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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20240328BHJP
   H01L 33/18 20100101ALI20240328BHJP
   H01L 33/46 20100101ALI20240328BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/18
H01L33/46
G09F9/33
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021041226
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141087
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】五所野尾 浩一
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-508175(JP,A)
【文献】特開2005-136006(JP,A)
【文献】特開2012-169396(JP,A)
【文献】特開2019-087746(JP,A)
【文献】特開2013-125764(JP,A)
【文献】特開2009-212308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動回路基板と、
透明基板と、
前記駆動回路基板と前記透明基板との間の半導体層と、
第1発光領域と第2発光領域と第3発光領域と、
波長変換層と、
反射層と、
を有し、
前記透明基板は、
第1面と前記第1面の反対側の第2面とを有し、
前記透明基板の前記第1面は、
前記半導体層と対面しており、
前記透明基板の前記第2面の側に、
光取り出し面を有し、
前記半導体層は、
前記透明基板側から順に、n型半導体層と、第1発光層と、第1中間層と、第2発光層と、第2中間層と、第3発光層と、p型半導体層と、が積層された構造を有し、
前記第1発光領域は、
前記n型半導体層と前記第1発光層と前記p型半導体層と前記波長変換層とを有し、
前記第2発光領域は、
前記n型半導体層と前記第1発光層と前記第1中間層と前記第2発光層と前記p型半導体層とを有し、
前記第3発光領域は、
前記n型半導体層と前記第1発光層と前記第1中間層と前記第2発光層と前記第2中間層と前記第3発光層と前記p型半導体層とを有し、
前記第3発光層の井戸層のバンドギャップは、前記第2発光層の井戸層のバンドギャップよりも小さく、
前記第2発光層の井戸層のバンドギャップは、前記第1発光層の井戸層のバンドギャップよりも小さく、
前記反射層は、
前記p型半導体層と前記駆動回路基板との間に配置されていて、
前記波長変換層は、
前記第1発光領域の前記p型半導体層と前記反射層との間に配置されていること
を含む発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記波長変換層は、
前記第2発光領域の前記p型半導体層と前記駆動回路基板との間に配置されておらず、
前記第3発光領域の前記p型半導体層と前記駆動回路基板との間に配置されていないこと
を含む発光装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の発光装置において、
前記p型半導体層と接触する透明電極を有し、
前記波長変換層は、
前記第1発光領域の前記透明電極と接触していること
を含む発光装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の発光装置において、
前記p型半導体層と接触する透明電極と、
前記透明電極と接触するpコンタクト電極と、
を有し、
前記波長変換層は、
前記第1発光領域の前記pコンタクト電極と接触していること
を含む発光装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の発光装置において、
前記n型半導体層と前記透明基板との間に、
前記第1発光層の発光波長の光を吸収する光吸収層を有すること
を含む発光装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の発光装置において、
前記透明基板の前記第2面の側に、
前記第1発光層の発光波長の光を吸収する光吸収層を有すること
を含む発光装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の発光装置において、
前記光吸収層は、
前記第1発光領域と前記第2発光領域と前記第3発光領域とにわたって形成されていること
を含む発光装置。
【請求項8】
請求項から請求項7までのいずれか1項に記載の発光装置において、
前記波長変換層の表面および側面は、前記反射層と接する、ことを含む発光装置。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載の発光装置において、
前記p型半導体層と前記波長変換層との間に配置され、前記p型半導体層および前記波長変換層と接触する透明電極と、
前記波長変換層と前記反射層との間に配置された絶縁層と、を有する、ことを含む発光装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第1中間層および前記第2中間層はノンドープである、ことを含む発光装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の発光装置において、
前記第1中間層および前記第2中間層のバンドギャップは、前記第1発光層、前記第2発光層、および前記第3発光層の井戸層のバンドギャップよりも大きい、ことを含む発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置には、マイクロLED素子を有するものがある。マイクロLED素子が発する光を必要に応じて、他の色に変換する波長変換部が用いられることがある。これにより、表示装置の各所において赤緑青の3色の発光を実現する表示装置が開発されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、駆動回路基板の上に赤色光を発する領域と、緑色光を発する領域と、青色光を発する領域と、を有する表示装置が開示されている。マイクロLED素子100が青色光を発光する。赤色光を発する領域には赤色波長変換部22が配置されており、緑色光を発する領域には緑色波長変換部23が配置されている(特許文献1の段落[0021])。赤色波長変換部22は青色光を赤色光に変換する。緑色波長変換部23は青色光を緑色光に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-152851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、成長基板9上に窒化物半導体層14を成長させ、成長基板9を駆動回路基板50に貼り合わせる(特許文献1の段落[0031])。その後、成長基板9を剥離する(特許文献1の段落[0032])。この後、赤色波長変換部22および緑色波長変換部23を形成する。
【0006】
このように、特許文献1の技術では、成長基板を剥離させる必要がある。特許文献1には、研削、研磨、プラズマエッチング、ウェットエッチング等を組み合わせることにより、成長基板を剥離する技術が開示されている(特許文献1の段落[0032])。しかし、これらの工程のうちの複数の工程を実施すると、表示装置の製造工程が複雑になる。また、タクトタイムも長くなる。また、成長基板を剥離させる場合に半導体層にダメージを与えてしまう場合がある。このため、成長基板を剥離させない発光装置を製造することが好ましい。
【0007】
しかし、成長基板を剥離させない場合には、特許文献1における波長変換部と半導体層との間に距離があいてしまう。距離があくと、隣接するサブピクセルに光が漏れる可能性がある。これにより、光の像がぼやけるおそれがある。
【0008】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、駆動回路基板と成長基板とを有するとともに波長変換部と半導体層との間に距離があくことを抑制する発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様における発光装置は、駆動回路基板と、透明基板と、駆動回路基板と透明基板との間の半導体層と、第1発光領域と第2発光領域と第3発光領域と、波長変換層と、反射層と、を有する。透明基板は、第1面と第1面の反対側の第2面とを有する。透明基板の第1面は、半導体層と対面している。透明基板の第2面の側に、光取り出し面を有する。半導体層は、透明基板側から順に、n型半導体層と、第1発光層と、第1中間層と、第2発光層と、第2中間層と、第3発光層と、p型半導体層と、が積層された構造を有する。第1発光領域は、n型半導体層と第1発光層とp型半導体層と波長変換層とを有する。第2発光領域は、n型半導体層と第1発光層と第1中間層と第2発光層とp型半導体層とを有する。第3発光領域は、n型半導体層と第1発光層と第1中間層と第2発光層と第2中間層と第3発光層とp型半導体層とを有する。第3発光層の井戸層のバンドギャップは、第2発光層の井戸層のバンドギャップよりも小さい。第2発光層の井戸層のバンドギャップは、第1発光層の井戸層のバンドギャップよりも小さい。反射層は、p型半導体層と駆動回路基板との間に配置されている。波長変換層は、第1発光領域のp型半導体層と反射層との間に配置されている。
【0010】
この発光装置は、駆動回路基板と、成長基板である透明基板と、を有する。また、波長変換層と半導体層との間に成長基板が存在しない。波長変換層と半導体層との間の距離は、十分に近い。このため、透明基板が除去されずに残留していても、光の像がぼやけるおそれはほとんどない。
【発明の効果】
【0011】
本明細書では、駆動回路基板と成長基板とを有するとともに波長変換部と半導体層との間に距離があくことを抑制する発光装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態の発光装置D1の概略構成図である。
図2】第1の実施形態の発光装置D1におけるバンド構造と電子および正孔の振舞を概念的に示す図である。
図3】第1の実施形態の発光装置D1の製造方法を説明するための図(その1)である。
図4】第1の実施形態の発光装置D1の製造方法を説明するための図(その2)である。
図5】第1の実施形態の発光装置D1の製造方法を説明するための図(その3)である。
図6】第1の実施形態の発光装置D1の製造方法を説明するための図(その4)である。
図7】第1の実施形態の発光装置D1の製造方法を説明するための図(その5)である。
図8】第1の実施形態の発光装置D1の製造方法を説明するための図(その6)である。
図9】第1の実施形態の発光装置D1の製造方法を説明するための図(その7)である。
図10】第1の実施形態の発光装置D1の製造方法を説明するための図(その8)である。
図11】第1の実施形態の発光装置D1の製造方法を説明するための図(その9)である。
図12】第1の実施形態の発光装置D1の製造方法を説明するための図(その10)である。
図13】第1の実施形態の発光装置D1の製造方法を説明するための図(その11)である。
図14】第1の実施形態の変形例における発光装置D2の概略構成図である。
図15】第1の実施形態の変形例における発光装置D3の概略構成図である。
図16】第1の実施形態の変形例における発光装置D4の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、具体的な実施形態について、発光装置を例に挙げて図を参照しつつ説明する。しかし、本明細書の技術はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、後述する発光装置の各層の積層構造および電極構造は、例示である。実施形態とは異なる積層構造であってももちろん構わない。そして、それぞれの図における各層の厚みの比は、概念的に示したものであり、実際の厚みの比を示しているわけではない。
【0014】
(第1の実施形態)
1.発光装置
図1は、第1の実施形態の発光装置D1の概略構成図である。発光装置D1は、III 族窒化物半導体から成る複数の半導体層を有する。図1に示すように、発光装置D1は、透明基板TS1と、下地層110と、光吸収層UA1と、n型コンタクト層120と、第1発光層130と、第1中間層140と、第2発光層150と、第2中間層160と、第3発光層170と、キャップ層180と、p型コンタクト層190と、透明電極TE1、TE2、TE3と、nコンタクト電極N1と、pコンタクト電極P1、P2、P3と、半田層SDN1、SDP1、SDP2、SDP3と、n電極NE1と、p電極PE1、PE2、PE3と、波長変換層WM1と、反射層RF1と、絶縁層I1、I2と、駆動回路基板MB1と、を有する。
【0015】
透明基板TS1の第1面TS1a上には、下地層110と、光吸収層UA1と、n型コンタクト層120と、第1発光層130と、第1中間層140と、第2発光層150と、第2中間層160と、第3発光層170と、キャップ層180と、p型コンタクト層190と、がこの順序で形成されている。これらの半導体層は、駆動回路基板MB1と透明基板TS1との間に位置している。nコンタクト電極N1は、n型コンタクト層120の上に形成されている。pコンタクト電極P1、P2、P3は、それぞれ、透明電極TE1、TE2、TE3の上に形成されている。
【0016】
n型コンタクト層120はn型半導体層である。p型コンタクト層190はp型半導体層である。第1発光層130と、第1中間層140と、第2発光層150と、第2中間層160と、第3発光層170とは、ノンドープの半導体層である。下地層110およびキャップ層180は、n型半導体層またはノンドープの半導体層である。ここで、ノンドープの半導体層とは、意図的にドープされていない半導体層である。
【0017】
透明基板TS1は、半導体層を成長させるための成長基板である。透明基板TS1は、第1面TS1aと第2面TS1bとを有する。第2面TS1bは第1面TS1aの反対側の面である。第1面TS1aは、半導体層を成長させるための面である。このため、第1面TS1aは、半導体層と対面している。第2面TS1bは、光取り出し面である。透明基板TS1の第1面TS1aは、例えば、c面である。透明基板TS1は、例えば、サファイア基板、AlN基板、等の異種基板である。透明基板TS1は、GaN基板であってもよい。
【0018】
下地層110は、透明基板TS1の第1面TS1aの上に形成された半導体層である。透明基板TS1と下地層110との間にはバッファ層があるとよい。
【0019】
光吸収層UA1は、第1発光層130の発光波長の光を吸収する。光吸収層UA1は、下地層110の上に形成されている。光吸収層UA1は、n型コンタクト層120と透明基板TS1との間に配置されている。例えば、第1発光層130が紫外線を発する場合には、光吸収層UA1は紫外線を吸収する。光吸収層UA1は、半導体である。光吸収層UA1は、例えば、GaNである。
【0020】
n型コンタクト層120は、nコンタクト電極N1と接触する層である。n型コンタクト層120は、透明基板TS1の第1面TS1aの上に形成されている。n型コンタクト層120は、例えば、Siをドープされたn型GaN層である。n型コンタクト層120は、n型AlGaN層であってもよい。
【0021】
第1発光層130は、電子と正孔とが再結合することにより発光する活性層である。第1発光層130は、n型コンタクト層120と第1中間層140との間の位置に位置している。第1発光層130は、井戸層と障壁層とを有する。第1発光層130の井戸層は、例えば、GaN層またはAlGaN層である。第1発光層130の障壁層は、例えば、AlGaN層である。第1発光層130の発光波長は、例えば、280nm以上440nm以下である。
【0022】
第1中間層140は、第1発光層130と第2発光層150との間に位置する層である。第1中間層140のバンドギャップは、第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170の井戸層のバンドギャップよりも大きい。第1中間層140の材質は、例えば、AlInGaNである。
【0023】
第2発光層150は、電子と正孔とが再結合することにより発光する活性層である。第2発光層150は、第1中間層140と第2中間層160との間の位置に位置している。第2発光層150は、井戸層と障壁層とを有する。第2発光層150の井戸層は、例えば、InGaN層である。第2発光層150の障壁層は、例えば、GaN層である。第2発光層150の発光波長は、例えば、440nm以上490nm以下である。
【0024】
第2中間層160は、第2発光層150と第3発光層170との間に位置する層である。第2中間層160のバンドギャップは、第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170の井戸層のバンドギャップよりも大きい。第2中間層160の材質は、例えば、AlInGaNである。
【0025】
第3発光層170は、電子と正孔とが再結合することにより発光する活性層である。第3発光層170は、第2中間層160とキャップ層180との間の位置に位置している。第3発光層170は、井戸層と障壁層とを有する。第3発光層170の井戸層は、例えば、InGaN層である。第3発光層170の障壁層は、例えば、GaN層である。第3発光層170の発光波長は、例えば、490nm以上570nm以下である。
【0026】
キャップ層180は、第3発光層170とp型コンタクト層190との間に位置する層である。キャップ層180のバンドギャップは、第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170の井戸層のバンドギャップよりも大きい。キャップ層180の材質は、例えば、AlInGaNである。
【0027】
p型コンタクト層190は、pコンタクト電極P1と電気的に接続されたp型半導体層である。p型コンタクト層190は、透明電極TE1、TE2、TE3と接触している。p型コンタクト層190は、第1中間層140の上と第2中間層160の上とキャップ層180の上とに形成されている。また、p型コンタクト層190は、第1中間層140と、第2発光層150と、第2中間層160と、第3発光層170と、キャップ層180との側面を覆っている。p型コンタクト層190は、透明基板TS1の第1面TS1aの側の半導体層を覆っている。p型コンタクト層190は、例えば、Mgをドープされたp型GaN層である。p型コンタクト層190は、p型AlGaN層であってもよい。
【0028】
透明電極TE1、TE2、TE3は、p型コンタクト層190の上に形成されている。透明電極TE1、TE2、TE3は、p型コンタクト層190に接触している。透明電極TE1、TE2、TE3の材質は、例えば、ITO、IZO、ICO、ZnO、TiO2 、NbTiO2 、TaTiO2 等の透明な導電性酸化物である。
【0029】
pコンタクト電極P1、P2、P3は、p型コンタクト層190と電気的に接続されている。pコンタクト電極P1、P2、P3は、それぞれ、透明電極TE1、TE2、TE3の上に透明電極TE1、TE2、TE3と接触した状態で形成されている。pコンタクト電極P1、P2、P3は、例えば、Ni、Au、Ag、Co、In等の金属層または合金層を含んでいてもよい。pコンタクト電極P1、P2、P3は、互いに独立した領域に形成されている。
【0030】
nコンタクト電極N1は、n型コンタクト層120と電気的に接続されている。nコンタクト電極N1は、n型コンタクト層120の上にn型コンタクト層120と接触した状態で形成されている。nコンタクト電極N1の材質は、例えば、Ni、Au、Ag、Co、In、Ti等の金属である。
【0031】
半田層SDN1、SDP1、SDP2、SDP3は、発光素子100と駆動回路基板MB1の電極とを接合するとともに電気的に接続する接合層である。半田層SDN1は、nコンタクト電極N1と、駆動回路基板MB1のn電極NE1と、を電気的に接続している。半田層SDP1は、pコンタクト電極P1と、駆動回路基板MB1のp電極PE1と、を電気的に接続している。半田層SDP2は、pコンタクト電極P2と、駆動回路基板MB1のp電極PE2と、を電気的に接続している。半田層SDP3は、pコンタクト電極P3と、駆動回路基板MB1のp電極PE3と、を電気的に接続している。
【0032】
n電極NE1は、駆動回路基板MB1の電極である。n電極NE1は、nコンタクト電極N1に電気的に接続されている。
【0033】
p電極PE1、PE2、PE3は、駆動回路基板MB1の電極である。p電極PE1、PE2、PE3は、それぞれ、半田層SDP1、SDP2、SDP3を介してpコンタクト電極P1、P2、P3に電気的に接続されている。
【0034】
波長変換層WM1は、第1発光層130から発せられる光の波長を変換する層である。例えば、第1発光層130が紫外線を発する場合には、波長変換層WM1は紫外線を吸収するとともに赤色光を発する。波長変換層WM1は、第1発光領域R1のp型コンタクト層190と駆動回路基板MB1との間に配置されている。波長変換層WM1は、絶縁層I1と反射層RF1との間にこれらに接触した状態で配置されている。波長変換層WM1は、第1発光領域R1に配置されているが、第2発光領域R2および第3発光領域R3には配置されていない。つまり、波長変換層WM1は、第2発光領域R2のp型コンタクト層190と駆動回路基板MB1との間には配置されておらず、第3発光領域R3のp型コンタクト層190と駆動回路基板MB1との間には配置されていない。
【0035】
反射層RF1は、第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170の側から駆動回路基板MB1に向かう光を反射する反射膜である。反射層RF1は、駆動回路基板MB1と波長変換層WM1との間に配置されている。反射層RF1は、金属層であってもよいし、DBR膜であってもよい。
【0036】
絶縁層I1は、半導体層の表面を覆うとともにnコンタクト電極N1、pコンタクト電極P1、P2、P3を絶縁するための層である。絶縁層I1は、波長変換層WM1または反射層RF1と透明電極TE1との間に配置されている。絶縁層I1の材質は、例えば、SiO2 である。
【0037】
絶縁層I2は、駆動回路基板MB1の表面を覆う層である。絶縁層I2は、n電極NE1、p電極PE1、PE2、PE3を互いに絶縁する。
【0038】
駆動回路基板MB1は、発光素子100を実装するための基板である。駆動回路基板MB1は、駆動回路DC1を有する。駆動回路DC1は、発光素子100のそれぞれのサブピクセルを個別に発光させる回路である。
【0039】
n型コンタクト層120は、第1発光領域R1および第2発光領域R2および第3発光領域R3にわたって共通である。発光装置D1は、n型コンタクト層120の上に一つのnコンタクト電極N1を有する。一方、発光装置D1は、サブピクセルごとに一つのpコンタクト電極P1、P2、P3を有する。
【0040】
n型コンタクト層120の膜厚は、例えば、1μm以上5μm以下である。第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170の膜厚は、例えば、6nm以上100nm以下である。第1中間層140、第2中間層160の膜厚は、例えば、2nm以上100nm以下である。キャップ層180の膜厚は、例えば、5nm以上10nm以下である。p型コンタクト層190の膜厚は、例えば、10nm以上200nm以下である。
【0041】
2.バンド構造と電子および正孔の振舞
2-1.バンド構造
図2は、第1の実施形態の発光装置D1におけるバンド構造と電子および正孔の振舞を概念的に示す図である。図2では、説明の簡単のために、各発光層は単一量子井戸構造を有するものとして描かれている。各発光層は、多重量子井戸構造であってもよい。
【0042】
図2に示すように、第3発光層170の井戸層のバンドギャップは、第2発光層150の井戸層のバンドギャップよりも小さい。第2発光層150の井戸層のバンドギャップは、第1発光層130の井戸層のバンドギャップよりも小さい。第1発光層130の井戸層のバンドギャップは、その他の障壁層等のバンドギャップよりも小さい。このため、第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170の発光波長は、互いに異なっている。
【0043】
2-2.電子および正孔の振舞
pコンタクト電極p3から注入された正孔は容易に第3発光層170に進入する。正孔は第3発光層170からほとんど出ることなく第3発光層170に留まる。第3発光層170から見た第2中間層160の障壁が十分に高いからである。
【0044】
nコンタクト電極N1から注入された電子は第1発光層130に進入する。第1発光層130から見た第1中間層140の障壁はそれほど高くない。このため、電子は第1発光層130から第2発光層150に移動しやすい。第2発光層150から見た第2中間層160の障壁はそれほど高くない。このため、電子は第2発光層150から第3発光層170に移動しやすい。第3発光層170に進入した電子はほとんど移動せずに第3発光層170に留まる。第3発光層170に隣接する障壁が十分に高いからである。
【0045】
このように、電子は第3発光層170に存在しやすく、正孔は第3発光層170に存在しやすい。つまり、電子の波動関数および正孔の波動関数は、第3発光層170の位置で大きな振幅をもつとともに、互いによく重なり合う。このため、第3発光層170で集中的に発光し、第1発光層130および第2発光層150ではそれほど発光しない。
【0046】
第3発光層170が存在しない場合には、第2発光層150で集中的に発光し、第1発光層130ではそれほど発光しない。
【0047】
3.発光領域
発光装置D1は、第1発光領域R1と、第2発光領域R2と、第3発光領域R3と、n電極領域NR1と、を有する。第1発光領域R1と、第2発光領域R2と、第3発光領域R3と、n電極領域NR1とは、透明基板TS1の第1面TS1aの上に並んで配置されている。第1発光領域R1と、第2発光領域R2と、第3発光領域R3とは、サブピクセルに相当する。
【0048】
第1発光領域R1は、例えば、赤色光を発する。第1発光領域R1は、下地層110と、光吸収層UA1と、n型コンタクト層120と、第1発光層130と、第1中間層140と、p型コンタクト層190と、波長変換層WM1と、反射層RF1と、を有する。第1発光領域R1においては、p型コンタクト層190は、第1中間層140の上に形成されている。
【0049】
第1発光領域R1は、第1中間層140を有さなくてもよい。その場合には、第1発光領域R1のp型コンタクト層190は、第1発光層130の上に形成されている。
【0050】
第1発光領域R1では、第1発光層130から発せられた紫外線が、波長変換層WM1により赤色光に変換される。赤色光は、反射層RF1により反射されて透明基板TS1の第2面TS1bから発せられる。
【0051】
第2発光領域R2は、例えば、青色光を発する。第2発光領域R2は、下地層110と、光吸収層UA1と、n型コンタクト層120と、第1発光層130と、第1中間層140と、第2発光層150と、第2中間層160と、p型コンタクト層190と、反射層RF1と、を有する。第2発光領域R2においては、p型コンタクト層190は、第2中間層160の上に形成されている。
【0052】
第2発光領域R2は、第2中間層160を有さなくてもよい。その場合には、第2発光領域R2のp型コンタクト層190は、第2発光層150の上に形成されている。
【0053】
第3発光領域R3は、例えば、緑色光を発する。第3発光領域R3は、下地層110と、光吸収層UA1と、n型コンタクト層120と、第1発光層130と、第1中間層140と、第2発光層150と、第2中間層160と、第3発光層170と、キャップ層180と、p型コンタクト層190と、反射層RF1と、を有する。第3発光領域R3においては、p型コンタクト層190は、キャップ層180の上に形成されている。
【0054】
第3発光領域R3は、キャップ層180を有さなくてもよい。その場合には、第3発光領域R3のp型コンタクト層190は、第3発光層170の上に形成されている。
【0055】
p型コンタクト層190は、連続した層である。第1発光領域R1と第2発光領域R2と第3発光領域R3とにわたってつながった状態で形成されている。第1発光領域R1では、p型コンタクト層190は、第1発光層130または第1中間層140に接触している。第2発光領域R2では、p型コンタクト層190は、第2発光層150または第2中間層160に接触している。第3発光領域R3では、p型コンタクト層190は、第3発光層170またはキャップ層180に接触している。
【0056】
光吸収層UA1は、第1発光領域R1と第2発光領域R2と第3発光領域とにわたって形成されている。このため、第1発光層130が発する紫外線は、光吸収層UA1により吸収される。
【0057】
4.半導体発光素子の製造方法
4-1.半導体層形成工程
図3に示すように、透明基板TS1の第1面TS1aの上に半導体層をエピタキシャル成長させる。その際には、MOCVD法等の気相成長法を用いればよい。透明基板TS1の第1面TS1aの上に下地層110、光吸収層UA1、n型コンタクト層120、第1発光層130、第1中間層140、第2発光層150、第2中間層160、第3発光層170、キャップ層180をこの順序で形成する。
【0058】
4-2.領域形成工程
図4に示すように、半導体層に凹部U1、U2を形成する。そのために、マスクを用いて半導体層をエッチングすればよい。これにより、第1発光領域R1および第2発光領域R2および第3発光領域R3に領域を分ける。
【0059】
4-3.p型半導体層形成工程
図5に示すように、半導体層の上にp型コンタクト層190を成長させる。
【0060】
4-4.透明電極形成工程
図6に示すように、p型コンタクト層190の上に透明電極TE1、TE2、TE3を形成する。
【0061】
4-5.メサ形成工程
図7に示すように、凹部U3を形成する。凹部U3には、n型コンタクト層120が露出している。
【0062】
4-6.絶縁層形成工程
図8に示すように、半導体層および透明電極TE1、TE2、TE3の上に絶縁層I1を形成する。
【0063】
4-7.波長変換層貼り付け工程
図9に示すように、波長変換層WM1を一面に形成した基板SB1を絶縁層I1に貼り付ける。基板SB1は、犠牲層SF1と、波長変換層WM1と、を有する。
【0064】
4-8.基板除去工程
図10に示すように、波長変換層WM1から基板SB1を除去する。
【0065】
4-9.波長変換層成形工程
図11に示すように、波長変換層WM1の一部を除去して、第1発光領域R1の箇所のみ残留させる。このために、マスクを用いたエッチングを実施する。
【0066】
4-10.反射層形成工程
図12に示すように、波長変換層WM1および絶縁層I1の上に反射層RF1を形成する。そして、図12に示すように、凹部を形成する。
【0067】
4-11.電極形成工程
図13に示すように、凹部にnコンタクト電極N1、pコンタクト電極P1、P2、P3を形成する。これらの電極を形成されたものが発光素子100である。
【0068】
4-12.実装工程
駆動回路基板MB1に発光素子100を実装する。そのために、半田を用いればよい。
【0069】
5.第1の実施形態の効果
第1の実施形態の発光装置D1は、第1発光層130と、第2発光層150と、第3発光層170と、波長変換層WM1と、を有する。第1発光層130は紫外線を発し、波長変換層WM1はその紫外線を赤色光に変換する。また、第2発光層150が青色光を発し、第3発光層170が緑色光を発する。このため、発光装置D1のサブピクセルは、赤色光、緑色光、青色光の3色の光を発することができる。そして、反射層RF1が、これらの光を光取り出し面の側に反射する。
【0070】
6.変形例
6-1.波長変換層とp電極
図14は、第1の実施形態の変形例における発光装置D2の概略構成図である。図14に示すように、発光装置D2は、波長変換層WM2を有する。波長変換層WM2は、反射層RF1に接触するとともに絶縁層I1に接触している。波長変換層WM2は、pコンタクト電極P1に接触している。波長変換層WM2は、第1発光層130から発せられる紫外線を赤色光に変換することができる。
【0071】
6-2.波長変換層の位置
図15は、第1の実施形態の変形例における発光装置D3の概略構成図である。図15に示すように、発光装置D3は、波長変換層WM3を有する。波長変換層WM3は、透明電極TE1の上に透明電極TE1に接触して形成されている。波長変換層WM3は、絶縁層I1に接触している。また、波長変換層WM3は、反射層RF1に接触していない。この場合であっても、波長変換層WM3は、第1発光層130から発せられる紫外線を赤色光に変換することができる。また、透明電極TE1を厚くしてもよい。
【0072】
6-3.光吸収層
図16は、第1の実施形態の変形例における発光装置D4の概略構成図である。図16に示すように、発光装置D4は、光吸収層UA2を有する。光吸収層UA2は、透明基板TS1の第2面TS1bの上に形成されている。すなわち、光吸収層UA2は、透明基板TS1の第2面TS1bの側に形成されている。光吸収層UA2は、紫外線を吸収する。光吸収層UA2は、III 族窒化物半導体であってもよいし、それ以外の紫外線吸収層であってもよい。この場合であっても、光吸収層UA2は、紫外線が発光装置D4の外部に出射することを抑制する。発光装置D4は、透明基板TS1の第2面TS1bの側に光取り出し面を有する。
【0073】
6-4.組成
第1発光層130、第2発光層150、第3発光層170の障壁層はGaN層以外のAlInGaN層であってもよい。
【0074】
6-5.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。
【0075】
(付記)
第1の態様における発光装置は、駆動回路基板と、透明基板と、駆動回路基板と透明基板との間の半導体層と、第1発光領域と第2発光領域と第3発光領域と、波長変換層と、を有する。透明基板は、第1面と第1面の反対側の第2面とを有する。透明基板の第1面は、半導体層と対面している。透明基板の第2面の側に、光取り出し面を有する。半導体層は、n型半導体層と、第1発光層と、第1中間層と、第2発光層と、第2中間層と、第3発光層と、p型半導体層と、を有する。第1発光領域は、n型半導体層と第1発光層とp型半導体層と波長変換層とを有する。第2発光領域は、n型半導体層と第1発光層と第1中間層と第2発光層とp型半導体層とを有する。第3発光領域は、n型半導体層と第1発光層と第1中間層と第2発光層と第2中間層と第3発光層とp型半導体層とを有する。第3発光層の井戸層のバンドギャップは、第2発光層の井戸層のバンドギャップよりも小さい。第2発光層の井戸層のバンドギャップは、第1発光層の井戸層のバンドギャップよりも小さい。波長変換層は、第1発光領域のp型半導体層と駆動回路基板との間に配置されている。
【0076】
第2の態様における発光装置においては、波長変換層は、第2発光領域のp型半導体層と駆動回路基板との間に配置されておらず、第3発光領域のp型半導体層と駆動回路基板との間に配置されていない。
【0077】
第3の態様における発光装置は、p型半導体層と接触する透明電極を有する。波長変換層は、第1発光領域の透明電極と接触している。
【0078】
第4の態様における発光装置は、p型半導体層と接触する透明電極と、透明電極と接触するpコンタクト電極と、を有する。波長変換層は、第1発光領域のpコンタクト電極と接触している。
【0079】
第5の態様における発光装置は、n型半導体層と透明基板との間に、第1発光層の発光波長の光を吸収する光吸収層を有する。
【0080】
第6の態様における発光装置は、透明基板の第2面の側に、第1発光層の発光波長の光を吸収する光吸収層を有する。
【0081】
第7の態様における発光装置においては、光吸収層は、第1発光領域と第2発光領域と第3発光領域とにわたって形成されている。
【0082】
第8の態様における発光装置においては、光吸収層は、半導体である。
【0083】
第9の態様における発光装置においては、波長変換層は、紫外光を赤色光に変換する。
【0084】
第10の態様における発光装置においては、波長変換層は、波長変換層は、半導体である。
【0085】
第11の態様における発光装置は、波長変換層と駆動回路基板との間に反射層を有する。
【符号の説明】
【0086】
D1…発光装置
100…発光素子
110…下地層
UA1…光吸収層
120…n型コンタクト層
130…第1発光層
140…第1中間層
150…第2発光層
160…第2中間層
170…第3発光層
180…キャップ層
190…p型コンタクト層
TE1、TE2、TE3…透明電極
P1、P2、P3…pコンタクト電極
N1…nコンタクト電極
R1…第1発光領域
R2…第2発光領域
R3…第3発光領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16