(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】雨着ズボンおよび該雨着ズボンを含む雨着
(51)【国際特許分類】
A41D 3/06 20060101AFI20240328BHJP
A41D 3/04 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
A41D3/06 B
A41D3/04 J
(21)【出願番号】P 2022073922
(22)【出願日】2022-04-28
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】518312356
【氏名又は名称】中村 ▲高▼一
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(72)【発明者】
【氏名】中村 ▲高▼一
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第211510616(CN,U)
【文献】中国実用新案第203328048(CN,U)
【文献】登録実用新案第3066508(JP,U)
【文献】中国実用新案第216059285(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第110250607(CN,A)
【文献】実開昭52-153516(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 3/04-3/06
A41D 1/06-1/12
A41D 13/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各股下部の前面膝位置にスリットが設けられ、
前記各股下部の表面には該表面上を周回する第1のつば部が取り付けられ、
第1のつば部の基端部が取り付けられる前記各股下部の表面上の位置は、前記スリットの上端部よりも腰口側であり、
第1のつば部の先端部が裾口側を向いているときに第1のつば部は前記スリットを覆
い、
前記各股下部の表面にはさらに、該表面上を周回する少なくとも1つの第2のつば部が取り付けられ、
第2のつば部は、その基端部が取り付けられる前記各股下部の表面上の位置が前記スリットの下端部の近傍下方であるつば部を含むことを特徴とする雨着ズボン。
【請求項2】
請求項
1に記載の雨着ズボンにおいて、前記各股下部には裾口から長手方向に沿った切込みが設けられ、
該切込みの両端部には、該両端部同士を自在に連結または連結解除することによって前記切込みを開閉自在にする留め具が取り付けられることを特徴とする雨着ズボン。
【請求項3】
雨着ズボンと、一対のスパッツとを含んで構成され、
前記雨着ズボンは、各股下部の前面膝位置にスリットが設けられ、前記各股下部の表面には該表面上を周回する第1のつば部が取り付けられ、第1のつば部の基端部が取り付けられる前記各股下部の表面上の位置は、前記スリットの上端部よりも腰口側であり、第1のつば部の先端部が裾口側を向いているときに第1のつば部は前記スリットを覆うように構成され、
前記雨着ズボンに取り付けられた
第1のつば
部および前記一対のスパッツの各上端部には、前記雨着ズボンに対して前記一対のスパッツを着脱自在に装着可能にする結合具が着設されることを特徴とする雨着。
【請求項4】
雨着ズボンと、一対のスパッツとを含んで構成され、
前記雨着ズボンは、各股下部の前面膝位置にスリットが設けられ、前記各股下部の表面には該表面上を周回する第1のつば部および少なくとも1つの第2のつば部が取り付けられ、第1のつば部の基端部が取り付けられる前記各股下部の表面上の位置は、前記スリットの上端部よりも腰口側であり、第1のつば部の先端部が裾口側を向いているときに第1のつば部は前記スリットを覆うように構成され、
前記雨着ズボンに取り付けられたつば部の少なくともいずれかおよび前記一対のスパッツの各上端部には、前記雨着ズボンに対して前記一対のスパッツを着脱自在に装着可能にする結合具が着設されることを特徴とする雨着。
【請求項5】
請求項4に記載の雨着において、第2のつば部は、その基端部が取り付けられる前記各股下部の表面上の位置が前記スリットの下端部の近傍下方であるつば部を含むことを特徴とする雨着。
【請求項6】
請求項
3ないし5
のいずれかに記載の雨着において、雨着ズボン側の結合具は、前記つば部の裏面側に着設されていることを特徴とする雨着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨着ズボンおよび該雨着ズボンを含む雨着に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雨具の一種として、衣服の形状を採っているもの、すなわち雨着が広く知られ、一般的にはレインコート、合羽などとも呼ばれている。
雨着の形状としては、人体の上半身に着用する上衣、言わばトップスの形状を採るものの他、下半身に着用する下衣、言わばボトムスの形状を採るものが代表的なものとして挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、雨着は降雨時(降雪時なども含む)における着用者の身体や衣服の濡れ防止を最大の目的の1つとしているため、雨着の使用素材は、防水性の高さと引換えに伸縮性には乏しいものであることが多い。
【0004】
このような、低伸縮性素材を用いて製造された雨着を着用中の着用者は、着用中の自らの動作に伴って不快感を抱くことがある。例えば、雨着ズボンを着用中の着用者は、歩行中に膝を曲げたときに雨着ズボンが着用者の膝頭を上から押さえつけるような感覚を受けることがある。特に、山道や坂道を上る際には膝の曲げ角度も大きくなるので、着用者が抱き得る膝の不快感もより大きくなりがちである。また、使用素材の伸縮性が低いと、突然の降雨に伴い速やかな雨着の着用が求められる場合に、着用者にとっての円滑な雨着の着用に支障をきたし得る。
【0005】
さらに、登山時など、雨着ズボンを着用したうえで、さらに足首部から膝付近までを覆うスパッツなど別の補助的雨具を着用する場合も少なくない。スパッツを着用することにより、靴の中への雨水の浸入を軽減することができる。しかしながら、従来の雨着ズボンおよびスパッツでは、雨着ズボンの表面上を流れ落ちる水がスパッツの中に浸入することを完全に防ぐことはできない。
【0006】
そのため、単独で、または他の雨具と合わせて使用する際に、着用性および防水性の観点からより快適に使用できる雨着ズボンが求められている。
本発明はこのような課題に鑑み、着用性および防水性がともに優れた雨着ズボンおよび同ズボンを含む雨着を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題を解決するために、各股下部の膝位置にスリットが設けられ、各股下部の表面には表面上を周回するつば部が取り付けられ、つば部の基端部が取り付けられる各股下部の表面上の位置はスリットの上端部よりも腰口側であり、つば部の先端部が裾口側を向いているときにつば部はスリットを覆い、各股下部の表面にはさらに、表面上を周回する少なくとも1つの第2のつば部が取り付けられ、第2のつば部は、その基端部が取り付けられる各股下部の表面上の位置がスリットの下端部の近傍下方であるつば部を含む雨着ズボンを提供する。
【0008】
さらに、本発明は上述の課題を解決するために、各股下部の膝位置にスリットが設けられ、各股下部の表面には表面上を周回するつば部が取り付けられ、つば部の基端部が取り付けられる各股下部の表面上の位置はスリットの上端部よりも腰口側であり、つば部の先端部が裾口側を向いているときにつば部はスリットを覆う雨着ズボンと、さらに一対のスパッツとを含んで構成されている雨着を提供する。雨着ズボンに取り付けられたつば部の少なくともいずれかおよび一対のスパッツの各上端部には、雨着ズボンに対して一対のスパッツを着脱自在に装着可能にする結合具が着設される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、着用性および防水性がともに優れた雨着ズボンおよび雨着が得られるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る雨着ズボンの一実施態様の正面図である。
【
図2】
図1で示す雨着ズボンの実施態様において、その着用者が膝を曲げたときの状態を示す要部図である。
【
図3】本発明に係る雨着ズボンの一実施態様の側面図である。
【
図4】本発明に係る雨着の構成要素となる雨着ズボンの一実施態様の正面図である。
【
図5】本発明に係る雨着の構成要素となるスパッツの一実施態様の正面図である。
【
図6】本発明に係る雨着の一実施態様において、
図4で示す雨着ズボンに
図5で示す態様の短丈スパッツを装着したときの状態を示す図である。
【
図7】本発明に係る雨着の一実施態様において、
図4で示す雨着ズボンに
図5で示す態様の長丈スパッツを装着したときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に添付図面を参照して本発明による雨着ズボンの実施例を詳細に説明する。
図1を参照すると、本発明による雨着ズボン10の実施例は、その基本的な形態としてはズボンの形態を採っている雨具であり、雨着ズボン10を穿いた着用者の下半身部を防水保護する。
【0012】
雨着ズボン10は、その基本的形態から当然に、その着用時には着用者の左右下肢部をそれぞれ通し、着用者の大腿部付近から下腿部を経て概ね足首またはその近辺までを覆う左右の股下部12L、12Rを有する。さらに雨着ズボン10は、股上部の上端に、着用の際には着用者の脚部の入口開口部となり着用完了後には着用者の腰回りを覆う腰口13aを有し、各股下部12の下部先端には、着用の際には着用者の足先部から足首部にかけての出口開口部となる裾口13bを有する。
【0013】
本発明の一実施態様たる雨着ズボン10では、各股下部12R、12Lの外周表面の全体を周回するように、つば部14(右脚側:つば部14R、左脚側:つば部14L)の根元部分すなわち基端部が取り付けられている。つば部14の根元部分が取り付けられる位置は、各股下部12R、12Lの長手方向における膝位置の中心部よりも腰口13a側である。すなわち、雨着ズボン10の着用者の左右の膝を覆う位置のやや上部に相当すると見込まれる各股下部12R、12Lの表面上に、つば部14の根元部分が取り付けられる。
【0014】
他方、つば部14の先端部(つば先)は、雨着ズボン10を構成する別の要素とは接合されずに、つば部14の根元部分すなわち取付位置から裾口13b側の方向に延びている。かかる構成により、つば部14は、股上側にも自在に折返し可能となる(
図4参照)。
【0015】
つば部14の根元部分から先端部までの長さは、つば部14の先端部が裾口13b側を向いている場合に、各股下部12R、12Lの長手方向における略中間位置を覆うに十分な長さとする。
【0016】
さらに、雨着ズボン10には、各股下部12R、12Lの外周表面の全体を周回するように、つば部16(右脚側:つば部16R、左脚側:つば部16L)の根元部分すなわち基端部が取り付けられている。つば部16の根元部分が取り付けられる位置は、各股下部12R、12Lの長手方向における略中間位置よりも裾口13b側である。すなわち、つば部16の取付位置は、つば部14の取付位置よりも裾口13bの側となる。言い換えれば、つば部16の取付位置は、雨着ズボン10の着用者の左右の膝を覆う位置のやや下部に相当すると見込まれる各股下部12R、12Lの表面上となる。
【0017】
つば部16の先端部(つば先)もまた、つば部14と同様に、雨着ズボン10を構成する別の要素とは接合されずに、つば部16の根元部分すなわち取付位置から裾口13b側の方向に延びている。かかる構成により、つば部16は、股上側にも自在に折返し可能となる。
つば部16の根元部分から先端部までの長さは任意に定め得るが、つば部15の長さと同等程度でも構わない。
【0018】
上述のように、つば部14、16は股下部12の表面上に配設され、雨着ズボン10の着用時には雨に晒されることとなるため、つば部14、16は防水性および撥水性に優れた材料で形成することが好ましい。雨着に求められる機能の特性上、雨着ズボン10やその構成要素たる股下部12は、当然に防水性および撥水性に優れた布状材で形成されるものと考えられるが、つば部14、16の形成材料は、雨着ズボン10の本体の形成材料と同一の布状材であっても、それとは別の防水性や撥水性に優れた材料でも構わない。
【0019】
雨着ズボン10には、その股下部12L、12Rの表面上にスリット18L、18Rが設けられている。スリット18の好適な配置位置をより具体的に説明すると、股下部12L、12Rの長手方向における中間位置よりも若干上部にあって前側、すなわち、各股下部12L、12Rの前面膝位置に相当する部分に設けられることとなる。したがって、雨着ズボン10が着用されている場合、スリット18は、雨着ズボン10の着用者の左右膝頭上に位置することになる。
【0020】
なお、各股下部12R、12Lは着用者として想定する人間の大腿部または下腿部の形状に基づいて形成した2本の筒状体から構成してもよく、その場合には2本の筒状体の継ぎ目部分付近を膝位置と定めることができる。また、股下部12の寸法の半分の高さを基準として所定の高さ分だけ腰口13a方向の側にある位置、例えば5cm分上にある位置を具体的な膝位置として定めてもよい。これらのようにして定めた膝位置に応じて、雨着ズボン10につば部14、16やスリット18を配置してもよい。
【0021】
スリット18の延伸方向は、股下部12の長手方向と一致または略一致している。スリット18の一方の端部は、つば部14を取り付けた部分の裾口13b側近傍に配置される。したがって、つば部14の先端部が裾口13b側を向いている場合、スリット18の少なくとも一部分は、つば部14によって覆い被され、すなわち視覚的には外界から遮蔽されることとなる。そのため、
図1では、つば部14が通常の配置状態にあるときに外界から遮蔽されるスリット18の部分は破線で示している。
【0022】
スリット18の他方の端部は、つば部16を取り付けた部分よりも股上側に配置される。好ましくは、スリット18の他方の端部は、つば部16を取り付けた部分の股上側近傍に配置される。すなわち、つば部16とスリット18の配置関係については、つば部16は、その基端部が取り付けられる各股下部12L、12Rの表面上の位置がスリット18の下端部の近傍下方に設けられる等と言い換えることもできる。
【0023】
スリット18を設けた雨着ズボン10の着用者が膝を曲げているときの雨着ズボン10のスリット18付近の状態を
図2に示す。なお、同図では、このときのスリット18の状態をより理解しやすくするため、実際にはスリット18の少なくとも一部分を視覚的に遮蔽してしまうつば部14については破線で描写している。
雨着ズボン10の着用者が歩行などに伴い膝を曲げると、膝付近を覆っている股下部12を構成している布状体は横方向すなわち股下部12の短手方向に引張り力がかかり、スリット18が開口することとなる。
【0024】
一般的に雨着は、防水性などと引換えに伸縮性には欠ける材料を使用せざるを得ないが、このようなスリット18を雨着ズボン10に設けることによって、雨着ズボン10の着用者が歩行などの膝を曲げる動作をとった場合でも膝に圧迫感を受けることなく、快適に実行中の動作を続けることができる。また、つば部14がスリット18を覆うことにより、スリット18からの雨雪の浸入を防ぐことができる。
【0025】
図3は、雨着ズボン10の一実施態様の側面図を示す。この実施態様に係る雨着ズボン10は、股下部12を裾口13bから股下部12の長手方向に沿って、つば部16の取付位置の裾口方向近傍までにかけて切り込むことによって形成された切込み20を含むものとなっている。
【0026】
切込み20の両端部には、その両端部同士を自在に連結または連結解除することによって切込み20を開閉自在にする留め具22、好ましくは線ファスナー22が取り付けられる。線ファスナーなどの留め具22を用いる場合、切込み20の両端部を構成する股下部12の布地の裏地側に、留め具22を取り付けた別の布地を設けておくと、防水性の向上などの観点からより好適なものとなる。
【0027】
切込み20を開閉自在にすることができれば、いかなるものでも留め具22として使用することができる。例えば、線ファスナーに代わり面ファスナーを留め具22として用いることが可能である。
【0028】
このような実施態様によれば、雨着ズボン10の裾口13bを自在に広げ、雨着ズボン10を着用しようとする者の足部を裾口13bに通すことが容易になる。特に、突然の降雨等に見舞われたため雨着ズボン10を着用しようとする者は、裾口13bを広げて靴を履いたままの足部を広げた裾口13bから通し、その後に足部を通した裾口13bを閉じることによって、一旦靴を脱ぐ等の手間もなく容易かつ迅速に雨着ズボン10を着用することが可能となる。また、この実施態様によれば、雨着ズボン10に用いた素材の伸縮性が十分な高さでなくても、雨着ズボン10を着用しようとする者は容易かつ快適に雨着ズボン10を着用することができる。
【0029】
続いて、添付図面を参照して本発明に係る雨着の実施例を詳細に説明する。本発明に係る雨着100の実施例は少なくとも、雨着ズボンと、雨着ズボンに対して着脱自在の補助雨具、例えば一対のスパッツを含んで構成されている。
【0030】
雨着100を構成する雨着ズボンの基本的な構成は、
図1に示した実施態様の雨着ズボン10と同様でよい。ただし、
図4に示すように、雨着100の一部をなす場合の雨着ズボン10には、つば部14、16の裏面に補助雨具を着脱自在に結合する結合具114が着設されている。より具体的に述べると、左右のつば部14L、14Rの裏面にはそれぞれ結合具114L、114Rが、左右のつば部16L、16Rの裏面にはそれぞれ結合具116L、116Rが着設されている。なお、
図4では、雨着ズボン10のつば部14、16の裏面に結合具114、116が着設されている構成をより明確に描写するために、つば部14、16を上方すなわち股上側に捲り上げた状態を示している。
【0031】
また、
図5には、雨着100の補助雨具として用いられるスパッツ130の一実施態様が示されている。本態様のスパッツ130は、着用者の左脚に着用するためのスパッツ130Lおよび着用者の右脚に着用するためのスパッツ130Rからなる一対のスパッツとして構成されている。
図5においてスパッツ130L、130Rは、着用者の脚部を通す上開口部132および下開口部134を含む、いわば筒状体のような形状を採っている状態を示している。
【0032】
これに関して、スパッツ130L、130Rの初期形状を布状体として形成し、当該布状体の両側端部に線ファスナーなどの側端部結合具136を設けておいてもよい。かかる構成を採る場合、側端部結合具136を用いて布状体の側端部同士を結合させることによって、スパッツ130は筒状体の形状となり、着用者の脚部に着用可能となる。あるいは、スパッツ130L、130Rは、常に略筒状体の形状を採るものとして形成してもよい。
【0033】
スパッツ130L、130Rの初期形状が布状体であるか筒状体であるかを問わず、スパッツ130L、130Rには上開口部132および下開口部134の開口部の大きさを調節可能な調節具を設けてもよい。調節具の例としては、スパッツの上開口部132または下開口部134付近で当該開口部の実質的に全周にわたって設けられる紐状体を含む調節具が挙げられる。調節具として紐状体を含むものを用いる場合には、スパッツ130の上開口部132または下開口部134に紐状体用の径路を設けておく。このような調節具を用いてスパッツ130の着用時および着用後に開口部132、134の大きさを適宜に調節できれば、スパッツを容易に着用することができるとともに、着用後のスパッツの穿き心地がよくなる。
【0034】
また、スパッツ130L、130Rは、好ましくはその上端部表面、すなわち上開口部132の近傍に位置するスパッツ表面上に、結合具138を着設している。スパッツ130に着設された結合具138は、雨着ズボン10に着設された結合具114または116に対して着脱自在に結合できる。
【0035】
互いに着脱自在な一組の結合具114(または116)および138としては、例えば面ファスナーが特に好適な結合具に挙げられる。結合具114、116および138の配置構成は、着脱自在な結合が可能である限り特段の制限は課されない。
もっとも、結合具114、116、138として面ファスナーまたはこれに類する結合具を用いる場合、つば部14、16に設ける結合具114、116は、各つば部の裏面に着設することが好ましい。このような着設をすれば、スパッツ130を取り付けたつば部14、16を捲れ上がりにくくすることができる。
【0036】
結合具114、116、138は、つば部裏面またはスパッツ上端部表面の全周にわたって、または全周の一部分に設けられる。あるいは、結合具114、116、138をそれぞれ複数の部分要素で構成して、複数の部分要素を適宜の間隔を空けてつば部14、16およびスパッツ130の面上に配置してもよい。なお、
図4および
図5には、結合具114、116、138のそれぞれが2つの部分要素から構成される面ファスナーである場合において、各部分要素は雨着100すなわち雨着ズボン10またはスパッツ130の前面部および後面部に着設されている例が示されている。なお、
図5では便宜上、スパッツ130の後面側に着設される面ファスナー138の部分要素は破線で描かれている。
なお、雨着ズボン10の各股下部12L、12Rが複数のつば部(14、16)を有する場合、複数あるつば部のそれぞれに結合具(114、116)を設けておくことが好ましい。
【0037】
続いて、
図6および
図7を参照しながら、雨着ズボン10の結合具114または116およびスパッツ130の結合具138からなる一組の結合具を介して雨着ズボン10にスパッツ130を装着した状態についての説明をする。雨着ズボン10が有する複数のつば部14、16のそれぞれに結合具114、116を設けておくと、スパッツ130の上開口部132から下開口部134までの長さ、すなわちスパッツ丈の長さ等に応じて、スパッツに着設された結合部138を、雨着ズボン10の各股下部12に着設された複数の結合部のうち任意の結合部114または116と結合させることができる。
【0038】
図6は、スパッツ130の結合具138を雨着ズボン10のつば部16の裏側に設けられた結合具116と結合させることによって、スパッツ130を雨着ズボン10に装着した状態の雨着100を示している。雨着ズボン10の裾口13bからつば部16の取付位置までの距離は、裾口13bからつば部14の取付位置までの距離よりも相対的に短いため、スパッツ130の丈の長さが比較的短い場合に好適な装着態様である。
【0039】
雨着ズボン10の結合具がつば部16の裏面に着設されている好適な実施態様である場合、雨着ズボン10および丈が短めのスパッツ130を含む雨着100の一連の着用過程は例えば以下のとおりとなる。雨着ズボン10の着用者はまず、雨着ズボン10を穿いたままスパッツ130を膝下部分から足首部分にかけて被せる。次いで着用者は、つば部16を一旦捲り上げて、つば部16の裏側に着設された結合具116に対してスパッツ130に着設された結合具138の位置調整を行なったうえで、結合具116と結合具138を結合させる。その後、着用者は、スパッツ130を取り付けたつば部16の先端部を下側すなわち裾口13b側に向け、これにより雨着100の着用が完了する。
【0040】
図6では、スパッツ130を雨着ズボン10のつば部16に装着することによって外界からは視覚的に遮蔽される雨着ズボンの部分を破線で示している。例えば、股下部12L、12Rのうちつば部16よりも裾口13b側は、スパッツ130の内側に入り込むこととなる。
【0041】
他方、
図7は、スパッツ130の結合具138を雨着ズボン10のつば部14の裏側に設けられた結合具114と結合させることによって、スパッツ130を雨着ズボン10に装着した状態の雨着100を示している。雨着ズボン10の裾口13bからつば部14の取付位置までの距離は、裾口13bからつば部16の取付位置までの距離よりも相対的に長いため、スパッツ130の丈の長さが比較的長い場合に好適な装着態様である。
【0042】
雨着ズボン10の結合具がつば部14の裏面に着設されている好適な実施態様である場合の、雨着ズボン10および丈が長めのスパッツ130を含む雨着100の一連の着用過程は例えば以下のとおりとなる。雨着ズボン10の着用者はまず、雨着ズボン10を穿いたままスパッツ130を膝上部分から足首部分にかけて被せる。次いで着用者は、つば部14を一旦捲り上げて、つば部14の裏側に着設された結合具114に対してスパッツ130に着設された結合具138の位置調整を行なったうえで、結合具114と結合具138を結合させる。その後、着用者は、スパッツ130を取り付けたつば部14の先端部を下側すなわち裾口13b側に向け、これにより雨着100の着用が完了する。
【0043】
図7では、スパッツ130を雨着ズボン10のつば部14に装着することによって外界からは視覚的に遮蔽される雨着ズボンの部分を破線で示している。例えば、股下部12L、12Rのうちつば部14よりも裾口13b側は、スパッツ130の内側に入り込むこととなる。すなわち、丈が長めのスパッツ130を雨着ズボン10のつば部14に取り付けた場合、つば部16は完全にスパッツ130の内側に入り込む。
【0044】
上述のとおり、結合具114、116はつば部14、16に設けることが好ましいが、これは、雨着ズボン10の本体部分にスパッツ130を取り付けるよりも着用者の脚部の動きがスパッツ130にまで直接的に伝わりにくくなり、ひいてはスパッツ130がずり落ちにくくなるからである。また、つば部14、16に取り付けたスパッツ130の重みにより、つば部14、16が捲れ上がりにくくなるからである。
【0045】
また、結合具114、116をつば部14、16の裏面部に設けることが好ましいのは、スパッツ130の上端部をつば部で覆うことができるので、雨着ズボン10とスパッツ130の間の隙間に雨水が進入することを防げるからでもある。
また、結合具114、116、138のそれぞれを複数の部分要素、例えば2つ程度の部分要素で構成し、適宜の間隔を空けて着設することが好ましい。着設の好適な配置例としては、例えば
図5に示すスパッツ130のように、着用時における前面部および後面部が挙げられる。結合具の部分要素を適切な配置で着設することにより、雨着100の着用者にとっては雨着ズボン10へのスパッツ130の取付けがしやすくなる。また、結合具を適切に配置すればスパッツ130の重みが雨着ズボン10を引っ張る力の均等な分散が図られ、例えばスパッツ130が雨着ズボン10から脱離してしまうことや、つば部14、16の一部分だけが捲れ上がることを防止することができる。
【0046】
ここまで、本発明の実施態様について説明してきたが、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施態様に限定されるものではない。例えば、雨着ズボン10の各股下部12L、12Rに設けるつば部の数は必ずしも2つずつでなくてもよい。股下部12の表面上に設けておくつば部の数が多いほど、スパッツ130の寸法に応じてより適切な股下部表面上の位置にスパッツ130を装着できることとなる。
【0047】
本発明において、添付の特許請求の範囲およびその要旨を逸脱することなく、様々な変更、置換が可能であり、または上述の実施例と本質的な構成が同等に構成され得ることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0048】
10 雨着ズボン
12 股下部
14、16 つば部
18 スリット
100 雨着
114、116 結合具
130 スパッツ
138 結合具