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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20240328BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20240328BHJP
   B60W 40/10 20120101ALI20240328BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20240328BHJP
【FI】
B60W50/08
B60W40/08
B60W40/10
B60W30/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020029514
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133728
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】黒田 聡
(72)【発明者】
【氏名】青柳 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知弥
(72)【発明者】
【氏名】神田 賢志
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-144544(JP,A)
【文献】特開2020-028151(JP,A)
【文献】特開2005-326962(JP,A)
【文献】特開2018-165070(JP,A)
【文献】特表2018-512334(JP,A)
【文献】特開2020-029210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の一又は複数の乗員の動作に係る情報である乗員動作情報、及び車両の動作に係る情報である車両動作情報を取得する取得部と、
第1段階において前記取得部によって取得された前記乗員動作情報及び前記車両動作情報に基づいて、前記第1段階より後の段階である第2段階において前記取得部によって取得された前記車両動作情報が入力されることにより、前記第2段階における前記車両の動作に応じた前記乗員の動作を推定するモデルを生成する生成部と、
前記生成部によって生成された前記モデルの推定結果に基づいて、前記乗員の動作量が減少するように前記車両の制御量を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記制御量に基づいて前記車両を制御する制御部と、を備え
前記取得部は、複数の前記乗員の動作に係る前記乗員動作情報を取得し、
前記生成部は、前記取得部によって取得された複数の前記乗員の動作に係る前記乗員動作情報のうち、少なくとも2人以上の前記乗員の前記乗員動作情報及び前記車両動作情報に基づいて、前記2人以上の乗員それぞれの動作を推定する前記モデルを生成し、
前記算出部は、前記生成部によって生成された前記2人以上の乗員それぞれの動作を推定する前記モデルの推定結果に基づいて、前記2人以上の乗員の少なくとも1人の動作量が減少するように前記制御量を算出し、
前記車室内の前記乗員の数が所定の乗員数閾値よりも高い場合、前記第1段階において前記取得部によって取得された複数の前記乗員の動作に係る前記乗員動作情報に基づき前記複数の乗員の動作量を算出し、前記車室内を分割した複数のエリアのそれぞれにおいて、最大の前記動作量を有する前記乗員である対象乗員を選択する選択部を更に備え、
前記生成部は、前記複数のエリアのそれぞれにおいて、前記選択部によって選択された前記対象乗員それぞれの動作を推定する前記モデルを生成する、車両制御装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記2人以上の乗員の前記動作量の総和が最小となるように前記制御量を算出する、請求項記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記2人以上の乗員の前記動作量のうち最大の前記動作量が所定の動作量閾値よりも低くなるように前記制御量を算出する、請求項1又は2記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記取得部によって取得された複数の前記乗員の動作に係る前記乗員動作情報の全て、及び前記車両動作情報に基づいて、前記乗員動作情報が取得された全ての乗員それぞれの動作を推定する前記モデルを生成する、請求項1~3のいずれか一項記載の車両制御装置。
【請求項5】
車室内の一又は複数の乗員の動作に係る情報である乗員動作情報、及び車両の動作に係る情報である車両動作情報を取得する第1ステップと、
前記第1ステップよりも後に、前記車両動作情報を取得する第2ステップと、
前記第1ステップにおいて取得された前記乗員動作情報及び前記車両動作情報に基づいて、前記第2ステップにおいて取得された前記車両動作情報が入力されることにより、前記第2ステップにおける前記車両の動作に応じた前記乗員の動作を推定するモデルを生成する第3ステップと、
前記第3ステップにおいて生成された前記モデルの推定結果に基づいて、前記乗員の動作量が減少するように前記車両の制御量を算出する第4ステップと、
前記第4ステップにおいて算出された前記制御量に基づいて前記車両を制御する第5ステップと、を備え
前記第1ステップにおいて、複数の前記乗員の動作に係る前記乗員動作情報を取得し、
前記第3ステップにおいて、前記第1ステップにおいて取得された複数の前記乗員の動作に係る前記乗員動作情報のうち、少なくとも2人以上の前記乗員の前記乗員動作情報及び前記車両動作情報に基づいて、前記2人以上の乗員それぞれの動作を推定する前記モデルを生成し、
前記第4ステップにおいて、前記第3ステップにおいて生成された前記2人以上の乗員それぞれの動作を推定する前記モデルの推定結果に基づいて、前記2人以上の乗員の少なくとも1人の動作量が減少するように前記制御量を算出し、
前記第3ステップの前に、前記車室内の前記乗員の数が所定の乗員数閾値よりも高い場合、前記第1ステップにおいて取得された複数の前記乗員の動作に係る前記乗員動作情報に基づき前記複数の乗員の動作量を算出し、前記車室内を分割した複数のエリアのそれぞれにおいて、最大の前記動作量を有する前記乗員である対象乗員を選択する第6ステップを更に備え、
前記第3ステップにおいては、前記複数のエリアのそれぞれにおいて、前記第6ステップにおいて選択された前記対象乗員それぞれの動作を推定する前記モデルを生成する、車両制御方法。
【請求項6】
前記第4ステップにおいて、前記2人以上の乗員の前記動作量の総和が最小となるように前記制御量を算出する、請求項記載の車両制御方法。
【請求項7】
前記第4ステップにおいて、前記2人以上の乗員の前記動作量のうち最大の前記動作量が所定の動作量閾値よりも低くなるように前記制御量を算出する、請求項5又は6記載の車両制御方法。
【請求項8】
前記第3ステップにおいて、前記第1ステップにおいて取得された複数の前記乗員の動作に係る前記乗員動作情報の全て、及び前記車両動作情報に基づいて、前記乗員動作情報が取得された全ての乗員それぞれの動作を推定する前記モデルを生成する、請求項5~7のいずれか一項記載の車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動走行モード時の車両において、車室内の乗員の動作を検出し、当該乗員の動作に応じて車両の加速度等の制御量を決定することにより、車両の乗り心地を向上させる車両制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-264681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような車両制御装置では、検出した乗員の動作に基づいて車両の制御量が決定される。しかしながら、車両の走行時における乗員の動作は、車両の動作に限らず、車室内の乗員の状況、体型等によっても影響されるため、検出された乗員の動作が必ずしも車両の動作と連動しているとは限られない。そのため、車両の動作に連動していない乗員の動作に基づいて車両の制御量が決定された場合、車両の乗り心地が向上しないおそれがある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、車両の乗り心地の向上を図ることができる車両制御装置及び車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両制御装置は、車室内の一又は複数の乗員の動作に係る情報である乗員動作情報、及び車両の動作に係る情報である車両動作情報を取得する取得部と、第1段階において取得部によって取得された乗員動作情報及び車両動作情報に基づいて、第1段階より後の段階である第2段階において取得部によって取得された車両動作情報が入力されることにより、第2段階における車両の動作に応じた乗員の動作を推定するモデルを生成する生成部と、生成部によって生成されたモデルの推定結果に基づいて、乗員の動作量が減少するように車両の制御量を算出する算出部と、算出部によって算出された制御量に基づいて車両を制御する制御部と、を備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る車両制御方法は、車室内の一又は複数の乗員の動作に係る情報である乗員動作情報、及び車両の動作に係る情報である車両動作情報を取得する第1ステップと、第1ステップよりも後に、車両動作情報を取得する第2ステップと、第1ステップにおいて取得された乗員動作情報及び車両動作情報に基づいて、第2ステップにおいて取得された車両動作情報が入力されることにより、第2ステップにおける車両の動作に応じた乗員の動作を推定するモデルを生成する第3ステップと、第3ステップにおいて生成されたモデルの推定結果に基づいて、乗員の動作量が減少するように車両の制御量を算出する第4ステップと、第4ステップにおいて算出された制御量に基づいて車両を制御する第5ステップと、を備える。
【0008】
これらの装置及び方法では、第1段階又は第1ステップにおける乗員動作情報及び車両動作情報に基づいて、車室内の乗員の動作を推定するモデルを生成する処理が実施され、第2段階又は第2ステップにおける車両動作情報が入力されたモデルの推定結果に基づいて、乗員の動作量が減少するように車両の制御量を算出する処理が実施される。これにより、車両の動作と連動した乗員の動作に基づいて車両の制御量が算出されるため、乗員の動作量を適切に減少させる車両の制御が可能となる。以上のように、これらの装置及び方法によれば、車両の乗り心地の向上を図ることができる。
【0009】
上記車両制御装置において、取得部は、複数の乗員の動作に係る乗員動作情報を取得し、生成部は、取得部によって取得された複数の乗員の動作に係る乗員動作情報のうち、少なくとも2人以上の乗員の乗員動作情報及び車両動作情報に基づいて、2人以上の乗員それぞれの動作を推定するモデルを生成し、算出部は、生成部によって生成された2人以上の乗員それぞれの動作を推定するモデルの推定結果に基づいて、2人以上の乗員の少なくとも1人の動作量が減少するように制御量を算出してもよい。
【0010】
また、上記車両制御方法では、第1ステップにおいて、複数の乗員の動作に係る乗員動作情報を取得し、第3ステップにおいて、第1ステップにおいて取得された複数の乗員の動作に係る乗員動作情報のうち、少なくとも2人以上の乗員の乗員動作情報及び車両動作情報に基づいて、2人以上の乗員それぞれの動作を推定するモデルを生成し、第4ステップにおいて、第3ステップにおいて生成された2人以上の乗員それぞれの動作を推定するモデルの推定結果に基づいて、2人以上の乗員の少なくとも1人の動作量が減少するように制御量を算出してもよい。
【0011】
例えば、路線バス等の車両の車室内では、座った状態、立った状態等様々な姿勢の乗員が存在し得る。これらの装置及び方法によれば、乗員の姿勢が反映されて生成されたモデルに基づいて車両の制御量が算出されるため、複数の乗員それぞれに対して車両の乗り心地の向上を図ることができる。
【0012】
上記車両制御装置において、算出部は、2人以上の乗員の動作量の総和が最小となるように制御量を算出してもよい。
【0013】
また、上記車両制御方法では、第4ステップにおいて、2人以上の乗員の動作量の総和が最小となるように制御量を算出してもよい。
【0014】
これらの装置及び方法によれば、モデル生成の対象である乗員それぞれの動作量の総和が減少するように車両の制御量が算出されるため、様々な種別の複数の乗員が乗車する車両においても、複数の乗員に対して車両の乗り心地の向上を図ることができる。
【0015】
上記車両制御装置において、算出部は、2人以上の乗員の動作量のうち最大の動作量が所定の動作量閾値よりも低くなるように制御量を算出してもよい。
【0016】
また、上記車両制御方法では、第4ステップにおいて、2人以上の乗員の動作量のうち最大の動作量が所定の動作量閾値よりも低くなるように制御量を算出してもよい。
【0017】
これらの装置及び方法によれば、例えば、様々な種別の複数の乗員が乗車する車両のいずれの走行状態においても、車両における一定の乗り心地の良さを確保することができる。
【0018】
上記車両制御装置において、生成部は、取得部によって取得された複数の乗員の動作に係る乗員動作情報の全て、及び車両動作情報に基づいて、乗員動作情報が取得された全ての乗員それぞれの動作を推定するモデルを生成してもよい。
【0019】
また、上記車両制御方法では、第3ステップにおいて、第1ステップにおいて取得された複数の乗員の動作に係る乗員動作情報の全て、及び車両動作情報に基づいて、乗員動作情報が取得された全ての乗員それぞれの動作を推定するモデルを生成してもよい。
【0020】
これらの装置及び方法によれば、車室内にいる全ての乗員に対して車両の乗り心地の向上を図ることができる。
【0021】
上記車両制御装置において、車室内の乗員の数が所定の乗員数閾値よりも高い場合、第1段階において取得部によって取得された複数の乗員の動作に係る乗員動作情報に基づき複数の乗員の動作量を算出し、車室内を分割した複数のエリアのそれぞれにおいて、最大の動作量を有する乗員である対象乗員を選択する選択部を更に備え、生成部は、複数のエリアのそれぞれにおいて、選択部によって選択された対象乗員それぞれの動作を推定するモデルを生成してもよい。
【0022】
また、上記車両制御方法では、第3ステップの前に、車室内の乗員の数が所定の乗員数閾値よりも高い場合、第1ステップにおいて取得された複数の乗員の動作に係る乗員動作情報に基づき複数の乗員の動作量を算出し、車室内を分割した複数のエリアのそれぞれにおいて、最大の動作量を有する乗員である対象乗員を選択する第6ステップを更に備え、第3ステップにおいては、複数のエリアのそれぞれにおいて、第6ステップにおいて選択された対象乗員それぞれの動作を推定するモデルを生成してもよい。
【0023】
例えば、車両に多数の乗員が乗車している場合、多数の乗員の動作を推定するモデルに基づいた車両の制御が困難となるおそれがある。そこで、車室内にいる乗員のうち一部の乗員の動作に基づいて車両の制御量を算出することが考えられるが、例えば車両前方と車両後方とでは車両の動作に対する乗員の動作が異なる。このため、当該一部の乗員の動作に基づいて算出された車両の制御量に基づいて車両が制御されても、車室内の他の乗員に対して車両の乗り心地の向上が図れないおそれがある。これに対し、本発明の装置及び方法によれば、各エリアで最大の動作量を有する対象乗員のモデルに基づいて車両の制御量を算出するため、多数の乗員が乗車している車両においても、車室内の位置によらず、多数の乗員のそれぞれに対して車両の乗り心地を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、車両の乗り心地の向上を図ることができる車両制御装置及び車両制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態に係る車両制御装置の概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る車両制御装置の利用シーンの一例を模式的に示す図である。
図3】車両の動作を示す図である。
図4】乗員の動作を示す図である。
図5】乗員モデルに係る状態方程式を示す図である。
図6】第1実施形態の乗員モデル算出処理を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態の車両制御処理を示すフローチャートである。
図8】第2実施形態に係る車両制御装置の利用シーンの一例を模式的に示す図である。
図9】第2実施形態に係る車両制御装置の概略構成を示す図である。
図10】第2実施形態においてECUが実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
【0027】
本実施形態に係る車両制御システム1は、車両Mに乗車した乗員Pの動作量を減少させるように車両Mの制御量を算出するシステムである。車両Mは、例えば、一又は複数の乗員Pが乗車する路線バスである。乗員Pの動作量とは、乗員Pの移動量、回転量、及びそれらの速度である。図2は、第1実施形態に係る車両制御システム1の利用シーンの一例を模式的に示す図である。車両Mの車室内には、乗員Pが行き来する通路及び複数の乗員Pが座るための複数の座席が配置されている。以下、本実施形態では、性別、年齢等を問わず子供から年配者まで様々な種別の複数の乗員Pが車室内にいる場合の車両制御システム1の動作について説明するが、一の乗員Pのみが車室内にいる場合でも車両制御システム1の動作は同様に実行される。
【0028】
車両制御システム1では、ECU10(車両制御装置)が、複数の乗員Pそれぞれの動作及び車両Mの動作を把握し、車両Mの動作と連動した複数の乗員Pそれぞれの動作を推定し、複数の乗員Pの動作量が減少するように車両Mの制御を実現する。
【0029】
図1に示されるように、車両制御システム1は、ECU10(車両制御装置)と、複数のカメラ20と、内部センサ30と、アクチュエータ40と、を備えている。車両制御システム1の各構成は、車両Mに搭載されている。
【0030】
ECU10は、車室内の複数の乗員Pの動作量を減少させるように車両Mの制御量を算出する。ECU10は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、及びCAN[Controller Area Network]通信回路等を有する電子制御ユニットである。ECU10では、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。なお、ECU10は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。ECU10には、CAN通信回路を介して、複数のカメラ20、内部センサ30、及びアクチュエータ40が接続されている。
【0031】
複数のカメラ20は、車両Mの車室内にいる複数の乗員Pを撮像する。図2に示されるように、複数のカメラ20は、車室内にいる複数の乗員Pがいずれの場所にいても複数の乗員Pそれぞれの位置及び姿勢をいずれかのカメラ20により撮像可能であるように、車室内に配置されている。複数のカメラ20は、例えば、互いに間隔を空けて車室内の上部に設けられている。各カメラ20は、所定の周期で撮像した画像情報をECU10に入力する。
【0032】
内部センサ30は、車両Mの走行状況に関する各種の情報を検出する。内部センサ30は、車速を検出する車速センサ、加減速度を検出する加減速度センサ、及びステアリングの操舵角を検出する操舵角センサを少なくとも含んでいる。内部センサ30は、各センサの検出値を検出値情報としてECU10に入力する。
【0033】
アクチュエータ40は、車両Mの走行制御を実行する装置である。アクチュエータ40は、エンジンアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを少なくとも含む。エンジンアクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を制御し、車両Mの駆動力を制御する。なお、車両Mがハイブリッド車(ハイブリッドバス)である場合には、エンジンに対する空気の供給量の他に、動力源としてのモータにECU10からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。車両Mが電気自動車(電気バス)である場合には、動力源としてのモータにECU10からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。ブレーキアクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてブレーキシステムを制御し、車両Mの車輪へ付与する制動力を制御する。ブレーキシステムとしては、液圧ブレーキシステムを用いることができる。操舵アクチュエータは、電動パワーステアリングシステムのうち操舵トルクを制御するアシストモータの駆動を、ECU10からの制御信号に応じて制御する。これにより、操舵アクチュエータは、車両Mの操舵トルクを制御する。
【0034】
次に、図1を参照して、ECU10の機能的構成について説明する。ECU10は、取得部11と、生成部12と、算出部13と、制御部14と、記憶部15と、を備えている。
【0035】
取得部11は、車室内の複数の乗員Pの動作に係る情報である乗員動作情報、及び、車両Mの動作に係る情報である車両動作情報を取得する。本実施形態では、取得部11は、車室内に存在する全ての乗員Pの乗員動作情報を取得する。本実施形態では、乗員動作情報は、複数のカメラ20により複数の乗員Pそれぞれの位置及び姿勢が撮像された画像情報である。また、本実施形態では、車両動作情報は、内部センサ30により取得された検出値情報のうち車両Mの操舵角情報及び速度情報である。取得部11は、第1段階において乗員動作情報及び車両動作情報を取得する。第1段階とは、例えば、バス停、バスターミナル等で停止している車両Mに複数の乗員Pが乗車した後、車両Mが発車して数十秒後等、車両Mの走行状態が安定した期間における1又は複数のタイミングである。第1段階が1つのタイミングである場合には、取得部11は、1つのタイミングで取得された乗員動作情報及び車両動作情報のみを取得する。第1段階が複数のタイミングである場合には、取得部11は、複数のタイミングそれぞれで取得された乗員動作情報及び車両動作情報を取得する。また、取得部11は、第1段階より後の段階である第2段階において、例えば所定の周期で、車両動作情報を取得する。第2段階は、第1段階より後の段階且つ生成部12によって乗員モデル(詳細は後述)が生成された後の段階である。具体的には、第2段階は、例えば、乗員モデルが生成された直後である。
【0036】
生成部12は、第1段階において取得部11によって取得された乗員動作情報及び車両動作情報に基づいて、乗員モデル(モデル)を生成する。乗員モデルは、第2段階において取得部11によって取得された車両動作情報が入力されることにより、第2段階における車両Mの動作に応じた乗員Pの動作を推定するモデルである。本実施形態では、生成部12は、取得部11によって取得された複数の乗員Pの動作に係る乗員動作情報の全てと車両動作情報とに基づいて、乗員動作情報が取得された全ての乗員P(すなわち、車室内に存在する全ての乗員P)それぞれの動作を推定する乗員モデルを生成する。
【0037】
ここで、生成部12による乗員モデルの生成方法について詳細に説明する。まず、生成部12は、複数のカメラ20により複数の乗員Pそれぞれの位置及び姿勢が撮像された画像情報(乗員動作情報)に基づいて、例えばニューラルネットワーク等の機械学習の手法を用いて、複数の乗員Pそれぞれの位置及び姿勢を認識する。生成部12は、認識した各乗員Pの位置及び姿勢、並びに車両Mの操舵角情報及び速度情報(車両動作情報)に基づいて、乗員モデルを生成する。このように、乗員モデルは、車両の動作(挙動)に対する乗員Pの動作(挙動)の実績を考慮して生成されるものである。生成部12は、第1段階において複数のタイミングの乗員動作情報及び車両動作情報が取得されている場合には、例えば車両動作情報の変化に応じた乗員動作情報の変化を考慮して、乗員モデルを生成してもよい。また、生成部12は、第1段階において1つのタイミングの乗員動作情報及び車両動作情報のみが取得されている場合には、例えば基準となる姿勢と乗員動作情報から認識される姿勢(車両動作情報に応じた乗員動作情報)との差異を考慮して、乗員モデルを生成してもよい。
【0038】
乗員モデルは、下記式(1)及び式(2)の物理モデルによって構成される。
[X]’=A[X]+Bu・・・ (1)
[Y] =C[X] ・・・ (2)
【0039】
上記式(1)は、車両Mの動作の状態及び複数の乗員Pそれぞれの動作の状態を表す状態方程式であって、上記式(2)は、上記式(1)の出力方程式である。上記式(1)中、[X]は、6個の状態変数からなる6次元のベクトル量である車両状態量の項、及び10個の状態変数からなる10次元のベクトル量である乗員状態量の項を示す。A及びBは、関数、係数等を要素とする行列式を示す。uは乗員モデルへの入力(すなわち、車両動作情報)を示す。A、B、及びuの詳細な説明については後述する。[X]’の記号「’」は、[X]の時間微分を示す。上記式(2)中、[Y]は、乗員モデルからの出力を表すベクトル量(すなわち、モデルの推定結果)を示す。Cは、関数、係数等を要素とする行列式であって、本実施形態では単位行列である。生成部12は、複数の乗員Pそれぞれについて、第1段階における乗員動作情報及び車両動作情報に基づき、A及びBのパラメータ(係数等の値)を決定する。生成部12の「乗車モデルを生成する」とは、すなわち、複数の乗員P毎のA及びBのパラメータを決定することである。後述する算出部13は、第2段階における車両動作情報であるuを入力として上記式(1)を満たすように、各乗員Pについて[X]の10次元の乗員状態量の項を導出し、上記式(2)に基づき乗員モデルの推定結果である[Y]を導出し、各乗員Pの動作量が減少するように車両Mの制御量を算出する(詳細は後述)。
【0040】
[X]において車両状態量を表す6個の状態変数は、車両Mの位置、姿勢及びそれらの変化を表す車両Mの動作に係る変数であって、Xg,Yg,Ψ,Vx,Vy,ωΨからなる。図3に示されるように、車両Mは、剛体モデルとして近似することができる。そして、車両Mの前後方向の軸をX軸とし、車両Mの左右方向の軸をY軸とし、車両Mの上下方向の軸をZ軸とし、X軸、Y軸及びZ軸が互いに直交し且つ車両Mの重心を通る場合、Xgは、X軸方向における車両Mの運動量である。また、Ygは、Y軸方向における車両Mの運動量であって、Ψは、Z軸を中心とした車両Mの回転角度(言い換えれば、車両Mの姿勢角)である。また、Vxは、Xgの速度であって、Vyは、Ygの速度であって、ωΨは、Ψの角速度である。
【0041】
[X]において乗員状態量を表す10個の状態変数は、乗員Pの位置、姿勢、及びそれらの変化を表す乗員Pの動作に係る変数であって、xg,yg,ψ,φ,θ,vx,vy,ωψ,ωφ,ωθからなる。図4に示されるように、車両Mの動作に応じて変化する乗員Pの動作は、大きく下半身部PBの動作と上半身部PUの動作とに分けて捉えることができる。すなわち、乗員Pの下半身部PBは、車両Mの動作に応じて、乗員Pの前後方向及び左右方向に動作しやすい。一方、乗員Pの上半身部PUにおける下端部分は下半身部PBに固定されているが、頭部は動きやすいため、上半身部PUは、乗員Pの前後方向及び左右方向に回転するように、及び上半身部PUにおける上下方向に沿った軸を中心としてひねるように動作しやすい。
【0042】
これらの車両Mの動作に応じた乗員Pの動作に着目することにより、乗員Pの下半身部PBは、剛体モデルとして近似することができ、乗員Pの上半身部PUは、上半身部PUの下端部の中心を支点Lとし且つ頭部を錘とした倒立振り子モデルとして近似することができる。そして、乗員Pの重心を中心とした乗員Pの前後方向の軸をx軸とし、x軸と直交した乗員Pの左右方向の軸をy軸とし、x軸及びy軸と直交する軸をz軸とした場合、乗員Pの下半身部PBに相当する剛体モデルは、前後方向(x軸方向)及び左右方向(y軸方向)に動作すると仮定することができる。上述したxgは、x軸方向における乗員Pの運動量であって、ygは、y軸方向における乗員Pの運動量である。また、vxは、xgの速度であって、vyは、ygの速度である。
【0043】
以上のように、車両M及び乗員Pの下半身部PBを剛体モデルとし、乗員Pの上半身部PUを倒立振り子モデルとして近似した場合、車両状態量における各状態変数と、複数の乗員Pそれぞれの乗員状態量の各状態変数との物理的関係は、幾何的な位置関係を表す方程式、及び1階の微分方程式によって表され、上記式(1)の状態方程式、及び上記式(2)の出力方程式を得ることができる。
【0044】
ここで、乗員モデルを構成する状態方程式について、具体例を用いて詳細に説明する。図5に示される式は、A、[X]、B、及びuの変数等が具体的に表された状態方程式(上記式(1))の一例である。Aは、車両状態量の各状態変数、及び、複数の乗員Pそれぞれの乗員状態量の各状態変数に係る関数、係数等を要素とする行列式である。
【0045】
[X]では、車両Mの6個の状態変数(Xg,Yg,Ψ,Vx,Vy,ωΨ)が1番目の項として定義され、次に車室内で認識された1人目の乗員Pの10個の状態変数(xg,yg,ψ,φ,θ,vx,vy,ωψ,ωφ,ωθ)の項が配列され、次に2人目の乗員Pの10個の状態変数(xg,yg,ψ,φ,θ,vx,vy,ωψ,ωφ,ωθ)の項が配列されるといったように、車両Mの状態変数、及び車室内にいる乗員P全員の状態変数の項が配列されている。[X]の各状態変数は、後述する算出部13によって算出される。
【0046】
Bは、車両Mの状態変数に係る関数、係数等を要素とする行列式である。uは、車両Mの2個の状態変数(F,δ)である。Fは、車両Mのアクセル、ブレーキ等のトルクであって、δは、車両Mのステアリングの操舵角である。uの各状態変数は、後述する算出部13によって算出される。
【0047】
生成部12は、以上説明した上記式(1)、及び式(2)の物理モデルによって構成される乗員モデルを生成する。具体的には、生成部12は、複数の乗員Pそれぞれについて、上記式(1)のA及びBのパラメータを決定する。具体的には、生成部12は、Aにおけるτ,K1~K5を含む各変数を、第1段階における車両動作情報及び乗員動作情報に基づいて、複数の乗員P毎に算出する。また、生成部12は、Bにおける変数m及びcを含む各変数を、第1段階における車両動作情報に基づいて算出する。mは、車両Mの重量であって、cは、車両Mのステアリングの操舵角から車両Mの角速度ωΨへ変換する定数である。
【0048】
なお、車両Mの6個の状態変数(Xg,Yg,Ψ,Vx,Vy,ωΨ)は、後述する算出部13によって、第2段階における車両動作情報に基づいて算出される。また、複数の乗員Pそれぞれの10個の状態変数は、後述する算出部13によって、生成部12が生成した乗員モデルの上記(1)式を満たすように、第2段階にける車両動作情報に基づいて算出される。生成部12は、生成した乗員モデルを記憶部15に格納する。記憶部15は、生成部12が生成した乗員モデルを記憶する。
【0049】
算出部13は、生成部12によって生成された乗員モデルの推定結果に基づいて、複数の乗員Pの動作量が減少するように車両Mの制御量を算出する。乗員モデルの推定結果は、第2段階における車両Mの動作に応じた複数の乗員Pそれぞれの状態変数である。算出部13は、第2段階における車両動作情報に基づいて車両Mの6個の状態変数(Xg,Yg,Ψ,Vx,Vy,ωΨ)を算出する。
【0050】
ここで、推定結果の求め方について説明する。まず、取得部11により第2段階における車両動作情報が取得されると、算出部13は、当該車両動作情報に基づいて車両Mの入力変数(F,δ)を算出し、当該状態変数を乗員モデルの上記式(1)のuに入力する。また、算出部13は、当該車両動作情報に基づいて車両Mの状態変数(Xg,Yg,Ψ,Vx,Vy,ωΨ)を算出し、当該状態変数を乗員モデルの上記式(1)の[X]の各項のうち車両Mの状態変数の項に入力する。そして、算出部13は、上記式(1)を満たすように(各データが相互に最も整合するように)複数の乗員Pそれぞれの状態変数の値を推定演算する。乗員モデルに対してこのような推定演算を実行することにより、推定結果である複数の乗員Pそれぞれの10個の状態変数を求めることができる。
【0051】
算出部13は、推定結果である各状態変数に基づいて、複数の乗員Pそれぞれの動作量を推定する。本実施形態では、複数の乗員Pそれぞれの動作量は、各状態変数の値によって表される乗員の移動量、回転量、及びそれらの速度である。複数の乗員Pそれぞれの動作量は、10個の状態変数の値に基づいて算出された指数値等であってもよい。
【0052】
そして、算出部13は、例えば、複数の乗員Pそれぞれの動作量の総和である合計動作量が最小となるように車両Mの制御量を算出する。更に、算出部13は、複数の乗員Pの動作量のうち最大の動作量が、所定の動作閾値よりも低くなるように、制御量を算出してもよい。この場合、算出部13は、最大の動作量が動作閾値よりも低い場合に限り、当該制御量を後述する制御部14に入力してもよい。動作閾値は、例えば、予め定められた値であって、車室内にいる乗員が不快に感じない動作量の許容限界値である。算出部13は、複数の乗員Pの動作量のうち最大の動作量が、動作閾値よりも低くないと判定した場合には、合計動作量が最小となる車両Mの制御量を再算出する。ここでいう合計動作量は、既に算出した合計動作量とは異なる動作量である。なお、本実施形態では、車両Mの制御量は、車両Mの速度及び操舵角である。算出部13は、上述した最大の動作量が動作閾値よりも低くなるまで車両Mの制御量の算出を繰り返す。
【0053】
制御部14は、算出部13によって算出された制御量に基づいて車両Mを制御する。具体的には、例えば、制御部14は、算出された制御量に基づいてアクチュエータ40のエンジンアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを制御することにより、車両Mの速度及び操舵角を制御する。
【0054】
次に、図6を参照して、第1実施形態のECU10が実行する乗員モデル生成処理を説明する。図6は、本実施形態に係る車両制御方法に係る方法のフローチャートである。乗員モデル生成処理は、例えば、バス停、バスターミナル等で停止している車両Mに複数の乗員Pが乗車した後、車両Mが発車して数十秒後等、車両Mの走行状態が安定したタイミングでECU10が実行する処理である。
【0055】
まず、S11において、ECU10が、複数のカメラ20により複数の乗員Pそれぞれの位置及び姿勢が撮像された画像情報(乗員動作情報)を取得し、S12において、車両Mの操舵角情報及び速度情報(車両動作情報)を取得する(第1ステップ)。S11及びS12の処理は、互いに同じタイミングに実施されてもよい。また、S11及びS12の処理は、それぞれ所定の期間内において1度のみ実施されてもよいし複数回実施されてもよい。続いて、S13において、ECU10が、S11にて取得された乗員動作情報、及びS12にて取得された車両動作情報に基づいて、乗員モデルを生成する(第3ステップ)。乗員モデルは、上記式(1)の状態方程式及び上記式(2)の出力方程式から構成される物理モデルである。本実施形態では、ECU10は、車室内にいる全ての乗員Pそれぞれの動作を推定するモデルを生成する。続いて、S14において、ECU10が、S13にて生成された乗員モデルを記憶する。以上が、乗員モデル生成処理である。
【0056】
次に、図7を参照して、ECU10が実行する車両制御処理を説明する。図7は、本実施形態に係る車両制御方法に係る方法のフローチャートである。車両制御処理は、乗員モデル生成処理の後にECU10が実行する処理であって、例えば乗員モデル生成処理の終了直後に実行される。
【0057】
まず、S21において、ECU10が、車両動作情報を取得する(第2ステップ)。続いて、S22において、ECU10が、S13にて生成された乗員モデルの推定結果に基づいて、複数の乗員Pそれぞれの動作量を推定し、S23において複数の乗員Pの動作量が減少するように車両Mの制御量を算出する(第4ステップ)。具体的には、ECU10は、S22において、S21にて取得された車両動作情報に基づいて、車両Mの動作の状態変数(Xg,Yg,Ψ,Vx,Vy,ωΨ)及び入力変数(F,δ)を算出し、S13において生成された乗員モデルのうち上記式(1)の[X]における車両Mの状態変数の項に車両Mの動作の状態変数を入力し、uに車両Mの動作の入力変数を入力する。次に、ECU10は、各データが相互に最も整合するように複数の乗員Pそれぞれの状態変数(xg,yg,ψ,φ,θ,vx,vy,ωψ,ωφ,ωθ)を推定演算することにより、S21における車両Mの動作に応じた複数の乗員Pそれぞれの動作量を推定する。
【0058】
続いて、S23において、ECU10が、複数の乗員Pそれぞれの動作量の総和である合計動作量が最小となるように車両Mの制御量を算出する。本実施形態では、車両Mの制御量は、車両Mの速度及び操舵角である。続いて、S24において、ECU10が、複数の乗員Pそれぞれの動作量のうち最大の動作量が、所定の動作量閾値よりも低いか否かを判定する。ECU10は、複数の乗員Pの動作量のうち最大の動作量が動作量閾値よりも低いと判定した場合(S24:YES)、S25において、S23にて算出された制御量に基づいて車両Mを制御する。具体的には、ECU10は、算出された制御量に基づいてアクチュエータ40のエンジンアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを制御することにより、車両Mの速度及び操舵角を制御する。
【0059】
一方、ECU10は、複数の乗員Pの動作量のうち最大の動作量が動作量閾値よりも低くないと判定した場合(S24:NO)、S26において、複数の乗員Pそれぞれの動作量の総和が最小となる車両Mの制御量を再算出し、S24の処理に戻る。
【0060】
続いて、S27において、ECU10が、車両Mが停止したか否かを判定する。ここでいう車両Mが停止したとは、車両Mの速度がゼロになったことを意味する。ECU10は、車両Mが停止したと判定した場合(S27:YES)、車両制御処理を終了する。一方、ECU10は、車両Mが停止していないと判定した場合、処理をS21に戻す。
【0061】
第1実施形態に係るECU10は、車両制御装置であって、車室内の一又は複数の乗員Pの動作に係る情報である乗員動作情報、及び車両Mの動作に係る情報である車両動作情報を取得する取得部11と、第1段階において取得部11によって取得された乗員動作情報及び車両動作情報に基づいて、第1段階より後の段階である第2段階において取得部11によって取得された車両動作情報が入力されることにより、第2段階における車両Mの動作に応じた乗員Pの動作を推定するモデルを生成する生成部12と、生成部12によって生成されたモデルの推定結果に基づいて、乗員Pの動作量が減少するように車両Mの制御量を算出する算出部13と、算出部13によって算出された制御量に基づいて車両Mを制御する制御部14と、を備える。
【0062】
また、第1実施形態に係る車両制御方法は、車室内の一又は複数の乗員Pの動作に係る情報である乗員動作情報、及び車両Mの動作に係る情報である車両動作情報を取得する第1ステップと、第1ステップよりも後に、車両動作情報を取得する第2ステップと、第1ステップにおいて取得された乗員動作情報及び車両動作情報に基づいて、第2ステップにおいて取得された車両動作情報が入力されることにより、第2ステップにおける車両Mの動作に応じた乗員Pの動作を推定するモデルを生成する第3ステップと、第3ステップにおいて生成されたモデルの推定結果に基づいて、乗員Pの動作量が減少するように車両Mの制御量を算出する第4ステップと、第4ステップにおいて算出された制御量に基づいて車両Mを制御する第5ステップと、を備える。
【0063】
第1実施形態に係るこれらの装置及び方法では、第1段階又は第1ステップにおける乗員動作情報及び車両動作情報に基づいて、車室内の乗員Pの動作を推定する乗員モデルを生成する処理が実施され、第2段階又は第2ステップにおける車両動作情報が入力された乗員モデルの推定結果に基づいて、乗員Pの動作量が減少するように車両Mの制御量を算出する処理が実施される。これにより、車両Mの動作と連動した乗員Pの動作に基づいて車両Mの制御量が算出されるため、乗員Pの動作量を適切に減少させる車両Mの制御が可能となる。よって、第1実施形態に係るこれらの装置及び方法によれば、車両Mの乗り心地の向上を図ることができる。
【0064】
上記車両制御装置において、取得部11は、複数の乗員Pの動作に係る乗員動作情報を取得し、生成部12は、取得部11によって取得された複数の乗員Pの動作に係る乗員動作情報のうち、少なくとも2人以上の乗員Pの乗員動作情報及び車両動作情報に基づいて、2人以上の乗員Pそれぞれの動作を推定する乗員モデルを生成し、算出部13は、生成部12によって生成された2人以上の乗員Pそれぞれの動作を推定する乗員モデルの推定結果に基づいて、2人以上の乗員Pの少なくとも1人の動作量が減少するように制御量を算出する。
【0065】
また、上記車両制御方法では、第1ステップにおいて、複数の乗員Pの動作に係る乗員動作情報を取得し、第3ステップにおいて、第1ステップにおいて取得された複数の乗員Pの動作に係る乗員動作情報のうち、少なくとも2人以上の乗員Pの乗員動作情報及び車両動作情報に基づいて、2人以上の乗員Pそれぞれの動作を推定する乗員モデルを生成し、第4ステップにおいて、第3ステップにおいて生成された2人以上の乗員Pそれぞれの動作を推定する乗員モデルの推定結果に基づいて、2人以上の乗員Pの少なくとも1人の動作量が減少するように制御量を算出する。
【0066】
例えば、路線バス等の車両Mの車室内では、座った状態、立った状態等様々な姿勢の乗員Pが存在し得る。これらの装置及び方法によれば、乗員Pの姿勢が反映されて生成された乗員モデルに基づいて車両Mの制御量が算出されるため、複数の乗員Pのそれぞれに対して車両Mの乗り心地の向上を図ることができる。
【0067】
上記車両制御装置において、算出部13は、2人以上の乗員Pそれぞれの動作量の総和が最小となるように制御量を算出する。
【0068】
また、上記車両制御方法では、第4ステップにおいて、2人以上の乗員Pそれぞれの動作量の総和が最小となるように制御量を算出する。
【0069】
これらの装置及び方法によれば、複数の乗員Pの動作量の総和が減少するように車両Mの制御量が算出されるため、様々な条件下にある多数の乗員Pが乗車する路線バスである車両Mにおいても、当該多数の乗員Pに対して車両Mの乗り心地の向上を図ることができる。
【0070】
上記車両制御装置において、算出部13は、2人以上の乗員Pの動作量のうち最大の動作量が所定の動作量閾値よりも低くなるように制御量を算出する。
【0071】
また、上記車両制御方法では、第4ステップにおいて、2人以上の乗員Pの動作量のうち最大の動作量が所定の動作量閾値よりも低くなるように制御量を算出する。
【0072】
これらの装置及び方法によれば、例えば、様々な条件下にある多数の乗員Pが乗車する路線バスである車両Mのいずれの走行状態においても、車両Mにおける一定の乗り心地の良さを確保することができる。
【0073】
上記車両制御装置において、生成部12は、取得部11によって取得された複数の乗員Pの動作に係る乗員動作情報の全て、及び車両動作情報に基づいて、乗員動作情報が取得された全ての乗員Pそれぞれの動作を推定する乗員モデルを生成する。
【0074】
上記車両制御方法では、第3ステップにおいて、第1ステップにおいて取得された複数の乗員Pの動作に係る乗員動作情報の全て、及び車両動作情報に基づいて、乗員動作情報が取得された全ての乗員Pそれぞれの動作を推定する乗員モデルを生成する。
【0075】
これらの装置及び方法によれば、車室内にいる全ての乗員Pに対して車両Mの乗り心地の向上を図ることができる。
[第2実施形態]
【0076】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0077】
図8は、第2実施形態に係る車両制御システム1の利用シーンの一例を模式的に示す図である。車両Mの車室内には、多数の乗員Pがいる。このような場合においては、複数の乗員Pそれぞれの動作を推定する乗員モデルを生成し、乗員モデルの推定結果に基づいて複数の乗員Pの動作量が減少するように車両Mの制御量を算出することが困難なおそれがある。そこで、本実施形態に係る車両制御システム1は、路線バスである車両Mに多数の乗員Pが乗車している場合に、複数の乗員Pの中から特定の乗員Pを選択し、特定の乗員Pの動作を推定する乗員モデルの推定結果に基づいて、車両Mの制御量を算出する。
【0078】
図9に示されるように、ECU10は、選択部16を更に備えている。選択部16は、車室内の乗員Pの数が所定の乗員数閾値よりも高い場合、第1段階において取得部11によって取得された複数の乗員Pの動作に係る乗員動作情報に基づき複数の乗員Pの動作量を算出し、車室内を分割した複数のエリアRそれぞれにおいて、最大の動作量を有する対象乗員Ptを選択する。
【0079】
ここで、対象乗員Ptの選択方法について説明する。まず、選択部16は、第1段階において取得部11によって取得された乗員動作情報に基づいて、車室内にいる乗員Pの数を推定する。そして、選択部16は、推定された乗員Pの数が所定の乗員数閾値よりも高いか否かを判定する。乗員数閾値は、例えば、乗員モデルの推定結果に基づいて複数の乗員Pの動作量が減少するように車両Mの制御量を算出することが可能な乗員Pの許容限界人数に設定されている。
【0080】
選択部16は、乗員Pの数が乗員数閾値よりも高いと判定した場合、各エリアRにおいて対象乗員Ptを選択する。まず、選択部16は、第1段階において取得部11によって取得された乗員動作量に基づき複数の乗員Pの動作量(例えば全ての乗員Pの動作量)を算出する。そして、図8に示されるように、選択部16は、車両Mの車室内を、複数のエリアRとして認識する。本実施形態では、複数のエリアRは、例えば、予め設定されており、車室内が分割された仮想的な領域であって、本実施形態では、車室内が6つに等分割された仮想的な領域である。選択部16は、各エリアRそれぞれにおいて複数の乗員Pの動作量のうち最大の動作量を有する乗員Pを推定し、当該乗員Pを対象乗員Ptとして選択する。
【0081】
選択部16によって対象乗員Ptが選択された場合、生成部12は、各エリアRにおいて、選択部16によって選択された対象乗員Ptそれぞれの動作を推定する乗員モデルである対象乗員モデル(モデル)を生成する。算出部13は、対象乗員モデルに基づいて推定された対象乗員Ptそれぞれの動作量から、例えば合計動作量が最小となるように車両Mの制御量を算出する。そして、算出部13は、例えば対象乗員Ptそれぞれの動作量のうち最大の動作量が、所定の動作量閾値よりも低い場合には、当該制御量を後述する制御部14に入力する。一方、算出部13は、対象乗員Ptそれぞれの動作量のうち最大の動作量が、所定の動作量閾値よりも低くないと判定した場合には、合計動作量が最小となる車両Mの制御量を再算出する。なお、選択部16は、乗員Pの数が乗員数閾値よりも高くないと判定した場合、対象乗員Ptを選択しない。
【0082】
次に、図10を参照して、第2実施形態のECU10が実行する対象乗員モデル生成処理を説明する。S31及びS32の処理は、S11及びS12の処理と同様である。S33において、ECU10は、車室内の乗員Pの数が所定の乗員数閾値よりも高いか否かを判定する。ECU10は、車室内の乗員Pの数が乗員数閾値よりも高いと判定した場合(S33:YES)、S34において、各エリアRにおいて対象乗員Ptを選択する(第6ステップ)。
【0083】
続いて、S35において、ECU10は、各エリアRについて、S34にて選択された対象乗員Ptそれぞれの動作を推定する対象乗員モデルを生成する。続いて、S36において、ECU10は、S35にて生成された対象乗員モデルを記憶部15に格納する。以上が、対象乗員モデル生成処理である。
【0084】
なお、ECU10は、車室内の乗員Pの数が乗員数閾値よりも高くないと判定した場合(S33:NO)、S37において、通常の処理を実行する。ここでいう通常の処理は、S13~S14の処理に相当する処理を意味する。
【0085】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0086】
第2実施形態に係るECU10は、車両制御装置であって、車室内の乗員Pの数が所定の乗員数閾値よりも高い場合、第1段階において取得部11によって取得された複数の乗員Pの動作に係る乗員動作情報に基づき複数の乗員Pの動作量を算出し、車室内を分割した複数のエリアRのそれぞれにおいて、最大の動作量を有する乗員Pである対象乗員Ptを選択する選択部16を更に備え、生成部12は、複数のエリアRのそれぞれにおいて、選択部16によって選択された対象乗員Ptそれぞれの動作を推定する乗員モデルを生成する。
【0087】
また、第2実施形態に係る車両制御方法では、第3ステップの前に、車室内の乗員Pの数が所定の乗員数閾値よりも高い場合、第1ステップにおいて取得された複数の乗員Pの動作に係る乗員動作情報に基づき複数の乗員Pの動作量を算出し、車室内を分割した複数のエリアRのそれぞれにおいて、最大の動作量を有する乗員Pである対象乗員Ptを選択する第6ステップを更に備え、第3ステップにおいては、複数のエリアRのそれぞれにおいて、第6ステップにおいて選択された対象乗員Ptそれぞれの動作を推定する乗員モデルを生成する。
【0088】
例えば、混雑時の路線バス等の車両Mに多数の乗員Pが乗車している場合、多数の乗員Pの動作を推定する乗員モデルに基づいた車両Mの制御が困難となるおそれがある。そこで、車室内にいる乗員Pのうち一部の乗員Pの動作に基づいて車両Mの制御量を算出することが考えられるが、例えば車両前方と車両後方とでは車両Mの動作に対する乗員Pの動作が異なる。このため、当該一部の乗員Pの動作に基づいて算出された車両Mの制御量に基づいて車両Mが制御されても、車室内の他の乗員Pに対して車両Mの乗り心地の向上が図れないおそれがある。これに対し、これらの装置及び方法によれば、各エリアRで最大の動作量を有する対象乗員Ptの対象乗員モデルに基づいて車両Mの制御量を算出するため、多数の乗員Pが乗車している車両Mにおいても、車室内の位置によらず、多数の乗員Pのそれぞれに対して車両Mの乗り心地を向上させることができる。
[変形例]
【0089】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、車両Mは、路線バスに限られず、他の周類の大型バス、普通乗用車等であってもよい。また、上述した車両制御装置及び車両制御方法の対象は、車両Mの車室内にいる乗客全員に限らず、例えば所定の条件を満たす複数の乗員Pであってもよく、また、例えば、車室内に一の乗員のみがいる場合は、当該一の乗員Pであってもよい。
【0090】
また、取得部11が取得する乗員動作情報は、複数のカメラ20から取得されるものに限られず、例えば、単数のカメラ20から取得されてもよい。また、乗員動作情報は、例えば、車室内に設けられたモーションセンサ等の他のセンサでもあってもよく、或いは複数種類のセンサの組合せから取得されたものであってもよい。また、車両動作情報は、車両Mの加速度情報等、他の情報であってもよい。
【0091】
また、第1段階及び乗員モデル生成処理のタイミングは、上述した実施形態に限定されない。第1段階及び乗員モデル生成処理のタイミングは、例えば、停止している車両Mが発車した直後、すなわち、車両Mの速度がゼロから変化したタイミングであってもよく、また、例えば、車両制御システム1が有する入力部等を介して、車両Mの運転手によってECU10に入力設定されたタイミングであってもよい。また、第2段階及び車両制御処理のタイミングも、上述した実施形態に限定されない。第2段階及び車両制御処理のタイミングは、例えば、カーブの多い形状の道路を車両Mが通過する時等、乗員Pの動作量が大きくなりやすい道路を車両Mが走行していることを内部センサ30等によって検知したタイミングであってもよく、また、例えば、車両制御システム1が有する入力部等を介して、車両Mの運転手によってECU10に入力設定されたタイミングであってもよい。
【0092】
また、乗員モデルは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、乗員モデルを構成する状態方程式では、乗員Pの全身を剛体モデルとして近似し、xg,yg,vx,vyのみを乗員Pの動作の状態変数としてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10…ECU(車両制御装置)、11…取得部、12…生成部、13…算出部、14…制御部、16…選択部、M…車両、P…乗員、Pt…対象乗員、R…エリア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10