(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】遮蔽カーテン及びX線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/18 20180101AFI20240328BHJP
【FI】
G01N23/18
(21)【出願番号】P 2020008419
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博之
(72)【発明者】
【氏名】中本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】藤川 正太郎
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102290108(CN,A)
【文献】登録実用新案第3175410(JP,U)
【文献】特開2016-109622(JP,A)
【文献】特開2012-058082(JP,A)
【文献】特開2006-343187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0178759(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01T 1/00 - G01T 7/12
G21K 1/00 - G21K 7/00
G21F 1/00 - G21F 7/06
A61B 6/00 - A61B 6/58
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線検査装置に設けられてX線を遮蔽する遮蔽カーテンであって、
膜状の膜状部材を備え、
前記膜状部材は、該膜状部材が鉛直に垂れ下がるように保持される被保持部と、部分的に開閉可能な可動片と、前記可動片を支持する本体膜部と、前記可動片を形成するように該膜状部材を切断する切断線と、を有し、
前記切断線は、前記膜状部材の下端縁から上方に向かって延びる縦切断線と、前記縦切断線に連続するとともに該縦切断線に交差する方向に向かって延びる横切断線と、を有し、
前記可動片が開く際に前記本体膜部との境界となる変形境界線が、鉛直方向下側に向かうにしたがって該可動片の領域が広がる方向に向かうように傾斜していることを特徴とする遮蔽カーテン。
【請求項2】
前記切断線は
、前記縦切断線に連続するとともに該縦切断線に交差する方向の両側に向かって延びる一対の横切断線と、を有することにより、一対の前記可動片を形成し、
前記変形境界線が、鉛直方向下側に向かうにしたがって前記縦切断線から離れるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の遮蔽カーテン。
【請求項3】
前記横切断線は、前記縦切断線から離れるにしたがって上側に向かう傾斜を有していることを特徴とする請求項
1又は2に記載の遮蔽カーテン。
【請求項4】
前記膜状部材とは別体に形成され、鉛直に垂れ下がるように支持される補助膜状部材をさらに備え、
前記補助膜状部材は、前記膜状部材に対し、前記縦切断線と前記横切断線との交点から上側の領域において、前記可動片の一部に重なるように配置されることを特徴とする請求項3に記載の遮蔽カーテン。
【請求項5】
水平方向において前記X線検査装置の検査対象物の幅よりも前記一対の横切断線の合計幅が小さいか、又は、前記検査対象物の高さよりも前記可動片の高さが高いことにより、前記変形境界線が傾斜することを特徴とする請求項2に記載の遮蔽カーテン。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の遮蔽カーテンと、
検査対象物を搬送する搬送部と、
前記検査対象物が通過する筐体と、
前記筐体の内部においてX線を出射する出射部と、
X線を検出する検出部と、を備えることを特徴とするX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮蔽カーテン及びX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品や医薬品等を検査対象物としたX線検査装置の出入口や内部には、検査対象物を通過可能としつつX線の漏れを抑制するために遮蔽カーテンが設けられる。従来、このような遮蔽カーテンとして、長さの異なる2種類の切込を形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された遮蔽カーテンでは、それぞれの切込の間に形成された帯部が撓み変形し、検査対象物を通過可能としつつX線の漏れを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線検査装置では、上方側が開口した容器に収容された内容物に対して検査を行うことがある。従来の遮蔽カーテンでは、帯部が上端側において支持されて下端側が自由端となっていることから、容器が遮蔽カーテンを通過する際、帯部は、容器の壁部に当接することで下端部が持ち上がるように変形する。さらにこの容器が搬送されると、帯部の下端部が、容器の壁部を乗り越えて容器内に入り込み、内容物と接触する虞があった。
【0005】
特許文献1に記載されたように切込線の長さを調節すれば帯部の変形態様を調節することはできるものの、帯部の容器内への入り込みを抑制することは困難であった。そこで、帯長さを短くしたり帯幅を広くしたりすることで帯部を容器に入りにくくする方法も考えられるものの、遮蔽カーテンによってX線が遮蔽されにくくなってしまう。
【0006】
したがって、本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、容器の内容物との接触を抑制しつつX線の漏れを低減することができる遮蔽カーテン及びX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明の遮蔽カーテンは、X線検査装置に設けられてX線を遮蔽する遮蔽カーテンであって、膜状の膜状部材を備え、前記膜状部材は、該膜状部材が鉛直に垂れ下がるように保持される被保持部と、部分的に開閉可能な可動片と、前記可動片を支持する本体膜部と、前記可動片を形成するように該膜状部材を切断する切断線と、を有し、前記可動片が開く際に前記本体膜部との境界となる変形境界線が、鉛直方向下側に向かうにしたがって該可動片の領域が広がる方向に向かうように傾斜していることを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記切断線は、前記膜状部材の下端縁から上方に向かって延びる縦切断線と、前記縦切断線に連続するとともに該縦切断線に交差する方向の両側に向かって延びる一対の横切断線と、を有することにより、一対の前記可動片を形成し、前記変形境界線が、鉛直方向下側に向かうにしたがって前記縦切断線から離れるように傾斜していることが好ましい。
【0009】
本発明において、前記横切断線は、前記縦切断線から離れるにしたがって上側に向かう傾斜を有していることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記膜状部材とは別体に形成され、鉛直に垂れ下がるように支持される補助膜状部材をさらに備え、前記補助膜状部材は、前記膜状部材に対し、前記縦切断線と前記横切断線との交点から上側の領域において、前記可動片の一部に重なるように配置されることが好ましい。
【0011】
本発明において、水水平方向において前記X線検査装置の検査対象物の幅よりも前記一対の横切断線の合計幅が小さいか、又は、前記検査対象物の高さよりも前記可動片の高さが高いことにより、前記変形境界線が傾斜してもよい。
【0012】
一方、本発明のX線検査装置は、上記の遮蔽カーテンと、前記検査対象物を搬送する搬送部と、前記検査対象物が通過する筐体と、前記筐体の内部においてX線を出射する出射部と、X線を検出する検出部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一例である実施形態にかかるX線検査装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の一例である実施形態にかかるX線検査装置の遮蔽カーテンの正面図である。
【
図3】本発明の一例である実施形態にかかるX線検査装置の遮蔽カーテンが変形した様子を示す正面図である。
【
図4】比較例に係るX線検査装置の遮蔽カーテンの正面図である。
【
図5】比較例に係るX線検査装置の遮蔽カーテンが変形した様子を示す正面図である。
【
図6】本発明の一例である第1の変形例にかかる遮蔽カーテンの正面図である。
【
図7】本発明の一例である第2の変形例にかかる遮蔽カーテンの正面図である。
【
図8】本発明の一例である第3の変形例にかかる遮蔽カーテンの正面図である。
【
図9】本発明の一例である第4の変形例にかかる遮蔽カーテンの正面図である。
【
図10】本発明の一例である第4の変形例にかかる遮蔽カーテンが変形した様子を示す正面図である。
【
図11】本発明の一例である第5の変形例にかかる遮蔽カーテンの正面図である。
【
図12】本発明の一例である第5の変形例にかかる遮蔽カーテンが変形した様子を示す正面図である。
【
図13】本発明の一例である第6の変形例にかかる遮蔽カーテンの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一例である実施形態にかかるX線検査装置100の概略構成を示す断面図であり、
図2は、X線検査装置100の遮蔽カーテン1の正面図であり、
図3は、遮蔽カーテン1が変形した様子を示す正面図である。
【0015】
本実施形態に係るX線検査装置100は、
図1に示すように、遮蔽カーテン1と、検査対象物200を搬送する搬送部11と、検査対象物200が通過する筐体12と、筐体12の内部においてX線を出射する出射部13と、X線を検出する検出部14と、を備える。検査対象物200は、容器201と、容器201に収容された内容物(例えば食品)202と、によって構成され、X線検査装置100は、内容物202に異物(例えば針や金属片)が混入されていないかを検査する。尚、X線検査装置100の用途は、食品への異物混入検出用に限定されず、薬品や衣料品への異物混入検出用等、他の用途であってもよい。
【0016】
以降の説明において、鉛直方向(重力方向)をZ方向とするとともに、Z方向における上側を単に「上側」又は「上方側」と呼ぶことがあり、Z方向における下側を単に「下側」又は「下方側」と呼ぶことがあり、Z方向における寸法を単に「高さ」と呼ぶことがある。また、搬送部11は水平面内の一方向を搬送方向として検査対象物200を搬送するものであって、この搬送方向をA方向とするとともに、搬送方向の上流側及び下流側をそれぞれ単に「上流側」及び「下流側」と呼ぶことがある。また、Z方向及びA方向の両方に直交する方向をB方向とし、B方向を「幅方向」と呼ぶとともに、B方向における寸法を単に「幅」と呼ぶことがある。また、遮蔽カーテン1の説明においては、遮蔽カーテン1がX線検査装置100に組み込まれているものとして上記のZ方向、A方向、及びB方向を用いる。
【0017】
また、遮蔽カーテン1における開閉可能な部分の開閉態様(開閉方向)について、次のように定義する。鉛直方向に沿って延びる軸を中心とした開閉態様(鉛直方向に延びる一辺がヒンジにより支持された扉体と同様の開閉態様)を「縦軸開閉」と呼ぶ。一方、水平方向に沿って延びる軸を中心とした開閉態様(水平方向に延びる上端縁がヒンジにより支持された扉体と同様の開閉態様)を「横軸開閉」と呼ぶ。尚、弾性部材が開閉する構成では、弾性部材自体が撓み変形する点において、剛体(扉体)が他の剛体(枠体)によって軸支されて開閉する構成とは異なるが、開閉態様については剛体と同様の表現を用いる。
【0018】
遮蔽カーテン1は、
図2に示すように、X線検査装置100に設けられてX線を遮蔽するものであって、膜状の膜状部材2を備える。膜状部材2は、膜状部材2が鉛直に垂れ下がるように保持される被保持部と、部分的に開閉可能な可動片24、25と、可動片24、25を支持する本体膜部26と、可動片24、25を形成するように膜状部材2を切断する切断線21~23と、を有する。可動片24、25が開く際に本体膜部26との境界となる変形境界線X1が、鉛直方向下側に向かうにしたがって可動片24、25の領域が広がる方向に向かうように傾斜している。
【0019】
膜状部材2は、1枚の連続した平板膜状の部材であって、例えばゴム等の可撓性材料を基材とするとともに、鉛等のX線吸収材料を含んで形成される。膜状部材2は、筐体12に支持されて吊り下げられることにより、A方向を面直方向とするとともに、Z方向及びB方向を含む平面に沿って延在する。膜状部材2は、下側においてB方向に沿って延びる下端縁2Aと、上側においてB方向に沿って延びる上端縁2Bと、B方向の一方側(
図2における左側)においてZ方向に沿って延びる第1横端縁2Cと、B方向の他方側(
図2における右側)においてZ方向に沿って延びる第2横端縁2Dと、を有し、B方向を長手方向とする長方形状に形成されている。即ち、膜状部材2は、上端縁2B又はその近傍を被保持部として保持され、鉛直に垂れ下がる。尚、膜状部材2のZ方向寸法が大きい場合、上端縁2Bから下方に離れた位置が被保持部となってもよい。また、膜状部材2は、下端縁2Aが搬送部11における載置面よりも若干上方に配置されて接触しないが、以下において寸法について説明する場合には、搬送部11の載置面(即ち検査対象物200の下面)と下端縁2Aとが略一致しているものとする。
【0020】
縦切断線21は、下端縁2AにおけるB方向中央部から上方に向かって所定距離だけ直線状に延び、上端縁2Bには到達しない。即ち、縦切断線21の下端部211が下端縁2A上に位置し、縦切断線21の上端部212が膜状部材2におけるZ方向中央部よりもやや上側に位置する。尚、上端部212は、検査対象物200の上端部よりも若干上方に位置し、検査対象物200と干渉しないようになっている。
【0021】
一対の横切断線22、23は、それぞれ、上端部212を基端とし、B方向の一方側又は他方側に向かって直線状に延び、横端縁2C、2Dには到達しない。横切断線22、23は、縦切断線21から離れるにしたがって上側に向かう傾斜を有する。横切断線22、23における縦切断線21側の端部である中央端部221、231が上端部212と一致する。また、横切断線22、23における縦切断線21とはB方向反対側の端部である側端部222、232は、Z方向において上端部212よりも上方側に位置する。一対の側端部222、232同士のB方向における間隔は、検査対象物200の幅と同程度に設定されていればよい。以上のように、縦切断線21と一対の横切断線22、23とによって、膜状部材2にはY字状の切断線(切込)が形成されている。
【0022】
尚、横切断線22、23のB方向に対する傾斜角度は、30°~70°であることが好ましく、約45°であることがより好ましい。横切断線22、23の傾斜角度を上記の範囲内とすれば、後述する変形境界線X1をZ方向に対して傾斜させやすく、可動片24、25の変形前後の重心位置の差を利用しやすくすることができるとともに、B方向における横切断線22、23の両端の間隔を確保しやすく、可動片24、25の長さを確保して検査対象物200を通過させやすくすることができる。一方、横切断線22、23の傾斜角度が小さすぎると、後述する変形境界線X1がZ方向に対して傾斜しにくくなる。また、横切断線22、23の傾斜角度が大きすぎると、可動片24、25の長さ(B方向寸法)を確保しにくくなる。
【0023】
下端縁2Aと縦切断線21と横切断線22とによって三方から囲まれた領域、及び、下端縁2Aと縦切断線21と横切断線23とによって三方から囲まれた領域は、膜状部材2において部分的に撓み変形可能となっており、一対の可動片24、25が形成される。一対の可動片24、25は、縦切断線21側の端部241、251を自由端とする。膜状部材2において、可動片24、25として変形する領域A1と、本体膜部26として変形しない領域A2と、の仮想的な境界線を変形境界線X1と呼ぶ。即ち、可動片24、25は、変形境界線X1よりも自由端側の領域A1が変形する。尚、膜状部材2において縦切断線21及び横切断線22、23の形状が決まっても、検査対象物200の寸法や膜状部材2の剛性等が変化すると、一対の可動片24、25が撓み変形する領域A1及び変形境界線X1の向きは変化し得る。
【0024】
本体膜部26は、可動片24、25と一体に形成され、可動片24、25をB方向の両側及び上方側から囲むように配置され、検査対象物200が膜状部材2を通過する際に変形しない部分である。
【0025】
膜状部材2には、横端縁2C、2Dの近傍において下端縁2Aから上側に延びるスリット27が形成されている。スリット27は、搬送部11において検査対象物200を案内するためのガイドレールとの干渉を抑制するために形成されたものである。スリット27の位置及び大きさは、ガイドレールに応じて設定されればよい。また、ガイドレールが設けられない場合には、スリット27は形成されなくてもよい。
【0026】
搬送部11は、検査対象物200を筐体12に出し入れするように搬送可能なものであり、例えば複数のローラ111と、複数のローラ111に吊架されたベルト112と、によって構成される。複数のローラ111のうち1つが主動ローラであって、それ以外は従動ローラである。搬送部11は、X線検査装置1専用に設けられたものであってもよいし、製造ラインにおける他の搬送部と共有のものであってもよい。検査対象物200は、手作業又は搬送装置によって、ベルト112における筐体12の上流側に供給される。
【0027】
筐体12は、例えば鉛等のX線吸収材料を含んで箱状に形成され、X線の漏洩を抑制可能となっている。筐体12は、検査対象物200が導入される入口121及び導出される出口122に開口を有している。入口121側に2つの遮蔽カーテン1が設けられ、出口122側に2つの遮蔽カーテン1が設けられる。即ち、筐体12内でX線が出射される位置の両側に、それぞれ2つの遮蔽カーテン1が設けられている。遮蔽カーテン1の数及び位置は、X線検査装置100の各部の構成に応じて適宜に設定されればよい。
【0028】
出射部13は、X線を発生するものであって、筐体12内において搬送部11のベルト112の上方に配置され、少なくとも下方側に向かってX線を出射する。これにより、出射部13の下方側において搬送された検査対象物200にX線が照射されるようになっている。
【0029】
検出部14は、X線を検出可能な素子により構成され、筐体12内において搬送部11のベルト112の下方に配置されるとともに、ベルト112を挟んで出射部13と対向する。これにより、出射部13から出射されて検査対象物200を透過したX線が検出部14により検出されるようになっている。尚、出射部13と検出部14とは、ベルト112を挟むように対向していればよく、対向方向やX線の出射方向は上記に限定されない。
【0030】
ここで、検査対象物200が遮蔽カーテン1を通過する際に一対の可動片24、25が変形する様子について、
図3を参照して説明する。検査対象物200が膜状部材2に到達すると、膜状部材2のうち可動片24、25が検査対象物200によって下流側に押圧される。これにより、可動片24、25は、縦軸開閉していくとともに、端部241、251のうちZ方向下端に位置する下端部241A、251Aが上方に向かう。即ち、可動片24、25は、縦軸開閉を基本としつつ、横軸開閉の要素も含んだ開動作をするように形成されている。可動片24、25は、上流側に凸の曲面状となりつつ捲くれ上がるように変形する。
【0031】
縦切断線21の長さと検査対象物200の高さとが同程度であり、且つ、一対の側端部222、232同士のB方向における間隔と検査対象物200の幅とが同程度である場合、変形境界線X1は、端部222、232を通過して横切断線22、23に略直交するように延びようとする。横切断線22、23が、縦切断線21から離れるにしたがって上側に向かう傾斜を有していることで、変形境界線X1は、鉛直方向下側に向かうにしたがって縦切断線21から離れるように、鉛直方向であるZ方向に対して傾斜する。即ち、変形境界線X1は、鉛直方向下側に向かうにしたがって可動片24、25の領域A1が広がる方向に向かうように傾斜している。上記のように、検査対象物200の大きさや膜状部材2の剛性等によって変形境界線X1の向きは変化し得るものの、横切断線22、23がB方向に対して傾斜していることで、本実施形態と同様の向きに傾斜した変形境界線X1が得られやすくなっている。
【0032】
検査対象物200が下流側に搬送されていくと、一対の可動片24、25が徐々に開いていき、最も開いた状態となった後、検査対象物200が膜状部材2を完全に通過する。検査対象物200の通過が完了すると、可動片24、25は押圧力を受けなくなる。この際、可動片24、25は、膜状部材2の弾性による復元力だけでなく、重力によっても元の形状に戻ろうとする。即ち、可動片24、25が変形する際の変形境界線X1がZ方向に対して傾斜していることで、変形前における可動片24、25の重心よりも、変形後における可動片24、25の重心の方が上方側に位置する。このような重心位置の差によって、可動片24、25には、変形前の形状に戻るような力が生じる。
【0033】
比較例の膜状部材800が変形する様子について、
図4、5を参照して説明する。膜状部材800には、下端縁から上方に向かって延びる切断線である縦切断線801と、縦切断線801の上端部からB方向に沿って延びる切断線である一対の横切断線802、803と、が形成され、即ちT字状の切込が形成されている。膜状部材800においても、縦切断線801と横切断線802、803と下端縁とによって囲まれた可動片804、805が形成される。このとき、縦切断線801の長さは、検査対象物200の高さと同程度であるものとし、一対の横切断線802、803の合計長さは、検査対象物200の幅と同程度か又は若干長いものとする。
【0034】
このような膜状部材800に対して検査対象物200が通過しようとすると、可動片804、805の略全体が押圧力を受ける。一対の横切断線802、803が水平方向であるB方向に沿って延びていることで、可動片804、805の変形境界線X0は鉛直方向であるZ方向に沿って延びることとなる。即ち、一対の可動片804、805は、縦軸開閉の動作をする。従って、検査対象物200の通過が完了した際、可動片804、805には、膜状部材800の弾性による復元力は生じるものの、変形前後の重心位置の差によっては、変形前の形状に戻るような力は生じない。
【0035】
本実施形態によれば、可動片24、25が開く際に本体膜部26との境界となる変形境界線X1が、鉛直方向下側に向かうにしたがって可動片24、25の領域A1が広がる方向に向かうように傾斜していることで、可動片24、25は縦軸開閉に近い開閉態様となり、横軸開閉する帯部を有する遮蔽カーテンと比較して、可動片24、25が容器201の壁部を乗り越えにくい。従って、可動片24、25と容器201の内容物202との接触を抑制することができる。
【0036】
さらに、可動片24、25が、変形境界線X1が上記のように傾斜していることで、可動片24、25の変形前後の重心位置の差によって、可動片24、25を変形前の形状に戻しやすくすることができる。従って、検査対象物200の通過後に可動片24、25を変形前の形状に戻しやすく、X線の漏れを低減することができる。
【0037】
また、膜状部材2に一対の可動片24、25が形成されていることで、1つの可動片のみを形成する構成と比較して、1つあたりの可動片の幅を小さくすることができ、検査対象物が通過する際のX線の漏れを低減することができる。
【0038】
また、横切断線22、23が、縦切断線21から離れるにしたがって上側に向かう傾斜を有していることで、変形境界線X1をZ方向に対して傾斜させやすくすることができる。
【0039】
以上、本発明のX線検査装置100について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明のX線検査装置に用いられる遮蔽カーテンは上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、一対の横切断線22、23がB方向に対して傾斜しつつ全体が直線状に延びているものとしたが、横切断線の形状はこれに限定されず、以下に変形例として示すような形状としてもよい。尚、以下の変形例において、上記実施形態と同様の機能又は形状を有する構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0040】
図6に示す第1の変形例のように、横切断線31、32が、切断線21の上端部212からB方向に沿って両側に延びる水平部311、321と、縦切断線21から離れるにしたがって上側に向かって傾斜した傾斜部312、322と、を有する構成としてもよい。傾斜部312、322は、水平部311、321のうち縦切断線21から離れた側の端部に連続している。水平部311、321及び傾斜部312、322は、いずれも直線状に延びている。第1の変形例においても、一対の可動片24、25が形成される。検査対象物200の通過時に、可動片24、25は、B方向に対する傾斜部312、322の傾斜角度に応じた変形境界線X2を有して変形する。
【0041】
図7に示す第2の変形例のように、横切断線41、42が、上方側に向かって凸の曲線状となっている構成としてもよい。横切断線41、42が曲線状となっている場合、変形境界線X3の方向は、横切断線41、42における縦切断線21とは反対側の端部411、421における接線の方向によって決まる。即ち、変形境界線X3は、この接線と略直交するように延びようとする。
【0042】
図8に示す第3の変形例のように、横切断線51、52が、下方側に向かって凸の曲線状となっている構成としてもよい。第3の変形例においても第2の変形例と同様に、変形境界線X3は、横切断線51、52における縦切断線21とは反対側の端部511、521における接線と略直交するように延びようとする。
【0043】
また、上記実施形態では、横切断線22、23が縦切断線21から離れるにしたがって上側に向かう傾斜を有していることにより、変形境界線X1が傾斜するものとしたが、縦切断線及び横切断線と検査対象物との寸法の関係を適宜に設定することにより、変形境界線が傾斜するようにしてもよい。
【0044】
図9、10に示す第4の変形例の膜状部材6には、下端縁6Aから上方に向かって延びる切断線である縦切断線61と、縦切断線61に連続するとともに縦切断線61に交差する方向の両側に向かって延びる切断線である一対の横切断線62、63と、縦切断線61と切断線62、63と下端縁6Aとによって囲まれた一対の可動片64、65と、一対の可動片64、65を支持する本体膜部66と、が形成されている。可動片64、65は、検査対象物200が通過する際に、縦切断線61側の端部641、651を自由端とするとともに、横切断線62、63における縦切断線61とは反対側の端部621、631から下側に向かって延びる変形境界線X5よりも自由端側の領域A3が変形する。
【0045】
横切断線62、63はB方向に沿って延びており、縦切断線61と横切断線62、63とによってT字状の切込が形成されている。このとき、横切断線62、63の合計長さは検査対象物200の幅よりも小さい。このような構成では、一対の可動片64、65が縦軸開閉するだけでは、検査対象物200が通過可能な開口は形成されないため、可動片64、65は、縦軸開閉だけでなく横軸開閉の要素も含んで変形する。これにより、変形境界線X5は、例えば端部621、631と、検査対象物200の上面側の角部203と、を通過する方向に延びようとする。即ち、変形境界線X5は、下側に向かうにしたがって縦切断線61から離れるように、Z方向に対して傾斜する。
【0046】
図11、12に示す第5の変形例の膜状部材7には、下端縁7Aから上方に向かって延びる切断線である縦切断線71と、縦切断線71に連続するとともに縦切断線71に交差する方向の両側に向かって延びる切断線である一対の横切断線72、73と、縦切断線71と切断線72、73と下端縁7Aとによって囲まれた一対の可動片74、75と、一対の可動片74、75を支持する本体膜部76と、が形成されている。可動片74、75は、検査対象物200が通過する際に、縦切断線71側の端部741、751を自由端とするとともに、横切断線72、73における縦切断線71とは反対側の端部721、731から下側に向かって延びる変形境界線X6よりも自由端側の領域A4が変形する。
【0047】
横切断線72、73はB方向に沿って延びており、縦切断線71と横切断線72、73とによってT字状の切込が形成されている。このとき、横切断線72、73の合計長さは検査対象物200の幅よりも大きく、縦切断線71の長さは、検査対象物200の高さよりも充分に大きい(例えば2倍以上)。このような構成では、一対の可動片74、75のうち下側部分にのみ検査対象物200が当接し、これよりも上側の部分は押圧力を受けないため、一対の可動片74、75のうち下側部分が他の部分よりも変形しやすい。これにより、これにより、変形境界線X6は、例えば端部721、731を起点として、下側に向かうにしたがって縦切断線71から離れるように、Z方向に対して傾斜して延びる。
【0048】
また、上記実施形態では、遮蔽カーテン1が1枚の膜状部材2によって構成されているものとしたが、第6の変形例として
図13に示す遮蔽カーテンのように、膜状部材2に加えて、膜状部材2とは別体に形成され、鉛直に垂れ下がるように支持される補助膜状部材8が設けられていてもよい。補助膜状部材8は、膜状部材1に対し、縦切断線21と横切断線22、23との交点212、221、231から上側の領域A5において、可動片24、25の一部に重なるように配置される。
【0049】
補助膜状部材8は、膜状部材2と同様の材料により形成されたものであって、B方向を長手方向とする長方形の平板状に形成されている。図示の例では、補助膜状部材8に切断線が形成されていないものとするが、下端縁8Aから上方に向かって延びる切断線が形成され、上側から垂れ下がった複数の帯部が形成されてもよい。補助膜状部材8は、膜状部材2と上端縁同士を揃え、且つ、B方向における中央部同士を揃えつつ、膜状部材2に対して上流側に重ねられる。尚、
図2では膜状部材2を下流側から見た様子を示しているが、
図13では上流側から見た様子を示している。
【0050】
補助膜状部材8は、下端縁8Aと交点212、221、231とが重なるような寸法及び配置を有しており、検査対象物200と干渉しないようになっている。尚、補助膜状部材8は、可動片24、25の一部と重なりを有し、且つ、検査対象物200と干渉しなければよく、下端縁8Aが交点212、221、231よりも上側に位置していてもよいし、下側に位置していてもよい。また、図示の例では、補助膜状部材8の幅が端部222、232同士の間隔よりも小さくなっているが、補助膜状部材8の幅が端部222、232同士の間隔よりも大きくてもよいし、同等であってもよい。
【0051】
補助膜状部材8は、膜状部材2に対して上流側に重ねられていることから、可動片24、25が開く際に干渉しないようになっている。ここで、Y字状の切込を有する膜状部材2と、
図4、5に示すようにT字状の切込を有する膜状部材800と、において縦切断線同士の長さを等しくした場合、膜状部材2では、横切断線22、23がB方向に対して傾斜しているため、可動片24、25が変形した際の開口寸法が大きくなる。即ち、交点212、221、231から上側の領域A5において、可動片24、25は、検査対象物200の通過には寄与しない開口を形成することとなる。
【0052】
そこで、領域A5において可動片24、25の一部に重なるように補助膜状部材8を配置することで、検査対象物200の通過には寄与しない開口の少なくとも一部を塞ぐことができ、X線の漏洩を抑制することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、膜状部材2に一対の可動片24、25が形成されるものとしたが、膜状部材には1つの可動片のみが形成されていてもよい。また、上記実施形態では、可動片24、25を形成するための切断線が、縦切断線21と一対の横切断線22、23とによって構成されているものとしたが、切断線の形状はこれに限定されない。例えば、膜状部材2の下端縁2Aから上方に向かうにしたがって横端縁2C、2Dのいずれかに向かうとともに、上方に向かって凸の曲線状の切断線によって、可動片を形成してもよい。
【0054】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の遮蔽カーテン及びX線検査装置を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
100…X線検査装置、1…遮蔽カーテン、11…搬送装置、12…筐体、13…出射部、14…検出部、2…膜状部材、21…縦切断線、22,23…横切断線、24,25…可動片、26…本体膜部、2A…下端縁、8…補助膜状部材