(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】複合型不織布の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
D04H 5/03 20120101AFI20240328BHJP
D04H 1/498 20120101ALI20240328BHJP
【FI】
D04H5/03
D04H1/498
(21)【出願番号】P 2019237957
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 明子
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-016908(JP,A)
【文献】特開2012-132117(JP,A)
【文献】特開平05-179545(JP,A)
【文献】特開2012-211412(JP,A)
【文献】特開2021-105236(JP,A)
【文献】特開2021-105237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00 - 18/04
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21H 11/00 - 27/42
D21J 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンド不織布上に、エアレイド方式で供給されるパルプ繊維ウエブを載置した後、水流交絡処理を施して得られる複合型不織布の製造方法であって、
前記水流交絡処理後に
、前記複合型不織布の下側から吸引する脱水処理が実施され、前記脱水処理の際に前記パルプ繊維ウエブ側に紙力剤が添加される、ことを特徴とする複合型不織布の製造方法。
【請求項2】
前記パルプ繊維ウエブにおける前記紙力剤の固形分で換算した添加量が、前記パルプ繊維ウエブの固形重量に対して、0.05~2.0%となるように添加する、ことを特徴とする請求項1に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項3】
前記紙力剤の添加がスプレー塗布であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項4】
前記紙力剤の濃度を0.5~2.0%、吐出圧力を0.1~1.0Mpaとしてスプレー塗布する、ことを特徴とする請求項3に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項5】
吐出口の形状が猫の目型であるスプレーノズルを用い、スプレーされて噴霧液状となった前記紙力剤が前記パルプ繊維ウエブに均一に塗布されるように、前記パルプ繊維ウエブの幅方向に前記スプレーノズルを複数配置してスプレー塗布する、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項6】
前記噴霧液状となった前記紙力剤が両端部で互いに重なり、前記幅方向に沿って複数の前記スプレーノズルを直線状に配置してスプレー塗布する、ことを特徴とする請求項5に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項7】
前記猫の目型の前記吐出口における内周上の2点及び中心を通る直線を仮想し、その仮想した前記直線のうち最長の直線を長軸とした場合に、複数の前記スプレーノズルを、所定間隔をもって前記幅方向に対して
前記長軸を傾けて配置し、前記噴霧液状となった前記紙力剤が互いに干渉しないようにしてスプレー塗布する、ことを特徴とする請求項5に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項8】
複数の前記スプレーノズルを、前記幅方向に対して平行な複数列で、前後で互い違いとなるようにして所定間隔をもって配置し、前記噴霧液状となった前記紙力剤が互い
に干渉しないようにしてスプレー塗布する、ことを特徴とする請求項5に記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項9】
前記紙力剤はポリアミドエピクロロヒドリン系、ポリアミドエポキシ系、及びポリアミドポリアミン系よりなる群から少なくとも1つが選択される、ことを特徴とする請求項1から
8のいずれかに記載の複合型不織布の製造方法。
【請求項10】
スパンボンド不織布上に、エアレイド装置によって供給されるパルプ繊維ウエブを載置した後、水流交絡装置により水流交絡処理を施して複合型不織布を製造する複合型不織布製造装置であって、
前記水流交絡装置の下流に、前記複合型不織布を下側から脱水処理する脱水装置を備えると共に、
前記脱水装置の上方には、前記複合型不織布の前記パルプ繊維ウエブに紙力剤を添加する添加装置が設けてある、ことを特徴とする複合型不織布の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とを水流交絡させることによって得られる複合型の不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とによる複合型の不織布は、パルプ繊維に基づく吸液性とスパンボンド不織布に基づく強度との両方を具備してなるので、ウエスなどの工業用ワイパー、或いは手ぬぐい、タオルなどの対人用のワイパー等の様々な用途で広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1で開示するように、パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とを重ねた後に、高圧のウォータジェット(水流)を吹き付ける水流交絡処理によって一体化されている。ここでスパンボンド不織布は強度に優れるので製造された複合型不織布の裏打ち層的な機能を果たす。一方、パルプ繊維ウエブは優れた吸液機能を備えている。よって、このような複合型不織布は、水性、油性のいずれの液体に対しても吸収性が良好なパルプ繊維ウエブと、強度に優れるスパンボンド不織布との利点を併有している優れた複合型不織布として消費者に提供することができる。
【0004】
ところで、複合型の不織布は使用した際に、パルプ繊維が容易に脱落しないように商品設計されているのが好ましい。複合型不織布は乾いた状態、或いは濡れた状態のいずれでもワイパー等として使用される。使用された際に、パルプ繊維の脱落が目立つと商品価値が低下してしまう。
ところで、従来にあって、湿式抄紙法によるシート製造技術を流用して、パルプ繊維を含む不織布を製造する際に、パルプ繊維に紙力剤を予め添加して製造することが知られている(例えば、特許文献2、3)。このように製造されたパルプ繊維ウエブでは、構成している繊維の状態が安定化されるので繊維の脱落を抑止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2533260号公報
【文献】特開2012-211412号公報
【文献】特表2018-535126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とによる複合型不織布に用いるパルプ繊維ウエブについて、従来の湿式抄紙法で紙力剤が添加してあるパルプ繊維ウエブを用いることが容易に着想される。
しかしながら、乾式製造を採用した場合と比較して、湿式抄紙法によってパルプ繊維ウエブを製造すると製造設備が大型化するので製造コストが増加し、しかも抄紙工程では白水中を循環する異物を完全に除去することができないので、製造される複合型不織布にも異物が混入し易いという問題がある。
また湿式抄紙法によって紙力剤を含んだパルプ繊維ウエブを製造する際、パルプに定着できず白水に流れ出てしまう紙力剤多くなり、紙力剤の歩留まりが悪くなる(コストアップする)という点も問題となる。
そこで、乾式製造を採用することとなるが、乾式によるパルプ繊維ウエブは複合型不織布にした場合に、加工時及び使用時にはパルプ繊維の脱落が生じやすい。
【0007】
よって、本発明の主な目的は、エアレイド方式でパルプ繊維ウエブを供給し、コストを抑えて、異物の混入が少なくかつ、パルプ繊維の脱落が抑止されている複合型不織布を効率的に製造できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、スパンボンド不織布上に、エアレイド方式で供給されるパルプ繊維ウエブを載置した後、水流交絡処理を施して得られる複合型不織布の製造方法であって、前記水流交絡処理後に前記パルプ繊維ウエブに紙力剤を添加する、ことを特徴とする複合型不織布の製造方法により達成できる。
【0009】
そして、前記パルプ繊維ウエブにおける前記紙力剤の固形分で換算した添加量が、前記パルプ繊維ウエブの固形重量に対して、0.05~2.0%となるように添加するのが好ましい。
また、前記紙力剤の添加がスプレー塗布であることが好ましい。
また、前記紙力剤の濃度を0.5~2.0%、吐出圧力を0.1~1.0Mpaとしてスプレー塗布するのが好ましい。
【0010】
また、吐出口の形状が猫の目型であるスプレーノズルを用い、スプレーされて噴霧液状となった前記紙力剤が前記パルプ繊維ウエブに均一に塗布されるように、前記パルプ繊維ウエブの幅方向に前記スプレーノズルを複数配置してスプレー塗布するのが好ましい。
【0011】
ここで、前記噴霧液状となった前記紙力剤が両端部で互いに重なり、前記幅方向に沿って複数の前記スプレーノズルを直線状に配置してスプレー塗布するようにしてもよい。
そして、複数の前記スプレーノズルを、所定間隔をもって前記幅方向に対して傾けて配置し、前記噴霧液状となった前記紙力剤が互いに干渉しないようにしてスプレー塗布するのがより好ましい。
また、複数の前記スプレーノズルを、前記幅方向に対して平行な複数列で、前後で互い違いとなるようにして所定間隔をもって配置し、前記噴霧液状となった前記紙力剤が互い干渉しないようにしてスプレー塗布することも好ましい。
【0012】
また、前記水流交絡処理後に下側へ吸引する脱水処理が実施され、前記脱水処理の際に前記パルプ繊維ウエブ側に前記紙力剤が添加されるのが望ましい。
前記紙力剤は、例えばポリアミドエピクロロヒドリン系、ポリアミドエポキシ系、及びポリアミドポリアミン系よりなる群から少なくとも1つを選択して用いることができる。
【0013】
上記の目的は、スパンボンド不織布上に、エアレイド装置によって供給されるパルプ繊維ウエブを載置した後、水流交絡装置により水流交絡処理を施して複合型不織布を製造する複合型不織布製造装置であって、前記水流交絡装置の下流に、前記複合型不織布を下側から脱水処理する脱水装置を備えると共に、前記脱水装置の上方には、前記複合型不織布の前記パルプ繊維ウエブに紙力剤を添加する添加装置が設けてある、ことを特徴とする複合型不織布の製造装置によっても、達成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、エアレイド方式でパルプ繊維ウエブを供給する場合でも、パルプ繊維脱落が少ない複合型不織布を製造することができる。また、本発明によると、使用する紙力剤の歩留まりを従来よりも上げることができ、紙力剤を効率的に使用して製造コストを抑制でき、異物混入も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る複合型不織布の製造方法を実施する装置について示した図である。
【
図2】
図1で示す添加装置による紙力剤の噴霧形状を説明するために示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る複合型不織布の製造方法について説明する。
本発明は、湿式設備を採用した場合よりも、設備コストを抑制できるエアレイド方式でパルプ繊維ウエブを供給して複合型不織布を製造する際に、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウエブを積層し水流交絡処理して一体化した後に、パルプ繊維ウエブに紙力剤を添加して複合型不織布を製造することを提案するものである。
【0017】
以下、本発明の方法を実施するのに好適な複合型不織布の製造装置を示す
図1を参照して、具体的に説明する。
先ず、複合型不織布の製造装置1の概略構成を説明する。
図1に示す製造装置1は、上流側にパルプ繊維ウエブを供給するためのエアレイド装置2、スパンボンド不織布を供給するスパンボンド不織布供給装置3、そしてサクション装置4が配設されている。サクション装置4はエアレイド装置2の下側に対向するように配置されている。
ウエブの搬送方向TDで、これらの装置2、3、4より下流には、上流側から順に、水流交絡処理を行うためのウォータジェットを噴射する水流交絡装置5、脱水処理を行うためのサクション装置6、乾燥装置7が配置されている。上記乾燥装置7の下流には連続して製造される複合型不織布WPを巻き取るための巻取装置8が設けてある。
【0018】
上記エアレイド装置2は、繊維同士が密集しシート状となっている原料パルプRPをパルプ繊維に解繊する解繊機21や、図示しない送風機を備えて解繊されたパルプ繊維PFをエアレイドホッパ23へと搬送するダクト22を有している。
【0019】
また、上記ダクト22よりも下流側にはエアレイドホッパ23が配置されている。このエアレイドホッパ23の内部では、解繊状態にあるパルプ繊維が分散しながら降下し、下面に設定した積層位置24に徐々に積み上りパルプ繊維ウエブPFWが形成されるように設計してある。
上記のように、エアレイド装置2は乾式でパルプ繊維ウエブを供給できる装置設備であり、湿式抄紙法を応用し湿式でパルプ繊維ウエブを製造する装置よりも設備コストを抑制できる。また、エアレイド装置2ではパルプの解繊から分散、降下まで閉鎖系空間となっており異物の混入が防止されているので、湿式抄紙法でパルプ繊維ウエブを供給する場合と比較して、異物の混入を圧倒的に低く抑えることができる。
【0020】
上記積層位置24の下側にはサクション装置4が対向配備してある。より詳細には、サクション装置4は装置本体41の上面にサクション部42を有しており、サクション部42が上記パルプ繊維ウエブPFWに吸引力(負圧)を作用させるべく積層位置24に対して設定してある。
なお、
図1では、エアレイドホッパ23とサクション装置本体41とを1つずつ一段での配置として、パルプ繊維ウエブPFWを形成する場合を例示している。しかし、これに限らず、上記パルプ繊維ウエブPFWの目付(坪量)や製造速度に応じて、上記エアレイドホッパ23とサクション装置本体41を2つ以上の多段とする配置に変更してもよい。
【0021】
また、サクション装置4の周囲にはウエブ搬送用の搬送ワイヤ43が配設してある。搬送ワイヤ43は、積層位置24においてパルプ繊維PFが堆積したパルプ繊維ウエブPFWが載置可能で、これを下流側に搬送するように配置されている。ただし、パルプ繊維ウエブPFWは直接、搬送ワイヤ43上に載置されない。これについては、後述の説明で明らかとなる。
搬送ワイヤ43はサクション部42の吸引力が、反対側(上側)に及ぶような目開き形態(メッシュ)で形成されている。
【0022】
上記エアレイド装置2の下側で、サクション装置4よりも上流側に、スパンボンド不織布供給装置3が配置してある。このスパンボンド不織布供給装置3には、予め準備されたスパンボンド不織布SWがロール状とされてセットされている。すなわち、前述したように、設計されたスパンボンド不織布SWが製造に伴って巻き取られてロール状とされており、これがスパンボンド不織布供給装置3から引出され、上述した搬送ワイヤ43に乗って上記積層位置24へと搬送されるようになっている。
【0023】
積層位置24に位置した、スパンボンド不織布SWの上に、前述したパルプ繊維ウエブPFWが載置される。その際に、積層位置24ではサクション装置4のサクション部42による吸引力が搬送ワイヤ43を通過し、その上のスパンボンド不織布SWおよびパルプ繊維ウエブPFWに作用する。よって、スパンボンド不織布SWとパルプ繊維ウエブPFWとが積層された状態となっている予備的積層体PWeb(積層ウエブ)が下流側へと搬送される。
上記のように予備的積層体PWebが形成されるときに、スパンボンド不織布SW上へのパルプ繊維ウエブPFWの供給量を制御することで、本装置で製造される複合型不織布に含まれるパルプ繊維ウエブPFWの坪量は例えば30.0~75.0g/m2であり、従来の一般的な複合型不織布よりもパルプ繊維ウエブの比率が高くなるように設計するのが望ましい。そして、スパンボンド不織布SWの坪量は例えば10.0~25.0g/m2であり、製造される複合型不織布(スパンボンド不織布SW+パルプ繊維ウエブPFW)は例えば45.0~90.0g/m2とするのが好ましい。パルプ繊維ウエブの搬送速度やパルプ繊維ウエブPFWの時間当たりの供給量などを適宜に調整し、製造された複合型不織布のパルプ繊維ウエブPFWの坪量を確認することで、坪量が所望の範囲となるように設定すればよい。パルプ繊維ウエブの搬送速度は例えば150~300m/minとするのが好ましい。
【0024】
上記した予備的積層体PWebは、サクション装置4の吸引力によって、吸引圧縮されたことにより積層状態が維持されている。このとき上側のパルプ繊維ウエブPFWの繊維が密にされた状態ではある。しかし、このまま予備的積層体PWebを下流側の水流交絡装置5内に搬送投入すると、ウォータジェット(高圧の水流)によってパルプ繊維PFの一部が舞い上がるおそれがある。
そこで、本製造装置1では、予備的積層体PWebを上下から挟んでスパンボンド不織布SW上でのパルプ繊維ウエブPFWの載置状態を安定化させる為の挟持ローラ28、そして水流交絡装置5の上流側に繊維飛散防止用に水分を付与するプレウエット装置30が配備してある。プレウエット装置30は、好適には、予備的積層体PWebの上方からウォータミストを吹き付ける噴霧ノズル31と予備的積層体PWebの下側(すなわち、パルプ繊維ウエブPFWの下面)から吸引力を印加するサクション装置32とを含んで構成されている。
【0025】
なお、
図1では、上記のように水流交絡装置5前にプレウエット装置30を新たな装置として設ける場合を例示しているが、これに限らない。水流交絡装置5に含まれる後述するウォータジェットヘッド51とサクション装置52とからなるセットの複数について、先頭に位置するセットを上記プレウエット装置30として流用するような設計変更をしてもよい。この場合には先頭のウォータジェットヘッド51から低圧のウォータミストが噴霧されるように調整すればよい。
水流交絡処理を行うのに十分な、ウォータジェットヘッド51とサクション装置52とのセット数が確保されている水流交絡装置5の場合、上記のように先頭のウォータジェットヘッド51とサクション装置52をプレウエット装置として活用することは、装置設備コストの抑制に効果的である。
【0026】
そして、水流交絡装置5では、前処理部となる挟持ローラ28およびプレウエット装置30の処理を受けた予備的積層体PWebに高圧のウォータジェットを吹き付けることによりパルプ繊維同士の交絡を促進する。これにより上側に位置するパルプ繊維ウエブPFW層と下側に位置するスパンボンド不織布SW層との一体化が促進される(水流交絡処理)。
図1で例示的に示している水流交絡装置5は、搬送方向TDに沿って多段(
図1では例示しているのは4段)にウォータジェットヘッド51が配置されている。
なお、
図1では、搬送方向TDに対して直角な方向(ウエブの幅方向CD)において延在しているウォータジェットヘッド51に設けたノズルの様子は図示していないが、幅方向において複数のウォータジェットノズルが適宜の位置に配置してある。このウォータジェットノズルの穴直径φは、好ましくは0.06~0.15mmである。また、ウォータジェットノズルの間隔は0.4~1.0mmとするのが好ましい。
【0027】
上記水流交絡処理をする際の水圧は、パルプ繊維ウエブPFWとスパンボンド不織布SWとの坪量を勘案して設定するのが望ましい。例えば、1~30MPaの範囲において選択するのが好ましい。
【0028】
そして、上記ウォータジェットヘッド51と対向するように、サクション装置52が配設してある。ウォータジェットヘッド51から出る高圧のウォータジェットを上側に位置しているパルプ繊維ウエブPFWに吹き付けつつ、下側に位置しているスパンボンド不織布SWの下側にサクション装置52の吸引力を作用させる。ウォータジェットヘッド51とサクション装置52との協働作用によって、パルプ繊維ウエブPFW側のパルプ繊維が下側のスパンボンド不織布SWに入り込んだ状態や、スパンボンド不織布SWを貫通して反対側にまで至った状態などが形成されると推定される。その作用により2つの層の一体
化が促進される。
【0029】
水流交絡装置5にも、搬送ワイヤ55が配設してある。搬送ワイヤ55は前処理部28、30の下流で予備的積層体PWebを受けて、水流交絡装置5内へと搬送する。搬送ワイヤ55は水流交絡装置5のウォータジェットヘッド51とサクション装置52との間を、上流側から下流に向かって通過するように配設されている。
よって、搬送ワイヤ55上を搬送される予備的積層体PWebは、搬送方向TDで下流に向かう程に、より多くの水流交絡処理を受けることになり、水流交絡装置5を出るときには上側のパルプ繊維ウエブPFW層と下側のスパンボンド不織布SW層との十分な交絡処理が実現される。
水流交絡装置5を出た直後の複合型不織布にあっては、ウエット状態にあり、パルプ繊維同士などの結合は十分に確立されてはいない。
【0030】
そこで、
図1で示すように、水流交絡装置5の下流側にはパルプ繊維ウエブに残留する水分を吸引除去する脱水処理、その後に乾燥処理を行って、複合型不織布WPの製造を完了するためのサクション装置6および乾燥装置7が配備してある。このように複合型不織布WPの製造の後段で、サクション装置6および乾燥装置7による脱水処理、乾燥処理を行うと効率よく複合型不織布を製造でき、また、製造される水流交絡後の複合型不織布に大きな外圧を掛けることなく乾燥した複合型不織布を製造できる。
しかしながら、先に指摘したように、複合型不織布WP上のパルプ繊維ウエブから離脱するパルプ繊維を確実に抑止できる複合型不織布とする必要がある。そのため、本製造装置1には、パルプ繊維の脱落を抑止するための紙力剤を添加するための紙力剤添加装置9が配置されている。
【0031】
サクション装置6は、例えばバキューム式で水流交絡後の複合型不織布を下側から脱水する。搬送される複合型不織布WPを間にして、サクション装置6の上方には、紙力剤添加装置9が配設されている。
紙力剤添加装置9は、水流交絡装置5で複合化された後の複合型不織布WPの上側、すなわちパルプ繊維ウエブPWFから紙力剤を添加する。複合化が完了した複合型不織布のパルプ繊維ウエブ表面に紙力剤を添加するので、紙力剤が効率的に作用してパルプ繊維同士を接続する機能を果たす。紙力剤添加装置9より下流では乾燥処理されるので、添加された紙力剤が洗い流されて流出するなどの無駄もない。
また、下側にはサクション装置があるので、紙力剤がパルプ繊維ウエブ内に浸透するのに優位であり、これによってパルプ繊維の脱落を更に確実に抑止することができる。添加は、スプレー塗布とすることにより、噴霧液状となった紙力剤がパルプ繊維ウエブ内に浸透するのにより一層優位となる。そして、紙力剤添加装置9では、製造される複合型不織布WPの状態を確認して、紙力剤の量をコントロールすることも容易に行える。
なお、上記紙力剤添加装置9で紙力剤がスプレー塗布される際のパルプ繊維ウエブPWF部分の水分(紙力剤添加装置9に進入する直前の入口水分%)は120~400%となるように調整しておくのが好ましい。
また、紙力剤のスプレー塗布後、10秒以内に脱水処理しておくのが好ましい。すなわち、上記
図1により説明したように紙力剤をスプレー塗布した直下で脱水してもよいし、スプレー塗布から少し離れた位置(搬送時間10秒以内の位置)で脱水処理してもよい。要するに、紙力剤をスプレー塗布した際のパルプ繊維ウエブPWF内部への薬液の浸透拡散状態を確認して、最適な時間(ただし、スプレー塗布後10秒以内)を適宜に決定すればよい。
上記紙力剤添加装置9としては、サイズプレス、スプレー、ロールコーティング、グラビアコーティング、ロッドバーコーティング、エアナイフコーティング等、公知の装置を用いて紙力剤を添加することできる。ここで特に限定はされないが、スプレーが好ましい。
【0032】
前記パルプ繊維ウエブPWFにおける紙力剤の固形分で換算した添加量が、パルプ繊維ウエブPWFの固形重量に対して、0.05~2.0%となるように添加するのが好ましく、より好ましくは、パルプ繊維ウエブPWFの固形重量に対して0.3~1.5%となるように添加する。紙力剤の添加量が少なすぎると繊維脱落抑止の効果が低下し、逆に多すぎると繊維の脱落は抑止できるものの使用感(柔らかさ)が悪くなってしまう。
また、スプレー塗布する場合には、前記紙力剤は好ましくは濃度0.5~2.0%、より好ましくは、0.7~1.5%とし、好ましくは吐出圧力0.1~1.0Mpa、より好ましくは、0.3~0.8Mpaとしてパルプ繊維ウエブPWFにスプレー塗布する。圧力が低いと、搬送されているパルプ繊維ウエブによって起こされる風により紙力剤が飛び散ってしまい、歩留りが低下する。一方で、圧力が高すぎると、搬送されているパルプ繊維ウエブの紙面で跳ね返りが発生して、この場合も歩留りが悪化する。
そして、上記紙力剤としては、例えばポリアミドエピクロロヒドリン系、ポリアミドエポキシ系、ポリアミドポリアミン系などから少なくとも1つを選択して用いることできる。この中では、ポリアミドエピクロロヒドリン系のものを用いるのが好ましく、例えば星光PMC社製の湿潤紙力剤WS4030、WS4038、WS4027等を用いることができる。ポリアミドエピクロロヒドリン系の紙力剤を用いることで、繊維脱落抑止の効果が好適に得られると共に、複合型不織布の使用感が良いものとなる。
【0033】
更に、
図2を参照しての複合型不織布WPのパルプ繊維ウエブPWF上に、紙力剤を均一にスプレー塗布する場合の好ましい噴霧液の形状について説明する。
図2(a)で示すように、噴霧液の形状が猫の目形状CSとなるように、猫の目型の吐出口を有するスプレーノズルを用いてスプレー塗布するのが好ましい。
図2(b)はパルプ繊維ウエブの搬送方向TDに対して直角な幅方向CDに沿って、噴霧液がパルプ繊維ウエブPWFに均一塗布されるように、横長である猫の目形状CSがその両端部で互いに重なるように設定した場合を例示している。この場合、噴霧液形状に対応して、猫の目型の吐出口を有するスプレーノズルを複数、所定間隔をもって幅方向CDに直線状に配置した紙力剤添加装置9を採用することになる。
【0034】
次に、
図2(c)は噴霧液の猫の目形状CSが幅方向CDに対して傾けられ、互いの噴霧液が若干、距離をもって設定されている。このように配置するとスプレーされた噴霧液が互いに干渉することがないので好ましい。
図2(c)では隣接する猫の目形状CS間に隙間があるが、実際の製造装置1上では複合型不織布WP上のパルプ繊維ウエブPWFはTD方向に搬送される。その結果、パルプ繊維ウエブPWFの全幅にわたって、噴霧液を均一に塗布できる。
図2(c)のような噴霧液の形状を形成するためには、猫の目型の吐出口を有するスプレーノズルを幅方向CDに対して傾けて、所定間隔をもって幅方向CDに配置した紙力剤添加装置9を採用すればよい。
【0035】
更に、
図2(d)は幅方向CDに対して平行な複数列を形成すると共に、噴霧液の猫の目形状CSが前後で互い違いとなるようにした場合を例示している。この場合も、スプレーされた噴霧液が互いに干渉することがなく、パルプ繊維ウエブPWFの全幅に渡って、噴霧液を均一に塗布できる。
図2(d)のような噴霧液の形状を形成するためには、猫の目型の吐出口を有する複数のスプレーノズルを前記幅方向CDに対して平行な複数列で、互い違いとなるようにして所定間隔をもって配置してある紙力剤添加装置9を採用する。
【0036】
そして、上記サクション装置6及び紙力剤添加装置9の下流には、更に乾燥装置7が設置されており、紙力剤がスプレー塗布されたパルプ繊維ウエブPWFを備える複合型不織布WPが乾燥処理される。ここでの乾燥装置7は非圧縮型のドライヤ、好適にエアスルードライヤを採用することが好ましい。
図1で、エアスルードライヤの回転可能なドライヤ本体71は筒状体であり、その周表面には多数の貫通孔が設けてあり、図示しない熱源で加熱された熱風がドライヤ本体の外周から中心部側に向かって吸い込む構成とするのがよい。
このように連続的に製造される複合型不織布WPは乾燥後に巻取装置8のロール81に巻取られる。
【0037】
以上で説明した複合型不織布の製造装置1によると、エアレイド方式でパルプ繊維ウエブを供給する場合でも、パルプ繊維脱落が少ない複合型不織布を製造することができる。また、使用する紙力剤の歩留まりを従来よりも上げることができ、紙力剤を効率的に使用して製造コストを抑制できる。また、複合型不織布WPへの異物の混入も抑制できる。
【0038】
(実施例)
以下、上記製造装置で紙力剤を添加して製造した場合の複合型不織布について説明する。
パルプ繊維ウエブPFWへの紙力剤の添加量、その際の吐出圧、紙力剤の添加濃度、ノズルの配置、複合型不織布の坪量、搬送速度を、表1に示す通りにして製造した、実施例1~3の複合型不織布、並びにその比較例1~2及び3について、複合型不織布の脱落繊維の少なさ(パルプ繊維脱落の抑止性)および使用感(柔らかさ)について使用時の官能評価をした。
なお、比較例3は、湿式抄紙法によるパルプ繊維ウエブを使用した。また、紙力剤はエアレイド方式および湿式抄紙法の場合共に、星光PMC社製WS4030(ポリアミドエピクロロヒドリン系)を使用した。なお、いずれの複合型不織布もパルプ繊維ウエブについてはサザンパインを用いている。
1)脱落繊維の少なさ:複合型不織布使用時の脱落繊維
脱落繊維がほぼ見られない(優◎)
脱落繊維がややみられるものの、問題なく使用できるレベル(良○)
脱落繊維が多く使い難い(不可×)
2)使用感(柔らかさ):複合型不織布をワイプ用途で使用した際の使用感、柔らかさ
柔らかく使用感良好(優◎)
少し硬く感じるが問題なく使用できる(良○)
硬く使用感が劣る(不可×)
3)異物混入:複合型不織布表面の異物
1m×1mの範囲で異物が全く見られない(良○)
1m×1mの範囲で1mm2以上の白色以外の色の異物が1個以上認められる(不可×)
なお、紙力剤の歩留まり(%)は、流量計等から求めた紙力剤の添加量に対する製造した複合不織布中の紙力剤含有量(wt/wt%)であり、紙力剤の添加量を複合型不織布のパルプ繊維部分より微量窒素計を用いた紙力剤の添加量で除して求めた。
【0039】
【0040】
上記表1に示すように、実施例1~3は製品として提供できるものであるが、比較例1~3では、繊維脱落の抑止性、使用感の官能評価、異物混入のいずれかで不可であった。
上記実施例1~3は、紙力剤の固形分で換算した添加量がパルプ繊維ウエブの固形重量に対して0.05~2.0%の範囲内となるようにスプレー塗布されて複合型不織布が製造されている。また、紙力剤の濃度が0.5~2.0%、そして吐出圧力が0.1~1.0Mpaの範囲内にある。
一方、比較例1、2から、紙力剤の濃度および吐出圧により、添加量が少なすぎると繊維脱落の十分な抑止効果を期待できず、逆に添加量が多すぎると使用感が劣ってくることが確認できる。
また、実施例1~3の複合型不織布は紙力剤の歩留まりが50%以上と極めて高く、紙力剤が効率的に使用され、効果的に機能していることも確認できる。なお、比較例3は湿式抄紙法によるパルプ繊維ウエブを使用したので、異物混入の抑止が困難であることが確認された。
【0041】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 複合型不織布の製造装置
2 エアレイド装置
3 スパンボンド不織布供給装置
4 サクション装置
5 水流交絡装置
6 サクション装置
7 乾燥装置
8 巻取装置
9 紙力剤添加装置
21 解繊機
22 ダクト
23 エアレイドホッパ
24 積層位置
28 挟持ローラ
30 プレウエット装置
31 噴霧ノズル
32 サクション装置
41 サクション装置本体
42 サクション部
43 搬送ワイヤ
51 ウォータジェットヘッド
52 サクション装置
55 搬送ワイヤ
SW スパンボンド不織布
PF パルプ繊維
PFW パルプ繊維ウエブ
PWeb 予備的積層体(積層ウエブ)
WP 複合型不織布
TD 搬送方向
CD 幅方向
CS 猫の目形状(噴霧液の形状)