(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】高電子移動度トランジスタ装置、半導体多層膜ミラーおよび縦型ダイオード
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240328BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20240328BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240328BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240328BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240328BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20240328BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20240328BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20240328BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20240328BHJP
H01L 33/10 20100101ALI20240328BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/78 301B
H01L29/91 F
H01L29/91 D
H01L29/86 301D
H01L29/86 301M
H01L29/48 D
H01L29/48 M
H01L29/48 F
H01L33/10
(21)【出願番号】P 2020009453
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プリストフセク マーコス
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-519931(JP,A)
【文献】特開2011-003808(JP,A)
【文献】特開2018-098347(JP,A)
【文献】特表2016-533028(JP,A)
【文献】特開平04-192586(JP,A)
【文献】特開2008-060459(JP,A)
【文献】米国特許第06472679(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0166855(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00487822(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0014818(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0056320(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/78
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 21/336
H01L 29/861
H01L 29/872
H01L 29/47
H01L 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置されている、窒化ガリウムのバッファ層と、
前記バッファ層上に配置されている、窒化ガリウムのチャネル層と、
前記チャネル層上に配置されている、リンを含んだ窒化物半導体の電子供給層と、
前記電子供給層上に配置されているソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極と、
を備え、
前記リンを含んだ窒化物半導体は、AlPNまたはAlGaNPであ
り、
前記AlPNの組成は、AlP
0.13
N
0.87
であり、
前記AlGaNPの組成は、Al
(1-x)
Ga
x
N
1-0.13*(1-x)
P
0.13*(1-x)
である、高電子移動度トランジスタ装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に配置されている、リンを含んだ窒化物半導体の電子供給層と、
前記
電子供給層上に配置されている、窒化ガリウムのチャネル層と、
前記チャネル層上に配置されているソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極と、
を備え、
前記リンを含んだ窒化物半導体は、AlPNまたはAlGaNPであ
り、
前記AlPNの組成は、AlP
0.13
N
0.87
であり、
前記AlGaNPの組成は、Al
(1-x)
Ga
x
N
1-0.13*(1-x)
P
0.13*(1-x)
である、高電子移動度トランジスタ装置。
【請求項3】
前記リンを含んだ窒化物半導体の格子定数は、前記窒化ガリウムの{0001}面の格子定数に略一致している又は小さい、請求項1または2に記載の高電子移動度トランジスタ装置。
【請求項4】
リンを含んだ窒化物半導体の第1層と、窒化ガリウムの第2層と、のペア構造が複数積層された構造を備え、
前記リンを含んだ窒化物半導体は、AlPNまたはAlGaNPであ
り、
前記AlPNの組成は、AlP
0.13
N
0.87
であり、
前記AlGaNPの組成は、Al
(1-x)
Ga
x
N
1-0.13*(1-x)
P
0.13*(1-x)
である、半導体多層膜ミラー。
【請求項5】
前記リンを含んだ窒化物半導体の格子定数は、前記窒化ガリウムの{0001}面の格子定数に略一致している又は小さい、請求項
4に記載の半導体多層膜ミラー。
【請求項6】
第1導電型の窒化ガリウムの基板と、
前記基板上に配置されている、リンを含んだ第1導電型の窒化物半導体層と、
前記窒化物半導体層上に配置されている、第2導電型の窒化ガリウム層と、
を備え、
前記リンを含んだ窒化物半導体は、AlPNまたはAlGaNPであ
り、
前記AlPNの組成は、AlP
0.13
N
0.87
であり、
前記AlGaNPの組成は、Al
(1-x)
Ga
x
N
1-0.13*(1-x)
P
0.13*(1-x)
である、縦型ダイオード。
【請求項7】
第1導電型の窒化ガリウムの基板と、
前記基板上に配置されている、リンを含んだ第1導電型の窒化物半導体層と、
前記窒化物半導体層上に配置されている、ショットキー電極と、
を備え、
前記リンを含んだ窒化物半導体は、AlPNまたはAlGaNPであ
り、
前記AlPNの組成は、AlP
0.13
N
0.87
であり、
前記AlGaNPの組成は、Al
(1-x)
Ga
x
N
1-0.13*(1-x)
P
0.13*(1-x)
である、縦型ダイオード。
【請求項8】
前記リンを含んだ窒化物半導体の格子定数は、前記窒化ガリウムの{0001}面の格子定数に略一致している又は小さい、請求項
6または
7に記載の縦型ダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、窒化ガリウムを用いた高電子移動度トランジスタ装置、半導体多層膜ミラーおよび縦型ダイオードに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、AlGaNPからなるクラッド層を備えた、レーザ素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、ブロードストライプ型半導体レーザ素子についての技術である。様々な種類の素子についての技術については、開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、高電子移動度トランジスタ装置を開示する。高電子移動度トランジスタ装置は、基板を備える。基板上に配置されている、窒化ガリウムのバッファ層を備える。バッファ層上に配置されている、窒化ガリウムのチャネル層を備える。チャネル層上に配置されている、リンを含んだ窒化物半導体の電子供給層を備える。電子供給層上に配置されているソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極と、を備える。リンを含んだ窒化物半導体は、AlPNまたはAlGaNPである。
【0006】
また本明細書では、高電子移動度トランジスタ装置の他の一実施例を開示する。高電子移動度トランジスタ装置は、基板を備える。基板上に配置されている、リンを含んだ窒化物半導体の電子供給層を備える。窒化物半導体層上に配置されている、窒化ガリウムのチャネル層を備える。チャネル層上に配置されているソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極と、を備える。リンを含んだ窒化物半導体は、AlPNまたはAlGaNPである。
【0007】
本明細書の高電子移動度トランジスタ装置は、リンを含んだ窒化物半導体(AlPNまたはAlGaNP)の電子供給層を備えている。この電子供給層は、窒化ガリウムのチャネル層と接している。AlPNまたはAlGaNPの格子定数を、窒化ガリウムの格子定数に近づけることによって、応力の発生を抑制できる。格子欠陥の導入を抑制できるため、高電子移動度トランジスタ装置の性能を向上させることが可能となる。
【0008】
本明細書では、半導体多層膜ミラーを開示する。半導体多層膜ミラーは、リンを含んだ窒化物半導体の第1層と、窒化ガリウムの第2層と、のペア構造が複数積層された構造を備える。リンを含んだ窒化物半導体は、AlPNまたはAlGaNPである。効果の詳細は実施例で説明する。
【0009】
本明細書では、縦型ダイオードを開示する。縦型ダイオードは、第1導電型の窒化ガリウムの基板を備える。基板上に配置されている、リンを含んだ第1導電型の窒化物半導体層を備える。窒化物半導体層上に配置されている、第2導電型の窒化ガリウム層を備える。リンを含んだ窒化物半導体は、AlPNまたはAlGaNPである。効果の詳細は実施例で説明する。
【0010】
また本明細書では、縦型ダイオードの他の一実施例を開示する。縦型ダイオードは、第1導電型の窒化ガリウムの基板を備える。基板上に配置されている、リンを含んだ第1導電型の窒化物半導体層を備える。窒化物半導体層上に配置されている、ショットキー電極を備える。リンを含んだ窒化物半導体は、AlPNまたはAlGaNPである。効果の詳細は実施例で説明する。
【0011】
リンを含んだ窒化物半導体の格子定数は、窒化ガリウムの{0001}面の格子定数に略一致していてもよいし小さくてもよい。
【0012】
AlPNの組成は、AlP0.13N0.87であってもよい。AlGaNPの組成は、Al(1-x)GaxN1-0.13*(1-x)P0.13*(1-x)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1に係るHEMT装置1の断面概略図である。
【
図2】AlP
0.13N
0.87のXRD分析結果を示すグラフである。
【
図3】実施例2に係るHEMT装置1aの断面概略図である。
【
図4】実施例3に係るLED装置100の部分断面概略図である。
【
図5】反射鏡112の反射率特性を示すグラフである。
【
図6】実施例4に係る縦型のPNダイオード200の断面概略図である。
【
図7】実施例5に係る縦型のショットキーバリアダイオード200aの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
<HEMT装置1の構造>
図1に、実施例1に係るHEMT(High Electron Mobility Transistor)装置1の断面概略図を示す。HEMT装置1は、基板11、バッファ層12、チャネル層13、電子供給層14、ソース電極21、ドレイン電極22、ゲート電極23、保護層24を備える。
【0015】
基板11は、シリコン基板やサファイヤ基板などの表面に形成された窒化ガリウム(GaN)テンプレートである。バッファ層12は、基板11上に配置されている、窒化ガリウムの層である。チャネル層13は、バッファ層12上に配置されている、窒化ガリウムの層である。電子供給層14は、チャネル層13上に配置されている、AlPNまたはAlGaNPの層である。電子供給層14の厚さは、1~30nmの範囲である。AlPNおよびAlGaNPは、ウルツ鉱型構造を有する、リンを含んだ窒化物半導体である。電子供給層14上には、ソース電極21、ドレイン電極22、およびゲート電極23が配置されている。電子供給層14およびゲート電極23の表面は、絶縁体からなる保護層24で覆われている。
【0016】
電子供給層14を構成しているAlPNまたはAlGaNPの格子定数は、窒化ガリウムの{0001}面の格子定数に略一致している又は小さい。格子定数については後述する。AlPNの組成は、AlPyN1-yであり、y≦0.15である。本実施例では、AlPNの組成は、AlP0.13N0.87である。またAlGaNPの組成は、Al(1-x)GaxN1-0.13*(1-x)P0.13*(1-x)である。AlPNまたはAlGaNPは、MOVPE(metal-organic vapor phase epitaxy)法によって成長可能である。成長条件は、例えば、AlNの成長に用いられるような既知の条件を用いればよい。また成長温度は、1100℃とした。なお、HEMT装置1の動作は周知であるため、詳細な説明は省略する。
【0017】
<XRD分析結果>
ウルツ鉱型構造のAlPNおよびAlGaNPの格子定数は、GaNのa軸の格子定数に一致させることが可能である。
図2に、AlP
0.13N
0.87のXRD分析結果を示す。測定法は、斜入射法(ω-2θ)を用いた。試料には、GaN上に形成された140nmのAlPNを用いた。
図2において、点は測定値であり、実線はシミュレーション結果である。
図2より、AlP
0.13N
0.87の格子定数が、GaNの格子定数に略一致していることが分かる。換言すると、AlPNとGaNの格子定数を一致させるためには、13%のリンが必要であることが分かる。
【0018】
<効果>
本実施例に係るHEMT装置1では、窒化ガリウムのチャネル層13と接触する電子供給層14に、AlPN(AlPyN1-y、ここでy≦0.15)またはAlGaNP(Al(1-x)GaxN1-0.13*(1-x)P0.13*(1-x))を用いている。これにより、AlPNおよびAlGaNPの格子定数を、窒化ガリウムの{0001}面の格子定数に略一致させることができる。応力の発生を抑制できるため、結晶欠陥の密度を低減することが可能となる。また、電子供給層の厚膜化が可能となる。その結果、高電子移動度トランジスタ装置の性能を向上させることが可能となる。
【0019】
GaNはc軸方向に自発分極を持つ結晶である。本実施例に係るHEMT装置1では、格子整合よりもP(リン)が少ないまたは多いひずみ層を使用することで、自発分極効果をさらに高めることができる。また、AlGaNPは、Pの含有量を低くするほど、バンドギャップを広くできるため、より高い分極効果を得ることができる。その結果、2次元電子ガス(2DEG)の濃度を高めることができるため、オン抵抗を非常に低くすることが可能となる。以上より、応力の発生を抑制しながら、オン抵抗を低減することが可能となる。
【実施例2】
【0020】
<HEMT装置1aの構造>
図3に、実施例2に係るHEMT装置1aの断面概略図を示す。実施例2のHEMT装置1a(
図3)は、実施例1のHEMT装置1(
図1)に比して、インバーティド型のチャネル構造を有する点が異なる。両装置で共通する部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。
【0021】
電子供給層14は、基板11上に配置されている、AlPNまたはAlGaNPの層である。チャネル層13は、電子供給層14上に配置されている、窒化ガリウムの層である。チャネル層13上には、ソース電極21およびドレイン電極22が配置されている。また絶縁層24aを介して、ゲート電極23が配置されている。
【0022】
電子供給層14は、高い絶縁性を有していてもよい。高い絶縁性は、カーボンをドープすることや、格子整合によって可能となった厚膜化によって実現してもよい。電子供給層14の上部は、わずかにn型不純物がドープされていてもよい。これにより、電子供給層14とチャネル層13との界面からの正電荷を補償することができる。電子供給層14は、厚くすることが可能であり、例えば100nm~2μmの厚さであってもよい。
【0023】
実施例1のHEMT装置1a(
図1)では、AlPNまたはAlGaNPの電子供給層14が最表面に配置される。キャリア電子は電子供給層14を介して電極に流れるため、オン抵抗の上昇の一因となってしまう。一方、実施例2のHEMT装置1a(
図3)では、GaNのチャネル層13が最表面に配置されるため、電極への接続が低抵抗で実現できる。オン抵抗を低くすることができる。また前述したように、AlPNまたはAlGaNPの電子供給層14を用いることで高い分極効果を得られるため、チャネル層13を非常に薄くしても、動作に問題がない程度に2DEGの濃度を高く維持できる。チャネル層13の薄膜化により、ゲート電極23によるキャリア密度制御を効率的に行うことができるため、ノーマリオフ特性の実現が可能となる。
【実施例3】
【0024】
<LED装置100の構造>
図4に、実施例3に係るLED装置100の部分断面概略図を示す。LED装置100は、基板111、反射鏡112、発光層113、GaN層114、を備える。
基板111は、GaNテンプレートである。反射鏡112は、基板111上に配置されている。反射鏡112は、ブラッグミラーである。反射鏡112は、AlPNまたはAlGaNPの第1層L1(低屈折率層)と、GaNの第2層L2(高屈折率層)と、のペア構造が複数積層された構造を備える。反射鏡112は、第1層L1および第2層L2を交互にエピタキシャル成長することで形成できる。本実施例では、ペア構造の積層数は12ペアである。
【0025】
第1層L1の厚さは、レーザ光の発振波長λの1/(4×nAlPN)、または、1/(4×nAlGaNP)である。ここで「nAlPN」はAlPNの屈折率であり、「nAlGaNP」はAlGaNPの屈折率である。また第2層L2の厚さは、レーザ光の発振波長λの1/(4×nGaN)である。ここで「nGaN」は、GaNの屈折率である。例えば、波長の最大値が460nmである場合に、AlP0.13N0.87の第1層L1の厚さは59nmであり、GaNの第2層L2の厚さは47nmである。
【0026】
発光層113は、反射鏡112上に配置されている。発光層113の構造は周知であるため、詳細な説明を省略する。GaN層114は、発光層113上に配置されている、リンがドープされたGaNである。なお
図4において、GaN層114の上方に配置される上部反射鏡や各種電極は、図示を省略している。
【0027】
図5に、反射鏡112の反射率特性の計算結果を示す。横軸が波長であり、縦軸が反射率である。第1層L1はAlPNであり、その組成は、AlP
0.13N
0.87である。このときのAlPNの屈折率n
AlPN」は、1.95(λ>400nm)である。
図5には、ペア構造の数を10ペア、12ペア、15ペア、20ペアに変化させた場合の反射率がそれぞれ示されている。12ペアのときに、500nmまでの波長の領域において、約0.99の反射率が得られることが分かる(矢印A1参照)。
【0028】
<効果>
第1層L1と第2層L2との格子定数を、略一致させることができる。反射鏡112で発生する応力を低減できるため、結晶欠陥の密度やサイズを減少させることができる。反射鏡112の反射率を増大させることが可能となる。
【0029】
従来のように、第1層L1をAlInNで形成する場合には、12ペアの反射鏡112の作成時間は12時間を超過してしまう。本実施例の技術では、AlInNよりも成膜レートを高くすることができるAlPNまたはAlGaNPを、第1層L1として用いている。(AlPNの成膜レートは600nm/hourを達成できている)。これにより、12ペアの反射鏡112の作成時間を大幅に短縮化(90分以下)することが可能となる。
【実施例4】
【0030】
<PNダイオード200の構造>
図6に、実施例4に係る縦型のPNダイオード200の断面概略図を示す。PNダイオード200は、基板211、n型ドリフト層212、p型層213、を備える。基板211は、n型の窒化ガリウムである。n型ドリフト層212は、基板211上に配置されている、n型AlPNまたはn型AlGaNPの層である。p型層213は、n型ドリフト層212上に配置されている、p型の窒化ガリウムの層である。なお
図6において、アノード電極やカソード電極は、図示を省略している。
【0031】
<効果>
一般的な仮説として、破壊電界(breakdown field)の強度はバンドギャップの3乗に対応する(Ebreak~Egap
3)。本実施例のPNダイオード200では、ドリフト層にAlPNまたはAlGaNPを用いることで、GaNを用いる場合に比して、バンドギャップを広くすることができる。
従って、例えば、ドリフト層にAlP0.13N0.87を用いた場合、GaNを用いる場合に比して、破壊電界の強度を3.7倍で増加させることができる。(合金散射(alloy scattering)を無視した場合)。素子の高耐圧化を実現することが可能となる。
【実施例5】
【0032】
<ショットキーバリアダイオード200aの構造>
図7に、実施例5に係る縦型のショットキーバリアダイオード200aの断面概略図を示す。PNダイオード200は、基板211、n型ドリフト層212、ショットキー電極214a、を備える。実施例5のショットキーバリアダイオード200a(
図7)と実施例4のPNダイオード200(
図6)とで共通する部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。ショットキー電極214aとしては、例えば、Ni/Auの積層構造(この順に膜形成)が挙げられる。
【0033】
本実施例のショットキーバリアダイオード200aにおいても、ドリフト層にAlPNまたはAlGaNPを用いることで、破壊電界の強度を高めることが可能となる。
【0034】
<変形例>
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0035】
本明細書のAlPNおよびAlGaNPの適用範囲は、HEMT、LED、ダイオード等に限定されない。各種の素子や用途に適用可能である。例えば、アルカリ溶液を用いた選択エッチングにおける犠牲層として、AlPNおよびAlGaNPを用いることが可能である。
【0036】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0037】
1、1a:HEMT装置 11:基板 12:バッファ層 13:チャネル層 14:電子供給層 21:ソース電極 22:ドレイン電極 23:ゲート電極 100:LED装置 111:基板 112:反射鏡 113:発光層 200:PNダイオード 200a:ショットキーバリアダイオード 211:基板 212:n型ドリフト層 213:p型層 214a:ショットキー電極 L1:第1層 L2:第2層