(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】減圧弁
(51)【国際特許分類】
G05D 16/16 20060101AFI20240328BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20240328BHJP
G21C 15/18 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
G05D16/16 J
G21D1/00 V
G21C15/18 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019224834
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-12-07
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522466681
【氏名又は名称】ロールス-ロイス、エスエムアール、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Rolls-Royce SMR Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ブレントン、ディー、シアラー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ、シー、パルマー
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン、ジェイ、アイアランド
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0194225(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0043899(US,A1)
【文献】特開平07-056637(JP,A)
【文献】米国特許第04442680(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/16
G05D 16/06
G21D 1/00
G21C 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧水型の原子炉用の非常炉心冷却装置の冷却回路であって、
主弁を有した主室と、二次弁を有したパイロットラインと、ブローダウンラインとを
具備した減圧弁と、
自動隔離弁と、
を備え、
前記冷却
装置の経路を密封するように前記主弁が設置されており、
前記主室は、冷却材が当該主室へ流入するのを可能とする前記パイロットラインを介して
前記冷却回路に接続され、前記ブローダウンラインは、前記主室から冷却材が流出するのを可能とし、前記パイロットラインは、前記ブローダウンラインよりも低い流体抵抗を有しており、
前記冷却回路において、前記減圧弁は前記原子炉から延びる放出管に配置され、前記自動隔離弁の上流にあり、前記減圧弁と前記自動隔離弁の両方は、前記原子炉の停止を必要とする事故状態の場合に前記原子炉の主冷却系を減圧するために開く必要があり、
通常運転条件においては、前記主室内の冷却材の圧力によって前記主弁が閉鎖位置に保たれ、
前記通常運転条件に対して上昇した温度および/または圧力の条件下では、前記パイロットラインにおける前記二次弁の閉鎖によって流体が前記主室へ流入することが妨げられ、
前記ブローダウンラインは、流体が前記主室から流出することを可能とし、それに伴って前記主弁から圧力が低減されて、
前記主弁が自らの開放位置へと動かされ、
流体が前記冷却回路から排出されることが可能となる、冷却回路。
【請求項2】
前記パイロットラインにおける前記二次弁は、マグノー弁である、請求項1
に記載の
冷却回路。
【請求項3】
前記パイロットラインにおける前記二次弁は、高圧ラッチ形隔離弁である、請求項1
に記載の
冷却回路。
【請求項4】
前記パイロットラインにおける前記二次弁は、溶栓弁である、請求項1に記載の冷却回路。
【請求項5】
前記パイロットラインにおける前記二次弁は、共融弁である、請求項1に記載の冷却回路。
【請求項6】
前記主室を前記パイロットラインから更に密封するのにパイロット式ポペット弁が用いられている、請求項1
に記載の
冷却回路。
【請求項7】
前記ブローダウンラインは、前記主室の外側の場所に設けられている、請求項1
に記載の
冷却回路。
【請求項8】
前記ブローダウンラインは、前記主室の内側の場所に設けられている、請求項1
に記載の
冷却回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原子炉用の受動的減圧弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉は、理想的なベースロード発電所をもたらすことから、送電網に加えることが望まれる。これは、原子炉が低炭素の電力源と考えられ、また(他の低炭素電力源に対しての制限要因となっている)変わりやすい気象条件に左右されないからである。これらの特徴が、原子炉を完全な電力ネットワークの主力として用いることを可能としている。世界各地で用いられる原子炉の最も一般的な型式の1つが、加圧水型炉(PWR)である。そのPWRにおいては、加圧水の一次回路が、冷却材、減速材に加えて、蒸気発生器への熱伝達流体としても用いられる。比較的単純な系統であることによって、これらの系統の規模を変えることができるという利点がもたらされる。従って、大規模発電所、および小型モジュール炉の両方に適しているのである。但し、全ての原子力発電所の場合と同様、事故を防止するための確固とした安全系が必要である。
【0003】
現代の原子炉用の安全系は、能動性と受動性の両方を目指している。能動的な系は、オペレータおよび/または運転中の装置類(ポンプや発電機など)の制御下で作動し、通常運転時には非常用制御と関連付けられる。受動的な安全系は、作動のために如何なる外部オペレータの入力や運転中の能動的な系も必要としない。この後者の系は、外部電力やユーザー入力を必要としない、系の自動的な自己制御に備えているという有益性がある。非常事態においては、このことが望ましいのである。それは、特定の場合には、炉への電力が途絶してしまうことや、オペレータが手動で系を制御できないことがあり得るが、そのような場合に受動的な制御系は系が安全なまままであることを可能とする。
【0004】
加圧水型炉の場合、主要な安全上の重大事の1つが冷却材喪失事故(LOCA)の場合である。その事故では、炉内へ流入する冷却水が喪失してしまい、それが直らなかったとすれば原子炉の損傷に繋がってしまうであろう。これは、冷却材なしでは、炉の燃料棒内での放射性崩壊によって生み出される熱が、炉の損傷する程度まで増大してしまうであろうからである。このことは、重大な原子力事故という結果を招き得るであろう。このことが発生し得る過程のうちの1つは、冷却材が沸騰してしまう場合であり、燃料被覆管の溶融および核分裂生成物の放出に繋がり得る。従って、このことが生じるのを防止するように、原子炉には、障害のある場合に冷却水を入れ換えることのできる非常用冷却系が備え付けられている。PWRにおいては、このことから保護するための系が、非常用炉心冷却装置(ECCS)として知られている。これらの装置は典型的には、目下の炉冷却材を放出するための管路の開放を必要とする。このための放出管は、炉の回路圧力を低く保ちつつ加熱された冷却材を除去するのに足る容量をもたらすように設計されている。この放出された冷却材に取って代わるために、新たな冷却材が(重力に委ねられて)系内へと注入される。これらの放出管路は通常、LOCAの検出時に開くことのできる隔離弁を用いて炉から隔離されている。これは典型的には、発電所のパラメータを監視するための計装、設定点への到達時に起動信号を発生させるための制御系、および弁の位置を変化させるための弁作動器を必要とする。
【0005】
この、LOCAの場合における冷却流体の非常供給から冷却材を隔離するのを達成するための系は、当該技術において既知のものである。55barに加圧された蓄圧器と、通常運転中に70barの炉心とを隔離するのに、蓄圧器隔離受動弁(AIPV)が用いられている。原子炉回路内で圧力の低下があるときには、上流側に位置する蓄圧器と下流側の原子炉回路および炉心との間の圧力差に比例して当該弁が開く。AIPVについては、弁位置が圧力差に比例しているので、原子炉回路圧力の回復によるか、蓄圧器圧力の放出でのいずれかで圧力が均等になったならば、弁が閉じてラインをもう一度隔離する。従って弁は、完全な系の減圧を許容するように開いて動かなくなったままとはならない。或いは、蓄圧器減圧用自動安全弁(ASVAD)を用いることができる。これらは、系内の圧力から受ける力がある水準(これは、弁プランジャへ作用するバネにより加えられる力によって決まる)を下回るまで低下したときに弁を開くことによって、蓄圧器の気体空間から気体を排出するのに用いられる。ASVAD弁は、通常の意味での隔離弁ではなく、特に気体の排出用に設計されたものである。そのような次第で、その弁は高圧高温の水の隔離に適したものではない。どちらの弁も、温度に基づいて作動するものであり、系の圧力と温度が上昇する非損傷型回路障害の過渡現象の場合には開くことができないため、かくして改善が必要なのである。ウェスティングハウスによるAP1000炉設計は、加熱された冷却材を放出するためのスクイブ(爆破)弁と称される弁を特徴としている。スクイブ弁には、弁を開くのに用いる爆薬が備え付けられている。しかしながら、スクイブ弁の誤作動は、重大な放射線災害という結果を生じさせるかもしれない。従って、発電所設計の安全性根拠は、誤作動を防止するための信頼性の高い制御・計測(C&I)系に依存しており、かくして発電所設計に相当なコストを付加してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのような次第で、冷却材回路の減圧に備えるための簡素化された受動的弁を開発することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、冷却回路用の減圧弁であって、主室内に設置されたピストンおよび弁棒を有する主弁を備え、主室が、二次弁を伴ったパイロットラインを介して流体供給源に接続されると共に、ブローダウンラインに接続されており、パイロットラインを通じて流体が主室内へ流入し、そのパイロットラインは、ブローダウンラインよりも低い流体抵抗を有しており、使用時には主室内の流体の圧力によって主弁が閉鎖位置に保たれ、極限条件下では、パイロットラインにおける二次弁の閉鎖によって流体が主室へ流入することが妨げられて弁から圧力が低減され、その弁が自らの開放位置へと動かされる、減圧弁が提供される。
【0008】
受動的弁として開放弁を用いることによって、炉心回路の完全な減圧が可能となる。さらに、当該弁が位置を占めることのできる多くの形態に当該弁を適用することが可能である。従って、この弁は、先行技術に対する改良としての役目を果たし、スクイブに要求される爆薬を必要とはしない。
【0009】
パイロットラインにおける二次弁は、マグノー弁(magnovalve:磁力式弁)であってよい。
【0010】
パイロットラインにおける二次弁は、高圧ラッチ形隔離弁であってもよい。
【0011】
主室をパイロットラインから更に密封するのにポペット弁が用いられてもよい。
【0012】
当該減圧弁は、自動隔離弁(「自動起動弁(AIV)」とも呼ばれる)の上流側に設置されていてよい。
【0013】
ブローダウンラインは、主室の外側に設けられていてよい。
【0014】
ブローダウンラインは、主室の内側に設けられていてもよい。
【0015】
第2の態様によれば、上記で検討したような減圧弁を含んでいる原子炉が提供される。
【0016】
相互に排他的な場合を除けば、上記態様のいずれか1つに関して説明された特徴は、必要な変更を加えて、如何なる他の態様にも適用され得る、ということを当業者は認識するであろう。さらに、相互に排他的な場合を除けば、本明細書で説明される任意の特徴は、如何なる態様にも適用され、および/または本明細書で説明される如何なる他の特徴とも組み合わされ得る。
【0017】
ここで図面を参照して、諸実施形態を例示としてのみ説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の自動減圧弁における第1実施形態の模式図。
【
図2】本開示の自動減圧弁における第2実施形態の模式図。
【
図3】本開示の自動減圧弁における第3実施形態の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
事故状況が発生したときの原子炉の安全な停止を確保するために非常用炉心冷却装置(ECCS)が設けられている。その冷却装置は、種々の事故状況の場合に安全機構をもたらすように構成されている。ECCSの形成に従事する多くの部分系が存在している。それらの部分系はそれぞれ冗長性を有しているため、部分系のうちの1つが故障した場合であっても安全に炉を停止することができる。ここで特に重要なのは、自動減圧系(ADS)のような受動的な系である。そのADSは、主冷却材系を減圧して、より低圧の非常用冷却材系が機能することを可能とするために開く2つの弁から成っている。低圧冷却材注入系は、高圧系よりも大きな冷却能力を有しているので、炉の停止時における効率的な作動が非常に重要である。
【0020】
受動的減圧(PaD)弁は通常、原子炉回路から伸びた放出管路内に位置する閉鎖弁である。その弁は、同じ放出路内に設置されて別の制御系で起動/作動される隔離弁とは異なった第2の隔離方法をもたらすものである。PaD弁は、弁の上流側における温度上昇および/または圧力低下の検出に基づいて閉鎖状態から開放状態へ変わるように設計されている。そのような系を組み込む利点は、重大なLOCA、即ち原子炉回路の温度上昇の場合に、炉冷却材を放出して重力による新たな冷却材の注入に備えるように弁が開くこととなる、ということである。そのような動作の模式的な例が
図1に示されている。この例では、PaD弁100が、圧縮バネ102上に搭載された主弁101を有している。その主弁101は、流体圧力によってに圧し下げられて閉鎖位置にある。しかし、流体圧力が降下したときには、バネによって、弁棒103に結合された弁ピストンが押し上げられて主弁101が開かれる。連結された冷却材系管路に対する弁ピストンおよび弁棒の移動を通じて主弁が開閉されるのである。主弁が閉鎖/締切位置にある状態では、上流側の炉冷却材回路内の流体がバイパスないしパイロットライン104を通過する。系内の圧力も、パイロット式ポペット弁105を圧し開けて主弁101の弁棒103に結合された弁ピストンを閉鎖位置へと圧し下げるに足るものである。自動起動弁(AIV)106が閉鎖されている間、系はこの態勢のままであり、主弁のバネは原子炉回路圧力によって圧縮されたままである。制御・計測(C&I)系によってAIVが開放されたときには(これは低い回路圧力や高い原子炉流体温度の場合に発生する)、流体が主室107からブローダウンライン108を通じて流出する。この流体の流出に伴って二次弁109の自動閉鎖が起きることとなるが、それは流体温度がマグノー弁における臨界温度を超えた場合である。AIVの開放および二次弁の閉鎖は、原子炉回路内の、そして最終的には主室内の圧力の低下に帰着することとなる。それは、弁機構のバネに作用して主弁を閉じた状態に保つに足る圧力が存在しないために、主弁を開くことができるようなものである。二次弁109は、種々の形態をとることができ、例えばマグノー弁であってよい。
【0021】
ブローダウンライン108は、そのブローダウンラインを落ちる流れの方がパイロットラインを通る流れよりも流体に対する抵抗が高くなるように構成されている。AIVの誤開放の場合には、少量の緩慢な流体の漏洩がAIVを通過するが、パイロットラインを通じた主室内への流入の方が、ブローダウンラインを通じた主室からの流出よりも大きい。かくして、パイロット式ポペット・バネと主弁のバネ102とは圧縮されたままであり、従って主弁101は閉鎖され続ける。これらのバネを圧縮するに足る圧力が主室内にある間は、この状態が生じることとなる。LOCAとそれに続くAIV開放の(原子炉回路圧力が保たれない)場合には、パイロットライン内の原子炉回路流体圧力によってもたらされる力が、パイロット式ポペット・バネの力を下回る水準まで降下して、パイロット式ポペット弁の閉鎖に帰着する。これにより原子炉回路から主室への流れが断たれ、ブローダウンラインを通じて主弁室内の流体が流出する。このことが、流体圧力によって主弁のバネに加えられる力が低下して、バネが伸びるのを許すことで、主弁を開放させることに帰着するのである。
【0022】
非損傷型回路障害とそれに続くAIV開放の場合には、原子炉回路の流体温度が上昇する。原子炉回路の冷却材は、マグノー弁の形態の二次弁109のトリップ(遮断)温度に達して二次弁を閉鎖させるまで、パイロットラインを通過し、主弁室を通過してからブローダウンラインを流れ落ちる。従って二次弁109の閉鎖が、パイロットラインから主弁室107内への水の流れを断つのである。主室へ流入する流体が無く、また主室内にある流体はブローダウンラインを通じて流出することができるので、主弁室の圧力は低下する。これにより、パイロット式ポペット弁のバネが流体圧力の力に打ち勝つことが可能となり、パイロット式ポペット弁105が閉鎖され、入来する水に対して主室を密封して減圧し、主弁101を開放させることができる。主弁101が開くことで、冷却材系の減圧を生じさせることができる。
【0023】
この構成において主弁は、閾値よりも高い温度で、即ち312℃程度である通常平均運転温度を上回る温度で開くように構成することができるであろう。例えば主弁は、冷却材温度が約330℃に達したときに開くように設定できるであろう。主弁は、約335℃、或いは約340℃以上のより高い温度で開くこともできるであろう。主弁の開放温度を選択するに当たっては、冷却材温度における変動を考慮して、変動中には開かないが、通常の運転パラメータの範囲を超えるであろう水準においては開くように設計せねばならない。ポペット弁は、約155barの通常運転圧力を下回る任意の適切な圧力にて閉じるように設定することができるであろう。例えば、この圧力は約70barとすることができるであろう。それは、70barよりも高い圧力、例えば約75、80、85、90bar、或いは、より低い約65、60、55、ないしは50barの圧力とすることもできるであろう。
【0024】
この実施形態においては、弁の構成によって、要求があるまで原子炉回路を放出位置から隔離する現実的な手段がもたらされる。主弁の固有の設計と、マグノー弁およびポペット弁の使用とによって、主弁の開放を、低圧と高温の両方の条件に基づくものとすることが可能となる。そのような構成は、一度だけのAIV弁の誤開放やC&I故障の場合に重大な障害に帰着することとはならない、という利益を有している。
【0025】
第2実施形態のPaD弁200は、パイロット式ポペット弁の必要性を取り除いているが、この実施形態は
図2に示されている。この構成は、
図1に示す実施形態と動作においては同様のものである。主弁201は、通常運転時には回路内で閉鎖位置に保たれている。この位置に保たれるのは流体の圧力によってであるが、その圧力は、冷却材回路からパイロットライン204を通じて、弁棒203に結合された弁ピストンの背後の主室207内へと至るものである。主弁が閉鎖位置に保たれるよう、流体が、弁ピストンに力を加えることによって圧縮バネ202に作用して、これを圧し下げるのである。弁室を通る流体の流れを保つようにブローダウンライン208も設けられている。ブローダウンラインは、主室内の圧力が保たれるように、パイロットラインよりも狭くなっている。パイロットラインには二次弁209が設けられているが、この弁は例えば(温度によって作動する)マグノー弁の形態のものとすることができる。このことは、流体温度が一定の限度を超えて上昇した場合には、マグノー弁が閉じて主室内への流体の流れが停止させる、ということを意味する。主室内への流入が制限されている状態で、ブローダウンラインの存在によって流体が主室から流出することが可能となっている。マグノー弁は、磁力式の弁であって、弁材料のキュリー点温度を超えて加熱されたときにはその磁性を失い、かくして、この状態変化に関連して弁が動くことを可能とし、弁が開放および/または閉鎖することを可能とするものである。従って、これにより弁ピストンに作用する圧力が低下し、そのような次第で、圧縮バネ202が伸びて主弁201が開くことができ、AIV206を通じて主原子炉回路から流体を排出することが可能となるのである。パイロット式ポペット弁を取り除くことは、系内の構成部品数を減少させるという利益を有してはいるが、ポペット弁の密封効果や、その弁のもたらす(主弁の作動する圧力に関する、より高い精度による)特別な圧力制御を取り去ってしまう。
【0026】
二次弁109に対してマグノー弁を用いることへの代替案は、溶栓弁を用いることである。これは、栓に低融点材料を用いることで、温度が上昇した場合に溶融して弁を密封するものである。これは弁の恒久的な密封に帰着し、そのような次第で密封の点では非常に効果的なものである。但し、作動後には交換される必要があるであろう。別の代替案は、共融弁を用いることである。これも、共融材料を溶融させて二次弁を密封することとなる役目を果たし、それが主弁の開放に帰着することとなる。
【0027】
本開示の第3実施形態のPaD弁300が、
図3に示されている。この例においては、パイロットライン304上に取り付けられた高圧ラッチ形隔離弁310が二次弁309に組み込まれており、これが圧力検知ラインの役目を果たしている。このラインは、弁の閉鎖のための温度設定点で機能するというよりは、むしろ高圧を検出した際に閉鎖するものである。ラッチ形弁は、冷却材回路の通常運転から外れた任意の適当な圧力で閉じるように設定することができる。例えば、ラッチ形弁は16.5MPaで閉じるように設定することができるであろう。これよりも高い圧力、例えば約16.6、16.7、16.8、16.9、17、17.1、17.2、17.3、17.4、17.5MPa、ないしはそれ以上で弁が閉じるように設定することもできるであろう。或いは、それより低い、例えば約16.4や、16.3、16.2、16.1、ないしは16MPaである。原子炉の通常運転中、冷却材の典型的な圧力によって流体は破線に沿って流されることとなる。この圧力によってまた、ポペット弁が開放位置に保持される。しかしながら、LOCAの場合の結果として回路内の圧力が降下したときには、ポペット弁305に対して作用する低下した圧力は、当該ポペット弁を開放位置に保つに足るものではないこととなる。そのような次第で、ポペット弁が閉じることとなり、流体が主室からブローダウンライン308を流れ落ちることができ、これが主室307内の圧力の低下という結果を生じさせる。これにより今度は、弁ピストン棒303に結合された弁ピストン上に作用する圧力が低下することとなる。それは、圧縮バネ302が伸びて主弁301が開くことができ、流体がAIV306へと流れ下ることができるようなものである。他方、(非損傷回路障害に関連し得る)圧力上昇の場合には、系内の流体圧力が高圧ラッチ形隔離弁310を圧し上げ、かくして圧力解放弁を通る流体の流路を閉じる。主室内への流体の流入がない状態では、この主室内では圧力が低下する。流体がブローダウンラインを通過できるため、主室内の圧力を低下させるからである。かくして、主弁が開放される。これは、真っ直ぐに貫通した設計として示されているが、この構成は角度の付いた設計で用いるのにも適している、ということを認識されたい。
図1および
図2にも示すようにである。
【0028】
上記の各実施形態は原子炉を考慮して説明してきたが、ある系が自らの通常運転圧力を下回ったり上回ったりする圧力に達した場合にその系を減圧したり加圧された系の内容物を放出したりすることが重要であるところの如何なる他の系でも当該装置を用いることができる、ということを認識されたい。同様に、温度が設定点を超えて上昇した場合にそのような放出/減圧が重要であるところの如何なる類似の系でも用いることができる。これらの弁は、所定の変更があれば開放から閉鎖までの筋書きの様々な状況において機能する、ということを当業者は認識するであろうからである。
【0029】
本発明は上記で説明した各実施形態に限定されるものではなく、本明細書で説明した概念から逸脱することなく、種々の変更や改良を成すことができる、ということを理解されたい。相互に排他的である場合を除いて、各特徴の何れかを、単独で、或いは任意の他の特徴と組み合わせて採用してもよい。また本開示は、本明細書で説明した1つないし複数の特徴全ての組合わせや部分的組合せにも及び、それらを包含するものである。