(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240328BHJP
【FI】
A61M25/09 550
(21)【出願番号】P 2020025801
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【氏名又は名称】木村 祐介
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】小杉 知輝
(72)【発明者】
【氏名】野口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】中西 裕太
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/155828(WO,A1)
【文献】特表平09-501593(JP,A)
【文献】特開2010-094539(JP,A)
【文献】特開2002-017864(JP,A)
【文献】特開2008-264498(JP,A)
【文献】特開2010-035924(JP,A)
【文献】特開2003-093516(JP,A)
【文献】国際公開第2009/004876(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0211909(US,A1)
【文献】国際公開第2014/091935(WO,A1)
【文献】EndoSelector開発ヒストリー,2018年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤであって、
長尺状の外形を有し、外表面に下地と線状のマーカとが延伸方向に沿って交互に表された本体部と、
前記本体部の外表面を覆う光透過性を有する樹脂層であって、前記本体部の延伸方向に沿って凹部と凸部が交互に形成された凹凸部を有する樹脂層と、を備え、
前記本体部の延伸方向に沿った縦断面において、前記マーカの幅は、前記凸部の幅より広
く、
前記本体部の延伸方向に沿った縦断面において、前記凸部のピッチは、前記凸部の幅と等しい、
ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤであって、
前記本体部の延伸方向において、前記マーカのピッチと、前記凸部のピッチとが異なっている、
ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記本体部の延伸方向に沿った縦断面において、前記マーカの幅は、前記凸部の幅の2倍以下である、
ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記本体部の外表面において、前記本体部の延伸方向に沿った20mmの範囲における前記マーカの表面積は、前記下地の表面積の35%以下である、
ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記本体部の外表面において、前記マーカの明度は、前記下地の明度よりも低い、
ガイドワイヤ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記本体部の外表面において、前記下地と前記マーカとの境界部は平坦に形成されている、
ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生体管腔内に挿入されたガイドワイヤの先端の位置や向きを内視鏡カメラで観察するためのマーカ(視認マーカ)を備えたガイドワイヤが知られている。また、ガイドワイヤを生体管腔内で移動させたときに、ガイドワイヤと体腔壁との摩擦抵抗を低減するために、表面に連続した凹凸が形成されたガイドワイヤが知られている(例えば、特許文献1~4)。例えば、特許文献1には、表面に突起が形成された樹脂に覆われたガイドワイヤが開示されている。特許文献2には、ガイドワイヤの外表面に視認マーカとして機能する隆起部形成層が設けられ、また、表面に凹凸が形成されたガイドワイヤが開示されている。特許文献3には、凹凸を有する心線の外周を樹脂膜が被覆し、樹脂膜に螺旋模様が形成されたガイドワイヤが開示されている。特許文献4には、内層の外表面に視認マーカが設けられたガイドワイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5619426号
【文献】特許第5509276号
【文献】国際公開2009/004876号
【文献】特開2003-275323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した先行技術によっても、ガイドワイヤのマーカを内視鏡カメラで観察したときのマーカの視認性の向上を図る技術については、なお、改善の余地があった。例えば、表面に凹凸が形成されているガイドワイヤに、生体管腔内において観察光を照射して内視鏡カメラで観察すると、表面の凹凸で反射した光によって、内視鏡カメラで撮像された画像(映像)に光芒(玉ボケ)が現れ、マーカの視認性が低下することがあった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ガイドワイヤに設けられたマーカの視認性の向上を図るための技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、ガイドワイヤが提供される。このガイドワイヤは、長尺状の外形を有し、外表面に下地と線状のマーカとが延伸方向に沿って交互に表された本体部と、前記本体部の外表面を覆う光透過性を有する樹脂層であって、前記本体部の延伸方向に沿って凹部と凸部が交互に形成された凹凸部を有する樹脂層と、を備え、前記本体部の延伸方向に沿った縦断面において、前記マーカの幅は、前記凸部の幅より広い。
。
【0008】
この構成によれば、本体部の延伸方向に沿った縦断面において、マーカの幅が樹脂層の凸部の幅より広いため、マーカを覆う樹脂層の凹凸部で光が反射しても、光芒(玉ボケ)によるマーカの視認性の低下を抑制できる。
【0009】
(2)上記形態のガイドワイヤは、前記本体部の延伸方向において、前記マーカのピッチと、前記凸部のピッチとが異なっていてもよい。この構成によれば、マーカに対する光芒の位置がマーカごとに変化するため、マーカの視認性をさらに向上させることができる。
【0010】
(3)上記形態のガイドワイヤは、前記本体部の延伸方向に沿った縦断面において、前記マーカの幅は、前記凸部の幅の2倍以下であってもよい。この構成によれば、マーカ上の複数の凸部に跨がった光芒が現れにくくなるため、光芒によるマーカの視認性の低下をさらに抑制できる。
【0011】
(4)上記形態のガイドワイヤは、前記本体部の外表面において、前記本体部の延伸方向に沿った20mmの範囲における前記マーカの表面積は、前記下地の表面積の35%以下であってもよい。この構成によれば、下地に対するマーカの視認性をさらに向上させることができる。
【0012】
(5)上記形態のガイドワイヤは、前記本体部の外表面において、前記マーカの明度は、前記下地の明度よりも低くてもよい。この構成によれば、下地に対するマーカの視認性をさらに向上させることができる。
【0013】
(6)上記形態のガイドワイヤは、前記本体部の外表面において、前記下地と前記マーカとの境界部は平坦に形成されていてもよい。この構成によれば、凹凸設計に自由度が高まり、滑り性をより向上させることができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、カテーテル、内視鏡、画像生成装置、検査装置、治療システム、ガイドワイヤの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態のガイドワイヤの全体構成を例示した説明図である。
【
図2】ガイドワイヤの断面構成を例示した説明図である。
【
図4】ガイドワイヤを生体管腔内で使用している状態を例示した説明図である。
【
図5】内視鏡カメラで観察したガイドワイヤの状態を示した説明図である。
【
図6】ガイドワイヤに観察光を照射した状態を説明するための図である。
【
図7】比較例1のガイドワイヤに観察光を照射した状態を示した説明図である。
【
図8】比較例2のガイドワイヤに観察光を照射した状態を示した説明図である。
【
図9】ガイドワイヤと併用デバイスを使用した状態を示した図である。
【
図10】比較例3のガイドワイヤと併用デバイスを使用した状態を示す図である。
【
図11】第2実施形態のガイドワイヤの全体構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のガイドワイヤ1の全体構成を例示した説明図である。
図2は、ガイドワイヤ1の断面構成を例示した説明図である。以下では、
図1の左側をガイドワイヤ1および各構成部材の「先端側」と呼び、
図1の右側をガイドワイヤ1および各構成部材の「基端側」と呼ぶ。ガイドワイヤ1の先端側は、体内に挿入される側(遠位側)であり、ガイドワイヤ1の基端側は、医師等の手技者によって操作される側(近位側)である。また、
図1の左右方向をガイドワイヤ1および各構成部材の「延伸方向」または「軸線方向」とも呼ぶ。
図2は、ガイドワイヤ1の延伸方向に沿った縦断面を示している。ガイドワイヤ1は、血管や消化器官にカテーテルを挿入する際に用いられる医療器具であり、本体部10と、樹脂層50と、コイル体60と、先端接合部70と、基端側接合部80と、を備えている。
【0017】
本体部10は、長尺形状を有しており、コアシャフト20と、マーカ30と、下地40とを備えている。本体部10の外表面には、樹脂層50が形成されており、本体部10の先端には、コイル体60が固定されている。
【0018】
コアシャフト20は、基端側から先端側に向かって外径が小さくなるように構成された(先細りした)長尺形状の部材である。コアシャフト20は、例えば、ステンレス合金(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等の材料で形成することができる。コアシャフト20は、上記以外の公知の材料によって形成されていてもよい。コアシャフト20の長さについては特に限定されないが、例えば、1000mm~5000mmの範囲を例示することができる。コアシャフト20の外径についても特に限定されないが、例えば、0.1mm~1.0mmの範囲を例示することができる。コアシャフト20の先端には、先端接合部70が形成されている。コアシャフト20の先端から所定の距離だけ離れた基端側の外周には、基端側接合部80が形成されている。先端接合部70と基端側接合部80の間には、コイル体60が配置されている。
【0019】
下地(下地層)40は、コアシャフト20の外表面に形成された樹脂であり、コアシャフト20のうち、基端側接合部80が形成された位置よりも基端側の外周を覆っている。下地40は、例えば、PAI(ポリアミドイミド)、PTFE(ポリテトラフルオロチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペン)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)などによって形成することができる。下地40を構成する樹脂の種類については、上記に限定されず任意の樹脂とすることができる。なお、下地40は、コアシャフト20のうち、基端側接合部80よりも基端側の外周だけでなく、先端側の外周もあわせて覆っていてもよい。下地40はほぼ白色であり、マンセル明度は7~10の範囲となっている。
【0020】
マーカ30は、下地40の一部に形成された線状の部位であり、下地40の他の部分と視覚的に識別可能に構成されている。マーカ30は、ガイドワイヤ1を外側から観察したとき(後述する
図4に記載の内視鏡2のイメージセンサ23を通じて観察したとき)、下地40の上に線状の模様として現れており、手技者は、ガイドワイヤ1の操作時にこの模様の向きや位置の変化を観察することによって、ガイドワイヤ1の押し引きや回転動作を確認することができる。マーカ30は、下地40のうち、基端側接合部80と接する先端から後端側に向かって所定の距離までの区間(マーカ表示区間)に形成されている。具体的には、内視鏡2の先端から突出し、イメージセンサ23を通じて観察される部分に形成されている(
図4参照)。下地40において、マーカ30が形成されている部分(マーカ表示区間)の長さについては、特に限定はないが、例えば、100mm~500mmの範囲を例示することができる。本体部10は、マーカ表示区間において下地40と線状のマーカ30とが延伸方向に沿って交互に表されている。
【0021】
マーカ30は、下地40の一部に顔料を浸透させることによって部分的に下地40の色(色相、明度、彩度のうちの少なくとも1つ)を変化させ、一定の幅の線状の模様として描かれている。すなわち、ここでは、マーカ30は、下地40の他の部分に対して本体部10の径方向外側に突出したり凹んだりしておらず、下地40とマーカ30との境界部は平坦に形成されている。マーカ30は、ほぼ黒色であり、マンセル明度は0~7の範囲となっている。マーカ30のマンセル明度は0~2の範囲が好ましい。マーカ30と下地40は明度が異なり、マーカ30の明度が下地40の明度よりも低くなっている。下地40は相対的に白に近い色となっており、マーカ30は相対的に黒に近い色となっている。
【0022】
マーカ30は、コアシャフト20の外周を覆う円筒形状の下地40を展開した展開図において、波形状の模様となるように形成されている。すなわち、下地40が形成されたコアシャフト20を、延伸方向(軸線方向)を回転軸にして左右に所定角度(例えば180°)ずつ往復回転させた状態で、下地40に向けて垂らした顔料を延伸方向に沿って移動させることによって、この波模様を形成することができる。なお、マーカ30は、円筒形状の下地40に螺旋状に形成されてもよい。すなわち、下地40が形成されたコアシャフト20を、延伸方向(軸線方向)を回転軸にして一方向に回転させた状態で、下地40に向けて垂らした顔料を延伸方向に沿って移動させることによって、螺旋模様を形成することができる。
【0023】
樹脂層50は、マーカ30および下地40の上に形成された光透過性を有する樹脂皮膜であり、ここでは透明の皮膜となっている。樹脂層50は、PTFE(ポリテトラフルオロチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)などのフッ素樹脂、シリコン樹、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン等を用いてもよい。樹脂層50の外表面は、本体部10(コアシャフト20)の延伸方向に沿って、凹部と凸部が交互に形成された凹凸部を有している。この凹凸部は、ガイドワイヤ1の周方向全体に形成されているため、この凹凸部によって、ガイドワイヤ1の外径が変化する。具体的には、樹脂層50の凸部分でガイドワイヤ1の外径が拡径され、樹脂層50の凹部分でガイドワイヤ1の外径が縮径される。樹脂層50の凹凸部の詳細については後述する。
【0024】
先端接合部70は、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだによって形成され、この金属はんだによりコイル体60の先端とコアシャフト20の先端とが固着されている。なお、先端接合部70は、エポキシ系接着剤などの接着剤によって形成され、接着剤によりコイル体60の先端とコアシャフト20の先端とが固着されていてもよい。
【0025】
コイル体60は、1つまたは複数のコイルによって構成されており、コアシャフト20の先端側の外周を覆うようにコアシャフト20に巻回されている。ここでは、コイル体60は、コアシャフト20の先端側の細径部およびテーパー部の一部に巻き回されている。コイル体60を構成するコイルは、円形断面の1本の素線を螺旋状に巻いて円筒形状に形成した単コイルであってもよいし、複数の素線を撚り合わせた撚線を円筒形状に形成した中空撚線コイルであってもよい。また、コイル体60は、単コイルと中空撚線コイルを組み合わせて構成されていてもよい。コイル体60は、例えば、ステンレス合金(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等の放射線透過性合金、金、白金、タングステン、これらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)等の放射線不透過性合金で形成することができる。コイル体60は、上記以外の公知の材料によって形成されていてもよい。コイル体60の長さについては特に限定されないが、例えば、10mm~100mmを例示することができる。コイル体60の外径は、特に限定はないが、例えば、0.1mm~1.0mmの範囲を例示することができ、先端から基端まで一定に構成されている。なお、コイル体60は、コイルピッチの異なる、疎巻き部と密巻き部とを有していてもよい。
【0026】
コイル体60の先端は、先端接合部70によってコアシャフト20の先端と接合されている。コイル体60の基端は、基端側接合部80によってコアシャフト20に接合されている。コイル体60は、先端接合部70、および、基端側接合部80によってコアシャフト20に固定されている。基端側接合部80は、コアシャフト20の外周に設けられた環形状(リング状)の部位であり、ここでは、先端接合部70と同じ材料によって形成されている。なお、基端側接合部80は、先端接合部70と異なる材料によって形成されていてもよい。
【0027】
図3は、
図2のX部分を拡大した説明図である。ここでは、マーカ表示区間における、マーカ30、下地40、および、樹脂層50の詳細構成について説明する。樹脂層50は、本体部10の延伸方向(
図3の左右方向)に沿って、凹部51と凸部52とが交互に連続する凹凸部55を備えている。ここでは、本体部10の延伸方向における(本体部10の縦断面における)マーカ30の幅をWm、本体部10の延伸方向における(本体部10の縦断面における)下地40の幅をWbとし、本体部10の延伸方向における(本体部10の縦断面における)凸部52の幅をWaとする。下地40の幅Wbは、隣り合うマーカ30の一方から他方までの距離(マーカー同士の間隔)と等しい。ここでのマーカ30の幅Wmとは、本体部10の縦断面において、本体部10の延伸方向に並ぶ各マーカ30の一方の端部から他方の端部までの距離の平均値である。下地40の幅Wbとは、本体部10の縦断面において、互いに隣り合う一方のマーカ30の端部から他方のマーカ30の端部までの距離の平均値である。凸部52の幅Waは、本体部10の縦断面において、本体部10の延伸方向に並ぶ各凸部52の一方の端部から他方の端部までの距離の平均値である。
【0028】
マーカ30、下地40、および、樹脂層50は、本体部10の延伸方向における、マーカ30のピッチPmと、樹脂層50の凸部52のピッチPpとが異なる(Pm≠Pp)ように構成されている。ここでのマーカ30ピッチとは、本体部10の縦断面において、本体部10の延伸方向に並ぶマーカ30の中心位置間の距離の平均値である。樹脂層50の凸部52のピッチとは、本体部10の縦断面において、本体部10の延伸方向に並ぶ凸部52の中心位置間の距離の平均値である。マーカ30のピッチPmは、マーカ30の幅Wmと下地40の幅Wbとの和と等しい(Pm=Wm+Wb)。また、凸部52のピッチPpは、凸部52の幅Waと等しい(Pp=Wa)。このことから、マーカ30、下地40、および、樹脂層50は、以下の式(1)を満たす。
Wm+Wb≠Wa ・・・(1)
【0029】
これにより、マーカ30上で光芒(玉ボケ)が現れる位置がマーカ30ごとに変化するためマーカ30の視認性を向上させることができる。この理由については後述する。
【0030】
さらに、マーカ30、下地40、および、樹脂層50は、マーカ30の幅Wmが、凸部52の幅Waよりも大きく、凸部52の幅Waの2倍よりも小さくなっている。すなわち、マーカ30、下地40、および、樹脂層50は、下記の式(2)を満たす。
Wa<Wm<2×Wa ・・・(2)
【0031】
これにより、マーカ30を覆う樹脂層50の凹凸部55で光が反射しても、光芒(玉ボケ)によるマーカ30の視認性の低下を抑制できる。この理由については後述する。
【0032】
また、マーカ30、および、下地40は、マーカ表示区間において、マーカ30の表面積Amが下地40の表面積Abの35%以下(Am≦0.35×Ab)となっている。すなわち、マーカ30、および、下地40は、下記の式(3)を満たす。
Wm≦0.35×Wb ・・・(3)
【0033】
これにより、下地40に対するマーカ30の視認性を向上させることができる。すなわち、マーカ30の表面積Amが下地40の表面積Abの35%よりも大きくなると、撮像画像においてマーカ30が占める割合が増え、光芒(玉ボケ)が現れたときにマーカ30の本数を把握しづらくなり、マーカの視認性が低下する。
【0034】
上述の、マーカ30の幅Wm、下地40の幅Wb、および、凸部52の幅Waは、本体部10のマーカ表示区間において、本体部10の延伸方向に沿った20mmの範囲に含まれる、マーカ30の幅の平均値、下地40の幅の平均値、および、凸部52の幅の平均値である。具体的には、本体部10のマーカ表示区間の縦断面において、任意の20mmの範囲に含まれるマーカ30の幅の合計をその範囲に含まれるマーカ30の本数で割ったものが幅Wmである。また、その範囲に含まれるマーカ30同士の間の下地40の幅の合計をその範囲に含まれるマーカ30同士の間の下地の数で割ったものが幅Wbである。また、その範囲に含まれる凸部52の幅の合計をその範囲に含まれる凸部52の数で割ったものが幅Waである。
【0035】
図4は、ガイドワイヤ1を生体管腔内で使用している状態を例示した説明図である。
図5は、生体管腔内において内視鏡カメラで観察したガイドワイヤ1の状態を示した説明図である。
図4では、十二指腸内に進出させた内視鏡(後方斜視鏡)2の先端からガイドワイヤ1を突出させ、ガイドワイヤ1の先端側を十二指腸乳頭DPから遠位胆管LBDに進出させた状態を示している。
図4において、細かい斜線部分は、十二指腸の体腔壁Bcwを示している。太い二点鎖線は、内視鏡カメラ(イメージセンサ23)の視界Viを示している。視界Viの内側の細かいドット部分は、被写界深度Dfを表しており、空白部分は、被写界深度Dfの外側の被写体深度外範囲(ピンボケ範囲)Rofを表している。被写界深度Dfは、内視鏡カメラにおいて焦点が合っているよう見える範囲を示しており、被写体深度外範囲Rofは、内視鏡カメラの近くで焦点が合わない範囲を示している。
図5は、内視鏡カメラ(イメージセンサ23)で撮像した内視鏡視点の撮像画像(撮像映像)であり、画像(映像)の右下に被写体深度外範囲Rofに位置する対象が表示され、それ以外の領域に被写界深度Dfに位置する対象が表示されている。
【0036】
内視鏡2は、撮像方式がいわゆる同時方式の電子内視鏡であり、先端に開口部21と、光照射部22と、イメージセンサ23とを備えている。開口部21は、内視鏡2の内側の図示しないルーメンと連通しており、開口部21からルーメン内のガイドワイヤ1の先端部を突出させることができる。開口部21は、ガイドワイヤ1の先端部の突出方向が内視鏡2の延伸方向と交差するように構成されている。光照射部22は、内視鏡2の先端に設けられており、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、又はレーザ等の白色光源からの白色光(観察光)OLを照射する。イメージセンサ23は、CCDの前面にカラーフィルタを設けたカラー撮像素子であり、内視鏡カメラとして機能する。なお、内視鏡2は、撮像方式がいわゆる面順次方式の電子内視鏡であってもよい。
【0037】
図4に示すように、開口部21からガイドワイヤ1を突出させた状態で光照射部22からガイドワイヤ1に向けて観察光OLを照射すると、ガイドワイヤ1の表面には、観察光OLが反射した反射光RLが生じる。この状態でイメージセンサ23(内視鏡カメラ)によってガイドワイヤ1を撮像すると、
図5に示すように、被写体深度外範囲Rofにおいて、樹脂層50の凹凸部55で反射した反射光RLの一部が光芒(反射光芒)Koとなって現れる。この光芒Koは、いわゆる「玉ボケ」のことであり、内視鏡カメラで撮像した撮像画像(撮像映像)に現れるぼんやりとした光の点である。被写界深度Dfの樹脂層50の凹凸部55には、焦点が合っているため、被写界深度Dfの部分では光芒(玉ボケ)Koはほぼ現れない。
【0038】
被写体深度外範囲Rofにおいて光芒Koが現れる理由について説明する。内視鏡2から、ガイドワイヤ1の表面に観察光(照射光)OLが照射されると、樹脂層50の表面の凹凸部55は、観察光OLを反射して、反射光RLを照射する光源として作用する。被写体深度外範囲Rofにおいて、凹凸部55の反射光RLは、光学的には「被写体深度外にある光源」となるため、内視鏡カメラで撮像した撮像画像(撮像映像)において、光芒(反射光芒)Koとなって現れる。樹脂層50の凹凸部55に現れる光芒Koによって、いわゆる「ちらつき」が生じ、撮像画像においてマーカ30の視認性が低下する。
【0039】
図6は、ガイドワイヤ1に観察光OLを照射した状態を示した説明図である。
図6は、
図3と同じ部分を示している。上述のように、内視鏡2の撮像方式がいわゆる同時方式のため、内視鏡2の光照射部22は、キセノンランプの白色の観察光OLを照射する。この白色の観察光OLをガイドワイヤ1の外表面に照射すると、樹脂層50の表面と、下地40の表面の両方で反射が生じる。
図6では、樹脂層50の表面に照射される観察光OL、および、その反射光RLをそれぞれ細線で示し、下地40の表面に照射される観察光OL、および、その反射光RLをそれぞれ太線で示している。マーカ30は黒色であるため、マーカ30の表面では観察光OLの反射がほぼ生じない。
【0040】
光照射部22から照射される観察光OLと、下地40とがともに白色のため、下地40に反射した反射光RLは、相対的に強い白色光となる。よって、マーカ30の表面と下地40の表面の両方を覆う樹脂層50のうち、下地40の表面を覆う樹脂層50の凹凸部55では、背後の光源(下地40)から強い光(反射光RL)が照射される。そのため、下地40の表面を覆う樹脂層50では、光芒Koは下地40からの白色の反射光RLによって打ち消される。言い換えると、マーカ30の表面と下地40の表面の両方を覆う樹脂層50のうち、マーカ30の表面を覆う樹脂層50の凹凸部55において光芒Koが現れ、下地40の表面を覆う樹脂層50の凹凸部55では光芒Koは打ち消され現れない。
【0041】
樹脂層50の凹凸部55のうち、凹部51付近には樹脂層50で反射した反射光RLが集まるため、光芒Koは、マーカ30の表面を覆う樹脂層50の凹部51付近に現れる。言い換えると、光芒Koは、マーカ30を覆う樹脂層50のうち、凹凸部55の谷間付近に現れる。本実施形態のガイドワイヤ1は、上述の式(2)に示すように、マーカ30の幅Wmが、凸部52の幅Waよりも広いため、凹凸部55の谷間付近に現れる光芒Koの幅よりもマーカ30の幅Wmが広くなる。そのため、マーカ30を覆う樹脂層50に光芒Koが現れることによって、マーカ30の一部分の視認性が低下しても、同じマーカ30において、光芒Koの下に位置しない部分が存在するため、画像(撮像映像)において、そのマーカ30を視認することができる。
図6の2つのマーカ30のうちの左側のマーカ30では、マーカ30の左側は光芒Koによって視認性が低下するが、マーカ30の右側は光芒Koと重ならず視認可能になる。
図6の2つのマーカ30のうちの右側のマーカ30では、マーカ30の中央付近は光芒Koによって視認性が低下するが、マーカ30の右端と左端は光芒Koと重ならず視認可能になる。
【0042】
また、本実施形態のガイドワイヤ1は、上述の式(1)に示すように、マーカ30のピッチ(=Wm+Wb)と、樹脂層50の凸部52のピッチ(=Wa)とが異なるように構成されている。これにより、マーカ30上で光芒Koが現れる位置がマーカ30ごとに変化するため、マーカ30の実際の幅を把握しやすくなり、マーカ30の視認性を向上させることができる。また、本実施形態のガイドワイヤ1は、上述の式(3)に示すように、マーカ30の表面積が下地40の表面積の35%以下となっている。すなわち、マーカ30の幅Wmが下地40の幅Wbの0.35倍よりも小さくなっている。これにより、マーカ30の上に光芒Koが現れたときに、光芒Koの両側のマーカ30が同じ1本のマーカなのか、異なる2本のマーカ30なのかを識別しやすくなる。
【0043】
なお、内視鏡2は、撮像方式がいわゆる同時方式のであると説明したが、面順次方式であってもよい。内視鏡2の撮像方式が面順次方式であった場合、光照射部22は、キセノンランプの白色光をRGB回転フィルターで分光して照射する。また、イメージセンサ23は、単色CCDイメージセンサとなる。この場合であっても、撮像画像(撮像映像)を確認する人間の目には観察光OLは白色光として捉えられ、また、下地40と同じ色に捉えられる。よって、上述のように、マーカ30の表面と下地40の表面の両方を覆う樹脂層50のうち、マーカ30の表面を覆う樹脂層50の凹凸部55において光芒Koが現れ、下地40の表面を覆う樹脂層50の凹凸部55では光芒Koは打ち消され現れない。このことから、ガイドワイヤ1によれば、内視鏡2の撮像方式によらず同じ効果を得ることができる。
【0044】
図7は、比較例1のガイドワイヤ1Aに観察光OLを照射した状態を示した説明図である。比較例1のガイドワイヤ1Aは、第1実施形態のガイドワイヤ1(
図6)と比較すると、比較例1のマーカ30aの幅Wm1が、第1実施形態のマーカ30(
図6)の幅Wmよりも小さい(Wm1<Wm)。また、比較例1の下地40aの幅Wb1が、第1実施形態の下地40の幅Wbよりも大きい(Wb1>Wb)。それ以外の構成は、第1実施形態のガイドワイヤ1と同様である。すなわち、樹脂層50の凸部52の幅Waは同じである。
【0045】
比較例1のガイドワイヤ1Aは、上述の式(2)を満たさず、マーカ30aの幅Wm1が、凸部52の幅Waよりも小さい(Wm1<Wa)。そのため、凹凸部55の谷間付近に現れる光芒Koの幅がマーカ30aの幅Wmaとほぼ同じ大きさになる。すなわち、
図7に示すように、マーカ30aを覆う樹脂層50に現れる光芒Koよって、マーカ30aの全体の視認性が低下する。
【0046】
図8は、比較例2のガイドワイヤ1Bに観察光を照射した状態を説明するための図である。比較例2のガイドワイヤ1Bは、第1実施形態のガイドワイヤ1(
図6)と比較すると、比較例2のマーカ30bの幅Wm2が、第1実施形態のマーカ30(
図6)の幅Wmよりも大きい(Wm2>Wm)。また、比較例2の下地40bの幅Wb2が、第1実施形態の下地40の幅Wbよりも小さい(Wb2<Wb)。それ以外の構成は、第1実施形態のガイドワイヤ1と同様である。すなわち、樹脂層50の凸部52の幅Waは同じである。
【0047】
比較例2のガイドワイヤ1Bは、上述の式(2)を満たさず、マーカ30bの幅Wm2が、凸部52の幅Waの2倍よりも大きい(Wm2>2×Wa)。そのため、1つのマーカ30bの上に樹脂層50の凹部51が複数位置し、複数の凹部51のそれぞれに光芒Koが現れる。互いに近接する複数の光芒Koはつながって1つの大きな光芒Koに見えるため、2つの光芒Ko間からのマーカ30bの視認性は大きく低下する。よって、
図8に示すように、マーカ30bは複数の光芒Koがつながった大きな光芒Koによって中央付近全体の視認性が低下し、マーカ30bの右端と左端のみが光芒Koと重ならず視認可能になる。このように、マーカ30bの幅Wm2を、凸部52の幅Waの2倍よりも大きくすると、マーカ30bの幅の割に光芒Koによる視認性の低下を抑制できない。一方で、マーカ30bの幅が大きくなると、撮像画像においてマーカ30bの全体が把握しづらくなり視認性が低下する。
【0048】
図9は、ガイドワイヤ1と併用デバイス90を使用した状態を示した説明図である。
図9は、
図3と同じ部分を示している。上述のように、マーカ30、下地40、および、樹脂層50は、マーカ30の幅Wmが、凸部52の幅Waよりも大きい(Wa<Wm)。そのため、樹脂層50のうち、マーカ30の上方に位置する部分EAの表面に、凹凸部55による凹凸が位置することになる。マーカ30は顔料を多く含んでいるため、樹脂層50との親和性が低く、密着性が相対的に低い。そのため、併用デバイス90が樹脂層50の表面に接触すると、樹脂層50との間の摩擦力によって引っ掛かり、樹脂層50がマーカ30から剥離することがあった。本実施形態のガイドワイヤ1によれば、凹凸が形成されているため、併用デバイス90と樹脂層50とが接触したときに、脂層50との間の摩擦力が低減(摺動性が向上)するため、樹脂層50の剥離を抑制することができる。
【0049】
図10は、比較例3のガイドワイヤ1Dと併用デバイス90を使用した状態を示した説明図である。比較例3のガイドワイヤ1Dは、第1実施形態のガイドワイヤ1(
図6)と比較すると、樹脂層50の構成が異なる。具体的には、比較例3の樹脂層50dは、凸部52dの幅Wa3が、マーカ30の幅Wmよりも大きい(Wa3>Wm)。それ以外の構成は、第1実施形態のガイドワイヤ1と同様である。すなわち、マーカ30aの幅Wm、下地40の幅Wbは同じである。
【0050】
比較例3のガイドワイヤ1Dは、凸部52dの幅Wa3がマーカ30の幅Wmよりも大きい(Wa3>Wm)ため、樹脂層50dのうち、マーカ30の上方に位置する部分EAの表面に凹凸部55dによる凹凸がない、または、凹凸があってもその数が少なくなる。そのため、樹脂層50dの部分EAの表面が相対的に平坦になる。これにより、併用デバイス90が樹脂層50dの表面に接触すると、樹脂層50dとの間の摩擦力によって引っ掛かりやすく、樹脂層50dがマーカ30から剥離しやすい。
【0051】
以上説明した、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、
図6に示すように、本体部10の延伸方向に沿った縦断面において、マーカ30の幅Wmが凸部52の幅Waより広いため、マーカ30を覆う樹脂層50の凹凸部55で光が反射しても、光芒(玉ボケ)Koによるマーカ30の視認性の低下を抑制できる。本実施形態のガイドワイヤ1は、表面に凹凸部55の樹脂層50が形成されたガイドワイヤは、撮像されたときに凹凸部55に光芒Koが生じマーカ30の視認性が低下するという新規の課題を解決するものであり、このような課題は特許文献1~4には開示も示唆もされていない。
【0052】
また、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、樹脂層50の表面に凹凸部55が形成されているため、体腔壁との接触面積が減り、摺動時に摩擦を低減でき滑り性の向上を図ることができる。また、樹脂層50の表面の凹凸により併用デバイス90との摺動性の向上を図ることができる。
【0053】
また、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、下地40とマーカ30との境界部は平坦に形成されている。これにより、マーカ30が突出している場合に比べて樹脂層50の凹凸部55の凹部51や凸部52の高さ(位置)をより均一にすることができる。また、凸部52のピッチと、マーカ30とのピッチを容易に異ならせることができる。これにより、凹凸設計に自由度が高まり、滑り性をより向上させることができる。また、下地40とマーカ30との境界部を平坦にすることで、マーカ30は下地40にめり込んだ形になるため、下地40とマーカ30との接触面積が増加し剥離強度を高めることができる。
【0054】
また、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、下地40が白色に近い色のため、下地40の上の樹脂層50において光芒Koを打ち消すことができる。また、本実施形態のガイドワイヤ1によれば、マーカ30と下地40とのコントラストが大きいため、マーカ30の視認性を向上できる。
【0055】
<第2実施形態>
図11は、第2実施形態のガイドワイヤ1Cの全体構成を例示した説明図である。第2実施形態のガイドワイヤ1Cは、第1実施形態のガイドワイヤ1(
図1)と比較すると、マーカ30cの表示態様が異なる。それ以外の構成は、第1実施形態のガイドワイヤ1と同様であるため説明を省略する。第2実施形態のマーカ30cは、一定の幅の螺旋模様を有している。そのため、コアシャフト20の外周を覆う円筒形状の下地40cを展開した展開図において、複数の斜線が軸方向に並んだ模様となるように形成されている。下地40cが形成されたコアシャフト20を、延伸方向(軸線方向)を回転軸にして一方向に回転させた状態で、下地40cに向けて垂らした顔料を延伸方向に沿って移動させることによって、螺旋模様を形成することができる。マーカ30cのピッチは一定となっている。
【0056】
マーカ30c、下地40c、および、樹脂層50は、上述の式(1)を満たすため、マーカ30c上で光芒(玉ボケ)が現れる位置をマーカ30cごとに変化させることができる。これにより、マーカ30の視認性を向上させることができる。また、マーカ30c、下地40c、および、樹脂層50は、上述の式(2)を満たすため、マーカ30cを覆う樹脂層50の凹凸部55で光が反射しても、光芒(玉ボケ)によるマーカ30の視認性の低下を抑制できる。また、マーカ30cおよび下地40cは、上述の式(3)を満たすため、下地40cに対するマーカ30cの視認性を向上させることができる。
【0057】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0058】
[変形例1]
第1実施形態および第2実施形態のマーカ30、30cは、ピッチが一定であるものとした。しかし、マーカ30、30cのピッチは一定でなくてもよい。また、マーカ30、30cの幅は一定であるものとした。しかし、マーカ30、30cの幅は途中で変化してもよい。
【0059】
[変形例2]
第1実施形態および第2実施形態のマーカ30、30cは、下地40、40cのうちの一部(マーカ表示区間)に表示されているものとした。しかし、マーカ30、30cは、下地40、40cの全体に形成されていてもよい。また、マーカ30、30cは、1つの模様(パターン)で描かれているものとした。しかし、マーカ30、30cは、複数種類の模様を有していてもよい。この場合、マーカ30、30cは、模様が連続的に変化していく態様であってもよいし、所定の区間ごとに異なる模様となっていてもよい。また、マーカ30、30cは、下地40、40cの途中で切れて複数箇所に描かれていてもよい。例えば、マーカ30、30cは、複数種類の模様が所定の間隔を空けて複数箇所に描かれていてもよいし、環状の模様が等間隔に連続して描かれていてもよい。
【0060】
[変形例3]
第1実施形態および第2実施形態の樹脂層50の凹凸部55は、凸部52のピッチが一定であるものとした。しかし、凸部52のピッチは一定でなくてもよい。また、樹脂層50は、部分的に凹凸部55の代わりに平坦部を有していてもよい。
【0061】
[変形例4]
第1実施形態および第2実施形態では、マーカ30、30cと下地40、40cはピッチが同じであり、上述の式(1)を満たすものとした。しかし、マーカ30、30cと下地40、40cは同じピッチで式(1)を満たさなくてもよい。この場合であっても、マーカ30、30cの幅Wmが、凸部52の幅Waよりも大きければ、マーカ30、30cを覆う樹脂層50の凹凸部55で光が反射しても光芒(玉ボケ)によるマーカ30、30cの視認性の低下を抑制できる。なお、マーカ30、30cと下地40、40cは、式(1)を満たす方が好ましい。
【0062】
[変形例5]
第1実施形態および第2実施形態では、マーカ30、30cと樹脂層50は、マーカ30、30cの幅Wmが、凸部52の幅Waの2倍よりも小さくなるものとした。しかし、マーカ30、30cと樹脂層50は、マーカ30、30cの幅Wmが、凸部52の幅Waの2倍よりも大きくてもよい。この場合であっても、マーカ30、30cの幅Wmが、凸部52の幅Waよりも大きければ、マーカ30、30cを覆う樹脂層50の凹凸部55で光が反射しても光芒(玉ボケ)によるマーカ30、30cの視認性の低下を抑制できる。なお、マーカ30、30cと樹脂層50は、マーカ30、30cの幅Wmが、凸部52の幅Waの2倍よりも小さく、式(2)を満たす方が好ましい。
【0063】
[変形例6]
第1実施形態および第2実施形態では、マーカ30、30cの表面積は下地40、40cの表面積の35%以上であるものとした。しかし、マーカ30、30cの表面積は下地40、40cの表面積の35%より小さくてもよい。この場合であっても、マーカ30、30cの幅Wmが、凸部52の幅Waよりも大きければ、上述のとおりマーカ30、30cの視認性の低下を抑制できる。なお、マーカ30、30cの表面積は下地40、40cの表面積の35%以下であり、式(3)を満たす方が好ましい。
【0064】
[変形例7]
第1実施形態および第2実施形態では、マーカ30の明度が下地40の明度よりも低いものとした。しかし、マーカ30の明度が下地40の明度よりも高くてもよい。この場合であっても、マーカ30と下地40のコントラストによって、マーカ30を視認することができる。
【0065】
[変形例8]
第1実施形態および第2実施形態の、マーカ30、30cの幅Wm、下地40、40cの幅Wb、および、凸部52の幅Waは、本体部10の20mmの範囲に含まれる、それぞれの幅の平均値であるとした。すなわち、マーカ30、30cの幅Wm、下地40、40cの幅Wb、および、凸部52の幅Waは、部分的に、上述の式(1)~(3)を満たしていなくても、本体部10の20mmの範囲の平均値として式(1)~(3)を満たしていれば、マーカ30、30cの視認性の向上を図ることができる。
【0066】
[変形例9]
第1実施形態および第2実施形態のガイドワイヤ1、1Cは、先端にコイル体60を備えいているものとした。しかし、ガイドワイヤ1、1Cは、コイル体60を備えていなくてもよい。
【0067】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0068】
1、1A~1C…ガイドワイヤ
2…内視鏡
10…本体部
20…コアシャフト
21…開口部
22…光照射部
23…イメージセンサ
30、30a~30c…マーカ
40、40a~40c…下地
50…樹脂層
51…凹部
52…凸部
55…凹凸部
60…コイル体
70…先端接合部
80…基端側接合部