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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/04 20060101AFI20240328BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B65D43/04 200
B65D81/34 U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020041033
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021142987
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】593215829
【氏名又は名称】アテナ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(72)【発明者】
【氏名】奥村 教全
(72)【発明者】
【氏名】桜井 健司
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-030658(JP,A)
【文献】特開2014-091540(JP,A)
【文献】特開2019-006444(JP,A)
【文献】特開2001-122305(JP,A)
【文献】特開平09-216649(JP,A)
【文献】実開昭54-109701(JP,U)
【文献】実開昭51-093701(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/04
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙又は紙もしくは植物繊維を主体とする材料からなり、上部開口に外巻状縁部を備え、前記上部開口の前記外巻状縁部近傍の内周壁部に前記上部開口の前記外巻状縁部と平行に周回する凹溝状嵌合部が形成された紙製容器本体と、
前記紙製容器本体の前記上部開口を覆うとともに前記紙製容器本体内の蒸気を排出する蒸気孔を有する蓋面部と、前記紙製容器本体の前記上部開口の縁部に当接する蓋鍔部と、前記蓋面部と前記蓋鍔部との間に介在されて前記紙製容器本体の前記上部開口内に入り込むように周設された垂下部とを有し、前記蓋鍔部が前記垂下部の上端から外側方へ延設されているとともに、前記垂下部の外周部凸条嵌着部が形成されている蓋体
とを備え
前記蓋体の凸条嵌着部位置の直径(D1)が前記紙製容器本体の凹溝状嵌合部位置の直径(D2)より大きく、かつ、前記凸条嵌着部の突出長さ(L1)が前記凹溝状嵌合部の深さ(L2)以上に構成されて、閉蓋時に前記凸条嵌着部が前記凹溝状嵌合部に圧接されて嵌着する
ことを特徴とする電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器。
【請求項2】
前記蓋体が合成樹脂シート成形品よりなる請求項1に記載の電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器。
【請求項3】
前記紙製容器本体が喫食用に供される深皿形状または浅筒形状である請求項1又は2に記載の電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器。
【請求項4】
前記紙製容器本体の最大直径が25cm以内であって、容器高さに対する直径の比が2~5である請求項3に記載の電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器。
【請求項5】
前記容器がグラタン皿又はドリア皿である請求項3又は4に記載の電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子レンジ加熱食品用の蓋付き紙製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア等の小売店にて販売される調理済み食品は、陳列、販売等の1回のみの使用に用いられる使い切り容器に収容されて、購入の際又は持ち帰った後にそのまま電子レンジで加熱調理することが可能とされる。そして、加熱調理後は、当該容器からそのまま収容された食品が食される。この種の調理済み食品用容器は、使い切り容器であることから、極力簡素化した蓋嵌合構造からなる合成樹脂シートの成形品が一般的である。
【0003】
例えば丼物、麺類等の食品では、水分が比較的多く含まれていることから、耐熱樹脂製の容器本体の上部開口の内周壁部に蓋体の嵌合部を密着させる内嵌合の蓋付き容器が使用される(例えば、特許文献1参照)。内嵌合の蓋付き容器は、樹脂製容器本体の上部開口の内周壁部が逆テーパ形状に形成されるとともに、蓋体の嵌合部が逆テーパ形状の内周壁部に対応する突形状に形成されて、逆テーパ形状の容器内周壁部に突形状の蓋体嵌合部が深く嵌まり込むことによって両者の密着性が得られる。
【0004】
一方、例えばグラタンやドリア等の電子レンジ加熱調理用の食品容器にあっては、従来から紙製容器本体を使用することが行われており、喫食の便宜上平面形状に対して高さの低い深皿形状ないしは浅筒形状に形成されている。この種の紙製容器は、厚板紙を円周状に巻いて容器本体胴部とし、その上部を外側に巻き込んで外巻状の開口縁部が形成されるとともに、下部を内側に折り込んで底板と結合して底部が形成される。
【0005】
しかるに、この種の紙製容器本体は上部開口の内周壁面が板紙の平滑面となり、上記した樹脂製容器のような逆テーパ形状等の内嵌合のための特別な成形ができないことから、蓋閉じに際しては、蓋体の蓋面の外周縁部から下方に延設した周壁部を容器本体の外巻状の開口縁部に外側から被着して、蓋体の周壁部を容器本体の外巻状縁部の下側に係止する外嵌合によって行われる。
【0006】
ところで、このグラタンのような紙製容器にあっては、内容物の食品の質量が大きく水分を多く含んでいることから、電子レンジでの加熱調理に際しては比較的長い加熱時間を要し、温められた際に容器内で蒸気が発生し、蓋体には容器内部の蒸気を排出させるための蒸気孔が設けられる。しかるに、従来の紙製容器では外嵌合によって閉蓋されていることから、加熱による圧力や容器の変形により容器本体と蓋体との嵌合部分の密着性が緩くなって、蓋体の外周部から蒸気が漏出して、容器本体と蓋体との外嵌合部周辺近傍が蒸気で熱せられることがある。そのため、加熱調理後に容器を取出し運ぶために容器本体の縁部等に指をかけた際に、熱くて容器が持ちにくく扱いにくいという問題があった。
【0007】
とりわけ、蓋体は成形性の点から合成樹脂シートの成形品が使用されることが多く、紙製容器本体の開口の外巻状縁部の外側に蓋体を外嵌合する場合には、両者の材質の違いに起因する加熱時の変形特性の相違、すなわち紙製容器本体は部分的な変形が可能で全体として比較的剛性があり変形量が少ない(特にグラタンやドリア等の容器では周壁の高さが低いので側壁の剛性がある)一方、樹脂製蓋体は部分的な変形よりも全体の変形が容易に生ずるいわば柔軟性を有する(特にグラタンやドリア等の蓋体では蓋面に対して周壁の幅が小さいので外嵌合する周壁部の変形が大きい)という特性から、蓋体の周壁部が容器本体の外側に位置する外嵌合部周近では加熱時の嵌合が緩くなる嫌いがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-127301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、紙製容器本体を備えた電子レンジ加熱食品容器において、紙製容器本体と蓋体とを内嵌合のみで蓋体を適切に閉蓋することができ、紙製容器本体と蓋体との密着性が高く、特に加熱時における嵌合部分からの蒸気の漏出を極力抑制することができ、使い勝手が良く、従来の紙製容器の用途、機能を大幅に高めることができる、有利な蓋付き電子レンジ加熱食品用紙製容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、紙又は紙もしくは植物繊維を主体とする材料からなり、上部開口に外巻状縁部を備え、前記上部開口の前記外巻状縁部近傍の内周壁部に前記上部開口の前記外巻状縁部と平行に周回する凹溝状嵌合部が形成された紙製容器本体と、前記紙製容器本体の前記上部開口を覆うとともに前記紙製容器本体内の蒸気を排出する蒸気孔を有する蓋面部と、前記紙製容器本体の前記上部開口の縁部に当接する蓋鍔部と、前記蓋面部と前記蓋鍔部との間に介在されて前記紙製容器本体の前記上部開口内に入り込むように周設された垂下部とを有し、前記蓋鍔部が前記垂下部の上端から外側方へ延設されているとともに、前記垂下部の外周部凸条嵌着部が形成されている蓋体とを備え、前記蓋体の凸条嵌着部位置の直径(D1)が前記紙製容器本体の凹溝状嵌合部位置の直径(D2)より大きく、かつ、前記凸条嵌着部の突出長さ(L1)が前記凹溝状嵌合部の深さ(L2)以上に構成されて、閉蓋時に前記凸条嵌着部が前記凹溝状嵌合部に圧接されて嵌着することを特徴とする電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器に係る。
【0011】
請求項2の発明は、前記蓋体が合成樹脂シート成形品よりなる請求項1に記載の電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器に係る。
【0012】
請求項3の発明は、前記紙製容器本体が喫食用に供される深皿形状または浅筒形状である請求項1又は2に記載の電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製耐熱性容器に係る。
【0013】
請求項4の発明は、前記紙製容器本体の最大直径が25cm以内であって、容器高さに対する直径の比が2~5である請求項3に記載の電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器に係る。
【0014】
請求項5の発明は、前記容器がグラタン皿又はドリア皿である請求項3又は4に記載の電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器に係る。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明に係る電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器によると、紙又は紙もしくは植物繊維を主体とする材料からなり、上部開口に外巻状縁部を備え、前記上部開口の前記外巻状縁部近傍の内周壁部に前記上部開口の前記外巻状縁部と平行に周回する凹溝状嵌合部が形成された紙製容器本体と、前記紙製容器本体の前記上部開口を覆うとともに前記紙製容器本体内の蒸気を排出する蒸気孔を有する蓋面部と、前記紙製容器本体の前記上部開口の縁部に当接する蓋鍔部と、前記蓋面部と前記蓋鍔部との間に介在されて前記紙製容器本体の前記上部開口内に入り込むように周設された垂下部とを有し、前記蓋鍔部が前記垂下部の上端から外側方へ延設されているとともに、前記垂下部の外周部凸条嵌着部が形成されている蓋体とを備え、前記蓋体の凸条嵌着部位置の直径(D1)が前記紙製容器本体の凹溝状嵌合部位置の直径(D2)より大きく、かつ、前記凸条嵌着部の突出長さ(L1)が前記凹溝状嵌合部の深さ(L2)以上に構成されて、閉蓋時に前記凸条嵌着部が前記凹溝状嵌合部に圧接されて嵌着するため、紙製容器本体に対して蓋体を内嵌合状態で保持することができて嵌合部分の密着性が向上され、電子レンジでの加熱調理で容器内部に蒸気が発生した場合でも、嵌合部分から蒸気が排出されることを抑制することができる。
【0016】
請求項2の発明に係る電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器によると、請求項1の発明において、前記蓋体が合成樹脂シート成形品よりなるため、蓋体の形状の自由度が大きくかつ精密な成形を容易に行うことができるのみならず、加熱時における合成樹脂シート製蓋体の凸条嵌着部の変形を紙製容器本体の凹溝状嵌合部における部分変形性と容器本体の全体剛性によって効果的な密着性を確保することができる。
【0017】
請求項3の発明に係る電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器によると、請求項1又は2の発明において、前記紙製容器本体が喫食用に供される深皿形状または浅筒形状であるため、紙製容器本体における側壁部の円周方向の剛性強度をより大きくすることができ、容器本体の側壁部における凹溝状嵌合部に対する蓋体の凸条嵌着部をより確実に受容し圧接させることができ、凸条嵌着部と凹溝状嵌合部との密着性がより向上される。
【0018】
請求項4の発明に係る電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器によると、請求項3の発明において、前記紙製容器本体の最大直径が25cm以内であって、容器高さに対する直径の比が2~5であるため、電子レンジでの加熱調理用として使い勝手が良く、かつより適切な容器本体と蓋体との内嵌合ができ、凸条嵌着部と凹溝状嵌合部との密着性がさらに実現向上される。
【0019】
請求項5の発明に係る電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器によると、請求項3又は4の発明において、前記容器がグラタン皿又はドリア皿であるため、対応する調理済み食品を加熱調理後にそのまま喫食しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施例に係る電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器の概略断面図である。
図2】複数の長孔からなる蒸気孔を有する蓋体の平面図である。
図3】舌片状の開口部からなる蒸気孔を有する蓋体の平面図である。
図4】蓋付き紙製容器の開蓋時の上部開口の縁部近傍の概略断面図である。
図5】蓋付き紙製容器の閉蓋時の上部開口の縁部近傍の概略断面図である。
図6】蓋付き紙製容器への蓋体圧入時の上部開口の縁部近傍の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示す本発明の一実施例に係る電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器10は、主として調理済みの食品等を収容するための容器であって、紙製容器本体20と、蓋体30とを備える。当該容器10に収容される食品は、例えば、グラタン、ドリア、カレーライス、親子丼、牛丼、カツ丼、中華丼等の弁当類や、うどん、蕎麦、ラーメン、パスタ等の麺類等の各種の調理済みの食品が挙げられる。当該容器10は、特に、質量(重量)が大きく水分が多く含まれ電子レンジの加熱時間を比較的長く要する食品を好適に収容することができる。
【0022】
食品が収容された蓋付き紙製容器10は、例えば、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、デパート、飲食店、惣菜専門店(デリカテッセン)、喫茶店、サービスエリア等の店舗にて販売される各種食品の包装に使用される容器であり、電子レンジによる加熱調理に対応したものである。主に想定される用途は、ワンウェイ(one-way)やディスポーザブル(disposable)等と称される1回のみの使用に用いられる使い切り容器(使い捨て容器)である。使い切り容器とすることにより、食品の衛生管理に都合よい。
【0023】
紙製容器本体20は、紙又は紙もしくは植物繊維を主体とする材料からなる、調理済み食品を収容するための容器である。紙製容器本体20を構成する紙又は紙もしくは植物繊維を主体とする材料は、従来公知の厚板紙が使用される。この紙製容器本体20は、紙製であることにより耐熱性に優れているため、電子レンジによる加熱調理に好適に使用することができる。また、紙製容器本体20では、耐水性、耐熱性、耐油性等を付与するために、容器内部又は内外両方にポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の樹脂フィルムを積層させてもよい。積層される樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、例えば、15~40μm程度である。実施例では、厚さ33μmの耐熱PET樹脂フィルムが積層される。
【0024】
この紙製容器本体20は、図1に示すように、上部開口21に外巻状縁部22を備え、容器底部23から上部開口21に容器胴部24が立設されている。紙製容器本体20の形状は、収容する食品の種類に応じて適宜に設定される。符号28は底部23を構成する底板紙23sの折曲部、29は胴部24を構成する胴板紙24sの折曲部で、両折曲部28,29を合着結合して底部23が形成される。
【0025】
図示の紙製容器本体20は、高さが上部開口21の直径よりも小さい深皿形状又は浅筒形状である。実施例の深皿形状又は浅筒形状の紙製容器本体20は、グラタン皿又はドリア皿であり、グラタンをはじめ、ドリア、カレーライス、パスタ、おでん類のほか、ふかひれスープ、トムヤンクン、ボルシチあるいはブイヤベース等のスープ類の調理済み食品の喫食に適しており、これらの食品を加熱調理後にそのまま食器として供される。
【0026】
紙製容器本体20は、通常の電子レンジに収容できるように、最大直径が25cm以内の円形ないし楕円形容器であって、喫食上の便宜を考慮して、容器高さ(H)に対する直径(D)の比が2~5の範囲であることが好ましい。実施例では、概ね次のような3サイズである。
サイズ: 容器高さ(H) 直径(D) 比率(D/H)
S : 40mm 135mm 3.38
M : 40mm 150mm 3.75
L : 40mm 160mm 4.00
【0027】
紙製容器本体20は、公知の紙製容器の製造方法により製造される。例えば、扇状又は帯状の胴板紙24sが筒状に形成されて容器胴部24として構成され、胴板紙24sの上部が外側に巻き付けられて外巻状縁部22を有する上部開口21が形成されるとともに、胴板紙24sの下部の折曲部29に円形の底板紙23sの折曲部28と合着結合した容器底部23を形成して、紙製容器本体20が得られる。この紙製容器本体20は、例えば、上部開口21と容器底部23とを略同径とすることにより容器胴部24が略垂直となる円筒形状に形成されるほか、実施例のように上部開口21を容器底部23より大径とすることにより容器胴部24がテーパ状となる逆円錐台形状に形成される。図示の紙製容器本体20は、逆円錐台形状に形成されている。なお、上部開口21及び容器底部23の形状は、略楕円形状でもよい。逆円錐台形状の場合は積み重ね収容に便利である。
【0028】
紙製容器本体20には、図示のように、上部開口21の外巻状縁部22近傍の容器胴部24の内周壁部24aに、上部開口21の外巻状縁部22と平行に周回する凹溝状嵌合部40が形成される。凹溝状嵌合部40は、後述の蓋体30を内嵌合可能とする部位であり、紙製容器本体20の成形後に公知の溝付用装置又は治具によって形成されるので、図示のように、容器胴部24の一部を内側から外側に向かって押し出した形状となる。そのため、容器胴部24の外周壁部24bの凹溝状嵌合部40に対応する位置には、外周凸条部25が全周にわたって形成される。この凹溝状嵌合部40は、適宜の押圧装置等を用いて、紙製容器本体20内部側から容器胴部24の所定位置を押圧して形成することができる。
【0029】
なお、図示は省略するが、紙製容器本体20では、外側に適宜の断熱部を形成してもよい。断熱部としては、紙製容器本体20の容器胴部24のエンボス加工、紙製容器本体20外周面への断熱インク等による凹凸加工、エンボス加工紙等の断熱紙によるスリーブの巻着等の公知の容器断熱構造を形成することができる。紙製容器本体20の外側に断熱部を設けることにより、電子レンジによる加熱調理後の紙製容器本体20に触れた際の熱の影響を緩和させることができる。
【0030】
蓋体30は、紙製容器本体20の上部開口21を被覆する部材であって、図1に示すように、蓋面部31と、蓋鍔部34と、垂下部35とを有する。蓋体30は合成樹脂製が蓋体の形状の自由度が大きくかつ精密な成形を容易に行うことができるので好ましく、例えば合成樹脂シートの成形品は量産性、経済性等の点からも好ましい。蓋体30を構成する合成樹脂シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂のシート、さらにはポリ乳酸等の生分解性樹脂の熱可塑性樹脂のシート等が挙げられる。前記の合成樹脂シートは真空成形により図示をはじめとする各種形状に成形される。
【0031】
蓋面部31は、紙製容器本体20の上部開口21を覆うとともに紙製容器本体20内の蒸気を排出する蒸気孔32を有する。蒸気孔32は、蒸気を適切に排出可能であれば形状等は特に限定されるものではなく、細孔、長孔、舌片状の開口部等の適宜の形状で構成される。
【0032】
例えば、図2は、複数の長孔からなる蒸気孔32aを有する蓋体30Aの平面図である。この蒸気孔32aは、蓋面部31の適宜の位置に形成された凹面部33内に形成されて、複数の長孔による長孔群を構成する。複数の長孔からなる蒸気孔32aは、例えば、レーザー光線の照射によるレーザー加工によって形成することが好ましい。レーザー加工では、簡便で迅速に精度よく蒸気孔32aを形成することができる。長孔の大きさ等は紙製容器本体20内の蒸気を適切に排出することが可能であれば特に限定されない。例えば、蒸気孔32を長孔群とした場合、蒸気の排出と異物混入抑制の適切な条件は、幅が0.15~1.0mm、長さが1~12mm、開孔面積の合計が0.3~100mm2とすれば、適切に蒸気の排出ができるとともに、異物混入防止のために蒸気孔32を被覆する部材等を備えることなく異物混入を抑制することが可能となる。なお図示しないが、長孔(長孔群)の代わりに細孔(細孔群)を形成してもよい。細孔(細孔群)における蒸気の排出と異物混入抑制の適切な条件は、直径が0.15~1.0mm好ましくは0.15~0.59mm、個数が8~1000個、開口面積の合計が0.25~100mm2である。
【0033】
また、図3は、舌片状の開口部からなる蒸気孔32bを有する蓋体30Bの平面図である。蒸気孔32bは、抜き刃等の公知の加工装置によって形成される。舌片状の開口部からなる蒸気孔32bは、容器内部で蒸気が発生することによって押し上げられて開口され、蒸気が排出されるように構成される。舌片状の開口部からなる蒸気孔32bは、安価かつ簡便に形成することができる。この蒸気孔32bを有する蓋体30Bは、製品の包装に際して、当該容器10全体をフィルム等で被覆する場合等に好適に用いられる。
【0034】
蓋鍔部34は、紙製容器本体20の上部開口21の縁部に全周にわたって当接される部位であり、閉蓋時に蓋体30が過剰に紙製容器本体20内へ入り込んだり落ち込んだりすることを抑制する。蓋鍔部34の形状は、紙製容器本体20の上部開口21の縁部に当接可能であれば特に限定されない。例えば、上部開口21に外巻状縁部22が形成されて縁部上側が湾曲していることから、図4,5に示すように、外巻状縁部22に対応する湾曲形状の蓋鍔部34aとすることが好ましい。湾曲形状の蓋鍔部34aにより、蓋体30の閉蓋時の節度感が向上する。なお、蓋鍔部34には、必要に応じてローレット加工を施してもよい。
【0035】
垂下部35は、図4,5に示すように、蓋面部31と蓋鍔部34との間に介在されて紙製容器本体20の上部開口21内に入り込むように周設される部位であり、閉蓋時に上部開口21近傍の内周壁部24aに近接又は当接される。垂下部35の形状は、蓋面部31に対して垂直方向や、紙製容器本体20の内周壁部24aに沿って傾斜させる等、適宜である。また、この垂下部35では、上端から外側方へ蓋鍔部34が延設されている。
【0036】
垂下部35には、外周部35aに閉蓋時に紙製容器本体20の凹溝状嵌合部40に嵌着する凸条嵌着部50が形成されている。凸条嵌着部50は、閉蓋時に紙製容器本体20の凹溝状嵌合部40と嵌着することにより、蓋体30の内嵌合を保持可能とする部位である。
【0037】
従来、紙製の容器本体に内嵌合のみで蓋体を閉蓋させることは困難であった。これは、容器本体が紙製の場合には、通常の制作によれば上部開口近傍の内周壁部は略平坦な面部にならざるを得ず、この平坦な内周面に対して蓋体を内嵌合させることが構造上困難であったからである。つまり、紙製の容器本体に内嵌合のみで蓋体を閉蓋させるには蓋体の垂下部を容器本体の略平坦な内周壁部へ圧接させた状態で保持する必要があるのであるが、しかしながら、内周壁部が平坦な面部であると、圧接部が滑りやすくわずかな振動や衝撃等によって圧接状態が容易に解除されて蓋体が外れてしまう。また、紙製容器本体の製造に際しては、合成樹脂のような精密な成形ができず、また、紙特有の変形性を有することから、合成樹脂のような蓋体の内嵌合を保持することができない。そのため、あえて蓋体の垂下部を容器本体内へ入り込ませる内嵌合によって閉蓋する場合には、粘着テープ等の他の補助的な固定手段を用いて容器本体と蓋体とを固定する等、内嵌合以外の特別な構成を付加する必要があった。
【0038】
そこで、本発明の紙製容器10では、紙製容器本体20の内周壁部24aに凹溝状嵌合部40を形成し、かつ、蓋体30の垂下部35外周部35aに凸条嵌着部50を形成することにより、従来の紙製容器で不可能であった内嵌合のみでの閉蓋を可能としたものである。ここで、凹溝状嵌合部40と、凸条嵌着部50の好ましい条件について、以下に詳述する。
【0039】
まず、凹溝状嵌合部40は、紙製容器本体20に収容される食品の上部位置より上側となる上部開口21近傍に形成されるのであれば位置は特に限定されないが、例えば、上部開口21から凹溝状嵌合部40上部の距離が3~10mm程度となる位置に形成される。凹溝状嵌合部40が上部開口21に近すぎると、蓋体30が適切に内嵌合できないおそれがあり、上部開口21から遠すぎると蓋体30が必要以上に紙製容器本体20内に入り込む問題がある。
【0040】
また、蓋体30の垂下部35に設けられる凸条嵌着部50は、凹溝状嵌合部40の位置に応じて適宜に設定される。
ここで、蓋体30を合成樹脂シート成形品よりなるものとすると、蓋体30の形状の自由度が大きくかつ精密な成形を容易に行うことができるほか、この発明の内嵌合構造とした場合には、加熱時における合成樹脂シート製蓋体の凸条嵌着部50の変形を紙製容器本体20の凹溝状嵌合部40における部分変形性と容器本体の全体剛性によって効果的な密着性を確保することができる。
【0041】
すなわち、前記したように、紙製容器本体20は樹脂繊維の組織により部分的な変形が可能である一方、面全体として比較的剛性があり変形量が少ない(特にグラタンやドリア等の容器では周壁の高さが低いので側壁の剛性がある)という特性があり、他方の合成樹脂シート製蓋体30は部分的な変形よりも全体の変形が容易に生ずる、いわば柔軟性を有する(特にグラタンやドリア等の蓋体では蓋面に対して周壁の幅が小さいので嵌合する周壁部の変形が大きい)という特性がある。これらの両者の特性の相違は、前述した従来の外嵌合の場合には、蓋体が容器本体から離間して嵌合が緩くなるという欠陥を生ずるのであるが、本発明の内嵌合にあっては、反対に、蓋体の凸条嵌着部50の変形を容器本体20の凹溝状嵌合部40における部分変形性と容器本体の全体剛性によって確りと受容して効果的な密着性を確保できるという利点となるのである。
【0042】
紙製容器本体20及び蓋体30では、図1,4に示すように、蓋体30の凸条嵌着部50位置の直径D1が、紙製容器本体20の凹溝状嵌合部40位置の直径D2より大きく(D1>D2)構成される。蓋体30の凸条嵌着部50位置の直径D1は、凸条嵌着部50の頂点(最も突出した位置)間の距離に相当する。また、紙製容器本体20の凹溝状嵌合部40位置の直径D2は、凹溝状嵌合部40の上側の内周壁部24c(凹溝状嵌合部40と内周壁部24aとの境界部分)間の距離に相当する。
【0043】
蓋体30の凸条嵌着部50位置の直径D1が紙製容器本体20の凹溝状嵌合部40位置の直径D2より大きいことにより、凸条嵌着部50を凹溝状嵌合部40に対して適切に嵌着させることができる。また、凸条嵌着部50の頂点が凹溝状嵌合部40の頂点(最もくぼんだ位置)に当接(圧接)されると、凸条嵌着部50と凹溝状嵌合部40とにおいて良好な密着性が得られて、嵌着状態をより適切に保持することができる。蓋体30の凸条嵌着部50位置の直径D1が紙製容器本体20の凹溝状嵌合部40位置の直径D2以下である場合、凸条嵌着部50が凹溝状嵌合部40に対して嵌着できない問題が生じる。なお、蓋体30の凸条嵌着部50位置の直径D1の上限は、紙製容器本体20内へ圧入可能かつ凹溝状嵌合部40へ嵌着可能な程度の適宜の距離である。
【0044】
また、紙製容器本体20及び蓋体30では、図4に示すように、蓋体30の凸条嵌着部50の突出長さL1が、紙製容器本体20の凹溝状嵌合部40の深さL2以上に構成される。蓋体30の凸条嵌着部50の突出長さL1は、垂下部35の外周部35aから凸条嵌着部50の頂点間の距離に相当する。また、紙製容器本体20の凹溝状嵌合部40の深さL2は、凹溝状嵌合部40の上側の内周壁部24cから凹溝状嵌合部40の頂点間の距離に相当する。
【0045】
蓋体30の凸条嵌着部50の突出長さL1が紙製容器本体20の凹溝状嵌合部40の深さL2以上であることにより、凸条嵌着部50と凹溝状嵌合部40との嵌着時に凹溝状嵌合部40に対して凸条嵌着部50をより確実に圧接させることができ、凸条嵌着部50と凹溝状嵌合部40との密着性がより向上される。蓋体30の凸条嵌着部50の突出長さL1が紙製容器本体20の凹溝状嵌合部40の深さL2未満である場合、凸条嵌着部50と凹溝状嵌合部40とにおいて十分な密着性が得られないおそれがある。特に、蓋体30の凸条嵌着部50位置の直径D1が小さすぎると、紙製容器本体20の凹溝状嵌合部40との嵌着が解除され外れやすくなるおそれがある。
【0046】
凹溝状嵌合部40の幅や深さ及び凸条嵌着部50の幅や突出長さは、凸条嵌着部50の幅は凹溝状嵌合部40の幅以下、かつ凸条嵌着部50の突出長さは凹溝状嵌合部40の深さ以上を満たして両者が適切に嵌着可能であれば特に限定されない。例えば、凹溝状嵌合部40の幅は1.5~5mm程度、深さは0.2~1.0mm程度であり、凸条嵌着部50の幅は1~4mm程度、突出長さは0.2~1.0mm程度である。凹溝状嵌合部40の幅や深さ、凸条嵌着部50の幅や突出長さが適切でないと、嵌着が解除されやすくなったり、十分な密着性が得られなくなったりするおそれがある。
【0047】
当該紙製容器10にあっては、紙製容器本体20の上部開口内へ蓋体30の垂下部35を入り込ませて閉蓋する場合において、図6に示すように、紙製容器本体20の上部開口21から凹溝状嵌合部40間の内周壁部24aの少なくとも下部側が蓋体30の凸条嵌着部50より内側に位置する。そして、閉蓋に際して、蓋体30は凸条嵌着部50が紙製容器本体20の内周壁部24aに対して圧入され、図5に示すように、凸条嵌着部50が凹溝状嵌合部40に到達することによって嵌着される。
【0048】
このように、紙製容器本体20の内周壁部24aに凹溝状嵌合部40を形成するとともに、蓋体30の垂下部35の外周部35aに凸条嵌着部50を形成し、閉蓋時に凹溝状嵌合部40に対して凸条嵌着部50を嵌着させることによって、紙製容器本体20に対して蓋体30を内嵌合状態で保持することができる。そのため、紙製容器本体20と蓋体30との嵌合部分の密着性が向上されて、電子レンジでの加熱調理で容器内部に蒸気が発生した場合でも、嵌合部分から蒸気が排出されることを抑制することができる。したがって、蓋体30の蒸気孔32側から適切に蒸気が排出されて、嵌合部分近傍が蒸気で不必要に熱せられることもなく、加熱調理直後の容器本体縁部等に指をかける等しても熱で持ちにくくなることが緩和されて、扱いやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上の通り、本発明の電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器は、内嵌合のみで蓋体を適切に閉蓋することができる。そのため、紙製容器本体と蓋体との密着性が高く、特に加熱時における嵌合部分からの蒸気の漏出を極力抑制することができ、使い勝手が良く、従来の紙製容器の用途、機能を大幅に高めることができる、有利な蓋付き電子レンジ加熱食品用紙製容器を提供することができたものである。
【符号の説明】
【0050】
10 電子レンジ加熱食品用蓋付き紙製容器
20 紙製容器本体
21 上部開口
22 外巻状縁部
23 容器底部
23s 底板紙
24 容器胴部
24a 内周壁部
24b 外周壁部
24c 凹溝状嵌合部の上側の内周壁部
24s 胴板紙
25 外周凸条部
28 底板紙の折曲部
29 胴板紙の折曲部
30,30A,30B 蓋体
31 蓋面部
32,32a,32b 蒸気孔
33 凹面部
34,34a 蓋鍔部
35 垂下部
35a 垂下部の外周部
40 凹溝状嵌合部
50 凸条嵌着部
D 容器本体の直径
D1 凸条嵌着部位置における直径
D2 凹溝状嵌合部位置における直径
H 容器高さ
L1 凸条嵌着部の突出長さ
L2 凹溝状嵌合部の深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6