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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-26
(45)【発行日】2024-04-03
(54)【発明の名称】校正が可能な電磁気検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/40 20060101AFI20240327BHJP
   G01N 27/80 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G01N3/40 Z
G01N27/80
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023520187
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 KR2021018740
(87)【国際公開番号】W WO2022139281
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0179341
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ジュ-スン
(72)【発明者】
【氏名】コウ、 ソン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ヒョン-クク
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-042807(JP,A)
【文献】特開2020-186921(JP,A)
【文献】特開2008-224494(JP,A)
【文献】特開2009-014678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/40
G01N 27/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定鋼板の幅方向に配置された複数の電磁気センサを含むセンサ本体と、
前記センサ本体に連結され、前記センサ本体を移動させる移動手段と、
前記被測定鋼板と異なる位置に配置される校正用鋼板と、を含む校正が可能な電磁気検査装置であって、
前記校正用鋼板は長辺と短辺を有し、第1硬度を有する第1部分と前記第1硬度より高い第2硬度を有する第2部分とを含み、
前記第1部分と第2部分は短辺方向に互いに異なる位置に配置され、
前記第1部分及び第2部分は同一の組成のオーステナイト結晶粒から変態した相を有する校正用鋼板であり、
前記校正用鋼板は前記被測定鋼板と同一の材質及び幅を有し、
前記校正用鋼板上において、前記移動手段は、前記電磁気センサの間の最大距離と前記校正用鋼板の幅との和以上の移動距離を有するように構成される、校正が可能な電磁気検査装置
【請求項2】
前記第2部分は前記第1部分より50Hv以上高い硬度を有し、
前記第1部分と第2部分は長辺方向に延長形成される、請求項1に記載の校正が可能な電磁気検査装置
【請求項3】
前記第2部分は250Hv以上の硬度を有する、請求項1に記載の校正が可能な電磁気検査装置
【請求項4】
第3硬度を有する第3部分を含み、
前記第3硬度は前記第1硬度よりは大きく、前記第2硬度よりは小さく、
前記第3部分は短辺方向に第1及び第2部分と異なる位置に配置され、
前記第3部分はオーステナイト結晶粒から変態した相を有する、請求項3に記載の校正が可能な電磁気検査装置
【請求項5】
前記複数の電磁気センサと連結された校正部をさらに含み、
前記校正部は、前記複数の電磁気センサで前記第1部分を測定した測定値及び前記第2部分を測定した測定値に基づいて前記複数の電磁気センサを校正する、請求項に記載の校正が可能な電磁気検査装置。
【請求項6】
前記校正部は、前記電磁気センサで測定された測定値を硬度に換算するとき、前記測定された部分の硬度と同一に換算して校正を行う、請求項に記載の校正が可能な電磁気検査装置。
【請求項7】
前記被測定鋼板と前記校正用鋼板は長さ及び厚さが同一である、請求項に記載の校正が可能な電磁気検査装置。
【請求項8】
前記被測定鋼板が配置される測定領域と前記校正用鋼板が配置される校正領域は並んで配置される、請求項に記載の校正が可能な電磁気検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの校正に使用される検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な硬度測定方法は、被測定体の表面部位に特定の荷重で力を加え、その形態によって硬度の強さを測定する破壊的な方法が広く用いられている。このような方法は、破壊される区間の形状を測定して硬度値を計算する方式である。しかし、一般的に使用される鋼板の場合、長さが数メートルから十数メートル、幅が数メートル程度であり、このような鋼板の全面積に対する硬度を測定するには、既存の方法では全区間の硬度を測定することが現実的に不可能であるという問題点がある。
【0003】
特許文献1や特許文献2のように、接触なしに交流電源が印加されるコイルを介して、鋼板に渦電流を生じさせて鋼板の特性を測定する技術が開発されているが、正確度が不十分であり、板状素材を迅速かつ正確に測定できないという問題がある。
【0004】
一方、特許文献2の場合、交流電源が印加されるコイルを介して、鋼板に渦電流を生じさせて鋼板の特性を測定するセンサが設置された校正用鋼板で感度を校正しながら使用する技術であって、校正用鋼板には均一な強度の試験片が挿入されるか、アークストライクによる人工欠陥を含む構成が開示されているが、このような校正用鋼板は、精密に感度を校正するには不十分であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-227421号公報
【文献】特開2019-042807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためのものであって、急激な信号変化が発生しない硬度測定において、センサの感度を迅速かつ正確に校正するための校正用鋼板及びこれを含む検査装置並びに校正用鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような目的を達成するために、本発明は、次のような校正用鋼板及びこれを含む検査装置並びに校正用鋼板の製造方法を提供する。
【0008】
本発明は、一実施例として、長辺と短辺を有し、センサの校正に使用される鋼板であって、第1硬度を有する第1部分と上記第1硬度より高い第2硬度を有する第2部分とを含み、上記第1部分と第2部分は短辺方向に互いに異なる位置に配置され、上記第1部分及び第2部分は同一の組成のオーステナイト結晶粒から変態した相を有するセンサ校正用鋼板を提供する。
【0009】
一実施例として、上記第2部分は上記第1部分より50Hv以上高い硬度を有し、上記第1部分と第2部分は長辺方向に延長形成されることができる。
【0010】
一実施例として、上記第2部分は250Hv以上の硬度を有することができる。
【0011】
一実施例として、上記第3硬度を有する第3部分を含み、上記第3硬度は上記第1硬度よりは大きく、上記第2硬度よりは小さく、上記第3部分は短辺方向に第1及び第2部分と異なる位置に配置され、上記第3部分はオーステナイト結晶粒から変態した相を有するセンサ校正用鋼板を提供することができる。
【0012】
本発明は、一実施例として、被測定鋼板の幅方向に配置された複数の電磁気センサを含むセンサ本体と、上記センサ本体に連結され、上記センサ本体を移動させる移動手段と、上記被測定鋼板と異なる位置に配置されるセンサ校正用鋼板と、を含む電磁気センサ校正装置であって、上記センサ校正用鋼板は上述したセンサ校正用鋼板であり、上記センサ校正用鋼板は上記被測定鋼板と同一の材質及び幅を有し、上記センサ校正用鋼板上において、上記移動手段は、上記校正用鋼板の幅以上の移動距離を有するように構成される、校正が可能な電磁気検査装置を提供することができる。
【0013】
一実施例として、上記複数の電磁気センサと連結された校正部をさらに含み、上記校正部は、上記複数の電磁気センサで上記第1部分を測定した測定値及び上記第2部分を測定した測定値に基づいて上記複数の電磁気センサを校正することができる。
【0014】
一実施例として、上記校正部は、上記電磁気センサで測定された測定値を硬度に換算し、上記測定された部分の硬度と同一に換算するようにして校正を行うことができる。
【0015】
一実施例として、上記被測定鋼板と上記センサ校正用鋼板は長さ及び厚さが同一であることができる。
【0016】
一実施例として、上記被測定鋼板が配置される測定領域と上記センサ校正用鋼板が配置される校正領域は並んで配置されることができる。
【0017】
本発明は、一実施例として、センサ校正用鋼板の作製方法であって、上記鋼板を加熱炉で加熱する加熱段階と、加熱された鋼板を圧延ロールで圧延する圧延段階と、圧延された鋼板を冷却する冷却段階と、を含み、上記冷却段階において、上記鋼板は鋼板の幅方向に沿って異なる位置に第1部分と第2部分とを含み、上記第1部分と第2部分の冷却速度が異なる校正用鋼板の作製方法を提供する。
【0018】
一実施例として、上記冷却段階において、冷却速度の調節は対応する部分の冷却水量を調節することによって行うことができる。
【0019】
一実施例として、上記冷却段階において、上記第1部分より上記第2部分の冷却速度が高くてよい。
【0020】
一実施例として、上記冷却段階において、冷却速度の調節は、鋼板の幅方向及び長さ方向から供給される冷却水量を調節することによって行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、構成を通じて、急激な信号変化が発生しない硬度測定において、センサの感度を校正するための校正用鋼板及びこれを含む検査装置並びに校正用鋼板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】鋼板の表層の断面写真であって、(a)はモールドパウダーによる高硬度部分の断面写真であり、(b)は局部過冷による高硬度部分の断面写真である。
図2】鋼板表層の断面写真であって、(a)はアーキングによって形成された高硬度部分の断面写真であり、(b)は局部過冷による高硬度部分の断面写真である。
図3】本発明による校正用鋼板を作製するための工程フローチャートである。
図4】本発明による校正用鋼板の概略図である。
図5】一実施例における冷却工程の概略図である。
図6】他の実施例における冷却工程の概略図である。
図7】本発明による校正が可能な電磁気検査装置の概略図である。
図8図7の校正用鋼板の幅方向に沿った硬度グラフである。
図9図7の校正用鋼板の幅方向に沿った信号グラフである。
図10図7の各電磁気センサで得られた信号グラフである。
図11図10の信号グラフを校正部で校正したグラフである。
図12】本発明の一実施例による校正用鋼板で校正した場合と、比較例の校正用鋼板で校正した場合において、同一の鋼板を検査したときに得られた硬度グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、添付の図面を参照して、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0024】
厚板は、送油管やガスパイプとして使用することができるが、このような場合、内部を通過する物質による問題がないように剛性と耐Sour性能が必要である。通常、剛性と耐Sour性を有する厚板としては、TMCP鋼(Thermo-Mechanical Control Process Steel)が使用される。
【0025】
このような厚板において、厚板の硬度が基準硬度の200Hvより高硬度(250Hv)以上である場合、このような高硬度部位が高圧の条件下でH2Sと反応してクラックが生じ、パイプが破壊される水素誘起亀裂(HIC)が発生する可能性がある。このような内容は、「DNV-OS-F101(Submarine Pipeline System)」や「API 5L Specification for Line Pipe」にも開示されている。
【0026】
従って、厚板は、表層下部位の硬度を正確に判断し、追って発生する可能性のある欠陥を予防することが必要である。特に、原料輸送管は、事故が発生した場合に人的/物的損失だけでなく、環境汚染などの複合的に大きな問題が発生するという点で、高強度、高耐食鋼厚板の全領域に対する正確な硬度の測定が求められる。
【0027】
厚板において高硬度が発生する要因には様々なものがあるが、よく知られている2つの要因として浸炭及び局部過冷があり、図1には、このような要因によって発生した高硬度部分の断面写真が示されている。図1(a)には、浸炭によって発生した高硬度部分の断面写真が示されており、図1(b)には、局部過冷によって発生した高硬度部分の断面写真が示されている。
【0028】
図1(a)及び(b)に示されているように、浸炭は、モールドパウダー(C:0.1wt%以上)がスラブ表層に残存して発生するものであって、欠陥組織の境界が明確であり、当該高硬度部分は他の部分と組成も異なる。従って、電磁気検査装置で容易に探傷することができる。これに対し、局部過冷は、素材と同一の組成を有するものの、過冷によってオーステナイトから変態される相が異なり、温度勾配が連続的に発生することから結合組織の境界が不明確であり、そのため、電磁気検査装置で正確に探傷することが難しいという問題がある。従って、相対的に測定し難い欠陥が判断できる検査装置を開発する必要がある。
【0029】
電磁気検査装置は、電場あるいは磁場を鋼板に加え、鋼板の素材特性によって変化する信号をセンシングするか、追加のセンサを配置し、鋼板の素材特性によって発生する電流/電圧/磁場の強さなどを測定して鋼板の特性を検査する装置である。
【0030】
硬度も一種の素材特性であって、例えば、渦電流測定装置で検査するとき、硬度値が増加する場合にB-Hカーブにおいてヒステリシス曲線の幅が大きくなる特性により、測定される信号値が小さくなり(エネルギー損失増大)、これを用いて素材の硬度値を測定することができる。但し、測定される信号に影響を与える因子は多様であるため、測定される信号値が硬度によって変化したのか、それとも他の因子、例えば、残留応力、電位、残留磁化によって変化したのかが分かり難い。このような状況は、渦電流測定装置ではなく漏れ磁束測定装置の場合も同様である。
【0031】
一方、電磁気検査装置は、迅速な検査のために複数のセンサを介して測定するが、各センサは、同一の物体を測定するとしてもセンシング値に差があるため、これを校正する校正作業が必要であり、このとき、校正作業は通常、正確な値を認知している素材を活用する。
【0032】
通常、正確な値を認知している小さなサンプルを用意し、センサが当該サンプルを通過させて測定された信号値を、既知の値となるように補正するが、上述したように、サンプルにおいても硬度は正確に認知しているものの、他の因子については情報が正確でないため、測定対象と同一の条件とはいえず、このような点が校正を難しくする。
【0033】
他に、鋼板に人工欠陥を生成して高硬度部分を作るが、高硬度部分を生成するために、アーキング-素材を凝固させた後、凝固させて高硬度を形成-することが特許文献1に開示されている。図2(a)には、アーキングによって形成された高硬度部分の断面写真が、図2(b)には、局部過冷によって形成された高硬度部分の断面写真が示されている。図2(a)と(b)から分かるように、再凝固によって高硬度部分を形成する場合、高硬度であるという点は同一である。しかし、高硬度部分が再凝固した凝固組織を有するようになっても、局部過冷による場合は結晶粒が維持される形態であり、結晶粒の境界線によっても電磁気信号に影響を受けるという点を考慮すると、同一の硬度であっても同一の電磁気信号が発生しないことが分かる。
【0034】
従って、単に硬度値を基準として校正用板を構成する場合、実際の欠陥とは異なる欠陥を基準として校正を行うようになるため、硬度以外の他の因子によって信号値に影響を受けることから正確に測定されず、これは局部過冷による欠陥の検査をさらに難しくする。
【0035】
本発明は、実施例において渦電流検査装置を中心に説明するが、電磁気検査装置が渦電流検査装置に制限されるものではなく、様々な電磁気検査装置に適用することができる。
【0036】
図3には、本発明による校正用鋼板の作製方法のフローチャートが示されており、図4には、本発明による校正用鋼板CPの平面図が示されている。
【0037】
本発明は、高硬度鋼板を電磁気センサで正確に測定するように電磁気センサの校正が可能な校正用鋼板及びこれを作製する作製方法を提供するものであって、センシングが難しい局部過冷欠陥を校正用鋼板に生成し、これを基準として電磁気センサを校正させることを基本的な概念とする。また、校正用鋼板において、電磁気センサの信号値に影響を与えられる因子を被測定鋼板と同一に作り、実際の測定によって得られる基準値とセンサの信号値の関係を容易かつ迅速に一致させることで、センサ間の偏差なしに迅速かつ正確な測定を可能とする。
【0038】
図3には、本発明による校正用鋼板CPの作製方法が示されている。本発明の一実施例において、校正用鋼板CPは被測定鋼板Pと同一の組成を有し、同一の大きさ(厚さ/幅/長さ)を有するように作製され、加熱段階S110、圧延段階S120、冷却段階S130を経て生成される。加熱段階S110及び圧延段階S120は、基本的に被測定鋼板Pの製造工程と同一である。すなわち、加熱炉で加熱して加熱スラブを作った後、被測定鋼板Pと同一の大きさ(厚さ/幅/長さ)を有するように圧延機で圧延される。
【0039】
その後、冷却段階S130で冷却されるが、冷却の様子は図5に示されている。図5に示されているように、冷却段階S130において、校正用鋼板CPはロール20によって移送され、注水設備10から噴射される水によって冷却される。図5を左側から見たとき、複数の領域A、B、C、Dにおいて注水設備10から噴射される水の量を異ならせながら校正用鋼板CPを冷却する。圧延段階S120でオーステナイト相を有していた鋼板は、冷却段階S130で互いに異なる冷却速度で冷却され、それにより、互いに異なる相を有するようになる。このとき、局部過冷となった領域、例えばB、D領域はベイナイトが多くて相対的に高硬度となり、A領域は冷却速度が低くて低硬度となる。上記注水設備10は、鋼板の幅方向(X方向)に注水量を調節できる設備であれば如何なる設備が適用されてもよく、例えば、KR10-1767774のような設備が適用されてもよい。
【0040】
このように、図5のような設備によって冷却されると、図4のような校正用鋼板CPが製造される。校正用鋼板CPは、冷却が完了した後に後述する電磁気検査装置1の校正領域Z2へ移動され、脱磁設備によって脱磁される。
【0041】
本発明の校正用鋼板CPは、短辺(幅方向、図4のX方向)及び長辺(長さ方向、図4のY方向)を有する鋼板であって、鋼板の幅方向(X方向)に互いに異なる硬度を有する領域を含む。上述したように、各領域A、B、C、Dは幅方向に沿って区分され、長さ方向は鋼板の長さと同一の長さを有する。
【0042】
各領域は同一の組成を有するが、冷却速度が異なるため、オーステナイト結晶粒から変態した相の分率が互いに異なる。高硬度の領域ほどベイナイトの分率が高く、低硬度の領域ほどフェライトの分率が高い傾向にある。
【0043】
本発明の校正用鋼板CPは、幅方向に沿って互いに異なる硬度を有するため、校正に必要な複数の硬度を提供することができる。また、被測定鋼板Pと同一の組成及び大きさで作製されるため、磁化あるいは脱磁の際に同一に磁化/脱磁することができる。すなわち、大きさによって磁化/脱磁の程度が変わらないという点で、被測定鋼板Pを測定するときと校正用鋼板CPを測定するときにおいて考慮すべき因子が減少し、正確な校正を提供することができる。
【0044】
また、加熱及び圧延段階S110、S120において被測定鋼板Pと同一の段階を経るため、加熱及び圧延段階S110、S120で磁化に影響を与える因子、例えば残留応力が同一であるか又は少なくとも類似するレベルに該当する。これは、校正用鋼板CPで硬度変化に伴って変化する信号の大きさが、被測定鋼板Pでも同一になることを保証する。
【0045】
低硬度領域Aと高硬度領域B或いはDは、50Hv以上の硬度差を有することが校正に有利であり、高硬度領域BあるいはDは水素誘起亀裂(HIC)の発生可能性がある250Hv以上であることが、校正後の正確な検査のために好ましい。
【0046】
低硬度領域Aと高硬度領域BあるいはDの間の中硬度領域Cを有することも可能であり、中硬度領域Cを含む複数の互いに異なる硬度領域A、B、C、Dまでの少なくとも3点を基準として提供することにより、正確な校正が可能となる。
【0047】
一方、図6には、冷却段階S130における他の冷却方式が示されている。図6に示されているように、注水装置10が幅方向(X方向)だけでなく、長さ方向(Y方向)にも注水量を調節できる設備である場合、注水量を幅方向及び長さ方向に共に調節しながら、鋼板の幅方向(X方向)においてさらに精密に冷却速度が調節された校正用鋼板CPを作製することができ、このような鋼板は、校正が可能な電磁気検査装置において精密な校正を可能とする。
【0048】
図7には、本発明の一実施例による校正が可能な電磁気検査装置1が示されている。図7(a)は、電磁気検査装置1において校正が開始される様子を示した概略図であり、図7(b)は、電磁気検査装置1において校正が終了に向かっている様子を示した概略図であり、図7(c)は、校正が終了した後に電磁気検査装置1が被測定鋼板Pを検査する様子を示した概略図である。
【0049】
図7に示されているように、本発明の一実施例による電磁気検査装置1は、被測定鋼板Pの幅方向に配置された複数の電磁気センサ110を含むセンサ本体100と、上記センサ本体100に連結され、上記センサ本体100を移動させる移動手段と、上記被測定鋼板Pと異なる位置に配置される校正用鋼板CPと、上記電磁気センサ110に連結された校正部と、を含む電磁気センサ校正装置1である。
【0050】
センサ本体100は、複数の電磁気センサ110が鋼板の幅方向(X方向)に沿って複数個が複数列に配置された構成であって、この実施例においては、センサ列が鋼板の幅を一度に測定できる程度に構成されるが、これに制限されるものではなく、移動手段によって鋼板の幅方向に移動しながら測定することも可能である。
【0051】
電磁気センサ110は、電磁気方式を用いて硬度を測定するものであって、例えば、渦電流測定センサあるいは漏れ磁束測定センサであってもよく、上述したように、この実施例では渦電流測定センサである。
【0052】
移動手段は、センサ本体100が鋼板の表面に対して同一の距離を維持しながらX方向、又はX方向とY方向に移動させる構成であって、両側の支持部130とガイドバー120及び上記センサ本体100と上記ガイドバー120の間で上記センサ本体100を直線移動させる直線移動手段(図示せず)を含むことができる。移動手段は、水平移動が可能であれば様々な構造を適用可能であることは言うまでもない。
【0053】
本発明の一実施例による電磁気検査装置1は、上記移動手段によって測定領域Z1と校正領域Z2にセンサ本体100が移動される構造である。測定領域Z1と校正領域Z2は並んで位置することができる。
【0054】
校正領域Z2には校正用鋼板CPが配置され、測定領域Z1には被測定鋼板Pが供給及び排出されることができる。測定領域Z1において、被測定鋼板Pを検査する際に、センサ本体100は固定された状態で被測定鋼板Pをローラのような移送手段によって移動することができ、他には、被測定鋼板Pが測定領域Z1に供給されると、移動手段によってY方向にセンサ本体100が移動しながら鋼板を検査することも可能であり、この2つの複合によって検査することも可能である。
【0055】
この実施例による電磁気検査装置1の場合、移動手段は、校正領域Z2において少なくとも上記センサ本体100を被測定鋼板Pあるいは校正用鋼板CPの幅Wだけ幅方向に移動させることができる。校正用鋼板CPの幅と被測定鋼板Pの幅Wとが同一であるため、校正用鋼板CPの幅方向の全領域に対して全ての電磁気センサ110が検査をするためには、少なくとも校正用鋼板CPの幅と上記電磁気センサの間の最大距離の和だけ、移動手段がセンサ本体100を移動させなければならない。ここで、電磁気センサの間の最大距離は、X方向において両側端の電磁気センサの間の距離を意味する。このような様子が図7(a)及び図7(b)に示されている。
【0056】
校正領域Z2と測定領域Z1が同一である場合、すなわち、校正用鋼板CPが被測定鋼板Pと同一の領域に供給/排出される場合であっても、移動手段は、センサ本体を鋼板の幅方向に幅Wと電磁気センサの間の最大距離の和だけ移動させながら測定しなければならない。ここで、移動させるとは相対運動を意味することができる。
【0057】
校正方法については、図8~11を参照して後で説明するが、電磁気センサ110の校正が完了した後、移動手段は、センサ本体100を測定領域Z1に戻し、戻した後に測定領域Z1に供給される被測定鋼板Pを検査する。校正により、各電磁気センサ110は同一の硬度で互いに異なる測定値を測定するセンサであっても、同一の硬度測定値を提供することができ、このため、正確な検査が可能である。
【0058】
図8~11には、校正が可能な電磁気検査装置の校正方法によるグラフが示されている。図8には、校正用鋼板の実際の幅方向の硬度グラフが示されており、図9には、校正用鋼板の幅方向に沿った信号グラフ及び選定領域が示されており、図10には、各選定領域における各電磁気センサの測定値が示されており、図11には、校正によって校正された実際の硬度と測定硬度のグラフが示されている。
【0059】
図8に示されているように、校正用鋼板CPは、作製された後にLeebテストによって実際の硬度値を測定し、その硬度が図8に示されている。図8に示されているように、A領域は低硬度を、B、D領域は高硬度を有し、C領域はAとBの間である中硬度を有する。
【0060】
電磁気センサ110に連結された校正部は、硬度の異なる複数の領域を選定する。例えば、図9に示されているように、低硬度、中硬度、高硬度の3つの領域を選定して、当該部分を電磁気センサが通るときの信号値を測定し、このように測定された信号グラフが図10に示されている。図10に示されているように、同一の部分を測定しても、各センサが正確に同一でないため、各センサで測定される信号値は異なる。本発明は、上記センサに連結された校正部を介して上記信号値を実際の硬度値に符合するように換算し、実際の硬度と換算された硬度値が常に一致するように、各センサごとに換算式又は対応関係を設定する。このように各センサごとに換算式又は対応関係をそれぞれ設定することで、各センサの校正が完了し、校正が完了したセンサを含むセンサ本体100は測定領域Z1に送られて、被測定鋼板Pを測定する。
【0061】
上述したように、センサ110によって高硬度、例えば250Hvの領域を含む鋼板を電磁気検査装置1によって見つけだし、更なる工程を通じて高硬度領域を除去するか、又は硬度を下げる熱処理を経た後、製品として需要者に供給される。これにより、水素誘起亀裂から自由な厚板材の提供が可能となる。
【0062】
図12には、本発明による校正用鋼板を使用して校正したセンサ(実施例)と、従来の校正用サンプルを使用して校正したセンサ(比較例)で同一の鋼板を測定したときのグラフが示されている。
【0063】
図12に示されているように、従来の校正用サンプルを使用して校正するとしても、傾向性では実施例と差がないものの、測定硬度と実際の硬度が一致しないという問題が発生する。これに対し、本発明の実施例では、各センサとの差を校正するだけで測定硬度と実際の硬度を一致させることができるため、上記のような問題が発生しない。特に、比較例の場合、測定硬度と実際の硬度に差がある理由について毎回分析しなければならないが、実施例の場合、測定鋼板と校正用鋼板の基本条件が同一であることから、このような理由を分析する必要がないため、様々な鋼板に対しても容易かつ迅速に鋼板を校正することができる。
【0064】
本発明では、実際に製作する工程において冷却段階のみを変更することで校正用鋼板を作製することができ、これを活用する場合、多数の因子を考慮する必要がないため、連続的に鋼板を製作及び校正するのに有利である。
【0065】
以上、本発明の実施例を中心に説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、様々に変形して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1 電磁気検査装置
10 注水設備
20 ロール
100 センサ本体
110 電磁気センサ
120 ガイドバー
130 支持
被測定鋼板
CP 校正用鋼板
Z1 測定領域
Z2 校正領域
図1(a)】
図1(b)】
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図8
図9
図10
図11
図12