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特許7461775高レベル放射性物質処理システム及び高レベル放射性物質処理方法
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  • 特許-高レベル放射性物質処理システム及び高レベル放射性物質処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】高レベル放射性物質処理システム及び高レベル放射性物質処理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/16 20060101AFI20240328BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20240328BHJP
   G21F 9/32 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
G21F9/16 501
G21F9/06 581H
G21F9/32 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020061463
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021162361
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 泰介
(72)【発明者】
【氏名】小川 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 健太
(72)【発明者】
【氏名】島田 隆
(72)【発明者】
【氏名】柿木 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山村 朝雄
(72)【発明者】
【氏名】田端 千紘
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-503058(JP,A)
【文献】特表2014-504359(JP,A)
【文献】特開平11-287883(JP,A)
【文献】国際公開第2012/002456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/62
G21F 9/06
G21C 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を抽出した液体にウランを供給するウラン供給部及び、ウランが供給され、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出した液体を固化して固化体を作成する固化処理部を含む固化装置と、
前記固化装置で生成した前記固化体を焼結し、炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを内部に取り込んだ二酸化ウランの蛍石構造を生成する安定化装置と、を含み
前記固化装置は、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出した液体を加熱して液体成分を除去して固化体を作成する高レベル放射性物質処理システム。
【請求項2】
前記ウラン供給部は、抽出された液体に含まれる前記マイナーアクチノイドと前記ランタノイドとの総モル量の等モル量以上のウランを供給する請求項1に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項3】
有機溶媒の液体を用いて、高レベル放射性物質を含有する液体から前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出し、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを含む有機溶媒を抽出した液体として生成する抽出装置を有し、
前記ウラン供給部は、前記有機溶媒に溶解するウランの錯体を、前記液体に添加する請求項1または請求項2に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項4】
前記固化装置は、熱分解で固化体を作成する請求項3に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項5】
有機溶媒の液体を用いて、高レベル放射性物質を含有する液体から前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出した後、抽出した前記有機溶媒と、液相の逆抽出剤を含んだ希釈液とを混合し、液相の逆抽出剤を含んだ希釈液に前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを移動させた液体を生成する抽出装置を有し、
前記ウラン供給部は、液相に溶解するウランイオンを、前記液体に添加する請求項1または請求項2に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項6】
前記固化装置は、水熱合成で固化体を作成する請求項5に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項7】
マイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を抽出した液体にウランを供給し、ウランが供給され、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出した液体を固化して固化体を作成するステップと、
生成した前記固化体を焼結し、炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを内部に取り込んだ二酸化ウランの蛍石構造を生成するステップと、を含み、
前記固化体を作成するステップは、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを抽出した液体を加熱して液体成分を除去して固化体を作成する
高レベル放射性物質処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高レベル放射性物質処理システム及び高レベル放射性物質処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高レベル放射性廃棄物の処理として、高レベル放射性物質から放射性物質であるマイナーアクチノイドを抽出する方法がある(例えば特許文献1、特許文献2)。また,使用済み燃料を再生可能な形態で貯蔵する処理方法として固体化する方法がある(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-63198号公報
【文献】特開2019-15533号公報
【文献】特許第6037168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高レベル放射性物質からマイナーアクチノイドを抽出することで、抽出したマイナーアクチノイドを高速増殖炉等の燃料として再利用することができる。また、マイナーアクチノイドを除去することで廃棄物の処理負荷を低減することが可能となる。ここで、マイナーアクチノイドを燃料として再利用するためにはマイナーアクチノイドの燃焼技術が必要である。また、再利用の技術が実用化されていない状況では、分離したマイナーアクチノイドを安定に長期保管する必要がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、マイナーアクチノイドをより安定な状態で固体にすることができる高レベル放射性物質処理システム及び高レベル放射性物質処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示は、放射性物質処理装置であって、マイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を抽出した液体にウランを供給するウラン供給部及び、ウランが供給され、マイナーアクチノイド及びランタノイドを抽出した液体を固化して固化体を作成する固化処理部を含む固化装置と、固化装置で生成した固化体を焼結し、マイナーアクチノイド及びランタノイドを内部に取り込んだ二酸化ウランの蛍石構造を生成する安定化装置と、を含む。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示は、高レベル放射性物質処理方法であって、高マイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を抽出した液体にウランを供給し、ウランが供給され、マイナーアクチノイド及びランタノイドを抽出した液体を固化して固化体を作成するステップと、生成した固化体を焼結し、マイナーアクチノイド及びランタノイドを内部に取り込んだ二酸化ウランの蛍石構造を生成するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、マイナーアクチノイドをより安定な状態の固体にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の高レベル放射性物質処理装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、他の実施形態の高レベル放射性物質処理装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示にかかる高レベル放射性物質処理装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本開示の高レベル放射性物質処理装置は、高レベル放射性物質からMA(マイナーアクチノイド)を抽出し、ガラス固化して安定化する。また、高レベル放射性物質処理装置は、高レベル放射性物質にランタノイドが含まれる場合、マイナーアクチノイドとともにランタノイドも抽出する。本開示において、「MA(マイナーアクチノイド)」とは、アクチノイドに属する超ウラン元素のうちPuを除いた元素である。「アクチノイド」とは、原子番号89から103までの元素の総称である。マイナーアクチノイドには、例えば、Np(ネプツニウム)、Am(アメリシウム)、Cm(キュリウム)が含まれる。「Ln(ランタノイド)」とは、原子番号57から71までの元素の総称である。
【0011】
図1は、本実施形態の高レベル放射性物質処理装置の概略構成を示す模式図である。図1に示す高レベル放射性物質処理装置(処理装置)10は、抽出装置12と、固化装置14と、安定化装置16と、保管装置18と、を含む。本実施形態の処理装置は、高レベル放射性物質として、高レベル放射性廃棄物(以下、「HALW」とも記す。)を用いた場合として説明する。廃液は、例えば、軽水炉から排出される使用済み核燃料の再処理で、使用済み核燃料の溶液からU(ウラン)及びPu(プルトニウム)を回収した後の液体である。廃液に含まれる高レベル放射性廃棄物には、核分裂生成物(以下、「FP」とも記す。)のほか、MA、ランタノイドが含まれる。高レベル放射性廃棄物(以下、「HALW」とも記す。)は、具体的には、ピューレックス(PUREX)法による再処理で生成する廃液が挙げられる。ピューレックス法では、UやPuを含む硝酸溶液と、トリブチルリン酸(TBP)と、ドデカン等の有機溶媒とを接触混合する。これにより、硝酸溶液中のUやPuがTBPと錯体を形成して有機溶媒側へ移動する。一方、FP、MA、Lnは硝酸溶液(廃液)側に残る。FP、MA、Lnを含有する硝酸溶液が、処理対象の廃液となる。
【0012】
抽出装置12は、廃液からMA成分を抽出する。抽出装置12は、廃液供給部22と、抽出剤供給部24と、希釈液供給部26と、MA抽出液生成部28と、を含む。廃液供給部22は、液体の高レベル放射性廃棄物であるHALWを貯留し、MA抽出液生成部28に供給する。本実施形態では、抽出剤供給部24と、希釈液供給部26と、を設けたが、抽出剤供給部24と希釈液供給部26とを1つの装置として、抽出剤が溶解した液相の有機溶媒を供給してもよい。
【0013】
抽出剤供給部24は、抽出剤をMA抽出液生成部28に供給する。抽出剤は、MA及びLnを捕捉する。また、抽出剤は、希釈液に移行、均一混合する液体である。抽出剤としては、例えば、MAやLnと錯体を形成する錯化剤を用いることができる。錯化剤は、選択的にMAと錯体を形成する錯化剤に比べて安価であることが好ましい。抽出剤の一例としては、n-オクチル(フェニル)-N,N’-ジイソブチルカルバモイルメチルフォスフィンオキシド-トリブチルリン酸混合物(CMPO-TBP混合物)、ジイソデシルリン酸、6,6’-ビス(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1,2,4-ベンゾトリアジン-3-イル)-2,2’-ビピリジン(BTBP)、N,N’-ジブチル-N,N’-ジメチルテトラデシルマロナミド(DMDBTDMA)がある。抽出剤としては、DGA系の材料(錯化剤)を用いることが好ましい。錯化剤の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラオクチル-3-オキサペンタンジアミド(TODGA)、2-エチルヘキシルジグリコールアミド(2EHDGA)等が挙げられる。抽出剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
希釈液供給部26は、希釈液をMA抽出液生成部28に供給する。希釈液は、廃液の液体成分に不溶な有機相の材料(有機溶媒)である。有機溶媒は、使用する抽出剤に応じて適宜選定できる。有機溶媒は、再利用可能であること、安価であること、また、放射線劣化に耐性があることが望ましい。有機溶媒の具体例としては、例えばn-ドデカンが挙げられる。有機溶媒は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、希釈液は、固化装置14でMAから分離した後、再利用が可能な液体とすることが好ましい。
【0015】
MA抽出液生成部28は、廃液と抽出剤と希釈液が供給される。MA抽出液生成部28は、溶媒抽出法により、廃液中のMA及びLnと抽出剤とを接触すると、MA及びLnが抽出剤側に移行する。MA及びLnを捕捉した抽出剤は、希釈液に内包される。MA抽出液生成部28は、抽出処理後、廃液に対して、希釈液を分離することで、希釈液中にMA及びLnを捕集した抽出剤が内包されたMA抽出液を生成する。MA抽出液生成部28は、連続的に各材料が供給され、MA抽出液を生成する連続式でも、間欠的に各材料が供給され、MA抽出液を生成するバッチ式でもよい。また、MA抽出液生成部28は、抽出剤でMAを選択的に捕捉する、あるいは、MA及びLnを同時に捕捉して処理してもよい。
【0016】
固化装置14は、MA抽出液にウランを混合し、混合した液体の液体成分を除去し、固化体を生成する。固化装置14は、固化処理部40とウラン供給部44とを含む。ウラン供給部44は、固化処理部40のMA抽出液にウランを供給する。ウラン供給部44は、MA抽出液を構成する希釈液(有機溶媒)に対して均一溶解可能なウラン含有物質、例えば、有機U錯体、具体的には、下記に示すジピバロイルメタンのウラン錯体を供給する。有機U錯体中のウランは、4価や、6価の価数の状態で含有される。
【0017】
固化処理部40は、ウランが混合されたMA抽出液を蒸留して、希釈液成分を除去する。固化処理部40は、希釈液を蒸留することで、抽出剤とMAとLnとウランを含む固化残留物が、錯体として残留する。残留物が固化体となる。固化体は、U,MA,Lnを含有する有機金属錯体となる固化処理部40は、蒸留処理として回分式、連続式(棚段塔や充填塔)等の公知の蒸発方式を用いることができる。固化処理部40は、処理温度をMA抽出液の希釈液の沸点を基準として、沸点-10℃以上沸点+20℃以下かつ引火点以下とすることが好ましい。
【0018】
安定化装置16は、固化体から炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去する安定化処理を行う。安定化装置16は、安定化処理部50を有する。安定化処理部50は、固化体を加熱し、か焼、焼結することで、処理対象物から炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、蛍石構造で固化させる。具体的には、安定化処理部50は、固化体を焼結することで、脱硝、熱分解処理を行い、固化体中の不純物成分(有機物成分,硝酸成分,水分)つまり、CHON成分を除去し、その後焼結させる。焼結温度は、例えば、300℃以上800℃以下である。
【0019】
安定化処理部50は、ウランが含有された固化体の不純物成分を除去し、その後、還元性雰囲気にて焼結すること、MAやLnを固溶した蛍石構造のウラン酸化物を得ることができる。一例としては、蒸留することで、固化体として、[M3+・(NO ・m(抽出剤)]+([U4+・(NO ・n(配位子)]または[M3+・(NO ・m(抽出剤)]+([UO 2+・(NO ・n(配位子)]が生成される。ここで、Mは、MAまたはLnである。この固化体を熱処理し、CHON成分を除去することで、M+U+(αCO+βHO+γNO)となり、(αCO+βHO+γNO)が除去される。さらに、M+Uを焼結することで、蛍石構造の酸化物となるUMRMが形成される。RMは、M(Ln or MA)/Uであり、Uに対するLnorMAの当量比である。安定化装置16は、保管時にガス化する可能性がある成分である炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、MAとLnを含有する二酸化ウランの蛍石構造とすることで、熱及び化学的安定性の高い固化体とする。
【0020】
保管装置18は、安定化処理した処理物を保管する。保管装置18は、保管部60を含む。保管部60は、安定化処理したMAを含む物質を固体の状態で保管する。保管部60は、例えば、キャスクである。また、保管部60を地中に設け、安定化処理した処理物を地中に埋設してもよい。
【0021】
処理システム10の保管部60で保管しているMAを含む物質は、原子力発電システムの燃料として使用することができる。MAを燃料として燃焼させる場合、保管している蛍石構造の固化体を溶解させ、U、MA及びLnを含む溶液を生成する(固化体溶解)。次に、得られた溶液に対してU、MAの精製処理を行う(MA精製)。MA精製では、例えば、得られた溶液中のU及びMAとLnとを分離し、必要に応じてMAから高発熱性のMAを分離する。次に、得られたU及びMA(Np、Am等)をU、Puと混合し、混合酸化物を得ることにより、燃料を製造する(MA燃料製造)。得られた燃料は高速増殖炉等で燃焼させる(MA燃焼)。
【0022】
本実施形態の処理装置10は、抽出装置12で、廃液に、抽出剤、希釈液を投入し、混合することで、廃液からLnとともにMAを分離する分離処理を行い、MA抽出液を生成する。次に、処理装置10は、固化装置14で、MA抽出液から希釈液を蒸留し、かつ、Uを供給することで、UとMA及びLnを含有する固化体を生成する。次に、処理装置10は、安定化装置16で、MAを含有する固化体から、有機成分(CHON)を除去した蛍石構造を形成させる。処理装置10は、保管装置18で、蛍石構造の処理物を保管する。
【0023】
処理装置10は、LnとともにMAを分離し、固化し、安定化させる。これにより、液体の高レベル放射性廃棄物からMAを効率よく抽出することができ、廃棄物の処分負荷を小さくすることができ、固体化することができる。また、MA及びLnを抽出し、安定化させた物質とすることで、MAを燃料として再利用するために保管する場合も、安定して保管することができる。また、再利用する場合、固化体を溶解する処理のみで、再利用可能な状態とすることができる。
【0024】
また、MAとLnを分離せずに処理することで、MAとLnとを分離する処理が不要になり、処理負荷を小さくすることができる。
【0025】
また、処理装置10は、抽出剤として、硝酸系の物質を含有する高放射性物質に対してMA抽出液を生成する際に、第三相を形成しない抽出剤を用いることが好ましい。具体的には、DGA系の材料を用いることが好ましい。一例としては、2EHDGAがあるまた、抽出剤は、安定化装置16での処理時に除去できる材料、具体的には、炭素,水素,窒素,酸素のみで構成された材料とすることが好ましい。また、抽出剤は、腐食性成分を含まないことが好ましい。
【0026】
また、処理装置10は、ウラン供給部44でMAとLnを含有する液体にウランを供給し、固化体を生成し、その後、安定化装置16で焼結することで、MA及びLnを固定化した二酸化ウランの蛍石構造とすることができる。これにより、安定化処理した後の固体として、長期安定な結晶構造とすることができ、MAを安定して保管することができる。具体的には、蛍石構造に、3価のMA及びLnを固溶することができ、MAとLnの混合またはどちらか一方のみの酸化物構造と比較して、安定した蛍石構造とすることができる。また、ウランを用いて、結晶構造を形成することで、MAを含有する固体を再処理して使用する場合、不要な成分、例えばSi、Na,Ca等が混入していない構造とすることができる。これにより、再処理時に使用しやすい状態で安定化した物質とすることができる。
【0027】
ウラン供給部44は、ウランを有機物質の錯体で供給することが好ましい。これにより、希釈液への溶解を容易にすることができる。ここで、有機U錯体に配位させる配位子は、炭素,水素,窒素,酸素のみで構成されたものを使用することが好ましい。また、有機U錯体に配位させる配位子は、安定化(熱分解)が容易かつ腐食性成分等が含まれていないことが好ましい。これにより、安定化処理時に好適に除去することができ、MAを含有した物質を安定化した物質とすることができ、安定して保管することができる。
【0028】
上記実施形態では、抽出装置12で、有機溶媒で抽出したMA抽出液を生成し、固化処理したが、これに限定されない。処理装置は、液相にMAを抽出した逆抽出液を生成し、固化し、安定化してもよい。
【0029】
図2は、他の実施形態の高レベル放射性物質処理装置の概略構成を示す模式図である。図2に示す高レベル放射性物質処理装置(処理装置)10Aは、抽出装置12Aと、固化装置14Aと、安定化装置16Aと、保管装置18と、を含む。本実施形態の処理装置10Aは、処理装置10と同様に高レベル放射性物質として、高レベル放射性廃棄物(以下、「HALW」とも記す。)を用いた場合として説明する。
【0030】
抽出装置12Aは、廃液からMA成分を抽出する。抽出装置12Aは、廃液供給部22と、抽出剤供給部24と、希釈液供給部26と、MA抽出液生成部28と、MA逆抽出液生成部30と、逆抽出剤供給部32と、希釈液供給部34と、を含む。廃液供給部22は、液体の高レベル放射性廃棄物であるHALWを貯留し、MA抽出液生成部28に供給する。
【0031】
抽出剤供給部24は、抽出剤をMA抽出液生成部28に供給する。抽出剤は、MA及びLnを捕捉する。また、抽出剤は、希釈液に移行する液体である。抽出剤としては、例えば、MAやLnと錯体を形成する錯化剤を用いることができる。錯化剤は、選択的にMAと錯体を形成する錯化剤に比べて安価であることが好ましい。抽出剤の一例としては、n-オクチル(フェニル)-N,N’-ジイソブチルカルバモイルメチルフォスフィンオキシド-トリブチルリン酸混合物(CMPO-TBP混合物)、ジイソデシルリン酸、6,6’-ビス(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1,2,4-ベンゾトリアジン-3-イル)-2,2’-ビピリジン(BTBP)、N,N’-ジブチル-N,N’-ジメチルテトラデシルマロナミド(DMDBTDMA)がある。抽出剤としては、DGA系の材料(錯化剤)を用いることが好ましい。錯化剤の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラオクチル-3-オキサペンタンジアミド(TODGA)、2-エチルヘキシルジグリコールアミド(2EHDGA)等が挙げられる。抽出剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
希釈液供給部26は、希釈液をMA抽出液生成部28に供給する。希釈液は、廃液の液体成分に不溶な有機相の材料(有機溶媒)である。有機溶媒は、使用する抽出剤に応じて適宜選定できる。有機溶媒は、再利用可能であること、安価であること、また、放射線劣化に耐性があることが望ましい。有機溶媒の具体例としては、例えばn-ドデカンが挙げられる。有機溶媒は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、希釈液は、MA逆抽出液生成部30でMAから分離した後、再利用が可能な液体とすることが好ましい。
【0033】
MA抽出液生成部28は、廃液と抽出剤と希釈液とが供給される。MA抽出液生成部28は、溶媒抽出法により、廃液中のMA及びLnと抽出剤とを接触すると、MA及びLnが抽出剤側に移行する。また、抽出剤は、希釈液側に移行する。MA抽出液生成部28は、抽出処理後、廃液に対して、希釈液を分離することで、MA及びLnを捕集した抽出剤であるMA抽出液を生成する。MA抽出液生成部28は、連続的に各材料が供給され、MA抽出液を生成する連続式でも、間欠的に各材料が供給され、MA抽出液を生成するバッチ式でもよい。本実施形態では、抽出剤供給部24と、希釈液供給部26と、を設けたが、抽出剤供給部24と希釈液供給部26とを1つの装置として、抽出剤が溶解した液相の有機溶媒を供給してもよい。
【0034】
MA逆抽出液生成部30は、MA抽出液生成部28から、MA抽出液が供給され、逆抽出剤供給部32から逆抽出剤が供給される。
【0035】
逆抽出剤供給部32は、MA抽出液から液相にMA及びLnを移動させる物質を、逆抽出剤として供給する。逆抽出剤は、例えば、硝酸である。希釈液供給部34は、希釈液をMA逆抽出液生成部30に供給する。希釈液は、液相の液体、例えば水である。なお、抽出装置12Aは、逆抽出剤供給部32と希釈液供給部34とを1つの装置として、逆抽出剤が溶解した液相の水溶液を供給してもよい。
【0036】
MA逆抽出液生成部30は、MA抽出液と、逆抽出剤を含む希釈液と、を接触させ、有機相のMA抽出液に含まれるMAとLnを、逆抽出剤を含む希釈液側に移行させる。抽出装置12Aは、処理後の、MA抽出液中の有機溶媒(抽出剤及び希釈液)を、再利用するようにしてもよい。MA逆抽出液生成部30は、固化処理14Aでの処理時の成分比を所定の比とするために、液体の酸濃度、逆抽出剤の量を制御する。
【0037】
固化装置14Aは、MA逆抽出液にウランを供給し、混合した液体の液体成分を除去し、固化体を生成する。固化装置14Aは、固化処理部40Aとウラン供給部44Aとを含む。ウラン供給部44Aは、固化処理部40AのMA逆抽出液にウランを供給する。ウラン供給部44Aは、MA逆抽出液を構成する希釈液(液相の溶媒)に対して均一溶解可能なウラン含有物質を供給する。ウランは、4価や、6価の価数の状態で液相に溶解する。
【0038】
固化処理部40Aは、ウランが混合されたMA逆抽出液を水熱合成して、MA、ウランを含む固化物が形成される。固化体と希釈液成分を固液分離することで,希釈液成分を除去する。固化体は、U,MA,Lnを含有する。具体的には、固化物は、UO及びM酸化物前駆体を含む。M酸化物前駆体は、MOOH、M(OH)等である。Mは、MA及びLnの少なくとも一方である。固化処理部40Aは、水熱処理の処理温度として、60℃以上200℃以下、処理時間として、0.5h以上20h以下が、例示される。固化処理部40Aは、水熱合成の制御するために、アセトアルデヒド等の添加剤を供給してもよい。
【0039】
安定化装置16Aは、固化体から炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、蛍石構造の固化体を生成する安定化処理を行う。安定化装置16Aは、安定化処理部50Aを有する。安定化処理部50Aは、固化体を加熱し、か焼、焼結することで、処理対象物を蛍石構造で固化させる。具体的には、安定化処理部50Aは、固化体を焼結することで、脱硝、熱分解処理を行い、固化体中の不純物成分(有機物成分,硝酸成分,水分)つまり、CHON成分を除去し、その後焼結させる。焼結温度は、例えば、300℃以上800℃以下である。
【0040】
安定化処理部50Aは、ウランが含有された固化体の不純物成分を除去し、その後、焼結することで、MAやLnを固溶した蛍石構造のウラン酸化物を得ることができる。安定化装置16Aは、保管時にガス化する可能性がある成分である炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去し、MAとLnを含有する二酸化ウランの蛍石構造とすることで、熱及び化学的安定性の高い固化体とする。
【0041】
保管装置18は、安定化処理した処理物を保管する。保管装置18は、保管部60を含む。保管部60は、安定化処理したMAを含む物質を固体の状態で保管する。保管部60は、例えば、キャスクである。また、保管部60を地中に設け、安定化処理した処理物を地中に埋設してもよい。
【0042】
本実施形態の処理装置10Aは、抽出装置12Aで、抽出及び逆抽出を行い、MAを液相に含有させた溶液を処理し、ウランを供給し、安定化装置16AでMA及びLnを固定化した二酸化ウランの蛍石構造とすることができる。このように、逆抽出を行う場合も、蛍石構造とすることで、安定化処理した後の固体として、長期安定な結晶構造とすることができ、MAを安定して保管することができる。具体的には、蛍石構造に、3価のMA及びLnを固溶することができ、安定した蛍石構造をより安定した構造とすることができる。また、ウランを用いて、結晶構造を形成することで、MAを含有する固体を再処理して使用する場合、不要な成分、例えばSi、Na,Ca等が混入していない構造とすることができる。これにより、再処理時に使用しやすい状態で安定化した物質とすることができる。また、処理装置10Aは、処理装置10と同様の各種効果を得ることができる。
【0043】
処理装置10、10Aのウラン供給部44は、抽出装置で抽出された液体に含まれるマイナーアクチノイドとランタノイドとの総モル量の等モル量以上のウランを供給することが好ましい。これにより、保管時の固体物の蛍石構造より安定した構造とすることができる。
【0044】
以上、本発明について、実施形態を示して説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10、10A 処理システム(高レベル放射性物質処理システム)
12、12A 抽出装置
14、14A 固化装置
16、16A 安定化装置
18 保管装置
22 廃液供給部
24 抽出剤供給部
26、34 希釈液供給部
28 MA抽出液生成部
30 MA逆抽出液生成部
40、40A 固化処理部
44、44A ウラン供給部
50、50A 安定化処理部
60 保管部
図1
図2