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  • 特許-水処理フィルター用線材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】水処理フィルター用線材
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/00 20060101AFI20240328BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B01D39/00 A
D01F8/14 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020045371
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021146227
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雄俊
(72)【発明者】
【氏名】西井 義尚
(72)【発明者】
【氏名】金築 亮
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-303260(JP,A)
【文献】特開2005-169177(JP,A)
【文献】特開昭61-086918(JP,A)
【文献】特開平01-132829(JP,A)
【文献】特開2004-181400(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0059306(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/00-39/20
D01F8/00-8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の熱可塑性樹脂からなる連続線材であって、該線材の横断面は、芯部にポリエステル樹脂が配され、該ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはテレフタル酸とエチレングリコールと1,4-ブタンジオールとからなるポリエステル共重合体であり、その芯部を取り囲む被覆部にポリアミド樹脂が配されてなる二層構造であり、該線材の線径が0.15mm以上、湿状態で引張試験したときの最大強力が5N以上かつ破断伸度が20~40%、乾状態と湿状態とにおける破断伸度の差が4%以内であることを特徴とする水処理フィルター用線材。
【請求項2】
芯部のポリエステル樹脂中に相溶化剤が添加されていることを特徴とする請求項1記載の水処理フィルター用線材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の濾過や分離に使用するためのフィルター用線材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、汚水の濾過や、水と固体の分離のためにフィルターが使用されている。フィルターの材質としては金属や合成樹脂などが用いられているが、耐腐食性や軽量性の観点では合成樹脂製フィルターが有利である。合成樹脂製フィルターは細孔を有するフィルムまたはシート、織布、不織布など多様な形態で使用されているが、フィルターとしての強度では織布が優れており、特に水の流速が高い場合や濾過の対象物の摩耗性が高い場合には、線径の大きい合成樹脂製線材を用いた織布が好ましく使用される。合成樹脂製線材の素材としては各種の熱可塑性樹脂が採用されているが、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、経済性などの観点でポリエステルやポリアミド製のものが有利である。ポリステル製の線材は低吸水のため、水中で使用しても寸法が変わりにくく、フィルターとしての精度が高いが、素材に起因して硬いことから、耐摩耗性・耐久性に課題がある。ポリアミド製の線材は耐摩耗性では有利だが、ポリアミド自体が吸水性を有することから、水中において寸法が変化し易いため、繰り返し使用による寸法安定性に劣り、フィルターとしての精度が落ちる懸念がある。
【0003】
このような耐久性と寸法安定性等の要求性能を満たすために、例えば、特許文献1~3では、フィルターを構成する際の織組織や織組織を構成する線材を特定の位置に配置することにより達成することを提案している。
【0004】
特許文献1は、固液分離を行うフィルタープレス濾過布であり、濾過布を構成するモノフィラメント直径を特定の値とし、かつ糸の配置密度を規定した特定の織組織を採用している。
【0005】
特許文献2は、ベルトプレス型脱水装置のろ布ベルトであり、スラリーと接触する表面は経糸のみが長浮きし、ローラと接触する裏面は経糸のほかに緯糸が長浮きし、継手部分の経糸綴り込み部では別組織で綴りこむことにより、耐久性を向上させている。
【0006】
特許文献3は、抄紙のウェットパートに用いられる抄紙用織物であり、織物におけるロングクリンプとショートクリンプとの差を特定の範囲とすることにより、耐摩耗性を向上させ、寸法安定性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3640594号
【文献】特公昭62-8280号
【文献】特開2017-172070号尾
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した特許文献は、フィルターを構成する織物組織を工夫することにより、耐摩耗性を向上させ、寸法安定性を維持したものである。本発明者等は、織物組織を工夫するのではなく、フィルターを構成する線材そのものについて改良することにより、水処理フィルターにおける耐久性や寸法安定性等の要求性能を達成できないかと考えた。本発明の課題は、水処理フィルターを構成する線材であって、高負荷の水処理時に使用可能な寸法安定性や耐久性を兼ね備えた水処理フィルターを得ることができる線材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであって、少なくとも2種の熱可塑性樹脂からなる連続線材であって、該線材の横断面は、芯部にポリエステル樹脂が配され、該ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはテレフタル酸とエチレングリコールと1,4-ブタンジオールとからなるポリエステル共重合体であり、芯部を取り囲む被覆部にポリアミド樹脂が配されてなる二層構造であり、該線材の線径が0.15mm以上、湿状態で引張試験したときの最大強力が5N以上かつ破断伸度が20~40%、乾状態と湿状態とにおける破断伸度の差が4%以内であることを特徴とする水処理フィルター用線材を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水処理フィルター用の合成樹脂製線材において、芯部に特定のポリエステル樹脂、被覆部にポリアミド樹脂を配した2層構造とすることにより、寸法安定性と耐摩耗性と両方を兼ね備えさせることができ、この線材を用いて織布とした水処理フィルターは、汚水の濾過や、水と固体の分離などフィルター機能を長期に亘り良好に発揮しうることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、少なくとも2種の熱可塑性樹脂からなる連続線材であり、該線材の軸方向に対して垂直に切断した際の断面(横断面)は、芯部にポリエステル樹脂、芯部を取り囲む被覆部にポリアミド樹脂が配された二層構造である。また、芯部の個数には限定されず、複数個であってもよい。すなわち、ポリエステル樹脂からなる複数の独立した芯部を、ポリアミド樹脂で被覆してなる、いわゆる海島構造であってもよい。
【0012】
本発明の線材の横断面の形状(外形)は円形、楕円形、多角形など特に限定されないが、得られる機械的物性や汎用性から円形断面が好ましい。
【0013】
芯部に配するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、またはテレフタル酸とエチレングリコールと1,4-ブタンジオールとからなるポリエステル共重合体である。
【0015】
ポリエステル樹脂の相対粘度としては、線材の機械的特性を向上させ、寸法安定性に優れたものを得るという効果を奏するには、相対粘度が1.4以上、より好ましくは1.5以上がよい。ポリエステルの相対粘度は、濃度0.5%のフェノール/四塩化エタンの等質量混合溶液を溶媒とし、ウベローデ粘度計を使用して、温度20℃で測定した。
【0016】
芯部には、ポリエステル樹脂を配するが、本発明の目的を達成する範囲であれば、少量であれば、他の熱可塑性樹脂を添加してもよい。他の熱可塑性樹脂として、たとえば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、シリコーン樹脂またはポリウレタン樹脂が挙げられ、これらを単独でまたは混合して添加してもよい。
【0017】
また、芯部のポリエステル樹脂の中には、所望により種々の添加剤を含有させてもよい。たとえば、染料、顔料、分散剤、相溶化剤、展着剤、可塑剤、粘度調整剤、難燃剤、滑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収材料、マイクロ波吸収材料、光安定剤、酸化防止剤、pH調整剤、抗菌剤、防腐剤、充填剤、耐熱剤、帯電防止剤、導電材、熱伝導性材料、結晶核剤等を添加することができる。
【0018】
なお、芯部に配するポリエステル樹脂は、線材においての水中においても寸法変化をしにくくする役割を担っていることから、共重合成分や、ブレンドする場合の他の熱可塑性樹脂や添加剤について、吸水性を増加させるものや剛性の低下が生じるものは、寸法安定性や耐摩耗性を損ない、本発明の目的が達成しない恐れがあるため、吸水率の増加や剛性の低下につながる共重合成分や添加剤などの使用は最小限にとどめることとする。
【0019】
本発明の線材において、上記した芯部のポリエステル樹脂を取り囲む被覆部は、ポリアミド樹脂が配される。ポリアミド樹脂としては、分子内にアミド基を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド69、ポリアミド46,ポリアミド610,ポリアミド1010、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリメタキシレンアジパミドやこれら各成分を共重合したものやブレンドしたもの等が挙げられる。
【0020】
ポリアミド樹脂の相対粘度としては、実用的な強伸度を得るためには、2.5以上が好ましく、より好ましくは3.0以上である。ポリアミド樹脂の相対粘度は、96%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dl、温度25度で測定する。
【0021】
被覆部には、ポリアミド樹脂を配するが、本発明の目的を達成する範囲であれば、少量であれば、他の熱可塑性樹脂を添加してもよい。他の熱可塑性樹脂として、たとえば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、シリコーン樹脂またはポリウレタン樹脂を単独でまたは混合して添加してもよい。
【0022】
被覆部のポリアミド樹脂の中には、所望により種々の添加剤を含有させてもよい。添加材としては、上記した芯部のポリエステル樹脂に添加するものと同様のものが挙げられる。
【0023】
本発明の線材の芯部と被覆部との複合比率(面積比)は、芯部:被覆部=100:20~1000が挙げられ、線径や必要となる機械的物性等を考慮して適宜選択すればよいが、ポリエステル樹脂により構成される芯部に由来する寸法安定性の向上と、ポリアミド樹脂により構成される被覆部に由来する耐摩耗性とを良好に併せ持たせることを考慮すれば、芯部:被覆部=100:200~700であることが好ましい。
【0024】
本発明の線材の線径は0.15mm以上である。0.15mm未満では、本発明の線材を用いて水処理用フィルターとした際に、水処理時の高い負荷による損傷や摩耗等に耐えられない。なお、線径の上限は、フィルターとして製織可能であれば、特に限定されないが、1mmであればよい。
【0025】
本発明の線材は、湿状態での引張試験を行ったときの最大強力は5N以上である。5N以下では、水処理用フィルターとして、使用時に負荷される張力に耐えられないため不適である。また、最大強力は大きいほどよいが、上限として1000N程度あれば十分と考える。なお、線径が大きいと、単位断面積あたりの強度(MPa)が低くても、線材としての強力(N)は高くなるが、単位断面積あたりの強度としては、300MPa以上であることが好ましい。
【0026】
本発明の線材は、湿状態での引張試験を行ったときの破断伸度は15~45%であり、より好ましくは20~40%である。15%未満では、線材の脆性が高くなり、屈曲疲労などに対する耐久性が低くなるため好ましくない。45%を超えると、織布としての剛性が低下してフィルター精度が不足してしまうため好ましくない。なお、本発明において、湿状態での引張試験とは、試験サンプルを容器に入れ、容器に水道水(20±2℃)を満たし、試験サンプルを水中にて24時間以上浸漬し、その後、浸漬した試験サンプルを水より取り出して、ただちに(1分以内)引張試験機にて測定し、切断するまで荷重をかける。湿状態での引張試験の条件は、試験速度は300mm/min、つかみ間隔は250mmとし、n=5で測定し、最大強力および破断時の伸度の平均値を求め、その平均値を最大強力、破断伸度とする。
【0027】
本発明の線材は、上記したように特定の樹脂を配した特定の構造を有することから、引張試験したときの破断伸度において、湿状態と乾燥状態とにおける伸度の差(乾湿差)は4%以内である。湿状態と乾燥状態とにおける伸度の差が大きく、この乾湿差が4%を超えると、水処理フィルターとして、水中で使用する際に寸法の乱れが大きくなり、フィルターとしての精度が下がる。よって、乾湿差は好ましくは3%以内である。なお、破断伸度の乾湿差とは、標準状態(温度20±2℃、相対湿度65±4%)における試験糸を引張試験により得られる破断伸度を乾伸度(%)とし、上記した湿状態での引張試験により得られる破断伸度を湿伸度(%)としたとき、下記式で表される。なお、乾湿差は4%以内であり、下式により湿伸度の値を乾伸度の値で減じた値の絶対値を乾湿差(%)とする。
乾湿差(%)= |湿伸度(%)- 乾伸度(%)|
【0028】
本発明の二層構造からなる線材の製造方法について、一例を挙げて説明する。芯部にポリエステル樹脂、被覆部にポリアミド樹脂を配するように、それぞれのチップを準備し、紡糸温度260~290℃程度とし、エクストルーダー型紡糸装置を使用して、芯鞘複合型の紡糸口金より溶融紡出し、紡出物を10~60℃程度の温水浴中で冷却して未延伸線材を得る。この未延伸線材を60~90℃程度の水浴中で第一段階目の延伸(延伸倍率2.5~4.5倍程度)を行い、次いで100~300℃の熱風雰囲気下で第二段階目の延伸(延伸倍率1.1~2.5倍程度)を行う。引き続いて約150~300℃の熱風雰囲気下で2.5~30%程度の弛緩熱処理を行い、本発明の水処理フィルター用線材を得ることができる。取扱い性や表面性状を調整するために、延伸前後にオンラインで繊維用油剤などを塗布してもよく、後工程でコーティングやディンピングで塗膜を付与してもよい。また、水との親和性や工程通過性などを調整するためにプラズマ処理などの後加工を施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】耐摩耗性を評価するための屈曲型摩耗試験の概略斜視図を示す。
【実施例
【0030】
1.引張試験(乾)
連続線材は通常巻き取ってなるものであることから、必要量解舒し、室温下で24時間以上静置した後、引張試験機で最大強力と破断伸度を測定した。引張試験の条件は、試験速度は300mm/min、つかみ間隔は250mmとし、n=5で測定した平均値を最大強力(N)、破断伸度(%)とした。
【0031】
2.引張試験(湿)
連続線材は通常巻き取ってなるものであることから、必要量解舒し、試験糸を容器に入れ、容器に水道水(20±2℃)を満たし、水中にて24時間以上浸漬し、その後、浸漬した試験サンプルを水より取り出して、ただちに(1分以内)引張試験機にて測定し、切断するまで荷重をかけ、最大強力と破断伸度を測定した。引張試験の条件は、試験速度は300mm/min、つかみ間隔は250mmとし、n=5で測定した平均値を最大強力(N)、破断伸度(%)とした。
【0032】
3.耐摩耗性(屈曲型摩耗試験)
摩耗体として直径20mmの金属丸棒の側面にサンドペーパー#600を貼り付けたものを用い、この摩耗体に対して、試験サンプルを90度の角度で接触させ、試料サンプルの一端に所定荷重をかけて、ストローク幅120mm、ストローク速度35回/分で往復摩擦させ、試験サンプルが破断に至るまでの往復回数を計測した。試験サンプルはn=4で計測し、得られた回数の平均値を耐摩耗性の摩耗回数とした。なお、所定荷重は、試験サンプルの断面積(mm)当たり1.89kgとした。たとえば、線径0.45mmであれば、300gの荷重を使用した。
【0033】
なお、図1に、耐摩耗性を測定する屈曲型摩耗試験の概略斜視図を示す。
【0034】
実施例1
横断面が、芯部を被覆部が取り囲んでなる複合型となる連続線材を得るために、芯部に配するポリエステルとしてPETチップ(ポリエチレンテレフタレート、相対粘度1.5)、被覆部に配するポリアミドとしてPA6チップ(ポリアミド6、相対粘度3.5)を準備した。次いで、通常のエクストルーダー型溶融複合紡糸装置を使用し、270℃の温度で溶融紡出した。なお、芯部と被覆部の体積比が芯部/被覆部が3/7となるように計量して紡出した。紡出した線材を25℃の温水浴中で冷却して未延伸線材を得た。この未延伸線材を巻き取ることなく、80℃の温水浴中で延伸倍率2.8倍で第1段延伸し、次いで全延伸倍率が4.8倍となるように、175℃の加熱ゾーンを通過させながら第2段延伸し(延伸倍率1.7倍)、さらに175℃の加熱ゾーンを通過させて7%の弛緩熱処理を行い、2層構造の連続線材を得た。得られた連続線材は、直径0.45mmであり、横断面における芯部/被覆部の面積比は、3/7であった。
【0035】
実施例2
ポリステルチップとしてPETチップ(ポリエチレンテレフタレート、相対粘度1.4)を用い、ポリアミドチップとしてPA6チップ(ポリアミド6、相対粘度4.5)を準備した。次いで、通常のエクストルーダー型溶融複合紡糸装置を使用し、270℃の温度で溶融紡出した。なお、芯部と被覆部の体積比が芯部/被覆部が3/7となるように計量して紡糸した。紡出した線材を25℃の温水浴中で冷却して未延伸線材を得た。この未延伸線材を巻き取ることなく、80℃の温水浴中で延伸倍率3.2倍で第1段延伸し、次いで全延伸倍率が4.8倍となるように、175℃の加熱ゾーンを通過させながら第2段延伸し(延伸倍率1.5倍)、さらに175℃の加熱ゾーンを通過させて7%の弛緩熱処理を行い、2層構造の連続線材を得た。得られた連続線材は、直径0.45mmであり、横断面における芯部/被覆部の面積比は、3/7であった。
【0036】
実施例3
実施例1において、ポリステルチップとしてPETチップ(ポリエチレンテレフタレート、相対粘度1.4)100質量部に相溶化剤(三菱ケミカル社製「プリマロイAP」GQ331)を8質量部加えたものをチップブレンドして用いたこと以外は、実施例1と同様にして連続線材を得た。得られた連続線材は、直径0.45mmであり、横断面における芯部/被覆部の面積比は、3/7であった。
【0037】
実施例4
実施例1において、ポリステルチップとして共重合ポリエステルチップ(テレフタル酸50モル%、エチレングリコール25モル%および1,4-ブタンジオール25モル%からなるポリエステル共重合体、相対粘度1.4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして連続線材を得た。得られた連続線材は、直径0.45mmであり、横断面における芯部/被覆部の面積比は、3/7であった。
【0038】
比較例1
実施例2で用いたPA6チップのみを用いて、通常のエクストルーダー型溶融紡糸装置を使用し、270℃の温度で溶融紡出した。紡出した線材を25℃の温水浴中で冷却して未延伸線材を得た。この未延伸線材を巻き取ることなく、80℃の温水浴中で延伸倍率2.8倍で第1段延伸し、次いで全延伸倍率が4.8倍となるように、175℃の加熱ゾーンを通過させながら第2段延伸し(延伸倍率1.7倍)、さらに175℃の加熱ゾーンを通過させて7%の弛緩熱処理を行い、ポリアミドのみからなる単相の連続線材を得た。得られた連続線材は、直径0.45mmであった。
【0039】
実施例1~4および比較例1の物性を測定した結果を表1に示す。
【0040】
比較例1では破断伸度の乾湿差が6.6%と高いが、本発明の実施例1~4はいずれも4%以内であり、芯部にポリエステルが存在することにより寸法安定性が向上していることがわかる。また耐摩耗性は、実施例1~4のいずれも、比較例1よりも摩耗回数が飛躍的に高く、摩耗性が向上していることが顕著であった。実施例1と4は、比較例1と比較して5倍程度向上し、実施例2は10倍以上向上し、実施例3は2倍以上向上したものであった。芯部にポリエステルが配されることにより、耐摩耗性が著しく向上したことも確認できた。また、相溶化剤を添加した実施例3は、摩耗性が2倍以上向上しているものの、実施例1、2、4と比較して高くなかったことから、芯部(ポリエステル)と被覆部(ポリアミド)との相溶性が低いこと、芯部の吸水性増加や弾性率低下によって、より摩耗性向上効果が顕著であることが考察できる。
【0041】
【表1】
















図1