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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】キノリン系化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20240328BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240328BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
C07D401/04 CSP
A61K31/496
A61P35/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022547767
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2021076918
(87)【国際公開番号】W WO2021164742
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】202010106990.2
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110065553.5
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522310971
【氏名又は名称】広州白雲山医薬集団股▲フン▼有限公司白雲山制薬総廠
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】王健松
(72)【発明者】
【氏名】張楊
(72)【発明者】
【氏名】羅志波
(72)【発明者】
【氏名】黄栄新
(72)【発明者】
【氏名】孫継奎
(72)【発明者】
【氏名】李▲ショウ▼
(72)【発明者】
【氏名】伍文韜
(72)【発明者】
【氏名】黎健
(72)【発明者】
【氏名】陳曙輝
(72)【発明者】
【氏名】鮑穎霞
(72)【発明者】
【氏名】王▲イ▼
(72)【発明者】
【氏名】謝周凡
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/060714(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/031613(WO,A1)
【文献】特表2016-516026(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145050(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/152117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、
【化1】
式中、
Lは、-CHであり、
11は、-OCHであり、
12は、-OCHであり、
13は、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びCHから選択され、
14は、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びC1-3アルキル基から選択され、前記C1-3アルキル基は、任意選択的に、1、2又は3個のRldで置換され、
16は、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びC1-3アルキル基から選択され、前記C1-3アルキル基は、任意選択的に、1、2又は3個のR1gで置換され、
17は、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びCHから選択され、
18、ピペラジニル基であり、前記ピペラジニル基は、任意選択的に、1、2又は3個のRlhで置換され、
各R19は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I及びCHから選択され、
mは、0、1、2及び3から選択され、
1d、R1gは、それぞれ独立して、F、Cl、Br、I及びCHから選択され、
1hは、それぞれ独立して、F、Cl、Br、I、C 1-3アルキル基から選択され前記 1-3アルキル基は、任意選択的に、1、2又は3個のRで置換され、
Rは、それぞれ独立して、F、C1及びIから選択される、化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
13は、H及びFから選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
14は、H及びCFから選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
16は、CFである、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
17は、Hである、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
lh、C、CHCH ら選択され、前記C、CHCH 、任意選択的に、1、2又は3個のRで置換される、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
1h、C、CHCH、CHCF ら選択される、請求項6に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
18
【化2】
であり、前
【化3】
は、任意選択的に、1、2又は3個のR1hで置換される、請求項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
18は、
【化4】
から選択される、請求項8に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
構成単位
【化5】
から選択される、請求項1又は9に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
【化6】
であり、
式中、R11、R12、R13、R14、R16、R17、R19、R1h及びmは、請求項1~7のいずれか1項によって定義される通りである、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
次の式で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化7】
【請求項13】
有効成分としての治療的有効量の請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項14】
RETに関連する腫瘍又は腸管疾患を治療するための薬物の製造における、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩又は請求項13に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出願日が2020年02月20日である中国特許出願CN202010106990.2、出願日が2021年01月13日である中国特許出願CN202110065553.5の優先権を主張している。
【0002】
本発明は、式(II)で表される化合物、その異性体又はその薬学的に許容される塩に関する。
【背景技術】
【0003】
RET遺伝子は、トランスフェクション過程において再配列が発生する癌原遺伝子であり、その為に命名される。この遺伝子は、一つの細胞膜受容体型チロシンキナーゼをコードし、成長因子がRETの細胞外領域と結合した後、一連の細胞内の鎖式化学反応をトリガとし、受容体が受容したシグナルに基づいて細胞の分裂、成熟を引き起こし、さらに臓器の発育と組織の定常状態に対して相応機能を発揮する。RET蛋白は、いくつかの神経(腸管及び自律神経系を含む)の発育などの方面で重要な役割を果たしている。
【0004】
RETキナーゼ異常活性化又は突然変異は、様々な腫瘍、例えば家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、甲状腺乳頭癌(PTC)、多発性内分泌腺腫症(MEN2A及び2B)と非小細胞肺癌(NSClC)などの発生と相関することが証明された。LOXO-292、BLU-667及びDS-5010などのRET選択阻害剤は、関連するRET関連腫瘍の治療に利用できることが臨床試験において証明された。
【0005】
本発明は、RET異常活性化に関連する腫瘍又は腸管疾患の治療のためのRET阻害剤としてのキノリン誘導体の開発を目的とする。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、式(II)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供し、
【化1】
式中、
Lは、-CH-、-NR10-及び-CHNR10-から選択され、
10は、H及びCHから選択され、
11は、-OCHであり、
12は、-OCHであり、
13H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びCHから選択され、
14は、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びC1-3アルキル基から選択され、前記C1-3アルキル基は、任意選択的に、1、2又は3個のRldで置換され、
16は、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びC1-3アルキル基から選択され、前記C1-3アルキル基は、任意選択的に、1、2又は3個のR1gで置換され、
17は、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びCHから選択され、
18は、3,6ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン基、ピペラジニル基、ピペリジル基及びC1-6アルキル基から選択され、前記3,6ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン基、ピペラジニル基、ピペリジル基及びC1-6アルキル基は、任意選択的に、1、2又は3個のRlhで置換され、
各R19は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I及びCHから選択され、
mは、0、1、2及び3から選択され、
1d、R1gは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びCHから選択され、
1hは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN、
【化2】
、C1-3アルキル基、C1-3アルキルアミノ基及びオキセタニル基から選択され、前記
【化3】
、C1-3アルキル基、C1-3アルキルアミノ基及びオキセタニル基は、任意選択的に、1、2又は3個のRで置換され、
Rは、それぞれ独立して、H、F、C1及びIから選択される。
【0007】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R13は、H及びFから選択され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0008】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R14は、H及びCFから選択され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0009】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R16は、CFであり、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0010】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R17は、Hであり、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0011】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、Rlhは、
【化4】
、CH、CHCH
【化5】
から選択され、前記
【化6】
、CH、CHCH
【化7】
は、任意選択的に、1、2又は3個のRで置換され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0012】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R1hは、
【化8】
、CH、CHCH、CHCF
【化9】
から選択され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0013】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R18は、CHCH
【化10】
から選択され、前記CHCH
【化11】
は、任意選択的に、1、2又は3個のR1hで置換され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0014】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R18は、
【化12】
から選択され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0015】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、構成単位
【化13】
から選択され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0016】
本発明は、式(II)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供し、
【化14】
式中、
Lは、-CH-、-NR10-及び-CHNR10-から選択され、
10は、H及びCHから選択され、
11は、-OCHであり、
12は、-OCHであり、
13は、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びCHから選択され、
14は、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びC1-3アルキル基から選択され、前記C1-3アルキル基は、任意選択的に、1、2又は3個のRldで置換され、
16は、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びC1-3アルキル基から選択され、前記C1-3アルキル基は、任意選択的に、1、2又は3個のR1gで置換され、
17は、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びCHから選択され、
18は、ピペラジニル基、ピペリジル基及びC1-6アルキル基から選択され、前記ピペラジニル基、ピペリジル基及びC1-6アルキル基は、任意選択的に、1、2又は3個のR1hで置換され、
各R19は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I及びCHから選択され、
10は、H及びCHから選択され、
mは、0、1、2及び3から選択され、
1d、R1gは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN及びCHから選択され、
1hは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、OH、NH、CN、C1-3アルキル基、C1-3アルキルアミノ基及びオキセタニル基から選択され、前記C1-3アルキル基、C1-3アルキルアミノ基及びオキセタニル基は、任意選択的に、1、2又は3個のRで置換され、
Rは、それぞれ独立して、H、F、Cl及びIから選択される。
【0017】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R13は、H及びFから選択され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0018】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R14は、H及びCFから選択され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0019】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R16は、CFであり、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0020】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R17は、Hであり、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0021】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R1hは、CH、CHCH
【化15】
から選択され、前記CH、CHCH
【化16】
は、任意選択的に、1、2又は3個のRで置換され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0022】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R1hは、CH、CHCH、CHCF
【化17】
から選択され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0023】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R18は、CHCH
【化18】
から選択され、前記CHCH
【化19】
は、任意選択的に、1、2又は3個のR1hで置換され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0024】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、R18は、
【化20】
から選択され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0025】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、構成単位
【化21】
から選択され、他の変数は、本発明によって定義される通りである。
【0026】
本発明のいくつかの態様では、前記化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【化22】
である。
【0027】
式中、R11、R12、R13、R14、R16、R17、R19、R1h及びmは、本発明によって定義される通りである。
【0028】
本発明の別のいくつかの態様は、上記の変数の任意の組み合わせによるものである。
【0029】
本発明は、次の式で表される化合物又はその薬学的に許容される塩をさらに提供する。
【化23】
【0030】
本発明は、有効成分としての治療的有効量の上記化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物をさらに提供する。
【0031】
本発明は、RET疾病を治療するための薬物の製造における、上記化合物又はその薬学的に許容される塩又は上記医薬組成物の使用をさらに提供する。
【0032】
技術効果
本発明の化合物は、野生型、V804M変異型RETキナーゼに対して、いずれも良好な阻害作用、良好なI相代謝安定性、高い薬物相互作用安全性を有する。薬物動態学研究によれば、経口吸収は、良好で、バイオアベイラビリティが高いことが分かった。
【0033】
定義及び説明
特に断りの無い限り、本明細書で使用される以下の用語及び語句は、以下の意味を有することを意図している。ある特定の用語や語句は、特に定義されていない限り、不確実又は不明瞭であるとみなされるべきではなく、一般的な意味で理解されるべきである。本明細書では、商品名が記載される場合、対応する商品又はその有効成分を指すことを意図している。
【0034】
ここで使われている「薬学的に許容される」という用語は、過剰な毒性、刺激性、アナフィラキシー、又はその他の問題や合併症なしに、信頼性のある医学的判断の範囲内でヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適しており、合理的な利益/リスク比に見合った化合物、材料、組成物、及び/又は剤形についてのものである。
【0035】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明で発見された特定の置換基を有する化合物と、相対的に毒性のない酸又は塩基とから製造された本発明の化合物の塩を意味する。本発明の化合物に相対的に酸性の官能基を含有する場合、塩基付加塩は、純粋な溶液中又は適切な不活性溶媒中で、そのような化合物に十分な量の塩基を接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミン、若しくはマグネシウム塩又は類似の塩が含まれる。本発明の化合物に相対的に塩基性の官能基を含有する場合、酸付加塩は、純粋な溶液中又は適切な不活性溶媒中で、そのような化合物に十分な量の酸を接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、重炭酸イオン、リン酸、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸、硫酸水素イオン、ヨウ化水素酸、亜リン酸などの無機酸の塩、及び酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸及びメタンスルホン酸などの類似の酸の有機酸の塩が含まれ、アミノ酸(アルギニンなど)の塩、及びグルクロン酸などの有機酸の塩がさらに含まれる。本発明の特定の化合物のいくつかは、塩基性及び酸性の官能基を含有し、それによって、任意の塩基又は酸付加塩に変換することができる。
【0036】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、酸基又は塩基を含有する親化合物から合成されることができる。一般に、このような塩は、水又は有機溶媒、又は両者の混合物中で、これらの化合物を遊離酸又は塩基の形で化学量論的に適当な塩基又は酸と反応させることによって製造される。
【0037】
本発明の化合物は、特定の幾何又は立体異性体の形態を有していてもよい。本発明は、シス及びトランス異性体、(-)-及び(+)-エナンチオマー、(R)-及び(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、並びにそれらのラセミ混合物、並びに、他の混合物、例えばエナンチオマー又はジアステレオマーリッチな混合物を含む全てのこのような化合物を想定しており、これらの全ての混合物は、いずれも本発明の範囲内に属する。アルキルなどの置換基には、さらに不斉炭素原子が存在していてもよい。これら全ての異性体及びそれらの混合物は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
特に断りの無い限り、「エナンチオマー」又は「旋光異性体」という用語は、互いに鏡像関係にある立体異性体を意味する。
【0039】
特に断りの無い限り、「シス/トランス異性体」又は「幾何異性体」という用語は、二重結合又は環を形成する炭素原子の単結合が自由に回転できないことから生じるものである。
【0040】
特に断りの無い限り、「ジアステレオマー」という用語は、分子が2つ以上のキラル中心を有し、分子間が非鏡像の関係にある立体異性体を意味する。
【0041】
特に断りの無い限り、「(+)」は右旋性、「(-)」は左旋性、「(±)」はラセミを意味する。
【0042】
特に断りの無い限り、くさび形実線キー
【化24】
及びくさび形破線キー
【化25】
は、立体中心の絶対配置を表し、直線形実線キー
【化26】
及び直線形破線キー
【化27】
は、立体中心の相対配置を表し、波線
【化28】
は、くさび形実線キー
【化29】
又はくさび形破線キー
【化30】
を表し、又は波線
【化31】
は、直線形実線キー
【化32】
又は直線形破線キー
【化33】
を表す。
【0043】
特に断りの無い限り、化合物中に二重結合構造、例えば炭素-炭素二重結合、炭素-窒素二重結合、窒素-窒素二重結合などが存在し、かつ二重結合上の各原子にいずれも二つの異なる置換基が結合している場合(窒素原子を含む二重結合のうち、窒素原子上の一対の孤立電子対は、それに結合した置換基とみなされる)、この化合物中の二重結合上の原子とその置換基との間が波線
【化34】
で結合されている場合、この化合物の(Z)型異性体、(E)型異性体又は2種類の異性体の混合物を表す。例えば、下式(A)は、この化合物が式(A-1)又は式(A-2)の単一異性体形態で存在するか、又は式(A-1)と式(A-2)の2種類の異性体の混合物形態で存在することを表し、下式(B)は、この化合物が式(B-1)又は式(B-2)の単一異性体形態で存在するか、又は式(B-1)と式(B-2)の2種類の異性体混合物形態で存在することを表し、下式(C)は、この化合物が式(C-1)又は式(C-2)の単一異性体形態で存在するか、又は式(C-1)と式(C-2)の2種類の異性体混合物形態で存在することを表す。
【化35】
【0044】
特に断りの無い限り、「互変異性体」又は「互変異性体形態」という用語は、室温下で、異なる官能基異性体が動的バランスにあり、且つ迅速に相互変換できることを意味する。互変異性体が可能であれば、(例えば、溶液中であれば)、互変異性体の化学バランスを達成することができる。例えば、プロトン互変異性体(proton tautomer)(プロトトロピック互変異性体(prototropic tautomerとも呼ばれる)は、ケトン-エノール異性化及びイミン-エナミン異性化などのプロトン移動による相互交換を含む。原子価結合異性体(valence tautomer)は、いくつかの結合電子の再結合による相互交換を含む。ここでは、ケトン-エノール互変異性化の具体例は、2,4-ペンタジオンと4-ヒドロキシ-3-シクロペンテン-1-オンの二つの互変異性体との間の互変である。
【0045】
特に断りの無い限り、「異性体が富化される」、「異性体濃化」、「エナンチオマーが富化される」、又は「エナンチオマー濃化」という用語は、1種の異性体又はエナンチオマーの含有量が100%未満、且つ異性体又はエナンチオマーの含有量が60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上、又は99.5%以上、又は99.6%以上、又は99.7%以上、又は99.8%以上、又は99.9%以上であることを意味する。
【0046】
特に断りの無い限り、「異性体過剰」又は「エナンチオマー過剰」という用語は、二つの異性体又は二つのエナンチオマーの相対百分率の間の差を意味する。例えば、一方の異性体又はエナンチオマーの含有量を90%、他方の異性体又はエナンチオマーの含有量を10%とすると、異性体又はエナンチオマーの過剰量(ee値)は80%となる。
【0047】
光学活性(R)-及び(S)-異性体、ならびにD及びL異性体は、キラル合成又はキラル試薬又は他の従来技術によって製造することができる。本発明の化合物の1種類のエナンチオマーを得ることが望まれる場合、不斉合成により、又はキラル助剤を有する誘導作用により製造することができ、得られたジアステレオマー混合物を分離し、そして補助基を開裂させて純粋な所望のエナンチオマーを提供する。あるいは、分子内に塩基性官能基(例えば、アミノ基)又は酸性官能基(例えば、カルボキシル基)を含有する場合、適切な光学活性酸又は塩基とジアステレオマーの塩を形成し、次いで、当分野で公知の従来の方法によりジアステレオマー分割を行い、そして回収して純粋なエナンチオマーを得る。さらに、エナンチオマーとジアステレオマーの分離は、キラル固定相を使用するクロマトグラフィーを用いて、任意選択で化学的誘導法(例えば、アミンからカルバミン酸塩を生成すること)と組み合わせて行うことが一般的である。
【0048】
本発明の化合物は、この化合物を構成する1つ以上の原子に非自然比の原子同位体を含んでいてもよい。例えば、放射性同位体、例えばトリチウム(H)、ヨウ素-125(125I)又はC-14(14C)などで化合物を標識してもよい。また例えば、重水素を水素に置換して重水素化薬物を形成してもよく、重水素と炭素の結合は、普通の水素と炭素の結合よりも強く、重水素化していない薬物と比べ、重水素化薬物は、毒副作用を低下させ、薬物の安定性を増加させ、治療効果を増強し、薬物の生物半減期を延長するなどの優位性を有する。本発明の化合物の全ての同位体組成の変換は、放射能の有無にかかわらず、本発明の範囲内に含まれる。「任意選択」又は「任意選択的に」とは、後述するイベント又は状況は、現れる可能性があるが、必須ではないことである。そして、この記述は、前記イベント又は状況が発生した場合と、前記イベント又は状況が発生しなかった場合とを含む。
【0049】
「で置換されている」という用語は、特定の原子上の任意の1つ以上の水素原子が置換基で置換されていることを意味し、置換基は、特定の原子の価数が正常であり、かつ置換された化合物が安定である限り、重水素及び水素の変異体を含み得る。置換基が酸素(即ち=O)である場合、2つの水素原子が置換されていることを意味する。芳香族基では、酸素置換は起こらない。「で置換されていてもよい」という用語は置換されていても、置換されなくてもよいことを意味し、特に規定がない限り、置換基の種類及び数は、化学的に達成可能な限り任意である。
【0050】
いずれかの変数(例えばR)が化合物の組成又は構造中に1回以上出現する場合、その定義は、それぞれ独立である。したがって、例えば、1つの基が0~2つのRで置換されている場合、前記基は、任意選択で多くとも2つのRで置換されてもよく、それぞれの場合のRにも、独立した選択肢がある。さらに、置換基及び/又はその変異体の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物を生成する場合にのみ許容される。
【0051】
結合基の数が0である場合、例えば-(CRR)-は、その結合基が単結合であることを示す。
【0052】
1つの変数が単結合から選択された場合、それにより結合される2つの基が直接結合されることを示し、例えば、A-L-ZにおいてLが単結合を表す場合、その構造が実質的にA-Zであることを示す。
【0053】
一つの置換基が欠乏である場合、この置換基が存在しないことを表し、例えば、A-XにおけるXが欠乏である場合は、実際に、この構造がAであることを表す。列挙された置換基のうち、どの原子を介して被置換基に結合しているかが示されていない場合、このような置換基は、その任意の原子を介して結合していてもよく、例えば、ピリジルは、置換基としてピリジン環上の任意の炭素原子を介して被置換基に結合されてもよい。
【0054】
列挙された結合基が結合方向を特定していない場合、その結合方向は任意であり、例えば、
【化36】
において、結合基Lが-M-W-であり、この場合、-M-W-は、左から右への読み取り順と同じ方向に環Aと環Bを結合して
【化37】
を構成してもよいし、左から右への読み取り順と逆方向に環Aと環Bを結合して
【化38】
を構成してもよい。前記結合基、置換基及び/又はその変異体の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物を生成する場合にのみ許容される。
【0055】
特に規定がない限り、ある基が結合可能な部位を1つ以上有する場合、その基の任意の1つ以上の部位と他の基とが化学結合により結合されていてもよい。この化学結合の結合方式が非局在的であり、かつ結合可能な部位にH原子が存在する場合、化学結合が結合されるときに、その部位のH原子の個数は、結合された化学結合の個数に応じて減少し、相応価数の基となる。前記部位と他の基とが結合している化学結合は、直線形実線キー
【化39】
、直線形破線キー
【化40】
、又は波線
【化41】
で示されてもよい。例えば-OCHにおける直線形実線キーは、その基における酸素原子を介して他の基と結合していることを示し、
【化42】
における直線形破線キーは、その基における窒素原子の両端を介して他の基と結合していることを示し、
【化43】
における波線は、このフェニルにおける1位と2位の炭素原子を介して他の基と結合していることを示し、
【化44】
は、このピペリジニル上の任意の結合可能な部位が、1つの化学結合によって他の基と結合することができることを示し、少なくとも、
【化45】
という4種類の結合方式を含み、-N-上にH原子が描かれていても、
【化46】
は、依然として、
【化47】
のような結合方式の基を含むが、1つの化学結合が結合した場合、その部位のHは、1つ減少して、対応する一価のピペリジニルになる。
【0056】
特に規定がない限り、「C1~6アルキル基」という用語は、1~6個の炭素原子からなる直鎖又は分枝の飽和炭化水素基を表すために用いられる。前記C1~6アルキル基は、C1~5、C1~4、C1~3、C1~2、C2~6、C2~4、C及びCアルキル基などを含み、一価(例えば、メチル基)、二価(例えば、メチレン基)又は多価(例えば、メチン基)であってもよい。C1~6アルキル基の例としては、例えば、メチル基(Me)、エチル基(Et)、プロピル基(n-プロピル基及びイソプロピル基を含む)、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基及びt-ブチル基を含む)、ペンチル基(n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基を含む)、ヘキシル基等を含むが、これらに限定されない。
【0057】
特に規定がない限り、「C1~3アルキル」という用語は、1~3個の炭素原子からなる直鎖又は分枝の飽和炭化水素基を表すために用いられる。前記C1~3アルキル基は、C1~2及びC2~3アルキル基などを含み、これは、一価(例えば、メチル基)、二価(例えば、メチレン基)、又は多価(例えば、メチン基)であってもよい。C1~3アルキル基の例としては、メチル基(Me)、エチル基(Et)、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基を含む)等を含むが、これらに限定されない。
【0058】
特に規定がない限り、「C1-3アルキルアミノ基」という用語は、アミノ基を介して分子の残りの部分に結合された1~3個の炭素原子を含むアルキル基を表す。前記C1-3アルキルアミノ基は、C1-2、C及びCアルキルアミノ基等を含む。C1-3アルキルアミノ基の例としては、-NHCH、-N(CH、-NHCHCH、-N(CH)CHCH、-NHCHCHCH、-NHCH(CHなどを含むが、これらに限定されない。
【0059】
本発明の化合物は、当業者によく知られている様々な合成方法によって製造することができる。以下に挙げられる具体的な実施の形態、他の化学合成方法との組み合わせにより形成される実施の形態、及び当業者に知られている同等の代替形態を含み、好ましい実施の形態は、本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0060】
本発明の化合物は、当業者によく知られている従来の方法により構造を確認することができ、本発明が化合物の絶対配置に係わっている場合、その絶対配置を当業者の従来の技術的手段により確認することができる。例えば、単結晶X線回折法(SXRD)では、培養した単結晶をBruker D8 venture回折計で回折強度データを収集し、光源がCuKα放射、走査方式:φ/ω走査で関連データを収集した後、さらに直接法(Shelxs97)を用いて結晶構造を解析すれば、絶対配置を確認することができる。
【0061】
化合物は、当該分野の通常の命名原則に基づいて、又はChemDraw(登録商標)ソフトウェアを用いて命名し、市販の化合物に対して、サプライヤーの目録に記載の名称を採用する。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書では、本発明を詳細に説明し、具体的な実施形態も提供されているが、明らかに、当業者は、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく本発明に対して様々な変更及び改良を行うことができる。
【0063】
実施例1
【化48】
合成経路:
【化49】
【0064】
工程1:化合物1-2の調製
化合物1-1(5g,26.03mmol)と化合物N-エチルピペラジン(4.46g,39.04mmol,4.96mL)を無水ジクロロメタン(100.0mL)に加え、2時間撹拌し、酢酸水素化ホウ素ナトリウム(l6.55g,78.08mmol)を加え、20℃で1時間反応させた。pHが8になるまで反応液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液に注ぎ、抽出し、水相を80mLジクロロメタンで継続して抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過して濃縮し、粗生成物を濾過カラム(ジクロロメタン:メタノール=100:0-20:1)で精製して化合物1-2を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.67-7.53(m,2H),7.03-6.91(m,1H),3.84(s,2H),2.67-2.22(m,10H),1.08(t,J=7.2Hz,3H);MS m/z=291.1[M+H]
【0065】
工程2:化合物1-3の調製
化合物1-2(10g,34.45mmol)を硫酸(37.92g,378.92mmol,20.61mL,98%純度)に加え、硝酸(2.44g,37.89mmol,1.74mL、98%純度)を加え、20℃で16時間反応させ、50℃で6.5時間反応させた。pHが8になるまで反応液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液に加え、150mL*3の酢酸エチルで抽出し、有機相を合併し、300mLの飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過した後、濃縮し、化合物1-3を得た。H NMR(400MHz、CDCl)δ=8.39(d,J=6.8Hz,1H),7.77(d,J=11.6Hz,1H),3.85(s,2H),3.36-3.42(m,10H),1.49(t,J=7.2Hz,3H)。
【0066】
工程3:化合物1-4の調製
化合物1-3(3.5g,10.44mmol)をメタノール(150.0mL)に加え、ラネーニッケル(4.47g,52.19mmol)を加え、水素ガス(15psi)下、20℃で1時間反応させ、反応液を珪藻土で濾過し、濾過液を濃縮し、粗生成物を濾過カラム(ジクロロメタン:メタノール=100:0-15:1)で精製して化合物1-4を得た。H NMR(400MHz,d-MeOH)δ=7.35(d,J=12.4Hz,1H),7.15(d,J=8.4Hz,1H),3.63(s,2H),3.38-3.35(m,2H),3.31-3.07(m,5H),2.90-2.62(m,3H),1.36(t,J=7.6Hz,3H)。
【0067】
工程4:化合物1の調製
化合物1-5(0.1g,308.33μmol)と化合物1-4(103.55mg,339.16μmol)をピリジン(5.0mL)に加え、T3P(981.04mg,1.54mmol,916.86μL,50%純度)を滴下し、20℃で1時間反応させた。反応液に水20mLを加え、15mL*2の酢酸エチルで抽出し、有機相を合併し、20mL飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過した後、濃縮し、粗生成物をHPLC(カラム:Phenomenex Luna C18 150*30mm*5μm;移動相:[水(0.05%HCl)-ACN]アセトニトリル%:10%-45%,12min)で分離精製して化合物1を得た。H NMR(400MHz,d-MeOH)δ=9.55(s,2H),8.80(s,1H),8.52-8.42(m,1H),8.27-8.20(m,1H),8.17-8.08(m,1H),7.76(s,2H),7.57-7.50(m,1H),4.16(s,3H),4.11(s,3H),4.01(s,2H),3.95-3.85(m,2H),3.65-3.55(m,2H),3.27-3.16(m,6H),2.80-2.60(m,2H),1.37(t,J=7.6Hz,3H);MS m/z=612.2[M+H]
【0068】
実施例2
【化50】
合成経路:
【化51】
【0069】
工程1:化合物2-2合成
化合物1-1(2g,10.41mmol)と化合物N-アセチルピペリジン(2.00g,15.62mmol)と酢酸(62.52mg,1.04mmol,59.54μL)を1,2-ジクロロエタン(20mL)に加え、窒素ガス雰囲気下で20℃、16時間反応させ、シアノホウ素化水素ナトリウム(1.31g,20.82mmol)を加え、20℃で10分間反応させた。pHが8になるまで反応液に飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、ジクロロメタン(20mL*2)で抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過して濃縮し、粗生成物を濾過カラム(ジクロロメタン:メタノール=100:0-10:1)で精製して化合物2-2を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.64(dd,J=5.6,8.8Hz,1H),7.57(dd,J=2.4,10Hz,1H),7.03(m,1H),3.71-3.64(m,4H),3.53-3.46(m,2H),2.53-2.44(m,4H),2.10(s,3H);MS m/z=305.3[M+H]
【0070】
工程2:化合物2-3合成
化合物2-2(1.2g,3.94mmol)を濃硫酸(10mL)に加え、0℃で硝酸カリウム(1.20g,11.83mmol)を加え、0℃で2時間反応させ、50℃で16時間反応させ、pHが8になるまで反応液を2M水酸化ナトリウム溶液に徐々に加え、酢酸エチル(20mL*2)で抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過した後、濃縮し、粗生成物を濾過カラム(ジクロロメタン:メタノール=100:0-10:1)で精製して化合物2-3を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ=8.40(d,J=7.2Hz,1H),7.92(d,J=12Hz,1H),3.74(s,2H),3.71-3.63(m,2H),3.58-3.49(m,2H),2.60-2.40(m,4H),2.12(s,3H);MS m/z=350.3[M+H]
【0071】
工程3:化合物2-4合成
ラネーニッケル(245.28mg,2.86mmol)を無水メタノール(5mL)に加え、化合物2-3(0.05g,143.15μmol)を加え、水素ガス(15psi)下20℃で、1時間反応させ、触媒を回収した後、反応液をスピン乾燥して化合物2-4を得た。MS m/z=320.2[M+H]
【0072】
工程4:化合物2合成
化合物1-5(40mg,123.33μmol)と化合物2-4(39.38mg,123.33μmol)をピリジン(2mL)に加え、トリn-プロピル環状リン酸無水物50%酢酸エチル溶液(784.83mg,1.23mmol,733.49μL,50%含有量)を滴下し、30℃で2時間反応させ、反応液を直接濃縮し、pre-HPLC(カラム:Welch Xtimate C18 150*25mm*5μm;移動相:[HO(0.04%HCl)-ACN];アセトニトリル:15%-35%,8min)に送って分離精製し、化合物2を得た。H NMR(400MHz,d-MeOH)δ=9.49(s,1H),9.33(s,1H),8.80-8.73(m,1H),8.55-8.42(m,1H),8.17(d,J=8.4Hz,1H),8.05(d,J=8.0Hz,1H),7.85-7.75(m,1H),7.70-7.62(m,1H),7.52(s,1H),4.13(s,3H),4.10(s,3H),3.99(s,2H),3.93-3.82(m,2H),3.75-3.60(m,4H),2.90-2.50(m,4H),2.13(s,3H),MS m/z=626.4[M+H]
【0073】
実施例3
【化52】
合成経路:
【化53】
【0074】
工程1:化合物3-2の調製
化合物3-1(24g,95.65mmol,1eq)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解し、-78℃でノルマルブチルリチウム(2.5M,40.17mL,1.05eq)を加え、1時間反応させ、N,Nジメチルフォルムアミド(7.69g,105.21mmol,8.10mL,1.1eq)を加え、1時間反応を継続した。反応液を室温に戻し、塩酸を加えてクエンチング反応させ、酢酸エチル(100mL)で2回抽出し、有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、最後に無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾過液を濃縮乾固し、化合物3-2を得た。MS m/z=199.8[M+H]
【0075】
工程2:化合物3-3の調製
化合物3-2(14g,69.99mmol,1 eq)をメタノール(30mL)に溶解し、0℃でホウ水素化ナトリウム(5.56g,146.98mmol,2.1eq)を加え、20℃で2時間反応させた。反応液を濃縮し、水を加え、酢酸エチル(100mL*3)で2回抽出し、有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、最後に無水硫酸ナトリウムで乾燥し、粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エステル:酢酸エチル=10:1)により精製して化合物3-3を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.61-7.54(m,1H),7.38-7.27(m,1H),4.70-4.63(m,2H),2.54(s,3H);MS m/z=201.8[M+H]
【0076】
工程3:化合物3-4の調製
化合物3-3(5.5g,27.22mmol,1eq)をジクロロメタン(12mL)に溶解し、0℃で三臭化リン(8.84g,32.67mmol,1.2eq)を加え、20℃で2時間反応させた。まず、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えてクエンチング反応させ、次いで水で2回洗浄し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、最後に無水硫酸ナトリウムで乾燥し、粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エステル:酢酸エチル=10:1)により精製して化合物3-4を得た。H NMR(400MHz,d-MeOH)δ=7.66(d,J=8.0 Hz,1H),7.44(d,J=8.0Hz,1H),4.61(s,2H),2.65(s,3H);MS m/z=263.8[M+H]
【0077】
工程4:化合物3-5の調製
化合物3-4(5.3g,20.00mmol,1eq)をエタノール(53mL)に溶解し、シアン化カリウム(2.61g,40.01mmol,1.71mL,2eq)を加え、60℃で5時間反応させた。反応液を濃縮し、水を加えた後、ジクロロメタン(20mL)で2回抽出し、有機相を合併し、水で2回洗浄し、最後に無水硫酸ナトリウムで乾燥し、粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エステル:酢酸エチル=5:1)により精製して化合物3-5を得た。H NMR(400MHz,d-MeOH)δ=7.69(d,J=8.0Hz,1H),7.50(d,J=8.0Hz,1H),4.01(s,2H),2.60(s,3H);MS m/z=210.8[M+H]
【0078】
工程5:化合物3-6の調製
化合物3-5(2.4g,11.37mmol,1eq)を水(3mL)に溶解し、濃硫酸(3mL)を加え、100℃で5時間反応させた。まず水を加え、水酸化ナトリウムでpHを4に調整し、次いで酢酸エチル(20mL)で2回抽出し、有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、最後に無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾過液を濃縮乾固し、化合物3-6を得た。H NMR(400MHz,MeOH-d)δ=7.53(d,J=8.0Hz,1H),7.41(d,J=8.0Hz,1H),3.78(s,2H),2.61(s,3H);MS m/z=229.8[M+H]
【0079】
工程6:化合物3-7の調製
化合物1-4(1.47g,4.80mmol,1.1eq)と化合物3-6(1g,4.37mmol,1eq)をピリジン(20mL)に溶解し、TP(13.89g,21.83mmol,12.98mL,5eq)を加え、20℃で2時間反応させた。反応液に水を加えた後、ジクロロメタン/メタノール(V:V=10:1)で2回抽出し、有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、最後に無水硫酸ナトリウムで乾燥し、化合物3-7を得た。H NMR(400MHz,d-MeOH)δ=8.36(d,J=7.3Hz,1H),7.67(d,J=11.8Hz,1H),7.62-7.52(m,1H),7.50-7.39(m,1H),3.89(s,2H),3.75-3.71(m,3H),3.30-2.54(m,11H),2.53(s,3H),1.29(t,J=7.4Hz,3H);MS m/z=515.8[M+H]
【0080】
工程7:化合物3の調製
化合物3-8(90.26mg,387.32μmol,2eq)、化合物3-7(0.1g,193.66μmol,1eq)、炭酸ナトリウム(61.58mg,580.98μmol,3eq)を水(3mL)とジオキサン(5mL)に溶解し、窒素ガスで3回取り替え、Pd(dppf)Cl(28.34mg,38.73μmol,0.2eq)を加え、100℃で5時間反応させた。まず、反応液をスピン乾燥し、その後、30mLのジクロロメタンで2回抽出し、有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、最後に無水硫酸ナトリウムで乾燥し、粗生成物を得た。HPLC(カラム型番:Venusil ASB Phenyl 150*30mm*5μm;移動相:[水(0.05%塩酸-アセトニトリル)];B%(アセトニトリルの含有率勾配):20%-50%,9min)分離を調製し、化合物3を得た。H NMR(400MHz,d-MeOH)δ=9.63-9.42(m,2H),8.48(d,J=7.0Hz,1H),8.23-8.09(m,2H),7.81-7.74(m,2H),7.59(s,1H),4.19(s,3H),4.16-4.10(m,5H),3.91(s,2H),3.61(bs,2H),3.29-3.25(q,J=7.4Hz,2H),3.25-3.15(m,4H),2.82(s,3H),2.69(bs,2H),1.39(t,J=7.4Hz,3H);MS m/z=626.3[M+H]
【0081】
実施例4
【化54】
合成経路:
【化55】
【0082】
工程1:化合物4-2合成
化合物1-1(0.4g,2.08mmol)とN-メチルピペリジン(250.26mg,2.50mmol,277.14μL)を無水ジクロロメタン(5mL)に加え、20℃で1時間反応させ、酢酸水素化ホウ素ナトリウム(1.32g,6.25mmol)を加え、20℃で0.5時間反応させ、pHが8になるまで反応液に1M水酸化ナトリウムを加え、ジクロロメタン(5mL*2)で抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過した後、濃縮し、粗生成物を濾過カラム(シリカゲル:100-200メッシュ、移動相:ジクロロメタンとメタノール)で精製して化合物4-2を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.66-7.62(m,1H),7.44(dd,J=2.0,10.0Hz,1H),7.08-7.00(m,1H),3.75(s,2H),3.17-2.79(m,8H),2.68(s,3H);MS m/z=277.2[M+H]
【0083】
工程2:化合物4-3合成
化合物4-2(0.1g,361.96μmol,1eq)を濃硫酸(1.95g,19.91mmol,1.06mL)に加え、濃硝酸(114.04mg,1.81mmol,81.45μL)を加え、20℃で16時間反応させ、硝酸(5eq,81.45μL)を追加し、50℃で9時間反応させ、反応液を15mLの水に徐々に加え、10mLの酢酸エチルで抽出し、水相を1M水酸化ナトリウム溶液でpHを8に調整し、酢酸エチル(20mL*2)で抽出し、有機相を合併し、20mL飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過した後、濃縮し、化合物4-3を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ=8.33(d,J=6.8Hz,1H),7.74(d,J=12.0Hz,1H),3.73(s,2H),3.02-2.64(m,8H),2.56(s,3H);MS m/z=322.1[M+H]
【0084】
工程3:化合物4-4合成
ラネーニッケル(1.20g,1.40mmol)をメタノール(5mL)に加え、化合物4-3(90mg,280.14μmol)を加え、20℃で水素ガス(15psi)で0.5時間反応させ、反応液を濾過し、濃縮して化合物4-4を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.37(d,J=12.4Hz,1H),7.04(d,J=8.8Hz,1H),3.84(s,2H),3.55(s,2H),2.72-25.51(m,8H),2.40(s,3H);MS m/z=292.1[M+H]
【0085】
工程4:化合物4合成
化合物1-5(80mg,246.66μmol)と化合物4-4(57.48mg,197.33μmol)をピリジン(5mL)に加え、トリn-プロピル環状リン酸の50%酢酸エチル溶液(1.57g,2.47mmol,1.47mL,50%含有量)を加え、30℃で1.5時間反応させ、反応液を直接に濃縮し、粗生成物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、pHを8-9に調整し、酢酸エチル(10mL*2)で抽出し、有機相を合併し、10mLの飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過濃縮した後、pre-HPLC(カラム:Phenomenex luna C18 80*40mm*3μm;移動相:[HO(0.04%HCl)-ACN];アセトニトリル:13%-38%,7min)で分離精製し、化合物4を得た。H NMR(400MHz,d-MeOH)δ=9.56-9.54(m,2H),8.93(s,1H),8.66(d,J=7.6Hz,1H),8.41(s,2H),8.00(d,J=11.2Hz,1H),7.80(s,1H),7.60(s,1H),4.35(s,2H),4.18(s,3H),4.15(s,2H),4.12(s,3H),3.94-3.34(m,8H),2.99(s,3H),MS m/z=598.3[M+H]
【0086】
実施例5
【化56】
合成経路:
【化57】
【0087】
工程1:化合物5-2合成
化合物1-1(0.5g,2.60mmol)とN,N,N-トリメチルジアミン(319.12mg,3.12mmol,406.01μL)を無水ジクロロメタン(10mL)に加え、20℃で2時間反応させ、酢酸水素化ホウ素ナトリウム(1.65g,7.81mmol)を加え、20℃で0.5時間反応させた。pHが8になるまで反応液に炭酸水素ナトリウムを加え、10mLの水と10mLのジクロロメタンで抽出し、水相を10mLのジクロロメタンで抽出継続して、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過した後、濃縮し、粗生成物を濾過カラム(ジクロロメタン:メタノール=100:0-10:1)で精製して化合物5-2を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.69-7.52(m,2H),7.07-6.88(m,1H),3.68(s,2H),2.78-2.64(m,4H),2.44(s,6H),2.25(s,3H);MS m/z=279.1[M+H]
【0088】
工程2:化合物5-3合成
化合物5-2(0.4g,1.44mmol)を濃硫酸(7.91g,79.05mmol,4.30mL,98%含有量)に加え、濃硝酸(924.16mg,14.37mmol,660.12μL,98%含有量)を加え、50℃で5時間反応させ、pHが8になるまで反応液に飽和炭酸水素ナトリウムを徐々に加え、酢酸エチル(20mL*2)で抽出し、有機相を合併し、30mL飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過した後、次の工程に直接使用し、化合物5-3の酢酸エチル溶液を得た。MS m/z=324.2[M+H]
【0089】
工程3:化合物5-4合成
ラネーニッケル(0.5g,10%含有量)をメタノール(30mL)に加え、化合物5-3(0.25g,773.31μmol)の酢酸エチル(35mL)溶液を加え、水素ガス(15psi)下20℃で0.5時間反応させ、反応液から触媒を回収した後、濃縮して化合物5-4を得た。MS m/z=294.2[M+H]
【0090】
工程4:化合物5合成
化合物1-5(0.1g,308.33μmol)と化合物5-4(72.35mg,246.66μmol)をピリジン(2mL)に加え、トリn-プロピル環状リン酸無水物50%酢酸エチル溶液(1.96g,3.08mmol,1.83mL,50%含有量)を加え、30℃で1.5時間反応させ、反応液を直接に濃縮し、pre-HPLC(カラム:Welch Xtimate C18 150*25mm*5μm;移動相:[HO(0.04%HCl)-ACN];アセトニトリル:10%-30%,8min)に送って分離精製し、化合物5を得た。H NMR(400MHz,d-MeOH)δ=9.56(d,J=2.0Hz,2H),8.83(d,J=1.6Hz,1H),8.74(d,J=7.2Hz,1H),8.27(d,J=8.0Hz,1H),8.17(dd,J=2.0,8.0Hz,1H),8.10(d,J=11.2Hz,1H),7.77(s,1H),7.56(s,1H),4.58(s,2H),4.16(s,3H),4.11(s,3H),4.06(s,2H),3.75(s,4H),3.00(s,6H),2.81(s,3H);MS m/z=600.3[M+H]
【0091】
実施例6
【化58】
合成経路:
【化59】
【0092】
工程1:化合物6-2合成
化合物2-3(0.6g,1.72mmol)を塩酸溶液(2M,8.59mL)に加え、100℃で1時間反応させ、反応液を直接にスピン乾燥し、アセトニトリル(30mL*2)で2回濃縮してスピン乾燥し、化合物6-2を得た。MS m/z=308.2[M+H]
【0093】
工程2:化合物6-3合成
ラネーニッケル(1.67g,19.53mmol)をメタノール(10mL)に加え、化合物6-2(0.6g,1.95mmol)を加え、水素ガス(15psi)下20℃で0.5時間反応させた。触媒を回収した後、反応液を濃縮してスピン乾燥し、化合物6-3を得た。H NMR(400MHz,d-MeOH)δ=7.33(d,J=12.4Hz,1H),7.11(d,J=8.8Hz,1H),3.50(s,2H),2.92-2.87(m,4H),2.52-2.40(m,4H);MS m/z=278.1[M+H]
【0094】
工程3:化合物6-4合成
化合物6-3(100mg,360.67μmol,1eq)とオキセタンケトン(259.91mg,3.61mmol,10eq)を無水テトラヒドロフラン(5mL)に加え、酢酸水素化ホウ素ナトリウム(229.32mg,1.08mmol)を加え、50℃で1時間反応させ、反応液を15mL飽和炭酸水素ナトリウムに加え、酢酸エチル(5mL*2)で抽出し、有機相を合併し、10mL飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過した後濃縮し、粗生成物を調製プレート(ジクロロメタン:メタノール=10:1)で精製して化合物6-4を得た。MS m/z=334.1[M+H]
【0095】
工程4:化合物6合成
化合物1-5(30mg,92.50μmol)と化合物6-4(30.83mg,92.50μmol)をピリジン(3mL)に加え、トリn-プロピル環状リン酸無水物50%酢酸エチル溶液(588.62mg,924.98μmol,550.11μL,50%含有量)を加え、30℃で1時間反応させ、反応液を直接に濃縮し、粗生成物をpre-HPLC(カラム:Waters Xbridge BEH C18 100*25mm*5μm;移動相:[HO(10mM NHHCO)-ACN];アセトニトリル:25%-55%,10min)に送って分離精製し、化合物6を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ=9.33(d,J=2.0Hz,1H),8.71(s,1H),8.67-8.60(m,2H),7.94-7.82(m,2H),7.63-7.50(m,2H),7.48(s,1H),7.16(s,1H),4.78-4.53(m,4H),4.07(s,3H),4.05(s,3H),3.85(s,2H),3.62(s,2H),3.55-3.48(m,1H),2.63-2.21(m,8H);MS m/z=640.3[M+H]
【0096】
実施例7
【化60】
合成経路:
【化61】
【0097】
工程1:化合物7-2の合成
化合物1-1(1g,5.21mmol,1eq)と化合物3,6ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-酸tert-ブチル(1.55g,7.81mmol,1.5eq)を1,2-ジクロロエタン(20mL)に溶解し、次いで酢酸水素化ホウ素ナトリウム(2.21g,10.41mmol,2eq)を加えて15℃で0.5hr撹拌した。反応液に水(25mL)とジクロロメタン(20mL)を加えて1回抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮した。粗生成物をフラッシュシリカゲルカラム(石油エステル:酢酸エチル=100:0~3:1)で精製して化合物7-2を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ:7.63(dd,J=8.8,5.2Hz,1H),7.50-7.47(m,1H),7.03-6.98(m,1H),4.14-4.10(m,2H),3.86(s,2H),3.27-3.12(m,2H),2.81(d,J=9.2Hz,2H),2.45(dd,J=14.0,6.0Hz,1H),1.75(d,J=7.8Hz,1H),1.49(s,9H);LCMS m/z=375.3[M+H]
【0098】
工程2:化合物7-3の合成
化合物7-2(1g,2.67mmol,1eq)を酢酸エチル(3mL)に溶解し、次いで、塩酸/酢酸エチル(4M,6.68mL,10eq)を加えて15℃で16hr撹拌した。反応液を濾過し、濾過ケーキを生成物とした。化合物7-3を得た。H NMR(400MHz,d-MeOH)δ:7.88-7.83(m,2H),7.34-7.29(m,1H),4.42-4.39(m,4H),3.70-3.48(m,4H),3.00-2.94(m,1H),2.55(d,J=10.4Hz,1H);MS m/z=275.2[M+H]
【0099】
工程3:化合物7-4の合成
化合物7-3(0.4g,1.29mmol,1eq,HCl)とアセトアルデヒド(5M,514.94μL,2eq)を1,2-ジクロロエタン(12mL)に溶解し、15℃で酢酸水素化ホウ素ナトリウム(818.52mg,3.86mmol,3eq)を加えて1hr撹拌した。反応液に水10mLを加え、反応液にジクロロメタン10mLを静置、分液し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、化合物7-4を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ:7.70-7.67(m,1H),7.32(d,J=9.2Hz,1H),7.10-7.08(m,1H),4.34(s,2H),4.03(s,2H),3.23(d,J=12.3Hz,3H),3.10(d,J=12.0Hz,2H),2.91-2.90(m,2H),2.28-2.22(m,1H),1.28-1.22(m,3H);MS m/z=303.2[M+H]
【0100】
工程4:化合物7-5の調製
化合物7-4(390mg,1.29mmol,1eq)を硫酸(5mL)に溶解し、発煙硝酸(162.58mg,2.58mmol,116.13μL,2eq)を加え、60℃で20hr撹拌した。反応液を5mL氷水に注ぎ、飽和炭酸カリウム水溶液30mLを加えpH=8に調整した後、ジクロロメタン40mLを加えて静置、分液し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、化合物7-5を得た。MS m/z=348.2[M+H]
【0101】
工程5:化合物7-6の調製
化合物7-5(100mg,287.93μmol,1eq)をメタノール(4mL)に溶解し、ラネーニッケル(100.00mg,1.17mmol,4.05eq)を加え、水素ガス(15Psi)下15℃で0.5hr撹拌した。反応液を濾過し、濾過ケーキを回収し、濾過液を濃縮し、化合物7-6を得た。
【0102】
工程6:化合物7の調製
化合物7-6(30mg,94.54μmol,1eq)、化合物1-5(30.66mg,94.54μmol,1eq)をピリジン(2mL)に溶解し、次いで、1-プロピル環状リン酸無水物(601.62mg,945.41μmol,562.26μL,50%含有量,10eq)を加えて35℃で0.5hr撹拌した。反応液を濃縮した。HPLC分離精製:分離方法:(カラム:Welch Xtimate C18 150*25mm*5μm;移動相:A(アセトニトリル)とB(水、0.04%塩酸含有);勾配:5%-20%,8min)、(カラム:Phenomenex Gemini-NX C18 75*30mm*3μm;移動相:A(アセトニトリル)とB(水、10mM炭酸水素アンモニウム);勾配:30%-50%,6min)。化合物7を得た。H NMR(400MHz,d-MeOH)δ:9.24(s,1H),8.69(d,J=10.0Hz,2H),8.40(s,1H),7.97(d,J=9.6Hz,2H),7.54(d,J=10.4Hz,1H),7.36(s,2H),4.01-3.91(m,10H),3.65(s,2H),3.01-2.92(m,4H),2.55(s,3H),2.12(s,1H),1.03(s,3H);LCMS m/z=624.5[M+H]
【0103】
実施例8
【化62】
合成経路:
【化63】
【0104】
工程1:化合物8-2合成
化合物6-3(0.1g,360.67μmol)をN,N-ジメチルフォルムアミド(5mL)に加え、炭酸セシウム(235.03mg,721.34μmol)とトリフルオロメタンスルホン酸トリフルオロエチル(100.45mg,432.81μmol)を加え、60℃で1時間反応させ、反応液を10mL水に加え、メチルt-ブチルエーテル(5mL*2)で抽出し、有機相を合併し、5mL飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過した後、濃縮し、粗生成物を調製プレート(石油エステル:酢酸エチル=2.5:1)で分離精製し、化合物8-2を得た。MS m/z=360.2[M+H]
【0105】
工程2:化合物8合成
化合物1-5(30mg,92.50μmol,1eq)と化合物8-2(33.23mg,92.50μmol,1eq)をピリジン(3mL)に加え、トリn-プロピル環状リン酸無水物50%酢酸エチル溶液(588.62mg,924.98μmol,550.11μL,50%含有量,10eq)を加え、30℃で2.5時間反応させ、反応液を直接に濃縮し、pre-HPLC(カラム:Phenomenex luna C18 80*40mm*3μm;移動相:[HO(0.04%HCl)-ACN];アセトニトリル:19%-39%,7min)に送って分離精製し、化合物8を得た。H NMR(400MHz,d-MeOH)δ=9.60-9.55(m,2H),9.05(d,J=1.6Hz,1H),8.78(d,J=7.6Hz,1H),8.65(dd,J=2.0,8.4Hz,1H),8.55(d,J=8.4Hz,1H),8.03(d,J=11.2Hz,1H),7.86(s,1H),7.67(s,1H),4.56(s,2H),4.27(s,2H),4.22(s,3H),4.15(s,3H),3.55-3.40(m,3H),3.31-3.24(m,3H),3.15-3.00(m,4H);MS m/z=666.3[M+H]
【0106】
実験例1:ヒト由来野生型、V804M変異型RETキナーゼの体外阻害活性評価
Reaction Biology Corp社の33P同位体標識キナーゼ活性を用いてIC50値を測定し、被験化合物のヒト由来野生型、V804M変異型RETに対する阻害能力を評価した。
緩衝液条件:20mMヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(Hepes)(pH7.5)、10mM MgCl2、1mMエチレンビス[(オキシエチレン)ニトリロ]四酢酸(EGTA)、0.02%ポリオキシエチレンドデシルエーテル(Brij35)、0.02mg/mL BSA、0.1mM NaVO、2mMジチオスレイトール(DTT)、1%DMSO。
化合物処理:被験化合物を100%DMSOに溶解し、Integra Viaflo AssistによりDMSOを用いて特定の濃度まで連続希釈した。
実験ステップ:基質を新たに調製した緩衝液に溶解し、被験キナーゼをその中に加え、軽く均一に混合した。被験化合物を溶解したDMSO溶液を、音響技法(Echo 550)を用いて上記均一に混合された反応液に加え、室温で20分間インキュベートした。反応液中の化合物濃度は、3μM、1μM、0.333μM、0.111μM、0.0370μM、0.0123μM、4.12nM、1.37nM、0.457nM、0.152nMであった。15分間インキュベートした後、33P-ATP(活性度0.01μCi/μL、km濃度)を加えて反応開始させた。室温で120分間反応させた後、フィルタ結合方法により放射性を検出した。被験化合物を含むキナーゼ活性とブランク群(DMSOのみを含む)のキナーゼ活性の比較を用いて、キナーゼ活性データを表し、Prism4ソフトウェア(GraphPad)により曲線フィッティングを行ってIC50値を得た。実験結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
結論:インビトロ酵素活性の体外評価結果から分かるように、被験化合物は、野生型、V804M変異型RETキナーゼに対して、いずれも良好な阻害活性を有する。
【0108】
実験例2ミクロソーム安定性研究(Microsome stability)
実験目的:
動物とヒト肝ミクロソームにおけるI相代謝安定性を測定した。
実験方法:
反応プレートとNCF60プレートに供試品希釈標準溶液10μLとミクロソーム希釈標準溶液(0.625mg/mL肝ミクロソームタンパク質)80μLをそれぞれ添加し、Blank60プレートにミクロソーム希釈標準溶液のみを添加し、そして上記インキュベートプレートを37℃のウォーターバスに置いて約10分間予備インキュベートした。
予備インキュベーション終了後、NCF60プレートとT0プレートを除いて、各検体孔に10μL NADPH再生系希釈標準溶液を添加して反応開始させ、NCF60プレートで孔毎に10μLリン酸カリウム塩緩衝液を添加した。供試品又は対照品の反応最終濃度は、1μMであり、肝ミクロソーム濃度は、0.5mg/mLであった。
適切な時間インキュベートした後、反応を終了させるために、300μL停止液(200ng/mLのトルブタミドを含むアセトニトリル溶液)を各検体孔にそれぞれ添加した。T0プレート検体に停止液を加えた後、NADPH再生系希釈標準溶液を添加した。
すべての検体プレートを振り混ぜ、4000回で20分間遠心分離し、その後、1孔当たりから100μLの上清液を採取し、300μL純水に希釈してLC-MS/MS分析に用いられた。
【0109】
データ処理:
以下の式の検体と内部標準ピーク面積との比を残存パーセントに変換して、供試品と対照品の体外消失速度定数keを求めた。
%残存量=任意時点で対照品と内部標準ピーク面積の比/0分間時点で対照品と内部標準ピーク面積の比*100%
CLint(mic)=0.693/半減期/mgミクロソームタンパク1mL当たり(インキュベート時ミクロソーム濃度)
CLint(liver)=CLint(mic)*mgミクロソームタンパク/g肝重量*肝重量体重比
mgミクロソームタンパク/g肝重量:動物とヒト種における数値は、いずれも45であった。
肝重量体重比:マウスとヒトにおけるパラメータは、それぞれ88及び20g/kgであった。
【0110】
実験結果を表2に示す。
【表2】
注:MMSはミクロソーム代謝安定性を表し、Hはヒトを表し、Cはカニクイザルを表し、Dはビーグルを表し、Rはラットを表し、Mはマウスを表す。
実験結論:この化合物は、良いI相代謝安定性を有する。
【0111】
実験例3 シトクロム酵素阻害研究(CYP inhibition)
実験目的:
CYPアイソザイムの混合プローブ基質を用いて、本発明の化合物のヒト肝ミクロソームシトクロムP450アイソザイム(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6とCYP3A4)に対する阻害性を評価した。
実験方法:
供試品は、DMSOで10mMのストック液に調製した。反応プレートの無阻害剤対照(NIC)、供試品検体孔にヒト肝ミクロソームと基質との混合物溶液178μLを加え、氷上に置いた。それぞれ、希釈プレートから2μLブランク溶媒、供試品希釈標準溶液を採取して反応プレートに加えた(最終濃度0.05-50μM)。反応プレートを37±0.2℃ウォーターバスにて10分間予熱した。液体処理ワークステーションを用いて20μLの補助因子溶液を採取して反応プレートに加え、反応を開始させた。
10分後、停止液400μLを反応プレートに添加して反応を終了させ、反応プレートを氷上に5分間置いた。プレートを10分間揺動して溶液を均一にし、4000回/分で20分間遠心分離した後、上清を取り出し、適当な割合で超純水を加えた。液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC/MS/MS)を用いて、基質と生成物のピーク面積を測定した。検体は、検出前に2-8℃の環境下で保管した。
液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC-MS/MS)方法を用いて、プローブ基質から生成した代謝生成物と内部標準ピーク面積の比を測定した。分析物と内部標準の保持時間、クロマトグラム収集とクロマトグラムの積分は、ソフトウェアAnalyst(AB Sciex、Framingham、Massachusetts、USA)で処理した。
【0112】
データ処理:
SigmaPlot(V.ll)を用いて供試品の平均パーセンテージ活性濃度に対して非線形回帰分析を行った。IC50値を3パラメータ又は4パラメータの逆曲対数方程式により算出した。供試品の最高濃度(50μM)作用下でCYPパーセンテージ活性が50%以上である場合、IC50値を「>50μM」と標記した。
3パラメータの逆曲対数方程式
【数1】
4パラメータの逆曲対数方程式
【数2】
max:最高酵素活性。
min:最小酵素活性。
x:供試品又はポジティブコントロール阻害剤の濃度。
y:対応濃度下の酵素活性、hillslope:勾配。
IC50:半数阻害濃度。
最小酵素活性が±10%内にあれば、4パラメータの逆曲対数方程式を使用し、そうでなければ、3パラメータの逆曲対数方程式を使用する。
【0113】
実験結果を表3に示す。
【表3】
実験結論:この化合物は、ヒト肝ミクロソームシトクロムP450アイソザイムに対する阻害作用が非常に小さく、高い薬物相互作用安全性を有する。
【0114】
実験例4 マウスの薬物動態学研究
実験目的:
本実験は、本発明化合物の静脈注射と経口投与後の雄性CD-1マウス血漿における薬物動態学状況を研究することを目的とした。
実験方法:
動物をランダムに2群に分け、各群2頭の雄マウスとした。化合物を指定の製剤に調製し、静脈注射製剤は、5%DMSO/95%(6%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)で上澄み溶液を調製し、経口製剤は、0.l%Tween80/0.5%HPMC水溶液で均一懸濁液を調製した。
投与後の5、15、30分、1、2、4、8、12、24時間の時点で、動物の伏在静脈から全血検体を採取した。全血検体を、抗凝固剤を含む遠心管に添加し、4℃、3200gで10分間遠心分離し、上清血漿を採取してドライアイス上で急速冷凍し、その後、LC-MS/MS分析を行うまで-70±10℃の冷蔵庫に保管した。
データ処理:
WinNonlin(商標)Version6.3.0(Pharsight,Mountain View,CA)薬物動態学ソフトウェアを用いて、化合物の血漿薬物濃度データをノンコンパートメントモデルで処理した。最高血漿中濃度(Cmax)と最高血漿中濃度到達時間(Tmax)及び定量可能末時間は、血漿中濃度-時間図から直接得られた。
対数線形台形公式を用いて、血漿クリアランス(CL)、分布容積(Vd)、消失相半減期(T1/2)、0時間から末端時間点までの薬物の体内平均滞留時間(MRT0-last)、0時間から無限時間までの薬物の体内平均滞留時間(MRT0-inf)、0時間から末端時点までの時間-血漿中濃度曲線下面積(AUC0-last)、0時間から無限時間-血漿中濃度曲線下面積(AUC0-inf)及びバイオアベイラビリティ(F)などの薬物動態学パラメータを算出した。
【0115】
実験結果を表4に示す。
【表4】
実験結論:この化合物は、高い経口バイオアベイラビリティを有する。