(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20240328BHJP
F16H 61/12 20100101ALI20240328BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20240328BHJP
F16H 61/32 20060101ALN20240328BHJP
【FI】
B60K20/02 Z
F16H61/12
H02P29/024
F16H61/32
(21)【出願番号】P 2019032188
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2021-08-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長江 敏広
(72)【発明者】
【氏名】藤田 一輔
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】内田 博之
【審判官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-203042(JP,A)
【文献】実開平3-65054(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02,F16H61/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動されてシフト位置が変更されるシフト体と、
作動されて前記シフト体が
所定位置に向けて移動される作動機構と、
前記作動機構が作動されて前記シフト体が所定位置に到達する前に前記作動機構の
作動状態が第1時間継続したことが検出された場合と
前記作動機構が作動されて前記シフト体が所定位置に到達する前に前記シフト体の移動速度が所定速度以下である状態が第1時間未満の第2時間継続したことが検出された場合とに前記作動機構の作動を停止させる制御部と、
を備えるシフト装置。
【請求項2】
移動されてシフト位置が変更されるシフト体と、
作動されて前記シフト体が所定位置に向けて移動される作動機構と、
前記作動機構が作動されて前記シフト体が所定位置に到達する前に前記シフト体の移動速度が所定速度以下である状態が所定時間継続した場合に前記作動機構の作動を停止させる制御部と、
を備えるシフト装置。
【請求項3】
前記作動機構に設けられ、前記作動機構が作動されて移動されることで前記シフト体が移動されると共に、移動速度が検出されて前記シフト体の移動速度が検出される移動体を備える請求項1又は請求項2記載のシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動機構が作動されてシフト体が移動されるシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のシフト装置では、モータが駆動されて、ダイヤルノブが回転される。
【0003】
ここで、このシフト装置では、モータの電流値の異常が検出された際に、モータの駆動が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、作動機構の作動を適切に停止できるシフト装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のシフト装置は、移動されてシフト位置が変更されるシフト体と、作動されて前記シフト体が移動される作動機構と、前記作動機構の第1作動状態が第1時間継続した場合と前記作動機構の第2作動状態が第1時間未満の第2時間継続した場合とに前記作動機構の作動を停止させる制御部と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様のシフト装置は、本発明の第1態様のシフト装置において、前記作動機構の第1作動状態が前記作動機構の作動非停止状態にされる。
【0008】
本発明の第3態様のシフト装置は、本発明の第1態様又は第2態様のシフト装置において、前記作動機構の第2作動状態が前記シフト体の移動速度が所定速度以下である状態にされる。
【0009】
本発明の第4態様のシフト装置は、移動されてシフト位置が変更されるシフト体と、作動されて前記シフト体が移動される作動機構と、前記作動機構が作動される際に前記シフト体の移動速度が所定速度以下である状態が所定時間継続した場合に前記作動機構の作動を停止させる制御部と、を備える。
【0010】
本発明の第5態様のシフト装置は、本発明の第1態様~第4態様の何れか1つのシフト装置において、前記作動機構に設けられ、前記作動機構が作動されて移動されることで前記シフト体が移動されると共に、移動速度が検出されて前記シフト体の移動速度が検出される移動体を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1態様のシフト装置では、シフト体が移動されて、シフト位置が変更される。さらに、作動機構が作動されて、シフト体が移動される。
【0012】
ここで、作動機構の第1作動状態が第1時間継続した場合のみならず、作動機構の第2作動状態が第1時間未満の第2時間継続した場合にも、制御部が作動機構の作動を停止させる。このため、作動機構の作動を適切に停止できる。
【0013】
本発明の第2態様のシフト装置では、作動機構の第1作動状態が作動機構の作動非停止状態にされる。このため、作動機構の作動非停止状態が第1時間継続した場合に、作動機構の作動を停止できる。
【0014】
本発明の第3態様のシフト装置では、作動機構の第2作動状態がシフト体の移動速度が所定速度以下である状態にされる。このため、シフト体の移動速度が所定速度以下である状態が第2時間継続した場合に、作動機構の作動を停止できる。
【0015】
本発明の第4態様のシフト装置では、シフト体が移動されて、シフト位置が変更される。さらに、作動機構が作動されて、シフト体が移動される。
【0016】
ここで、作動機構が作動される際にシフト体の移動速度が所定速度以下である状態が所定時間継続した場合に、制御部が作動機構の作動を停止させる。このため、作動機構の作動を適切に停止できる。
【0017】
本発明の第5態様のシフト装置では、作動機構が作動されて、作動機構の移動体が移動されることで、シフト体が移動される。
【0018】
ここで、移動体の移動速度が検出されて、シフト体の移動速度が検出される。このため、仮に作動機構が作動されて移動体が移動されてもシフト体が移動されない際に、シフト体の移動停止が検出されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係るシフト装置を示す左方から見た側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るシフト装置におけるモータへの電流供給制御を示すフローチャートである。
【
図3】(A)及び(B)は、本発明の第2実施形態に係るシフト装置におけるモータに流れる電流を示すグラフであり、(A)は、モータへの電流供給時間(横軸)と電流(縦軸)との関係を示し、(B)は、モータの温度(横軸)と突入電流又は停動電流閾値(縦軸)との関係を示している。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るシフト装置におけるモータへの電流供給制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係るシフト装置10が左方から見た側面図にて示されている。なお、
図1では、シフト装置10の前方を矢印FRで示し、シフト装置10の上方を矢印UPで示している。
【0021】
本実施形態に係るシフト装置10は、車両に設置されており、シフト装置10の前方、右方及び上方は、例えばそれぞれ車両の前方、右方及び上方に向けられている。
【0022】
図1に示す如く、シフト装置10には、シフト体としての略棒状のレバー12が設けられており、レバー12の下端部には、回転部としての略円柱状の回転軸12Aが一体に設けられている。回転軸12Aは、軸方向が左右方向に平行に配置された状態で、一方向(
図1の矢印Aの方向)及び他方向(
図1の矢印Bの方向)に回転可能に支持されており、レバー12は、回転軸12Aを中心として、一方向(前側)及び他方向(後側)に所定範囲で回動(移動)可能にされている。回転軸12Aの外周面には、被移動部としての矩形柱状の回転突起12Bが一体に設けられており、回転突起12Bは、回転軸12Aの径方向外側に突出されている。
【0023】
レバー12の上側部分は、車室に延出されており、レバー12は、車両の乗員(特に運転者)により、上端部が把持された状態で、一方向及び他方向に回動操作可能にされている。また、レバー12が一方向側から他方向側に回動操作されることで、レバー12のシフト位置が、例えば、所定位置としての「P」位置(パーキング位置)、「R」位置(リバース位置)、「N」位置(ニュートラル位置)及び「D」位置(ドライブ位置)にこの順番で変更される。
【0024】
レバー12には、付勢機構としての節度機構14が機械的に接続されており、節度機構14は、レバー12に各シフト位置間の中間から各シフト位置へ向かう方向への付勢力を作用させる。このため、レバー12が各シフト位置に配置される際には、節度機構14の付勢力によりレバー12が各シフト位置に保持される。レバー12が回動されて、レバー12のシフト位置が変更される際には、シフト位置間において、節度機構14が、レバー12に回動方向とは反対側への付勢力を作用させた後に、レバー12に回動方向側への付勢力を作用させる。
【0025】
シフト装置10には、シフト検出部としてのシフト検出装置16が設けられており、シフト検出装置16は、レバー12の回動位置(回転軸12Aの回転位置)を検出して、レバー12のシフト位置を検出する。
【0026】
シフト検出装置16は、車両の制御部としての制御装置18に電気的に接続されており、制御装置18には、車両の自動変速機20(変速機)が電気的に接続されている。レバー12が回動されて、レバー12のシフト位置が変更された際(レバー12のシフト位置の変更をシフト検出装置16が検出した際)には、制御装置18の制御により、自動変速機20のシフトレンジがレバー12のシフト位置に対応するシフトレンジに変更される。
【0027】
シフト装置10には、作動機構22が設けられている。
【0028】
作動機構22には、移動体としての略円筒状のロータカム24が設けられており、ロータカム24は、内部にレバー12の回転軸12Aが同軸上に挿入された状態で、一方向及び他方向に回転可能に支持されている。ロータカム24の内周面には、移動部としての矩形柱状の作動突起24Aが一体に設けられており、作動突起24Aは、ロータカム24の径方向内側に突出されている。ロータカム24は、基準位置(基準回転位置)に配置されており、作動突起24Aが回転軸12Aの回転突起12Bより他方向側に配置されることで、レバー12が「P」位置から「D」位置までの範囲で回動される際に回転突起12Bが作動突起24Aに当接不能にされている。
【0029】
作動機構22には、駆動装置としてのモータ26(直流モータ)が設けられており、モータ26の出力軸26Aには、伝達部材としての伝達ギア28が同軸上に固定されている。伝達ギア28は、ロータカム24の外周に噛合されており、作動機構22が作動されて、モータ26が駆動されることで、伝達ギア28が回転されて、ロータカム24が回転される。モータ26は、制御装置18に電気的に接続されており、制御装置18の制御により、作動機構22が作動されて、モータ26に電流が供給されることで、モータ26が駆動される。
【0030】
制御装置18には、検出部としての検出装置30が電気的に接続されており、検出装置30は、ロータカム24の回転位置(例えば回転角度位置)を検出すると共に、ロータカム24の回転速度(例えば角速度)を検出する。制御装置18には、第1計測部としての第1タイマ32及び第2計測部としての第2タイマ34が電気的に接続されており、第1タイマ32及び第2タイマ34は、それぞれ時間T1及び時間T2を計測可能にされている(
図2参照)。また、制御装置18には、車両のエンジン36に電気的に接続されている。
【0031】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0032】
以上の構成のシフト装置10では、レバー12が各シフト位置に配置される際に、節度機構14の付勢力によりレバー12が各シフト位置に保持される。レバー12が回動されて、レバー12のシフト位置が変更される際には、シフト位置間において、節度機構14が、レバー12に回動方向とは反対側への付勢力を作用させた後に、レバー12に回動方向側への付勢力を作用させる。
【0033】
ところで、レバー12が「P」位置以外の位置(例えば「D」位置)に配置される際における所定の機会(例えばエンジン36が停止された場合)には、制御装置18の制御により、自動変速機20のシフトレンジが自動的に「P」レンジ(パーキングレンジ)に変更される。
【0034】
ここで、レバー12が「P」位置以外の位置に配置される際における所定の機会には、制御装置18の制御により、作動機構22が作動されて、モータ26が正駆動されることで、伝達ギア28が回転されて、ロータカム24が一方向に回転される。このため、ロータカム24の作動突起24Aがレバー12の回転軸12Aの回転突起12Bに当接されて、回転軸12Aが一方向に回転されることで、レバー12が一方向に回動されて、レバー12が「P」位置に回動される。これにより、レバー12のシフト位置が自動変速機20のシフトレンジに対応される。
【0035】
また、ロータカム24がレバー12を一方向に回動させる際には、シフト位置間において、節度機構14がレバー12に他方向側(回動方向とは反対側)への付勢力を作用させてレバー12の回動速度及びロータカム24の回転速度が減少された後に、節度機構14がレバー12に一方向側(回動方向側)への付勢力を作用させてレバー12の回動速度及びロータカム24の回転速度が増加される。
【0036】
レバー12が「P」位置に回動された際には、ロータカム24が到達位置(ロータカム24がレバー12を「P」位置に回動させた際におけるロータカム24の回転位置)に回転されたことを検出装置30が検出して、制御装置18の制御により、モータ26の正駆動が停止されると共に、モータ26が逆駆動される。このため、伝達ギア28が回転されて、ロータカム24が他方向に回転されることで、ロータカム24が基準位置に回転(復帰)される。また、ロータカム24が基準位置に回転されたことを検出装置30が検出して、制御装置18の制御により、モータ26の逆駆動が停止される。
【0037】
次に、上述の如く、作動機構22が作動されてモータ26の正駆動によりレバー12が「P」位置に回動される際における制御装置18の処理を説明する(
図2参照)。
【0038】
先ず、ステップ100において、レバー12が「P」位置以外の位置に配置される際における所定の機会に、モータ26への電流供給(通電)を開始して、モータ26が正駆動を開始し、かつ、第1タイマ32による時間T1の計測を開始させる。そして、ステップ102において、第2タイマ34による時間T2の計測を開始させる。
【0039】
次に、ステップ104において、ロータカム24の回転速度が予め設定された所定速度以下であるか否かを判断する。所定速度は、例えば乗員によりレバー12の回動が略停止された際におけるロータカム24の回転速度(0でもよい)にされている。
【0040】
ステップ104においてロータカム24の回転速度が所定速度以下であると判断した場合には、ステップ108に移行する。
【0041】
ステップ104においてロータカム24の回転速度が所定速度より大きいと判断した場合には、ステップ106において、第2タイマ34による時間T2の計測をクリアして、第2タイマ34による時間T2の計測を0から開始させた後に、ステップ108に移行する。
【0042】
ステップ108では、第1タイマ32が計測する時間T1が予め設定された第1時間としての第1タイムアウト時間TO1未満であるか否かを判断する。第1タイムアウト時間TO1は、モータ26への電流供給が開始されてからレバー12が比較的低速度で回動されて「P」位置に到達するまでの時間よりも長い時間(例えば10秒)にされている。
【0043】
ステップ108において第1タイマ32が計測する時間T1が第1タイムアウト時間TO1以上であると判断した場合には、ステップ114において、モータ26への電流供給を停止して、モータ26が正駆動を停止する。
【0044】
ステップ108において第1タイマ32が計測する時間T1が第1タイムアウト時間TO1未満であると判断した場合には、ステップ110において、第2タイマ34が計測する時間T2が予め設定された第2時間及び所定時間としての第2タイムアウト時間TO2未満であるか否かを判断する。第2タイムアウト時間TO2は、少なくとも第1タイムアウト時間TO1未満である短い時間(例えば0.15秒であり、0秒でもよい)にされている。
【0045】
ステップ110において第2タイマ34が計測する時間T2が第2タイムアウト時間TO2未満であると判断した場合には、ステップ112において、ロータカム24が到達位置に到達したか否かを判断する。
【0046】
ステップ112においてロータカム24が到達位置に到達していないと判断した場合には、再度ステップ104の処理を行う。
【0047】
ステップ110において第2タイマ34が計測する時間T2が第2タイムアウト時間TO2以上であると判断した場合には、ステップ114において、モータ26への電流供給を停止して、モータ26が正駆動を停止する。
【0048】
ステップ112においてロータカム24が到達位置に到達したと判断した場合には、ステップ114において、モータ26への電流供給を停止して、モータ26が正駆動を停止する。このため、レバー12が「P」位置に到達した際に、モータ26の正駆動が停止される。
【0049】
ここで、上記ステップ100、ステップ108、ステップ112及びステップ114により、レバー12が「P」位置に到達する前に、モータ26の正駆動状態(作動機構22の第1作動状態及び作動非停止状態)が第1タイムアウト時間TO1継続された場合には、モータ26への電流供給が停止されて、モータ26の正駆動が停止される。さらに、上述の如く、第1タイムアウト時間TO1は、モータ26への電流供給が開始されてからレバー12が比較的低速度で回動されて「P」位置に到達するまでの時間よりも長い時間にされている。このため、例えば作動機構22の機械的な劣化等のために、モータ26の正駆動によるレバー12の回動速度が比較的低い場合でも、レバー12が「P」位置に到達する前にモータ26の正駆動が停止されてレバー12が「P」位置に到達しないことを抑制できる。
【0050】
また、上記ステップ102、ステップ104、ステップ106、ステップ110、ステップ112及びステップ114により、レバー12が「P」位置に到達する前に、レバー12の回動の略停止状態(作動機構22の第2作動状態)が第2タイムアウト時間TO2継続された場合には、モータ26への電流供給が停止される。さらに、上述の如く、第2タイムアウト時間TO2は、少なくとも第1タイムアウト時間TO1未満である短い時間にされている。このため、レバー12の回動が略停止(阻害)されてモータ26の出力軸26Aの回転が略停止(阻害)された際にモータ26への電流供給が継続されることを抑制でき、モータ26が発熱する停動状態になって損傷することを抑制できて、モータ26を保護できる。
【0051】
さらに、上記ステップ104では、検出装置30がロータカム24の回転速度を検出する。このため、ロータカム24の作動突起24Aがレバー12の回転突起12Bに当接される前において、ロータカム24が回転されてもレバー12が回動されない際に、検出装置30がレバー12の回動の略停止を検出することを抑制できる。これにより、レバー12の回動が略停止されても、モータ26が発熱する停動状態にならない場合に、不要にモータ26への電流供給が停止されてレバー12が「P」位置に回動されないことを抑制できる。
【0052】
なお、本実施形態において、レバー12の回動の略停止状態が第2タイムアウト時間TO2継続されてモータ26への電流供給が停止されてから規定時間後に、モータ26への電流供給を再度開始してもよく、更に、その後、例えばレバー12の回動の略停止状態が第2タイムアウト時間TO2よりも短い時間継続された場合に、モータ26への電流供給が停止されてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、検出装置30がロータカム24の回転速度を検出する。しかしながら、検出装置30が常にロータカム24の回転と共に移動される移動体(例えばモータ26の出力軸26A又は伝達ギア28)の移動速度を検出してもよい。
【0054】
さらに、本実施形態では、検出装置30が検出するロータカム24の回転速度に基づきレバー12の回動の略停止状態が検出される。しかしながら、シフト検出装置16(検出部)が検出するレバー12の回動速度(常にレバー12の回動と共に移動される移動部材の移動速度でもよい)に基づきレバー12の回動の略停止状態が検出されてもよい。この場合、ロータカム24からの回動力が作用された後のレバー12の回動速度に基づきレバー12の回動の略停止状態が検出されるのが好ましい。
【0055】
[第2実施形態]
本実施形態に係るシフト装置50は、第1実施形態とほぼ同様の構成であるが(
図1参照)、以下の点で異なる。
【0056】
本実施形態に係るシフト装置50では、第2タイマ34が時間T3を計測可能にされている(
図4参照)。
【0057】
ところで、一般に、モータ26への電流供給が開始された直後には、モータ26に突入電流が流れる(
図3(A)参照)。さらに、モータ26の巻線抵抗には温度特性があることから、モータ26の温度が低い程モータ26に流れる電流が大きくなると共に、モータ26の温度が高い程モータ26に流れる電流が小さくなる。このため、モータ26への突入電流は、モータ26の温度が低い程大きくなると共に、モータ26の温度が高い程小さくなる(
図3(B)参照)。
【0058】
また、モータ26が電流を供給されつつ出力軸26Aの回転を略停止(阻害)された際において、モータ26が発熱する停動状態になる場合にモータ26に流れる電流(停動電流、
図3(A)参照)の最低値である停動電流閾値ISは、モータ26の温度が低い程大きくなると共に、モータ26の温度が高い程小さくなる(
図3(B)参照)。さらに、モータ26が発熱する停動状態になる直前までモータ26に停動電流が流れる状態を継続可能な時間である第2時間としての停動時間閾値TS(0を含む)は、モータ26の温度が低い程長くなると共に、モータ26の温度が高い程短くなる。
【0059】
以上により、モータ26への突入電流に基づき、モータ26の温度を推定できると共に、推定されたモータ26の温度に基づき、モータ26の停動電流閾値IS及びモータ26の停動時間閾値TSを推定できる。このため、モータ26への突入電流に基づき、モータ26の温度を推定して、モータ26の停動電流閾値IS及びモータ26の停動時間閾値TSを判断できる。
【0060】
本実施形態に係るシフト装置50では、作動機構22が作動されてモータ26の正駆動によりレバー12が「P」位置に回動される際に、制御装置18が次の処理を行う(
図4参照)。
【0061】
先ず、ステップ200において、レバー12が「P」位置以外の位置に配置される際における所定の機会に、モータ26への電流供給(通電)を開始して、モータ26が正駆動を開始し、かつ、第1タイマ32による時間T1の計測を開始させる。
【0062】
そして、ステップ202において、モータ26への電流供給開始から特定時間(例えば0.5秒)経過するまでの間においてモータ26に流れる最大の電流をモータ26への突入電流と判断する(
図3(A)参照)。さらに、ステップ204において、モータ26への突入電流に基づき、モータ26の温度を推定して、モータ26の停動電流閾値ISを設定すると共に、ステップ206において、モータ26への突入電流に基づき、モータ26の温度を推定して、モータ26の停動時間閾値TSを設定する。
【0063】
次に、ステップ208において、モータ26に流れる電流Iがモータ26の停動電流閾値IS以上であるか否かを判断する。
【0064】
ステップ208においてモータ26に流れる電流Iがモータ26の停動電流閾値IS未満であると判断した場合には、ステップ210において、第2タイマ34により計測される時間T3をクリアして0にした後に、ステップ212において、第1タイマ32が計測する時間T1が予め設定された第1タイムアウト時間TO1以上であるか否かを判断する。
【0065】
ステップ212において第1タイマ32が計測する時間T1が第1タイムアウト時間TO1以上であると判断した場合には、ステップ214において、モータ26への電流供給を停止して、モータ26が正駆動を停止する。
【0066】
ステップ212において第1タイマ32が計測する時間T1が第1タイムアウト時間TO1未満であると判断した場合には、ステップ216において、ロータカム24が到達位置に到達したか否かを判断する。
【0067】
ステップ216においてロータカム24が到達位置に到達したと判断した場合には、ステップ214において、モータ26への電流供給を停止して、モータ26が正駆動を停止する。このため、レバー12が「P」位置に到達した際に、モータ26の正駆動が停止される。
【0068】
ステップ216においてロータカム24が到達位置に到達していないと判断した場合には、再度ステップ208の処理を行う。
【0069】
ステップ208においてモータ26に流れる電流Iがモータ26の停動電流閾値IS以上であると判断した場合には、ステップ218において、第2タイマ34が時間T3を計測しているか否かを判断する。
【0070】
ステップ218において第2タイマ34が時間T3を計測していないと判断した場合には、ステップ220において、第2タイマ34による時間T3の計測を開始させた後に、ステップ222に移行する。
【0071】
ステップ218において第2タイマ34が時間T3を計測していると判断した場合には、ステップ222に移行する。
【0072】
ステップ222では、第2タイマ34が計測する時間T3がモータ26の停動時間閾値TS未満であるか否かを判断する。
【0073】
ステップ222において第2タイマ34が計測する時間T3がモータ26の停動時間閾値TS未満であると判断した場合には、ステップ212に移行する。
【0074】
ステップ222において第2タイマ34が計測する時間T3がモータ26の停動時間閾値TS以上であると判断した場合には、ステップ214において、モータ26への電流供給を停止して、モータ26が正駆動を停止する。
【0075】
ここで、上記ステップ200、ステップ212、ステップ214及びステップ216により、レバー12が「P」位置に到達する前に、モータ26の正駆動状態(作動機構22の第1作動状態及び作動非停止状態)が第1タイムアウト時間TO1継続された場合には、モータ26への電流供給が停止されて、モータ26の正駆動が停止される。さらに、第1タイムアウト時間TO1は、モータ26への電流供給が開始されてからレバー12が比較的低速度で回動されて「P」位置に到達するまでの時間よりも長い時間にされている。このため、例えば作動機構22の機械的な劣化等のために、モータ26の正駆動によるレバー12の回動速度が比較的低い場合でも、レバー12が「P」位置に到達する前にモータ26の正駆動が停止されてレバー12が「P」位置に到達しないことを抑制できる。
【0076】
また、上記ステップ208、ステップ210、ステップ214、ステップ216、ステップ218、ステップ220及びステップ222により、レバー12が「P」位置に到達する前に、モータ26に停動電流(停動電流閾値IS以上の電流)が流れる状態(作動機構22の第2作動状態)がモータ26の停動時間閾値TS以上の時間継続された場合には、モータ26への電流供給が停止される。さらに、上述の如く、モータ26の停動時間閾値TSは、モータ26が発熱する停動状態になる直前までモータ26に停動電流が流れる状態を継続可能な時間にされている。このため、レバー12の回動が略停止(阻害)されてモータ26の出力軸26Aの回転が略停止(阻害)されることでモータ26に停動電流が流れた際にモータ26への電流供給が継続されることを抑制でき、モータ26が発熱する停動状態になって損傷することを抑制できて、モータ26を保護できる。
【0077】
さらに、上記ステップ204では、モータ26への突入電流に基づき、モータ26の温度を推定して、モータ26の停動電流閾値ISを設定する。このため、モータ26の温度が低い場合に、モータ26の停動電流閾値ISが小さく設定されることで、モータ26が発熱する停動状態にならないにも拘らず、不要にモータ26への電流供給が停止されてレバー12が「P」位置に到達しないことを抑制できる。
【0078】
しかも、上記ステップ206では、モータ26への突入電流に基づき、モータ26の温度を推定して、モータ26の停動時間閾値TSを設定する。このため、モータ26の温度が低い場合に、モータ26の停動時間閾値TSが短く設定されることで、モータ26が発熱する停動状態にならないにも拘らず、不要にモータ26への電流供給が停止されてレバー12が「P」位置に到達しないことを抑制できる。
【0079】
なお、本実施形態において、モータ26に停動電流閾値IS以上の電流が流れる状態がモータ26の停動時間閾値TS以上の時間継続されてモータ26への電流供給が停止されてから所定時間後に、モータ26への電流供給を再度開始してもよく、更に、その後、例えばモータ26に停動電流閾値IS以上の電流が流れる状態がモータ26の停動時間閾値TS未満の時間継続された場合に、モータ26への電流供給が停止されてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、モータ26への突入電流に基づき、モータ26の温度が推定されて、モータ26の停動電流閾値IS及び停動時間閾値TSが設定される。しかしながら、モータ26への突入電流に基づき、モータ26の温度が推定されて、モータ26の停動電流閾値IS及び停動時間閾値TSの一方が設定されてもよい(モータ26の停動電流閾値IS及び停動時間閾値TSの他方は一定値にされてもよい)。
【0081】
さらに、上記第1実施形態及び第2実施形態では、検出装置30がロータカム24の回転位置を検出してレバー12の「P」位置への到達が検出される。しかしながら、検出装置30が常にロータカム24の回転と共に移動される移動体(例えばモータ26の出力軸26A又は伝達ギア28)の移動位置を検出してレバー12の「P」位置(所定位置)への到達が検出されてもよく、シフト検出装置16がレバー12の回動位置(常にレバー12の回動と共に移動される移動部材の移動位置でもよい)を検出してレバー12の「P」位置(所定位置)への到達が検出されてもよい。
【0082】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、レバー12(シフト部材)が回動される。しかしながら、シフト部材が回転(中心軸線周りに回転)又はスライドされてもよい。
【0083】
さらに、上記第1実施形態及び第2実施形態では、ロータカム24(移動体)が回転(中心軸線周りに回転)される。しかしながら、移動体が回動又はスライドされてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10・・・シフト装置、12・・・レバー(シフト体)、18・・・制御装置(制御部)、22・・・作動機構、24・・・ロータカム(移動体)、50・・・シフト装置