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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】ウェザーストリップスポンジ
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/15 20160101AFI20240328BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20240328BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20240328BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B60J10/15
C08J9/04 CES
C08J9/04 103
C08K9/04
C08L23/16
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020047721
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021147464
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄二
(72)【発明者】
【氏名】大久保 太一
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-114379(JP,A)
【文献】特開2018-172587(JP,A)
【文献】特開2012-052032(JP,A)
【文献】特開2000-256495(JP,A)
【文献】特開2000-226464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J10/15
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、当該エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体:100質量部に対して、発泡剤(B)を0.1~15質量部、脂肪酸で表面処理した酸化カルシウム(C)を~20質量部含むエチレン系共重合体組成物の架橋発泡体からなる、ウェザーストリップスポンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、建材、家電製品などに使用される発泡体を得るに好適なエチレン系共重合体組成物及び発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、建材、家電製品等の隙間部分に適用されるスポンジに代表される発泡体は、雨、風、音を遮断するため大変形下においても、高いシール性および機械強度を有することが要求される。また、自動車、建材、家電製品等の開閉部で使用されるスポンジ、特にラジエター廻りやエアコンの金属チューブ外側で使用される断熱スポンジは、シール性に加えて意匠性、機械強度が要求されるため、スポンジの気泡が連続気泡であるものよりも独立気泡であることが望ましいとされてきた。
【0003】
エチレン・α-オレフィン共重合体やエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体は、主鎖に不飽和結合を持たないため、共役ジエン系のゴムと比較して耐候性、耐熱性および耐オゾン性に優れることから、上記スポンジ製品に使用されている。
【0004】
そして、スポンジ製品のシール性能を改良するために、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体にポリオレフィン樹脂を加えることが提案されている(特許文献1)。
一方、自動車分野では自動車が長期間使用されることから、更に耐熱老化性に優れる部品の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-212318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐熱老化性に優れる発泡体を得るに好適なエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、当該エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体:100質量部に対して、発泡剤(B)を0.1~15質量部、脂肪酸及び/または油剤で表面処理した酸化カルシウム(C)を0.5~20質量部含むことを特徴とするエチレン系共重合体組成物およびその用途に係る。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエチレン系共重合体組成物を架橋してなる発泡体は、耐熱老化性に優れ、圧縮永久歪みが良好であり、自動車、建材、家電製品等の開閉部で使用されるシールスポンジ等に好適に使用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)》
本発明のエチレン系共重合体組成物を構成するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)〔以下、「エチレン系共重合体(A)」と略称する場合がある。〕はエチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンと、非共役ポリエンとをランダム共重合して得られるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体である。
【0010】
上記α-オレフィンは通常、炭素数3~20のα-オレフィンであり、中でもプロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等の炭素数3~10のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレン、1-ブテンが好ましく用いられる。
【0011】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の具体例としては、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・1-ブテン・非共役ポリエン共重合体が好ましく用いられる。
【0012】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)は、エチレンとα-オレフィンとのモル比(エチレン/α-オレフィン)が通常、40/60~90/10、好ましくは50/50~80/20、特に好ましくは55/45~70/30の範囲にあるものが望ましい。
【0013】
前記非共役ポリエンとしては、環状または鎖状の非共役ポリエンが用いられる。環状非共役ポリエンとしては、たとえば5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデンなどがあげられる。また鎖状の非共役ポリエンとしては、たとえば1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカジエンなどがあげられる。これらの非共役ポリエンは、単独または2種以上混合して用いられ、その共重合量は、ヨウ素価表示で1~40、好ましくは2~35、より好ましくは3~30であることが望ましい。
【0014】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、通常、135℃デカヒドロナフタレン中で測定した極限粘度〔η〕が0.8~5dl/g、好ましくは1~4.5dl/g、より好ましくは1.1~4dl/gの範囲にある。
【0015】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、不飽和カルボン酸またはその誘導体、例えば酸無水物などがグラフト共重合した変性物であってもよい。
【0016】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)としては、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体が最も好ましい。
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。上記のような特性を有するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、「ポリマー製造プロセス((株)工業調査会発行、P.309~330)」などに記載されているような公知の方法により調製することができる。
【0017】
《発泡剤(B)》
本発明のエチレン系共重合体組成物に含まれる成分の一つである発泡剤(B)は、種々公知の発泡剤を使用し得る。具体的には、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。
【0018】
本発明に係る発泡剤(B)としては、非担持型または無機粉体等に担持されている担持型のいずれを用いてもよいが、担持型を用いた場合と比較して同一比重での吸水率が低く、シール性能(防音性、防水性、防振性)に優れ、かつ混練作業性に優れる等の点で、非担持型の発泡剤が好ましい。
【0019】
また、必要に応じて発泡剤とともに発泡助剤を併用しても差し支えない。発泡助剤の添加は、発泡剤の分解温度の調節、気泡の均一化などに効果がある。発泡助剤としては、具体的には、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、シュウ酸などの有機酸、尿素およびその誘導体などが挙げられる。
成分(B)が、発泡助剤を含有する場合には、発泡助剤の配合量は、発泡剤100質量部に対して、通常1~100質量部、好ましくは2~80質量部の割合で用いられる。
【0020】
《脂肪酸及び/または油剤で表面処理した酸化カルシウム(C)》
本発明のエチレン系共重合体組成物に含まれる成分の一つである脂肪酸及び/または油剤で表面処理した酸化カルシウム(C)は、酸化カルシウムを脂肪酸及び/または油剤で表面処理した酸化カルシウムであり、井上石灰工業株式会社から、脂肪酸で処理した酸化カルシウムはVESTA-BSの商品名で、油剤で処理した酸化カルシウムは、VESTA-18、VESTA-20の商品名で製造、販売されている。
【0021】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物>
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物(以下、「エチレン系共重合体組成物」と略記する場合がある。)は、上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、当該エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体:100質量部に対して、上記発泡剤(B)を0.1~15質量部、好ましくは0.2~10質量部、より好ましくは1~8質量部および上記脂肪酸及び/または油剤で表面処理した酸化カルシウム(C)を0.5~20質量部、好ましくは1~15質量部、より好ましくは2~12質量部の範囲で含む組成物である。
【0022】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、脂肪酸及び/または油剤で表面処理した酸化カルシウム(C)を上記範囲で含むことにより、当該組成物から得られる発泡体は耐熱老化性に優れる。
【0023】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、上記共重合体(A)、上記発泡剤(B)および上記脂肪酸及びまたは油剤で表面処理した酸化カルシウム(C)に加え、所望の目的に応じて他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。他の成分としては、例えば、架橋剤、架橋助剤、加硫促進剤、加硫助剤、フィラー、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤および増粘剤などから選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。また。それぞれの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
〈架橋剤、架橋助剤、加硫促進剤および加硫助剤〉
架橋剤としては、有機過酸化物、フェノール樹脂、硫黄系化合物、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノンまたはその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物等の、ゴムを架橋する際に一般に使用される架橋剤が挙げられる。これらのうちでは、有機過酸化物、硫黄系化合物(以下「加硫剤」ともいう)が好適である。
【0025】
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシドが挙げられる。
【0026】
架橋剤として、有機過酸化物を用いる場合、共重合体組成物中のその配合量は、エチレン系共重合体(A)100質量部に対して、一般に0.1~20質量部、好ましくは0.2~15質量部である、さらに好ましくは0.5~10質量部である。有機過酸化物の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体表面へのブルームなく、共重合体組成物が優れた架橋特性を示すので好適である。
【0027】
架橋剤として、有機過酸化物を用いる場合、架橋助剤を併用することが好ましい。架橋助剤としては、例えば、イオウ;p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼン;酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種(JIS規格(K-1410))、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、活性亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛)等の金属酸化物が挙げられる。
【0028】
架橋助剤を用いる場合、共重合体組成物中の架橋助剤の配合量は、有機過酸化物1モルに対して、通常0.5~10モル、好ましくは0.5~7モル、より好ましくは1~6モルである。
【0029】
硫黄系化合物(加硫剤)としては、例えば、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレンが挙げられる。
【0030】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、共重合体組成物中のその配合量は、エチレン系共重合体(A)100質量部に対して、通常は0.1~10質量部、好ましくは0.2~7.0質量部、さらに好ましくは0.3~5.0質量部である。硫黄系化合物の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面へのブルームがなく、共重合体組成物が優れた架橋特性を示す。
【0031】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、加硫促進剤を併用することが好ましい。
加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール(例えば、サンセラーM(商品名;三新化学工業社製))、2-(4-モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例えば、ノクセラーMDB-P(商品名;大内新興化学工業社製))、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルフォリノチオ)ベンゾチアゾールおよびジベンゾチアジルジスルフィド(例えば、サンセラーDM(商品名;三新化学工業社製))などのチアゾール系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンおよびジオルソトリルグアニジンなどのグアニジン系加硫促進剤;アセトアルデヒド・アニリン縮合物およびブチルアルデヒド・アニリン縮合物などのアルデヒドアミン系加硫促進剤;2-メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド(例えば、サンセラーTS(商品名;三新化学工業社製))、テトラメチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTT(商品名;三新化学工業社製))、テトラエチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTET(商品名;三新化学工業社製))、テトラブチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTBT(商品名;三新化学工業社製))およびジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(例えば、サンセラーTRA(商品名;三新化学工業社製))などのチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、サンセラーPZ、サンセラーBZおよびサンセラーEZ(商品名;三新化学工業社製))およびジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのジチオ酸塩系加硫促進剤;エチレンチオ尿素(例えば、サンセラーBUR(商品名;三新化学工業社製)、サンセラー22-C(商品名;三新化学工業社製))、N,N'-ジエチルチオ尿素およびN,N'-ジブチルチオ尿素などのチオウレア系加硫促進剤;ジブチルキサトゲン酸亜鉛などのザンテート系加硫促進剤が挙げられる。
【0032】
加硫促進剤を用いる場合、共重合体組成物中のこれらの加硫促進剤の配合量は、エチレン系共重合体(A)100質量部に対して、一般に0.1~20質量部、好ましくは0.2~15質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。加硫促進剤の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面へのブルームなく、共重合体組成物が優れた架橋特性を示す。架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、加硫助剤を併用することができる。
【0033】
加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、活性亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛)が挙げられる。
【0034】
加硫助剤を用いる場合、エチレン系共重合体組成物中の加硫助剤の配合量は、エチレン系共重合体(A)100質量部に対して、通常1~20質量部である。
〈フィラー〉
本発明のエチレン系共重合体組成物を構成するフィラーは、ゴム組成物に配合される公知のゴム補強剤であり、通常、カーボンブラック、無機補強剤と呼称されている無機物である。
【0035】
本発明に係わるフィラーとしては、具体的には、旭#55G、旭#60UG(以上、旭カーボン(株)製)、シースト(V、SO、116、3、6、9、SP、TA等)のカーボンブラック(東海カーボン(株)製)、これらカーボンブラックをシランカップリング剤等で表面処理したのもの、および、シリカ、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等が挙げられる。
【0036】
これらフィラーは、単独でも、二種以上の混合物であってもよい。
本発明に係わるフィラーとしては、好ましくは、カーボンブラック、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等が用いられる。
【0037】
本発明の共重合体組成物がフィラーを含む場合は、エチレン系共重合体(A)100質量部に対し、通常、50~300質量部、好ましくは、80~250質量部の範囲で配合すればよい。
【0038】
〈軟化剤〉
軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)が挙げられ、これらのうちでは、石油系軟化剤が好ましく、プロセスオイルが特に好ましい。
【0039】
エチレン系共重合体組成物が軟化剤を含有する場合には、軟化剤の配合量は、エチレン系共重合体(A)100質量部に対して、一般に2~100質量部、好ましくは10~100質量部である。
【0040】
〈老化防止剤(安定剤)〉
本発明の共重合体組成物に、老化防止剤(安定剤)を配合することにより、これから形成されるシールパッキンの寿命を長くすることができる。このような老化防止剤として、従来公知の老化防止剤、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤などがある。
【0041】
老化防止剤としては、例えば、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p―フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤;ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等がある。
【0042】
エチレン系共重合体組成物が老化防止剤を含有する場合には、老化防止剤の配合量は、エチレン系共重合体(A)100質量部に対して、通常は0.3~10質量部、好ましくは0.5~7.0質量部である。老化防止剤の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面のブルームがなく、さらに加硫阻害の発生を抑制することができる。
【0043】
〈加工助剤〉
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0044】
共重合体組成物が加工助剤を含有する場合は、エチレン系共重合体(A)100質量部に対して、通常1~3質量部の量で適宜配合することができる。加工助剤の配合量が前記範囲内であると、混練加工性、押出加工性、射出成形性等の加工性に優れるので好適である。
前記加工助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0045】
〈活性剤〉
活性剤としては、例えば、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリレート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物等の活性剤;過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0046】
共重合体組成物が活性剤を含有する場合には、活性剤の配合量は、エチレン系共重合体(A)100質量部に対して、通常は0.2~10質量部、好ましくは0.3~5質量部である。
【0047】
<エチレン系共重合体組成物の調製方法>
本発明のエチレン系共重合体組成物は、前記成分(A)、成分(B)および成分(C)を、ゴム混練機として通常使用されるバンバリーミキサー、インターナルミキサー、ニーダー、オープンロールなどを用いて、必要に応じて前記他の成分とともに混練することで調製することができる。この場合の混練温度は、特に制限されないが、好ましくは80~250℃、より好ましくは80~200℃であり、混練時間は、好ましくは1~20分、より好ましくは1~10分、混練・混合比エネルギーは、好ましくは0.001~10kw・h/kgである。
【0048】
また、本発明のエチレン系共重合体組成物は、オープンロールのようなロール類を使用して上記成分(A)~成分(C)および必要に応じて加硫促進剤、脱泡剤、発泡助剤、加硫助剤などを追加混合し、ロール温度を好ましくは40~80℃とし、混練時間を好ましくは5~30分間として混練した後、分出しすることにより得られる発泡体用共重合体組成物としてもよい。
【0049】
<架橋発泡体>
本発明の架橋発泡体は、上記エチレン系共重合体組成物を架橋および発泡して得られる。
【0050】
本発明の架橋発泡体は、比重が1.00以下、好ましくは0.20~0.80の範囲にあり、連続気泡率(以後、連泡率と呼ぶ)が10%以下、好ましくは2~9以下の範囲あり、および引張破断強度(TB)が0.1MPa以上、好ましくは1.0~5.0MPaの範囲にある。
【0051】
本発明の架橋発泡体は、本発明の発泡体用共重合体組成物を、押出成形法、トランスファー成形法、射出成形法、型成形法、プレス成形法により、成形することで得ることができる。具体的には、前記方法で得られた発泡体用共重合体組成物をゴム用押出機にて製品形状に押出し、次いで、加硫槽内に導入し、熱空気、流動床、溶融塩槽(LCM)、PCM(Powder Curing MediumもしくはPowder Curing Method)またはマイクロ波、遠赤外線ヒータ加熱炉等の手段によって加熱することにより、加硫および発泡を行って調製することができる。好ましくは、熱空気加硫槽(HAV)、LCM、PCM、遠赤外線ヒータ加熱炉、または、HAVおよびデシメートル波(UHF)を用いた連続押出し加工によって、連続的に加硫および発泡させることで得ることができる。
【0052】
前記架橋の条件として、架橋温度は、通常140~400℃、好ましくは150~350℃、さらに好ましくは150~300℃であり、架橋時間は、通常0.5~30分、好ましくは0.5~20分、さらに好ましくは0.5~15分である。
【0053】
本発明の架橋発泡体は、本発明のエチレン共重合体組成物を前記成形法等によって予備成形し、電子線を照射する方法で得ることもできる。
この場合、0.1~10MeVのエネルギーを有する電子線を、吸収線量が通常0.5~35Mrad、好ましくは0.5~20Mrad、より好ましくは1~10Mradになるように照射すればよい。
【0054】
《用途》
本発明の架橋発泡体は、耐候性、耐熱老化性、耐摩耗性、低温柔軟性等が必要とされる分野において好適に用いられる。具体的には、自動車用部品、船舶用部品、土木建築用部品、医療用部品、電気・電子機器用部品、輸送機およびレジャー用部品、ホース(ラジエターホース、ヒーターホース等)、防振ゴム、シート、各種ベルト、各種パッキン、シーリング材、ポッティング材、コーティング材および接着剤等に好適に用いられる。
【0055】
自動車用部品としては、例えば、グラスランチャネル、ウェザーストリップスポンジ、ドアオープニングトリム、シール部材、グロメット、自動車エンジンのガスケット、電装部品もしくはオイルフィルターのシーリング材;イグナイタHIDもしくは自動車用ハイブリッドICのポッティング材;自動車ボディ、自動車用窓ガラス、エンジンコントロール基板のコーティング材;オイルパンもしくはタイミングベルトカバー等のガスケット、モール、ヘッドランプレンズ、サンルーフシール、ミラー用の接着剤が挙げられる。ウェザーストリップスポンジとしては、例えば、ドアウェザーストリップ、トランクウェザーストリップ、ラゲージウェザーストリップ、ルーフサイドレールウェザーストリップ、スライドドアウェザーストリップ、ベンチレーターウェザーストリップ、スライディングルーフウェザーストリップ、フロントウィンドウウェザーストリップ、リアウィンドウウェザーストリップ、クォーターウィンドウウェザーストリップ、ロックピラーウェザーストリップ、ドアガラスアウターウェザーストリップ、ドアガラスインナーウェザーストリップが挙げられる。
【0056】
これらの自動車用部品は、押出成形で成形されることが多く、この場合には、特に、共重合体組成物の混練性や共重合体組成物に含まれる成分の相溶性が、得られる発泡体の性質に大きく影響する。本発明の共重合体組成物は、混練性や組成物に含まれる成分の相溶性に優れるため、押出成形で成形体を形成する場合でも、優れた物性を有する架橋発泡体を得ることができる。
【実施例
【0057】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた重合体は下記の通りである。
【0058】
〔エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)〕
エチレン系共重合体(A)として、以下のエチレン・プロピレン・ENB共重合体(A-1)を用いた。
【0059】
エチレン・プロピレン・ENB共重合体〔成分(A-1)(商品名:三井EPT、8120E〔三井化学(株)製〕、エチレンから導かれる構造単位含有量:56質量%、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)から導かれる構造単位含有量:9.5質量%、ムーニー粘度[ML1+4(150℃)]:61、油展量:20phr。
実施例および比較例で得た未架橋組成物および架橋体の物性は、以下の方法で測定した。
【0060】
〔未架橋共重合体組成物の物性〕
(ムーニースコーチ(Vm、t5、Δt;125℃))
ムーニースコーチは、JIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて、125℃の条件下で測定した。
【0061】
(加硫速度)
実施例および比較例における共重合体組成物(架橋前)を用いて、測定装置:MDR2000P(ALPHA TECHNOLOGIES 社製)により、温度170℃および時間20分の測定条件下で、加硫速度(tc90)を以下のとおり測定した。
【0062】
サンプルを測定装置にセットし、一定温度および一定のせん断速度の条件下で得られるトルク変化を測定し、加硫曲線を得た。この加硫曲線からトルクの最小値S'Minおよび最大値S'Maxを求め、測定開始時を基準としてトルクが(S'Max-S'Min)×0.9となるまでの時間を加硫速度(tc90;分)とした。
【0063】
〈架橋体の物性〉
[比重]
水中置換法(JIS K 6268)に準じて測定した。
【0064】
[引張破断点応力〔TB〕および引張破断点伸び〔EB〕]
チューブ状架橋発泡体からJIS K 6251(1993年)に記載の3号型ダンベルで打ち抜いて試験片を調製した。この試験片を用いて、JIS K-6251第3項に規定されている方法に従い、測定温度2523℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、引張破断点応力〔TB〕(MPa)および引張破断点伸び〔EB〕(%)を求めた。
【0065】
[圧縮永久歪み(CS)]
チューブ状架橋発泡体を長さ方向に30mm切断し、得られた試験片を圧縮永久歪み測定金型に取り付けた。試験片の高さが荷重をかける前の高さの1/2になるよう圧縮し、金型ごと70℃のギヤーオーブン中にセットして22時間、96時間および197時間熱処理した。次いで、試験片を金型から取出し、30分間放冷後、試験片の高さを測定し、以下の計算式から圧縮永久歪み(CS)(%)を算出した。
圧縮永久歪み(CS)(%)={(t0-t1)/(t0-t2)}×100
t0:試験片の試験前の高さ。
t1:試験片を熱処理し30分間放冷した後の高さ。
t2:試験片の測定金型に取り付けた状態での高さ。
【0066】
[形状保持率]
内径:高さ13mm×横幅11mm、肉厚:1.5mmのチューブ状ダイスを用いて、チューブ状に成形したゴム組成物の高さおよび水平方向長さ(横幅)と、縦横を変えることなくゴム組成物を架橋および発泡して得られるスポンジの高さおよび水平方向長さ(横幅)との比を測定し、形状保持率(%)とした。
形状保持率(%)=(L/D)/(L0/D0)×100
(式中、L0は、チューブ状に成形したゴム組成物の高さ;D0は、チューブ状に成形したゴム組成物の横幅;Lは、チューブ状スポンジの高さ;Dは、チューブ状スポンジの横幅を表す。)
【0067】
〔耐熱老化性試験〕
チューブ状架橋発泡体を、JIS K 6257に従い、70℃のオーブン中で、96時間および197時間放置して熱老化試験を行った。熱老化試験後のシートの引張破断点応力(TB)、引張破断点伸び(EB)を測定した。
【0068】
また、熱老化試験前後の引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)から、熱老化試験前の値に対する試験後の変化率をそれぞれ、Ac(TB)、Ac(EB)として求めた。
【0069】
参考例1]
MIXTRON BB MIXER(神戸製鋼所社製、BB-4型、容積2.95L、ローター4WH)を用いて、上記共重合体(A-1)〔共重合体(A-1)100質量に対して、軟化剤を20質量部含有〕120質量部に対して、フィラーとして、カーボンブラック(旭カーボン社製、商品名 旭#55G)を95質量部および重質炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名 ホワイトンSB)を60質量部、軟化剤として、プロセスオイル(出光興産社製、商品名ダイアナプロセスオイルPS-430)を55質量部、油剤で表面処理した酸化カルシウム(C)として、VESTA-18(井上石灰工業社製、商品名)を8質量部、活性亜鉛華(井上石灰工業社製製、商品名メタZ102)を8質量部、ステアリン酸を2質量部、ポリエチレングリコール(ライオン社製、商品名PEG#4000)を1質量部、Aktiplast T(ランクセス社製)、スミライザーGMを0.3質量部(住友化学社製)加え、ローター回転数50rpm、フローティングウェイト圧力3kg/cm2、混練時間5分間、混練排出温度150℃の条件下で配合した。
【0070】
次いで、かかる配合物が温度40℃以下となったことを確認した後、14インチロールを用いてさらに以下の各成分を加えて混練した。
加硫促進剤(三新化学工業社製、商品名サンセラーM)1.1質量部、加硫促進剤(大内新興化学社製、商品名ノクセラーMDB)0.9質量部、加硫促進剤(三新化学工業社製、商品名サンセラーTRA)1質量部、加硫促進剤(三新化学工業社製、商品名22)1質量部、加硫促進剤(三新化学工業社製、商品名TE)0.5質量部、硫黄(S)2質量部、および発泡剤としてOBSH系発泡剤(永和化成工業社製、商品名N1000SW)3質量部。
【0071】
上記14インチロールでの混練の条件は、ロール温度を前ロール/後ロール=55℃/60℃、ロール周速を前ロール/後ロール=13.5rpm/12rpm、ロール間隙を3mmとして、混練時間8分間で分出しした。
【0072】
上記方法で得たエチレン系共重合体組成物を、押出機(シリンダ径:60mmφ、圧縮比:1.5)を使用して、チューブ状スポンジ(内径:高さ13mm×横幅11mm、肉厚:1.5mm)に押出(押出速度3m/min)後、UHF加硫(230℃、出力1kW×1.5min)及び熱風加硫(250℃×3.5分)し、その押出物を150mmの長さに裁断して各試験片(架橋発泡体)を調製した。
得られた架橋体の物性を前記の測定方法で測定した。結果を表1に示す
【0073】
〔実施例
参考例1で用いたVESTA-18に替えて、脂肪酸で処理した酸化カルシウムあるVESTA-BS(井上石灰工業社製、商品名)に替える以外は参考例1と同様に行い架橋体を得た。
得られた架橋体の物性を前記の測定方法で測定した。結果を表1に示す。
【0074】
〔比較例1〕
参考例1で用いたVESTA-18に替えて、酸化カルシウム(富士フイルム和光純薬社製)に替える以外は参考例1と同様に行い架橋体を得た。
得られた架橋体の物性を前記の測定方法で測定した。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】