(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/10 20060101AFI20240328BHJP
A47K 17/00 20060101ALI20240328BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
A47K13/10
A47K17/00
E03D9/00 Z
(21)【出願番号】P 2020040774
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】行武 陽平
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-025264(JP,A)
【文献】特開2003-102648(JP,A)
【文献】特開2013-036175(JP,A)
【文献】特開2005-207072(JP,A)
【文献】登録実用新案第3225180(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0036541(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/10
A47K 17/00
E03D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と、
便蓋と、
便座と、
人が前記便器本体に近づいたことを検知する人体検知部と、
人が前記便座に着座したことを検知する着座検知部と、
前記便蓋を回転させる便蓋回転装置と、
前記便座を回転させる便座回転装置と、
前記人体検知部及び前記着座検知部の検知信号に基づいて、前記便蓋回転装置及び前記便座回転装置を互いに独立して制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置
は、前記人体検知部が人を検知することによって前記便蓋を自動開放させるように前記便蓋回転装置を制御してから、前記着座検知部が着座を検知しない状態で所定時間経過
した後
であって、且つ前記便蓋が開放状態であると判定した場合に、前記便座を自動開放させるように前記便座回転装置を制御する便座遅延開放機能を有する、便器装置。
【請求項2】
前記便座遅延開放機能を実行する及び前記便座遅延開放機能を実行しない、のいずれかをユーザが選択可能な入力部をさらに備える、請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記入力部は、前記所定時間をユーザが変更可能に設けられる、請求項
2に記載の便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の便座装置が知られている。この便座装置は、便座が閉状態の場合に、着座検知センサが検知状態となってから、便座へのユーザの着座を確定する所定の着座確定時間が経過する前に、着座検知センサが非検知状態となったことに基づいて、便座を自動で開放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、便蓋が開放した後に閉状態の便座を自動開放させるためには、便座を手等によって押圧することが必要である。この操作を知らないユーザは、閉状態の便座を自動開放させることができない。そのため、発明者は、ユーザの操作を必要とすることなく、閉状態の便座を自動開放できるようにする、という課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、便器本体と、便蓋と、便座と、人が前記便器本体に近づいたことを検知する人体検知部と、人が前記便座に着座したことを検知する着座検知部と、前記便蓋を回転させる便蓋回転装置と、前記便座を回転させる便座回転装置と、前記人体検知部及び前記着座検知部の検知信号に基づいて、前記便蓋回転装置及び前記便座回転装置を互いに独立して制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が、前記人体検知部が人を検知することによって前記便蓋を自動開放させるように前記便蓋回転装置を制御してから、前記着座検知部が着座を検知しない状態で所定時間経過後に、前記便座を自動開放させるように前記便座回転装置を制御する便座遅延開放機能を有する、便器装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の一実施形態に係る便器装置の斜視図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る便器装置の側面断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る便器装置の機能ブロック図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る便器装置における便座遅延開放動作処理を説明するフローチャートである。
【
図5】本開示の一実施形態に係る便器装置における入力部の入力画面を示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る便器装置における入力部の入力画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の便器装置1の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明においては、便器装置1の便座21に座った人から視た場合の前後の方向を前後方向と定義する。前後方向に交差する左右を結ぶ方向を左右方向と定義する。鉛直方向に沿った上下の方向を上下方向と定義する。
【0008】
図1に示すように、便器装置1は、便器本体10と、便座21と、便蓋22と、機能部3と、人体検知部4(
図2参照)と、着座検知部5と、入力部6と、を有する。便器装置1は、例えばトイレルームの壁面Wに壁掛け式で配置され、汚物を下水へ流して洗浄する水洗式の装置である。
【0009】
便座21は、中央が後述する便器本体10の開口に連通するように開口した略環状で平坦な部材であり、便器本体10の上面に載置される。便座21は、便器本体10に対して、後述する便座回転装置32(
図3参照)の駆動によって回転可能に取り付けられている。これによって、便座21は、便器本体10に対して開閉可能に設けられる。
【0010】
便蓋22は、便座21の上に配置され、便座21及び便器本体10の凹部を覆っている。便蓋22は、便器本体10に対して、後述する便蓋回転装置33(
図3参照)の駆動によって、便座21とは独立して回転可能に取り付けられている。これによって、便蓋22は、便座21と同様に開閉可能に設けられる。
【0011】
機能部3は、便器本体10の後方に配置される。機能部3は、
図3に示すように、制御装置31と、便座21の開閉機構である便座回転装置32と、便蓋22の開閉機構である便蓋回転装置33と、を含む。便座回転装置32及び便蓋回転装置33は、便座21及び便蓋22を回転させるモータ(図示せず)等をそれぞれ含む。便座回転装置32及び便蓋回転装置33のそれぞれの駆動は、制御装置31によって独立して制御される。さらに、機能部3は、加温装置、音楽基板、スピーカー等の機能部品を含むことができる(いずれも図示省略)。機能部3には、各種の機構や装置を接続し、機能部3内の機能部品に電力を供給するための電気配線や、給水用の配管等が配置される。
【0012】
便器本体10は、
図2に示すように壁掛け式であり、ボウル部11と、排水口11aと、排水トラップ11bと、周壁部12と、溝部13と、を有する。
図2では、便座21、便蓋22、機能部3及び入力部6は省略して示されている。ボウル部11は、上部が開口した凹状に形成され、汚物等を受け入れる容器である。排水口11aは、ボウル部11の下端に配置されて外部の下水管(図示省略)へと連続する開口である。排水トラップ11bは、排水口11aから延出し、略U字状に延びる屈曲した管である。排水トラップ11bは、排水口11aの下端と下水管との間で下方へ延びた後に上方へ屈曲することで形成され、水を溜めることができる溜水部11cを有する。排水トラップ11bは、溜水部11cに水を溜めることで、下水側からの臭気がボウル部11へ移動することを防止する。
【0013】
周壁部12は、ボウル部11の外周を覆うとともに、上下方向に延びる壁である。周壁部12は、便器本体10の外郭を規定する。
図2に示すように、溝部13は、ボウル部11の下面と周壁部12の内側面との間に形成される凹部であり、ボウル部11の下面の周囲に沿って略U字状に形成されている。
【0014】
人体検知部4は、便器本体10の下方に設けられ、
図3に示すように、機能部3の制御装置31と電気的に接続されている。人体検知部4は、ユーザが便器装置1に近づいたことを検知した場合に、検知信号を制御装置31に出力する。本実施形態に示す人体検知部4は、ユーザの足を検知するフットセンサによって構成され、
図2に示すように、便器本体10の溝部13に配置される。より具体的には、人体検知部4は、排水トラップ11bよりも前方側に配置され、便器本体10の前方側における周壁部12の内側面12aに固定される。人体検知部4は、取付部41と、センサ部42と、を有し、取付部41によって内側面12aに固定される。本実施形態に示すセンサ部42は、例えば赤外線測距センサによって構成される。
【0015】
図2に示すように、人体検知部4は、周壁部12の前方下端と、排水トラップ11bの前方下端とを結ぶ仮想線IMよりも側面視で上方に配置されている。人体検知部4は溝部13内に取り付けられる。センサ部42はセンサ光を発光するために傾いている。センサ部42の一部分は、便器本体10から下方に突出している。この突出したセンサ部42の一部分は、仮想線IMよりも上方に位置している。人体検知部4の検知エリアは、例えば、便器本体10の先端から70mm程度前方であり、床面Fから80mm程度上方である。検知エリアは、適宜変更してよい。
【0016】
着座検知部5は、便座21に設けられ、
図3に示すように、機能部3の制御装置31と電気的に接続されている。着座検知部5は、ユーザが閉状態の便座21に着座したことを検知した場合に、検知信号を制御装置31に出力する。本実施形態に示す着座検知部5は、ユーザが便座21に接触したときの静電容量の変化を検出する静電容量センサによって構成され、便座21の内部に埋め込まれている。しかし、着座検知部5は、例えば、赤外線センサ、圧力センサ、物理スイッチ等であってもよい。
【0017】
入力部6は、リモートコントローラによって構成され、
図1に示すように、トイレルームの便器装置1の側方に配置される壁面Wに取り付けられている。入力部6は、
図3に示すように、配線(図示せず)によって機能部3の制御装置31と電気的に接続されている。入力部6は、便器装置1の状態、便器装置1が有する複数種類の機能の設定項目等の表示を行う画面部61と、複数の入力スイッチ62と、を有する。入力部6は、ユーザによって操作されることによって、便器装置1の様々な機能の設定を行うことができる。入力部6の一部の機能は、便器本体10側に配置されていてもよい。
【0018】
本実施形態の便器装置1の制御装置31は、入力部6によって設定される複数種類の機能うちの一つの機能としての便蓋自動開放機能と、他の一つの機能としての便座遅延開放機能と、を少なくとも有する。
【0019】
便蓋自動開放機能は、人体検知部4によってユーザが便器装置1に近づいたことを検知した場合に便蓋22のみを自動開放する機能である。詳しくは、人体検知部4がユーザの接近を検知すると、人体検知部4は検知信号を制御装置31に出力する。
図3に示すように、制御装置31には、便蓋回転装置33が制御可能に接続されている。制御装置31は、人体検知部4から検知信号の入力があると、閉状態の便蓋22を自動開放するように便蓋回転装置33を制御する。これによって、便器装置1は、ユーザが便座21に対して着座可能な状態となる。
【0020】
便座遅延開放機能は、便蓋自動開放機能によって便蓋22が自動開放された後、便器装置1の状態が所定の条件を満たす場合に、便蓋22の自動開放に遅延して閉状態の便座21を自動開放する機能である。詳しくは、制御装置31は、便蓋22を自動開放させるように便蓋回転装置33を制御してから、着座検知部5が着座を検知しない状態で所定時間経過後に、さらに便座21を自動開放させるように便座回転装置32を制御する。
【0021】
この制御装置31の便座遅延開放機能による便座遅延開放動作処理について、
図4に示すフローチャートに基づいて詳しく説明する。便座21及び便蓋22の両方が閉状態である便器装置1において、ユーザが便器装置1に近づくことによってユーザの足が人体検知部4の検知範囲に入ると、人体検知部4はユーザの足を検知し、検知信号を制御装置31に出力する。これによって、制御装置31は、人体検知部4の検知ありと判定する(S1)。ステップS1において、制御装置31は、人体検知部4の検知無しであると判定している間は、便座遅延開放動作処理について何の処理も行わない。
【0022】
ステップS1において、人体検知部4から検知信号の入力があると、制御装置31は、便蓋自動開放機能によって便蓋22を自動開放するように便蓋回転装置33を制御する(S2)。その後、制御装置31は、内部に設けられるタイマ34(
図3参照)を起動させ、着座が無い継続期間を示す着座無し時間tの計測を開始する(S3)。
【0023】
着座無し時間tの計測が開始された後、制御装置31は、着座検知部5からの検出信号の有無を確認することによって、ユーザが便座21に着座したか否かを監視する(S4)。ステップS4において、着座検知部5からの検知信号の入力が所定時間継続すると、制御装置31は、着座検知部5の検知あり(ステップS4においてYES)と判定する。これによって、便器装置1は、ユーザが便座21に着座して使用中の状態であると判断される。そのため、制御装置31は、便蓋22を開状態に維持し、便座21を閉状態に維持し、便座遅延開放動作処理を終了する。
【0024】
着座検知部5から検知信号が出力されない間、制御装置31は、計測している着座無し時間tを、制御装置31に予め設定されている着座無し時間の閾値である所定時間Tと比較する(S5)。所定時間Tは、一般に、便蓋22が自動開放した後に、ユーザが脱衣して着座を完了すると想定される時間に設定される。具体的には、所定時間Tは、例えば5秒に設定される。ステップS5において、着座無し時間tが所定時間Tよりも小さい場合(ステップS5においてNOの場合)は、制御装置31は、着座無し時間tの計測と、着座検知部5からの検知信号があるか否かの監視とを継続する。
【0025】
ステップS5において、着座無し時間tが所定時間Tを超えた場合(ステップS5においてYESの場合)は、制御装置31は、便蓋22が開放状態にあるか否かを判定する(S6)。便蓋22が自動開放された後、ユーザが便蓋22を手動で強制的に閉じる場合があるためである。このステップS6において、便蓋22は開放状態ではないと判定された場合(ステップS6においてNOの場合)は、制御装置31は便座遅延開放動作処理を終了する。
【0026】
ステップS6において、便蓋22は開放状態であると判定された場合(ステップS6においてYESの場合)は、制御装置31は、便座21を自動開放するように便座回転装置32を制御するとともに、着座無し時間tをリセットする(S7)。その後、制御装置31は便座遅延開放動作処理を終了する。
【0027】
本実施形態の便器装置1は、上述したように、制御装置31が、人体検知部4がユーザを検知することによって便蓋22を自動開放させるように便蓋回転装置33を制御してから、着座検知部5が着座を検知しない状態で所定時間経過後に、便座21を自動開放させるように便座回転装置32を制御する便座遅延開放機能を有する。これによって、ユーザの検知によって便蓋22が自動開放した後に、閉状態の便座21を自動開放させることができる。そのため、この便器装置1によれば、便蓋22のみが自動開放した後、例えば男性が立姿勢で小用を足したい場合に、便座21に触れることなく、便座21を自動開放させることができる。したがって、便器装置1の利便性が向上する。
【0028】
便器装置1の入力部6は、便座遅延開放機能を実行する及び便座遅延開放機能を実行しない、のいずれかをユーザが選択可能であってもよい。
図5は、便座遅延開放機能の設定画面が表示された入力部6の画面部61の例を示している。入力部6は、画面部61に表示された便座遅延開放機能のON設定及びOFF設定にそれぞれ対応する入力スイッチ62をユーザが押下操作することによって、便座遅延開放機能を実行する及び便座遅延開放機能を実行しない、のいずれかを選択することができる。これによって、ユーザは、便座遅延開放機能を実行したい場合のみに、実行可能状態に設定することができるため、便器装置1の利便性がさらに向上する。
【0029】
便器装置1の入力部6は、便蓋22が自動開放した後に便座21を遅延して開放するための遅延時間である所定時間Tを、ユーザによって変更可能に設けられていてもよい。
図6は、所定時間Tの設定画面が表示された入力部6の画面部61の例を示している。入力部6は、画面部61に表示された着座無し時間tの設定時間を増減させるUP及びDOWNに対応する入力スイッチ62をユーザが押下操作することによって、所定時間Tを変更することができる。これによって、ユーザは、便座21を自動開放させる際の遅延時間を任意に設定できるため、便器装置1の利便性がさらに向上する。
【0030】
本開示の便器装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、変形、改良等は本開示に含まれる。例えば、便器装置は床面設置式であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 便器装置、 4 人体検知部、 5 着座検知部、6 入力部、 10 便器本体、 21 便座、 22 便蓋、 31 制御装置、 32 便座回転装置、33 便蓋回転装置