(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】マルチチャンネルオーディオシステム、マルチチャンネルオーディオ装置、プログラム、およびマルチチャンネルオーディオ再生方法
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20240328BHJP
G10K 11/178 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
H04R3/00 310
G10K11/178 100
(21)【出願番号】P 2020056893
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】309039716
【氏名又は名称】株式会社ディーアンドエムホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】米森 和彦
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-135094(JP,A)
【文献】特開2007-259391(JP,A)
【文献】特開2010-244053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00-3/14
G10K 11/178
H04S 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスピーカを用いてマルチチャンネルオーディオ信号を再生出力するマルチチャンネルオーディオ装置と、前記マルチチャンネルオーディオ装置のリスニングポイントに配置されるワイヤレス端末と、を備えたマルチチャンネルオーディオシステムであって、
前記ワイヤレス端末は、
前記リスニングポイントにおける環境音を集音する集音手段と、
前記集音手段により集音された環境音の集音信号を前記マルチチャンネルオーディオ装置に送信する集音信号送信手段と、を有し、
前記マルチチャンネルオーディオ装置は、
前記マルチチャンネルオーディオ信号を複数チャンネルのオーディオ再生信号に再生するオーディオ再生手段と、
前記オーディオ再生手段により再生された前記複数チャンネルのオーディオ再生信号を、チャンネル毎に、当該チャンネルに対応する前記スピーカから出力するオーディオ出力手段と、
前記ワイヤレス端末から集音信号を受信する集音信号受信手段と、
前記集音信号受信手段により受信された前記集音信号と前記オーディオ出力手段により複数の前記スピーカから出力された前記複数チャンネルのオーディオ再生信号との差分をノイズ成分として特定するノイズ成分特定手段と、
前記ノイズ成分特定手段により特定された前記ノイズ成分と逆位相のノイズキャンセル信号を生成するノイズキャンセル信号生成手段と、
前記ノイズキャンセル信号生成手段により生成された前記ノイズキャンセル信号をいずれかの前記スピーカから出力するノイズキャンセル信号出力手段と、を有し、
前記ワイヤレス端末は、
ユーザから受け付けたテスト信号再生操作に従い、指定チャンネルを含むテスト信号再生指示を前記マルチチャンネルオーディオ装置に送信するテスト信号再生指示手段と、
前記テスト信号再生指示手段により送信された前記テスト信号再生指示に応答して前記指定チャンネルに対応する前記スピーカを介して前記マルチチャンネルオーディオ装置から出力されたテスト信号を、前記集音手段により集音して、当該指定チャンネルのチャンネル再生データとして録音するチャンネル再生データ録音手段と、
前記チャンネル再生データ録音手段による録音開始に同期して、予め記憶されている前記テスト信号の音源を再生し、その再生データを外部出力することなく音源再生データとして録音する音源再生データ録音手段と、
前記チャンネル再生データ録音手段により録音された前記指定チャンネルのチャンネル再生データおよび前記音源再生データ録音手段により録音された前記音源再生データを含む前記指定チャンネルの測定データを、前記マルチチャンネルオーディオ装置に送信する測定データ送信手段と、をさらに有し、
前記マルチチャンネルオーディオ装置は、
前記ワイヤレス端末から受信した前記テスト信号再生指示に従い、予め記憶されている前記テスト信号の音源を再生して、当該テスト信号再生指示に含まれている前記指定チャンネルに対応する前記スピーカから出力するテスト信号再生出力手段と、
前記ワイヤレス端末から前記指定チャンネルの測定データを受信する測定データ受信手段と、
前記測定データ受信手段により受信された前記指定チャンネルの測定データに含まれている前記チャンネル再生データおよび前記音源再生データを比較して、当該指定チャンネルの前記音源再生データに対する前記チャンネル再生データの遅延時間および減衰率を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記指定チャンネルの前記音源再生データに対する前記チャンネル再生データの遅延時間および減衰率に基づいて、出力タイミングおよび音量レベルを含む当該指定チャンネルの音響プロファイル情報を生成する音響プロファイル情報生成手段と、
前記音響プロファイル情報生成手段により生成された前記指定チャンネルの音響プロファイル情報を、当該指定チャンネルのオーディオ再生信号の出力条件に設定する音響プロファイル情報設定手段と、をさらに有する
ことを特徴とするマルチチャンネルオーディオシステム。
【請求項2】
請求項
1に記載のマルチチャンネルオーディオシステムであって、
前記ノイズキャンセル信号出力手段は、
前記複数チャンネルの音響プロファイル情報のうち、出力タイミングが最も遅い音響プロファイル情報に対応するチャンネルに対応する前記スピーカから、前記ノイズキャンセル信号生成手段により生成されたノイズキャンセル信号を出力する
こと特徴とするマルチチャンネルオーディオシステム。
【請求項3】
請求項
1に記載のマルチチャンネルオーディオシステムであって、
前記ノイズキャンセル信号出力手段は、
ユーザからの指示に従い、前記ノイズキャンセル信号生成手段により生成されたノイズキャンセル信号を出力する前記スピーカを切り換える
こと特徴とするマルチチャンネルオーディオシステム。
【請求項4】
請求項
1に記載のマルチチャンネルオーディオシステムであって、
前記マルチチャンネルオーディオ装置は、
前記ノイズキャンセル信号出力手段に代えて、前記ノイズキャンセル信号生成手段により生成されたノイズキャンセル信号を前記ワイヤレス端末に送信するノイズキャンセル信号送信手段を有し、
前記ワイヤレス端末は、
前記マルチチャンネルオーディオ装置から前記ノイズキャンセル信号を受信するノイズキャンセル信号受信手段と、
前記ノイズキャンセル信号受信手段により受信された前記ノイズキャンセル信号を出力するノイズキャンセル信号出力手段と、をさらに有する
こと特徴とするマルチチャンネルオーディオシステム。
【請求項5】
複数のスピーカを用いてマルチチャンネルオーディオ信号を再生出力するマルチチャンネルオーディオ装置であって、
前記マルチチャンネルオーディオ信号を複数チャンネルのオーディオ再生信号に再生するオーディオ再生手段と、
前記オーディオ再生手段により再生された前記複数チャンネルのオーディオ再生信号を、チャンネル毎に、当該チャンネルに対応する前記スピーカから出力するオーディオ出力手段と、
前記マルチチャンネルオーディオ装置のリスニングポイントに配置されたワイヤレス端末から、当該リスニングポイントにおける環境音の集音信号を受信する集音信号受信手段と、
前記集音信号受信手段により受信された前記集音信号と前記オーディオ出力手段により複数の前記スピーカから出力された前記複数チャンネルのオーディオ再生信号との差分をノイズ成分として特定するノイズ成分特定手段と、
前記ノイズ成分特定手段により特定された前記ノイズ成分と逆位相のノイズキャンセル信号を生成するノイズキャンセル信号生成手段と、
前記ノイズキャンセル信号生成手段により生成された前記ノイズキャンセル信号をいずれかの前記スピーカから出力するノイズキャンセル信号出力手段と、
前記ワイヤレス端末から受信した指定チャンネルを含むテスト信号再生指示に従い、予め記憶されているテスト信号の音源を再生して、前記指定チャンネルに対応する前記スピーカから出力するテスト信号再生出力手段と、
前記指定チャンネルに対応する前記スピーカを介して前記マルチチャンネルオーディオ装置から出力された前記テスト信号の録音データであるチャンネル再生データ、および、前記マルチチャンネルオーディオ装置における前記テスト信号の出力に同期して前記ワイヤレス端末により再生された前記テスト信号の録音データである音源再生データを含む、前記指定チャンネルの測定データを、前記ワイヤレス端末から受信する測定データ受信手段と、
前記測定データ受信手段により受信された前記指定チャンネルの測定データに含まれている前記チャンネル再生データおよび前記音源再生データを比較して、当該指定チャンネルの前記音源再生データに対する前記チャンネル再生データの遅延時間および減衰率を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記指定チャンネルの前記音源再生データに対する前記チャンネル再生データの遅延時間および減衰率に基づいて、出力タイミングおよび音量レベルを含む当該指定チャンネルの音響プロファイル情報を生成する音響プロファイル情報生成手段と、
前記音響プロファイル情報生成手段により生成された前記指定チャンネルの音響プロファイル情報を、当該指定チャンネルのオーディオ再生信号の出力条件に設定する音響プロファイル情報設定手段と
、を有する
ことを特徴とするマルチチャンネルオーディオ装置。
【請求項6】
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
前記プログラムは、前記コンピュータを、複数のスピーカを用いてマルチチャンネルオーディオ信号を再生出力するマルチチャンネルオーディオ装置として機能させ、
前記マルチチャンネルオーディオ装置は、
前記マルチチャンネルオーディオ信号を複数チャンネルのオーディオ再生信号に再生するオーディオ再生手段と、
前記オーディオ再生手段により再生された前記複数チャンネルのオーディオ再生信号を、チャンネル毎に、当該チャンネルに対応する前記スピーカから出力するオーディオ出力手段と、
前記マルチチャンネルオーディオ装置のリスニングポイントに配置されたワイヤレス端末から、当該リスニングポイントにおける環境音の集音信号を受信する集音信号受信手段と、
前記集音信号受信手段により受信された前記集音信号と前記オーディオ出力手段により複数の前記スピーカから出力された前記複数チャンネルのオーディオ再生信号との差分をノイズ成分として特定するノイズ成分特定手段と、
前記ノイズ成分特定手段により特定された前記ノイズ成分と逆位相のノイズキャンセル信号を生成するノイズキャンセル信号生成手段と、
前記ノイズキャンセル信号生成手段により生成された前記ノイズキャンセル信号をいずれかの前記スピーカから出力するノイズキャンセル信号出力手段と、
前記ワイヤレス端末から受信した指定チャンネルを含むテスト信号再生指示に従い、予め記憶されているテスト信号の音源を再生して、前記指定チャンネルに対応する前記スピーカから出力するテスト信号再生出力手段と、
前記指定チャンネルに対応する前記スピーカを介して前記マルチチャンネルオーディオ装置から出力された前記テスト信号の録音データであるチャンネル再生データ、および、前記マルチチャンネルオーディオ装置における前記テスト信号の出力に同期して前記ワイヤレス端末により再生された前記テスト信号の録音データである音源再生データを含む、前記指定チャンネルの測定データを、前記ワイヤレス端末から受信する測定データ受信手段と、
前記測定データ受信手段により受信された前記指定チャンネルの測定データに含まれている前記チャンネル再生データおよび前記音源再生データを比較して、当該指定チャンネルの前記音源再生データに対する前記チャンネル再生データの遅延時間および減衰率を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記指定チャンネルの前記音源再生データに対する前記チャンネル再生データの遅延時間および減衰率に基づいて、出力タイミングおよび音量レベルを含む当該指定チャンネルの音響プロファイル情報を生成する音響プロファイル情報生成手段と、
前記音響プロファイル情報生成手段により生成された前記指定チャンネルの音響プロファイル情報を、当該指定チャンネルのオーディオ再生信号の出力条件に設定する音響プロファイル情報設定手段
と、を有する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
複数のスピーカを用いてマルチチャンネルオーディオ信号を再生出力するマルチチャンネルオーディオ装置と、前記マルチチャンネルオーディオ装置のリスニングポイントに配置されたワイヤレス端末と、を用いたマルチチャンネルオーディオ再生方法であって、
前記ワイヤレス端末は、
前記リスニングポイントにおける環境音を集音して、その集音信号を前記マルチチャンネルオーディオ装置に送信し、
前記マルチチャンネルオーディオ装置は、
前記マルチチャンネルオーディオ信号を複数チャンネルのオーディオ再生信号に再生して、チャンネル毎に、当該チャンネルに対応する前記スピーカから出力し、
前記ワイヤレス端末から受信した前記集音信号と、複数の前記スピーカから出力した前記複数チャンネルのオーディオ再生信号との差分を、ノイズ成分として特定して、当該ノイズ成分と逆位相のノイズキャンセル信号を生成し、当該ノイズキャンセル信号をいずれかの前記スピーカから出力し、
さらに、前記ワイヤレス端末は、
ユーザから受け付けたテスト信号再生操作に従い、指定チャンネルを含むテスト信号再生指示を前記マルチチャンネルオーディオ装置に送信し、当該テスト信号再生指示に応答して前記指定チャンネルに対応する前記スピーカを介して前記マルチチャンネルオーディオ装置から出力されたテスト信号を集音して、当該指定チャンネルのチャンネル再生データとして録音し、
前記指定チャンネルのチャンネル再生データの録音開始に同期して、予め記憶されている前記テスト信号の音源を再生し、その再生データを外部出力することなく音源再生データとして録音し、
録音された前記指定チャンネルのチャンネル再生データおよび前記音源再生データを含む前記指定チャンネルの測定データを、前記マルチチャンネルオーディオ装置に送信し、
さらに、前記マルチチャンネルオーディオ装置は、
前記ワイヤレス端末から受信した前記テスト信号再生指示に従い、予め記憶されている前記テスト信号の音源を再生して、当該テスト信号再生指示に含まれている前記指定チャンネルに対応する前記スピーカから出力し、
前記ワイヤレス端末から前記指定チャンネルの測定データを受信し、当該指定チャンネルの測定データに含まれている前記チャンネル再生データおよび前記音源再生データを比較して、当該指定チャンネルの前記音源再生データに対する前記チャンネル再生データの遅延時間および減衰率を測定し、
測定された前記指定チャンネルの前記音源再生データに対する前記チャンネル再生データの遅延時間および減衰率に基づいて、出力タイミングおよび音量レベルを含む当該指定チャンネルの音響プロファイル情報を生成し、
生成された前記指定チャンネルの音響プロファイル情報を、当該指定チャンネルのオーディオ再生信号の出力条件に設定する
ことを特徴とするマルチチャンネルオーディオ再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチチャンネルオーディオ再生技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のスピーカを用いてマルチチャンネルオーディオ信号を再生するマルチチャンネルオーディオ装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のマルチチャンネルオーディオ装置は、マルチチャンネルオーディオ信号のチャンネル毎に、オーディオ再生信号を増幅し、このチャンネルに対応するスピーカから出力している。
【0003】
また、マルチチャンネルオーディオ装置のなかには、マルチチャンネルオーディオ信号のチャンネル毎にオーディオ再生信号の音響プロファイル情報(出力タイミング、音量レベル等)を設定できるものがある。例えば、特許文献2に記載のマルチチャンネルオーディオ装置は、マルチチャンネルオーディオ信号のチャンネル毎に、このチャンネルに対応するスピーカから出力されたテスト信号を、リスニングポイントに設置された専用の測定マイクで集音し、その遅延時間、減衰率を測定する。そして、マルチチャンネルオーディオ信号のチャンネル毎に、このチャンネルに対応するスピーカから出力されるオーディオ再生信号の音響特性がリスニングポイントで最適となるように音響プロファイル情報を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-367290号公報
【文献】特開2000-354300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載のような従来のマルチチャンネルオーディオ装置によれば、ユーザは、複数のスピーカから出力される各チャンネルのオーディオ再生信号によって臨場感のあるサウンドを楽しむことができる。しかしながら、周囲で雑音が発生している環境では、雑音が邪魔になってクリアなサウンドで音楽等のコンテンツを楽しめない場合がある。従来のマルチチャンネルオーディオ装置は、この点を考慮していない。
【0006】
また、特許文献2に記載のような、チャンネル毎に音響プロファイル情報を設定可能な従来のマルチチャンネルオーディオ装置によれば、専用の測定マイクを付属させる必要があり、コストが増大する。また、専用の測定マイクをコードでマルチチャンネルオーディオ装置に接続する必要があり、煩雑である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、雑音のある環境下においても、マルチチャンネルでオーディオコンテンツを快適に楽しむことができる技術を提供することにある。また、本発明の他の目的は、コストを増大させることなく、かつ簡単な操作で、マルチチャンネルオーディオの各チャンネルの音響プロファイル情報を生成することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、マイクを備えたスマートホン、タブレットPC、スマートスピーカ等のワイヤレス端末を、マルチチャンネルオーディオ装置のリスニングポイントに配置する。マルチチャンネルオーディオ装置は、マルチチャンネルオーディオ信号を複数チャンネルのオーディオ再生信号に再生して、チャンネル毎にオーディオ再生信号を対応するスピーカから出力し、ワイヤレス端末は、リスニングポイントにおける環境音を集音し、その集音信号をマルチチャンネルオーディオ装置にフィードバックする。そして、マルチチャンネルオーディオ装置は、ワイヤレス端末からフィードバックされた集音信号と複数のスピーカから出力した複数チャンネルのオーディオ再生信号との差分をノイズ成分として特定し、特定したノイズ成分と逆位相のノイズキャンセル信号を生成する。そして、ノイズキャンセル信号をいずれかのスピーカから出力する。あるいは、ワイヤレス端末に送信して、ワイヤレス端末から出力する。さらに、本発明では、リスニングポイントに配置したワイヤレス端末に録音再生機能を持たせる。ワイヤレス端末は、テスト信号の音源を有しており、ユーザからテスト信号再生操作を受け付けると、指定チャンネルを含むテスト信号再生指示をマルチチャンネルオーディオ装置に送信して、この指定チャンネルに対応するスピーカを介してマルチチャンネルオーディオ装置から出力されるテスト信号をチャンネル再生データとして録音するとともに、テスト信号の音源を再生し、これをスピーカから外部出力することなく音源再生データとして録音する。そして、指定チャンネルのチャンネル再生データおよび音源再生データをマルチチャンネルオーディオ装置に送信する。マルチチャンネルオーディオ装置は、チャンネル再生データと音源再生データとを比較して、音源再生データに対するチャンネル再生データの遅延時間、減衰率を測定する。そして、測定結果に基づいて指定チャンネルの出力タイミングおよび音量レベルを含む音響プロファイル情報を生成して、これを指定チャンネルのオーディオ再生信号の出力条件に設定する。
【0011】
例えば、本発明は、
複数のスピーカを用いてマルチチャンネルオーディオ信号を再生出力するマルチチャンネルオーディオ装置と、前記マルチチャンネルオーディオ装置のリスニングポイントに配置されるワイヤレス端末と、を備えたマルチチャンネルオーディオシステムであって、
前記ワイヤレス端末は、
前記リスニングポイントにおける環境音を集音する集音手段と、
前記集音手段により集音された環境音の集音信号を前記マルチチャンネルオーディオ装置に送信する集音信号送信手段と、を有し、
前記マルチチャンネルオーディオ装置は、
マルチチャンネルオーディオ信号を複数チャンネルのオーディオ再生信号に再生するオーディオ再生手段と、
前記オーディオ再生手段により再生された複数チャンネルのオーディオ再生信号を、チャンネル毎に、当該チャンネルに対応する前記スピーカから出力するオーディオ出力手段と、
前記ワイヤレス端末から集音信号を受信する集音信号受信手段と、
前記集音信号受信手段により受信された集音信号と前記オーディオ出力手段により複数の前記スピーカから出力された複数チャンネルのオーディオ再生信号との差分をノイズ成分として特定するノイズ成分特定手段と、
前記ノイズ成分特定手段により特定されたノイズ成分と逆位相のノイズキャンセル信号を生成するノイズキャンセル信号生成手段と、
前記ノイズキャンセル信号生成手段により生成されたノイズキャンセル信号をいずれかの前記スピーカから出力するノイズキャンセル信号出力手段と、を有し、
前記ワイヤレス端末は、
ユーザから受け付けたテスト信号再生操作に従い、指定チャンネルを含むテスト信号再生指示を前記マルチチャンネルオーディオ装置に送信するテスト信号再生指示手段と、
前記テスト信号再生指示手段により送信された前記テスト信号再生指示に応答して、前記指定チャンネルに対応する前記スピーカを介して前記マルチチャンネルオーディオ装置から出力されたテスト信号を、前記集音手段により集音して、当該指定チャンネルのチャンネル再生データとして録音するチャンネル再生データ録音手段と、
前記チャンネル再生データ録音手段による録音開始に同期して、予め記憶されている前記テスト信号の音源を再生し、その再生データを音源再生データとして外部出力することなく録音する音源再生データ録音手段と、
前記チャンネル再生データ録音手段により録音された前記指定チャンネルのチャンネル再生データおよび前記音源再生データ録音手段により録音された前記音源再生データを含む前記指定チャンネルの測定データを、前記マルチチャンネルオーディオ装置に送信する測定データ送信手段と、をさらに有し、
前記マルチチャンネルオーディオ装置は、
前記ワイヤレス端末から受信した前記テスト信号再生指示に従い、予め記憶されている前記テスト信号の音源を再生して、当該テスト信号再生指示に含まれている前記指定チャンネルに対応する前記スピーカから出力するテスト信号再生手段と、
前記ワイヤレス端末から前記指定チャンネルの測定データを受信する測定データ受信手段と、
前記測定データ受信手段により受信された前記指定チャンネルの測定データに含まれている前記チャンネル再生データおよび前記音源再生データを比較して、当該指定チャンネルの前記音源再生データに対する前記チャンネル再生データの遅延時間および減衰率を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記指定チャンネルの前記音源再生データに対する前記チャンネル再生データの遅延時間および減衰率に基づいて、出力タイミングおよび音量レベルを含む当該指定チャンネルの音響プロファイル情報を生成する音響プロファイル情報生成手段と、
前記音響プロファイル情報生成手段により生成された前記指定チャンネルの音響プロファイル情報を、当該指定チャンネルのオーディオ再生信号の出力条件に設定する音響プロファイル情報設定手段と、をさらに有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、マルチチャンネルオーディオ装置がチャンネル毎に対応するスピーカから出力したオーディオ再生信号を、マルチチャンネルオーディオ装置のリスニングポイントに配置されたワイヤレス端末で集音して、その集音信号をマルチチャンネルオーディオ装置にフィードバックし、マルチチャンネルオーディオ装置は、ワイヤレス端末からフィードバックされた集音信号と複数のスピーカから出力した複数チャンネルのオーディオ再生信号との差分をノイズ成分として特定して、このノイズ成分と逆位相のノイズキャンセル信号をいずれかのスピーカあるいはワイヤレス端末から出力する。したがって、雑音のある環境下においても、この雑音をキャンセルしてマルチチャンネルオーディオを快適に楽しむことができる。また、本発明では、録音再生機能を備えたスマートホン、タブレットPC、スマートスピーカ等のワイヤレス端末を音響プロファイル情報生成用の測定マイクとして用いるので、マルチチャンネルオーディオ装置に専用の測定マイクを付属させる必要がない。また、ユーザは、ワイヤレス端末をマルチチャンネルオーディオ装置のリスニングポイントに配置すればよく、ワイヤレス端末とマルチチャンネルオーディオ装置との間をコードで接続する必要がない。したがって、コストを増大させることなく、かつ簡単な操作で、各チャンネルの音響プロファイル情報を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係るマルチチャンネルオーディオシステムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、マルチチャンネルオーディオシステムの音響プロファイル情報設定動作を説明するためのシーケンス図である。
【
図3】
図3は、マルチチャンネルオーディオシステムのノイズキャンセル動作を説明するためのシーケンス図である。
【
図4】
図4は、マルチチャンネルオーディオ装置1の概略機能構成図である。
【
図5】
図5は、マルチチャンネルオーディオ装置1の音響プロファイル情報設定処理を説明するためのフロー図である。
【
図6】
図6は、マルチチャンネルオーディオ装置1のノイズキャンセル処理を説明するためのフロー図である。
【
図7】
図7は、ワイヤレス端末3の概略機能構成図である。
【
図8】
図8は、ワイヤレス端末3の音響プロファイル情報設定処理を説明するためのフロー図である。
【
図9】
図9は、ワイヤレス端末3のノイズキャンセル処理を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係るマルチチャンネルオーディオシステムの概略構成図である。
【0017】
図示するように、本実施の形態に係るマルチチャンネルオーディオシステムは、アクセスポイント6およびWAN、LAN等のネットワーク5を介してメディアサーバ4に接続されたマルチチャンネルオーディオ装置1と、アクセスポイント6を介してマルチチャンネルオーディオ装置1に無線接続されたワイヤレス端末3と、を備えている。
【0018】
マルチチャンネルオーディオ装置1は、メディアサーバ4からマルチチャンネルオーディオ信号をダウンロードし、ダウンロードしたマルチチャンネルオーディオ信号を複数チャンネルのオーディオ再生信号に再生して、複数のスピーカ2-1~2-6(以下、単にスピーカ2とも呼ぶ)から出力する。
【0019】
本実施の形態では、5.1chのマルチチャンネルオーディオ信号を再生出力する場合を例示しており、FR(Front Right)チャンネル、FL(Front Left)チャンネル、C(Center)チャンネル、SR(Surround Right)チャンネル、SL(Surround Left)チャンネル、およびSW(Sub Woofer)チャンネルに対応した6台のスピーカ2-1~2-6がマルチチャンネルオーディオ装置1に接続されている。マルチチャンネルオーディオ装置1は、5.1chのマルチチャンネルオーディオ信号を、FRチャンネル、FLチャンネル、Cチャンネル、SRチャンネル、SLチャンネル、およびSWチャンネルのオーディオ再生信号に再生し、各チャンネルのオーディオ再生信号を各チャンネルのスピーカ2-1~2-6から出力する。
【0020】
ワイヤレス端末3は、録音再生機能を備えたスマートホン、タブレットPC、スマートスピーカ等であり、マルチチャンネルオーディオ装置1をリモート操作するためのコントローラとして機能する。また、ワイヤレス端末3は、マルチチャンネルオーディオ装置1のリスニングポイントに配置され、マルチチャンネルオーディオ装置1において、チャンネル毎にオーディオ再生信号の出力条件を定める音響プロファイル情報の生成や、リスニングポイントにおける雑音を打ち消すためのノイズキャンセル信号の生成に必要な情報をマルチチャンネルオーディオ装置1に提供する。
【0021】
図2は、マルチチャンネルオーディオシステムの音響プロファイル情報設定動作を説明するためのシーケンス図である。
【0022】
まず、ワイヤレス端末3は、指定チャンネル(テスト信号を再生するチャンネル)を伴うテスト信号再生操作をユーザより受け付けると(S100)、指定チャンネルを含むテスト信号再生指示をマルチチャンネルオーディオ装置1に送信する(S101)。
【0023】
これを受けて、マルチチャンネルオーディオ装置1は、予め登録されているテスト信号の音源を再生して、指定チャンネルに対応するスピーカ2から出力する(S102)。一方、ワイヤレス端末3は、集音を開始し、マルチチャンネルオーディオ装置1から出力されたテスト信号を指定チャンネルのチャンネル再生データとして録音するとともに、集音開始に同期して、予め登録されているテスト信号の音源を再生し、その再生データを音源再生データとして外部出力することなく録音する(S103)。
【0024】
つぎに、ワイヤレス端末3は、チャンネル再生データおよび音源再生データと、指定チャンネルと、を含む測定データを生成する(S104)。それから、マルチチャンネルオーディオ装置1に測定データを送信する(S105)。
【0025】
マルチチャンネルオーディオ装置1は、ワイヤレス端末3から測定データを受信すると、この測定データに含まれているチャンネル再生データおよび音源再生データに基づいて、この測定データに含まれている指定チャンネルの音響プロファイル情報を生成する(S106)。具体的には、チャンネル再生データおよび音源再生データを比較して、音源再生データに対するチャンネル再生データの遅延時間および減衰率を測定し、この測定結果に基づき、出力タイミングおよび音量レベルを含む指定チャンネルの音響プロファイル情報を生成する。
【0026】
それから、マルチチャンネルオーディオ装置1は、以上のようにして生成された指定チャンネルの音響プロファイル情報を、この指定チャンネルのオーディオ再生信号の出力条件に設定する(S107)。
【0027】
そして、S100~S107に示す処理を、マルチチャンネルオーディオ装置1が再生するマルチチャンネルオーディオ信号のすべてのチャンネルに対して繰り返す(S108)。これにより、マルチチャンネルオーディオ信号のチャンネル毎に、このチャンネルに対応するスピーカ2から出力されるオーディオ再生信号の音響特性がマルチチャンネルオーディオ装置1のリスニングポイントで最適となるように、音響プロファイル情報がこのチャンネルのオーディオ再生信号の出力条件として設定される。
【0028】
図3は、マルチチャンネルオーディオシステムのノイズキャンセル動作を説明するためのシーケンス図である。
【0029】
なお、このシーケンス図は、
図2に示す音響プロファイル情報設定動作が実行済みであることを前提としている。
【0030】
まず、ワイヤレス端末3は、楽曲の指定を伴う再生操作をユーザより受け付けると(S110)、この楽曲の指定を伴う再生指示をマルチチャンネルオーディオ装置1に送信する(S111)。
【0031】
これを受けて、マルチチャンネルオーディオ装置1は、アクセスポイント6およびネットワーク5を介してメディアサーバ4にアクセスし、再生指示で指定された楽曲のマルチチャンネルオーディオ信号をダウンロードする(S112)。そして、このマルチチャンネルオーディオ信号の再生出力を開始する(S113)。具体的には、メディアサーバ4からダウンロードした5.1chのマルチチャンネルオーディオ信号を、FRチャンネル、FLチャンネル、Cチャンネル、SRチャンネル、SLチャンネル、およびSWチャンネルのオーディオ再生信号に再生し、各チャンネルのオーディオ再生信号を、各チャンネルに設定された音響プロファイル情報に従って出力タイミングおよび音量レベルを調整して、各チャンネルのスピーカ2-1~2-6から出力する。
【0032】
つぎに、ワイヤレス端末3は、ユーザよりノイズキャンセル操作を受け付けると(S114)、ノイズキャンセル指示をマルチチャンネルオーディオ装置1に送信する(S115)。これを受けて、マルチチャンネルオーディオ装置1は、自身に接続されたスピーカ2-1~2-6のなかから、ノイズキャンセル信号出力先となるスピーカ2を決定する(S116)。具体的には、音響プロファイル情報に含まれている出力タイミングが最も遅いチャンネルに対応するスピーカ2、つまりマルチチャンネルオーディオ装置1のリスニングポイントに最も近いスピーカ2を、ノイズキャンセル信号出力先に決定する。
【0033】
つぎに、ワイヤレス端末3は、マルチチャンネルオーディオ装置1のリスニングポイントにおける環境音の集音を開始して(S117)、その集音信号のマルチチャンネルオーディオ装置1への送信(フィードバック)を開始する(S118、S119)。
【0034】
マルチチャンネルオーディオ装置1は、ワイヤレス端末3から逐次送られてくる集音信号と、スピーカ2-1~2-6から逐次出力されるFRチャンネル、FLチャンネル、Cチャンネル、SRチャンネル、SLチャンネル、およびSWチャンネルのオーディオ再生信号と、の差分をノイズ成分として特定し、特定したノイズ成分の逆位相のノイズキャンセル信号を生成して、ノイズキャンセル信号出力先に決定されたスピーカ2から逐次出力する処理を開始する(S120)。これにより、マルチチャンネルオーディオ装置1のリスニングポイントにおいて、マルチチャンネルオーディオ装置1から出力されるオーディオ再生信号以外の雑音がノイズキャンセル信号によって打ち消される。
【0035】
つぎに、本実施の形態に係るマルチチャンネルオーディオシステムを構成するマルチチャンネルオーディオ装置1およびワイヤレス端末3の詳細について説明する。
【0036】
まず、マルチチャンネルオーディオ装置1の詳細について説明する。
【0037】
図4は、マルチチャンネルオーディオ装置1の概略機能構成図である。
【0038】
図示するように、マルチチャンネルオーディオ装置1は、無線ネットワークインターフェース部100と、スピーカ接続部101と、楽曲取得部102と、コンテンツ記憶部103と、テスト信号音源記憶部104と、音響プロファイル情報記憶部105と、オーディオ再生部106と、指示受信部107と、集音信号受信部108と、ノイズ成分特定部109と、ノイズキャンセル信号生成部110と、ノイズキャンセル信号出力部111と、測定データ受信部112と、測定部113と、音響プロファイル情報生成部114と、主制御部115と、を有する。
【0039】
無線ネットワークインターフェース部100は、アクセスポイント6に無線接続するためのインターフェースである。
【0040】
スピーカ接続部101は、図示していないが、チャンネル毎に該当チャンネルに対応するスピーカ2を接続するための接続端子を有する。本実施の形態では、FRチャンネル対応のスピーカ2-1を接続するためのFRチャンネル接続端子と、FLチャンネル対応のスピーカ2-2を接続するためのFLチャンネル接続端子と、Cチャンネル対応のスピーカ2-3を接続するためのCチャンネル接続端子と、SRチャンネル対応のスピーカ2-4を接続するためのSRチャンネル接続端子と、SLチャンネル対応のスピーカ2-5を接続するためのSLチャンネル接続端子と、SWチャンネル対応のスピーカ2-6を接続するためのSWチャンネル接続端子と、を有している。
【0041】
楽曲取得部102は、無線ネットワークインターフェース部100を介してメディアサーバ4にアクセスし、メディアサーバ4から楽曲のマルチチャンネルオーディオ信号をダウンロードする。
【0042】
コンテンツ記憶部103には、メディアサーバ4からダウンロードした楽曲のマルチチャンネルオーディオ信号が記憶される。
【0043】
テスト信号音源記憶部104には、テスト信号の音源が記憶されている。
【0044】
音響プロファイル情報記憶部105には、マルチチャンネルオーディオ信号のチャンネル毎に、音響プロファイル情報生成部114により生成された音響プロファイル情報が記憶される。本実施の形態では、FRチャンネル、FLチャンネル、Cチャンネル、SRチャンネル、SLチャンネル、およびSWチャンネルの音響プロファイル情報がそれぞれ記憶される。
【0045】
オーディオ再生部106は、コンテンツ記憶部103に記憶されているマルチチャンネルオーディオ信号から複数チャンネル(本実施の形態では、FRチャンネル、FLチャンネル、Cチャンネル、SRチャンネル、SLチャンネル、およびSWチャンネル)のオーディオ再生信号を再生する。そして、チャンネル毎に、音響プロファイル情報記憶部105に記憶されている音響プロファイル情報に従って、オーディオ再生信号の出力タイミングおよび音量レベルを調整し、スピーカ接続部101を介して対応するスピーカ2からオーディオ再生信号を出力する。また、テスト信号音源記憶部104に記憶されているテスト信号の音源を再生して、スピーカ接続部101を介して、主制御部115により指定されたスピーカ2からその再生信号を出力する。
【0046】
指示受信部107は、無線ネットワークインターフェース部100を介してワイヤレス端末3から各種指示を受信する。
【0047】
集音信号受信部108は、無線ネットワークインターフェース部100を介してワイヤレス端末3から、マルチチャンネルオーディオ装置1のリスニングポイントにおける環境音の集音信号を受信する。
【0048】
ノイズ成分特定部109は、集音信号受信部108により受信された集音信号と、オーディオ再生部106により再生され、音響プロファイル情報に従って出力タイミングおよび音量レベルが調整された各チャンネルのオーディオ再生信号と、の差分をノイズ成分として特定する。
【0049】
ノイズキャンセル信号生成部110は、ノイズ成分特定部109により特定されたノイズ成分と逆位相のノイズキャンセル信号を生成する。
【0050】
ノイズキャンセル信号出力部111は、ノイズキャンセル信号生成部110により生成されたノイズキャンセル信号を、スピーカ接続部101を介して、主制御部115により指定されたスピーカ2から出力する。
【0051】
測定データ受信部112は、無線ネットワークインターフェース部100を介してワイヤレス端末3から測定データを受信する。
【0052】
測定部113は、測定データ受信部112により受信された測定データに含まれているチャンネル再生データおよび音源再生データを比較して、この測定データに含まれている指定チャンネルの音源再生データに対するチャンネル再生データの遅延時間および減衰率を測定する。
【0053】
音響プロファイル情報生成部114は、測定部113による測定結果(指定チャンネルの音源再生データに対するチャンネル再生データの遅延時間および減衰率)に基づいて、出力タイミングおよび音量レベルを含む指定チャンネルの音響プロファイル情報を生成する。
【0054】
そして、主制御部115は、マルチチャンネルオーディオ装置1の各部100~114を統括的に制御する。
【0055】
なお、
図4に示すマルチチャンネルオーディオ装置1の機能構成は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積ロジックICによりハード的に実現されるものでもよいし、あるいはDSP(Digital Signal Processor)等の計算機によりソフトウエア的に実現されるものでもよい。または、CPUと、メモリと、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置と、無線LANアダプタ等の無線通信装置と、を備えたPC等の汎用コンピュータにおいて、CPUが所定のプログラムを補助記憶装置からメモリ上にロードして実行することにより実現されるものでもよい。
【0056】
図5は、マルチチャンネルオーディオ装置1の音響プロファイル情報設定処理を説明するためのフロー図である。
【0057】
指示受信部107は、無線ネットワークインターフェース部100を介してワイヤレス端末3からテスト信号再生指示を受信すると(S200でYES)、このテスト信号再生指示を主制御部115に渡す。これを受けて、主制御部115は、テスト信号音源記憶部104からテスト信号の音源を読み出して、オーディオ再生部106に、このテスト信号の音源を、テスト信号再生指示に含まれている指定チャンネルとともに渡す。そして、オーディオ再生部106は、主制御部115より受け取ったテスト信号の音源を再生し、その再生信号を、スピーカ接続部101を介して、主制御部115より受け取った指定チャンネルのスピーカ2から出力する(S201)。
【0058】
つぎに、測定データ受信部112は、無線ネットワークインターフェース部100を介してワイヤレス端末3から測定データを受信すると(S202)、この測定データを主制御部115に渡す。そして、主制御部115は、測定データ受信部112から受け取った測定データを測定部113に渡す。これを受けて、測定部113は、主制御部115より受け取った測定データに含まれているチャンネル再生データおよび音源再生データを比較して、この測定データに含まれている指定チャンネルの音源再生データに対するチャンネル再生データの遅延時間および減衰率を測定する(S203)。
【0059】
つぎに、音響プロファイル情報生成部114は、測定部113による測定結果(指定チャンネルの音源再生データに対するチャンネル再生データの遅延時間および減衰率)に基づいて、再生タイミングおよび音量レベルを含む指定チャンネルの音響プロファイル情報を生成する(S204)。具体的には、標準再生タイミングに対して遅延時間だけ早く再生を開始するように、すなわち、チャンネル再生データにおけるテスト信号の開始タイミングが音源再生データにおけるテスト信号の開始タイミングと一致するように、指定チャンネルの再生タイミングを決定する。また、指定チャンネルのチャンネル再生データの、音源再生データに対する減衰率が「1」となるように、すなわち、チャンネル再生データにおけるテスト信号の振幅が音源再生データにおけるテスト信号の振幅と一致するように、指定チャンネルの音量レベルを決定する。
【0060】
つぎに、主制御部115は、音響プロファイル情報生成部114により生成された指定チャンネルの音響プロファイル情報を、この指定チャンネルに紐付けて音響プロファイル情報記憶部105に記憶することにより、この音響プロファイル情報をこの指定チャンネルのオーディオ再生信号の出力条件として設定する(S205)。
【0061】
図6は、マルチチャンネルオーディオ装置1のノイズキャンセル処理を説明するためのフロー図である。
【0062】
なお、このフローは、オーディオ再生部106がマルチチャンネルオーディオ信号を再生出力中に、ワイヤレス端末3からノイズキャンセル指示を受信することにより開始される。
【0063】
まず、主制御部115は、音響プロファイル情報記憶部105に記憶されている各チャンネルの音響プロファイル情報に基づいて、ノイズキャンセル信号出力先となるスピーカ2を決定する(S210)。具体的には、最も遅い出力タイミングを含む音響プロファイル情報に紐付けられたチャンネルに対応するスピーカ2、つまりマルチチャンネルオーディオ装置1のリスニングポイントに最も近いスピーカ2をノイズキャンセル信号出力先に決定する。なお、音響プロファイル情報記憶部105に各チャンネルの音響プロファイル情報が記憶されていない場合は、予め定められたスピーカ2をノイズキャンセル信号出力先に決定してもよい。そして、ノイズキャンセル信号出力先に決定されたスピーカ2をノイズキャンセル信号出力部111に通知する。
【0064】
つぎに、集音信号受信部108は、無線ネットワークインターフェース部100を介してワイヤレス端末3から送られてくる集音信号の受信を開始する(S211)。そして、主制御部115は、集音信号受信部108により逐次受信された集音信号と、オーディオ再生部106により再生され、音響プロファイル情報に従って出力タイミングおよび音量レベルが調整された各チャンネルのオーディオ再生信号と、をノイズ成分特定部109に逐次出力する。これを受けて、ノイズ成分特定部109は、主制御部115から逐次入力される集音信号と各チャンネルのオーディオ再生信号との差分をノイズ成分として特定し、ノイズキャンセル信号生成部110は、ノイズ成分特定部109により特定されたノイズ成分と逆位相のノイズキャンセル信号の生成を開始する(S212)。
【0065】
つぎに、主制御部115は、ノイズキャンセル信号生成部110により生成されたノイズキャンセル信号の、ノイズキャンセル信号出力部111への送信を開始する。これを受けて、ノイズキャンセル信号出力部111は、スピーカ接続部101を介してノイズキャンセル信号出力先のスピーカ2に、このスピーカ2から出力されるオーディオ再生信号に重畳させて、主制御部115から逐次入力されるノイズキャンセル信号の出力を開始する(S213)。
【0066】
つぎに、ワイヤレス端末3の詳細について説明する。
【0067】
【0068】
図示するように、ワイヤレス端末3は、無線ネットワークインターフェース部300と、マンマシンインターフェース部301と、集音部302と、集音信号送信部303と、テスト信号音源記憶部304と、チャンネル再生データ録音部305と、音源再生データ録音部306と、測定データ送信部307と、主制御部308と、を有する。
【0069】
無線ネットワークインターフェース部300は、アクセスポイント6に無線接続するためのインターフェースである。
【0070】
マンマシンインターフェース部301は、ユーザに情報を表示したり、ユーザから各種操作を受け付けたりするためのインターフェースであり、タッチパネル等の入出力装置を有している。
【0071】
集音部302は、自ワイヤレス端末3の内蔵マイクあるいは自ワイヤレス端末3に接続されたマイクを介して、自ワイヤレス端末3周辺の環境音を集音する。
【0072】
集音信号送信部303は、無線ネットワークインターフェース部300を介してマルチチャンネルオーディオ装置1に、集音部302により集音された自ワイヤレス端末3周辺の環境音の集音信号を送信する。
【0073】
テスト信号音源記憶部304には、マルチチャンネルオーディオ装置1から出力されるテスト信号の音源と同じものが記憶されている。
【0074】
チャンネル再生データ録音部305は、マルチチャンネルオーディオ装置1のいずれかのスピーカ2から出力され、集音部302により集音されたテスト信号を、このスピーカ2に対応するチャンネルのチャンネル再生データとして録音する。
【0075】
音源再生データ録音部306は、チャンネル再生データ録音部305による録音開始に同期して、テスト信号音源記憶部304に記憶されているテスト信号の音源を再生し、その再生データを音源再生データとして録音する。
【0076】
測定データ送信部307は、チャンネル再生データ録音部305により録音されたチャンネル再生データ、音源再生データ録音部306により録音された音源再生データ、および指定チャンネルを含む測定データを生成して、この測定データを、無線ネットワークインターフェース部300を介してマルチチャンネルオーディオ装置1に送信する。
【0077】
そして、主制御部308は、ワイヤレス端末3の各部300~307を統括的に制御する。
【0078】
なお、
図7に示すワイヤレス端末3の機能構成は、CPUと、メモリと、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、無線LANアダプタ等の無線通信装置と、マイクと、スピーカと、を備えたスマートホン、タブレットPC、スマートスピーカ等の携帯型コンピュータにおいて、CPUが所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0079】
図8は、ワイヤレス端末3の音響プロファイル情報設定処理を説明するためのフロー図である。
【0080】
このフローは、マンマシンインターフェース部301が、指定チャンネルを伴うテスト信号再生操作をユーザから受け付けることにより開始される。
【0081】
まず、主制御部308は、無線ネットワークインターフェース部300を介してマルチチャンネルオーディオ装置1に、テスト信号再生操作で受け付けた指定チャンネルを含むテスト信号再生指示を送信する(S300)。
【0082】
つぎに、主制御部308は、集音部302による集音を開始してチャンネル再生データ録音部305に録音を指示するとともに、音源再生データ録音部306に再生・録音を指示する。これを受けて、チャンネル再生データ録音部305は、マルチチャンネルオーディオ装置1の指定チャンネルに対応するスピーカ2から出力され、集音部302により集音されたテスト信号をチャンネル再生データとして録音する(S301)。また、音源再生データ録音部306は、チャンネル再生データ録音部305による録音開始に同期して、テスト信号音源記憶部304に記憶されているテスト信号の音源を再生し、その再生データを音源再生データとして録音する(S302)。
【0083】
つぎに、主制御部308は、チャンネル再生データ録音部305により録音されたチャンネル再生データおよび音源再生データ録音部306により録音された音源再生データを、指定チャンネルとともに測定データ送信部307に渡す。これを受けて、測定データ送信部307は、チャンネル再生データ、音源再生データ、および指定チャンネルを含む測定データを生成する(S303)。そして、この測定データを、無線ネットワークインターフェース部300を介してマルチチャンネルオーディオ装置1に送信する(S304)。
【0084】
図9は、ワイヤレス端末3のノイズキャンセル処理を説明するためのフロー図である。
【0085】
なお、このフローは、マルチチャンネルオーディオ装置1がマルチチャンネルオーディオ信号を再生出力中に、マンマシンインターフェース部301がユーザからノイズキャンセル操作を受け付けることにより開始される。
【0086】
まず、主制御部308は、無線ネットワークインターフェース部300を介してマルチチャンネルオーディオ装置1にノイズキャンセル指示を送信する(S310)。それから、主制御部308は、集音部302に集音開始を指示する。これを受けて、集音部302は、自ワイヤレス端末3が配置された、マルチチャンネルオーディオ装置1のリスニングポイントにおける環境音の集音を開始する(S311)。
【0087】
つぎに、主制御部308は、集音部302で集音された環境音の集音信号を集音信号送信部303に逐次出力する。これを受けて、集音信号送信部303は、無線ネットワークインターフェース部300を介してマルチチャンネルオーディオ装置1に、主制御部308から逐次入力される集音信号の送信を開始する(S312)。
【0088】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0089】
本実施の形態では、マルチチャンネルオーディオ装置1がチャンネル毎に対応するスピーカ2から出力したオーディオ再生信号を、マルチチャンネルオーディオ装置1のリスニングポイントに配置されたワイヤレス端末3で集音して、その集音信号をマルチチャンネルオーディオ装置1にフィードバックし、マルチチャンネルオーディオ装置1は、ワイヤレス端末3からフィードバックされた集音信号とスピーカ2-1~2-6から出力した各チャンネルのオーディオ再生信号との差分をノイズ成分として特定して、このノイズ成分と逆位相のノイズキャンセル信号をいずれかのスピーカ2から出力する。したがって、雑音のある環境下においても、この雑音をキャンセルしてマルチチャンネルでオーディオコンテンツを快適に楽しむことができる。
【0090】
また、本実施の形態では、録音再生機能を備えたスマートホン、タブレットPC、スマートスピーカ等のワイヤレス端末3を音響プロファイル情報生成用の測定マイクとして用いるので、マルチチャンネルオーディオ装置1に専用の測定マイクを付属させる必要がない。また、ユーザは、ワイヤレス端末3をマルチチャンネルオーディオ装置1のリスニングポイントに配置すればよく、ワイヤレス端末3とマルチチャンネルオーディオ装置1との間をコードで接続する必要がない。したがって、コストを増大させることなく、かつ簡単な操作で、各チャンネルの音響プロファイル情報を生成することができる。
【0091】
また、本実施の形態では、最も遅い出力タイミングを含む音響プロファイル情報に紐付けられたチャンネルに対応するスピーカ2、つまりマルチチャンネルオーディオ装置1のリスニングポイントに最も近いスピーカ2をノイズキャンセル信号出力先に決定するので、ノイズキャンセル信号出力先のスピーカ2から出力されたノイズキャンセル信号がマルチチャンネルオーディオ装置1のリスニングポイントに到達するまでの遅延時間を短くすることができ、これにより、マルチチャンネルオーディオ装置1のリスニングポイントにおける雑音との位相ずれを小さくして雑音をより効果的に打ち消すことができる。
【0092】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0093】
例えば、上記の実施の形態において、ノイズキャンセル信号出力先のスピーカ2をユーザの指示により切り換え可能としてもよい。すなわち、ワイヤレス端末3は、ユーザから受け付けたノイズキャンセル信号出力先の切換操作に従い、マルチチャンネルオーディオ装置1にノイズキャンセル信号出力先の切換信号を送信し、これを受けて、マルチチャンネルオーディオ装置1は、ノイズキャンセル信号出力先のスピーカ2を所定の順番で切り換える。あるいは、マルチチャンネルオーディオ装置1にノイズキャンセル信号出力先の切換ボタンを設け、マルチチャンネルオーディオ装置1は、ユーザによる切換ボタンの操作に従って、ノイズキャンセル信号出力先のスピーカ2を所定の順番で切り換える。
【0094】
また、上記の実施の形態では、マルチチャンネルオーディオ装置1に接続されたスピーカ2-1~2-6のなかからノイズキャンセル信号出力先を決定しているが、本発明はこれに限定されない。ワイヤレス端末3がスピーカを備えているならば、ワイヤレス端末3をノイズキャンセル信号出力先としてもよい。この場合、マルチチャンネルオーディオ装置1は、ワイヤレス端末3にノイズキャンセル信号を送信し、ワイヤレス端末3は、マルチチャンネルオーディオ装置1から受信したノイズキャンセル信号をスピーカから出力する。
【0095】
また、上記の実施の形態では、マルチチャンネルオーディオ装置1をリモート操作するためのコントローラとしての機能をワイヤレス端末3に持たせているが、本発明はこれに限定されない。ワイヤレス端末3とは別に専用のコントローラを設けてもよい。すなわち、コントローラがユーザから各種操作を受け付けてマルチチャンネルオーディオ装置1に各種指示を送信する。そして、マルチチャンネルオーディオ装置1は、コントローラからテスト信号再生指示を受信すると、このテスト信号再生指示をワイヤレス端末3に送信して、
図5に示す音響プロファイル情報設定処理を開始する。これを受けて、ワイヤレス端末3は、
図8に示す音響プロファイル情報設定処理のS301以降を実施する。また、マルチチャンネルオーディオ装置1は、コントローラからノイズキャンセル指示を受信すると、このノイズキャンセル指示をワイヤレス端末3に送信して、
図6に示すノイズキャンセル処理を開始する。これを受けて、ワイヤレス端末3は、
図9に示すノイズキャンセル処理のS311以降を実施する。
【0096】
また、上記の実施の形態では、マルチチャンネルオーディオ装置1およびワイヤレス端末3間の通信をアクセスポイント6経由で行っているが、本発明はこれに限定されない。Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信により、マルチチャンネルオーディオ装置1およびワイヤレス端末3間において直接無線通信を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1:マルチチャンネルオーディオ装置 2-1~2-6:スピーカ
3:ワイヤレス端末 4:メディアサーバ 5:ネットワーク
6:アクセスポイント 100:無線ネットワークインターフェース部
101:スピーカ接続部 102:楽曲取得部 103:コンテンツ記憶部
104:テスト信号音源記憶部 105:音響プロファイル情報記憶部
106:オーディオ再生部 107:指示受信部 108:集音信号受信部
109:ノイズ成分特定部 110:ノイズキャンセル信号生成部
111:ノイズキャンセル信号出力部 112:測定データ受信部
113:測定部 114:音響プロファイル情報生成部 115:主制御部
300:無線ネットワークインターフェース部
301:マンマシンインターフェース部 302:集音部
303:集音信号送信部 304:テスト信号音源記憶部
305:チャンネル再生データ録音部 306:音源再生データ録音部
307:測定データ送信部 308:主制御部