IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社イノンの特許一覧

特許7461637カメラハウジングシステム、及びカメラハウジング
<>
  • 特許-カメラハウジングシステム、及びカメラハウジング 図1
  • 特許-カメラハウジングシステム、及びカメラハウジング 図2
  • 特許-カメラハウジングシステム、及びカメラハウジング 図3
  • 特許-カメラハウジングシステム、及びカメラハウジング 図4
  • 特許-カメラハウジングシステム、及びカメラハウジング 図5
  • 特許-カメラハウジングシステム、及びカメラハウジング 図6
  • 特許-カメラハウジングシステム、及びカメラハウジング 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】カメラハウジングシステム、及びカメラハウジング
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/56 20210101AFI20240328BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240328BHJP
   G03B 17/08 20210101ALI20240328BHJP
【FI】
G03B17/56 H
G03B15/00 U
G03B17/08
G03B17/56 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020086993
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021182054
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-01-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [展示日] 令和2年1月31日、2月1日~2月2日 [展示会名] ダイビングフェスティバル2020 [開催場所] TEPIA イベントホール&会議室3Fエキシビションホール(東京都港区北青山2-8-44)
(73)【特許権者】
【識別番号】595132061
【氏名又は名称】株式会社イノン
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】井上 彰英
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-191419(JP,A)
【文献】実開昭53-118525(JP,U)
【文献】特開2009-157170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0041966(US,A1)
【文献】特開平11-237688(JP,A)
【文献】実開昭61-011144(JP,U)
【文献】特表2022-518803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/56
G03B 15/00
G03B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部、及び前記ベース部の両端部から立ち上がると共に使用者が把持する2本の把持部を備え、各把持部の先端に水中照明装置を設置するグリップ装置と、
カメラを外部から操作可能かつ水密状態で格納するカメラハウジングと、
前記グリップ装置の前記ベース部と前記カメラハウジングの底面部又は側面部とを連結する連結部材と、
を備え、
前記連結部材は、
前記グリップ装置の前記ベース部に配置されたベース部連結部材と、
前記カメラハウジングの前記底面部に配置され前記ベース部連結部材に着脱できる底面部連結部材、及び前記カメラハウジングの側面部に配置され前記ベース部連結部材に着脱できる側面部連結部材とからなり
横構図で撮影するときは前記底面部連結部材を前記ベース部連結部材に装着すると共に、縦構図で撮影するときは前記側面部連結部材を前記ベース部連結部材に装着し、
前記カメラハウジングの前記ベース部に対する取付位置を変更することにより、前記横構図又は前記縦構図での撮影を行うように構成されていることを特徴とするカメラハウジングシステム。
【請求項2】
前記ベース部連結部材はあり溝を備え、前記底面部連結部材及び前記側面部連結部材は前記ベース部連結部材の前記あり溝部にはまり込む鳩尾形断面形状の凸部を備えることを特徴とする請求項1に記載のカメラハウジングシステム。
【請求項3】
前記ベース部連結部材に対して前記底面部連結部材又は前記側面部連結部材を固定するロック機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のカメラハウジングシステム。
【請求項4】
前記水中照明装置は、アーム部材を介して前記グリップ装置の前記把持部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラハウジングシステム。
【請求項5】
請求項1記載のカメラハウジングシステムに使用されるカメラハウジングであって、
カメラを操作可能に水密状態で格納すると共に、ベース部、及びベース部の両端部から立ち上がると共に使用者が把持する2本の把持部を備え、各把持部の先端に水中照明装置を設置するグリップ装置の前記ベース部に設置可能に形成され、
底面部に配置され前記グリップ装置の前記ベース部に配置されたベース部連結部材に着脱できる底面部連結部材、及び側面部に配置され前記グリップ装置の前記ベース部に配置されたベース部連結部材に着脱できる側面部連結部材を備え
使用時には、前記底面連結部材又は側面連結部材のいずれか一方が、前記ベース部連結部材に装着され、横構図で撮影するときは前記底面部連結部材を前記ベース部連結部材に装着すると共に、縦構図で撮影するときは前記側面部連結部材を前記ベース部連結部材に装着するように構成されていることを特徴とするカメラハウジング。
【請求項6】
前記ベース部連結部材はあり溝を備え、前記底面部連結部材及び前記側面部連結部材は
前記ベース部連結部材の前記あり溝部にはまり込む鳩尾形断面形状の凸部を備えることを特徴とする請求項5に記載のカメラハウジング
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中写真撮影に好適なカメラハウジングシステム、及びカメラハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
通常水中写真の撮影には、例えば交換レンズ群から選択したレンズを装着したデジタル式一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラ等を水中撮影用のカメラハウジングに収納したカメラハウジングシステムを使用する。
【0003】
このカメラハウジングシステムは、所定の水深までの防水構造を備え、収納したカメラを水中において操作可能な構造を備える。また、水中では、水の吸収特性によりカラーバランスが崩れている上、光量が少ないので、ストロボ等の水中照明装置が必須となる。このとき、照明装置であるストロボやライト光の被写体への照射方向、いわゆるライティングは太陽の位置と同じように上から照射するようにすることが望ましい。
【0004】
また、通常の海底生物の水中写真の撮影には撮影画面の長手方向を水平方向とする横構図が多く使用される。これは、長手方向を縦方向とする縦構図は俯瞰写真になりがちであり、好ましくないからである。このため、水中撮影のためのカメラハウジングシステムは、横構図で撮影を行うことを前提として構成されている。
【0005】
図6は従来のカメラハウジングを横構図で固定したカメラハウジングシステムを使用して縦構図の撮影をする状態を示すものであり、(a)はカメラハウジングシステムと被写体を示す写真、(b)は撮影結果を示す写真、図7は従来のカメラハウジングシステムにおいて、ストロボを取り付けたアーム部材を延長、変形して水底近くの被写体を縦構図で撮影する状態を示す写真である。
【0006】
図6に示すように、従来のカメラハウジングシステム200において、カメラハウジング210には水中カメラの取り回しを良好とするため、撮影者が両手で把持できる2本の把持部222、222を備えたグリップ装置220が取り付けられる。照明装置であるストロボ240、240はこのグリップ装置220にアーム部材230、230を介して取り付けられる。グリップ装置220のベース部221にカメラハウジング210がねじ等で固定される。
【0007】
しかし、被写体や背景の状態によっては、縦構図での撮影を行いたいことがある。上述した横構図を前提としてカメラハウジング210、グリップ装置220、アーム部材230、ストロボ240を構成した従来のカメラハウジングシステム200を使用して縦構図で水底300に着底した被写体を撮影しようとすると、図6(a)に示すように、グリップ装置220にアーム部材230を介して配置したストロボ240が水底300に接触して、カメラハウジング210の鏡筒部212の光軸Oと水底300との角度が大きくなる(図中θ)。
【0008】
このため、水底300に近接した被写体とした魚モデル90と平行に近い位置からの撮影、即ちローアングルの撮影ができない。また、図6(a)に示した状態で写真を撮影したとしても、図6(b)に示すように、ストロボ240、240の光は、魚モデル90の横側から照射された状態となり、太陽光による上からの自然な光とは異なり不自然となる。なお図中符号91は図6、7に示した写真を撮影するため魚モデル90を配置した透明
な架台を示している。
【0009】
このように着底状態の魚モデル90をローアングルから自然な光で撮影するためには、図7に示すように、グリップ装置220両端のアーム部材230、230の先端に角度変更可能な追加アーム部材250、250を配置して、2つのストロボ240、240を配置する必要がある。このような状態とすると、ストロボ240がカメラハウジング210とほぼ同じ高さとなり、魚モデル90をローアングルで撮影できるし、ストロボ240、240からの照明が上側から魚モデル90に照射し、自然な写真を撮影することができる。
【0010】
カメラの横構図と縦構図との変更に対応して照明装置の配置を変更する技術として、地上で使用するカメラに関して以下のものが提案されている。
【0011】
特許文献1は、ブラケットを介してストロボを配置したカメラを縦方向で撮影するとき、ブラケットを回転してストロボを位置変更できるストロボ取付装置を開示する。
【0012】
また、特許文献2は、撮影レンズを保持したカメラボディの上面又は底面と側面との2面にグリップを選択的に位置決め可能に構成すると共に、前記グリップの上部にストロボ発光部を配置したグリップ付きカメラを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2010-271676公報
【文献】実開昭61-011144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来のカメラハウジングシステムにあっても、横構図での撮影中に縦構図での撮影を行いたい場合、グリップ装置220へのカメラハウジング210の取り付け姿勢を縦構図に適するように変更することもできるが、上述のカメラハウジングシステム200は、カメラハウジングシステム200にグリップ装置220を配置する他、アーム部材を介してストロボ240、240を取り付けており、寸法が大きく水中での取り回しや取り扱いが難しい。また、カメラハウジング210はグリップ装置220にねじ等で固定されており、ねじ等を外して、カメラハウジング210を再度グリップ装置220に結合する作業は水中では困難で時間がかかる。従ってこのような操作は地上や船上で行うことが現実的である。
【0015】
また、水中での被写体である魚類等は常時移動していることが普通である。このため、撮影時にはこの被写体の動きにあわせて瞬時にカメラハウジングシステム200を構える必要があり、これに対応してカメラハウジング210とグリップ装置220を取り外して再度カメラハウジング210の姿勢を変えてグリップ装置220に固定することはできない。このため、カメラハウジングシステムを横構図撮影状態から水中ですばやく簡単に縦構図撮影状態に変更できるとは考えられておらず、従ってそのような要望も発想もなかった。
【0016】
発明者は、多くの水中撮影や機材の開発に携わったことから、従来現実的ではないとされ全く発想されることがなかった課題を設定することとし、地上で使用されるカメラを前提とした文献1や文献2に記載の技術とは全く異なる発想に基づき発明を完成した。
【0017】
本発明の課題は、水中であっても撮影の状態に応じて、簡単かつ迅速に横構図状態と縦
構図状態とに変更できるカメラハウジングシステム、カメラハウジング、及びグリップ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決する請求項1に記載の発明は、ベース部、及び前記ベース部の両端部から立ち上がると共に使用者が把持する2本の把持部を備え、各把持部の先端に水中照明装置を設置するグリップ装置と、カメラを外部から操作可能かつ水密状態で格納するカメラハウジングと、前記グリップ装置の前記ベース部と前記カメラハウジングの底面部又は側面部とを連結する連結部材と、を備え、前記連結部材は、前記グリップ装置の前記ベース部に配置されたベース部連結部材と、前記カメラハウジングの前記底面部に配置され前記ベース部連結部材に着脱できる底面部連結部材、及び前記カメラハウジングの側面部に配置され前記ベース部連結部材に着脱できる側面部連結部材とからなり、横構図で撮影するときは前記底面部連結部材を前記ベース部連結部材に装着すると共に、縦構図で撮影するときは前記側面部連結部材を前記ベース部連結部材に装着し、前記カメラハウジングの取付位置を変更することにより、前記横構図又は前記縦構図での撮影を行うように構成されていることを特徴とするカメラハウジングシステムである。
【0019】
同じく請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカメラハウジングシステムにおいて、前記ベース部連結部材はあり溝を備え、前記底面部連結部材及び前記側面部連結部材は前記ベース部連結部材の前記あり溝部にはまり込む鳩尾形断面形状の凸部を備えることを特徴とする請求項1に記載のカメラハウジングシステムである。
【0020】
同じく請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のカメラハウジングシステムにおいて、前記ベース部連結部材に対して前記底面部連結部材又は前記側面部連結部材を固定するロック機構を備えることを特徴とする。
【0021】
同じく請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のカメラハウジングシステムにおいて、前記水中照明装置は、アーム部材を介して前記グリップ装置の前記把持部に接続されていることを特徴とする。
【0022】
同じく請求項5に記載の発明は、請求項1記載のカメラハウジングに使用されるカメラハウジングであって、カメラを操作可能に水密状態で格納すると共に、ベース部、及びベース部の両端部から立ち上がると共に使用者が把持する2本の把持部を備え、各把持部の先端に水中照明装置を設置するグリップ装置の前記ベース部に設置可能に形成され、底面部に配置され前記グリップ装置の前記ベース部に配置されたベース部連結部材に着脱できる底面部連結部材、及び側面部に配置され前記グリップ装置の前記ベース部に配置されたベース部連結部材に着脱できる側面部連結部材を備え、使用時には、前記底面連結部材又は側面連結部材のいずれか一方が、前記ベース部連結部材に装着されることを特徴とするカメラハウジングである。
【0023】
同じく、請求項6に記載の発明は、請求項9に記載のカメラハウジングにおいて、前記ベース部連結部材はあり溝を備え、前記底面部連結部材及び前記側面部連結部材は前記ベース部連結部材の前記あり溝部にはまり込む鳩尾形断面形状の凸部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るカメラハウジングシステム、カメラハウジング、及びグリップ装置によれば、水中であっても撮影の状態に応じて、簡単かつ迅速に横構図状態と縦構図状態とに変更できる。
【0025】
即ち、請求項1に記載のカメラハウジングシステムによれば、グリップ装置はベース部、及びこのベース部の両端部から立ち上がると共に使用者が把持する2本の把持部を備え、各把持部の先端に水中照明装置を設置する。また、カメラハウジングは、カメラを外部から操作可能に水密状態で格納する。
【0026】
このグリップ装置のベース部には、カメラハウジングの底面部又は側面部と、を連結する連結部材が配置されており、この連結部材は、グリップ装置のベース部に配置されたベース部連結部材と、カメラハウジングの前記底面部に配置されベース部連結部材にワンタッチで着脱できる底面部連結部材、及びカメラハウジングの側面部に配置されベース部連結部材にワンタッチで着脱できる側面部連結部材で構成される。
【0027】
このため、ベース部にカメラハウジングの底面部又は側面部を接続でき、撮影の必要に応じて、水中であっても、簡単かつ迅速に横構図状態と縦構図状態とを自然な照明で撮影ができる状態にワンタッチで変更できる。
【0028】
また、請求項2に記載のカメラハウジングシステムによれば、ベース部連結部材にはあり溝が形成され、底面部連結部材及び側面部連結部材にはベース部連結部材のあり溝部にはまり込む鳩尾形断面形状の凸部が形成されている。このため、ベース部連結部材に底面部連結部材及び側面部連結部材を迅速かつ確実に着脱できる。
【0029】
また、請求項3に記載の発明によれば、ベース部連結部材と底面部連結部材又は前記側面部連結部材とを固定するロック機構を備えている。このため、カメラハウジングの位置を変更した状態とし、ロック機構でベース部連結部材と底面部連結部材又は前記側面部連結部材とを固定することができる。よって、不用意にカメラハウジングとグリップ装置とが外れるおそれがない。
【0030】
また、請求項4に記載の発明によれば、水中照明装置は、アーム部材を介してグリップ装置の把持部に接続されている。このため、水中照明装置の配置位置を自由に変更でき、照明の自由度が増す。
【0031】
更に、請求項5に記載のカメラハウジングによれば、カメラハウジングは、内部にカメラを操作可能に水密状態で格納すると共に、ベース部、及びベース部の両端部から立ち上がると共に使用者が把持する2本の把持部を備え、各把持部の先端に水中照明装置を設置するグリップ装置のベース部に設置可能である。また、カメラハウジングは、底面部に配置されグリップ装置のベース部に配置されたベース部連結部材に着脱できる底面部連結部材、及び側面部に配置されベース部連結部材に着脱できる側面部連結部材と、を備えている。このため、ベース部にカメラハウジングの底面部又は側面部を接続でき、撮影の必要に応じて、水中であっても、簡単かつ迅速に横構図状態と縦構図状態とを自然な照明で撮影ができる状態に変更できる。
【0032】
そして、請求項6に記載のカメラハウジングによれば、ベース部連結部材はあり溝を備え、底面部連結部材及び側面部連結部材はベース部連結部材のあり溝部にはまり込む鳩尾形断面形状の凸部を備えている。このため、ベース部連結部材に底面部連結部材及び側面部連結部材を迅速かつ確実にワンタッチで着脱できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態に係るカメラハウジングシステムを示すものであり、(a)はカメラハウジングを横構図位置でグリップ装置に配置した状態を示す正面図、(b)はカメラハウジングを縦構図位置でグリップ装置に配置した状態を示す正面図である。
図2】同カメラハウジングシステムに使用する連結部材を示すものであり、(a)はカメラハウジングに配置される側面部連結部材及び底面部連結部材であるベース部を示す断面図、(b)グリップ装置に配置されるベース部連結部材であるグリップ部材を示す断面図である。
図3】同カメラハウジングシステムによる縦構図位置での撮影を示すものであり、(a)はカメラハウジングシステムと被写体を示す写真、(b)は撮影結果を示す写真である。
図4】同カメラハウジングシステムにおいてカメラハウジングを横構図位置でグリップ装置に配置した状態を示す写真である。
図5】同カメラハウジングシステムを構成するカメラハウジングを示す写真である。
図6】従来のカメラハウジングを横構図で固定したカメラハウジングシステムを使用して縦構図の撮影をする状態を示すものであり、(a)はカメラハウジングシステムと被写体を示す写真、(b)は撮影結果を示す写真である。
図7】従来のカメラハウジングシステムにおいて、ストロボを取り付けたアーム部材を延長、変形して水底近くの被写体を縦構図で撮影する状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を実施するための形態に係るカメラハウジングシステム、カメラハウジング、及びグリップ装置について説明する。
【0035】
<全体構造>
まず、カメラハウジングシステム100の全体構造について説明する。図1は本発明の実施形態に係るカメラハウジングシステムを示すものであり、(a)はカメラハウジングを横構図位置でグリップ装置に配置した状態を示す正面図、(b)はカメラハウジングを縦構図位置でグリップ装置に配置した状態を示す正面図である。
【0036】
カメラハウジングシステム100は、カメラハウジング10、グリップ装置20、アーム部材30、及び水中照明装置であるストロボ80を備える。
【0037】
<カメラハウジング>
図5は同カメラハウジングシステムを構成するカメラハウジングを示す写真である。
【0038】
カメラハウジング10は、金属製又は合成樹脂製のハウジング本体11にデジタル一眼レフカメラ、デジタルミラーレスカメラ等のカメラを水密状態で格納し、カメラのレリーズボタン、設定操作ボタン、ダイヤル等を操作できる。
【0039】
このため、カメラハウジング10は、操作ボタン12、レンズ収納部13、アクセサリーシュー14、操作ダイヤル15、16の他、操作レバー17等を備える。
【0040】
<グリップ装置>
グリップ装置20は、平板状のベース部21と、このベース部21の両端部から立ち上がる2本のグリップ部22、22とを備える。
【0041】
このグリップ部22、22には、操作者である撮影者が両手で把持できる把持部23、23が配置されている。また、グリップ部22、22の先端には、アーム部材30を取り付けるアーム部材取付部24、24が設けられている。
【0042】
アーム部材30は、グリップ装置20のアーム部材取付部24に接続され、取り付け角度を可変とする可変アーム部材31、31、33、33と、この可変アーム部材31、33の間に配置された浮力調整部材32を備える。
【0043】
可変アーム部材31は、アーム部材取付部24と、浮力調整部材32にそれぞれ配置されたボール状部材を2枚の板部材で挟み、ねじで板部材のボール挟み強さを調整してアーム部材取付部24及び浮力調整部材32との取り付け角度を可変に設定する。可変アーム部材33も同様の構造を備える。浮力調整部材32は、カメラハウジングシステム100の質量と浮力とが略同一となるように選択される。
【0044】
ストロボ80、80は、アーム部材30、30の先端に配置されている。ストロボ80は、水中での使用ができるものである。
【0045】
カメラハウジング10と、グリップ装置20のベース部21とは連結部材40で連結されている。連結部材40は、グリップ装置20のベース部21の上面に配置されるベース部連結部材70と、カメラハウジング10の底面部10a及び一方の側面部10b(本例では使用者である撮影者から見て左側側面部)に設けられる底面部連結部材50及び側面部連結部材60とから構成される。
【0046】
カメラハウジング10を横構図で撮影するときは、ベース部連結部材70に底面部連結部材50を接続する(図1(a)の状態)、一方、カメラハウジング10を縦構図で撮影するときは、ベース部連結部材70に、側面部連結部材60を接続する(図1(b)の状態)。
【0047】
<連結部材>
図2は同カメラハウジングシステムに使用する連結部材を示すものであり、(a)はカメラハウジングに配置される側面部連結部材及び底面部連結部材であるベース部を示す断面図、(b)グリップ装置に配置されるベース部連結部材であるグリップ部材を示す断面図である。
【0048】
本実施形態において、連結部材40は、カメラハウジング10とグリップ装置20とを連結する。連結部材40はカメラハウジング10側の底面部連結部材50、側面部連結部材60と、グリップ装置20側のベース部連結部材70の組み合わせで構成される。
【0049】
グリップ装置20のベース部連結部材70にはベース部連結部材70が配置され、ハウジング本体11の底面部10aには底面部連結部材50が、ハウジング本体11の側面部10bには側面部連結部材60が配置されている。
【0050】
図1(a)に示すように、カメラハウジングシステム100により横構図で撮影をする場合はベース部連結部材70に底面部連結部材50を接続する。
【0051】
また、図1(b)に示すように、カメラハウジングシステム100により、位置で撮影をする場合はベース部連結部材70に側面部連結部材60を接続する。
【0052】
ベース部連結部材70と、底面部連結部材50及び60と、はワンタッチで着脱できる構造である。これらの部材の接続機構は、いわゆるアルカスイス互換タイプの構造とすることができる。この構造により、ベース部連結部材70と底面部連結部材50又は側面部連結部材60のとの取り付け、取り外しを確実かつ迅速に行うことができる。
【0053】
そして、本実施形態では、連結部材40のベース部連結部材70には、後述するロック機構76を備えるので、ベース部連結部材70に取り付けた底面部連結部材50又は側面部連結部材60を確実に固定、固定解除することができる。
【0054】
<底面部連結部材及び底面部連結部材>
まず、カメラハウジング10に配置する底面部連結部材50及び側面部連結部材60の構成について説明する。底面部連結部材50及び側面部連結部材60は同一の構造を備える。
【0055】
図2(a)に示すように底面部連結部材50(側面部連結部材60)は、金属板で構成された基板部51(61)を備え、この基板部51(52)の図中下方には下方にいくにつれて外側に向けて広がる2つの爪部52、52(62、62)を形成している。
【0056】
本例では、この爪部52、52(62,62)により、鳩尾形断面形状の凸部53(63)を形成する。また、この爪部52、52(62,62)の内側には底面部連結部材50をハウジング本体11の底面部10a又はハウジング本体11の側面部10bに固定するねじ部材54(64)を備える。更に、基板部51(51)のカメラハウジング10との取付面側(図1(a)中上側)には、滑り止め部材55(65)が配置されている。
【0057】
<ベース部連結部材>
次にグリップ装置20のベース部21に配置されるベース部連結部材70について説明する。図2(b)に示すようにベース部連結部材70は内部に雌ねじ部72を形成すると共に、幅方向の一方に固定爪73を備える本体部71を備える。
【0058】
また、ベース部連結部材70は、固定爪73に対向する位置に固定爪73との距離を可変とした可動爪74を備える。そして、この可動爪74と固定爪73との間に底面部連結部材50(60)の爪部52、52(62、62)で構成される鳩尾形断面形状の凸部53(63)がスライド挿入されるあり溝75を形成している。
【0059】
これにより、ベース部連結部材70に底面部連結部材50又は側面部連結部材60を設置できる。
【0060】
本実施形態では、可動爪74は、ロック機構76を備える。このロック機構76により、あり溝75の幅寸法を変更し、可動爪74を底面部連結部材50又は側面部連結部材60の爪部52(62)に押し付けて固定する。
【0061】
ベース部連結部材70は、回転駆動部77を備え、回転駆動部77は、雌ねじ部72にねじ込まれる雄ねじ部77aを備える。回転駆動部77を回転すると、雄ねじ部76aが雌ねじ部72に沿って移動して可動爪74を固定爪73に対して移動させる。回転駆動部77と可動爪74との間には、押し付け部材78と圧縮ばね78aが配置されている。
【0062】
更に、回転駆動部77のベース部連結部材70と反対側(図2(b)中右側)には、回転駆動部77の位置を固定する固定ノブ79が配置されている。
【0063】
この固定ノブ79を回転して回転駆動部77に押し付けることで、回転駆動部77の位置が固定され、可動爪74の位置が移動しないロック状態となる。
【0064】
底面部連結部材50(側面部連結部材60)をベース部連結部材70に固定するには、回転駆動部77を一方方向に回動して可動爪74と固定爪73の間隔寸法を広げ、底面部連結部材50又は側面部連結部材60の凸部53(63)を挿入し、その状態で回転駆動部77を反対回転させる。すると、可動爪74は底面部連結部材50(側面部連結部材60)の爪部52(62)を押し付けて底面部連結部材50を固定状態とする。そして、ロック機構76の回転駆動部77を回転操作し、更に固定ノブ79を操作して底面部連結部材50(側面部連結部材60)をベース部連結部材70に固定するロック状態とする。
【0065】
底面部連結部材50(側面部連結部材60)をベース部連結部材70から取り外すには、上述した固定操作と逆の操作をする。
【0066】
<カメラハウジングシステムの作用、効果>
図3は同カメラハウジングシステムによる縦構図位置での撮影を示すものであり、(a)はカメラハウジングシステムと被写体を示す写真、(b)は撮影結果を示す写真、図4は同カメラハウジングシステムにおいてカメラハウジングを横構図位置でグリップ装置に配置した状態を示す写真である。
【0067】
以上の構成を備えるカメラハウジングシステム100は、水中撮影の際、水中でカメラハウジング10をグリップ装置20に横構図として配置した状態(図4の状態)から、カメラハウジング10をグリップ装置20に縦構図として配置した状態(図3(a)の状態)にすることができる。これには、まず、グリップ装置20に配置されたベース部連結部材70のロック機構76を操作してロックを解除し、底面部連結部材50をベース部連結部材70からスライドして取り外す。
【0068】
そして、カメラハウジング10を縦構図に回転させて側面部連結部材60をベース部連結部材70にスライドさせて取り付け、ロック機構76を操作して側面部連結部材60をベース部連結部材70に固定する。
【0069】
これにより、図3(a)に示すように、グリップ装置20にカメラハウジング10が縦構図に配置され、水底附近の被写体を撮影するに際して、アーム部材30やストロボ80が水底に接触することがない状態となる。この状態で、低アングルでの撮影が可能となり、更に撮影時にストロボ80、80の光が上方から被写体(魚モデル90)に照射できる
。このため、図3(b)に示すように、上方から自然な照明で撮影することができる(図3(b)参照)。
【0070】
また、本実施形態によれば、カメラハウジング10のグリップ装置20の取り外しは、ベース部連結部材70のロック機構76を解除してワンタッチで行えるし、また、縦構図とするカメラハウジング10のグリップ装置20への取り付けも、カメラハウジング10を縦に回転して底面部連結部材50をベース部連結部材70にワンタッチで取り付け、ロック機構76でロックすることだけでできる。このため、水中でのカメラハウジング10の横構図、縦構図の変更を容易かつ迅速に行うことができる。よって、水中での被写体の急な移動等に即してカメラハウジング10を横構図から縦構図へ、またその逆に縦構図から横構図に迅速に変更できる。
【0071】
以上のように構成を備える本実施形態に係るカメラハウジングシステム100によれば、グリップ装置20のベース部21にワンタッチでカメラハウジングの底面部又は側面部を接続でき、撮影の必要に応じて、水中であっても、簡単かつ迅速に横構図状態と縦構図状態とを自然な照明で撮影ができる状態に変更できる。
【0072】
また、実施形態に係るカメラハウジングシステム100によれば、ベース部連結部材70にはあり溝75が形成され、底面部連結部材50及び側面部連結部材60にはベース部連結部材70のあり溝75にはまり込む鳩尾形断面形状の凸部53が形成されている。このため、ベース部連結部材70に底面部連結部材50又は側面部連結部材60をスライドして迅速かつ確実に着脱できる。
【0073】
また、実施形態に係るカメラハウジングシステム100によれば、ベース部連結部材70と底面部連結部材50又は前記側面部連結部材60とを固定するロック機構76を備えている。このため、カメラハウジング10の横構図、縦構図の位置を変更した状態とてロック機構76でベース部連結部材70と底面部連結部材50又は前記側面部連結部材60とを確実に固定することができる。よって、水中や地上での移送中に不用意にカメラハウジング10とグリップ装置20とが外れることがない。
【0074】
また、実施形態に係るカメラハウジングシステム100によれば、ストロボ80、80は、アーム部材30、30を介してグリップ装置20の把持部23、23に接続されている。このため、アーム部材30、30の姿勢を変更することでストロボの発光位置を自由に変更でき、照明の自由度が増す。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係るカメラハウジングシステム、カメラハウジング、及びグリップ装置は、水中であっても撮影の状態に応じて、簡単かつ迅速に横構図状態と縦構図状態とを自然な照明で撮影ができる状態を変更することができ、産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0076】
10:カメラハウジング
10a:底面部
10b:側面部
11:ハウジング本体
12:カメラ操作ボタン
13:レンズ収納部
14:アクセサリーシュー
15、16:操作ダイヤル
17:操作レバー
20:グリップ装置
21:ベース部
22:グリップ部
23:把持部
24:アーム部材取付部
30:アーム部材
31:可変アーム部材
32:浮力調整部材
33:可変アーム部材
40:連結部材
50:底面部連結部材(連結部材)
51:基板部
52:爪部
53:凸部
54:ねじ部材
55:滑り止め部材
60:側面部連結部材(連結部材)
61:基板部
62:爪部
63:凸部
64:ねじ部材
65:滑り止め部材
70:ベース部連結部材(連結部材)
71:本体部
72:雌ねじ部
73:固定爪
74:可動爪
75:あり溝
76:ロック機構
76a:雄ねじ部
77:回転駆動部
77a:雄ねじ部
78:押し付け部材
78a:圧縮ばね
79:固定ノブ
80:ストロボ(水中照明装置)
90:魚モデル(被写体)
100:カメラハウジングシステム
200:カメラハウジングシステム
210:カメラハウジング
220:グリップ装置
221:ベース部
222:把持部
230:アーム部材
240:ストロボ
250:追加アーム部材
300:水底
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7