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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】異物探知システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/34 20060101AFI20240328BHJP
   G01S 13/934 20200101ALN20240328BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S13/934
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020036158
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021139684
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年3月3日に2020年電子情報通信学会総合大会エレクトロニクス講演論文集、191頁、電子情報通信学会発行で発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度,総務省,電波資源拡大のための研究開発「90GHz帯協調制御型リニアセルレーダーシステムの研究開発」の委託事業,産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】川西 哲也
(72)【発明者】
【氏名】金谷 智彦
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185280(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0049812(US,A1)
【文献】特開平07-146359(JP,A)
【文献】特開2017-003453(JP,A)
【文献】国際公開第2019/181608(WO,A1)
【文献】特開2010-014488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 - G01S 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物探知システム(1)であって,
送信信号の周波数を変化させることができるレーダ送信機(3)と,
前記レーダ送信機が出力する送信信号を制御する信号源(5)と,
前記レーダ送信機が送信した送信信号の反射信号を受信するレーダ受信機(7)とを含み,
前記信号源(5)を,異物探知時に,前記送信信号が連続波部分と送信停止部分とを含むように制御するか,
前記信号源(5)を,異物探知時に,前記送信信号が連続波となるように制御し,前記レーダ受信機(7)を,異物探知時の探知期間中に連続検知期間と検知停止期間とを含むように制御する,
異物探知システムであって、
前記信号源(5)を,異物探知時に,前記送信信号が連続波部分と送信停止部分とを含むように制御し,
前記連続波部分は,周波数がf [Hz]からf +f [Hz]へ変化した後に,周波数がf +f [Hz]からf [Hz]へ変化する周期が2T [秒]の連続波の一部であり,
前記連続波部分がT [秒]ごとにt off [秒]の前記送信停止部分が存在し,
前記連続波部分のT [秒]に対する前記送信停止部分の時間t off [秒]の比をr off とし,
前記レーダ受信機(7)が受信した前記送信信号の反射信号を受信信号とし,
を,前記送信信号及び前記受信信号の間のビート周波数とし,
c0 を,送信波の周波数が最大値または最小値となった時刻を0としたときの、異物探知時における送信信号と反射信号の周波数差が0となる時刻とすると,
前記信号源(5)は,下記式(1)を満たすt c0 に対して,送信波の周波数が最大値または最小値となってから,t c0 -t off /2[秒]だけ時間がたった時点で送信波を停止し,t off [秒]の停止時間の後,送信を再開するように前記送信信号を制御する,システム。
【数1】
【請求項2】
請求項1に記載の異物探知システム(1)であって,
前記レーダ送信機(3)及び前記レーダ受信機(7)は,地上に設置されたレーダである,異物探知システム。
【請求項3】
請求項1に記載の異物探知システム(1)であって,前記連続波部分は,周波数が増加する期間と,周波数が減少する期間において周波数の変化速度が異なる,異物探知システム。
【請求項4】
請求項1に記載の異物探知システム(1)であって,
前記t off [秒]は,下記式(4)を満たす,システム。
【数2】
【請求項5】
送信信号の周波数を変化させることができるレーダ送信機(3)と,
前記レーダ送信機が出力する送信信号を制御する信号源(5)と,
前記レーダ送信機が送信した送信信号の反射信号を受信するレーダ受信機(7)とを含み,
前記信号源(5)を,異物探知時に,前記送信信号が連続波部分と送信停止部分とを含むように制御するか,
前記信号源(5)を,異物探知時に,前記送信信号が連続波となるように制御し,前記レーダ受信機(7)を,異物探知時の探知期間中に連続検知期間と検知停止期間とを含むように制御する,
異物探知システム(1)であって,
前記信号源(5)を,異物探知時に,前記送信信号が連続波となるように制御し,前記レーダ受信機(7)を,異物探知時の探知期間中に連続検知期間と検知停止期間とを含むように制御し,
前記連続波は,周波数がf[Hz]からf+f[Hz]へ変化した後に,周波数がf+f[Hz]からf[Hz]へ変化する周期が2T[秒]の連続波であり,
前記探知期間がT[秒]ごとにtoff[秒]の前記検知停止期間が存在し,
前記探知期間のT[秒]に対する前記検知停止期間toff[秒]の比をroffとすると,
前記信号源(5)は,事前調整時に前記送信信号が連続波部分のみとなるように送信信号を制御し,前記レーダ受信機(7)が受信した反射信号に基づいて,ビート周波数f[Hz]を求め,求めたビート周波数f[Hz]を用いて,送信波の周波数が最大値または最小値となった時刻を0としたときの、前記異物探知時における前記送信信号と前記反射信号の周波数差が0となる時刻であるtc0を求め,
前記レーダ受信機(7)は,下記式(1)を満たすtc に対して,受信波の周波数が最大値または最小値となる,tc +toff/2[秒]前で信号の検知を停止し,toff[秒]の検知停止期間の後,検知を再開するように制御するシステム。
【数3】
【請求項6】
請求項5に記載の異物探知システム(1)であって,
前記レーダ送信機(3)及び前記レーダ受信機(7)は,地上に設置されたレーダである,異物探知システム。
【請求項7】
請求項5に記載の異物探知システム(1)であって,前記連続波部分は,周波数が増加する期間と,周波数が減少する期間において周波数の変化速度が異なる,異物探知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は異物探知システムに関する。より詳しく説明すると,この発明は,FM-CWレーダにおける強い反射波によるノイズフロア上昇を抑えることができる異物探知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-055769号公報には,航空機システムにおいて障害物を検出するためのシステム及び方法が記載されている。
【0003】
滑走路上の異物はFOD(foreign object debris)とよばれ,安全面のみならず経済的な損失も大きい。FOD監視システムには検知精度のみならず,位置精度や高速性,天候によらない耐久性が求められている。
【0004】
このようにFOD監視システムの需要が高まる中,現在FM-CWリニアセルレーダシステムの開発が進められている(非特許文献1)。滑走路上の航空機など強い反射波を発生させるものがあるときに,その影響でノイズフロアが上昇し,小さな対象物が検出できなくなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-055769号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】T. Kawanishi, A. Kanno and H. S. C. Freire, "Wired and wireless links to bridge networks," IEEE Microw. Mag., vol. 19, no. 3, p. 102-111, 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この明細書に記載されるある発明は,ノイズフロアの上昇を抑えることで,小さな異物をも検知できる異物探知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は,例えば,強い反射を発生させる物体の位置を検出した後に,その位置に対応した適切な時間など,適切な時間範囲で送信もしくは受信を停止することで,ノイズフロア上昇を抑えることができるという知見に基づく。
【0009】
この明細書に記載されるある発明は,異物探知システム1に関する。
この異物探知システム1は,
送信信号の周波数を変化させることができるレーダ送信機3と,
レーダ送信機が出力する送信信号を制御する信号源5と,
レーダ送信機が送信した送信信号の反射信号を受信するレーダ受信機7とを含む。
【0010】
そして,異物探知システム1は,以下の2種類のいずれかの制御を行う。
一つ目の制御は,異物探知システム1は,異物探知時に,信号源5を,送信信号が連続波部分と送信停止部分とを含むように制御するものである。
二つ目の制御は,異物探知時に,信号源5を,送信信号が連続波となるように制御し,レーダ受信機7を,異物探知時の探知期間中に連続検知期間と検知停止期間とを含むように制御するものである。
【0011】
異物探知システム1の好ましい例は,レーダ送信機3及びレーダ受信機7が,地上に設置されたレーダである。
【0012】
異物探知システム1の好ましい例は,連続波部分は,周波数が増加する期間と,周波数が減少する期間において周波数の変化速度が異なるものである。
【0013】
異物探知システム1の好ましい例は,信号源5を,異物探知時に,送信信号が連続波部分と送信停止部分とを含むように制御する態様に関する。
そして,連続波部分は,周波数がf[Hz]からf+f[Hz]へ変化した後に,周波数がf+f[Hz]からf[Hz]へ変化する周期が2T[秒]の連続波の一部である。
連続波部分がT[秒]ごとにtoff[秒]の送信停止部分が存在する。
連続波部分のT[秒]に対する送信停止部分の時間toff[秒]の比をroffとすると,
信号源5は,下記式(1)を満たすtcoに対して,送信波の周波数が最大値または最小値となってから,tco-toff/2[秒]だけ時間がたった時点で送信波を停止し,toff[秒]の停止時間の後,送信を再開するように送信信号を制御する。
【0014】
【数1】
【0015】
ここでfは,送信信号及び受信信号の間のビート周波数である。
【0016】
このように適切な時間範囲で送信もしくは受信を停止することで,ノイズフロア上昇を抑えることができる。
【0017】
異物探知システム1の好ましい例は,信号源5を,異物探知時に,送信信号が連続波部分と送信停止部分とを含むように制御する態様に関する。
この態様では,連続波部分は,周波数がf[Hz]からf+f[Hz]へ変化した後に,周波数がf+f[Hz]からf[Hz]へ変化する周期が2T[秒]の連続波の一部である。
そして,連続波部分がT[秒]ごとにtoff[秒]の送信停止部分が存在する。
連続波部分のT[秒]に対する送信停止部分の時間toff[秒]の比をroffとすると,
信号源5は,事前調整時に送信信号が連続波部分のみとなるように送信信号を制御し,レーダ受信機7が受信した反射信号に基づいて,ビート周波数f[Hz]を求め,求めたビート周波数f[Hz]を用いて,異物探知時における送信信号と反射信号の周波数差が0となる時刻であるtc0を求める。
そして,信号源5は,下記式(1)を満たすtcoに対して,送信波の周波数が最大値または最小値となってから,tco-off/2[秒]だけ時間がたった時点で送信波を停止し,toff[秒]の停止時間の後,送信を再開するように送信信号を制御する。なお送信停止部分の時間toff[秒]は,好ましくは下記式(4)を満たす。
【0018】
【数2】
【0019】
異物探知システム1の好ましい例は,信号源5を,異物探知時に,送信信号が連続波となるように制御し,レーダ受信機7を,異物探知時の探知期間中に連続検知期間と検知停止期間とを含むように制御する態様に関する。
連続波は,周波数がf[Hz]からf+f[Hz]へ変化した後に,周波数がf+f[Hz]からf[Hz]へ変化する周期が2T[秒]の連続波である。
探知期間がT[秒]ごとにtoff[秒]の検知停止期間が存在し,
探知期間のT[秒]に対する検知停止期間toff[秒]の比をroffとする。
レーダ受信器は,下記式(1)を満たすtcoに対して,受信波の周波数が最大値または最小値となる,tco+toff/2[秒]前で信号の検知を停止し,toff[秒]の検知停止期間の後,検知を再開するように制御する。
【0020】
【数3】
【0021】
異物探知システム1の好ましい例は,信号源5を,異物探知時に,送信信号が連続波となるように制御し,レーダ受信機7を,異物探知時の探知期間中に連続検知期間と検知停止期間とを含むように制御する態様に関する。
連続波は,周波数がf[Hz]からf+f[Hz]へ変化した後に,周波数がf+f[Hz]からf[Hz]へ変化する周期が2T[秒]の連続波である。
探知期間がT[秒]ごとにtoff[秒]の検知停止期間が存在し,
探知期間のT[秒]に対する検知停止期間toff[秒]の比をroffとする。
信号源5は,事前調整時に送信信号が連続波部分のみとなるように送信信号を制御し,レーダ受信機7が受信した反射信号に基づいて,ビート周波数f[Hz]を求める。
そして,求めたビート周波数f[Hz]を用いて,異物探知時における送信信号と反射信号の周波数差が0となる時刻であるtc0を求める。
レーダ受信器は,下記式(1)を満たすtcoに対して,受信波の周波数が最大値または最小値となる,tco+toff/2[秒]前で信号の検知を停止し,toff[秒]の検知停止期間の後,検知を再開するように制御する。
【0022】
【数4】
【0023】
異物探知システム1の好ましい例は,信号源5を,異物探知時に,送信信号が連続波部分と送信停止部分とを含むように制御する態様に関する。
連続波部分は,周波数がf[Hz]からf+f[Hz]へ変化した後に,周波数がf+f[Hz]からf[Hz]へ変化する周期が2T[秒]の連続波であり,周波数が最大又は最小となった直後にtoff[秒]の送信停止部分を挿入するように送信信号を制御する。
【0024】
この態様のシステムは,以下の態様が好ましい。信号源5を,事前調整時に送信信号が連続波部分のみとなるように送信信号を制御し,レーダ受信機7が受信した反射信号に基づいて,ビート周波数f[Hz]を求め,求めたビート周波数f[Hz]を用いて,異物探知時における送信信号と反射信号の間の遅延時間Δtを求め,送信停止時間toffをΔt以下でΔt/10以上の値に設定する。
そして,信号源5は,異物探知時に,送信信号が連続波部分と送信停止部分とを含むように制御し,連続波部分は,周波数がf[Hz]からf+f[Hz]へ変化した後に,周波数がf+f[Hz]からf[Hz]へ変化する周期が2T[秒]の連続波であり,周波数が最大又は最小となった直後にtoff[秒]の送信停止部分を挿入するように送信信号を制御する。
【発明の効果】
【0025】
この明細書に記載されるある発明によれば,ノイズフロアの上昇を抑えることで,小さな異物をも検知できる異物探知システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は,異物探知システム1を説明するための概略構成図である。
図2図2は,異物を検知する様子を示す概念図である。
図3図3は,FM-CWレーダ信号の模式図を示す。
図4図4は,障害物をFM-CWレーダで測定した際のスペクトルを示す図面に代わるグラフである。
図5図5は,FM-CWレーダIF帯スペクトルの模式図である。
図6図6は,アップチャープダウンチャープ間に停止時間を追加する方法を説明するための概念図である。
図7図7は,周波数差が0となる瞬間の前後期間で送信を停止する方法を説明するための概念図である。
図8図8は,送信信号のアップチャープ終端を示す概念図である。
図9図9は,送信信号終端の制御を示す模式図である。
図10図10は,送信信号のアップチャープ終端を示す概念図である。
図11図11は,FM-CWレーダ模擬系の概略図である。
図12図12は,基本信号のスペクトラムを示す図面に代わるグラフである。
図13図13は,基本信号によるFM-CWレーダ模擬系のIF帯スペクトルを示す図面に代わるグラフである。
図14図14は,タイプAの送信信号停止時間率によるスペクトル変化を示す図面に代わるグラフである。
図15図15は,タイプBの送信信号停止時間率によるスペクトル変化を示す図面に代わるグラフである。
図16-1】図16-1は,送信信号立ち上がり時間率を変化させたときのスペクトルを示す図面に代わるグラフである。図16-1は,図16a~図16dを含む。
図16-2】図16-2は,図16-1の続きである。図16-2は,図16e~図16hを含む。
図17図17は,送信信号立ち上がり時間率によるD/Uの変化を示す図面に代わるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0028】
図1は,異物探知システム1を説明するための概略構成図である。図1に示されるように,この異物探知システム1は,送信信号の周波数を変化させることができるレーダ送信機3と,レーダ送信機が出力する送信信号を制御する信号源5と,レーダ送信機が送信した送信信号の反射信号を受信するレーダ受信機7とを含む。図1に示される例では,各レーダ11が,レーダ送信機3,信号源5及びレーダ受信機7を含む。
【0029】
異物探知システム1は,例えば,飛行機の滑走路9に存在する異物を探知するためのシステムに関する。異物の例は,飛行機の進行の妨げとなる障害物など,正常な状態では,滑走路に存在しない物であって,飛行機の安全な運転の妨げになるか,妨げになる恐れがある物を意味する。航空機の例では,異物は滑走路に存在する。つまり,異物は,通常,乗物が通常運転をする際に通過する可能性がある領域に存在する物である。以下,飛行機の滑走路の異物探知システムを中心に説明を行う。もちろん,この異物探知システム1は,道路の異物探知システムや,航海における異物探知システムといった様々な用途に用いることができる。このシステムは,また,道路に設置されることで,自動運転車両に対し,異物の存在を通知するために用いることができる。
【0030】
第1のレーダ11は公知のレーダを適宜採用できる。レーダは,同期信号(例えば光信号)を受信して,受信した同期信号を信号変換器により無線信号に変換,もしくは同期信号に同期した発信器で信号生成し,無線出力部から無線信号を放出できる。また,レーダは,その無線受信部により無線信号を受信し,受信した無線信号を信号変換部により信号(例えば光信号)に変換し,受信信号出力部から出力できる。レーダは,連続波(FMCW)レーダであっても,パルスレーダであってもよい。FMCWレーダでは,送信波と受信波を解析装置内のミキサに入力して,それらの周波数差を測定することで,レーダから異物の距離を算出できる。無線信号を光ファイバへ重畳するファイバ無線技術を採用してもよい。この場合,同期信号は,レーダ信号波形そのもので光を変調したものとなる。同期信号は,レーダ信号波形の発生プロセスの途中にある中間周波数帯波形を利用してもよい。複数のレーダに送信される同期信号は,同期がとられており,これによりタイミングを調整できる。ファイバ無線用ユニット及びファイバ無線用システムは,再表2010/001438号公報に記載されているとおり公知である。信号源は,このような公知のシステムを用いて同期信号を発生させ,出力させればよい。
【0031】
図1に示されるように,レーダは,滑走路を挟む両端側に所定間隔にて設置されているものが好ましい。この場合,レーダ群は,飛行機が滑走する部分を避けた滑走路付近に存在すればよい。例えば,滑走路の一方の端側に存在するレーダ群(第1のレーダ群)を,RAU1j(jは,1,2,・・・・),滑走路の他方の端側に存在するレーダ群(第2のレーダ群)をRAU2i(iは,1,2,・・・・)とも表記する。レーダによっては,乗物(飛行機,自動車,オートバイ,自転車,ヘリコプター,ドローン)に設置されているものがある。一方,本発明では,図1に示されるように,第1のレーダ11及び第2のレーダ21が,地上に設置されたレーダであるものが好ましい。第1のレーダ11及び第2のレーダ21は,滑走路の両端側にそれぞれ存在するレーダであることが好ましい。換言すれば,第1のレーダ11及び第2のレーダ21の間に,滑走路が存在する位置関係であることが好ましい。それぞれの群に存在するレーダの距離の例は,1m以上5km以下であり,10m以上1km以下でもよいし,100m以上1km以下でもよいし,200m以上1km以下でもよいし,10m以上100m以下でもよい。
【0032】
同期信号源31は,第1のレーダ11及び第2のレーダ21とネットワーク33を介して接続され,同期信号を送信するための要素である。同期信号源31から出力された同期信号は,ネットワーク33を介して,第1のレーダ11及び第2のレーダ21に到達し,第1のレーダ11及び第2のレーダ21から同期信号に基づくレーダ信号が出力されることとなる。
【0033】
ネットワーク33の例は,光ファイバネットワークである。光ファイバネットワークに接続された各要素は,光ファイバを介して,情報の授受を行うことができる。光ファイバネットワークには,例えば,ルータや増幅器といった公知の要素が適宜設置されていてもよい。
【0034】
図2は,異物を検知する様子を示す概念図である。例えば,第1のレーダ11から出力された無線信号13が,異物35に衝突する。そして,無線信号は,異物35により反射される。反射した無線信号15(またはその一部)は,第1のレーダ11に戻る。第1のレーダ11は,異物35において反射し,戻ってきた無線信号15を受信する。そして,第1のレーダ11は,受信した無線信号を適宜変換して,検出信号として出力する。ネットワークに接続される解析装置(これは信号源と同一の装置内にあってもよい)39は,ネットワークを介して伝搬された検出信号を受信する。そして,解析装置39は,受信した検出信号を解析する。無線信号の速度は,記憶部に記憶されている。すると,解析装置は,例えば,第1のレーダが,レーダ信号を出力した時間と,第1のレーダが無線信号15を受信した時間を用いて,第1のレーダから異物までの距離を求めることができる。このシステムには,複数のレーダが存在しているので,それぞれのレーダから異物までの距離を求めることができる。すると,複数のレーダの位置情報と,それぞれのレーダから異物までの距離情報を用いることで,異物の位置(例えば,滑走路上の異物の位置)を求めることができる。
【0035】
信号源5は,レーダ送信機3が出力する送信信号を制御する。信号源は,公知のコンピュータであってもよい。コンピュータは,入出力部,制御部,演算部,及び記憶部を含み,各要素はバスなどで情報の授受を行うことができるように接続されている。そして,記憶部から適宜制御プログラムやデータを読み出して,適宜演算を行い,出力すればよい。このようにして,信号源5は,レーダ送信機3へ適切な指令を出すことができる。指令を受け取ったレーダ送信機3は,指令に従った送信信号を出力する。この信号源5は,レーダ受信機7の動作タイミングをも制御してもよい。すると,信号源5からの指令に従って,レーダ受信機7の検出タイミングが制御される。これらの制御は,上記の解析装置39により実行されてもよい。解析装置39は,例えばレーダ送信機3の送信信号の出力時間や,レーダ受信機7の受信時間を含めた情報を受け取り,各種解析を行って,信号源5や,レーダ送信機3,レーダ受信機7の動作を制御するようにしてもよい。このシステムでは,基本的には,レーダ送信機3の出力に関し,出力停止期間を設けるか,レーダ受信機7のレーダ受信を停止する受信停止期間を設けることで,ノイズフロアの上昇を抑えることができ,これにより小さな異物をも検知できるようになる。なお,以下説明する理論上の数値は実装系においては若干の幅を持たせても構わない。例えば,x=Aという理論値の場合,0.8A≦x≦1.2Aでもよいし,0.9A≦x≦1.1でもよいし,0.95A≦x≦1.05Aでもよい。また,A≦y≦Bの場合は,0.8A≦y≦1.2Bでもよいし,0.9A≦y≦1.1Bでもよいし,0.95A≦y≦1.05Bでもよい。
【0036】
レーダの基本原理
レーダは,電波を対象物に向けて発射し,その反射波を測定することにより対象物までの距離や方向を測定する装置である。レーダの送信電力と受信電力との関係にはレーダ方程式が定義され,式(2.1)のように表される。
【0037】
【数5】
【0038】
受信電力を一定に保つには,例えば,距離の4乗に比例して送信電力を増加すればよい。なお,多くのレーダでは信号送受信を同一のアンテナで行うため式(2.1)では送受信ともにアンテナ利得をGとおいている。物体のレーダ断面積(RCS)は対象物がレーダに対してどの程度信号を反射するかを示すパラメータであり,式(2.2)のように表すことができる。
【0039】
【数6】
【0040】
幾何学的断面積は,レーダから見た対象物の大きさであり,反射率は対象物へ照射される信号の電力に対する反射する信号の電力の比である。指向性とは信号がレーダ方向へ後方散乱される場合の電力に対する信号が全方向へ散乱される場合のレーダ方向へ反射される信号の電力の比を意味する。
【0041】
パルスレーダ
パルスレーダは一定間隔にパルス信号を発射し,対象物に反射して帰ってくるまでの時間から対象物との距離を算出するレーダである。
【0042】
パルスレーダにおける距離の算出は式(2.3)のように表される。
【0043】
【数7】
【0044】
また送信信号のパルス幅Tと周期τという二つのパラメータよりレーダの性能を表す最大探知距離Rmax,最小探知距離Rmin及び距離分解能δRが決定される。最大探知距離は多次エコーの制限により決められる。遅延時間が大きくなることで対象物に反射したパルスが次のパルスが発射されるまでに受信できなくなるために距離を正確に測定できなくなる現象を多次エコーという。したがって最大探知距離は式(2.4)に表される。
【0045】
【数8】
【0046】
最小探知距離は送受信信号を区別するために,パルス送信中に反射されたパルスが受信されないよう制限される。二つの物体を区別する能力を表す距離分解能は二つの物体から反射したパルスが重なり合わず二つの信号として区別できるよう制限される。したがって最小探知距離及び距離分解能はどちらもパルス幅によって制限され,式(2.5)で表される。
【0047】
【数9】
【0048】
一方レーダの帯域幅Bは式(2.6)で表される。
【0049】
【数10】
【0050】
つまりパルスレーダではパルス幅を小さくすると距離分解能は向上するが,必要な帯域幅が広がる。帯域幅が広がると雑音成分も多くなりD/U(desired signal to undesired signal ratio : 希望信号対干渉信号比)が低下するのでレーダの目的に応じてパルス幅を設定する必要がある。
【0051】
FM-CWレーダ
FM-CWレーダとは送信信号に周波数が一定の割合で増減するチャープ信号を使用することで,受信信号との周波数差から距離を測定するレーダである。図3にFM-CWレーダの模式図を示す。縦軸は周波数,横軸は時間であり,上部にRF帯(Radio Frequency bands : 無線周波数帯),下部にIF帯(intermediate frequency bands : 中間周波数帯)を表す。図中Transmittedは,送信信号を示し,Reflectedは反射信号を示す。
【0052】
FM-CWレーダは式(2.7)のように送受信信号間のビート周波数fから遅延時間Δtを求めることができる。
【0053】
【数11】
【0054】
よって,式(2.7)を式(2.3)に代入することで距離Rを式(2.8)のように表される。
【0055】
【数12】
【0056】
最大探知距離Rmaxはパルスレーダと同様に多次エコーによって制限されるので式(2.9)のように表すことができる。
【0057】
【数13】
【0058】
FM-CWレーダの距離分解能ΔRは周波数掃引幅に依存し,式(2.10)のように表される。
【0059】
【数14】
【0060】
距離分解能を向上させるには周波数掃引幅を大きくすればよい。また式(2.10)よりFM-CWレーダの帯域幅Bを式(2.11)のように表すことができる。
【0061】
【数15】
【0062】
したがって帯域幅を表す式は,パルスレーダと等しくなる。ただしFM-CWレーダの受信機に必要な帯域幅は送受信信号の差周波分の帯域しかないので,パルスレーダと比較して帯域幅が狭くでき,雑音を抑えることができる。
【0063】
反射強度の大きな物体付近の異物検知におけるピークの埋没
FM-CWレーダは送受信信号間のビート周波数より距離を測定することを説明した。受信信号は送信信号と遅延時間があるのみでチャープの傾きは変わらないためビート周波数は基本的に一定である。ただし図3に示すように送信信号のアップチャープとダウンチャープが切り替わった後の遅延時間の間は送受信信号のチャープの傾きが異なるため送受信信号の周波数差が変動してしまう。
【0064】
差周波の周期全体のパワーをPとするとビート周波数のピークパワーは周期中のビート周波数が検出される時間の間だけになるので式(2.12)で表される。
【0065】
【数16】
【0066】
ビート周波数が検出される時間以外では不要な信号が出力され,それはビート周波数以下の帯域に均等に検出される。ピークと比較するために帯域幅をピークの帯域幅と合わせると不要な信号のパワーは式(2.13)で表される。
【0067】
【数17】
【0068】
よってビート周波数以下の帯域におけるD/Uは式(2.14)で表される。
【0069】
【数18】
【0070】
また式(2.7)を式(2.14)に代入するとD/Uは式(2.15)で表すことができる。
【0071】
【数19】
【0072】
したがってFM-CWレーダで三角波を用いた場合,ビート周波数以下の帯域ではD/Uが信号の強度によらず一定の値に制限されてしまう。反射強度の大きな物体に反射するとビート周波数のピークパワーとともに低周波域のノイズフロアも上昇する。
【0073】
図4は2019年11月にマレーシアのクアラルンプール国際空港にて実際の航空機と直径57 cm,高さ62.5 cmで金属性の障害物をFM-CWレーダで測定した際の図面に代わるグラフである。縦軸は強度を示し,横軸は距離を示す。この例では,100 m先に航空機がある状態で53 mの地点に障害物を設置している。図4に示されるように,障害物を示すピークは航空機を示すピークより10dB以上小さく,物体によってピークパワーが変化することを示している。そのため数十cm以下のFODを検出することが求められる滑走路異物検知用FM-CWリニアセルレーダにおいて,図5に示すように航空機等の反射強度の大きい物体の手前にFODが存在するとき不要な信号に反射強度の小さいFODを示すピークが埋もれ検知できない可能性がある。
【0074】
送信時間制御法
IF帯の不要な信号を削減するため,以下二種類の送信信号に送信を停止する時間を設ける方法を提案する初めに停止時間制御を行っていない信号を送信してパワーの大きなピークを検出し,そこから必要な送信停止時間を算出,送信信号制御を行うことを想定している。検出したビート周波数より周期に対する送信信号停止時間の合計の比である送信信号停止時間率roffを定める。
【0075】
アップチャープダウンチャープ間に停止時間を追加する方法(Type A)
一つ目の方法は図6に示すように送信信号のアップチャープとダウンチャープの間に送信信号停止時間Toffを追加する方法である。この方法ではビート周波数付近の帯域の不要な信号を優先的に削減する。
【0076】
元の基本信号に対し送信信号停止時間を追加するので周期T’は増加し,式(2.16)のようになる。
【0077】
【数20】
【0078】
式(2.16)よりこの態様における送信信号停止時間率roffは式(2.17)のように表される。
【0079】
【数21】
【0080】
よって送信信号停止時間は式(2.18)のように表される。
【0081】
【数22】
【0082】
式(2.18)で求めた送信信号停止時間をアップチャープとダウンチャープの間に追加するので,送信信号停止時間の範囲は式(2.19)及び式(2.20)で求められる。
【0083】
【数23】
【0084】
周波数差が0となる瞬間の前後期間で送信を停止する方法(Type B)
二つ目の方法は図7に示すように送受信信号の周波数差が0となる瞬間を中心に信号の送信を停止する方法である。この方法では周波数0付近の帯域の不要な信号を優先的に削減する。
【0085】
この態様における送信信号停止時間率roffは,式(2.21)のように表される。
【0086】
【数24】
【0087】
よって送信信号停止時間Toffは,式(2.22)のように表される。
【0088】
【数25】
【0089】
また時刻tc0及びtc1は,ビート周波数fを用いて,それぞれ式(2.23)及び式(2.24)のように求めることができる。
【0090】
【数26】
【0091】
この態様では,時刻tc0及びtc1を中心に前後Toff/2の範囲で信号を停止するので,送信信号停止時間の範囲は,式(2.25),式(2.26)で求められる
【0092】
【数27】
【0093】
信号終端制御
上記した送信時間制御を行うと送信信号が連続波でなくなり信号終端が発生する。図8はtype Aによる信号制御を行った送信信号のアップチャープ終端付近のスペクトログラムを示したものである。この例では,1 GHzから1.5 GHzに向けて周波数掃引を行っている。信号が突然停止されたことにより25 μs付近の信号終端において所望する周波数以外のパワーが上昇している。この送信信号の不要な成分の発生を軽減するには信号終端の立ち上がり及び立ち下りにおいて信号強度を緩やかに変化させることが好ましい。
【0094】
そこで図9に示すように送信信号停止時間を設ける際,信号終端において今回は窓関数として一般的に使われるライズドコサイン(raised cosine)関数を用いて信号強度を0から最大値へ変化させる制御を行った。周期Tに対するライズドコサイン関数を使用した時間Triseの比を送信信号立ち上がり時間率rriseとする。
【0095】
【数28】
【0096】
図10に信号終端制御を行った際の送信信号のアップチャープ終端のスペクトログラムを示す。図10に示される通り,図8の場合と比較すると25 μs付近における周波数の広がりが軽減されていることがわかる。
【実施例
【0097】
図11にFM-CWレーダ模擬系の概要図を示す。信号源としてTektronixs社のAWG7122Bを用いた。信号をPath 1とPath 2の二つにわけ,経路差を設けることでそれぞれ送信信号と受信信号を模擬している。電気信号は長距離伝送による損失が大きいためAWGから出力した信号を一度光信号に変換し,分割後長さの異なる光ファイバを通すことによって経路差を設けた。このファイバ長の差を変えることにより信号の遅延時間を調節することができる。E/O変換器として光Two-Tone発生器,O/E変換器としてフォトディテクタを使用した。ただし光Two-Tone発生器より出力された光信号をフォトディテクタで再び電気信号に変換すると,出力される電気信号の周波数は光Two-Tone発生器に入力した元の電気信号の周波数を2逓倍したものとなる。最終的な送受信信号のビート周波数が120 MHzになるようPath 1とPath 2のファイバ長差を580 mとした。Path 1,Path 2においてそれぞれ電気信号に再変換された信号はミキサにより合成し,差周波をスペクトラムアナライザで測定した。なおスペクトラムアナライザの測定においてRBWは10 kHzに設定した。
【0098】
図12に実験で用いる基本となる信号のスペクトログラムを示す。中心周波数1.25 GHz,掃引周波数0.5 GHz,掃引時間50 μsのチャープ信号である。実験で用いた信号は全てMATLABにより生成したものをAWG7122Bに読み込ませ出力した。図13に基本信号を用いてFM-CW干渉模擬系にて測定したスペクトルを示す。ビート周波数を境に低周波域のノイズが上昇している。ビート周波数は118.224 MHzであった。
この基本信号に対し,初めにType A及びType Bそれぞれの制御法において送信信号停止時間率r_offを変化させスペクトルを比較する。測定を行った信号制御のパラメータを表1に示す。送信信号立ち上がり時間率r_rise図100において十分に信号終端の周波数広がりが軽減されることが確認されたr_rise=1.78×10-3に設定した。
【0099】
【表1】
【0100】
続いて送信信号立ち上がり時間率r_riseを変化させスペクトルを比較する。測定を行った信号制御のパラメータを表2に示す。信号制御法はType Aを用い,送信信号停止時間率r_offは本実験系においてType Aにてビート周波数以下の不要な信号全体が削減されるようr_off=0.107に設定した。
【0101】
【表2】
【0102】
考察
図14に基本信号及びType Aによる信号制御を行った信号によるスペクトル,図15に基本信号及びType Bによる信号制御を行った信号によるスペクトルを示す。Type A,Type B双方においてr_offの値が大きくなるにつれてビート周波数以下におけるノイズが削減される帯域幅が広がっている。送信時間制御法によりビート周波数以外の不要な信号が削減されることを確認した。
【0103】
表3に基本信号,タイプAであってroff=0.107を用いた信号,タイプBであってroff=0.12を用いた信号におけるピークとノイズのパワー及びD/Uを示す。ノイズは30~90MHz帯域の測定値を平均した。
【0104】
【表3】
【0105】
低周波域の不要な信号が削減されたことでノイズフロアが減少し,Type A,Type B双方の方法で基本信号と比べD/Uが20 dB以上改善された。
【0106】
式(2.15)を用いて基本信号におけるD/Uの理論値を求める。E/O,O/E変換をする過程でAWGから出力される信号の倍となるので周波数掃引幅は1.0 GHzである。ビート周波数は118.224 MHzでありピークの帯域幅は測定したスペクトラムアナライザのRBWより10 kHzであるので基本信号のD/U理論値は49.4536 dBと求められる。理論値と比較して実測値は7.5507 dB小さくなった。これはミキサによる損失や,差周波によらないノイズの影響を条件に入れているためであると考えられる。基本信号の理論値と比較しても送信信号時間制御によるD/U向上が認められる。
【0107】
送信信号立ち上がり時間率を変化させたときのスペクトル
図16a~図16hに送信信号立ち上がり時間率r_offを0から0.0714まで変化させたときのスペクトルを示す。r_offを増大させるにつれビート周波数前後のパワーの上昇する帯域が狭まっている。
図17に各信号におけるD/Uを示す。信号終端制御をしていないr_off=0の信号と比べr_off=1.87×10-3のときD/Uは上昇した。しかしr_offをさらに増大させるとD/Uが低下し,r_rise=0.0357の時点で信号終端制御を行わなかった場合よりD/Uは低くなっている。これは終端制御にかける時間割合が大きくなると信号強度が最大の時間が減少するためピークのパワーも減少するためである。
【0108】
表4にr_rise=0,r_rise=1.87×10-3,r_rise=0.0357の信号におけるピークとノイズのパワー及びD/Uを示す。r_rise=0からr_rise=1.87×10-3になることでノイズは0.7874 dB減少しているがr_rise=1.87×10-3からr_rise=0.0357への変化させたときは0.3554 dBの減少となり,ピークが1.2995 dB減少するためD/Uが悪化している。つまり信号の急停止による広帯域のパワー上昇はr_rise=0.0357の時点で軽減されており,以降はr_riseを大きくすることでD/Uは悪化するがビート周波数付近の周波数広がりを抑制する効果があると確認できた。
【0109】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0110】
この明細書に記載される発明は,異物探知システムに関するので,例えば,情報通信産業や交通産業において利用されうる。
【符号の説明】
【0111】
1 異物探知システム
3 レーダ送信機
5 信号源
7 レーダ受信機


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図17