52へ出力する。振動検出センサ51Aは入出金部3の振動データを判定部52へ出力し、振動検出センサ51Bは第一収容部4の振動データを判定部52へ出力し、振動検出センサ51Cは第二収容部6の振動データを判定部52へ出力し、振動検出センサ51Hはリジェクト部8の振動データを判定部52へ出力する。また、振動検出センサ51Dは収容カセット7aの振動データを判定部52へ出力し、振動検出センサ51Eは収容カセット7bの振動データを判定部52へ出力し、振動検出センサ51Fは収容カセット7cの振動データを判定部52へ出力し、振動検出センサ51Gは収容カセット7dの振動データを判定部52へ出力する。
【0021】
判定部52は、振動検出センサ51によって検出された振動に基づいて、フィールドリペアユニット毎に、フィールドリペアユニットの故障の有無を判定する。
【0022】
ここで、フィールドリペアユニットの振動の周波数(以下では「振動周波数」と呼ぶことがある)は、フィールドリペアユニットが有する搬送モータの状態に応じて変化する。例えば、20歯のギアを有する正常な搬送モータが一定の回転速度で回転を継続している状態にあるときの回転速度が2000rpmであった場合、2000rpmに対応する周波数は33.3Hzであるため、振動周波数は33.3×20=666Hzとなる。よって、20歯のうちの1歯が欠落した19歯のギアを有する異常なモータが2000rpmで回転するときの振動周波数は33.3×19=633Hzとなる。さらに、20歯のうちの2歯が欠落した18歯のギアを有する異常なモータが2000rpmで回転するときの振動周波数は33.3×18=599Hzとなる。
【0023】
そこで、判定部52は、振動データを周波数解析する。判定部52は、例えばFFT(Fast Fourier Transform)を用いて、振動データの周波数解析を行う。
図3は、本開示の実施例1の振動データの周波数解析結果の一例を示す図である。
図3に示す周波数解析結果では、618Hzの周波数成分が最大の振幅レベルを有する。一方で、上記のように、搬送モータに異常が発生していないときの振動周波数は666Hzとなり、搬送モータに異常が発生しているときの振動周波数は633Hzまたは599Hzとなる。
【0024】
そこで、判定部52は、例えば640Hzを基準値として、周波数解析結果において最大の振幅レベルを有する周波数成分の周波数(以下では「最大レベル周波数」と呼ぶことがある)が基準値の640Hz未満であるときにフィールドリペアユニットに故障が発生していると判定する。一方で、最大レベル周波数が基準値の640Hz以上であるときは、判定部52は、フィールドリペアユニットに故障が発生していないと判定する。よって例えば、
図3に示すように、最大レベル周波数が618Hzであるときは、判定部52は、フィールドリペアユニットに故障が発生していると判定する。
【0025】
判定部52は、フィールドリペアユニットに故障が発生していると判定したときに、フィールドリペアユニットに故障が発生したことと、故障が発生したフィールドリペアユニットを一意に特定可能な情報とを紙幣取扱装置1の外部へ通知する。
【0026】
以上、実施例1について説明した。
【0027】
[実施例2]
<紙幣取扱装置の動作>
判定部52は、フィールドリペアユニット毎に、振動検出センサ51から定期的に(例えば1日1回)振動データを取得し、複数日(例えば30日)に渡って収集した振動データの変化を分析することによって、フィールドリペアユニットに故障が発生する時期(以下では「故障発生時期」と呼ぶことがある)を予測する。また、判定部52は、予測した故障発生時期を紙幣取扱装置1の外部へ通知する。これにより、フィールドリペアユニットに故障が発生する前に予防的にフィールドリペアユニットを交換することが可能になる。
【0028】
例えば、判定部52は、複数日に渡る最大レベル周波数の変化に基づいて故障発生時期を予測しても良い。
【0029】
なお、振動データの収集・分析、故障発生時期の予測、及び、故障発生時期の通知は、判定部52に替えて、紙幣取扱装置1にネットワークを介して接続されたサーバ等によって行われても良い。
【0030】
以上、実施例2について説明した。
【0031】
以上にように、本開示の紙幣取扱装置(実施例の紙幣取扱装置1)は、フィールドリペアユニット(実施例の入出金部3、第一収容部4、第二収容部6、収容カセット7a~7d、リジェクト部8)と、センサ(実施例の振動検出センサ51A~51H)と、判定部(実施例の判定部52)とを有する。センサは、フィールドリペアユニットの振動を検出する。判定部は、センサによって検出された振動に基づいてフィールドリペアユニットの故障の有無を判定する。
【0032】
こうすることで、フィールドリペアユニットの故障を検出できる。
【0033】
また、判定部は、センサによって検出された振動を周波数解析し、周波数解析の解析結果において最大の振幅レベルを有する周波数成分の周波数が基準値未満であるときに、フィールドリペアユニットに故障が発生していると判定する。
【0034】
こうすることで、フィールドリペアユニットの故障の有無の判定を正確に行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
1 紙幣取扱装置
51A~51H 振動検出センサ
52 判定部