(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】防音壁の頂部構造及び防音壁
(51)【国際特許分類】
E01F 8/00 20060101AFI20240328BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
E01F8/00
G10K11/16 130
(21)【出願番号】P 2020060749
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】日鉄神鋼建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 充明
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀成
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-213753(JP,A)
【文献】実開昭52-007907(JP,U)
【文献】特開2000-248516(JP,A)
【文献】特開平09-264010(JP,A)
【文献】特開2017-115570(JP,A)
【文献】特開2003-147731(JP,A)
【文献】特開2016-108930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 8/00
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音源からの騒音を減音する防音壁の頂部構造であって、
支柱間に取り付けられて上下方向に延びる遮音パネルと、前記遮音パネルから騒音源側に斜め上方に延びる分岐パネルと、を備え、
前記分岐パネルの下面側に吸音部材が金属筐体に収容されてボルト接合、嵌合、又は係合されることで脱着可能に取り付けられていること
を特徴とする防音壁の頂部構造。
【請求項2】
騒音源からの騒音を減音する防音壁の頂部構造であって、
支柱間に取り付けられて上下方向に延びる遮音パネルと、前記遮音パネルから騒音源側に斜め上方に延びる分岐パネルと、を備え、
前記分岐パネルから斜め下方に延びる再分岐パネルがさらに設けられて
おり、
前記再分岐パネルの下面側に吸音部材が金属筐体に収容されてボルト接合、嵌合、又は係合されることで脱着可能に取り付けられていること
を特徴とする防音壁の頂部構造。
【請求項3】
前記分岐パネルの下面及び前記再分岐パネルの両面に、吸音部材が取り付けられていること
を特徴とする請求項2に記載の防音壁の頂部構造。
【請求項4】
前記分岐パネルと前記遮音パネルとの間に溜まる降水を排水する排水機構が設けられていること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の防音壁の頂部構造。
【請求項5】
前記排水機構は、前記分岐パネルに穿設された排水孔であること
を特徴とする請求項4に記載の防音壁の頂部構造。
【請求項6】
前記排水機構は、前記分岐パネルと前記遮音パネルとの間の側面を塞ぐ側面パネルに設けられた排水スリットであること
を特徴とする請求項4に記載の防音壁の頂部構造。
【請求項7】
前記遮音パネルの上部の騒音源反対側に吸音部材が設けられていること
を特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の防音壁の頂部構造。
【請求項8】
前記遮音パネルの上部には、水平方向に延びる水平板が設けられ、前記水平板の先端には、下方へ折り返す折返し片が形成されていること
を特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の防音壁の頂部構造。
【請求項9】
騒音源からの騒音の伝播を防止する防音壁であって、
請求項1ないし8のいずれかに記載の防音壁の頂部構造を備えること
を特徴とする防音壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音源からの騒音を減音する防音壁の頂部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路などの道路沿いや軌道沿いに設置されて騒音源からの騒音の伝播を防止するために防音壁が設置されている。このような防音壁には、高さを上げることなく騒音を低減できることが求められている。このため、近年、防音壁の頂部構造を改良して、騒音源からの直接音と回折音や反射音を干渉させて騒音を減音する防音壁の頂部構造が提案されるに至った。
【0003】
例えば、特許文献1には、本体壁1の上端に音源側へ傾斜する第1の分岐壁2を設けるとともに、音源側とは反対の側へ傾斜する第2の分岐壁3を設け、これら第1及び第2の分岐壁の少なくとも一方の分岐壁2にはこの分岐壁2とは異なる方向に再分岐する再分岐壁4を設けてあるいわゆるY型防音壁が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0012],[0013]、図面の
図1~
図3等参照)。
【0004】
また、特許文献2には、ほぼ垂直に立上った本体壁1の上部に第1の吸音ユニット2を設けるとともに、本体壁1の反音源側の側面から反音源側へ延出するとともに先端側が上方に延出した張出部4,5の上部に第2の吸音ユニット3を設けたいわゆるY型防音壁が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0011],[0012]、図面の
図1等参照)。
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載のY型防音壁は、騒音源の反対側となる背面側に防音壁の分岐壁が突出するものである。道路や線路の敷地外となる民地側には、越境することが許されないため、特許文献1及び特許文献2に記載のY型防音壁は、通常の防音壁より敷地内に側に設置する必要があり、スペースを有効に活用することができないという問題があった。
【0006】
また、特許文献1及び特許文献2に記載のY型防音壁は、多重回折による減衰効果による減音効果はあるものの、上方が開放された複数のY字状の分岐があるため、そこに降水や落ち葉や砂などの飛来物が溜まってしまい、定期的に清掃して除去しなければならないという問題があった。つまり、特許文献1及び特許文献2に記載のY型防音壁は、清掃などのメンテナンス作業が頻繁に必要であり、メンテナンス性が悪いという問題があった。
【0007】
また、特許文献3には、出願人が提案した支柱3間に取り付けられる背面板9と、その背面板9上端に接合された騒音発生源側へ略水平方向に延びる水平板10と、背面板9上部に継ぎ板11を介して接合された騒音発生源側へ斜め上方に延びる傾斜板12とからなり、水平板10の先端と傾斜板12の上端との間に騒音導入部13が形成されている頂部回折型遮音壁が開示されている(特許文献3の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0021]~[0031]、図面の
図2,
図3等参照)。
【0008】
特許文献3に記載の頂部回折型遮音壁は、いわゆる変形Y型で外側(背面側)に突出する部分がなく隣地境界を侵さないという利点がある。また、特許文献3に記載の頂部回折型遮音壁は、上方が開放された斜め上方に張り出した変形Y字状の分岐が1か所であり、メンテナンス性もそこまで悪いとは言えない。しかし、遮音壁としては、さらなるメンテナンス性の向上や高さを上げることなく騒音低減効果を向上することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平8-85921号公報
【文献】特開平10-292322号公報
【文献】特開2005-213753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、メンテナンス性が良好で高さを上げることなく騒音低減効率に優れ、隣地境界を越境するおそれがない防音壁の頂部構造及び防音壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る防音壁の頂部構造は、騒音源からの騒音を減音する防音壁の頂部構造であって、支柱間に取り付けられて上下方向に延びる遮音パネルと、前記遮音パネルから騒音源側に斜め上方に延びる分岐パネルと、を備え、前記分岐パネルの下面側に吸音部材が金属筐体に収容されてボルト接合、嵌合、又は係合されることで脱着可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る防音壁の頂部構造は、騒音源からの騒音を減音する防音壁の頂部構造であって、支柱間に取り付けられて上下方向に延びる遮音パネルと、前記遮音パネルから騒音源側に斜め上方に延びる分岐パネルと、を備え、前記分岐パネルから斜め下方に延びる再分岐パネルがさらに設けられており、前記再分岐パネルの下面側に吸音部材が金属筐体に収容されてボルト接合、嵌合、又は係合されることで脱着可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る防音壁の頂部構造は、第2発明において、前記分岐パネルの下面及び前記再分岐パネルの両面に、吸音部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る防音壁の頂部構造は、第1発明ないし第3発明のいずれかの発明において、前記分岐パネルと前記遮音パネルとの間に溜まる降水を排水する排水機構が設けられていることを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る防音壁の頂部構造は、第4発明において、前記排水機構は、前記分岐パネルに穿設された排水孔であることを特徴とする。
【0016】
第6発明に係る防音壁の頂部構造は、第4発明において、前記排水機構は、前記分岐パネルと前記遮音パネルとの間の側面を塞ぐ側面パネルに設けられた排水スリットであることを特徴とする。
【0017】
第7発明に係る防音壁の頂部構造は、第1発明ないし第6発明のいずれかの発明において、前記遮音パネルの上部の騒音源反対側に吸音部材が設けられていることを特徴とする。
【0018】
第8発明に係る防音壁の頂部構造は、第1発明ないし第7発明のいずれかの発明において、前記遮音パネルの上部には、水平方向に延びる水平板が設けられ、前記水平板の先端には、下方へ折り返す折返し片が形成されていることを特徴とする。
【0019】
第9発明に係る遮音壁は、騒音源からの騒音の伝播を防止する防音壁であって、請求項1ないし8のいずれかに記載の防音壁の頂部構造を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1発明によれば、上方に開放されたY字状の部分が少なく、飛来物が溜まるおそれが少なく頻繁に清掃等を行う必要がないためメンテナンス性が良好である。つまり、飛来物が溜まる恐れのある箇所が大きく開口した1カ所であり、点検箇所が少なく、且つ、清掃が容易であることからメンテナンス性が良好である。
また、第1発明によれば、吸音部材が取り付けられているので、防音壁の先端での音響パワーを減少することができ、さらに騒音を低減することが可能となる。また、分岐パネルの下面側に吸音部材が取り付けられているので、飛来物・粉塵が溜まりにくく目詰まりすることが無い。その上、分岐パネルの下面側に吸音部材が取り付けられているので、直射日光が吸音材に当たることがないだけでなく、水はけが良好なため吸音材が劣化し難く耐久性が向上する。さらに、吸音部材が着脱可能に構成されているので、改修作業の際に吸音部材を取り外すことができ、さらにメンテナンス性が良好である。
それに加え、第1発明によれば、騒音源と反対側に突出する部分がないため、隣地境界を越境することなく防音壁を境界いっぱいまで接近して設置することができ、スペースを有効に使用することができる。
【0021】
第2発明~第9発明によれば、上方に開放されたY字状の部分が少なく、飛来物が溜まるおそれが少なく頻繁に清掃等を行う必要がないためメンテナンス性が良好である。つまり、飛来物が溜まる恐れのある箇所が大きく開口した1カ所であり、点検箇所が少なく、且つ、清掃が容易であることからメンテナンス性が良好である。
また、第2発明~第9発明によれば、従来の変形Y型防音壁より分岐点が多いため多重回折による減衰効果で高さを上げることなくさらに騒音低減効率が向上する。
その上、第2発明~第9発明によれば、騒音源と反対側に突出する部分がないため、隣地境界を越境することなく防音壁を境界いっぱいまで接近して設置することができ、スペースを有効に使用することができる。
【0022】
特に、第3発明によれば、メンテナンス性を低下させることなく分岐パネルの下面に設けられた吸音部材で騒音源からの騒音の直接音を吸音することができるので、さらに騒音低減効率が向上する。
【0023】
特に、第4発明~第6発明によれば、分岐パネルと遮音パネルとの間に排水機構が設けられているので、雨や雪などの降水がパネルの分岐部分に溜まることを防止することができる。
【0024】
特に、第7発明によれば、遮音パネルの上部の騒音源反対側に吸音部材が設けられているので、遮音パネルの上部を超えて回り込んで近隣周辺に伝播する騒音を効果的に吸音して騒音を低減することができる。
【0025】
特に、第8発明によれば、水平板と折返し片により干渉する周波数帯を調整することができ、音源の特性に合わせた騒音低減が可能となる。
【0026】
特に、第9発明によれば、前記作用効果を防音壁として発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る防音壁を騒音源側から見た状態で示す正面図である。
【
図2】
図2は、同上の防音壁の概略構成を示す鉛直断面図である。
【
図3】
図3は、同上の防音壁の吸音パネルを示す鉛直断面図である。
【
図4】
図4は、同上の吸音パネルの支柱への固定方法を示す拡大鉛直断面図である。
【
図5】
図5は、同上の防音壁の頂部構造を示す
図2のA部拡大図である。
【
図6】
図6は、同上の頂部構造の排水機構を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、同上の頂部構造の変形例に係る排水機構を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る防音壁の頂部構造を示す
図5と同様の部分拡大図である。
【
図9】
図9は、同上の防音壁の頂部構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る防音壁及びその頂部構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
[第1実施形態]
先ず、
図1~
図7を用いて、本発明の第1実施形態に係る防音壁1及び防音壁1の頂部構造5について説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態に係る防音壁1を騒音源側から見た状態で示す正面図であり、
図2は、本実施形態に係る防音壁1の概略構成を示す鉛直断面図である。また、
図3は、本実施形態に係る防音壁1の吸音パネル3を示す鉛直断面図である。
【0031】
本発明の実施形態に係る防音壁1は、道路や鉄道、室外機や工場等の施設周辺などの騒音源となる領域に沿って並設される防音壁であり、騒音源からの直接音と回折音や反射音を干渉させて騒音を減音する頂部構造を備えた防音壁である。
【0032】
図1,
図2に示すように、本実施形態に係る防音壁1は、コンクリート構造物などの構造体に所定間隔(例えば、2m又は4m)を置いて立設されたH形鋼からなる複数の支柱2,2と、これらの支柱2,2間に挿置された複数段の吸音パネル3と、この吸音パネル3の上方の防音壁1の最上段に設けられる後述の頂部構造5など、から構成されている。
【0033】
<支柱>
支柱2は、溶融亜鉛めっきなどの防錆処理が施された所定のフランジ間隔(例えば、100mm~175mm程度)のH形鋼からなる。勿論、本発明に係る支柱は、その間に後述の吸音パネル3を挿置することができ、防音壁として想定される風圧等に耐えられるものであれば、角形パイプや溝形鋼、I形鋼など他の鋼材やその他の素材からなる支柱でも代替可能である。
【0034】
<吸音パネル>
図1~
図4に示すように、吸音パネル3は、金属板からなる矩形箱状(例えば、高さ500mm×厚さ95mm×長さ1980mm)の金属筺体30を備え、その金属筺体30の正面側(騒音源側)に吸音材31が挿置され、その背面側(騒音源と離れた反対側)に空気層32が形成された一般的な吸音パネルである。
【0035】
勿論、本発明に係る吸音パネルは、後述の吸音材を挿置した多孔質型吸音タイプのものに限られない。例えば、本発明に係る吸音パネルは、板振動や膜振動をし、音のエネルギの一部を内部摩擦によって消費して吸音する板(膜)振動型吸音タイプ、空洞に孔があいた共鳴器を備え、共鳴周波数の近くで孔の部分の空気が激しく振動し、周辺との摩擦熱として消費して吸音する共鳴器型吸音タイプ、など、他の既知の吸音パネルとすることができる。
【0036】
(金属筺体)
この金属筺体30は、高耐候性めっき鋼板やアルミニウム板などの金属板からなる。また、金属筺体30は、
図1に示すように、金属筺体30の正面板は、ルーバー(ガラリ)形式の開口が形成されたアルミニウム板となっており、このルーバー形式の開口から騒音の直接音を透過し、その直接音を吸音材31で吸音する仕組みとなっている。勿論、この金属筺体は、ルーバー形式のものに限られず、多数の貫通孔が穿設されたパンチングメタル形式のものであっても構わない。
【0037】
(吸音材)
吸音材31は、グラスウールやポリエステル繊維などの繊維材や発泡樹脂などの多孔質材からなり、騒音を吸音材31で乱反射して減衰させて減音する機能を有している。勿論、本発明に係る吸音材は、騒音を乱反射して減衰させて吸音でき、防音壁に挿置可能な所定の撥水性や難燃性がある素材であれば特に限定されるものではない。なお、吸音材31も、前述の吸音パネル3と同様に、板(膜)振動型吸音タイプ、共鳴器型吸音タイプなど、他の既知の吸音タイプの吸音材に代替することが可能である。
【0038】
次に、
図4を用いて、支柱2への吸音パネル3の固定方法について簡単に説明する。
図4は、支柱2への吸音パネル3の固定方法を示す拡大鉛直断面図である。
図4に示すように、本実施形態に係る吸音パネル3は、H形鋼からなる支柱2,2間に挿置され、鋼材の板ばねからなる固定金具M1が差し込まれて支柱2のフランジに押圧固定されている。但し、吸音パネル3の固定方法は、固定金具M1で押圧固定するものに限られず、支柱2にボルトやナットでボルト接合して固定してもよいことは云うまでもない。
【0039】
なお、
図1等に示すように、本実施形態に係る防音壁1として、頂部構造5の下方に、ルーバー(ガラリ)形式の開口が形成された金属筺体30を備えた吸音パネル3が装着された防音壁を例示して説明した。しかし、本発明に係る防音壁は、頂部構造5の下方に、吸音パネル3の代わりに騒音を吸音可能な前述の騒音側の正面板がパンチングパネルのものや、板(膜)振動型吸音タイプ、共鳴器型吸音タイプなどの他の形式の吸音パネルを設置すること、遮音板、透光板を設置すること、又はこれらを組み合わせて併用し設置してもよいことは云うまでもない。
【0040】
<防音壁の頂部構造>
次に、
図5~
図7を用いて、防音壁1の頂部構造5について詳細に説明する。
図5は、防音壁1の頂部構造5を示す
図2のA部拡大図である。また、
図6は、頂部構造5の排水機構6を示す斜視図であり、
図7は、排水機構6の変形例に係る排水機構6’を示す斜視図である。
【0041】
図5に示すように、本発明の第1実施形態に係る防音壁1の頂部構造5は、鉛直断面において、上下方向に鉛直に延びる遮音パネル50と、この遮音パネル50から騒音源側に斜め上方に延びる分岐パネル51と、この分岐パネル51から斜め下方に延びる再分岐パネル52など、から構成されている。遮音パネル50、分岐パネル51、及び再分岐パネル52は、高耐候性めっき鋼板などの防錆処理が施された金属板やアルミニウム板からなる。
【0042】
このように、頂部構造5は、分岐パネル51からさらに再分岐パネル52が突出した構成となっているので、従来の変形Y型防音壁より分岐点が多いため多重回折による減衰効果で高さを上げることなくさらに騒音低減効率が向上する。
【0043】
また、
図5に示すように、分岐パネル51の下面及び再分岐パネル52の両面には、吸音部材53が取り付けられている。この吸音部材53は、前述の吸音材31と同様に、グラスウールやポリエステル繊維などの繊維材や発泡樹脂などの多孔質材からなり、騒音を吸音材で乱反射して減衰させて減音する機能を有している。なお、分岐パネル等に直接吸音材を設置するものを例示したが、吸音材が金属筐体内に設置された前述の吸音パネル3や他の形式の吸音パネルを設置してもよい。なお、この吸音部材53も、前述の吸音パネル3と同様に、板(膜)振動型吸音タイプ、共鳴器型吸音タイプなど、他の既知の吸音タイプの吸音部材とすることができる。
【0044】
このように、分岐パネル51の下面側に騒音源からの直接音を吸音可能な吸音部材53が取り付けられているため、道路や鉄道内の設置物との反射音や騒音発生源である車両と防音壁1との多重反射音を効果的に防止することができる。特に、分岐パネル51の下面側に吸音部材53が設けられているため、近年問題となっている鉄道車両などの車両の下部から発生する騒音を吸音部材53で効果的に吸音することができる。
【0045】
また、頂部構造5は、上方が開放されたY字状の分岐の上面には、落ち葉などの飛来物が引っ掛かり易い繊維材等からなる吸音部材53が取り付けられていないことになる。このため、点検時のメンテナンス作業が容易となる。
【0046】
その上、この吸音部材53は、図示しないパンチングメタルやルーバー形式の金属筺体等に収容され、後付け可能なように分岐パネル51及び再分岐パネル52に対してボルト接合や嵌合又は係合されて固定され、脱着可能に構成されていることが好ましい。脱着可能に構成することで、吸音部材53は、防音壁1が設置されている現地において、取り外しや交換が容易となるからである。また、吸音部材53は、清掃時に、分岐パネル51及び再分岐パネル52から取り外すことができ、メンテナンス性が極めて良好となる。
【0047】
そして、
図5に示すように、頂部構造5の上部となる遮音パネル50の外側(騒音源の反対側)には、前述の吸音パネル3が設置されている。但し、この吸音パネル3は、頂部構造5より下段の吸音パネル3とは相違して、吸音材31が外側に面するように取り付けられている。頂部構造5を超えて回り込んで近隣地域に伝播する騒音を吸音材31で吸音して減音するためである。このため、防音壁1の高さを上げることなくさらに騒音低減効率が向上する。
【0048】
(排水機構)
さらに、防音壁1の頂部構造5には、排水機構6が設けられている。この排水機構6は、分岐パネル51と遮音パネル50との間に溜まる降水を排水する機能を有している。本実施形態に係る頂部構造5では、排水機構6は、
図6に示すように、分岐パネル51と遮音パネル50との間の側面を塞ぐ側面パネル54に形成された排水スリット60となっている。
【0049】
このため、分岐パネル51と遮音パネル50との間に溜まった水は、排水機構6である排水スリット60を通じて防音壁1の支柱2の脇から排水されることとなり、頂部構造5に水が溜まることがなくなり、さらにメンテナンス性が向上する。
【0050】
なお、
図7に示すように、分岐パネル51と遮音パネル50との間の入隅に設けた複数の排水孔61’を設け、それらの排水孔61’,61’の直下に横引きの排水ドレイン62’を設けて、防音壁1の支柱2の脇から排水する変形例に係る排水機構6’とすることもできる。
【0051】
以上説明した本発明の第1実施形態に係る防音壁1及び防音壁1の頂部構造5によれば、飛来物が溜まり易い上方に開放されたY字状の部分が少なく、そこに吸音部材53が装着されていない。そのため、頂部構造5によれば、飛来物が溜まるおそれが少なく頻繁に清掃等を行う必要がないためメンテナンス性が良好である。つまり、飛来物が溜まる恐れのある箇所が大きく開口した1カ所であり、点検箇所が少なく、且つ、清掃が容易であることからメンテナンス性が良好である。
【0052】
また、頂部構造5によれば、吸音部材53が取り付けられているので、防音壁1の先端での音響パワーを減少することができ、さらに騒音を低減することが可能となる。また、分岐パネル51の下面側に吸音部材53が取り付けられているので、飛来物・粉塵が溜まりにくく目詰まりすることが無い。その上、分岐パネルの下面側に吸音部材53が取り付けられているので、直射日光が吸音部材53に当たることがないだけでなく、水はけが良好なため吸音部材53が劣化し難く耐久性が向上する。さらに、吸音部材53が着脱可能に構成されているので、改修作業の際に吸音部材53を取り外すことができ、さらにメンテナンス性が良好である。
【0053】
さらに、頂部構造5によれば、分岐パネル51からさらに再分岐パネル52が突出した構成となっているので、従来の変形Y型防音壁より分岐点が多いため多重回折による減衰効果で高さを上げることなくさらに騒音低減効率が向上する。
【0054】
その上、頂部構造5によれば、隣地境界側となる外側に突出する部分がないため、隣地境界を越境することなく防音壁1を隣地境界いっぱいまで接近して設置することができ、スペースを有効に使用することができる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、
図8,
図9を用いて、本発明の第2実施形態に係る防音壁1’について説明する。第2実施形態に係る防音壁1’が、前述の第1実施形態に係る防音壁1と相違する点は、前述の頂部構造5が頂部構造5’となっている点だけなので、その点について主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
図8は、防音壁1’の頂部構造5’を示す
図6と同様の部分拡大図であり、
図9は、防音壁1’の頂部構造5’を示す斜視図である。
【0056】
図8,
図9に示すように、本発明の第2実施形態に係る防音壁1’の頂部構造5’は、上下方向に鉛直に延びる遮音パネル50’と、この遮音パネル50’から騒音源側に斜め上方に延びる分岐パネル51など、から構成されている。つまり、頂部構造5’には、前述の頂部構造5の再分岐パネル52は設けられていない。但し、遮音パネル50’は、前述の遮音パネル50と相違して、前述の吸音パネル3の金属筺体30の背面板と一体化して兼用されている。勿論、遮音パネル50’は、遮音パネル50’と金属筺体30の背面板とが一体化されたものに限られず、互いに別体で金属筺体30の背面板に沿った形状であっても、前述の遮音パネル50(
図6,
図7等参照)と同様に真っ直ぐに上方に延びる平板状のものであっても構わない。
【0057】
また、この分岐パネル51の下面には、前述の吸音部材53が、分岐パネル51に対してボルト接合や嵌合又は係合されて固定され、着脱可能に取り付けられている。このように、頂部構造5’は、前述の頂部構造5と同様に、分岐パネル51の下面側に騒音源からの直接音を吸音可能な吸音部材53が取り付けられているため、道路や鉄道内の設置物との反射音や騒音発生源である車両と防音壁1’との多重反射音を効果的に防止することができる。
【0058】
また、頂部構造5’も、頂部構造5と同様に、上方が開放されたY字状の分岐の上面には、落ち葉などの飛来物が引っ掛かり易い繊維材等からなる吸音部材53が取り付けられていない。このため、点検時のメンテナンス作業が容易となる。
【0059】
その上、頂部構造5’では、遮音パネル50の上端から水平方向に延びる水平板55’が形成されているとともに、この水平板55’の先端から下方へ折り返す折返し片56’が形成されている。このため、頂部構造5’では、水平板55’及びその折返し片56’により、干渉する周波数帯を調整することができ、音源の特性に合わせた騒音低減が可能となっている。
【0060】
以上説明した本発明の第1実施形態に係る防音壁1’及び防音壁1’の頂部構造5’によれば、防音壁1と同様に、飛来物が溜まり易い上方に開放されたY字状の部分が少ない。そのため、頂部構造5’によれば、飛来物が溜まるおそれが少なく頻繁に清掃等を行う必要がないためメンテナンス性が良好である。
【0061】
また、頂部構造5’によれば、分岐パネル51の下面側に設けられた吸音部材53も着脱可能に構成されているので、メンテナンスの際に吸音材を取り外すことができ、さらにメンテナンス性が良好である。
【0062】
その上、頂部構造5’によれば、隣地境界側となる外側に突出する部分がないため、隣地境界を越境することなく防音壁1’を隣地境界いっぱいまで接近して設置することができ、スペースを有効に使用することができる。
【0063】
それに加え、頂部構造5’によれば、最上部に水平板55’及びその折返し片56’を有しており、これらにより、干渉する周波数帯を調整することができ、音源の特性に合わせた騒音低減が可能となっている。
【0064】
以上、本発明の実施形態に係る防音壁1,1’及びその頂部構造5,5’について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0065】
特に、防音壁として本発明に係る頂部構造の下方に、吸音材を有する吸音パネル3を設置するものを例示したが、本発明に係る防音壁は、本発明に係る頂部構造の下方に、吸音材を設けずに鋼板や透光パネルからなる遮音板や透光板、又はこれらを組み合わせて併用し設置を設けたものであっても構わない。防音壁全体として防音効果が低下するものの、前述の本発明に係る頂部構造の作用効果は達成することができるからである。
【0066】
1,1’:防音壁
2:支柱
3,3’:吸音パネル
30:金属筺体
31:吸音材
32:空気層
5,5’:頂部構造
50,50’:遮音パネル
51:分岐パネル
52:再分岐パネル
53:吸音部材
54:側面パネル
55’:水平板
56’:折返し片
6,6’:排水機構
60:排水スリット
61,61’:排水孔
62’:排水ドレイン
M1:固定金具