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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240328BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20240328BHJP
   H04N 13/344 20180101ALI20240328BHJP
   H04N 13/366 20180101ALI20240328BHJP
   H04N 13/239 20180101ALI20240328BHJP
   H04N 13/111 20180101ALI20240328BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240328BHJP
   G06F 3/04815 20220101ALI20240328BHJP
【FI】
H04N7/18 D
G08B25/00 510M
H04N13/344
H04N13/366
H04N13/239
H04N13/111
G06F3/01 510
G06F3/04815
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020052335
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021153222
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 計行
(72)【発明者】
【氏名】西田 与志雄
(72)【発明者】
【氏名】木下 勇人
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-071592(JP,A)
【文献】特開平09-214943(JP,A)
【文献】特開2019-199708(JP,A)
【文献】特開2018-121195(JP,A)
【文献】特開2003-179702(JP,A)
【文献】特開2003-009214(JP,A)
【文献】特開2019-145901(JP,A)
【文献】特開2019-124659(JP,A)
【文献】特開2011-256525(JP,A)
【文献】特開2005-159998(JP,A)
【文献】特開2018-046318(JP,A)
【文献】特開2014-149718(JP,A)
【文献】中国実用新案第207799326(CN,U)
【文献】国際公開第2019/155934(WO,A1)
【文献】特開2017-041013(JP,A)
【文献】特開2005-344418(JP,A)
【文献】特開2019-074980(JP,A)
【文献】特開2006-203347(JP,A)
【文献】特開平08-316894(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0184643(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G08B 25/00
H04N 13/00-13/398
H04N 23/00
G06F 3/01
G06F 3/04815
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル坑内の工事を監視する監視システムであって、
前記トンネル坑内に設置される360度カメラと、
監視室内の監視員に装着され、前記360度カメラが撮像した画像を表示するヘッドマウントディスプレイと、
前記監視員によって操作されるコントローラと、を備え、
前記360度カメラは、複数の魚眼レンズを有し、
前記ヘッドマウントディスプレイは、角度センサを有しており、当該角度センサが検知した前記監視員の頭の向きに応じた少なくとも二つの前記魚眼レンズの画像を、両眼視差を再現して表示し、
前記監視員が前記コントローラを用いて前記ヘッドマウントディスプレイに表示される画像の二点を指定することによって、前記360度カメラが撮像する対象物の実際の二点間の距離が当該ヘッドマウントディスプレイに表示される、
ことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
トンネル坑内の工事を監視する監視システムであって、
前記トンネル坑内に設置される360度カメラと、
監視室内の監視員に装着され、前記360度カメラが撮像した画像を表示するヘッドマウントディスプレイと、を備え、
前記360度カメラは、複数の魚眼レンズを有し、シールドマシン内であってエレクターの近傍に設置されており、
前記ヘッドマウントディスプレイは、角度センサを有しており、当該角度センサが検知した前記監視員の頭の向きに応じた少なくとも二つの前記魚眼レンズの画像を、両眼視差を再現して表示する、
ことを特徴とする監視システム。
【請求項3】
前記ヘッドマウントディスプレイは、少なくとも二つの前記魚眼レンズが撮影する広範囲の魚眼画像から、前記角度センサが検知した前記監視員の頭の向きに応じた所望方向の部分画像を抽出すると共に、当該部分画像の歪みを補正した補正画像を表示する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記トンネル坑内および前記監視室内に設置され、前記トンネル坑内の作業員と前記監視員との音声通話を可能にする通話装置をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の監視システム。
【請求項5】
前記トンネル坑内および前記監視室内の一方または双方に設置される警告灯をさらに備え、
前記警告灯は、通信回線を介して遠隔地から作動可能である、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項の何れか一項に記載の監視システム。
【請求項6】
前記トンネル坑内の作業員に装着される作業員カメラをさらに備え、
前記ヘッドマウントディスプレイは、前記360度カメラの画像と前記作業員カメラの画像を切り替えてまたは同時に表示できる、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項の何れか一項に記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル内を監視する技術として、例えば特許文献1に記載される遠隔監視装置が開発されている。特許文献1に記載される遠隔監視装置は、トンネル内で火災が発生した場合に、煙の影響を抑制し、発災状況、被災者状況、交通状況を遠隔から監視することを目的とする。この遠隔監視装置は、トンネル内の各区画に配設される消火栓と、消火栓に付随して配置されるカメラと、トンネルの外側にある防災センター内に設置されるコントローラとを備える。コントローラは、カメラによって撮像されたトンネル内の画像を表示させることによって、防災センター内の監視員による遠隔監視を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-041013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載される技術は、トンネルを撮影するカメラとして一般的な監視カメラを想定している(つまり、カメラの種類を特定していない)。そのため、火災の発生の監視などには十分であったが、より詳細な作業の監視(例えば、トンネル坑内の工事の監視)を行う場合には必ずしも十分ではなかった。
【0005】
このような観点から、本発明は、トンネル坑内の工事を好適に監視することができる監視システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る監視システムは、トンネル坑内の工事を監視する監視システムである。この監視システムは、前記トンネル坑内に設置される360度カメラと、監視室内の監視員に装着され、前記360度カメラが撮像した画像を表示するヘッドマウントディスプレイと、前記監視員によって操作されるコントローラとを備える。
前記360度カメラは、複数の魚眼レンズを有する。前記ヘッドマウントディスプレイは、角度センサを有しており、当該角度センサが検知した前記監視員の頭の向きに応じた少なくとも二つの前記魚眼レンズの画像を、両眼視差を再現して表示する。
前記監視員が前記コントローラを用いて前記ヘッドマウントディスプレイに表示される画像の二点を指定することによって、前記360度カメラが撮像する対象物の実際の二点間の距離が当該ヘッドマウントディスプレイに表示される。
本発明に係る監視システムにおいては、トンネル坑内にいる人間の視界を忠実に再現した奥行き感のある画像をほぼリアルタイムで見ることができる。そのため、例えばトンネル坑外にいながら、精度の高い監視を行うことができる。また、360度カメラによれば、全方向(上下前後左右)の画像を取得できるので、監視対象の変更や移動に容易に対応でき、360度カメラの方向を監視対象に向ける調整作業も必要ない。また、全方向(上下前後左右)の画像を取得できるので、360度カメラ以外のカメラを設置する場合に比べて設置する個数を抑制でき、また設置スペースも少なくてすむ。そのため、工事の邪魔になり難く、工事の監視に適している。その結果、トンネル坑内の工事を好適に監視することができる。また、トンネル坑内での監視員の視界を忠実に再現した奥行き感のある画像に加えて対象物(例えば、監視対象の一部)の寸法を把握することができる。そのため、より精度の高い監視を行うことができる。
【0007】
本発明に係る監視システムは、トンネル坑内の工事を監視する監視システムである。この監視システムは、前記トンネル坑内に設置される360度カメラと、監視室内の監視員に装着され、前記360度カメラが撮像した画像を表示するヘッドマウントディスプレイと、を備える。
前記360度カメラは、複数の魚眼レンズを有し、シールドマシン内であってエレクターの近傍に設置されている。前記ヘッドマウントディスプレイは、角度センサを有しており、当該角度センサが検知した前記監視員の頭の向きに応じた少なくとも二つの前記魚眼レンズの画像を、両眼視差を再現して表示する。
本発明に係る監視システムにおいては、トンネル坑内にいる人間の視界を忠実に再現した奥行き感のある画像をほぼリアルタイムで見ることができる。そのため、例えばトンネル坑外にいながら、精度の高い監視を行うことができる。また、360度カメラによれば、全方向(上下前後左右)の画像を取得できるので、監視対象の変更や移動に容易に対応でき、360度カメラの方向を監視対象に向ける調整作業も必要ない。また、全方向(上下前後左右)の画像を取得できるので、360度カメラ以外のカメラを設置する場合に比べて設置する個数を抑制でき、また設置スペースも少なくてすむ。そのため、工事の邪魔になり難く、工事の監視に適している。その結果、トンネル坑内の工事を好適に監視することができる。
【0008】
前記ヘッドマウントディスプレイは、少なくとも二つの前記魚眼レンズが撮影する広範囲の魚眼画像から、前記角度センサが検知した前記監視員の頭の向きに応じた所望方向の部分画像を抽出すると共に、当該部分画像の歪みを補正した補正画像を表示するのがよい。
【0009】
このようにすると、画像処理に必要な演算量が少なく演算時間が短くてすむので、監視員が所望する方向の画像を、ほぼリアルタイムでヘッドマウントディスプレイに投影することができる。
【0010】
前記監視システムは、前記トンネル坑内および前記監視室内に設置される通話装置をさらに備えるのがよい。この通話装置は、前記トンネル坑内の作業員と前記監視員との音声通話を可能にするものである。
【0011】
このようにすると、監視員は、作業員から報告を音声で受けることができ、また、作業員に音声で指示を出すことができる。そのため、報告や指示の伝達ミスの発生を抑制することができる。
【0012】
前記監視システムは、前記トンネル坑内および前記監視室内の一方または双方に設置される警告灯をさらに備えるのがよい。この警告灯は、通信回線を介して遠隔地から作動可能である。
【0013】
このようにすると、例えばノイズが大きい現場環境であっても、作業員への指示があることを確実に知らせることができる。また、例えば様々な情報が集中する監視室内であっても、作業員からの報告があることを監視員に確実に知らせることができる。そのため、緊急の事態が発生した場合に、迅速に対応することができる。
【0014】
前記監視システムは、前記トンネル坑内の作業員に装着される作業員カメラをさらに備えるのがよい。前記ヘッドマウントディスプレイは、前記360度カメラの画像と前記作業員カメラの画像を切り替えてまたは同時に表示できる。
【0015】
このようにすると、監視員および作業員は、作業員の視界に入る情報を共有することができる。そのため、作業員に対してより正確な指示を伝えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、トンネル坑内の工事を好適に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る監視システムの概略構成図である。
図2】360度カメラの設置の例を示す図である。
図3】監視員の向きとヘッドマウントディスプレイに投影する映像との関係を説明するための図であり、(a)は360度カメラの配置の一例であり、(b)および(c)は監視員が向いている方向の一例である。
図4】360度カメラによって撮像した画像の例示であり、(a)は全方向(上下前後左右)の魚眼画像であり、(b)は特定の魚眼レンズが撮像した魚眼画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0021】
<実施形態に係る監視システムの構成>
図1を参照して、実施形態に係る監視システム1の構成について説明する。図1は、監視システム1の概略構成図である。監視システム1は、トンネル坑内の工事を監視するシステムである。監視システム1は、トンネル坑内で行われる様々な工事で使用することができ、監視する対象となる工事の種類や工程などは特に限定されるものではない。図1では、主なデータの流れを矢印で示している。
【0022】
ここでは、図2に示すように、シールドトンネルの工事に監視システム1を用いることを想定する。つまり、監視システム1によって、工事中のシールドトンネル内の様子を監視する。なお、山岳トンネルやボックスカルバートなどの工事についても同様に監視システム1を用いることができる。監視システム1によれば、監視員がトンネル坑内に立ち入る必要はなく、例えば遠隔地からトンネル坑内の様子を監視できる。
【0023】
図1に示すように、監視システム1は、主に、トンネル坑内に設置される機器類と、監視室内に設置される装置類とで構成される。監視室は、例えばトンネル坑外に設けられている。監視室は、トンネルとの距離が離れた遠隔地に設けられていてもよい。トンネル坑内に設置される機器類と監視室内に設置される装置類とは、工事現場の通信ネットワーク2を介して通信可能である。通信ネットワーク2は、トンネル坑内と監視室とを相互通信可能に接続するものであれば制限はないが、例えばトンネル工事を請け負った総合建設業者が管理する通信網を利用できる。通信ネットワーク2は、インターネット上において仮想的に構築されたものであってもよい。なお、通信ネットワーク2は、通信回線の一例である。
【0024】
トンネル坑内に設置される機器類は、少なくとも一つの監視セット10であり、ここではN個(N≧2の自然数)の監視セット10(第一の監視セット10-1~第Nの監視セット10-N)を示している。監視セット10は、監視対象ごとに設置される機器の集合体であり、監視セット10の数は、例えば監視対象の数と一致している。監視対象は適宜設定されればよく、重要な作業や危険な作業などを監視セット10によって監視するのがよい。例えば、第一の監視セット10-1は、シールドマシン内に設置され、第二の監視セット10-2は、坑口周辺に設置される。なお、一つの監視対象を複数の監視セット10を用いて監視してもよいし、複数の監視対象を一つの監視セット10を用いて監視してもよい。
【0025】
各々の監視セット10は、360度カメラ11を少なくとも含んで構成されるものであり、360度カメラ11の他にマイクロフォン12、スピーカ13、警告灯14などを備える。なお、図1に示す監視セット10の構成はあくまで例示であり、ここで示す構成に限定されない。例えば、監視セット10が360度カメラ11のみで構成されてもよいし、360度カメラ11以外の機器を図示しない他の機器に変更してもよいし、また他の機器をさらに含めてもよい。また、監視セット10は、監視対象の種類、作業内容、工事現場の状況に合わせて好適な構成にすることが可能であり、すべての監視セット10を必ずしも同じ構成にする必要はない。
【0026】
360度カメラ11は、360度カメラ11を基点とした全方向(上下前後左右)の画像(映像であってもよい)を撮像する。360度カメラ11は、「全天球カメラ」や「全方位カメラ」などとも呼ばれる。360度カメラ11は、監視対象を認識できる解像度を有していればよく、ズーム機能を備えているのが望ましい。360度カメラ11は、複数の魚眼レンズ(ここでは六つを想定)を備えている。360度カメラ11は、監視対象を撮像できる位置(例えば、監視対象の近傍)に設置される。360度カメラ11は、例えばLAN(Local Area Network)によって通信ネットワーク2(図1参照)と接続されており、通信ネットワーク2を介して撮像した画像(映像であってもよい)を制御端末20に送信する。なお、以下では、映像による監視を想定して説明する場合がある。
【0027】
マイクロフォン12およびスピーカ13は、トンネル坑内の作業員と監視室内の監視員との連絡を実現するための手段である。本実施形態では、作業員と監視員との音声通話を可能にする通話装置を想定しての構成であり、これらの機器に代えて電話機や無線機を用いることもできる。また、チャット(文字入力による会話)などの通話以外の方法によって、作業員と監視員との連絡を実現するものであってもよい。マイクロフォン12およびスピーカ13は、例えば監視対象の近く、360度カメラ11の近く、作業員の近くなどに設置されるのがよい。
【0028】
警告灯14は、監視員による作業員への一方向の連絡(警告を含む)を実現するための手段である。警告灯14は、作業員が視覚的に連絡の受信を確認できるものであればよく、例えば回転灯や点滅灯などであってよい。警告灯14は、通信ネットワーク2を介して監視員によって作動可能であり、例えば360度カメラ11を介して作業員の不安全行動を確認した場合に作動させる。これにより、作業員に対して、警告灯14に対応した注意喚起を視覚的に行うことができる。警告灯14は、光の放射とともに警告音を発してもよい。なお、監視員は、マイクロフォン12およびスピーカ13を用いた連絡を開始する場合の呼び出しに警告灯14を利用してもよい。また、警告灯14は、監視室内に設置されてもよい。その場合、警告灯14は、例えば作業員によって作動される。
【0029】
図2は、360度カメラ11を含む監視セット10の設置の例を示す図である。図2では、泥水シールド工法のシールドマシン101内に監視セット10を設置する場合を示している。図2における矢印Kは、切羽の方向(シールドマシン101の前方向)であり、また、矢印Eは、坑口の方向(シールドマシン101の後方向)である。
【0030】
シールドマシン101は、前端に設けられたカッターヘッド102とその後方に設けられた隔壁103とを備えており、カッターヘッド102と隔壁103との間にチャンバー104が形成されている。また、シールドマシン101の内部には、チャンバー104内に泥水を供給する送泥手段105とチャンバー104内の泥水を排出する排泥手段106とが設けられている。送泥手段105および排泥手段106は、隔壁103を貫通して、チャンバー104に接続されている。また、シールドマシン101は、シールドマシン101に推力を与えるシールドジャッキ107とカッターヘッド102に回転力を付与するモーター108とを備える。また、シールドマシン101は、セグメントの組み立てを行うエレクター109とエレクター109の後方に配置される後続台車110とを備える。
【0031】
360度カメラ11は、シールドマシン101内であって、シールドマシン101が計画通りに施工を行っているかやシールドマシン101に異常がないかなどを監視できる場所に設置されるのがよい。360度カメラ11は、例えば、エレクター109の近傍に設置されるのがよく、エレクター109と後続台車110との間に設置することもできる。360度カメラ11の設置方法は特に限定されず、例えば固定器具を用いて後続台車110のフレームに固定する。360度カメラ11を天井や壁に設置することもできる。マイクロフォン12、スピーカ13および警告灯14は、例えば監視対象の近く、360度カメラ11の近く、作業員の近くなどに設置されるのがよい。
【0032】
図1を参照して、監視室内に設置される装置類について説明する。監視室内に設置される装置類は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)30を少なくとも含んで構成されるものであり、ヘッドマウントディスプレイ30の他に制御端末20、通話装置40、コントローラ50、モニタ60などを備える。なお、図1に示す監視室内の構成はあくまで例示であり、ここで示す構成に限定されない。例えば、ヘッドマウントディスプレイ30に制御端末20や通話装置40の機能を持たせることも可能であるし、モニタ60を備えない構成にすることもできる。
【0033】
制御端末20は、監視システム1全体の制御を行う端末である。制御端末20は、例えばパーソナルコンピュータであってよい。制御端末20は、例えば光ケーブルによって通信ネットワーク2と接続されている。また、制御端末20は、例えばUSB(Universal Serial Bus)やDisplayPortによってヘッドマウントディスプレイ30、通話装置40およびコントローラ50と接続されている。また、制御端末20は、例えばHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)によってモニタ60と接続されている。制御端末20および360度カメラ11には、例えば同一ネットワーク上のIP(Internet Protocol)アドレスが付与されており、データの送受信においてはそのIPアドレスが使用される。なお、監視システム1内のデータ通信の方式は特に限定されない。
【0034】
制御端末20は、例えば通信ネットワーク2を介して360度カメラ11やマイク12から映像データや音声データを受信する。制御端末20は、受信した映像データに基づく映像をヘッドマウントディスプレイ30やモニタ60に表示させると共に、音声データに基づく音声を通話装置40から出力させる。また、制御端末20は、通話装置40から入力された音声データやコントローラ50から入力された操作データを監視セット10に送信し、360度カメラ11を操作したり、スピーカ13から音声を出力させたり、警告灯14を点灯させたりする。
【0035】
ヘッドマウントディスプレイ30は、360度カメラ11が撮像した画像(映像であってもよい)を表示する。ヘッドマウントディスプレイ30は、監視員に装着される。ヘッドマウントディスプレイ30には、例えば異なる魚眼レンズからの画像が、ヘッドマウントディスプレイ30の左眼部分と右眼部分とに両眼視差を再現して投影される。つまり、360度カメラ11は、複数の魚眼レンズにより監視対象を異なる角度から撮像しており、監視員は、両眼視差を再現した奥行き感のある画像(3D画像)を見ることができる。
【0036】
ヘッドマウントディスプレイ30は、図示しない角度センサやジャイロセンサ等を備えており、角度センサやジャイロセンサ等によって監視員の頭の向き、動き等を感知する。感知した監視員の頭の向きや動き等は、ヘッドマウントディスプレイ30に投影する画像(映像)との連動に用いられる。なお、ヘッドマウントディスプレイ30が有するセンサの種類や数は、ヘッドマウントディスプレイ30を装着する監視員と投影する画像(映像)とを連動させることができるものであれば特に限定されない。
【0037】
図3を参照して、監視員の向きとヘッドマウントディスプレイ30に投影する画像との関係を説明する。図3は、監視員の向きとヘッドマウントディスプレイに投影する映像との関係を説明するための図である。図3(a)は360度カメラ11の配置の一例であり、図3(b)および(c)は監視員が向いている方向の一例である。図3(a),(b),(c)はともに平面図である。
【0038】
図3(a)に示すように、360度カメラ11は、球状の本体部11aと、本体部11aの外周面に直線状かつ等間隔に並べられた六つの魚眼レンズR(第一の魚眼レンズR1~第六の魚眼レンズR6)とを備える。言い換えると、六つの魚眼レンズRは、同一平面上に設けられている。360度カメラ11は、シールドマシン101の基準面(例えば、床面や水平面)と、六つの魚眼レンズRを通過する平面とが平行になるように固定される。つまり、基準面が水平面である場合、六つの魚眼レンズRを通過する平面に直交する方向が鉛直方向となる。ここでは、第一の魚眼レンズR1および第二の魚眼レンズR2が切羽の方向(シールドマシン101(図2参照)の前方向)に配置されており、第四の魚眼レンズR4および第五の魚眼レンズR5が坑口の方向(シールドマシン101(図2参照)の後方向)に配置されている。なお、魚眼レンズRの配置や数は、ここで説明したものに限定されない。
【0039】
この場合において、切羽の方向(シールドマシン101の前方向)と監視員が「北」を向いている状態(図3(b)参照)とを対応付けることを想定する。監視員が「北」を向いているとき、ヘッドマウントディスプレイ30の左眼部分には第一の魚眼レンズR1からの画像が投影され、また、右眼部分には第二の魚眼レンズR2からの画像が投影される。同様にして、監視員が「南」を向いているとき、ヘッドマウントディスプレイ30の左眼部分には第四の魚眼レンズR4からの画像が投影され、また、右眼部分には第五の魚眼レンズR5からの画像が投影される。このように、監視員の方向と360度カメラ11の魚眼レンズRとが対応づけられている。
【0040】
また、ヘッドマウントディスプレイ30に投影される画像は、二つの魚眼レンズRが撮像する広範囲の魚眼画像から、ヘッドマウントディスプレイ30の角度センサ等が検知した監視員の頭の向きや動きに応じて監視員が所望する領域の部分画像を抽出すると共に、この部分画像の歪みを補正した補正画像であることが好ましい。
【0041】
360度カメラ11は、魚眼レンズRを備えており、画角200°前後の広範囲の領域を魚眼画像で撮像している(図4(a),(b)参照)。図4(a)は全方向(上下前後左右)の魚眼画像であり、図4(b)は特定の魚眼レンズRが撮像した魚眼画像である。魚眼画像は、広範囲の領域を映し出すことができるが、周辺部に行くほど歪みが大きくなる。そのため、前述したように、部分画像から歪みのない補正画像の作成を行うのがよい。補正画像を作成する画像処理は、監視室内に設置された制御端末20で行うことが好ましい。監視室内に設置された制御端末20で画像処理を行うことにより、画像処理の高速化、監視セット10(特に360度カメラ11)の装置構成の簡略化、ヘッドマウントディスプレイ30の軽量化を実現することができる。
【0042】
なお、人間の視野は、上方に60°、下方に70°、水平方向に180°程度と広いが、実際に注意が向けられ、焦点が合っている領域は非常に狭い。そのため、全体に焦点が合っている画像をヘッドマウントディスプレイ30に投影した場合、監視員は、不自然な画像を見ることになり脳への負担が大きく、非常に疲れやすい。そのため、制御端末20により、ヘッドマウントディスプレイ30に投影する画像の周辺部をぼやかして、自然な視界を再現することが好ましい。また、映像を投影する場合、ヘッドマウントディスプレイ30の左眼部分と右眼部分に投影される映像に時間のずれが生じると、監視員へのストレスが大きいため、選定した魚眼レンズRからの映像は同期してヘッドマウントディスプレイ30に投影することが好ましい。
【0043】
図1に示す通話装置40は、トンネル坑内の作業員と監視室内の監視員との連絡を実現するための手段である。通話装置40は、音声入力および音声出力の機能を備えており、作業員と監視員との音声通話を可能にする。ここでの通話装置40は、卓上に置いて使用する形態のものであるが、この装置に代えて持ち運び可能な電話機や無線機を用いることもできる。また、チャット(文字入力による会話)などの通話以外の方法によって、作業員と監視員との連絡を実現するものであってもよい。
【0044】
図1に示すコントローラ50は、監視員が手に持って操作する機器である。監視員は、コントローラ50を操作して、ヘッドマウントディスプレイ30に表示される画像(映像)の調整や監視対象の寸法を計測することができる。例えば、コントローラ50が備える拡大ボタン/縮小ボタン(図示せず)を押下することによって、ヘッドマウントディスプレイ30に表示される画像が拡大/縮小(ズームイン/ズームアウト)される。また、コントローラ50を用いてヘッドマウントディスプレイ30に表示される画像の二点を指定することによって、360度カメラ11が撮像する対象物(例えば、監視対象の一部)の実際の二点間の距離がヘッドマウントディスプレイ30に表示される。なお、コントローラ50の操作に代えて、例えば監視員が画像の一点を凝視することによって画像が拡大し、目を閉じたり視線を他の部分に移すことによって画像が縮小するようにしてもよい。
【0045】
図1に示すモニタ60は、例えば大型のディスプレイである。モニタ60は、監視室内に設置されており、ヘッドマウントディスプレイ30を装着する監視員以外の者が観ることができるようになっている。例えば、360度カメラ11が撮像した全ての画像(360度パノラマ画像)が表示できるように複数台のモニタ60を設置し、制御端末20が備えるマウスの操作によって360度パノラマ画像がモニタ60に映し出される。なお、360度カメラ11が撮像した画像の一部をモニタ60に表示するようにしてもよい。これにより、例えば、緊急の事態が発生した場合に、その状況を監視室内の他の者と共有することが可能である。
【0046】
また、図1に示すように、本実施形態の監視システム1は、携帯型端末70を備える。携帯型端末70は、例えばスマーフォンやタブレット端末である。携帯型端末70は、トンネル坑内や監視室内への持ち入れ、トンネル坑外や監視室外への持ち出しが可能である。携帯型端末70は、例えばインターネットを介して通信ネットワーク2と接続されている。携帯型端末70は、360度カメラ11が撮像した画像(映像であってもよい)を受信し、当該画像を表示できる。これにより、監視員は、携帯型端末70を所持することにより、監視室の特定の場所にいなくても、監視対象を監視することができる。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る監視システム1では、360度カメラ11およびヘッドマウントディスプレイ30を用いることにより、トンネル坑内にいる人間の視界を忠実に再現した奥行き感のある画像をほぼリアルタイムで見ることができる。そのため、例えばトンネル坑外にいながら、精度の高い監視を行うことができる。また、360度カメラ11によれば、全方向(上下前後左右)の画像を取得できるので、監視対象の変更や移動に容易に対応でき、360度カメラ11の方向を監視対象に向ける調整作業も必要ない。また、全方向(上下前後左右)の画像を取得できるので、360度カメラ11以外のカメラを設置する場合に比べて設置する個数を抑制でき、また設置スペースも少なくてすむ。そのため、工事の邪魔になり難く、工事の監視に適している。その結果、トンネル坑内の工事を好適に監視することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
【0049】
実施形態では、360度カメラ11を固定して設置していたが、360度カメラ11を固定せずに移動可能に配置してもよい。移動可能とは、例えばレールを設けてその上を360度カメラ11が移動するようにしてもよいし、作業員に360度カメラ11を装着することもできる。また、例えばバッテリーカーやダンプカー等のような移動体に360度カメラ11を設置することにより、トンネル内(路線構造物内)を監視することができる。
【0050】
また、作業員に360度カメラ11とは別のカメラ(「作業員カメラ」と称す)を取り付けて、ヘッドマウントディスプレイ30では360度カメラ11の画像と作業員カメラの画像とを切り替えてまたは同時に表示できるようにしてもよい。この場合、例えば360度カメラ11によって作業現場を俯瞰して撮影し、作業員カメラで特定部分を局所的に撮影する。
【符号の説明】
【0051】
1 監視システム
2 通信ネットワーク(通信回線)
10-1~10-N,10 監視セット
11 360度カメラ
12 マイクロフォン(通話装置)
13 スピーカ(通話装置)
14 警告灯
20 制御端末
30 ヘッドマウントディスプレイ
40 通話装置
50 コントローラ
60 モニタ
70 携帯型端末
101 シールドマシン
109 エレクター
R,R1~R6 魚眼レンズ
図1
図2
図3
図4