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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】媒体供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/04 20060101AFI20240328BHJP
   B65H 3/48 20060101ALI20240328BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20240328BHJP
   B65H 1/14 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B65H1/04 326A
B65H3/48 320Z
B65H7/14
B65H1/14 322Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020030532
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021134029
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 譲
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119558(JP,A)
【文献】特開2003-312873(JP,A)
【文献】特開2019-011150(JP,A)
【文献】特開2014-144858(JP,A)
【文献】特開昭62-235133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00- 3/68
B65H 7/00- 7/20
B65H 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の媒体が積載される積載台と、
前記積載台に積載された前記複数の媒体のうち最上位の媒体を搬送する吸着搬送機構と、
前記媒体に向けてエアを吹き出すエア吹き出し機構と、
前記エア吹き出し機構によるエアの吹き出しによって浮上した前記最上位の媒体を、吸引エアを吸引することによって前記吸着搬送機構に吸着させる吸引機構と、
前記積載台に積載された前記媒体を検知する媒体検知センサと、
前記吸着搬送機構の搬送による前記媒体の供給動作を終了させた後、前記媒体が前記媒体検知センサによって検知されない高さまで前記積載台を下降させるとともに前記積載台を上昇させる制御部と
を備えることを特徴とする媒体供給装置。
【請求項2】
前記エア吹き出し機構は、前記積載台に積載された前記媒体を浮上させる浮上エアを吹き出す浮上エア吹き出し機構と、前記最上位の媒体と当該最上位の媒体の下部に位置する2枚目の前記媒体とを分離させる分離エアを吹き出す分離エア吹き出し機構とを有し、
前記制御部は、前記供給動作を終了させた後の前記積載台の下降中の少なくとも一部の期間で、前記浮上エア吹き出し機構の前記浮上エアと、前記分離エア吹き出し機構の前記分離エアとのうち少なくとも一方を吹き出させる
ことを特徴とする請求項1記載の媒体供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記供給動作を終了させた後、前記媒体が前記媒体検知センサによって検知される状態から検知されない状態に遷移する高さよりも下方まで前記積載台を下降させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の媒体供給装置。
【請求項4】
複数の媒体が積載される積載台と、
前記積載台に積載された前記複数の媒体のうち最上位の媒体を搬送する吸着搬送機構と、
前記媒体に向けてエアを吹き出すエア吹き出し機構と、
前記エア吹き出し機構によるエアの吹き出しによって浮上した前記最上位の媒体を、吸引エアを吸引することによって前記吸着搬送機構に吸着させる吸引機構と、
前記積載台に積載された前記媒体を検知する媒体検知センサと、
前記吸着搬送機構の搬送による前記媒体の供給動作を終了させた後、前記媒体が前記媒体検知センサによって検知されない高さまで前記積載台を下降させる制御部と
を備え、
前記制御部は、前記供給動作を終了させた後の前記積載台の下降を停止させる位置を、前記媒体の媒体情報に基づいて決定する
ことを特徴とする媒体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置の印刷部等に用紙を供給する給紙装置として、複数の用紙が積載される積載台と、この積載台に積載された複数枚の用紙のうち最上位の用紙を搬送する吸着搬送機構と、用紙に向けてエアを吹き出すエア吹き出し機構と、このエア吹き出し機構によるエアの吹き出しによって浮上した最上位の用紙を、吸引エアを吸引することによって吸着搬送機構に吸着させる吸引機構とを備える給紙装置が知られている。
【0003】
このような給紙装置において、積載台に積載された最上位の用紙の高さや、用紙の浮上状態を検知するための検知センサを備える給紙装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-11150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、用紙等の媒体は、エアの吹き出しによって浮上すると、搬送方向における位置がばらつくなど、不安定な状態となる。その後、例えば印刷ジョブに対応する媒体の供給が終了し、エアの吹き出しが停止すると、媒体の搬送方向において吸着搬送機構よりも下流側に位置する搬送ガイドや、積載台に積載された媒体の搬送方向における先端の位置を規制する先端規制部などに媒体がもたれかかることがある。
【0006】
また、このように媒体が搬送ガイドや先端規制部にもたれかかることで、積載台に積載された最上位の媒体の高さや、媒体の浮上状態を検知するための媒体検知センサが、媒体が有ることを検知し続けてしまう。そのため、媒体供給が再開する場合などに、最上位の媒体の高さを正確に検出することができなくなる。
【0007】
なお、浮上した媒体が落下後に正常な積載位置に戻すためには、例えば、浮上した媒体の搬送方向における上流側部分を上から押さえる構成などの、媒体の位置を規制する構成を追加することも考えられるが、このような構成を追加すると、媒体供給装置の構成が複雑化する。
【0008】
本発明の目的は、簡素な構成で、積載台上でエアの吹き出しによって浮上した媒体を、媒体の供給動作が終了した後に正常な積載位置に戻すことができる媒体供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、媒体供給装置は、複数の媒体が積載される積載台と、前記積載台に積載された前記複数の媒体のうち最上位の媒体を搬送する吸着搬送機構と、前記媒体に向けてエアを吹き出すエア吹き出し機構と、前記エア吹き出し機構によるエアの吹き出しによって浮上した前記最上位の媒体を、吸引エアを吸引することによって前記吸着搬送機構に吸着させる吸引機構と、前記積載台に積載された前記媒体を検知する媒体検知センサと、前記吸着搬送機構の搬送による前記媒体の供給動作を終了させた後、前記媒体が前記媒体検知センサによって検知されない高さまで前記積載台を下降させる制御部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
前記態様によれば、簡素な構成で、積載台上でエアの吹き出しによって浮上した媒体を、媒体の供給動作が終了した後に正常な積載位置に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施の形態における印刷システムの内部構成を示す図である。
図2】一実施の形態に係る媒体供給装置を示す図である。
図3】一実施の形態に係る媒体供給装置の制御構成を示す図である。
図4A】一実施の形態における媒体の供給動作を説明するための図(その1)である。
図4B】一実施の形態における媒体の供給動作を説明するための図(その2)である。
図4C】一実施の形態における媒体の供給動作を説明するための図(その3)である。
図5A】一実施の形態における媒体供給終了動作を説明するための図(その1)である。
図5B】一実施の形態における媒体供給終了動作を説明するための図(その2)である。
図5C】一実施の形態における媒体供給終了動作を説明するための図(その3)である。
図5D】一実施の形態における媒体供給終了動作を説明するための図(その4)である。
図5E】一実施の形態における媒体供給終了動作を説明するための図(その5)である。
図6】一実施の形態における媒体供給終了動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る媒体供給装置について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、印刷システム100の内部構成を示す図である。
【0014】
図2は、媒体供給装置1を示す図である。
【0015】
図3は、媒体供給装置1の制御構成を示す図である。
【0016】
なお、図1及び図2、並びに後述する図4A図4C及び図5A図5Eに示す前後、上下、及び左右の各方向は、媒体Mの搬送方向D(図2参照)を右方向とした場合の一例にすぎないが、例えば、前後方向及び左右方向が水平方向であり、上下方向が鉛直方向である。
【0017】
図1に示す印刷システム100は、2つの媒体供給装置1,1と、印刷装置101とを備える。
【0018】
2つの媒体供給装置1,1は、上下に並んで配置され、単一の印刷装置101の印刷部110へ媒体Mを供給する。なお、2つの媒体供給装置1,1が媒体Mを供給する対象は、印刷装置101に限られず、搬送装置などの他の装置であってもよい。また、媒体Mとしては、例えば用紙(枚葉紙)であるが、フィルム等の他のシート状の媒体などであってもよい。また、媒体供給装置1の数は、1つであっても、3つ以上であってもよい。また、複数の媒体供給装置1が並べられる方向は、前後方向であっても左右方向であってもよく、特に制限されない。また、媒体供給装置1は、印刷装置101等の他の装置に一体に備えられていてもよい。
【0019】
2つの媒体供給装置1,1は、上側の媒体供給装置1の図1に実線で示す上部側搬送経路R1と、下側の媒体供給装置1の図1に実線で示す下部側搬送経路R2とで長さや向きが異なることを除いて同一の構成とすることができる。そのため、以下では、単一の媒体供給装置1について説明する。
【0020】
図2に示すように、媒体供給装置1は、積載台10と、吸着搬送機構20と、吸引機構30と、浮上エア吹き出し機構41と、分離エア吹き出し機構42と、複数の搬送部材50と、搬送ガイド61と、先端規制部62と、媒体検知センサ70とを備える。
【0021】
また、図3に示すように、媒体供給装置1は、制御部81と、記憶部82と、インターフェース部83と、積載台昇降駆動部91と、吸着搬送駆動部92と、搬送部材駆動部93とを備える。
【0022】
図2に示す積載台10には、複数の媒体Mが積載される。積載台10は、図3に示す後述する積載台昇降駆動部91の駆動によって昇降可能に配置されている。
【0023】
吸着搬送機構20は、搬送ベルト21と、この搬送ベルト21が掛け渡されたプーリ22,23とを有する。プーリ22,23のうち一方は駆動プーリであり、他方は従動プーリである。駆動プーリは、図3に示す後述する吸着搬送駆動部92の駆動によって回転し、搬送ベルト21を回転させる。これにより、吸着搬送機構20は、積載台10に積載された複数の媒体Mのうち最上位の媒体M1を搬送方向D(右方向)に搬送する。
【0024】
搬送ベルト21には、後述する吸引機構30によって吸引される吸引エアA1を通すための図示しない貫通孔が複数設けられている。
【0025】
一例ではあるが、吸着搬送機構20は、媒体Mの搬送方向Dに直交する幅方向(前後方向)の中央において、媒体Mの幅方向に2つ(複数の一例)並んで配置されている。この場合、後述する吸引機構30は、各吸着搬送機構20に1つずつ配置されているとよい。もちろん、吸着搬送機構20は、1つのみ配置されていてもよい。
【0026】
なお、吸着搬送機構20は、搬送部材として、搬送ベルト21に代えて搬送ローラ等の他の搬送部材を有するものであってもよい。吸着搬送機構20が搬送ローラを有する場合には、吸着搬送駆動部92は、駆動プーリではなく駆動ローラ(搬送ローラ)を回転させることになる。
【0027】
吸引機構30は、吸着搬送機構20の搬送ベルト21によって囲まれた領域から、この搬送ベルト21の上述の図示しない複数の貫通孔を通して吸引エアA1を上方に吸引する。これにより、吸引機構30は、浮上した最上位の媒体M1を吸着搬送機構20に吸着させる。
【0028】
浮上エア吹き出し機構41は、積載台10に積載された媒体Mを浮上させる浮上エアA2を吹き出す。浮上エア吹き出し機構41は、最上位の媒体M1を含む例えば10枚程度の媒体Mを浮き上がらせるように斜め上方に浮上エアA2を吹き出すとよい。
【0029】
分離エア吹き出し機構42は、最上位の媒体M1と、この最上位の媒体M1の下部に位置する2枚目の媒体M2とを分離させる分離エアA3を吹き出す。
【0030】
なお、浮上エア吹き出し機構41及び分離エア吹き出し機構42は、積載台10に積載された媒体Mよりも搬送方向Dの下流側(右側)に配置されているが、媒体Mの幅方向(前後方向)の両側にも配置されているとよい。ここで、浮上エア吹き出し機構41及び分離エア吹き出し機構42は、媒体Mに向けてエアを吹き出すエア吹き出し機構の一例である。このエア吹き出し機構としては、浮上エア吹き出し機構41のみを有するものであってもよい。
【0031】
図1及び図2に示すように、搬送部材50は、上部側搬送経路R1及び下部側搬送経路R2に複数配置されている。例えば、搬送部材50は、媒体Mをニップしながら搬送するローラ対である。このローラ対は、一方が駆動ローラで他方が従動ローラであってもよいし、両方が従動ローラであってもよい。なお、搬送部材50が有する駆動ローラは、図3に示す後述する搬送部材駆動部93の駆動によって回転する。
【0032】
図2に示す搬送ガイド61は、搬送方向Dにおける吸着搬送機構20よりも下流側に配置され、この吸着搬送機構20によって搬送される媒体M(最上位の媒体M1)をガイドする。搬送ガイド61は、例えばガイドプレートである。
【0033】
先端規制部62は、積載台10に積載された媒体Mの搬送方向Dにおける先端の位置を規制する。先端規制部62は、例えば先端規制プレートである。なお、図示はしないが、媒体供給装置1は、積載台10に積載された媒体Mの搬送方向Dにおける後端の位置を規制する後端規制部(例えばエンドフェンス)と、積載台10に積載された媒体Mの搬送方向Dに直交する幅方向(前後方向)の位置を規制する一対の幅規制部(例えばサイドフェンス)とを更に備えるとよい。
【0034】
媒体検知センサ70は、積載台10に積載された媒体Mを検知する。媒体検知センサ70は、例えば、図2に破線で示す検知高さHに水平に照射した検知光の反射光に基づいて検知高さHにおける媒体Mの有無を検知する。媒体検知センサ70が検知高さHにおける媒体Mの有無を検知することによって、図3に示す後述する制御部81は、積載台10に積載された最上位の媒体Mの高さを検出することができる。
【0035】
また、媒体検知センサ70は、浮上している媒体Mに向けて検知光を照射し、その反射光の光量に基づいて、媒体Mの浮上状態(例えば、高さ方向における検知可能範囲での媒体Mの枚数)などを検知してもよい。
【0036】
図3に示す制御部81は、媒体供給装置1全体の動作を制御する演算処理装置として機能するプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)を有し、吸着搬送機構20、吸引機構30、浮上エア吹き出し機構41、分離エア吹き出し機構42、積載台昇降駆動部91などの媒体供給装置1の各部の動作を制御する。なお、媒体供給装置1が印刷装置101等の他の装置に一体に備えられる場合などには、他の装置の制御部が制御部81として機能してもよい。
【0037】
記憶部82は、例えば、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリであるROM(Read Only Memory)、プロセッサが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)などである。
【0038】
インターフェース部83は、印刷装置101の制御部等の外部機器との間で各種情報の授受を行う。例えば、インターフェース部83は、印刷装置101の制御部から、媒体Mの供給要求や供給停止要求などの情報を受け、制御部81は、これらの情報に基づき、媒体供給装置1の各部の動作を制御する。
【0039】
積載台昇降駆動部91は、積載台10を昇降させるモータ(アクチュエータの一例)を有する。
【0040】
吸着搬送駆動部92は、吸着搬送機構20のプーリ22,23のうちの一方である駆動プーリを回転させるモータ(アクチュエータの一例)を有する。
【0041】
搬送部材駆動部93は、例えばローラ対である搬送部材50の駆動ローラを回転させるモータ(アクチュエータの一例)を有する。
【0042】
次に、図1に示す印刷装置101について説明する。
【0043】
図1に示す印刷装置101は、印刷部110と、吸着搬送機構120と、複数の搬送部材130と、反転部140とを有する。なお、図1には、上側の媒体供給装置1の上部側搬送経路R1と下側の媒体供給装置1の下部側搬送経路R2とが合流した合流搬送経路R3、及び排出搬送経路R4を実線で示し、循環反転搬送経路R5を破線で示す。
【0044】
印刷部110は、例えば、印刷に用いられる各色分の図示しないラインヘッド型インクジェットヘッドを有する。なお、印刷部110の印刷方式は、インクジェット印刷方式以外の印刷方式であってもよい。
【0045】
吸着搬送機構120は、印刷部110に対向するように配置されている。吸着搬送機構120は、例えば媒体Mを吸着しながら、搬送ベルトによって媒体Mを搬送する。
【0046】
複数の搬送部材130のそれぞれは、合流搬送経路R3、排出搬送経路R4、及び循環反転搬送経路R5に配置されている。例えば、搬送部材130は、媒体Mをニップしながら搬送するローラ対である。このローラ対は、一方が駆動ローラで他方が従動ローラであってもよいし、両方が従動ローラであってもよい。
【0047】
反転部140は、印刷部110によって表面の印刷が行われ循環反転搬送経路R5に搬送された媒体Mの表裏を反転させる反転経路やスイッチバックローラ対などを有する。
【0048】
なお、印刷部110において片面のみの印刷が行われ、循環反転搬送経路R5に搬送されない媒体M、及び両面の印刷が行われた媒体Mは、排出搬送経路R4から排出され、印刷装置101に直列に配置された他の印刷装置や、媒体排出装置や、後処理装置などに搬送されるとよい。
【0049】
次に、媒体Mの供給動作の概要について説明する。
【0050】
図4A図4Cは、媒体Mの供給動作を説明するための図である。
【0051】
まず、図3に示す制御部81は、印刷装置101の制御部から、媒体Mの供給要求を受けると、図4Aに示す最上位の媒体M1の高さが例えば上述の媒体検知センサ70の検知高さHとなるまで積載台10を昇降させるように、積載台昇降駆動部91を制御する。
【0052】
また、制御部81は、図4Bに示すように、吸引機構30に吸引エアA1を吸引させ、浮上エア吹き出し機構41に浮上エアA2を吹き出させ、分離エア吹き出し機構42に分離エアA3を吹き出させる。
【0053】
一例ではあるが、制御部81は、最上位の媒体M1が吸着搬送機構20に吸着されると、浮上エア吹き出し機構41に浮上エアA2の吹き出しを一時的に停止させ、吸着搬送機構20が最上位の媒体M1を搬送するように吸着搬送駆動部92を制御するとよい。また、制御部81は、上部側搬送経路R1又は下部側搬送経路R2において搬送部材50が媒体Mを搬送するように搬送部材駆動部93を制御する。
【0054】
ところで、図4Bに示すように、浮上エアA2によって浮上した状態の媒体M(例えば、2枚目の媒体M2や3枚目の媒体M3)は、搬送方向Dにおける位置がばらつくなど、不安定な状態となる。また、制御部81が、印刷装置101の制御部から媒体Mの供給停止要求を受けることに基づいて、浮上エアA2の吹き出しなどを停止させると、図4Cに示すように、最上位の媒体M1や2枚目の媒体M2が、搬送ガイド61や先端規制部62にもたれかかることがある。このように媒体Mが搬送ガイド61や先端規制部62にもたれかかると、上述の媒体検知センサ70が、媒体Mが有ることを検知し続けてしまい、媒体Mの供給を再開する場合などに、最上位の媒体M1の高さを正確に検出することができなくなる。
【0055】
そこで、制御部81は、例えば印刷ジョブの終了時などの媒体Mの供給終了時に、以下で説明する媒体供給終了動作を行わせるように各部を制御することで、媒体Mのもたれを解消するとよい。
【0056】
図5A図5Eは、媒体供給終了動作を説明するための図である。
【0057】
図6は、媒体供給終了動作を説明するためのフローチャートである。
【0058】
図3に示す制御部81は、図6に示すように、吸着搬送機構20が最後の媒体Mを搬送した後、規定時間が経過するまで規定時間が経過したかを判定し(ステップS1)、規定時間が経過すると(ステップS1:YES)、分離エア吹き出し機構42の分離エアA3の吹き出し、及び吸引機構30の吸引エアA1の吸引を停止させる(ステップS2)。このとき、浮上エア吹き出し機構41は、浮上エアA2を吹き出している。
【0059】
制御部81は、分離エアA3の吹き出し及び吸引エアA1の吸引を停止させてから規定時間が経過するまで、規定時間が経過したかを判定し(ステップS3)、規定時間が経過すると(ステップS3:YES)、浮上エア吹き出し機構41の浮上エアA2の吹き出しを停止(OFF)させる(ステップS4)。この浮上エアA2の吹き出しの停止は、徐々に風量が弱まるものであってもよい。また、制御部81が浮上エアA2の吹き出しを停止させるタイミングは、後述する積載台10の下降中(ステップS5~S8)となるように、ステップS3の規定時間が決定されているとよい。なお、例えば、ステップS2における分離エアA3の吹き出し停止と同時に浮上エアA2の吹き出しを停止させ、積載台10の下降中の少なくとも一部の期間で、一時的に浮上エアA2が吹き出されてもよい。このように、制御部81は、媒体Mの供給動作を終了させた後の積載台10の下降中の少なくとも一部の期間で、浮上エアA2を吹き出させるとよい。また、制御部81は、媒体Mの供給動作を終了させた後の積載台10の下降中の少なくとも一部の期間で、浮上エアA2を吹き出させるのに代えて、分離エアA3を吹き出させてもよいし、浮上エアA2及び分離エアA3の両方を吹き出させてもよい。
【0060】
制御部81は、上述のように、分離エア吹き出し機構42の分離エアA3の吹き出し、及び吸引機構30の吸引エアA1の吸引を停止させると(ステップS2)、図5Aに示すように、積載台10が下降を開始するように、積載台昇降駆動部91を制御する(ステップS5)。
【0061】
その後、制御部81は、図5Bに示すように媒体Mが媒体検知センサ70によって検知される状態(ON)から検知されない状態(OFF)に遷移するまで、遷移したかを判定する(ステップ6)。なお、積載台10が下限位置まで下降しても、媒体Mが媒体検知センサ70によって検知されない状態(OFF)に遷移しない場合、制御部81は、例えば表示部にエラー表示を行うことで、ユーザへの報知を行うとよい。
【0062】
制御部81は、媒体Mが媒体検知センサ70によって検知されない状態(OFF)に遷移すると(ステップS6:NO)、図5Cに示すように積載台10が更に規定量下降してから(ステップS7:YES)、積載台10が下降を停止するように、積載台昇降駆動部91を制御する(ステップS8)。積載台10が下降する上記の規定量、すなわち積載台10の下降を停止させる位置は、媒体情報に基づいて決定されるとよい。この媒体情報は、例えば、媒体Mのサイズ、媒体Mの向き、媒体Mの種類などである。なお、媒体情報は、例えば、印刷装置101の印刷ジョブに基づいて制御部81によって取得されるとよい。
【0063】
媒体Mのサイズは、例えば、A3(297×420mm)、A4(210×297mm)などである。媒体Mの向きは、媒体Mの長手方向が搬送方向Dに平行な縦、又は、媒体Mの長手方向が搬送方向Dに直交する横である。媒体Mの種類は、普通紙、厚紙、薄紙などの媒体Mの厚さ(坪量)や、媒体Mの材質(摩擦)などである。
【0064】
例えば、媒体Mが厚紙である場合や相対的にサイズが大きい場合には、媒体Mが搬送ガイド61や先端規制部62にもたれかかりやすくなるため、積載台10が下降する上記の規定量が大きくなるとよい。また、媒体Mが薄紙である場合や相対的にサイズが小さい場合には、媒体Mが搬送ガイド61や先端規制部62にもたれかかりにくいため、積載台10が下降する上記の規定量が小さくなるとよい。なお、媒体Mが薄紙である場合や相対的にサイズが小さい場合には、上記の規定量が0(ゼロ)、すなわち媒体Mが媒体検知センサ70によって検知されなくなる状態(OFF)で、積載台10の下降が停止してもよい。
【0065】
媒体情報に対応する上記の規定量は、例えば、予め、媒体情報を変更しながら、媒体Mの搬送ガイド61や先端規制部62などへのもたれかかりやすさの実験が行われ、もたれかかりやすい媒体Mほど規定量が大きくなるように、媒体情報に対応する上記の規定量のテーブルが作成され、記憶部82に記憶されるとよい。そして、制御部81は、記憶部82に記憶されたテーブルを参照することによって、規定量を決定するとよい。
【0066】
また、制御部81は、上述の媒体情報に加えて(又は媒体情報に代えて)、媒体供給装置1が設置された環境の湿度、温度、気流などの環境情報を図示しないセンサから取得し、この環境情報に基づいて、上記の規定量を決定してもよい。例えば、湿度が高いほど、媒体Mの重量が大きくなって媒体Mのもたれかかりが発生しやすくなるため、上記の規定量が大きくなるとよい。
【0067】
また、制御部81は、上述の媒体情報及び環境情報のうち少なくとも一方に基づいて、浮上エアA2を停止させる上述のステップS3の規定時間を、例えば、もたれかかりが発生しやすい媒体Mほど規定時間が長くなるように決定してもよい。
【0068】
上述のように、吸引エアA1の吹き出しが停止(OFF)し(ステップS4)、且つ積載台10の下降が停止(ステップS8)した後、制御部81は、積載台10が上昇を開始するように、積載台昇降駆動部91を制御する(ステップS9)。
【0069】
その後、制御部81は、図5Dに示すように媒体Mが媒体検知センサ70によって検知されない状態(OFF)から検知される状態(ON)に遷移するまで、遷移したかを判定する(ステップ10)。また、制御部81は、媒体Mが媒体検知センサ70によって検知される状態(ON)に遷移した後(ステップS10:YES)、図5Eに示すように積載台10が更に規定量上昇してから(ステップS11:YES)、積載台10が上昇を停止するように、積載台昇降駆動部91を制御する(ステップS12)。なお、積載台10が上昇する際の規定量は、上述のように媒体情報に基づいて決定される積載台10が下降する際の規定量とは異なる量であってよい。また、積載台10が上昇する際の規定量も、上述の媒体情報及び環境情報のうち少なくとも一方に基づいて決定されてもよい。
【0070】
ここで、ステップS9~S12において積載台10を上昇させることによって、媒体Mの搬送ガイド61や先端規制部62へのもたれかかりを、積載台10を下降させる場合と同様に解消しやすくすることができる。また、積載台10の上昇は、媒体Mの供給動作が再開するときに行ってもよいが、積載台10の下降停止(ステップS8)後すぐに行うことで、搬送ガイド61や先端規制部62にもたれかかった状態のクセが媒体Mにつくのを抑制することができる。
【0071】
以上説明した本実施の形態では、媒体供給装置1は、積載台10と、吸着搬送機構20と、エア吹き出し機構(例えば、浮上エア吹き出し機構41及び分離エア吹き出し機構42)と、吸引機構30と、媒体検知センサ70と、制御部81とを備える。積載台10には、複数の媒体Mが積載される。吸着搬送機構20は、積載台10に積載された複数の媒体Mのうち最上位の媒体M1を搬送する。エア吹き出し機構は、媒体Mに向けてエア(例えば、浮上エアA2及び分離エアA3)を吹き出す。吸引機構30は、エア吹き出し機構によるエアの吹き出しによって浮上した最上位の媒体M1を、吸引エアA2を吸引することによって吸着搬送機構20に吸着させる。媒体検知センサ70は、積載台10に積載された媒体Mを検知する。制御部81は、吸着搬送機構20の搬送による媒体Mの供給動作を終了させた後、媒体Mが媒体検知センサ70によって検知されない高さまで積載台10を下降させる。
【0072】
そのため、媒体Mが媒体検知センサ70によって検知されない高さまで積載台10が下降することで、媒体Mが、浮上時に不安定な状態となり落下後に例えば搬送ガイド61や先端規制部62にもたれかかっても、媒体Mの自重などで搬送ガイド61や先端規制部62との接触部分の抵抗力(摩擦力)に打ち勝ち、もたれかかりを解消するように媒体Mの姿勢を変化させることができる。また、新たな構成を追加せず、積載台10を下降させることによって、媒体Mの姿勢を変化させることができるため、媒体供給装置1の構成を簡素にすることができる。よって、本実施の形態によれば、簡素な構成で、積載台10上でエア(例えば浮上エアA2)の吹き出しによって浮上した媒体Mを、媒体Mの供給動作が終了した後に正常な積載位置に戻すことができる。
【0073】
また、本実施の形態では、媒体Mに向けてエアを吹き出す上記のエア吹き出し機構は、積載台10に積載された媒体Mを浮上させる浮上エアA2を吹き出す浮上エア吹き出し機構41と、最上位の媒体M1と最上位の媒体M1の下部に位置する2枚目の媒体M2とを分離させる分離エアA3を吹き出す分離エア吹き出し機構42とを有する。また、制御部81は、供給動作を終了させた後の積載台10の下降中(ステップS5~S8)の少なくとも一部の期間(ステップS5~S4)で、浮上エア吹き出し機構41の浮上エアA2(浮上エアA2と分離エアA3とのうち少なくとも一方の一例)を吹き出させる。
【0074】
これにより、積載台10が下降する際のもたれかかりを解消する媒体Mの姿勢の変化を、浮上エアA2の吹き出しによって、より一層生じさせることができる。したがって、媒体Mの供給動作が終了した後に、より確実に媒体Mを正常な積載位置に戻すことができる。
【0075】
また、本実施の形態では、制御部81は、供給動作を終了させた後、媒体Mが媒体検知センサ70によって検知される状態(ON)から検知されない状態(OFF)に遷移する高さ(ステップS6:NO)よりも下方まで積載台10を下降させる(ステップS7,8)。
【0076】
これにより、積載台10が下降する際のもたれかかりを解消する媒体Mの姿勢の変化を、下降量を大きくすることによって、より一層生じさせることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、制御部81は、供給動作を終了させた後の積載台10の下降を停止させる位置を、媒体Mの媒体情報に基づいて決定する。
【0078】
これにより、搬送ガイド61や先端規制部62へもたれかかりやすい媒体Mほど、積載台10の下降量を大きくすることによって、媒体Mのもたれかかりやすさに応じて媒体Mの姿勢の変化を生じさせることができる。したがって、媒体情報によらずに一律に積載台10の下降量を大きくする態様と比較して、もたれ解消の処理を簡略化することができる。
【0079】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0080】
[付記1]
複数の媒体が積載される積載台と、
前記積載台に積載された前記複数の媒体のうち最上位の媒体を搬送する吸着搬送機構と、
前記媒体に向けてエアを吹き出すエア吹き出し機構と、
前記エア吹き出し機構によるエアの吹き出しによって浮上した前記最上位の媒体を、吸引エアを吸引することによって前記吸着搬送機構に吸着させる吸引機構と、
前記積載台に積載された前記媒体を検知する媒体検知センサと、
前記吸着搬送機構の搬送による前記媒体の供給動作を終了させた後、前記媒体が前記媒体検知センサによって検知されない高さまで前記積載台を下降させる制御部と
を備えることを特徴とする媒体供給装置。
【0081】
[付記2]
前記エア吹き出し機構は、前記積載台に積載された前記媒体を浮上させる浮上エアを吹き出す浮上エア吹き出し機構と、前記最上位の媒体と当該最上位の媒体の下部に位置する2枚目の前記媒体とを分離させる分離エアを吹き出す分離エア吹き出し機構とを有し、
前記制御部は、前記供給動作を終了させた後の前記積載台の下降中の少なくとも一部の期間で、前記浮上エア吹き出し機構の前記浮上エアと、前記分離エア吹き出し機構の前記分離エアとのうち少なくとも一方を吹き出させる
ことを特徴とする付記1記載の媒体供給装置。
【0082】
[付記3]
前記制御部は、前記供給動作を終了させた後、前記媒体が前記媒体検知センサによって検知される状態から検知されない状態に遷移する高さよりも下方まで前記積載台を下降させる
ことを特徴とする付記1又は2記載の媒体供給装置。
【0083】
[付記4]
前記制御部は、前記供給動作を終了させた後の前記積載台の下降を停止させる位置を、前記媒体の媒体情報に基づいて決定する
ことを特徴とする付記1から3のいずれか記載の媒体供給装置。
【符号の説明】
【0084】
1 媒体供給装置
10 積載台
20 吸着搬送機構
21 搬送ベルト
22,23 プーリ
30 吸引機構
41 浮上エア吹き出し機構
42 分離エア吹き出し機構
50 搬送部材
61 搬送ガイド
62 先端規制部
70 媒体検知センサ
81 制御部
82 記憶部
83 インターフェース部
91 積載台昇降駆動部
92 吸着搬送駆動部
93 搬送部材駆動部
100 印刷システム
101 印刷装置
110 印刷部
120 吸着搬送機構
130 搬送部材
140 反転部
A1 吸引エア
A2 浮上エア
A3 分離エア
D 搬送方向
H 検知高さ
M 媒体
M1 最上位の媒体
M2 2枚目の媒体
M3 3枚目の媒体
R1 上部側搬送経路
R2 下部側搬送経路
R3 合流搬送経路
R4 排出搬送経路
R5 循環反転搬送経路
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6