(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】価格提示装置、価格提示システム及び価格提示方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0283 20230101AFI20240328BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240328BHJP
【FI】
G06Q30/0283
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2019054167
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-03-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519003608
【氏名又は名称】atma株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】上浦 伸也
【審査官】青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-083112(JP,A)
【文献】特開2017-228056(JP,A)
【文献】特開2012-053783(JP,A)
【文献】特開2019-003429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在販売者が販売している特定の商品と、前記商品の現在の販売価格と、前記商品の
第1の所定期間にわたる販売数を前記商品の前記販売者から入力部を通じて取得する現商品情報取得部と、
前記商品の前記現在の販売価格よりも高価格となる高販売価格により前記商品を前記
第1の所定期間と異なる第2の所定期間にわたり販売した際の高価格販売数を前記商品の前記販売者から前記入力部を通じて取得する高価格商品情報取得部と、
前記商品の前記現在の販売価格よりも低価格となる低販売価格により前記商品を前記
第1の所定期間及び前記第2の所定期間と異なる第3の所定期間にわたり販売した際の低価格販売数を前記商品の前記販売者から前記入力部を通じて取得する低価格商品情報取得部と、
前記商品に関し、前記商品の前記現在の販売価格、前記商品の前記高販売価格、及び前記商品の前記低販売価格と、前記商品の前記現在の販売価格の販売数、前記商品の前記高価格販売数、及び前記商品の前記低価格販売数と、を教師データとして機械学習を実行し
たダイナミックプライシングを通じて、前記商品の価格毎の予想販売数を推定する推定部と、
前記販売者におけ
る顧客の前記商品
の直近の所定期間の来店における平均購入金額または積算購入金額の購入金額に基づいて前記顧客を順位付けして顧客間の顧客順位を設定する顧客順位設定部と、
前記商品につい
て前記推定部において
ダイナミックプライシングを通じて推定される前記商品の予想販売数と対応する販売価格から
、さらに、前記顧客順位に応じて予め設定された値引き率
を適用して値引きし
て前記商品の予想販売数と対応する販売価格とは異なる前記顧客毎の前記顧客順位に応じた個別価格を設定する顧客別価格設定部と、
を備えることを特徴とする価格提示装置。
【請求項2】
前記顧客の端末に対し前記商品と前記商品についての前記個別価格を通知する通知部が備えられる請求項1に記載の価格提示装置。
【請求項3】
現在販売者が販売している特定の商品と、前記商品の現在の販売価格と、前記商品の
第1の所定期間にわたる販売数を前記商品の前記販売者から入力部を通じて取得する現商品情報取得部と、
前記商品の前記現在の販売価格よりも高価格となる高販売価格により前記商品を前記
第1の所定期間と異なる第2の所定期間にわたり販売した際の高価格販売数を前記商品の前記販売者から前記入力部を通じて取得する高価格商品情報取得部と、
前記商品の前記現在の販売価格よりも低価格となる低販売価格により前記商品を前記
第1の所定期間及び前記第2の所定期間と異なる第3の所定期間にわたり販売した際の低価格販売数を前記商品の前記販売者から前記入力部を通じて取得する低価格商品情報取得部と、
前記商品に関し、前記商品の前記現在の販売価格、前記商品の前記高販売価格、及び前記商品の前記低販売価格と、前記商品の前記現在の販売価格の販売数、前記商品の前記高価格販売数、及び前記商品の前記低価格販売数と、を教師データとして機械学習を実行し
たダイナミックプライシングを通じて、前記商品の価格毎の予想販売数を推定する推定部と、
前記販売者におけ
る顧客の前記商品
の直近の所定期間の来店における平均購入金額または積算購入金額の購入金額に基づいて前記顧客を順位付けして顧客間の顧客順位を設定する顧客順位設定部と、
前記商品について前記推定部において
ダイナミックプライシングを通じて推定される前記商品の予想販売数と対応する販売価格から
、さらに、前記顧客順位に応じて予め設定された値引き率
を適用して値引きし
て前記商品の予想販売数と対応する販売価格とは異なる前記顧客毎の前記顧客順位に応じた個別価格を設定する顧客別価格設定部と、
を備えることを特徴とする価格提示システム。
【請求項4】
コンピュータが、
現在販売者が販売している特定の商品と、前記商品の現在の販売価格と、前記商品の
第1の所定期間にわたる販売数を前記商品の前記販売者から入力部を通じて取得する現商品情報取得ステップと、
前記商品の前記現在の販売価格よりも高価格となる高販売価格により前記商品を前記
第1の所定期間と異なる第2の所定期間にわたり販売した際の高価格販売数を前記商品の前記販売者から前記入力部を通じて取得する高価格商品情報取得ステップと、
前記商品の前記現在の販売価格よりも低価格となる低販売価格により前記商品を前記
第1の所定期間及び前記第2の所定期間と異なる第3の所定期間にわたり販売した際の低価格販売数を前記商品の前記販売者から前記入力部を通じて取得する低価格商品情報取得ステップと、
前記商品に関し、前記商品の前記現在の販売価格、前記商品の前記高販売価格、及び前記商品の前記低販売価格と、前記商品の前記現在の販売価格の販売数、前記商品の前記高価格販売数、及び前記商品の前記低価格販売数と、を教師データとして機械学習を実行し
たダイナミックプライシングを通じて、前記商品の価格毎の予想販売数を推定する推定ステップと、
前記販売者におけ
る顧客の前記商品
の直近の所定期間の来店における平均購入金額または積算購入金額の購入金額に基づいて前記顧客を順位付けして顧客間の顧客順位を設定する顧客順位設定ステップと、
前記商品につい
て前記推定ステップにおいて
ダイナミックプライシングを通じて推定される前記商品の予想販売数と対応する販売価格から
、さらに、前記顧客順位に応じて予め設定された値引き率
を適用して値引きし
て前記商品の予想販売数と対応する販売価格とは異なる前記顧客毎の前記顧客順位に応じた個別価格を設定する顧客別価格設定ステップと、
を実行することを特徴とする価格提示方法。
【請求項5】
コンピュータに、
現在販売者が販売している特定の商品と、前記商品の現在の販売価格と、前記商品の
第1の所定期間にわたる販売数を前記商品の前記販売者から入力部を通じて取得する現商品情報取得機能と、
前記商品の前記現在の販売価格よりも高価格となる高販売価格により前記商品を前記
第1の所定期間と異なる第2の所定期間にわたり販売した際の高価格販売数を前記商品の販売者から入力部を通じて取得する高価格商品情報取得機能と、
前記商品の前記現在の販売価格よりも低価格となる低販売価格により前記商品を前記
第1の所定期間及び前記第2の所定期間と異なる第3の所定期間にわたり販売した際の低価格販売数を前記商品の販売者から入力部を通じて取得する低価格商品情報取得機能と、
前記商品に関し、前記商品の前記現在の販売価格、前記商品の前記高販売価格、及び前記商品の前記低販売価格と、前記商品の前記現在の販売価格の販売数、前記商品の前記高価格販売数、及び前記商品の前記低価格販売数と、を教師データとして機械学習を実行し
たダイナミックプライシングを通じて、前記商品の価格毎の予想販売数を推定する推定機能と、
前記販売者におけ
る顧客の前記商品
の直近の所定期間の来店における平均購入金額または積算購入金額の購入金額に基づいて前記顧客を順位付けして顧客間の顧客順位を設定する顧客順位設定機能と、
前記商品につい
て前記推定機能において
ダイナミックプライシングを通じて推定される前記商品の予想販売数と対応する販売価格から
、さらに、前記顧客順位に応じて予め設定された値引き率
を適用して値引きし
て前記商品の予想販売数と対応する販売価格とは異なる前記顧客毎の前記顧客順位に応じた個別価格を設定する顧客別価格設定機能と、
を実現させることを特徴とする価格提示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、価格提示装置、価格提示システム及び価格提示方法に関し、特に商品の価格に応じた販売数を推定するとともに、顧客に応じた価格を提示することができる価格提示装置とそのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品の販売価格は需要と供給の調和点により決定される。一般に市場における競り(せり)が代表的である。ただし、個々の商品について個別に競りが行われることは無く、商品の販売価格は販売者により設定され、その価格により商品は購入される。この場合、値下げ等の価格設定も販売者側の都合による。このような供給者から購入者への一方的な販売とは別に、インターネットを介した相互間の商品の取引のシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
そこで、販売者から購入者への商品の販売に際し、従前の価格設定をより柔軟にするべく、ダイナミックプライシング等と称される需要と供給に応じた価格決定の仕組みが提唱されている。この仕組みを導入すると、販売者(供給者)と購入者(需要者、消費者)の双方において、より良い条件による取引が成立しやすい。
【0004】
販売者がダイナミックプライシングの導入使用とする場合、次のような懸念点も生じ得る。すなわち、ダイナミックプライシングを通じて頻繁に商品の価格が変動してしまう。
その販売者から高頻度で商品を購入する常連の購入者の立場からすると、商品価格の頻繁な変動により、常連の購入者は販売者に不信感を抱きかねない。従って、販売者はダイナミックプライシングの利点を認識しつつも、その導入に躊躇しがちである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、ダイナミックプライシングの導入による柔軟な価格決定を可能とするとともに、常連の購入者の利益も考慮することができ、販売者と購入者の双方を満足する価格を提示可能な価格提示装置、価格提示システム及び価格提示方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、第1の態様の価格提示装置は、商品と、同商品の販売価格と、同商品の販売数を取得する現商品情報取得部と、同商品の販売価格よりも高価格となる高販売価格により同商品を所定期間にわたり販売した際の高価格販売数を取得する高価格商品情報取得部と、同商品の販売価格よりも低価格となる低販売価格により同商品を所定期間にわたり販売した際の低価格販売数を取得する低価格商品情報取得部と、同商品に関し、販売価格及び販売数と、高販売価格及び高価格販売数と、低販売価格及び低価格販売数とから、同商品の価格毎の予想販売数を推定する推定部と、顧客を順位付けして顧客順位を設定する顧客順位設定部と、顧客順位に応じ商品について顧客毎の個別価格を設定する顧客別価格設定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
第2の態様の価格提示装置では、高販売価格及び低販売価格が複数種類であることを特徴とする。
【0009】
第3の態様の価格提示装置では、商品は、同商品の販売者における販売数量に応じて選択されることを特徴とする。
【0010】
第4の態様の価格提示装置では、顧客の順位付けに際し、商品の販売者における利用頻度または購入金額に基づいて顧客順位が設定されることを特徴とする。
【0011】
第5の態様の価格提示装置では、顧客順位に応じて顧客に対し商品と同商品についての個別価格を通知する通知部が備えられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の価格提示装置は、商品と、同商品の販売価格と、同商品の販売数を取得する現商品情報取得部と、商品の販売価格よりも高価格となる高販売価格により同商品を所定期間にわたり販売した際の高価格販売数を取得する高価格商品情報取得部と、商品の販売価格よりも低価格となる低販売価格により同商品を所定期間にわたり販売した際の低価格販売数を取得する低価格商品情報取得部と、商品に関し、販売価格及び販売数と、高販売価格及び高価格販売数と、低販売価格及び低価格販売数とから、商品の価格毎の予想販売数を推定する推定部と、顧客を順位付けして顧客順位を設定する顧客順位設定部と、顧客順位に応じ商品について顧客毎の個別価格を設定する顧客別価格設定部と、を備えるため、ダイナミックプライシングの導入による柔軟な価格決定を可能とするとともに、常連の購入者の利益も考慮することができ、販売者と購入者の双方を満足する価格を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の価格提示装置及び価格提示システムの構成を示す模式図である。
【
図2】商品と高価格販売数との関係を示す模式図である。
【
図3】商品と低価格販売数との関係を示す模式図である。
【
図7】実施形態の価格提示方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態の価格提示装置1の構成は、
図1の模式図として表される。価格提示装置1は、ハードウェア的に、CPU100、ROM210、RAM220、記憶部230により構成される。その他にメインメモリ、LSI等も含まれる。そして、出力部240と入力部250が価格提示装置1に接続される。価格提示装置1は、パーソナルコンピュータ(PC)、メインフレーム、ワークステーション、クラウドコンピューティングシステム、さらには、タブレット端末、スマートフォン等、種々の電子計算機(計算リソース)を用いて実現する処理部101からなる。ソフトウェア的に、メインメモリにロードされた価格提示プログラム等により実現される。
【0015】
さらに、
図1のとおり、価格提示装置1をインターネット回線10等の有線または無線の回線を介して商品の購入者となる顧客の端末11と接続することにより、価格提示システム1Sとして構築することができる。価格提示システム1Sにおける処理部101と価格提示装置1における処理部101は共通する構成であるため、価格提示装置1として以降説明する。
【0016】
図1の価格提示装置1(価格提示システム1S)の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、価格提示装置1の処理部101は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行することで実現される。このプログラムを格納する記録媒体は、「一時的でない有形の媒体」、例えば、CD、DVD、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、このプログラムは、当該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して価格提示装置1(価格提示システム1S)のコンピュータに供給されてもよい。
【0017】
価格提示装置1の処理部101における記憶部230は、HDDまたはSSD等の公知の記憶装置である。また、価格提示装置内の各種の演算を実行する各機能部はCPU100等の演算素子である。
【0018】
価格提示装置1の処理部101は、詳細には、現商品情報取得部110、高価格商品情報取得部120、低価格商品情報取得部130、推定部140、顧客順位設定部150、顧客別価格提示部160、通知部170を備える。さらに、価格提示装置1の処理部101は、出力部240、入力部250等を備える。
【0019】
出力部240は、公知のディスプレイ(液晶表示装置、有機EL表示装置等)またはスピーカであり、価格提示装置1の処理部101により演算した結果を表示する。特には、通知部170により形成される画像等を表示する。入力部250は、CD、DVDのドライブ、キーボード、マウス等である。出力部240にタッチパネル機能を有するディスプレイを用いることが可能であり、出力部240との兼用も可能である。その他、処理部101には、信号の入出力のためのI/Oバッファ(図示せず)も備えられる。これらは例示であり、適宜組み合わせられ、最適に選択される。
【0020】
実施形態の価格提示装置1の各機能部について、
図2ないし
図6を交えて説明する。まず、現商品情報取得部110は、現在販売者が販売している商品の種類(原則1種類)と、当該商品の販売者による現在の販売価格(現価格)と、当該商品の販売者による所定期間の販売数(販売または提供の実績数)を取得し記憶する。処理部の記憶部230は、商品の種類、現在の販売価格(現価格)と、販売者による所定期間の販売数(現販売数)を記憶する。
【0021】
販売者が販売する商品とは、食品、雑貨品、衣類等の一般的な物品をいい、さらには、各種のチケット(航空券、劇場の入場券等)、さらには宿泊施設、トレーニングジムの利用料、美容院のヘアセット料金等のサービス(役務)をいう。このように、商品の範囲はサービスも含む広範囲であり何らの限定は無い。また、販売者はサービス(役務)の提供者も含む。この書面においては、説明の便宜から、商品、販売者の文言により説明している。現実に応じて、商品、販売者の文言は、サービス、提供者に読み替えられる。加えて、所定期間は、販売者による当該商品の販売期間であり、例えば、1ないし3箇月間の月単位、または、1ないし3週間の週単位、さらには1日ないし7日間の日単位等の適宜である。
【0022】
図示では、販売者から商品を購入する顧客は端末11を有する。端末11は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット端末、スマートフォン等である。後述する通知内容が端末11に表示される。価格提示装置1の処理部101は、商品の販売者が装備していても、インターネット回線10を通じて接続された他の事業者が備えていてもよい。自明ながら、顧客(端末)の数、販売者の数は制約されない。処理部101における処理が可能である数まで拡張可能である。
【0023】
高価格商品情報取得部120は、現在販売者が販売している商品と同一の商品について、現在販売者が販売している価格(現価格)よりも高価格とする高販売価格により、同一の商品を所定期間にわたり販売した際の高価格販売数を取得する。さらに、高販売価格は1種類に限られず、複数種類とすることができる。
【0024】
同様に、低価格商品情報取得部130は、現在販売者が販売している商品と同一の商品について、現在販売者が販売している価格(現価格)よりも低価格とする低販売価格により、同一の商品を所定期間にわたり販売した際の低価格販売数を取得する。さらに、低販売価格は1種類に限られず、複数種類とすることができる。
【0025】
実際に、現価格よりも高価な高販売価格に設定した際の高価格販売数のデータが受け入れられる。さらに、実際に、現価格よりも安価な低販売価格に設定した際の低価格販売数のデータが受け入れられる。この様子について、
図2及び
図3の模式図を用い説明する。
【0026】
図2において、特定の商品Gが販売者により販売されている。このとき、商品Gの販売価格はPであり、所定期間(例えば1箇月間)の販売数はSである。次に、価格Pを1種類目の高販売価格P1に値上げして所定期間販売したとき、その販売数は高価格販売数S1となる。さらに、価格Pを2種類目の高販売価格P2に値上げして所定期間販売したとき、その販売数は高価格販売数S2となる。
【0027】
図3においては、商品Gの価格Pを2種類目の低販売価格P3に値下げして所定期間販売したとき、その販売数は低価格販売数S3となる。さらに、価格Pを2種類目の低販売価格P4に値下げして所定期間販売したとき、その販売数は価格販売数S4となる。
図2の高販売価格の設定数、
図3の低販売価格の設定数は、商品(サービス)の数量、性質等に依存するため、適宜である。
【0028】
現価格とその販売数の関係は、当該商品の販売者の販売実績から把握可能である。しかしながら、ダイナミックプライシング等により商品の価格を変更する場合、価格の変更に伴う販売数(売上)の増減について正確に推定することは困難である。または、極めて粗い予想となる。そこで、商品の販売者において、実際に商品の価格設定は変化され、異なる価格における現実の販売数(売上)が取得される。このことにより、次述の推定部140のための教師データは確保される。
【0029】
推定部140は、販売者が販売している商品と同一の商品Gに関し、その商品Gの販売価格P及び販売数Sと、その商品Gの高販売価格P1(さらにはP2)及び高価格販売数S1(さらにはS2)と、その商品Gの低販売価格P3(さらにはP4)及び低価格販売数S3(さらにはS4)とから、当該商品Gの価格毎の予想販売数を推定する。すなわち、推定部140は、列記の価格と販売数のデータを教師データとして機械学習を実行して、商品Gの価格に応じた予想販売数を推定する。
【0030】
推定部140におけるデータ処理のための機械学習の手法としては、サポートベクター(Support Vector Machine:SVM)、モデルツリー、決定ツリー、ニューラルネットワーク、多重線形回帰、局部的重み付け回帰、確立サーチ方法等が用いられる。
【0031】
図4の概念図は、推定部140において、商品Gの価格毎の予想販売数と推定モデルを示す。
図4(a)では、基準となる商品Gの販売価格(現価格)P及びその販売数Sが示される。そして、ここに、その商品Gの高販売価格P1及び高価格販売数S1と、その商品Gの低販売価格P3及び低価格販売数S3が加えられる。この3点のデータから、例えば、当該商品Gの価格毎の予想販売数は、太線で示す直線と推定される。従って、現価格P、高販売価格P1、及び低販売価格P3以外の価格の場合の販売数は、回帰直線に基づいて線形的に補完される。
【0032】
図4(b)では、基準となる商品Gの販売価格(現価格)P及びその販売数Sが示される。そして、ここに、その商品Gの高販売価格P1とP2及び高価格販売数S1とS2と、その商品Gの低販売価格P3とP4及び低価格販売数S3とS4がさらに加えられる。この5点のデータから、例えば、当該商品Gの価格毎の予想販売数は、太線で示す曲線と推定される。従って、現価格P、高販売価格P1,P2、及び低販売価格P3,P4以外の価格の場合の販売数は、回帰分析に基づいて補完される。
【0033】
結果、当該商品Gの価格毎の予想販売数は推定される。特に
図4(b)の例では、高販売価格P2まで販売価格を値上げすると、急な販売数の減少が推定される。むろん、販売価格と販売数の関係(相関性)、販売価格と販売数のプロット数に応じ、機械学習を通じて最適な近似関数が選択され、商品の価格毎の予想販売数は推定される。そこで、ダイナミックプライシングを実行する際、販売対象の商品と、その細かな価格設定に応じた予想販売数が明確化する。商品の販売者の売上予想は容易となる。
【0034】
顧客順位設定部150は、顧客を順位付けして顧客順位を設定する。これまでの説明は、いわゆるダイナミックプライシングの実行に関する処理である。すなわち、商品の販売者にとって、まず、どの顧客がどれほど貢献しているのかが数値的に可視化される。そして、ダイナミックプライシングを通じて生じる価格に対し、常連の顧客に関する有利さ(メリット)が付与される。これにより、常連の顧客の販売者に対する満足度が高まる。
【0035】
図5は顧客順位表30の模式図であり、左列の顧客「Ca,Cb,Cc,Cd,・・・」について、顧客別に利用頻度「Ta,Tb,Tc,Td,・・・」及び購入金額「Ma,Mb,Mc,Md,・・・」が一覧に示される。利用頻度は、例えば、直近1箇月間の来店数、最も近い来店日等の顧客毎の情報である。購入金額は、例えば、直近1箇月間の来店における平均購入金額または積算購入金額である。顧客の順位付けに際しては、利用頻度または購入金額のいずれを優先しても、両方を加味して設定してもよい。利用頻度、購入金額は商品の種類に応じて適切に設定される。
【0036】
右列には、顧客毎の順位(1,2,3,3,・・・)が示される。そこで、例えば、最上位の1位の顧客Caについては、ダイナミックプライシングの実行により提示した価格よりも、10%さらに値引きし、2位の顧客Cbについては7%の値引き、3位の顧客Ccについては4%の値引きが設定される。むろん、これは一例に過ぎず、商品の販売者側からの顧客への特典の付与方法は限定されない。他に、商品購入時の特典ポイントの割り増し、クーポンの追加等の適宜である。
【0037】
顧客別価格設定部160は、顧客順位に応じて商品の顧客毎の価格を設定する。顧客別価格設定部160では、顧客順位の顧客別情報が考慮され、ダイナミックプライシングの実行により生じた価格とは別に、特定の顧客に対し有利な価格が設定される。前述の値引きの例によると、商品の通常の販売価格が2,000円のときにダイナミックプライシングの実行により1,900円が提示された場合、順位1位の顧客Caの値引きは10%であるから、1,900円からさらに10%分が値引きされ、1,710円が顧客Caの個別の価格として設定される。
【0038】
通知部170は、顧客順位に応じて顧客に対し商品と同商品についての個別価格を通知する。顧客毎の個別の価格が設定されたとしても、実際に対象となる顧客に来店してもらう必要がある。そこで、対象とする個々の顧客のそれぞれに対し個別価格が通知される。通知部170は、該当商品と個別価格の情報を集約して、例えば、
図6は画像データの表示40を生成する。そして、出力部240のディスプレイは画像データ40をその画面上に表示する。さらに、価格提示装置1の処理部101は顧客の端末11に画像データ40を送信する。そこで、顧客は有利な情報に触れて来店の動機を得ることができる。
【0039】
図6の表示40では、顧客名41として「Ca様」、商品名42として「G」が表示される。そして、当該顧客Caの商品Gの個別価格43として「1,710円」が表示される。これが提示価格である。画像データ40は、いわゆるレコメンド通知(レコメンド情報)の一種である。
【0040】
これまで説明してきた商品(サービスも含まれる)の選択については、当該商品の販売者の意向が反映される。この場合、売れ筋の商品をダイナミックプライシングの対象とすることにより、顧客の訴求効果は高められる。そこで、商品の販売者における販売数量に応じて対象となる商品は選択される。具体的には、個々の商品(サービス)について、所定期間(直近1箇月間等)の販売数量、売上額が集計され、商品毎に順位付けされる。そして、上位の商品が選択される。
【0041】
これより、
図7のフローチャートを用い、実施形態の価格提示方法と価格提示プログラムをともに説明する。実施形態の価格提示方法は、実施形態の価格提示プログラムに基づいて、実施形態の価格提示装置1(その処理部101)(コンピュータ)により実行される。実施形態の価格提示プログラムは、
図1の価格提示装置1(その処理部101)(コンピュータ)に対して、現商品情報取得機能、高価格商品情報取得機能、低価格商品情報取得機能、推定機能、顧客順位設定機能、顧客別価格設定機能、通知機能を実行させる。これらの各機能は図示の順に実行される。各機能は前述の実施形態の経営支援装置1の説明と重複するため、詳細は省略する。
【0042】
図7のフローチャートは実施形態の価格提示方法の流れであり、現商品情報取得ステップ(S110)、高価格商品情報取得ステップ(S120)、低価格商品情報取得ステップ(S130)、推定ステップ(S140)、顧客順位設定ステップ(S150)、顧客別価格設定ステップ(S160)、通知ステップ(S170)の各種ステップを備える。その他、実施形態の価格提示方法は、演算結果の記憶、その呼び出し、その他の演算、入力、出力、記憶等の各種の図示しない適宜必要なステップも備える。
【0043】
現商品情報取得機能は、商品と、同商品の販売価格と、同商品の販売数を取得する(S110;現商品情報取得ステップ)。現商品情報取得機能は、
図1の価格提示装置1(コンピュータ)の現商品情報取得部110により実行される。
【0044】
高価格商品情報取得機能は、同商品の販売価格よりも高価格となる高販売価格により同商品を所定期間にわたり販売した際の高価格販売数を取得する(S120;高価格商品情報取得ステップ)。高価格商品情報取得機能は、高価格商品情報取得部120により実行される。
【0045】
低価格商品情報取得機能は、同商品の販売価格よりも低価格となる低販売価格により同商品を所定期間にわたり販売した際の低価格販売数を取得する(S130;低価格商品情報取得ステップ)。低価格商品情報取得機能は、低価格商品情報取得部130により実行される。
【0046】
推定機能は、同商品に関し、販売価格及び販売数と、高販売価格及び高価格販売数と、低販売価格及び低価格販売数とから、同商品の価格毎の予想販売数を推定する(S140;推定ステップ)。推定機能は、推定部140により実行される。
【0047】
顧客順位設定機能は、顧客を順位付けして顧客順位を設定する(S150;顧客順位設定ステップ)。顧客順位設定機能は、顧客順位設定部150により実行される。
【0048】
顧客別価格設定機能は、顧客順位に応じ商品について顧客毎の価格を設定する(S160;顧客別価格設定ステップ)。顧客別価格設定機能は、顧客別価格設定部160により実行される。
【0049】
通知機能は、顧客順位に応じて顧客に対し商品と同商品についての個別価格を通知する(S170;通知ステップ)。通知機能は、通知部170により実行される。
【0050】
価格提示プログラムは、例えば、ActionScript、JavaScript(登録商標)、Python、Rubyなどのスクリプト言語、C言語、C++、C#、Objective-C、Swift、Java(登録商標)などのコンパイラ言語などを用いて実装できる。
【符号の説明】
【0051】
1 価格提示装置
1S 価格提示システム
10 インターネット回線
11 顧客の端末
30 顧客順位表
40 区分項目
41 収益
42 費用
43 投下資本回転率
100 CPU
101 処理部
110 現商品情報取得部
120 高価格商品情報取得部
130 低価格商品情報取得部
140 推定部
150 顧客順位設定部
160 顧客別価格提示部
170 通知部
210 ROM
220 RAM
230 記憶部
240 出力部
250 入力部
G 商品
P 商品の販売価格
S 商品の販売数
P1,P2 高販売価格
S1,S2 高価格販売数
P3,P4 低販売価格
S3,S4 低価格販売数