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特許7461754ポリイソシアネート化合物、並びに、それを用いたポリウレタン樹脂形成用組成物、及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】ポリイソシアネート化合物、並びに、それを用いたポリウレタン樹脂形成用組成物、及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/79 20060101AFI20240328BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20240328BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240328BHJP
【FI】
C08G18/79 020
C08G18/62 016
C08J7/04 A CER
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020026827
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021130775
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】紺野 貴史
(72)【発明者】
【氏名】渡部 淳
(72)【発明者】
【氏名】畑中 慎太郎
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-130119(JP,A)
【文献】特開2013-001897(JP,A)
【文献】特開昭60-047013(JP,A)
【文献】特開2012-187541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08J 7/00- 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
[式中のR1~R3は、同一又は異なって、下記式(1a)
【化2】
(式(1a)中、L1、L2は、同一又は異なって、炭素数1~10のアルキレン基を示し、mは0以上の数を示し、L3ヘキサメチレン基を示し、Xは一部又は全部がブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネート基を示す。ただし、mはR1~R3について同時に0でない。波線のついた結合手が式中の窒素原子に結合する)で表される基である]
で表されるポリイソシアネート化合物。
【請求項2】
イソシアネート基濃度が6~14重量%である、請求項1に記載の化合物
(ただし、ブロックイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基濃度は、ブロックイソシアネート基をイソシアネート基に置き換えた化合物について得た値である)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物と、ポリアクリルポリオールとを含有する、ポリウレタン樹脂形成用組成物。
【請求項4】
組成物中の、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とブロックイソシアネート基の合計と、ポリアクリルポリオール中の水酸基との当量比((イソシアネート基+ブロックイソシアネート基)/水酸基)が、0.5~2.0である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
コーティング剤である、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項3~5の何れか1項に記載の組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化物からなる被膜が、表面の少なくとも一部を被覆するプラスチック成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示に係る発明は、ポリイソシアネート化合物、並びに、それを用いたポリウレタン樹脂形成用組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、柔軟性、伸縮性、及び強度を備える。そのため、ポリウレタン樹脂成形用の組成物は、コーティング剤等に広く使われている。
上記コーティング剤、例えば、車両用部材や電子デバイス等を構成するプラスチック基材を被覆する用途に使用されるコーティング剤には、基材への耐擦傷性、及び可撓性を備える被膜を形成できることが求められる。
このようなコーティング剤としては、特許文献1、2に記載の、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのカプロラクトン変性体であるポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるポリイソシアネート化合物と、ポリアクリルポリオールとを含有するポリウレタン樹脂形成用組成物が知られている。
【0003】
しかし、近年、日焼け止め剤等の薬剤がポリウレタン樹脂からなる被膜に接触すると、被膜の外観が劣化することが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-42746号公報
【文献】特開昭61-28518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本開示の目的は、硬度、耐擦傷性、薬剤耐性、及び可撓性に優れた硬化物を形成可能な組成物について、硬化剤として使用することができるポリイソシアネート化合物を提供することにある。
本開示の他の目的は、硬度、耐擦傷性、薬剤耐性、及び可撓性に優れた硬化物を形成可能な組成物を提供することにある。
本開示の他の目的は、硬度、耐擦傷性、薬剤耐性、及び可撓性に優れた硬化物を提供することにある。
本開示の他の目的は、硬度、耐擦傷性、薬剤耐性、及び可撓性に優れた硬化物によって、表面の少なくとも一部が被覆されてなるプラスチック成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート化合物と、ポリアクリルポリオールとを反応させて得られるポリウレタン樹脂は、硬度、耐擦傷性、及び可撓性に優れるとともに、薬剤耐性にも優れることを見いだした。本開示に係る発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0007】
すなわち、本開示に係る発明は、下記式(1)で表されるポリイソシアネート化合物を提供する。
【化1】
式中のR1~R3は、同一又は異なって、下記式(1a)で表される基である。
【化2】
式(1a)中、L1、L2は、同一又は異なって、炭素数1~10のアルキレン基を示し、mは0以上の数を示し、L3は炭素数4~18の2価の炭化水素基を示し、Xはイソシアネート基、又はブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネート基を示す。ただし、mはR1~R3について同時に0でない。波線のついた結合手が式(1)中の窒素原子に結合する。
【0008】
本開示に係る発明は、また、イソシアネート基濃度が6~14重量%である、上記ポリイソシアネート化合物を提供する。
【0009】
本開示に係る発明は、また、上記ポリイソシアネート化合物と、ポリアクリルポリオールとを含有する、ポリウレタン樹脂形成用組成物を提供する。
【0010】
本開示に係る発明は、また、組成物中の、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とブロックイソシアネート基の合計と、ポリアクリルポリオール中の水酸基との当量比((イソシアネート基+ブロックイソシアネート基)/水酸基)が、0.5~2.0である、上記ポリウレタン樹脂形成用組成物を提供する。
【0011】
本開示に係る発明は、また、コーティング剤である、上記ポリウレタン樹脂形成用組成物を提供する。
【0012】
本開示に係る発明は、また、上記ポリウレタン樹脂形成用組成物の硬化物を提供する。
【0013】
本開示に係る発明は、また、上記硬化物からなる被膜が、表面の少なくとも一部を被覆するプラスチック成形品を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本開示のポリイソシアネート化合物は、硬度、耐擦傷性、薬剤耐性、及び可撓性に優れた硬化物を形成するポリウレタン樹脂形成用組成物において、硬化剤として使用することができる。
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物を、基材を被覆するコーティング剤として使用すると、可撓性に優れ剥離しにくい硬化物の被膜により、基材に硬度、耐擦傷性、薬剤耐性を付与することができる。
【0015】
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物の硬化物によって、表面の少なくとも一部が被覆されてなるプラスチック成形品は、高い表面硬度を有し、耐擦傷性及び薬剤耐性に優れる。そのため、上記プラスチック成形品を、例えば日焼け止め剤等が付着した手で触っても、表面を被覆する上記硬化物が剥離したり、白濁したりすることはなく優れた外観、硬度、及び耐擦傷性を長期に亘って保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本開示に係る発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
[ポリイソシアネート化合物]
本開示のポリイソシアネート化合物は、下記式(1)で表される、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート化合物である。
【化3】
式中のR1~R3は、同一又は異なって、下記式(1a)で表される基である。
【化4】
式(1a)中、L1、L2は、同一又は異なって、炭素数1~10のアルキレン基を示し、mは0以上の数を示し、L3は炭素数4~18の2価の炭化水素基を示し、Xはイソシアネート基、又はブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネート基を示す。mはR1~R3について同時に0でなく、波線のついた結合手が式(1)中の窒素原子に結合する。
【0018】
1、L2における炭素数1~10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
【0019】
上記L1としては、なかでも、炭素数1~3のアルキレン基が好ましい。
【0020】
上記L2としては、なかでも、炭素数1~8のアルキレン基が好ましく、炭素数4~6のアルキレン基がより好ましい。また、上記アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基が好ましい。
【0021】
上記L3は炭素数4~18の2価の炭化水素基であり、炭素数4~18の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数4~18の2価の脂環族炭化水素基、又は炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0022】
炭素数4~18の2価の脂肪族炭化水素基はとして、例えば、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、トリメチルヘキサメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数6~12の2価の脂肪族炭化水素基がより好ましく、ヘキサメチレン基が更に好ましい。
【0023】
炭素数4~18の2価の脂環族炭化水素基は、炭素数4~18の脂環族炭化水素から2つの水素原子を除いた基であって、例えば、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキサンジメチレン基、1,4-シクロヘキサンジメチレン基、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート残基、イソホロン残基等が挙げられる。なかでも、炭素数6~10の2価の脂環族炭化水素基がより好ましく、イソホロン残基が更に好ましい。
【0024】
炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基は、炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素から2つの水素原子を除いた基であって、例えば、メチルフェニレン基、メタンジフェニレン基、エタンフェニレン基、ナフチレン基、ジメチルフェニレン基、フェニレン基等が挙げられる。
【0025】
上記mは、式(1a)の括弧で示される単位の重合度の平均値であり、0以上の数であって、例えば、0~7.0、好ましくは1.0~4.0、より好ましくは1.0~3.0である。
【0026】
本開示のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基濃度は、6~14重量%であることが好ましく、より好ましくは7~13重量%、更に好ましくは8~12重量%、特に好ましくは9~12重量%である。
イソシアネート基濃度は、JIS K 1603-1 A法に準拠して、テトラヒドロフラン(THF)により希釈した試料に対し、ジブチルアミンのTHF溶液(0.1mol/L)を加え、過剰量のジブチルアミンによりイソシアネート基を完全に反応(尿素化)させてから、未反応の残存ジブチルアミンを標準塩酸滴定液(0.1mol/L)により逆滴定を行うことにより、算出することができる。
イソシアネート基濃度が6重量%未満であると得られるポリウレタン樹脂の薬剤耐性が低くなる傾向があり、イソシアネート基濃度が14重量%超であると得られるポリウレタン樹脂の可撓性が低くなる傾向がある。
【0027】
本開示のイソシアネート化合物のイソシアネート基は、一部又は全部がブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネート基であってもよい。ブロックイソシアネート基は、イソシアネート基とブロック剤とが反応して生成する。熱硬化時の加熱に曝されると、ブロックイソシアネート基からブロック剤が解離してイソシアネート基が再生する。
【0028】
ブロック剤としては、例えば、イミダゾール系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、オキシム系化合物、ラクタム系化合物、アミン系化合物、ピラゾール系化合物、重亜硫酸塩などが挙げられる。
【0029】
イミダゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール等が挙げられる。
【0030】
アルコール系化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-エトキシヘキサノール、2-N,N-ジメチルアミノエタノール、2-エトキシエタノール、シクロヘキサノール、ブチルセルソルブ、エチルセルソルブ等が挙げられる。
【0031】
フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、クレゾール、4-ヒドロキシ安息香酸メチル等が挙げられる。
【0032】
活性メチレン系化合物としては、例えば、メルドラム酸、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、マロン酸ジメチル、シアノ酢酸エチル、イソブタノイル酢酸メチル等が挙げられる。
【0033】
オキシム系化合物としては、例えば、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、メチルイソブチルケトキシム、2-ヘプタノンオキシム等が挙げられる。
【0034】
ラクタム系化合物としては、例えば、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピロラクタム等が挙げられる。
【0035】
アミン系化合物としては、例えば、ジブチルアミン、4-フェニルブチルアミン、6-メチル-2-ピペリジン等が挙げられる。
【0036】
ピラゾール系化合物としては、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3,5-ジイソプロピルピラゾール等が挙げられる。
【0037】
重亜硫酸塩としては、例えば、重亜硫酸ソーダ等が挙げられる。
【0038】
ブロック剤としては、低温硬化性、薬剤耐性及び可撓性の点から、アルコール系化合物、活性メチレン系化合物が好ましい。
【0039】
ブロック剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
本開示のポリイソシアネート化合物がブロックイソシアネート基を有する場合の上記イソシアネート基濃度は、ブロックイソシアネート基をイソシアネート基に置き換えた化合物について得た値である。
【0041】
本開示のポリイソシアネート化合物は、イソシアヌレート基を複数有する多量体(2~6量体)を含んでもよい。
多量体は、2個以上の上記式(1)で表されるポリイソシアネート化合物と下記ポリエステルポリオール化合物(1’)とが、末端イソシアネート基と末端水酸基との反応により結合したものであって、イソシアヌレート基が、下記式(1b)で表される基によって連結しているものである。
【化5】
式(1b)中、L1、L2、L3及びmは上記式(a)中のL1、L2、L3及びmと同じであり、波線のついた2つの結合手が、それぞれイソシアヌレート基の窒素原子に結合する。
【0042】
本開示のポリイソシアネート化合物は、例えば、イソシアヌレート基を有する下記ポリエステルポリオール化合物(1’)と、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートから選択される少なくとも一種のジイソシアネートとを反応させて製造することができる。
上記ポリオールと上記ジイソシアネートは、上記ジイソシアネートのイソシアネート基と上記ポリオール化合物の水酸基との当量比(イソシアネート基/水酸基)を5~40の範囲となるようにして反応させるのが好ましく、より好ましくは6~30であり、更に好ましくは7~20である。
当量比(イソシアネート基/水酸基)が上記範囲内であると、下記ポリエステルポリオール化合物(1’)と上記ジイソシアネートとが過度に反応せず1対3のモル比(ポリオール化合物/ジイソシアネート=1/3)で反応しやすくなるので、イソシアネート基を3つ有する単量体であるポリイソシアネート化合物が得られやすくなる。
未反応のジイソシアネートは蒸留、抽出等により除去されるが、本開示のポリイソシアネート化合物は、1.0重量%以下の未反応の上記ジイソシアネートを含有していてもよい。
【0043】
(ポリオール)
上記ポリオールは、下記式(1’)で表されるポリエステルポリオール化合物である。
【化6】
式中のR1'~R3'は、同一又は異なって、下記式(1a’)で表される基である。
【化7】
式(1a’)中のL1、L2、mは、上記式(1a)中のL1、L2、mと同じである。
【0044】
ポリエステルポリオール化合物(1’)の数平均分子量(Mn:標準ポリスチレン換算)は、好ましくは570~2000、より好ましくは580~1500、更に好ましくは590~1200、特に好ましくは590~1100、最も好ましくは590~900である。
【0045】
また、ポリエステルポリオール化合物(1’)の分子量分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、例えば、1.0~3.0である。
【0046】
ポリエステルポリオール化合物(1’)の水酸基価(KOHmg/g)は、例えば80~400KOHmg/gであり、なかでも、得られる硬化物の耐擦傷性及び薬剤耐性を向上できる点で、好ましくは110~350KOHmg/g、より好ましくは150~300KOHmg/g、更に好ましくは160~290KOHmg/g、特に好ましくは180~285KOHmg/gである。
尚、水酸基価はJIS-K1557に記載の水酸基価測定方法により測定することができる。
【0047】
ポリエステルポリオール化合物(1’)は、例えば、下記式(1”)で表される化合物(1”)の水酸基を起点にしてラクトンを開環重合させることにより製造することができる。
式(1”)中のL1は、上記式(1a)、及び式(1a')中のL1と同じである。
【化8】
【0048】
上記ラクトンとしては、例えば、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0049】
尚、ポリエステルポリオール化合物(1’)の数平均分子量及び分子量分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、下記の装置及び条件により測定することができる。
測定装置:高速GPC装置「HLC-8220GPC」、東ソー(株)製
移動相:テトラヒドロフラン
【0050】
(ジイソシアネート)
本開示に用いるジイソシアネートは、炭素数4~18のジイソシネートであって、好ましくは、炭素数4~18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4~18の脂環族ジイソシアネート、及び炭素数6~18の芳香族ジイソシアネートから選択される少なくとも一種である。なお、上記ジイソシアネートの炭素数は、イソシアネート基に係る2つの炭素を含まない数である。
【0051】
炭素数4~18の脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート、1,8-オクタメチレンジイソシアネート、1,9-ノナメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0052】
炭素数4~18の脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
及び炭素数6~18の芳香族ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等が挙げられ、ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0054】
[ポリウレタン樹脂形成用組成物]
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物は、硬化剤である上記ポリイソシアネート化合物と、ポリアクリルポリオールとを含有する。
【0055】
上記ポリイソシアネート化合物とポリアクリルポリオールの配合は、得られる硬化物の耐擦傷性及び薬剤耐性を向上できる点から、上記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基とブロックイソシアネート基の合計と、上記ポリアクリルポリオールが有する水酸基の当量比((イソシアネート基+ブロックイソシアネート基)/水酸基)が0.5~2.0となるようにするのが好ましく、より好ましくは0.5~1.5、更に好ましくは0.7~1.3、特に好ましくは0.9~1.2である。
【0056】
また、上記組成物中における上記ポリイソシアネート化合物の含有量は、得られる硬化物の耐擦傷性及び薬剤耐性を向上できる点から、上記ポリウレタン樹脂形成用組成物100重量部に対して、100~400重量部が好ましく、より好ましくは150~350重量部、更に好ましくは200~300重量部である。
【0057】
(ポリアクリルポリオール)
上記アクリルポリオールは、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物と、それ以外の他の(メタ)アクリル化合物とを共重合して製造することができる。
上記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いるのが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
上記他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-メチル-[1,3]-ジオキソラン-4-イル-メチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、炭素数1~10のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
上記アクリルポリオールの水酸基価は、30~100KOHmg/gが好ましく、40~80KOHmg/gがより好ましい。
アクリルポリオールの水酸基価が30KOHmg/g未満であると得られるポリウレタン樹脂の薬剤耐性が低くなる傾向があり、100KOHmg/g超であると得られるポリウレタン樹脂の可撓性が低くなる傾向がある。
【0060】
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物は、必要に応じて、更に無機粒子、有機粒子、添加剤、触媒等を含有してもよい。
【0061】
(無機粒子)
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物が更に含んでいてもよい無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、合成マイカ、タルク、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、カオリン、ベントナイト、珪藻土、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、ガラスビーズ、ガラス繊維、グラファイト、カーボンナノチューブ、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。なかでも、得られるポリウレタン樹脂の薬剤耐性及び耐擦傷性を向上できる点から、シリカが好ましい。
【0062】
(有機粒子)
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物が更に含んでいてもよい有機粒子としては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、アクリルビーズ、ウレタンビーズ等が挙げられる。なかでも、塗膜の触感(ソフトフィール性)を向上できる点から、ウレタンビーズが好ましい。
【0063】
これら無機粒子及び有機粒子は、区別なく1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
無機粒子及び有機粒子の粒径は、特に限定されないが、良好な外観の点から、0.01nm~1μmが好ましい。
【0065】
(添加剤)
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物が更に含んでいてもよい添加剤としては、例えば、界面活性剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、消泡剤、湿潤剤、分散剤、粘弾性調整剤、チクソトロピー性付与剤、防腐剤、膜形成剤、可塑剤、浸透剤、香料、殺菌剤、防かび剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、艶消し剤等が挙げられる。
【0066】
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物組成物における無機粒子、有機粒子及び添加剤の含有量は、特に限定されないが、上記組成物の不揮発分総重量(100重量%)に対して、好ましくは10重量%以下である。
【0067】
(触媒)
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物が更に含んでいてもよい触媒としては、例えば、スズ系触媒(スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート等);ビスマス系触媒(ネオデカン酸ビスマス、2-エチルヘキサン酸ビスマス等);ジルコニア系触媒(2-エチルヘキサン酸ジルコニル、ナフテン酸ジルコニル等);その他有機金属触媒(フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸鉛等);アンモニウム塩触媒(テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物(テトラメチルアンモニウムクロライド等)、テトラアルキルアンモニウム水酸化物(水酸化テトラメチルアンモニウム塩等)、テトラアルキルアンモニウム有機酸塩(テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩等)等);アミン触媒(トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ビス[2‐(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等)などが挙げられる。触媒の配合量は、上記ポリイソシアネート化合物と上記ポリアクリルポリオールの合計100重量部に対して、好ましくは0.001~0.5重量部である。
【0068】
(溶剤)
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物は、溶剤を添加して粘度を調整することができる。
上記溶剤は、例えば、酢酸エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)などのエステル系溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等ハロゲン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶剤;アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール等)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、アルキレングリコールジアルキルエーテル(エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアルキルエステル(エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等)などのグリコール系溶剤などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物における上記溶剤の含有量は、組成物中の固形分濃度が、好ましくは70~99重量%、より好ましくは80~95重量%である。
また、上記溶剤の含有量は、ポリイソシアネート化合物とポリアクリルポリオールの合計100重量部に対して、好ましくは5~20重量部、より好ましくは7~17重量部、更に好ましくは9~15重量部である。
【0070】
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物は、上記成分を混合することにより製造することができる。
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物は、上記ポリイソシアネート化合物と上記ポリアクリルポリオールとを別個に保管して、使用時に混合する2液型コーティング剤とすることができる。
また、本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物は、上記ブロックイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と上記ポリアクリルポリオールとを予め混合して保管する1液型コーティング剤とすることができる。
【0071】
本開示のポリウレタン樹脂形成用組成物は、上記構成を有するため、加熱処理を施すことにより、上記ポリイソシアネート化合物と上記ポリアクリルポリオールとがウレタン結合して、硬化物(=ポリウレタン樹脂からなる硬化物)を形成することができる。
【0072】
上記加熱処理条件は、例えば50~100℃において、10~240分間程度である。加熱処理終了後は、更に、室温(1~30℃)の温度において12~60時間程度熟成してもよい。
【0073】
このようにして得られる硬化物は、基材(例えば、PET等のプラスチック基材)への密着性、耐擦傷性、及び可撓性に優れる。
【0074】
上記硬化物は高硬度を有し、鉛筆硬度(JIS K5600に準拠した方法による)は、例えば4B以上が好ましく、より好ましくは3B以上、更に好ましくはB以上である。
【0075】
上記硬化物は薬剤耐性に優れ、例えば、日焼け止め剤が付着しても、硬化物の表面が膨潤したり、白濁することがなく、耐サンスクリーン性に優れる。
【0076】
上記硬化物は上記特性を兼ね備える。そのため、上記硬化物を形成する上記組成物は、押出成形品、射出成形品や圧縮成形品等のプラスチック成形品のコーティング剤や、フィルム等の成形品の材料として好適である。上記プラスチック成形品としては、例えば、家電製品(冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビ等)の筐体、電子機器(パソコン、携帯電話、スマートフォン等)の筐体、楽器(ピアノ、エレクトーン、電子楽器等)を構成する部材;自動車や鉄道車両等の車両用部材(インスツルメントパネル、ドアトリム、ヘッドライニング、トノーカバー等の内装材、バンパー等の外装材)などが挙げられる。
【0077】
また、上記プラスチック成形品を形成するプラスチックとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0078】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;塩化ビニル樹脂等の塩化ビニル系樹脂;ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212等のポリアミド;ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等のポリフェニレンエーテル;PAN樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、AES樹脂、AXS樹脂等のアクリロニトリルの単独又は共重合体;(メタ)アクリル樹脂;ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリアミドイミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン、及びこれらの樹脂の変性品や誘導体、更にはこれらの樹脂を含有するポリマーブレンドやポリマーアロイなどが挙げられる。
【0079】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アリル樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0080】
[プラスチック成形品]
本開示の硬化物からなる被膜を表面の少なくとも一部に備えるプラスチック成形品は、硬度、耐擦傷性、薬剤耐性等に優れる。
【0081】
上記被膜の厚みは、特に制限されることはなく、例えば10~150μm程度である。
【0082】
また、上記ポリウレタン樹脂形成用組成物自体を材料としたプラスチック成形品も、上記硬化物からなる表面を備えるため、同様に、硬度、耐擦傷性、薬剤耐性等に優れる。
【0083】
上記の各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示に係る発明の主旨から逸脱しない範囲内において、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示に係る発明は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0084】
以下、実施例により本開示に係る発明をより具体的に説明するが、本開示に係る発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例2は参考例1と読み替えるものとする。

【0085】
実施例において使用したポリオール、ジイソシアネート、及び溶剤は以下の通りである。
(ポリオール)
・ポリオール1:トリス(2-ヒドロキシエチルイソシアヌレート)のカプロラクトン付加物(数平均分子量611、Mw/Mn=1.2、水酸基価280KOHmg/g)
・ポリオール2:トリス(2-ヒドロキシエチルイソシアヌレート)のカプロラクトン付加物(数平均分子量1068、Mw/Mn=1.3、水酸基価169KOHmg/g)
・303:PLACCEL 303((株)ダイセル製、ポリカプロラクトントリオール、数平均分子量400、Mw/Mn=1.2、水酸基価544KOHmg/g)
・305:PLACCEL 305((株)ダイセル製、ポリカプロラクトントリオール、数平均分子量640、Mw/Mn=1.4、水酸基価308KOHmg/g)
・309:PLACCEL 309((株)ダイセル製、ポリカプロラクトントリオール、数平均分子量987、Mw/Mn=1.5、水酸基価188KOHmg/g)
【0086】
(ジイソシアネート)
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー(株)製、分子量168.2)
・IPDI:イソホロンジイソシアネート(住化コベストロウレタン(株)製、分子量222.3)
【0087】
(アクリルポリオール)
A-801:アクリディックA-801(DIC(株)製、水酸基価50KOHmg/g)
【0088】
(溶剤)
・酢酸ブチル:東京化成工業(株)製試薬
【0089】
<合成例A-1>
還流用冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を備えた五つ口フラスコに、窒素ガス雰囲気下において、137gのポリオール1と、863gのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とを投入した後、撹拌しつつ内温を100℃に昇温して1時間反応させた。
得られた反応液について、160℃、0.2mmHgにおいて薄膜蒸留を行い、未反応のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を除去して、液状のポリイソシアネート化合物A-1を得た。
ポリイソシアネート化合物A-1のイソシアネート基濃度は、JIS K 1603-1 A法に準拠した逆滴定法により測定したところ、11重量%であった。
【0090】
<合成例A-2、A-3、比較合成例B-1~B-4>
合計1000gとなるように、表1に示す重量比により、ポリオール1、ポリオール2、303、305又は309と、ジイソシアネート(HDI)又はジイソシアネート(IPDI)を配合し、合成例A-1と同様の条件において反応させて、ポリイソシアネート化合物A-2、A-3、B-1~B-4を得た。
【0091】
<実施例1~3、比較例1~4>
表2に示す重量比によりポリイソシアネート化合物、アクリルポリオール、及び酢酸ブチルを混合し、ポリウレタン樹脂形成用組成物を得た。
【0092】
得られた組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100#100、東洋紡(株)製)に膜厚が50μmとなるようにスプレー塗装し、オーブンにより70℃において30分間、硬化、乾燥を行い、硬化被膜/PETフィルム積層体を得た。
【0093】
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜について、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐サンスクリーン性、破断伸度、破断強度を下記方法により評価した。
【0094】
(鉛筆硬度)
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜側表面の鉛筆硬度をJIS K5600に準拠した方法により評価した。
すなわち、積層体の硬化側表面を鉛筆(鉛筆の芯)によってこすり、表面に傷が確認できたものをNG(不良)とした。具体的には、ある硬さの鉛筆を用いて評価を行い、傷がつかなかった場合に、1つ上の硬さの鉛筆により評価を行うという作業を繰り返した。傷が確認できたらその1つ下の硬さによって再評価し、また、傷が確認できなかったら、再度1つ上の硬さの鉛筆を用いて評価した。2回以上の再現性が確認できた場合、傷がつかない最も硬い鉛筆の硬度をその硬化被膜の鉛筆硬度とした。
評価用鉛筆:三菱鉛筆(株)製「鉛筆硬度試験用鉛筆」
荷重:750gf
引っ掻き距離:7mm以上
引っ掻き角度:45°
測定環境:23℃、50%RH
尚、試験には、23℃、50%RHの恒温恒湿機にて24時間調湿した積層体を用いた。
【0095】
(耐擦傷性)
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜側表面の耐擦傷性について、ラビングテスター(標準型、日本理化工業(株)製)にスチールウール(B-204、ボンスター業務用#0000)を取付け、500gの荷重をかけた状態において被膜上を往復(10往復)させることにより擦傷試験を行った。
光沢計(Gloss Meter VG7000、日本電色工業(株)製)を用いて、硬化被膜側表面の擦傷試験前の初期光沢(60度グロス)(G0)と、擦傷試験2分後の光沢(60度グロス)(G1)を測定し、下記式により光沢(グロス)の保持率を算出することにより擦傷耐性を評価した。
擦傷試験後の光沢(グロス)の保持率=(G1)/(G0)×100 (%)
【0096】
(判定基準)
◎:光沢(グロス)の保持率が95%以上
○:光沢(グロス)の保持率が95%未満、90%以上
△:光沢(グロス)の保持率が90%未満、80%以上
×:光沢(グロス)の保持率が80%未満
【0097】
(耐サンスクリーン性(点滴法))
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化被膜側表面に0.025g/cm2となるように日焼け止めクリーム(Neutrogena社製「UltraSheer Dry-Touch SPF45」)を塗布し、50℃のオーブン内に1時間静置した後、日焼け止めクリームを拭き取り、硬化被膜の外観を下記基準により評価した。外観の変化が少ないほど、薬剤耐性に優れることを示す。
【0098】
(判定基準)
◎:硬化被膜について外観にほとんど変化が無い
○:硬化被膜に薬液痕が残る
△:硬化被膜が膨潤する
・:硬化被膜が膨潤し、且つ白化する
【0099】
(破断伸度及び破断強度)
表2に示す各組成(ポリイソシアネート組成物+アクリルポリオール)の熱硬化性ポリウレタンシート(厚さ2mm)を作製し、3号ダンベル型試験片(長さ100mm×幅25mm×厚さ2mm)に加工した。23℃、50%Rhの環境下、各ダンベル型試験片をテンシロン万能試験機RTC-1350A(ORIENTEC社製)を用いて、チャック間距離60mm、引張速度500mm/minの条件にて引張試験を行い、試験片が破断した際の伸度(破断伸度)及び最大点応力(破断強度)を測定した。
破断伸度が大きいほど可撓性に優れることを示す。
【0100】
(破断伸度の判定基準)
○:50%超
△:10%~50%
・:10%未満
【0101】
(破断強度の判定基準)
〇:20MPa超
△:10~20MPa
・:10MPa未満
【0102】
上記結果を表2にまとめて示す。
【0103】
実施例1~3に示した、ポリイソシアネート化合物としてA-1~A-3を用いて得られた硬化被膜は、何れも、鉛筆硬度が2B~Hであって硬度に優れ、耐擦傷性が◎、且つ耐サンスクリーン性が◎又は○、破断伸度が○又は△、破断強度が○を示し、硬度、耐擦傷性、薬剤耐性、及び可撓性について優れるものであった。
【0104】
比較例1~4に示した、ポリイソシアネート化合物として、イソシアヌレート基を有しないB-1~B-4を用いた硬化被膜は、下記のように、耐擦傷性、薬剤耐性、又は可撓性の何れかについて不十分であった。
比較例1の硬化被膜は、耐擦傷性が△と劣り、破断伸度が×であって可撓性に劣るものであった。
また、比較例2の硬化被膜は、耐サンスクリーン性が△であって薬剤耐性に劣るものであった。
また、比較例3の硬化被膜は、耐擦傷性と耐サンスクリーン性ともに〇であるものの、破断伸度は△にとどまり、総合的に不十分であった。
また、比較例4の硬化被膜は、耐擦傷性が△と劣り、耐サンスクリーン性が×であって薬剤耐性に劣るものであった。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】