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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20240328BHJP
   H05B 3/36 20060101ALI20240328BHJP
   H05B 3/18 20060101ALI20240328BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B62D1/06
H05B3/36
H05B3/18
H05B3/20 345
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021083471
(22)【出願日】2021-05-17
(65)【公開番号】P2022176829
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】冨田 彰
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-006750(JP,A)
【文献】特開2016-016790(JP,A)
【文献】特開2015-027840(JP,A)
【文献】実開昭60-157365(JP,U)
【文献】特開2015-189294(JP,A)
【文献】実開平07-008992(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00 - 1/28
H05B 3/20 - 3/38
H05B 3/84 - 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵中心軸を中心として回転操作可能な把持部を備え、
該把持部が、芯材を被覆する被覆層と外表面側の表皮層との間に、可撓性を有したシート状の基材にヒータ線を保持させてなるヒータエレメント、を配設させて構成されるとともに、
前記ヒータエレメントが、前記把持部における前記操舵中心軸回りの周方向に沿う帯状のシート体として、前記被覆層の外周面側に貼着されて配設される構成のステアリングホイールであって、
前記ヒータエレメントの前記シート体が、短手方向に沿う切れ目を設けてなるスリットを、長手方向に並設させて、形成されており、
前記シート体の前記基材が、前記被覆層側の裏側基材と前記表皮層側の表側基材との2層から構成されるとともに、前記裏側基材と前記表側基材とが前記ヒータ線を間にして相互に接着されることにより前記ヒータ線を保持する構成とし、
前記スリットが、前記表側基材に配設されており、
前記裏側基材と前記表側基材とが、発泡ポリウレタンから形成されるとともに、前記表側基材が前記裏側基材より密度を高くして配設されていることを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
前記表側基材前記表皮層側である表面側に、前記スリット配設さていることを特徴とする請求項に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記表側基材前記ヒータ線側である裏面側に、前記短手方向に沿う切れ目を設けてなるスリットが前記長手方向に並設さていることを特徴とする請求項に記載のステアリングホイール。
【請求項4】
前記表側基材における表面側のスリットと裏面側のスリットとは、前記ヒータエレメントを平らに展開した平面視の状態で、重ならないずれた位置に、配設されていることを特徴とする請求項に記載のステアリングホイール。
【請求項5】
前記スリットは、前記表側基材の表裏を貫通せずに、配設されていることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が操舵時に把持する環状の把持部に、把持部を昇温可能なヒータエレメントを設けて構成されるステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のステアリングホイールでは、操舵中心軸を中心として回転操作可能な環状の把持部を備え、把持部には、芯材を被覆する被覆層と外表面側の皮革等からなる表皮層との間に、可撓性を有したシート状の基材にヒータ線を保持させてなるヒータエレメント、を配設させて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。このヒータエレメントは、把持部における操舵中心軸回りの周方向に沿う帯状のシート体として、表皮層を形成する前に、被覆層の外周面側に貼着させて配設する構成としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-6750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のステアリングホイールにおいて、ヒータエレメントを構成する帯状のシート体が、伸び難ければ、被覆層の表面側に貼着し難く、また、長さ寸法に余裕も持たせれば、把持部における操舵中心軸側となる内周側に、シワが発生する等して、表皮層の感触を悪くする事態を招いてしまう。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、ヒータエレメントの周囲に表皮層が設けられても、感触の低下を抑制できるステアリングホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るステアリングホイールでは、操舵中心軸を中心として回転操作可能な環状の把持部を備え、
該把持部が、芯材を被覆する被覆層と外表面側の表皮層との間に、可撓性を有したシート状の基材にヒータ線を保持させてなるヒータエレメント、を配設させて構成されるとともに、
前記ヒータエレメントが、前記把持部における前記操舵中心軸回りの周方向に沿う帯状のシート体として、前記被覆層の外周面側に貼着されて配設される構成のステアリングホイールであって、
前記ヒータエレメントの前記シート体が、短手方向に沿う切れ目を設けてなるスリットを、長手方向に並設させて、形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るステアリングホイールでは、ヒータエレメントの帯状のシート体を、被覆層の外周面側に貼着させるように、長手方向に伸ばす際、各スリットがスリット内の対向壁相互を広げるように開口して、容易に、長手方向に伸びて、シワを生じさせずに、被覆層の外周面側に貼着させることができる。そのため、その後に表皮層を配設させても、シワ無く、円滑に、表皮層が配設される。
【0008】
したがって、本発明に係るステアリングホイールでは、ヒータエレメントの周囲に表皮層が設けられても、ヒータエレメントにシワが生じ難いことから、シワ無く配設できて、感触の低下を抑制できる。
【0009】
そして、本発明に係るステアリングホイールでは、前記シート体の前記基材が、前記被覆層側の裏側基材と前記表皮層側の表側基材との2層から構成されるとともに、
前記裏側基材と前記表側基材とが、前記ヒータ線を間にして相互に接着されることにより、前記ヒータ線を保持する構成とし、
前記スリットが、前記表側基材に配設されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、ヒータエレメントのヒータ線が、相互に接着される裏側基材と表側基材との間に配設されることから、表皮層側への凸形状の出っ張りが抑制されて、表皮層の表面側の平滑化に寄与できる。また、相互に接着される裏側基材と表側基材との間で、ヒータ線が保持される状態となることから、被覆層の表面側への貼着時におけるヒータ線の配置位置を、安定させることができる。勿論、スリットは、ヒータエレメントの表面側の表側基材に設けられていることから、被覆層の外表面側に貼着させる際、好適に、ヒータエレメントに伸びを発生させることができる。
【0011】
この場合、前記裏側基材と前記表側基材とが、発泡ポリウレタンから形成されるとともに、前記表側基材が、前記裏側基材より、密度を高くして配設されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、ヒータエレメントにおける表皮層に近い側の表側基材が、密度を高くして、熱伝導率を良好にできることから、ヒータ線の発熱時の熱を表皮層側に伝導させ易くなり、逆に、裏側基材が、密度を低くして、断熱性を向上させることとなり、芯材側への熱伝導を抑制して、通電時の表皮層側での昇温を効率的に行える。また、ヒータエレメントが、ヒータ線を間にした裏側基材と表側基材との二層の発泡ポリウレタン製のシートから形成されることから、クッション性が向上し、把持部の表皮層を把持した際に、弾性を有した好適な触感を確保できる。
【0013】
また、この場合、前記表側基材が、前記表皮層側の表面側に、前記スリットを配設させていてもよいし、さらに、前記ヒータ線側の裏面側にも、前記ヒータエレメントの前記帯状素材における短手方向に沿う切れ目を設けてなるスリットを、長手方向に並設させていれば、一層、ヒータエレメントの伸びを確保できる。
【0014】
さらに、前記表側基材における表面側のスリットと裏面側のスリットとは、前記ヒータエレメントを平らに展開した平面視の状態で、重ならないずれた位置に、配設されていることが望ましい。
【0015】
このような構成では、表側基材の表面側と裏面側とのスリットが、厚さ方向で重ならないことから、表側基材の伸びが、長手方向の各部位で、均等に分散されて、厚さを均等にすることができることから、表皮層の表面側の平滑化に寄与できて、把持部の外観と触感を良好にすることに寄与できる。
【0016】
また、前記スリットは、前記表側基材の表裏を貫通せずに、配設されていることが望ましい。
【0017】
表側基材の伸びに関して、表裏を貫通するようなスリットであれば、スリットの配設部位で、表裏を貫通する開口を明けて伸びて、厚さを実質的に無くすような事態を生じさせるが、表裏を貫通しないスリットであれば、厚さを実質的に無くすような事態を生じさせず、厚さの均等化を確保し易いことから、表皮層の表面側の平滑化に寄与でき、把持部の外観と触感の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態のヒータエレメントを配設したステアリングホイールを示す概略平面図である。
図2】実施形態のヒータエレメントを配設したステアリングホイールの把持部の断面図であり、図1のII-II部位に対応する。
図3】実施形態のヒータエレメントの平面図である。
図4】実施形態のヒータエレメントの断面図であり、図3のIV-IV部位に対応する。
図5】実施形態のヒータエレメントの断面図であり、図3のV-V部位に対応する。
図6】実施形態のヒータエレメントの製造工程を説明する図であり、図4に示す断面部位に対応する。
図7】実施形態のヒータエレメントの製造工程を説明する図であり、図5に示す断面部位に対応する。
図8】実施形態のヒータエレメントを被覆層の外周面における外側面側に貼着する状態を説明する図である。
図9】実施形態のヒータエレメントを被覆層の外周面における内側面側に貼着する状態を説明する図である。
図10】実施形態のヒータエレメントの変形例を示す平面図と断面図である。
図11】実施形態のステアリングホイールの変形例の把持部の断面図と部分拡大断面図である。
図12図11に示すステアリングホイールのヒータエレメントの断面図である。
図13図12に示すヒータエレメントの変形例である。
図14】実施形態のヒータエレメントの他の変形例を示す断面図である。
図15図14に示すヒータエレメントの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のステアリングホイールWは、図1に示すように、操舵時に操舵中心軸COを中心として回転操舵可能な略円環状の把持部Rと、把持部Rの略中央に位置する操舵中心軸CO側のボス部Bと、把持部Rとボス部Bとを連結するスポーク部S(L,R,B)と、を備えて構成されている。スポーク部Sは、ボス部Bから左右両側に延びるスポーク部SL,SRと、ボス部Bから後側に延びるスポーク部SBと、を備えている。また、ステアリングホイールWは、ボス部Bの上部側に配設される二点鎖線で示したエアバッグ装置45と、ステアリングホイール本体1と、ボス部Bの下部側を覆う図示しないロアカバーと、を備えて構成されている。
【0020】
さらに、ステアリングホイール本体1は、把持部R、ボス部B、及び、スポーク部Sを連結するアルミニウム合金等の金属材からなる芯材3、を備えて構成されている。芯材3は、把持部Rに配設される把持芯材部4と、ボス部Bに配設されるボス芯材部5と、把持芯材部4とボス芯材部5とを連結するように、スポーク部S(L,R,B)に配設されるスポーク芯材部6(L,R),7と、を備えて構成されている。ボス芯材部5は、操舵中心軸COを形成する車両の図示しないステアリングシャフトと結合される鋼製のボス5aを配設させている。また、スポーク芯材部6は、左右のスポーク部SL,SRに配設されるスポーク芯材部6L,6Rと、後部側のスポーク部SBに配設されて、ボス芯材部5側で左右に分岐し、そして、把持芯材部4側で結合されるような2本のスポーク芯材部7,7と、から構成されている。
【0021】
把持部Rに配設される把持芯材部4の周囲には、図2に示すように、発泡ポリウレタンからなる被覆層10が配設されるとともに、把持部Rの表面側に、皮革41からなる表皮層40が配設され、さらに、被覆層10と表皮層40との間には、把持部Rを昇温可能なヒータエレメント14が配設されている。
【0022】
ヒータエレメント14は、図3~5に示すように、可撓性を有したシート状の基材19にヒータ線35を保持させて、形成されるもので、把持部Rにおける操舵中心軸CO回りの周方向に沿う帯状のシート体16から構成されている。実施形態の場合、ヒータエレメント14は、把持部Rの左右の片側ずつに配設され、ステアリングホイールW全体では、2枚、使用される。実施形態の場合、図1に示す右方側のヒータエレメント14Rと左方側のヒータエレメント14Lとは、左右対称形としている点が異なるだけであることから、図3に示す右方側のヒータエレメント14(R)について説明して、左方側のヒータエレメント14(L)については説明を省略する。
【0023】
そして、ヒータエレメント14(R)を形成するシート体16の基材19は、被覆層10側の裏側基材20と表皮層40側の表側基材23との2層から構成されるとともに、裏側基材20と表側基材23とは、ヒータ線35を間にして相互に接着されることにより、ヒータ線35を挟持するように保持する構成としている(図6,7参照)。
【0024】
なお、ヒータ線35は、実施形態の場合、外径約0.2mm程度の芳香族ポリアミド繊維束からなるヒータ芯の外周に、素線径0.08mm程度の錫銅合金線からなる導体素線を複数本(7本程度)、引き揃え、ピッチ1.00mm程度で螺旋状に巻装して構成されている。実施形態のヒータ線35は、その線径を0.37mm程度としている。そして、ヒータ線35は、図3に示すように、一筆書き状の所定のパターンで、基材19の裏側基材20と表側基材23との間に保持されて、図示しない温度制御装置に接続されるリード線36に結線されている。
【0025】
また、裏側基材20と表側基材23とは、共に、発泡ポリウレタンのシート材から形成されて、裏側基材20と表側基材23の厚さ寸法tA1,tB1は、共に、0.5~0.8mmの範囲内の0.7mmとしている(図6,7参照)。但し、裏側基材20と表側基材23との密度に関しては、表側基材23側の密度が、裏側基材20の密度より、高くされている。具体的には、裏側基材20の密度は、0.1~0.3g/cm3程度の範囲内の0.2g/cm3としている。表側基材23の密度は、0.3~0.7g/cm3程度の範囲内の0.5g/cm3としている。
【0026】
さらに、実施形態の場合、図7,8に示すように、裏側基材20は、厚さ寸法tA0を3~4mm程度の3.5mmとしていたシート状の予備裏側部材21を、1/5程度の厚さ寸法tA1の0.7mm、とするように圧縮し、表側基材23は、厚さ寸法tB0を5~10mm程度の8mmとしていたシート状の予備表側部材24を、1/12程度の厚さ寸法tB1の0.7mmとするように圧縮して、形成されている。
【0027】
そして、ヒータエレメント14は、同等の厚さ寸法tA1,tB1とした裏側基材20と表側基材23とを、所定配線パターンとした状態のヒータ線35を間にして、粘着剤31を利用して、相互に接着させることにより、形成されている。
【0028】
また、表側基材23においては、圧縮前の予備表側部材24には、幅方向(短手方向)WDに沿って、複数のスリット26,28が表裏に配設されている。表皮層40に近い表面側のスリット26は、深さ寸法dfを4mm程度として、ピッチfpを10~20mm程度、ヒータ線35に近い側の裏面側のスリット28は、深さ寸法dbを2mm程度として、ピッチbpを10~20mm程度としている。
【0029】
各スリット26,28は、底部26a,28aを反対側の裏面側や表面側まで到達させておらず、予備表側部材24の長手方向に沿って連なる連結部27,29を残して配設されている。
【0030】
さらに、表側基材23における表面側のスリット26と裏面側のスリット28とは、図3に示すように、ヒータエレメント14を平らに展開した平面視の状態で、重ならないずれた位置に、配設されている。
【0031】
そして、これらのスリット26,28を設けた予備表側部材24を圧縮して、厚さ寸法tB0を厚さ寸法tB1まで圧縮して表側基材23を形成し、また、厚さ寸法tA0を厚さ寸法tA1まで圧縮するように、予備裏側部材21を圧縮して、裏側基材20を形成し、ついで、既述したように、裏側基材20と表側基材23とを、所定配線パターンとした状態のヒータ線35を間にして、粘着剤31を利用して、相互に接着させれば、ヒータエレメント14を製造することができる。
【0032】
また、製造したヒータエレメント14は、幅方向(短手方向)WDの側縁16c,16d側が、被覆層10に巻き付ける際、外周面10aにおける操舵中心軸COに近い内側面10c側に配置されて、シワを発生し易いことから、予め、側縁16c,16d側に、三角形状の切欠き17を設けておく。
【0033】
さらに、ヒータエレメント14は、把持部Rの被覆層10の外周方向の長さ寸法CL(図示せず)に対して、5%程度伸ばして、貼着させる構成としている。すなわち、各ヒータエレメント14の長さ寸法HLと被覆層10の外周方向の長さ寸法CLとの関係は、長さ寸法CL≒長さ寸法HL×2(左右2本分)×1.05(105%)となる。
【0034】
実施形態のステアリングホイールWの製造では、ステアリングホイール本体1における芯金2の把持芯材部4と把持芯材部4近傍のスポーク芯材部6,7との周囲に、被覆層10を設けた後、被覆層10の表面側にヒータエレメント14を貼着させる。その際、図8のA,Bに示すように、各ヒータエレメント14の端縁16a,16bを引っ張りつつ、被覆層10の外周面10aに貼着する。その際、各ヒータエレメント14の表側基材23の表裏にスリット26,28が配設されていることから、各スリット26,28が、それぞれの対向壁26b,26b相互や対向壁28b,28b相互を離して、開口26c,28cを広げるように変形して、ヒータエレメント14のシート体16を、外周面10aの操舵中心軸COから離れた外側面10b側の長い長さ寸法CLに対応するように、長手方向LDに伸ばすことができて、把持部Rの被覆層10の外周面10aに、シワを生じさせずに、貼着することができる。同時に、ヒータエレメント14の側縁16c,16d側においても、図9のA,Bに示すように、切欠き17を狭める状態として、被覆層10の外周面10aにおける操舵中心軸COに近い内側面10c側に、シワを生じさせずに、貼着することができる。
【0035】
その後は、ヒータエレメント14の外周面側に、粘着剤38を利用して、表皮層40として皮革41を巻き付ければ(図2参照)、ステアリングホイール本体1を製造でき、その後は、ボス部Bの下部側に図示しないロアカバーを取り付けつつ、ボス部Bのボス5aを、車両のステアリングシャフトに締結し、ボス部Bの上部側に、エアバッグ装置45を取り付ければ、ステアリングホイールWを組み立てることができるとともに、ステアリングホイールWを車両に搭載することができる。なお、エアバッグ装置45を取り付ける際には、ヒータエレメント14のリード線36を、運転者の把持を検知可能な図示しない検知回路から伸びるリード線に結線させておく。
【0036】
車両に搭載されたステアリングホイールWでは、図示しない温度制御装置の制御により、ヒータエレメント14のヒータ線35に通電されて、把持部Rが所定温度に昇温されることとなる。
【0037】
そして、実施形態のステアリングホイールWでは、ヒータエレメント14の帯状のシート体16を、被覆層10の外周面10a側に貼着させるように、長手方向LDに伸ばす際、図8のA,Bに示すように、各スリット26,28がスリット26,28内の対向壁26b,26b相互や対向壁28b,28b相互を広げるように開口して、容易に、長手方向LDに伸びて、シワを生じさせずに、被覆層10の外周面10a側に貼着させることができる。そのため、その後に表皮層40を配設させても、シワ無く、円滑に、表皮層40が配設される。
【0038】
したがって、実施形態のステアリングホイールWでは、ヒータエレメント14の周囲に表皮層40が設けられても、ヒータエレメント14にシワが生じ難いことから、シワ無く配設できて、感触の低下を抑制できる。
【0039】
そして、実施形態のステアリングホイールWでは、シート体16の基材19が、被覆層10側の裏側基材20と表皮層40側の表側基材23との2層から構成されるとともに、裏側基材20と表側基材23とが、ヒータ線35を間にして相互に接着されることにより、ヒータ線35を保持する構成とし、スリット26,28が、表側基材23に配設されている。
【0040】
そのため、実施形態では、ヒータエレメント14のヒータ線35が、相互に接着される裏側基材20と表側基材23との間に配設されることから、表皮層40側への凸形状の出っ張りが抑制されて、表皮層40の表面側の平滑化に寄与できる。また、相互に接着される裏側基材20と表側基材23との間で、ヒータ線35が保持される状態となることから、被覆層10の表面側への貼着時におけるヒータ線35の配置位置を、安定させることができる。勿論、スリット26,28は、ヒータエレメント14の表面側の表側基材23に設けられていることから、被覆層10の外周面10a側に貼着させる際、好適に、ヒータエレメント14に伸びを発生させることができる。
【0041】
さらに、実施形態では、裏側基材20と表側基材23とが、発泡ポリウレタンから形成されるとともに、表側基材23が、裏側基材20より、密度を高くして配設されている。すなわち、実施形態では、裏側基材20の密度は、0.1~0.3g/cm3程度の範囲内の0.2g/cm3としている。表側基材23の密度は、0.3~0.7g/cm3程度の範囲内の0.5g/cm3としている。
【0042】
そのため、実施形態では、ヒータエレメント14における表皮層40に近い側の表側基材23が、密度を高くして、熱伝導率を良好にできることから、ヒータ線35の発熱時の熱を表皮層40側に伝導させ易くなり、逆に、裏側基材20が、密度を低くして、断熱性を向上させることとなり、芯材3(把持芯材部4)側への熱伝導を抑制して、通電時の表皮層40側での昇温を効率的に行える。また、ヒータエレメント14が、ヒータ線35を間にした裏側基材20と表側基材23との二層の発泡ポリウレタン製のシートから形成されることから、クッション性が向上し、把持部Rの表皮層40を把持した際に、弾性を有した好適な触感を確保できる。
【0043】
また、実施形態では、表側基材23が、表皮層40側の表面側のスリット26だけでなく、ヒータ線35側の裏面側にも、ヒータエレメント14の帯状素材(シート体)16における短手方向WDに沿う切れ目を設けてなるスリット28を、長手方向LDに並設させており、一層、ヒータエレメント14の伸びを確保できる。
【0044】
さらに実施形態では、表側基材23における表面側のスリット26と裏面側のスリット28とは、ヒータエレメント14を平らに展開した平面視の状態で、重ならないずれた位置に、配設されている(図3参照)。
【0045】
このような構成では、表側基材23の表面側と裏面側とのスリット26,28が、厚さ方向で重ならないことから、表側基材23の伸びが、長手方向の各部位で、均等に分散されて、厚さを均等にすることができることから、表皮層40の表面側の平滑化に寄与できて、把持部Rの外観と触感を良好にすることに寄与できる。
【0046】
また、スリット26,28は、表側基材23の表裏を貫通せずに、配設されている。
【0047】
そのため、表側基材23の伸びに関して、表裏を貫通するようなスリットであれば、スリットの配設部位で、表裏を貫通する開口を明けて伸びて、厚さを実質的に無くすような事態を生じさせるが、表裏を貫通しないスリット26,28であれば、厚さを実質的に無くすような事態を生じさせず、厚さの均等化を確保し易いことから、表皮層40の表面側の平滑化に寄与でき、把持部Rの外観と触感の低下を防止できる。
【0048】
なお、表側基材に設けるスリットとしては、図10に示すヒータエレメント14Aのシート体16Aにおける表側基材23Aのように、表面側だけに、帯状のシート体16Aの短手方向WDに沿う切れ目を設けてなるスリット26を、長手方向LDに並設させて、形成してもよい。
【0049】
このヒータエレメント14Aでも、被覆層10の外周面10a側に貼着させるように(図8参照)、長手方向Aに伸ばす際、各スリット26がスリット26内の対向壁26b,26b相互を広げるように開口して、容易に、長手方向LDに伸びて、シワを生じさせずに、被覆層10の外周面10a側に貼着させることができる。そのため、その後に表皮層40を配設させても、シワ無く、円滑に、表皮層40が配設されることとなる。
【0050】
また、基材の短手方向に沿う切れ目から構成されて、基材の長手方向に沿って並設されるスリットを設けて構成されるヒータエレメントでは、図11に示すように、発泡ポリウレタン製の基材19Bを一層として、基材19Bの裏面側にヒータ線35を接着させて保持させて構成されるヒータエレメント14Bとしてもよい。なお、基材19Bは、図12に示すように、図10に示す表側基材23Aだけを使用した一層タイプとしており、表面側に並設されるスリット26を備えて構成されている。
【0051】
このヒータエレメント14Bでも、ヒータエレメント14Bの帯状のシート体16Bを、被覆層10の外周面10a側に貼着させるように、長手方向に伸ばす際、各スリット26がスリット26内の対向壁26b,26b相互を広げるように開口して(図8参照)、容易に、長手方向に伸びて、シワを生じさせずに、被覆層10の外周面10a側に貼着させることができる。そのため、その後に表皮層40を配設させても、シワ無く、円滑に、表皮層40が配設される。
【0052】
なお、基材19Bとしては、図13に示すように、裏面側にもスリット28を設けてもよい。さらに、ヒータエレメント14Bのシート体16Bの伸びを確保できれば、図13の括弧書きのように、裏面側のスリット28だけを配設させてもよい。
【0053】
また、実施形態のヒータエレメント14では、表側基材23にだけ、スリット26,28を設けたが、図14に示すヒータエレメント14Cのシート材16Cのように、裏側基材20にも、スリット26,28を設けてもよい。スリット26,28は、表側基材23に設けたスリット26,28と同様のものである。さらに、裏側基材20にスリット26,28を設けて、シート体16の伸びを確保できれば、図15に示すヒータエレメント14Dのシート体16Dのように、裏側基材23だけに、スリット26,28を設けてもよい。
【0054】
なお、裏側基材23にスリット26,28を設ける場合、どちらか一方のスリット26若しくはスリット28だけを設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0055】
3…芯材、4…把持芯材部、10…被覆層、10a…外周面、14,14A,14B,14C,14D…ヒータエレメント、16,16A,16B,16C,16D…シート体、19,19A,19B…基材、20…裏側基材、23,23A…表側基材、26…(表面側)スリット、28…(裏面側)スリット、35…ヒータ線、40…表皮層、
R…把持部、CO…操舵中心軸、WD…短手方向、LD…長手方向、W…ステアリングホイール。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図10
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図15