(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】光検出装置
(51)【国際特許分類】
G01J 1/42 20060101AFI20240328BHJP
G01J 11/00 20060101ALI20240328BHJP
H01L 31/107 20060101ALI20240328BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20240328BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
G01J1/42 H
G01J11/00
H01L31/10 B
H01L31/10 G
H01L27/146 F
(21)【出願番号】P 2019567164
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2019002350
(87)【国際公開番号】W WO2019146723
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018011826
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人 科学技術振興機構イノベーションハブ構築支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100206966
【氏名又は名称】崎山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆
(72)【発明者】
【氏名】枦 達也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祥仁
(72)【発明者】
【氏名】牧野 健二
(72)【発明者】
【氏名】中村 重幸
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0232827(US,A1)
【文献】特開2011-209214(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088479(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/042734(WO,A1)
【文献】特表2008-542706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/42 - G01J 1/46
G01J 1/00 - G01J 1/02
G01J 11/00
G01T 1/20
G01T 1/24
H01L 27/14 - H01L 27/148
H01L 31/00 - H01L 31/0232
H01L 31/08 - H01L 31/119
H04N 5/30 - H04N 5/33
H04N 23/11
H04N 23/20 - H04N 23/30
H04N 25/00
H04N 25/20 - H04N 25/61
H04N 25/615- H04N 25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエンチング回路に接続されたガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードが2次元配列されている、化合物半導体からなるアバランシェフォトダイオードアレイ基板と、
前記アバランシェフォトダイオードアレイ基板が実装されている回路基板と、を備え、
前記回路基板は、前記複数のアバランシェフォトダイオードに対応して該回路基板に2次元配列されている複数の時間計測回路と、前記複数の時間計測回路にクロック信号を供給するクロックドライバと、を有し、
各前記時間計測回路は、直列に接続した複数の遅延素子からなるディレイラインを含むディレイライン部を有し、前記ディレイラインの動作結果から、対応する前記アバランシェフォトダイオードからパルス信号が該時間計測回路に入力されたタイミングを示す時間情報を取得し、
前記ディレイライン部は、
前記対応するアバランシェフォトダイオードから出力された前記パルス信号が該時間計測回路に入力されたことに応じて前記ディレイラインの動作を開始し、
前記ディレイラインの動作開始後、前記クロックドライバからの前記クロック信号が該時間計測回路に入力されたことに応じて前記ディレイラインの動作を停止し、
前記ディレイラインの動作によって前記クロック信号の周期よりも短い時間間隔を検出し、
各前記時間計測回路は、
前記クロック信号をカウントするカウンタを更に有し、
前記カウンタの動作結果と前記ディレイラインの動作結果とから、前記対応するアバランシェフォトダイオードからパルス信号が入力されたタイミングを示す時間情報を取得し、
前記回路基板は、前記時間計測回路ごとに、メモリと、該時間計測回路を制御する制御回路とを有し、
前記制御回路は、当該制御回路にリセット信号が入力されたことに応じて対応する前記時間計測回路をリセットすると共に、当該制御回路にストップ信号が入力されたことに応じて前記カウンタへの前記クロック信号の入力を停止し、
前記リセット信号及び前記ストップ信号は、前記クロック信号に同期しており、
前記ディレイライン部は、前記対応する時間計測回路に前記リセット信号が入力された後に前記対応するアバランシェフォトダイオードから出力された前記パルス信号が該時間計測回路に入力されてから、前記クロックドライバからの前記クロック信号が該時間計測回路に入力されるまでに動作した前記遅延素子の数を前記メモリに格納し、
前記カウンタは、
前記ディレイラインの動作が停止したことに応じて動作を開始し、前記ストップ信号の入力に応じて動作を停止し、前記ディレイラインの動作が停止してから、前記ストップ信号が入力されるまでにカウントした前記クロック信号の数を前記メモリに格納する、光検出装置。
【請求項2】
前記アバランシェフォトダイオードアレイ基板の厚さ方向から見て、
前記複数の時間計測回路は、前記複数のアバランシェフォトダイオードが2次元配列されている光検出領域と重なる領域に2次元配列され、
前記クロックドライバは、前記光検出領域と重ならない領域に配置されている、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記クエンチング回路は、アクティブクエンチング回路であり、前記回路基板に形成されている、請求項1又は2に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記アバランシェフォトダイオードアレイ基板と前記回路基板とは、バンプ電極によって接続されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記回路基板は、シリコン基板を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のアバランシェフォトダイオードが2次元配列されている光検出装置が知られている(たとえば、非特許文献1)。複数のアバランシェフォトダイオードは、ガイガーモードで動作する。複数のアバランシェフォトダイオードにおけるパルス信号の発生は、複数の時間計測回路を用いて検出される。複数の時間計測回路は、クロックドライバから供給されたクロック信号に応じて動作する。この光検出装置では、複数のアバランシェフォトダイオードに対応して、複数の時間計測回路が2次元配列されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Brian F.Aull et al. 「Geiger-Mode Avalanche Photodiodes for Three-Dimensional Imaging」 LINCOLN LABORATORY JOURNAL VOLUME 13, NUMBER 2, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の時間計測回路が2次元配列されている構成では、行ごと又は列ごとに各時間計測回路へクロック信号が供給される。この場合、同一行又は同一列に配列されている複数の時間計測回路について、クロックドライバから各時間計測回路までの配線距離は一定ではない。各時間計測回路に供給されるクロック信号の波形は、クロックドライバから当該時間計測回路までの配線長が長いほど崩れやすい。具体的には、クロックドライバから時間計測回路までの配線長が長いほど、当該時間計測回路においてクロック信号が下限値から上限値に達するまでの時間、および、上限値から下限値に達するまでの時間が長くなりやすい。クロック信号が下限値から上限値に達するまでの時間は、クロック信号の立ち上がり時間である。クロック信号が上限値から下限値に達するまでの時間は、クロック信号の立ち下がり時間である。
【0005】
上記光検出装置では、各アバランシェフォトダイオードにおけるパルス信号の発生を検出する時間分解能を向上するために、比較的高い周波数(たとえば、500MHz)のクロック信号がクロックドライバから各時間計測回路に供給される。クロック信号の周波数が比較的高い、すなわち、クロック信号の周期が短いと、クロック信号の立ち上がりと立ち下がりとの間隔が狭い。この結果、上記波形の崩れによって当該時間計測回路に入力されるクロック信号の立ち上がり及び立ち下がりが、当該時間計測回路で適切に認識されないおそれがある。クロック信号の立ち上がり及び立ち下がりが時間計測回路で適切に認識されなければ、当該時間計測回路では、アバランシェフォトダイオードからのパルス信号が当該時間計測回路に入力されたタイミングを示す時間情報が適切に取得されない。各時間計測回路に上記パルス信号が入力されたタイミングを示す時間情報が適切に取得されなければ、対応するアバランシェフォトダイオードにおけるパルス信号の発生が適切に検出されない。
【0006】
光検出装置の検出面の面積が大きいほど、クロックドライバから各時間計測回路までの配線距離の差も大きい。このため、クロック信号の周期が比較的短い場合には、光検出装置の検出面の面積が大きいほど、時間計測が適切になされない画素回路が増加するおそれがある。
【0007】
光検出装置では、たとえば、近赤外(NIR)又は短波長赤外(SWIR)の波長領域での感度特性を高めるために、アバランシェフォトダイオードが化合物半導体により構成されることがある。この場合、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードは、化合物半導体によって形成された半導体基板に配列される。アバランシェフォトダイオードが化合物半導体により構成されている光検出装置では、熱に応じてダークカウントレートが増加するおそれがある。クロックドライバが供給するクロック信号の周波数が高いほど、電力消費が大きく、当該クロックドライバから発生する熱量も増加する。このため、上記光検出装置では、ダークカウント増加により誤ったタイミングで時間計測が行われるおそれがある。
【0008】
本発明の一態様は、ダークカウントの増加による計測時間の誤検出及び電力消費が抑制され得ると共に、計測時間の精度の向上と光検出面の大型化が両立され得る光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る光検出装置は、アバランシェフォトダイオードアレイ基板と、回路基板と、を備えている。アバランシェフォトダイオードアレイ基板は、化合物半導体からなる。回路基板には、アバランシェフォトダイオードアレイ基板が実装されている。アバランシェフォトダイオードアレイ基板には、複数のアバランシェフォトダイオードが2次元配列されている。複数のアバランシェフォトダイオードは、ガイガーモードで動作する。各アバランシェフォトダイオードは、クエンチング回路に接続されている。回路基板は、複数の時間計測回路と、クロックドライバと、を有している。複数の時間計測回路は、複数のアバランシェフォトダイオードに対応して回路基板に2次元配列されている。クロックドライバは、複数の時間計測回路にクロック信号を供給する。各時間計測回路は、直列に接続した複数の遅延素子からなるディレイラインを含むディレイライン部を有する。各時間計測回路は、ディレイラインの動作結果から、時間情報を取得する。この取得された時間情報は、対応するアバランシェフォトダイオードからパルス信号が入力されたタイミングを示す時間情報である。ディレイライン部は、対応するアバランシェフォトダイオードから出力されたパルス信号が該時間計測回路に入力されたことに応じてディレイラインの動作を開始する。ディレイライン部は、クロックドライバからのクロック信号が該時間計測回路に入力されたことに応じてディレイラインの動作を停止する。ディレイライン部は、ディレイラインの動作によってクロック信号の周期よりも短い時間間隔を検出する。
【0010】
本一態様では、ディレイラインの動作によってクロック信号の周期よりも短い時間間隔が検出される。このため、クロック信号の周期が長くとも上記パルス信号の発生を検出する時間分解能が、確保され得る。クロック信号の周期が長ければ、時間計測回路に供給されるクロック信号の立ち上がりと立ち下がり間隔が広い。したがって、クロックドライバから時間計測回路までの配線長が長く、該時間計測回路に供給される上記パルス信号の立ち上がり時間および立ち下がり時間が長くても、クロック信号の立ち上がり及び立ち下がりが時間計測回路で認識されやすい。この結果、当該光検出装置は、検出面の面積が大きくとも、時間分解能を確保しつつ、各アバランシェフォトダイオードにおいてパルス信号の発生を適切に検出し得る。クロックドライバが回路基板に設けられていれば、クロックドライバから時間計測回路までの配線長が削減され得る。
【0011】
クロック信号の周波数が低減されれば、電力消費が抑えられると共に、当該クロックドライバから発生する熱量も低減され得る。この光検出装置では、クロックドライバは、アバランシェフォトダイオードアレイ基板とは別の回路基板に設けられていれる。このため、クロックドライバがアバランシェフォトダイオードと同一の基板に形成される場合よりも、クロックドライバと各アバランシェフォトダイオードとの間の距離が離れている。クロックドライバが回路基板に設けられていれるため、クロックドライバが形成される密度が緩和されている。したがって、クロックドライバで発生する熱が、アバランシェフォトダイオードに伝わり難い。このため、計測時間の誤検出が抑制され得る。
【0012】
本一態様では、各時間計測回路は、クロック信号をカウントするカウンタを更に有してもよい。各時間計測回路は、カウンタの動作結果とディレイラインの動作結果とから、対応するアバランシェフォトダイオードからパルス信号が入力されたタイミングを示す時間情報を取得してもよい。この場合、ディレイラインのみで計測できる時間よりも長い時間の計測が実現される。
【0013】
本一態様では、カウンタは、ディレイラインの動作が停止したことに応じて動作を開始し、クロックドライバからのクロック信号に同期して動作を停止してもよい。この場合、対応するアバランシェフォトダイオードからパルス信号が入力されなければ、ディレイラインが動作せずカウンタも動作しない。このため、電力の消費が低減され得る。
【0014】
本一態様では、回路基板は、時間計測回路ごとに、メモリと、該時間計測回路を制御する制御回路とを有してもよい。制御回路は、当該制御回路にリセット信号が入力されたことに応じた対応する時間計測回路のリセットと、当該制御回路にストップ信号が入力されたことに応じたカウンタへのクロック信号の入力停止とを行ってもよい。リセット信号及びストップ信号は、クロック信号に同期していてもよい。ディレイライン部は、時間計測回路がリセットされた後に対応するアバランシェフォトダイオードから出力されたパルス信号が該時間計測回路に入力されてから、クロックドライバからのクロック信号が該時間計測回路に入力されるまでに動作した遅延素子の数をメモリに格納してもよい。カウンタは、ディレイラインの動作が停止してから、ストップ信号が入力されるまでにカウントしたクロック信号の数をメモリに格納してもよい。
【0015】
本一態様では、アバランシェフォトダイオードアレイ基板の厚さ方向から見て、複数の時間計測回路は、複数のアバランシェフォトダイオードが2次元配列されている光検出領域と重なる領域に2次元配列され、クロックドライバは、光検出領域と重ならない領域に配置されていてもよい。この場合、クロックドライバで発生した熱が各アバランシェフォトダイオードに与える影響が、更に低減され得る。
【0016】
本一態様では、クエンチング回路は、アクティブクエンチング回路であり、回路基板に形成されていてもよい。半導体基板が化合物半導体で構成されている場合は、半導体基板がシリコンから構成されている場合よりもダークカウント及びアフターパルスが多く発生するおそれがある。アクティブクエンチング回路が回路基板に形成されることで、クエンチングの時間が任意で実現されやすく、ダークカウント及びアフターパルスによるノイズが低減されやすい。
【0017】
本一態様では、アバランシェフォトダイオードアレイ基板と回路基板とは、バンプ電極によって接続されていてもよい。この場合、アバランシェフォトダイオードアレイ基板と回路基板とがダイレクトボンディング等によって接続された場合に比べて、クロックドライバで発生した熱が各アバランシェフォトダイオードに与える影響が更に低減され得る。
【0018】
回路基板は、シリコン基板を含んでもよい。この場合、上記時間計測回路及びクロックドライバを有する構成の製造工程が簡易になり得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、ダークカウントの増加による計測時間の誤検出及び電力消費が抑制され得ると共に、計測時間の精度の向上と光検出面の大型化が両立され得る光検出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る光検出装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、光検出装置の断面構成を示す図である。
【
図4】
図4は、アバランシェフォトダイオードアレイ基板の光検出領域の平面図である。
【
図6】
図6は、回路基板の実装領域の平面図である。
【
図8】
図8は、時間計測回路の動作を示すタイミングチャートである。
【
図9】
図9は、グローバルクロック信号が供給される時間計測回路を示す図である。
【
図10】
図10は、各時間計測回路に供給されるグローバルクロック信号の波形の比較を示す図である。
【
図11】
図11は、各時間計測回路に供給されるグローバルクロック信号の波形の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0022】
まず、
図1から
図7を参照して、本実施形態に係る光検出装置の全体の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る光検出装置の斜視図である。
図2は、本実施形態に係る光検出装置の断面構成を示す図である。
図2では、視認性を向上するため、ハッチングが省略されている。
図3は、回路基板の平面図である。
図4は、アバランシェフォトダイオードアレイ基板の一部を示す平面図である。
図5は、回路基板の構成を示す図である。
図6は、回路基板の一部を示す平面図である。
図7は、画素回路の構成を示す図である。
【0023】
光検出装置1は、
図1に示されているように、アバランシェフォトダイオードアレイ基板10と、回路基板50を備えている。以下、「アバランシェフォトダイオード」を「APD」と称する。「アバランシェフォトダイオードアレイ基板」を「APDアレイ基板」と称する。回路基板50は、APDアレイ基板10に対向配置されている。APDアレイ基板10、回路基板50は、いずれも平面視で矩形状を呈している。
【0024】
APDアレイ基板10は、互いに対向する主面10Aと主面10Bと側面10Cを含んでいる。回路基板50は、互いに対向する主面50Aと主面50Bと側面50Cを含む。APDアレイ基板10の主面10Bは、回路基板50の主面50Aと対向している。APDアレイ基板10、回路基板50の各主面と平行な面がXY軸平面であり、各主面に直交する方向がZ軸方向である。
【0025】
回路基板50の側面50Cは、APDアレイ基板10の側面10CよりもXY軸平面方向の外側に位置している。すなわち、平面視で、回路基板50の面積は、APDアレイ基板10の面積よりも大きい。APDアレイ基板10の側面10Cと回路基板50の側面50Cは、面一とされてもよい。この場合、平面視で、APDアレイ基板10の外縁と、回路基板50の外縁とは、一致している。
【0026】
APDアレイ基板10の主面10A上にガラス基板を配置してもよい。ガラス基板とAPDアレイ基板10とは、光学接着剤により光学的に接続される。ガラス基板は、APDアレイ基板10上に直接形成されていてもよい。APDアレイ基板10の側面10Cとガラス基板の側面は、面一とされてもよい。この場合、平面視で、APDアレイ基板10の外縁と、ガラス基板の外縁とは、一致する。また、APDアレイ基板10の側面10Cと回路基板50の側面50Cとガラス基板の側面は、面一とされてもよい。この場合、平面視で、APDアレイ基板10の外縁と、回路基板50の外縁と、ガラス基板の外縁とは、一致する。
【0027】
APDアレイ基板10は、化合物半導体からなるN型の半導体基板11を有している。半導体基板11は、主面10Aを形成するInPからなる基板12を有する。基板12上に、主面10A側から主面10B側へ順に、InPからなるバッファ層13、InGaAsPからなる吸収層14、InGaAsPからなる電界緩和層15、InPからなる増倍層16が形成されている。吸収層14は、InGaAsからなってもよい。半導体基板11は、GaAs,InGaAs,AlGaAs,InAlGaAsなどから形成されてもよい。
【0028】
図2に示されているように、APDアレイ基板10は、回路基板50に実装されている。APDアレイ基板10と回路基板50とは、バンプ電極70によって接続されている。具体的には、APDアレイ基板10は、APDアレイ基板10の厚さ方向から見て、
図3に示されているように回路基板50の中央に配置された実装領域α上においてバンプ電極70で接続されている。本実施形態では、実装領域αは、矩形状を有している。
【0029】
APDアレイ基板10は、ガイガーモードで動作する複数のAPD20を有する。複数のAPD20は、
図4に示されているように、APDアレイ基板10の厚さ方向から見て当該半導体基板11の光検出領域βに2次元配列されている。光検出領域βは、矩形状を有しており、APDアレイ基板10の厚さ方向から見て、回路基板50の実装領域αと重なる。各APD20は、APDアレイ基板10の厚さ方向から見て、絶縁部21に囲まれている。各APD20は、主面10B側から増倍層16に、不純物がドープされることによって形成されたP型のアクティブエリア22を有している。ドープされる不純物は、たとえば、Zn(亜鉛)である。絶縁部21は、たとえば、ウェットエッチング又はドライエッチングで形成されたトレンチ溝内に、ポリイミド膜を形成することで構成されている。アクティブエリア22は、厚さ方向から見て円形状に形成されており、絶縁部21は、アクティブエリア22の縁に沿って円環状に形成されている。絶縁部21は、APDアレイ基板10の厚さ方向において、半導体基板11の主面10B側から基板12に達している。
【0030】
APDアレイ基板10は、絶縁層23及び複数の電極パッド24を有している。絶縁層23は、主面10B側において半導体基板11を覆っている。電極パッド24は、APD20ごとに主面10B側において半導体基板11上に形成されており、アクティブエリア22に接している。電極パッド24は、絶縁層23から露出しており、バンプ電極70を通して、回路基板50と接続されている。
【0031】
回路基板50は、主面50Aと主面50Bとを有しており、バンプ電極70を通して、主面50A側でAPDアレイ基板10と接続されている。回路基板50は、
図5に示されているように、インターフェース回路31、メモリ32、PLL(Phase Locked Loop)33と、ロウランダムアクセスデコーダ34と、クロックドライバ35と、複数の画素回路36と、カラムランダムアクセスデコーダ37と、I/Oポート38とを有する。
【0032】
インターフェース回路31は、たとえば、SPI(Serial Peripheral Interface)バスに対応している。インターフェース回路31は、外部から入力されたSCLK(Serial Clock)、CS(Chip Select)、MOSI(Master Output / Slave Input)、MISO(Master Input / Slave Output)などのデジタル信号を受信し、信号に含まれるレジスタの設定情報をメモリ32に格納する。
【0033】
PLL33は、外部から入力されたマスタークロック(MCLK:Master Clock)及びメモリ32に格納されたデータに基づいてグローバルクロック信号を生成し、生成されたグローバルクロック信号をクロックドライバ35へ送信する。PLL33は、プログラマブル分周器を含み、メモリ32に格納されたデータを参照して分周数を設定する。すなわち、外部からインターフェース回路31への入力に応じて、PLL33の分周数は任意の値に設定され得る。本実施形態では、外部から入力されたマスタークロックの周波数は10MHzであり、PLL33で生成されたグローバルクロック信号の周波数は200MHzである。PLL33は、グローバルクロック信号と共に各画素回路36の時間計測回路40を制御する制御バイアスを出力する。
【0034】
クロックドライバ35は、各画素回路36にグローバルクロック信号を供給する。複数の画素回路36は、それぞれ、バンプ電極70を通して、対応するAPD20に電気的に接続されている。各画素回路36には、対応するAPD20からのパルス信号が入力され、各画素回路36は、入力された当該パルス信号を処理する。各画素回路36で処理された信号は、ロウランダムアクセスデコーダ34及びカラムランダムアクセスデコーダ37からの信号に応じたタイミングで、I/Oポート38へ出力される。
【0035】
複数の画素回路36は、APDアレイ基板10の厚さ方向から見て、光検出領域βと重なる実装領域αに各APD20に対応して2次元配列されている。PLL33及びクロックドライバ35は、
図3に示されているように、APDアレイ基板10の厚さ方向から見て、光検出領域βと重ならない非実装領域γに配置されている。
【0036】
回路基板50は、
図2に示されているように、実装領域αにおいて、シリコン基板51と、シリコン基板51上に積層された配線層52とを有している。配線層52は、各画素回路36において、電極パッド54、複数のビア55、互いに異なる層に配置された複数のメタル層56、MOSFET(Metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)を形成する複数のゲート57、複数の読み出しバス58、及び絶縁層59を有する。電極パッド54は、主面50A側において、画素回路36ごとに形成されており、バンプ電極70を通してAPDアレイ基板10の電極パッド24と接続されている。すなわち、電極パッド54は、
図6に示されているように、主面50A側で2次元配列されている。
【0037】
読み出しバス58は、I/Oポート38に接続されている。読み出しバス58は、主面50Bよりも主面50Aの近くに配置されている。このため、この配置は、読み出しバス58に発生する寄生容量を低減し得る。したがって、検出器の検出面が大きい場合でも、画素回路からの信号出力は、遅延を減らして読み出され得る。読み出しバス58に発生する上記寄生容量は、シリコン基板51及びその周辺に形成される回路の影響により、発生する。
【0038】
複数のビア55は、絶縁層59を貫通して形成され、電極パッド54と複数のメタル層56と複数のゲート57とを電気的に接続している。各APD20は、電極パッド24、バンプ電極70、電極パッド54、複数のビア55、複数のメタル層56を通って、対応する画素回路36のゲート57に接続されている。シリコン基板51には、画素回路36ごとに複数のウエル60が形成されている。複数のウエル60には、各ゲート57に対応するソース61とドレイン62が形成されている。
【0039】
各画素回路36は、
図7に示されているように、時間計測回路40と、アクティブクエンチング回路41と、制御回路42と、読み取り可能なメモリ43とを有している。すなわち、時間計測回路40ごとに、アクティブクエンチング回路41と、制御回路42と、メモリ43とが配置されている。複数の時間計測回路40は、APDアレイ基板10の厚さ方向から見て、回路基板50の実装領域αに2次元配列されている。少なくとも時間計測回路40は、ゲート57,ソース61,及びドレイン62によって構成されるMOSFETによって構成されている。
【0040】
アクティブクエンチング回路41は、回路基板50に形成されており、電極パッド24、バンプ電極70、及び電極パッド54を通して、対応するAPD20に接続されている。対応するAPD20から出力されたパルス信号は、アクティブクエンチング回路41を通って、制御回路42に入力される。アクティブクエンチング回路41には、不図示の配線からクエンチング時間を調整するバイアスも印加されている。
【0041】
制御回路42には、対応するAPD20からのパルス信号と、クロックドライバ35からの供給されたグローバルクロック信号と、リセット信号及びストップ信号とが入力される。リセット信号及びストップ信号は、たとえば、回路基板50を制御する外部のボード上で生成される。制御回路42は、時間計測回路40に、対応するAPD20からのパルス信号とクロックドライバ35からのグローバルクロック信号を供給する。制御回路42は、リセット信号を受けて対応する時間計測回路40をリセットし、APD20からのパルス信号を受けて該時間計測回路40の動作の開始を指示する。リセット信号は、制御回路42及び該時間計測回路40をリセットして待機状態にする。制御回路42は、回路基板50の外部のボードから、対応する時間計測回路40の動作の停止を指示するストップ信号が入力されたことに応じて、コースカウンタ部45へのクロック信号の入力を停止させる。ストップ信号は、入力されたグローバルクロック信号に同期している。
【0042】
メモリ43には、時間計測回路40から出力された信号が格納される。メモリ43に格納されている信号は、ロウランダムアクセスデコーダ34及びカラムランダムアクセスデコーダ37からの信号に応じて、読み出しバス58を通ってI/Oポート38へ出力される。
【0043】
各時間計測回路40は、グローバルクロック信号の周期よりも短い時間間隔を検出するファイン部44と、グローバルクロック信号をカウントするコースカウンタ部45とを有する。ファイン部44は、ディレイライン部に含まれる。コースカウンタ部45は、カウンタに含まれる。各時間計測回路40は、ファイン部44の動作結果とクロックドライバ35で生成されたグローバルクロック信号とに基づいて、対応するAPD20からパルス信号が入力されたタイミングを示す時間情報を取得する。本実施形態では、各時間計測回路40は、メモリ43に格納されているファイン部44の動作結果とコースカウンタ部45の動作結果とによって、対応するAPD20からパルス信号が入力されてからストップ信号が入力されるまでの時間を計測する。これにより、ストップ信号に対して、対応するAPD20からパルス信号が入力されたタイミングを導出することができる。
【0044】
ファイン部44は、複数の遅延素子46が直列に接続されたディレイライン47と、エンコーダ48とを含んでいる。本実施形態では、複数の遅延素子46は、直列に接続された16個のバッファである。各遅延素子46は、同一の遅延量を有する。同一の遅延量には、時間計測回路40において計測する時間に影響を与えない程度の誤差が含まれる。各遅延素子46における遅延量は、グローバルクロック信号の周期よりも短い時間間隔である。各遅延素子46は、PLL33から供給された制御バイアスによって制御される。エンコーダ48は、ディレイライン47で遅延した遅延量をメモリ43に格納する。すなわち、ディレイライン47の動作結果がメモリ43に格納される。コースカウンタ部45は、グローバルクロック信号をカウントし、カウントした結果をメモリ43に格納する。すなわち、コースカウンタ部45の動作結果がメモリ43に格納される。
【0045】
図8を参照して、時間計測回路40の具体的な動作について説明する。制御回路42は、リセット信号Resetの入力に応じて、グローバルクロック信号Global CLKの立ち上がりと同期してリセットされる(
図8中、タイミングt1)。リセット信号Resetは、レーザーなどの光源の発光を示しており、回路基板50を制御するボード上で生成される。ファイン部44は、リセット信号Resetに応じて制御回路42がリセットされた後、当該ファイン部44に接続されているAPD20から出力されたパルス信号SPADINが時間計測回路40に入力されたことに応じて、ディレイライン47の動作を開始する(
図8中、タイミングt2)。ファイン部44は、ディレイライン47の動作を開始した後のグローバルクロック信号Global CLKが時間計測回路40に入力されたことに応じて、ディレイライン47の動作を停止する(
図8中、タイミングt3)。
【0046】
ファイン部44は、APD20から出力されたパルス信号が入力されてから、次のグローバルクロック信号の立ち上がりが入力されるまで、ディレイライン47の動作を継続する。具体的には、ファイン部44では、対応するAPD20から出力されたパルス信号が時間計測回路40に入力され、ディレイライン47をパルスが伝搬する。伝搬するパルスがディレイライン47の端に到達するより前に、グローバルクロックの立ち上がりが入力される。
【0047】
エンコーダ48は、ディレイライン47からの信号(
図8のDelay Lineで示す信号)に応じて変化する信号(
図8のFine Encodeで示す信号)を生成し、ディレイライン47の遅延素子46が動作した段数をカウントしてバイナリの信号へ変換する。各遅延素子46における遅延量は、グローバルクロック信号の周期よりも短い時間間隔であるため、ファイン部44は、ディレイライン47の動作によってグローバルクロック信号の周期よりも短い時間間隔を検出する。具体的には、エンコーダ48は、対応する時間計測回路40がリセットされた後に、対応するAPD20から出力されたパルス信号が上記時間計測回路40に入力されてから、グローバルクロック信号が上記時間計測回路40に入力されるまでに動作した遅延素子の数をカウントする。
図8に示されている例では、エンコーダ48は、動作した遅延素子46の数を4とする。
【0048】
エンコーダ48は、動作した遅延素子46の数をメモリ43に格納する。エンコーダ48は、動作した遅延素子46の数をバイナリで表す。すなわち、エンコーダ48は、ディレイライン47の動作が開始されてから停止されるまでの時間間隔をバイナリで表現し、ユーザーはそのバイナリ値と遅延素子46の遅延量を掛けることで、計測時間を知ることができる。エンコーダ48は、バイナリデータをメモリ43に格納する。
【0049】
コースカウンタ部45は、ディレイライン47の動作が停止すると動作を開始する。コースカウンタ部45は、動作を開始すると、ストップ信号が制御回路42に入力されるまで、グローバルクロック信号の立ち上がりをカウントする。具体的には、コースカウンタ部45は、グローバルクロック信号の立ち上がりに応じて変化する信号Coarse Countを生成し、グローバルクロック信号のカウントを行う。
【0050】
コースカウンタ部45は、制御回路42の制御によって、動作を停止する。換言すれば、制御回路42は、回路基板50の外部からストップ信号Stopが入力されると(
図8中タイミングt4)、コースカウンタ部45へのグローバルクロック信号の入力を停止する。すなわち、本実施形態では、コースカウンタ部45は、ディレイライン47の動作が停止したことに応じて動作を開始し、ストップ信号が制御回路42に入力されたことに応じて動作を停止する。ストップ信号はグローバルクロック信号と同期しているため、コースカウンタ部45は、グローバル信号に同期して動作を停止する。
【0051】
図8に示されている例では、コースカウンタ部45は、グローバルクロック信号の立ち上がりの数を5とする。コースカウンタ部45は、カウントした数をメモリ43に格納する。換言すれば、コースカウンタ部45は、ディレイライン47の動作が停止してから、ストップ信号が入力されるまでにカウントしたグローバルクロック信号の数をメモリ43に格納する。コースカウンタ部45でカウントされた数に、グローバルクロック信号の周期を掛けることで、ファイン部44のディレイライン47が停止してからストップ信号が入力されるまでの時間を演算できる。
【0052】
以上のように、時間計測回路40は、ファイン部44において、APD20からのパルス信号が入力されてからグローバルクロック信号の立ち上がりが入力されるまでの遅延量、すなわち時間間隔、をメモリ43に格納している。時間計測回路40は、コースカウンタ部45において、ファイン部44のディレイライン47の動作が停止してからストップ信号が入力されるまでのグローバルクロック信号の立ち上がりの数をメモリ43に格納している。すなわち、時間計測回路40は、ファイン部44におけるディレイラインの動作結果とコースカウンタ部45の動作結果とから、対応するAPD20からパルス信号が入力されてからストップ信号が入力されるまでの時間を計測している。したがって、時間計測回路40は、ストップ信号に対してAPD20からパルス信号が入力されたタイミングを示す時間情報を取得する。
【0053】
次に、
図9から
図11を参照して、光検出装置1の作用効果について説明する。
図9は、グローバルクロック信号が供給される時間計測回路を示している。
図10及び
図11は、各時間計測回路に供給されるグローバルクロック信号の波形の比較を示している。
【0054】
クロックドライバ35は、実装領域αに2次元配列された複数の時間計測回路40の行ごとにグローバルクロック信号を供給する。
図9は、100μmのピッチで同じ行に配列されたN個の時間計測回路40
1~40
Nとクロックドライバ35との電気的な接続関係を示している。「N」は、任意の整数である。
図9に示されているように、同じ行に配列された時間計測回路40
1~40
Nは、クロックドライバ35に接続された1つのラインによって互いに並列に接続されている。時間計測回路40
1は、N個の時間計測回路40
1~40
Nの中で、クロックドライバ35との配線距離が最も小さい。時間計測回路40
Nは、N個の時間計測回路40
1~40
Nの中で、クロックドライバ35との配線距離が最も大きい。
【0055】
図10及び
図11は、クロックドライバ35から出力されるグローバルクロック信号の周期が5ns(周波数200MHz)である場合に、時間計測回路40
1と時間計測回路40
Nとに供給されるグローバルクロック信号の波形を示している。
図10で示したグラフにおいて、横軸の単位は位相(ns)であり、縦軸の単位は電圧(V)である。
【0056】
図10は、時間計測回路40
1と時間計測回路40
32との比較を示している。
図11は、時間計測回路40
1と時間計測回路40
128との比較を示している。換言すれば、
図10は、同じ行に配列された時間計測回路40のうち、クロックドライバ35に最も近い時間計測回路40に供給されるグローバルクロック信号の波形と、クロックドライバ35から32番目の時間計測回路40に供給されるグローバルクロック信号の波形との比較を示している。
図11は、同じ行に配列された時間計測回路40のうち、クロックドライバ35に最も近い時間計測回路40に供給されるグローバルクロック信号の波形と、クロックドライバ35から128番目の時間計測回路40に供給されるグローバルクロック信号の波形との比較を示している。
【0057】
図10及び
図11に示されているように、時間計測回路40
1と時間計測回路40
32とにおいて供給されるグローバルクロック信号の波形の違いよりも、時間計測回路40
1と時間計測回路40
128とにおいて供給されるグローバルクロック信号の波形の違いの方が大きい。このように、クロックドライバ35から時間計測回路40までの距離が離れるほど、時間計測回路40に供給されるグローバルクロック信号の波形の崩れが顕著に表れる。
【0058】
グローバルクロック信号の周波数が200MHzの場合、立ち上がりから立ち下がりまでの周期が2.5nsである。時間計測回路40128では、電圧が下限値から上限値に達するまでの時間、すなわち立ち上がり時間、及びに上限値から下限値に達するまでの時間、すなわち立ち下がり時間、が約2.5nsである。したがって、グローバルクロック信号の周波数が200Hzよりも高く設定されると、立ち上がり時間及び立ち下がり時間よりも周期が短いために、グローバルクロック信号の立ち上がりが適切に時間計測回路40又は制御回路42で適切に認識されないおそれがある。すなわち、時間計測回路40128では、波形の崩れの影響によって、APD20からパルス信号が時間計測回路40に入力された後にディレイライン47が動作を停止してコースカウンタ部45が動作を開始するタイミングが適切に検出されないおそれがある。換言すれば、100μmのピッチで時間計測回路40が配列された場合、クロックドライバ35から128番目以降の時間計測回路40を有する画素では、APD20におけるパルス信号の到達時刻が適切に記録されないおそれがある。
【0059】
光検出装置1では、各時間計測回路40が、ディレイライン47の動作結果から、対応するAPD20からパルス信号が該時間計測回路40に入力されたタイミングを示す時間情報を取得する。ファイン部44は、ディレイライン47の動作によってグローバルクロック信号の周期よりも短い時間間隔を検出する。
【0060】
このように、ディレイライン47の動作によってグローバルクロック信号の周期よりも短い時間間隔が検出されるため、グローバルクロック信号の周期が長くとも、上記パルス信号の発生を検出する時間分解能が確保され得る。グローバルクロック信号の周期が長ければ、時間計測回路40に供給されるグローバルクロック信号の立ち上がりと立ち下がり間隔が広い。このため、クロックドライバ35から時間計測回路40までの配線長が長く、それによって、該時間計測回路40に供給される上記パルス信号の立ち上がり時間および立ち下がり時間が長くても、グローバルクロック信号の立ち上がり及び立ち下がりが時間計測回路40で認識されやすい。すなわち、計測時間の精度の向上と光検出面の大型化とを両立することで、光検出精度が向上し得る。
【0061】
たとえば、
図11に示した例では、グローバルクロック信号の周波数が200MHzに抑えられれば、100μmのピッチで時間計測回路40が配置されている場合にクロックドライバ35から128番目までの時間計測回路40は、波形の崩れによる影響を受け難い。したがって、当該光検出装置は、検出面の面積が大きくとも、時間分解能を確保しつつ、各APD20においてパルス信号の発生を適切に検出し得る。クロックドライバ35が回路基板50に設けられていれば、クロックドライバ35から時間計測回路40までの配線長が削減され得る。
【0062】
グローバルクロック信号の周波数が低減されれば、電力消費が抑えられると共に、当該クロックドライバ35から発生する熱量も低減され得る。クロックドライバ35はAPDアレイ基板10とは別の回路基板50に設けられていれるため、クロックドライバ35がAPD20と同一の基板に形成される場合よりも、クロックドライバ35と各APD20との間の距離が離れている。クロックドライバ35が回路基板50に設けられていれるため、クロックドライバ35を形成される密度が緩和されている。したがって、クロックドライバ35で発生する熱が、APD20に伝わり難い。このため、計測時間の誤検出が抑制され得る。
【0063】
各時間計測回路40は、グローバルクロック信号をカウントするコースカウンタ部45を有する。各時間計測回路40は、コースカウンタ部45の動作結果とディレイライン47の動作結果とから、対応するAPD20からパルス信号が入力されたタイミングを示す時間情報を取得する。このため、ディレイラインのみで計測できる時間よりも長い時間の計測が実現される。
【0064】
コースカウンタ部45は、ディレイライン47の動作が停止したことに応じて動作を開始し、クロックドライバ35からのグローバルクロック信号に同期して動作を停止する。この場合、対応するAPD20からパルス信号が入力されなければ、ディレイライン47が動作せずコースカウンタ部45も動作しないため、電力の消費が低減され得る。
【0065】
APDアレイ基板10の厚さ方向から見て、複数の時間計測回路40は、複数のAPD20が2次元配列されている光検出領域βと重なる実装領域αに2次元配列され、クロックドライバ35は、光検出領域βと重ならない非実装領域γに配置されている。このため、クロックドライバ35で発生した熱が各APD20に与える影響が、更に低減され得る。
【0066】
APD20に接続されるクエンチング回路は、アクティブクエンチング回路41であり、回路基板50に形成されている。半導体基板11が化合物半導体で構成されている場合は、半導体基板11がシリコンから構成されている場合よりもダークカウント及びアフターパルスが多く発生するおそれがある。アクティブクエンチング回路41が回路基板50に形成されることで、クエンチングの時間が任意で実現されやすく、ダークカウント及びアフターパルスによるノイズが低減されやすい。
【0067】
APDアレイ基板10と回路基板50とは、バンプ電極70によって接続されている。このため、APDアレイ基板10と回路基板50とがダイレクトボンディング等によって接続された場合に比べて、クロックドライバ35で発生した熱が各APD20に与える影響が更に低減され得る。
【0068】
回路基板50は、シリコン基板51を含んでもいる。この場合、上記時間計測回路40及びクロックドライバ35を有する構成の製造工程が簡易になり得る。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0070】
本実施形態では、コースカウンタ部45は、ファイン部44のディレイライン47の動作が停止してからストップ信号が入力されるまでのグローバルクロック信号の立ち上がりの数をカウントした。しかし、コースカウンタ部45は、制御回路42にリセット信号が入力されてからディレイライン47の動作が停止するまでのグローバルクロック信号の立ち上がりの数をカウントしてもよい。換言すれば、コースカウンタ部45は、
図8中のタイミングt1からタイミングt3までのグローバルクロック信号の立ち上がりの数をカウントしてもよい。この場合、当該カウントに基づいてAPD20からのパルス信号が入力されてからグローバルクロック信号の立ち上がりが入力されるまでの時間間隔が、コースカウンタ部45の動作結果から減算される。これによって、リセット信号が入力されてからAPD20からのパルス信号が入力されるまでの時間間隔を演算できる。すなわち、リセット信号が入力されてからAPD20からのパルス信号が入力されるまでの時間間隔は、ファイン部44での動作結果をコースカウンタ部45の動作結果から減算することで演算され得る。この場合、各時間計測回路40は、リセット信号に対してAPD20からのパルス信号が入力されたタイミングを示す時間情報を取得している。
【0071】
時間計測回路40は、コースカウンタ部45を有していなくてもよい。この場合、ファイン部44は、APD20からのパルス信号が入力されてからストップ信号が入力されるまでの時間間隔を検出する。すなわち、この場合も、各時間計測回路40は、ストップ信号に対してAPD20からのパルス信号が入力されたタイミングを示す時間情報を取得している。この場合、時間計測回路の構成を簡易にすることができる。
【0072】
本実施形態では、時間計測回路40は、各パルス信号の立ち上がりに基づいて動作したが、立ち下がりに基づいて動作してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…光検出装置、10…APDアレイ基板、20…APD、35…クロックドライバ、40…時間計測回路、44…ファイン部、45…コースカウンタ部、50…回路基板、70…バンプ電極、α…実装領域、β…光検出領域、γ…非実装領域。