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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】発芽玄米用炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20240328BHJP
【FI】
A47J27/00 102
A47J27/00 109D
A47J27/00 109P
A47J27/00 109E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020122684
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019098
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年4月10日、以下の各ウェブサイトにて公開。株式会社日本美健、株式会社ヘルシーマルシェ(ヘルシーマルシェ本店、ヘルシーマルシェ楽天市場店、ヘルシーマルシェYahoo!店、Amazon)、アースゲートインターナショナル株式会社(ローフード通販ショップロハス、【楽天市場】ローフード通販ショップロハス、【ヤフーショッピング】オーガニック&ローフードロハス、【Amazon】オーガニック&ローフードロハス)、株式会社HIRYU(公式ショップ、楽天市場、Amazon)
(73)【特許権者】
【識別番号】511052691
【氏名又は名称】株式会社日本美健
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】竹田 次郎
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110340(JP,A)
【文献】特許第3950137(JP,B2)
【文献】特開平4-336010(JP,A)
【文献】特開2007-44234(JP,A)
【文献】特開2018-126410(JP,A)
【文献】特開2015-23906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蓋を有する蓋体が設けられた炊飯器本体と、該炊飯器本体に設けられた収容凹部に収容される炊飯釜と、を備え、前記蓋体が閉まって前記内蓋と前記炊飯釜とが接触した状態において前記炊飯釜の内部で玄米を発芽させて発芽玄米を生成し、且つ、前記発芽玄米をその後に炊飯して発芽玄米御飯を炊き上げるとともに前記発芽玄米御飯を保温可能な発芽玄米用炊飯器であって、
前記炊飯釜は有底略壺型形状を有し、前記炊飯釜は上端位置に開口を有する釜入口部と、該釜入口部の反対側である下端に位置する下端底部と、前記釜入口部と前記下端底部とをつなぐように側壁として設けられた円筒側壁部と、を含んで構成され、
前記円筒側壁部は、該円筒側壁部の上端および下端のいずれか一方が前記炊飯釜において最小内径を有し、且つ、前記円筒側壁部の上端および下端の両方の内径に対して前記円筒側壁部における最大内径が少なくとも0.3cm以上大きく、
前記炊飯釜が鉄製であり、かつ炭素と鉄を含有するブラックダイヤモンド材料を含むコーティング膜を有することを特徴とする発芽玄米用炊飯器。
【請求項2】
内蓋を有する蓋体が設けられた炊飯器本体と、該炊飯器本体に設けられた収容凹部に収容される炊飯釜と、を備え、前記蓋体が閉まって前記内蓋と前記炊飯釜とが接触した状態において前記炊飯釜の内部で玄米を発芽させて発芽玄米を生成し、且つ、前記発芽玄米をその後に炊飯して発芽玄米御飯を炊き上げるとともに前記発芽玄米御飯を保温可能な発芽玄米用炊飯器であって、
前記発芽玄米用炊飯器は、玄米を発芽玄米に育成する発芽玄米育成工程と、前記発芽玄米育成工程で得られた発芽玄米を炊飯する炊飯工程と、前記炊飯工程で得られた発芽玄米御飯を保温する保温工程と、を前記炊飯釜の内部玄米量に応じて制御する制御部を有し、
前記発芽玄米育成工程が4時間~6時間であり、
前記制御部は、前記発芽玄米育成工程において前記炊飯釜の内部温度が第1温度又は第2温度となるように調整し、前記第1温度と前記第2温度は1時間ごとで交互に切り替えられることを特徴とする発芽玄米用炊飯器。
【請求項3】
請求項1に記載の発芽玄米用炊飯器であって、
前記円筒側壁部における上端の内径は、前記釜入口部における開口の内径よりも小さいことを特徴とする発芽玄米用炊飯器。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の発芽玄米用炊飯器であって、
前記円筒側壁部は、該円筒側壁部の上端が前記炊飯釜における最小内径であり、前記最小内径は15cm~25cmであることを特徴とする発芽玄米用炊飯器。
【請求項5】
請求項1、3および4のいずれかに記載の発芽玄米用炊飯器であって、
前記発芽玄米用炊飯器は、玄米を発芽玄米に育成する発芽玄米育成工程と、前記発芽玄米育成工程で得られた発芽玄米を炊飯する炊飯工程と、前記炊飯工程で得られた発芽玄米御飯を保温する保温工程と、を前記炊飯釜の内部玄米量に応じて制御する制御部を有し、
前記炊飯器本体には表示部が設けられ、前記表示部は前記発芽玄米用炊飯器の動作時において前記発芽玄米育成工程、前記炊飯工程、および前記保温工程のいずれの状態であるかを表示することを特徴とする発芽玄米用炊飯器。
【請求項6】
請求項5に記載の発芽玄米用炊飯器であって、
前記制御部は、前記発芽玄米育成工程において前記炊飯釜の内部温度が第1温度又は第2温度となるように調整し、前記第1温度と前記第2温度は1時間ごとで交互に切り替えられることを特徴とする発芽玄米用炊飯器。
【請求項7】
請求項5に記載の発芽玄米用炊飯器であって、
前記制御部には、前記発芽玄米用炊飯器における洗浄時期の通知のためにあらかじめ炊飯回数が設定され、
前記表示部は、前記発芽玄米用炊飯器の炊飯動作が前記炊飯回数に達すると前記洗浄時期を表示することを特徴とする発芽玄米用炊飯器。
【請求項8】
請求項5に記載の発芽玄米用炊飯器であって、
前記制御部には、前記炊飯釜および前記内蓋に対して高圧蒸気による殺菌洗浄を行う自動殺菌洗浄機能が設定され、前記自動殺菌洗浄機能は前記表示部に設けられた洗浄ボタンを押すことで実行できることを特徴とする発芽玄米用炊飯器。
【請求項9】
請求項2又は6に記載の発芽玄米用炊飯器であって、
前記発芽玄米育成工程が4時間又は6時間であり、
前記第1温度が30℃であり、
前記第2温度が34℃であり、
前記発芽玄米育成工程が4時間の場合には、最初の1時間を30℃とし、1時間~2時間を34℃とし、2時間~3時間を30℃とし、最後の3時間~4時間を34℃とし、
前記発芽玄米育成工程が6時間の場合には、最初の1時間を30℃とし、1時間~2時間を34℃とし、2時間~3時間を30℃とし、3時間~4時間を34℃とし、4時間~5時間を30℃とし、最後の5時間~6時間を34℃とすることを特徴とする発芽玄米用炊飯器。
【請求項10】
請求項2、5、6および9のいずれかに記載の発芽玄米用炊飯器であって、
前記制御部は、前記炊飯工程における前半時間(炊飯時)は前記炊飯釜の内部温度を70℃~118℃に調整し、前記炊飯工程における後半時間(蒸らし時)は前記炊飯釜の内部温度を70℃~100℃に調整することを特徴とする発芽玄米用炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯器、特に発芽玄米用炊飯器における炊飯ムラの改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向により、白米に替わる主食として玄米や発芽玄米が注目されている。発芽玄米は玄米を発芽させたものであり、白米と比較して非常に高い栄養価が備わっている。そして昨今では、発芽玄米を育成し、その後に発芽玄米ご飯を炊飯することのできる炊飯器も製品化されている。加えて、炊飯器における基本的な炊飯技術についてもさまざまな工夫がなされている。
【0003】
例えば特許文献1には、玄米発芽工程、浸し工程、加熱工程および蒸らし工程において、ヒーター、使用圧力調整装置及び自動蒸気排出装置の動作を調整するとともに、前記玄米発芽工程において、ヒーターを所定条件(所定のアルゴリズム)で制御することで良好な玄米発芽および炊飯を行うことができる電気圧力炊飯ジャーの玄米発芽・炊飯制御装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、炊飯器における内釜の形状を工夫することで、炊飯動作中のおねば(米の成分が溶け出した煮汁)の吹きこぼれを抑止することができる技術が開示されている。具体的には、内釜の上端部が該内釜の最大径よりも小さく形成されるとともに鍔部の上側に上筒部(この上筒部は空気により冷却される)が位置することで、おねば成分が含まれる蒸気の量を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3950137号公報
【文献】特開2018-86301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、昨今では上記の発芽玄米に加えて、酵素玄米も注目されている。この酵素玄米は「寝かせ玄米」、「発酵玄米」とも呼ばれ、発芽玄米に小豆と塩を加えて圧力釜などで炊き、保温ができる炊飯器などで3日から10日ほど寝かせて(発酵させて)作るものである。
【0007】
上記のとおり発芽玄米に関する炊飯技術(発芽技術)に加えて、さらに炊飯器全般における炊飯技術は進歩を遂げている一方、例えば炊飯器で玄米ご飯を炊こうとすると、その炊きあがりには必ずムラができてしまう。例えば白米と玄米を混ぜて炊飯を行うと、炊飯器の特性、すなわち熱対流などの影響で白米よりもサイズの大きい玄米が中央に集まってしまう傾向がある。特に酵素玄米を炊飯しようとするとこの炊飯ムラが顕著にあらわれてしまう。
【0008】
上記のとおり特許文献1に開示されたアルゴリズムを利用したり、あるいは特許文献2に開示された内釜形状を利用することで発芽玄米等を良好に炊くことができるようにはなるが、特許文献1や特許文献2の技術だけでは炊飯ムラの解決は困難であり、まだまだ改良の余地がある。
【0009】
本発明は上記従来技術の課題に鑑みて行われたものであって、その目的は良好な炊飯を実現するとともに炊飯ムラを抑制し、さらにメンテナンス性に優れた発芽玄米用炊飯器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る発芽玄米用炊飯器は、
内蓋を有する蓋体が設けられた炊飯器本体と、該炊飯器本体に設けられた収容凹部に収容される炊飯釜と、を備え、前記蓋体が閉まって前記内蓋と炊飯釜とが接触した状態において該炊飯釜の内部で玄米を発芽させて発芽玄米を生成し、且つ、該発芽玄米をその後に炊飯して発芽玄米御飯を炊き上げるとともに該発芽玄米御飯を保温可能な発芽玄米用炊飯器であって、
前記炊飯釜は有底略壺型形状を有し、該炊飯釜は上端位置に開口を有する釜入口部と、該釜入口部の反対側である下端に位置する下端底部と、該釜入口部と下端底部とをつなぐように側壁として設けられた円筒側壁部と、を含んで構成され、
前記円筒側壁部は、該円筒側壁部の上端および下端のいずれか一方が前記炊飯釜において最小内径を有し、且つ、該円筒側壁部の上端および下端の両方の内径に対して該円筒側壁部における最大内径が少なくとも0.3cm以上大きいことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る発芽玄米用炊飯器は、
前記円筒側壁部における上端の内径は、前記釜入口部における開口の内径よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る発芽玄米用炊飯器は、
前記円筒側壁部は、該円筒側壁部の上端が前記炊飯釜における最小内径であり、該最小内径は15cm~25cmであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る発芽玄米用炊飯器は、
当該発芽玄米用炊飯器は、玄米を発芽玄米に育成する発芽玄米育成工程と、該発芽玄米育成工程で得られた発芽玄米を炊飯する炊飯工程と、該炊飯工程で得られた発芽玄米御飯を保温する保温工程と、を前記炊飯釜の内部玄米量に応じて制御する制御部を有し、
前記炊飯器本体には表示部が設けられ、該表示部は当該発芽玄米用炊飯器の動作時において発芽玄米育成工程、炊飯工程、保温工程のいずれの状態であるかを表示することを特徴とする。
【0014】
前記制御部は、前記発芽玄米育成工程において前記炊飯釜の内部温度が第1温度または第2温度となるように調整し、該第1温度と第2温度は1時間ごとで交互に切り替えられることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る発芽玄米用炊飯器は、
前記制御部には、当該発芽玄米用炊飯器における洗浄時期の通知のためにあらかじめ炊飯回数が設定され、
前記表示部は、当該発芽玄米用炊飯器の炊飯動作が前記炊飯回数に達すると前記洗浄時期を表示することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る発芽玄米用炊飯器は、
前記制御部には、前記炊飯釜および内蓋に対して高圧蒸気による殺菌洗浄を行う自動殺菌洗浄機能が設定され、該自動殺菌洗浄機能は表示部に設けられた洗浄ボタンを押すことで実行できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発芽玄米用炊飯器が備える炊飯釜の形状を有底略壺型形状とし、より具体的には炊飯釜における円筒側壁部の上端および下端のいずれか一方を炊飯釜における最小内径として形成し、且つ、該円筒側壁部の上端および下端の内径に対して該円筒側壁部の最大内径を少なくとも2cm以上大きい形状とすることで、良好な炊飯を実現するとともに炊飯ムラを抑制することができる。
【0018】
さらに、当該発芽玄米用炊飯器(制御部)に所定条件(炊飯回数)による洗浄時期の表示や自動殺菌洗浄機能を設けることで、従来の発芽玄米用炊飯器に比べてメンテナンス性の向上が期待できる。その結果、発芽玄米用炊飯器における製品寿命の向上や経済性向上の効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る発芽玄米用炊飯器の概略構成図を示す。
図2】本発明の実施形態に係る炊飯器本体(発芽玄米用炊飯器)における変形例の概略イメージ写真を示す。
図3】本発明の実施形態に係る炊飯釜の概略断面図を示す。
図4】本発明の実施形態に係る炊飯釜の側面形状イメージ(Sライン形状)を示す。
図5】本発明の本実施形態に係る炊飯釜における円筒側壁部の拡大図を示す。
図6】本実施形態に係る発芽玄米用炊飯器および一般的な炊飯器における炊飯状態(炊きあがり)の概略イメージ写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の発芽玄米用炊飯器について図面を用いて説明するが、本発明の趣旨を超えない限り何ら以下の例に限定されるものではない。なお、本発明に係る発芽玄米用炊飯器は発芽玄米のほか、白米やおかゆ等の炊飯にも対応しているものとする。
【0021】
図1に本発明の実施形態に係る発芽玄米用炊飯器の概略構成図を示す。図1では、発芽玄米用炊飯器10の概略構成イメージを把握するために、例えば凹凸部分や湾曲形状等については図示を省略している。同図に示す発芽玄米用炊飯器10は、内蓋22を有する蓋体24が設けられた炊飯器本体20と、該炊飯器本体20に設けられた収容凹部26に収容される炊飯釜30と、を備えている。また、図1では図示を省略しているが、本実施形態に係る炊飯釜30は特徴的な形状を有して構成されている。
【0022】
炊飯器本体20には、当該発芽玄米用炊飯器10の動作を制御する制御部28と、該制御部28による動作の状態(後述する各工程等)を表示する表示部20aと、が設けられている。
【0023】
制御部28には例えば専用の制御基板やMCUなどを利用することができる。また、制御部28は炊飯器本体20内部の空きスペースに設けられている。図1では炊飯器本体20の正面側に設けられているが特にこの位置に限定されるものではなく、制御部28は炊飯器本体20の空きスペースであれば別の位置に設けても良い。
【0024】
表示部20aは発芽玄米用炊飯器10の動作状態等を示すための表示機能を果たすとともに、制御部28への制御指令ボタンの役割も果たしている。図1では、表示部20aが炊飯器本体20の上面に設けられているが、例えば炊飯器本体20の側面(正面)に表示部20aを設けることもできる。また、図1における炊飯器本体20は略四角柱形状であるが、特にこの形状には限定されず他の形状であっても良い。
【0025】
例えば図2に示すように炊飯器本体20の形状を略円筒形状とし、その側面(正面)に表示部20aを設けることもできる。本実施形態に係る炊飯器本体20(および発芽玄米用炊飯器10)をこのような形状にすることで、従来品と比較して意匠性の向上が期待できる。
【0026】
内蓋22にはパッキン22aが設けられている。このパッキン22aは例えば洗浄時に内蓋22から取り外し可能であり、その材料には炭(本明細書ではチャコールとも呼ぶ)を含んで構成されている。このようにチャコールを含んだパッキン22aを利用することで、消臭、殺菌効果が期待できる。特に酵素玄米を保温する際(熟成させる際)に従来品と比較して大きな効果(消臭、殺菌効果)が期待できる。
【0027】
ここで、本実施形態に係る発芽玄米用炊飯器10の動作について説明する。まず、炊飯釜30に所定量の玄米と水を入れ、該炊飯釜30を収容凹部26に収容して蓋体24を閉めると、内蓋22と炊飯釜30とが接触状態となる(パッキン22aと炊飯釜30の上端位置は密着状態となる)。この状態において表示部20aに設けられた所定の操作ボタン(図示は省略)を押すと、当該発芽玄米用炊飯器10は動作を開始する。
【0028】
本実施形態では、蓋体24を閉めて内蓋22と炊飯釜30とを接触させることで一般的な炊飯器に比べてより精度の高い密閉を保つことができる(一般的な炊飯器であればパッキンにより密閉を保つが、本実施形態では内蓋22と炊飯釜30との接触により該炊飯釜30内部の密閉状態を維持することができる)。
【0029】
はじめに、玄米を発芽玄米に育成するための発芽玄米育成工程が開始する。本実施形態では、例えば発芽玄米育成工程は4時間~6時間程度であり、その時間を任意に選択することができる(または4時間と6時間のいずれかのモードを選択することができる)。
【0030】
本実施形態における発芽玄米育成工程では、1時間ごとに炊飯釜30の内部温度を切り替える制御(あらかじめ定められた2つの温度を交互に繰り返す制御)とすることができる。すなわち、本実施形態に係る制御部28は、発芽玄米育成工程において炊飯釜30の内部温度が30℃(第1温度とも呼ぶ)または34℃(第2温度とも呼ぶ)となるように調整する。そして、この30℃と34℃は1時間ごとで交互に切り替えられることになる。
【0031】
例えば発芽玄米育成工程が4時間の場合には、最初の1時間を30℃とし、1時間~2時間を34℃とし、2時間~3時間を30℃とし、最後の3時間~4時間を34℃とすることができる。同様に発芽玄米育成工程が6時間の場合には、最初の1時間を30℃とし、1時間~2時間を34℃とし、2時間~3時間を30℃とし、3時間~4時間を34℃とし、4時間~5時間を30℃とし、最後の5時間~6時間を34℃とすることができる。
【0032】
このように本実施形態に係る発芽玄米育成工程では、炊飯釜30の内部温度が30℃と34℃とで1時間ごとに繰り返されることで、従来よりも良好な発芽玄米を得ることができる。例えば、本実施形態に係る発芽玄米育成工程では炊飯釜30の内部温度を28℃~32℃の第1温度と33℃~36℃の第2温度にすることもできる。
【0033】
次に、発芽玄米育成工程で得られた発芽玄米を炊飯する炊飯工程へと移行する。この炊飯工程は、あらかじめ制御部28に設定された所定のアルゴリズムにより行う。本実施形態における炊飯工程では、例えば最大加圧0.8~2気圧、最大加熱100℃~130℃で発芽玄米の炊飯を行うことが好ましく、特に好ましくは最大加圧1.8気圧、最大加熱118℃で炊飯を行うことが好適である。
【0034】
具体的には制御部28は、炊飯工程における前半時間(炊飯時)は炊飯釜30の内部温度を70℃~118℃に調整し、炊飯工程における後半時間(蒸らし時)は炊飯釜30の内部温度を70℃~100℃に調整する。
【0035】
そして、炊飯工程で得られた発芽玄米御飯は所定条件による保温工程で保温される。この保温工程は、例えばその期間を数時間から14日間程度で任意に設定することができる。この保温工程を経て、例えば熟成された酵素玄米を得ることができる。
【0036】
このように制御部28は、発芽玄米育成工程、炊飯工程、および保温工程を炊飯釜30の内部玄米量に応じて適正に制御することで、すなわち、本実施形態に係る発芽玄米用炊飯器10は主として発芽玄米育成工程、炊飯工程、保温工程を行うことで、良好な酵素玄米(および発芽玄米)を得ることができる。
【0037】
そして、本実施形態では制御部28にあらかじめ炊飯回数を設定し、この設定された炊飯回数に応じて当該発芽玄米用炊飯器10の洗浄時期を通知する機能、より具体的にはあらかじめ設定された炊飯回数に応じた洗浄時期を表示部20aに表示させる機能を持たせても良い。
【0038】
さらに制御部28には、炊飯釜30および内蓋22に対して高圧蒸気による殺菌洗浄を行う自動殺菌洗浄機能を設け、表示部20aに設けられたボタン(例えば洗浄ボタン等)を押すことで自動殺菌洗浄機能を実行できるようにしても良い。
【0039】
本実施形態に係る発芽玄米用炊飯器10では炊飯工程の前段階として玄米を発芽(育成)させている(発芽玄米育成工程)。特にこの発芽玄米育成工程時の炊飯釜30内部は細菌の繁殖を招きやすい環境でもあることから、発芽玄米用炊飯器10において自動殺菌洗浄機能は高い殺菌洗浄効果が期待できる。
【0040】
例えば制御部28にパッキン22aの交換時期を知らせる機能(例えば炊飯回数700回~730回でアラームを表示したり、あるいは音声により交換時期を通知する機能)を設けることもできる。制御部28に上記これらの機能を設けることで、従来の発芽玄米用炊飯器に比べてメンテナンス性の向上が期待できる。その結果、製品寿命向上等の効果も得ることができる。
【0041】
次に本実施形態に係る炊飯釜30について説明する。図3には本実施形態に係る炊飯釜の概略断面図を示す。図3では炊飯釜30の形状を分かりやすく説明するために、実際の炊飯釜において有する凹凸形状を省略するとともに特徴部分については実際よりも極端に表現している。
【0042】
図3に示すように炊飯釜30は、上端位置に開口を有する釜入口部32と、該釜入口部32の反対側である下端に位置する下端底部34と、該釜入口部32と下端底部34とをつなぐように側壁として設けられた円筒側壁部36と、を含んで構成されている。
【0043】
具体的には、円筒側壁部36の上端36aが釜入口部32につながれているとともに、
下端36bが下端底部34につながれている。つまり、炊飯釜30は全体として有底略壺型形状を有して構成されている。
【0044】
釜入口部32の上端(炊飯釜30における最上端位置)は円筒側壁部36の最大内径に比べて広がりを有した形状になっており、すなわち、図4に示すように本実施形態に係る炊飯釜30の側面(側壁内側の形状)はSライン形状(S-LINE)となっている。
【0045】
釜入口部32には炊飯釜30の持ち手としてのホールド部38が設けられている。このホールド部38は持ち手としての役割のほか、炊飯釜30が炊飯器本体20の収容凹部26へ収容されたときに該収容凹部26内でしっかりと固定されるための固定補助具としての役割も果たしている。
【0046】
本実施形態における炊飯釜30は鉄材料を含んで構成され、さらに炭と鉄を含むブラックダイヤモンド材料でコーティングされている。炊飯釜30にこのようなコーティングをすることで、擦れに強く耐久性に優れるとともに、あわせて熱伝導率の向上効果も期待できる。
【0047】
下端底部34は、滑らかな湾曲形状(外方へ向かった湾曲形状)を有して構成されている。また、下端底部34には例えば炊飯器本体20が有するヒーター(およびIH)などにより高温の熱エネルギー(最大100℃~150℃程度)が与えられる。また、本実施形態では例えば下端底部34とともに円筒側壁部36にもヒーターやIHにより熱エネルギーが与えられる構成とすることもできる。
【0048】
ここで、上述したように発芽玄米を炊飯する際には熱対流による炊飯ムラが生じてしまう恐れがある。この熱対流は炊飯器の特性上必ず起こり得る現象であり、また、昨今ではさまざまな炊飯技術が向上している一方で、この点に着目した炊飯技術は実現されていない。特に発芽玄米(および上述の酵素玄米)を炊飯する際にはこの炊飯ムラが顕著にあらわれてしまう。
【0049】
そこで本実施形態では、炊飯釜30の形状を工夫することで良好な炊飯を実現するとともに炊飯ムラを抑制している。以下、本実施形態に係る炊飯釜30の特徴的な形状について詳しく説明する。なお、本明細書において熱対流とは、流体の温度差が原因で流体が上下に移動を繰りかえす鉛直対流を意味するものである。
【0050】
図5には、本実施形態に係る炊飯釜における円筒側壁部の拡大図を示す。図5に示すように本実施形態に係る炊飯釜30は、円筒側壁部36の上端36aが釜入口部32における最下端位置に継ぎ目なくつながれており、円筒側壁部36の下端36bが下端底部34における最上端位置に継ぎ目なくつながれている。つまり、炊飯釜30は製造時において例えば金型等を利用して一体として形成されるものである。
【0051】
そして、図5に示すように本実施形態における円筒側壁部36は該該円筒側壁部36の上端36aおよび下端36bのいずれか一方が炊飯釜30における最小内径を有するように形成されている。また、炊飯釜30は、円筒側壁部36における上端36aの内径が釜入口部32における開口の内径よりも小さくなるように形成されている。例えば、上端36aの内径は釜入口部32における開口の内径よりも1cm~4cm程度小さいことが好ましい。本実施形態では、上端36aが炊飯釜30における最小内径として形成されることが好ましい。また、例えば円筒側壁部36における上端36aと下端36bとを同じ大きさの内径にすることもできる。
【0052】
本実施形態では、上端36aの内径は例えば15cm~25cmであることが好ましく、特に上端36aの内径は16cm~20cmであることが好適である。加えて、本実施形態では上端36aの内径を17cm~19cmにすることもできる。また、本実施形態では円筒側壁部36の厚さを3mm~5mmとすることが好ましい。
【0053】
円筒側壁部36は、全体として外周方向へ緩やかな丸みを有する側壁として形成され、該円筒側壁部36の鉛直方向における略中央位置(上端36aと下端36bとの間)が当該円筒側壁部36において最大内径を有している。
【0054】
この最大内径は円筒側壁部36の上端36aおよび下端36bの両方の内径に対して少なくとも0.3cm以上大きいことが好ましく、特に好ましくは上端36aおよび下端36bの両方の内径に対して0.5cm以上、または0.8cm以上大きいことが好ましく、より好ましくは上端36aおよび下端36bの両方の内径に対して1cm以上大きいことが好適である。また、本実施形態では炊飯釜30における最大内径を円筒側壁部36の上端36aおよび下端36bの両方の内径に対して2cm~4cm以上大きくすることもできる。
【0055】
本実施形態に係る炊飯釜30をこのような特徴的な形状にすることで、炊飯時における熱対流に不規則性が生じて(例えば乱流状態を生じさせて)、結果として炊飯ムラを大幅に抑制することができる。
【0056】
図6には、本実施形態に係る発芽玄米用炊飯器および一般的な炊飯器における炊飯状態(炊きあがり)の概略イメージ写真を示す。図6(a)に示すように、一般的な炊飯器(または発芽玄米用炊飯器)で酵素玄米を炊いた場合には熱対流などの影響(例えば熱対流と炊飯時の振動による相互作用等)によりどうしても小豆が中央に集中してしまい、その結果、炊飯ムラなどが生じてしまう恐れがある。
【0057】
一方で図6(b)に示すように、本実施形態に係る発芽玄米用炊飯器10で酵素玄米を炊いた場合には炊飯釜30の特徴的な形状により熱対流に不規則性が生じるので(または、対流に死角がなくなり炊飯釜の内部全体が混合されるので)、小豆が中央に集中することなく、ムラのない炊飯を実現することができる。
【0058】
このように本発明に係る発芽玄米用炊飯器10は、炊飯釜30の形状を有底略壺型形状とし、より具体的には炊飯釜30における円筒側壁部36の上端36aおよび下端36bのいずれか一方を炊飯釜30における最小内径として形成し、且つ、該円筒側壁部36の上端36aおよび下端36bの内径に対して該円筒側壁部36の最大内径を少なくとも2cm以上大きい形状とすることで、良好な炊飯を実現するとともに炊飯ムラを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、発芽玄米育成工程を有する発芽玄米用炊飯器について説明したが、例えば発芽玄米育成工程を有しない炊飯器や白米用の炊飯器に本発明に係る炊飯釜30を利用しても同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では電気式の炊飯器(発芽玄米用炊飯器)について説明したが、例えばガス式の炊飯器(発芽玄米用炊飯器)や他の熱源による炊飯器でも同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 発芽玄米用炊飯器
20 炊飯器本体
20a 表示部
22 内蓋
22a パッキン
24 蓋体
26 収容凹部
28 制御部
30 炊飯釜
32 釜入口部
34 下端底部
36 円筒側壁部
36a 上端
36b 下端
38 ホールド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6