(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】摩擦減衰装置
(51)【国際特許分類】
F16F 7/09 20060101AFI20240328BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240328BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
F16F7/09
F16F15/02 E
E04H9/02 351
(21)【出願番号】P 2020067195
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】林田 佑介
(72)【発明者】
【氏名】長峰 洋一
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】間鍋 崇之
(72)【発明者】
【氏名】林 圭介
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113123(JP,A)
【文献】特開平05-106671(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008422(WO,A1)
【文献】特開平05-248468(JP,A)
【文献】特開2009-180331(JP,A)
【文献】特開2019-113124(JP,A)
【文献】特開2019-019938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/09
F16F 15/02
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に相対移動可能に組み付けられた第1部材及び第2部材と、
相対移動に伴う摩擦力を前記第1部材及び前記第2部材のうち少なくとも一方に作用させる摩擦材とで構成された摩擦減衰装置であって、
前記第1部材は、一方側の端部が開放された前記軸方向の収容空間を内部に有する筒状部材で構成され、
前記第2部材は、前記収容空間に収容可能に構成され、
前記摩擦材は、
前記収容空間に一部が収容された前記第2部材の外表面と、前記第1部材の内表面との間に配置され、
前記摩擦材の前記軸方向の両側に配置され、前記摩擦材に前記軸方向の力を作用させる一対の作用部と、
前記摩擦材を前記軸方向に貫通し、一対の前記作用部同士の前記軸方向の間隔を規制する間隔規制部とが備えられ、
一対の前記作用部のうち一方は、前記第1部材の端部側に配置された第1作用部で構成され、
一対の前記作用部のうち他方は、前記第1作用部より前記第2部材の端部側に配置された第2作用部で構成され、
前記第1作用部に、前記第2部材が挿通される挿通穴が設けら
れ、
前記第1作用部は、前記第1部材の端部付近に固定された
摩擦減衰装置。
【請求項2】
前記間隔規制部は、一対の前記作用部同士の間隔を調整可能な間隔調整部で構成された
請求項1に記載の摩擦減衰装置。
【請求項3】
前記第2部材の端部付近に、前記第2作用部に係止して、前記作用部同士の間隔を狭める係止部が設けられた
請求項1又は2に記載の摩擦減衰装置。
【請求項4】
前記第1部材の端部付近に、前記第1作用部に係止して、前記作用部同士の間隔を狭める第1係止部が設けられるとともに、
前記第2部材の端部付近に、前記第2作用部に係止して、前記作用部同士の間隔を狭める第2係止部が設けられた
請求項1又は2に記載の摩擦減衰装置。
【請求項5】
前記第2部材は、前記軸方向に直交する直交断面が十字状となる十字断面部材で構成され、
前記摩擦材が十字断面部材に対して4方向に配置され、
前記間隔規制部が前記摩擦材のそれぞれに対して設けられた
請求項1乃至
4のうちいずれかに記載の摩擦減衰装置。
【請求項6】
前記第1部材は、十字断面部材で構成された前記第2部材を収容可能な矩形断面の矩形筒状部材で構成された
請求項
5に記載の摩擦減衰装置。
【請求項7】
前記摩擦材は、
前記第2部材の外表面と、前記第1部材の内表面との摩擦力を異なるように構成された
請求項1乃至
6のうちいずれかに記載の摩擦減衰装置。
【請求項8】
前記摩擦材における前記第2部材の外表面と摺動する部分、前記第1部材の内表面と摺動する部分とで摩擦係数が異なるように構成された
請求項
7に記載の摩擦減衰装置。
【請求項9】
前記摩擦材は、編組パッキンで構成された
請求項1乃至
8のうちいずれかに記載の摩擦減衰装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、構造物のブレスなどに設けられ、入力された振動を減衰するために用いるような摩擦減衰装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、制振装置として、例えば、構造物のブレスなどに設けられ、入力された振動を減衰するために用いるような減衰装置として、降伏型減衰装置や摩擦減衰装置が用いられている。
降伏型減衰装置は、部材が降伏することで入力されたエネルギーを吸収して減衰するように構成されているため、入力された外力によって部材がいったん降伏すると、部材を交換する必要があった。
【0003】
これに対し、部材内部の摩擦によって入力されたエネルギーを吸収して減衰する摩擦減衰装置は繰り返し使用できるため、多用されている。
例えば、特許文献1に記載の摩擦ダンパもそのような摩擦減衰装置のひとつである。
【0004】
特許文献1に記載の摩擦ダンパは、対向するように突設された柱側ブラケットと梁側ブラケットとの間に、一対の滑り板と、滑り板間に滑動自在に挿入されて重ね合わされる摩擦板と、滑り板間の摩擦板を挟圧する方向に押圧する付勢手段とで構成されている。
【0005】
このように構成された摩擦ダンパは、所定の減衰効果を得るためには、滑り板間に挿入された摩擦板に所定の挟圧力を作用させる必要があり、そのため、滑り板で摩擦板を所定の挟圧力で挟み込むための付勢手段が大型化し、部材の長手方向に直交する方向に大型化してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明では、部材の長手方向に直交する方向に大型化することなく所定の減衰効果を得ることができる摩擦減衰装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この摩擦減衰装置は、軸方向に相対移動可能に組み付けられた第1部材及び第2部材と、相対移動に伴う摩擦力を前記第1部材及び前記第2部材のうち少なくとも一方に作用させる摩擦材とで構成された摩擦減衰装置であって、前記第1部材は、一方側の端部が開放された前記軸方向の収容空間を内部に有する筒状部材で構成され、前記第2部材は、前記収容空間に収容可能に構成され、前記摩擦材は、前記収容空間に一部が収容された前記第2部材の外表面と、前記第1部材の内表面との間に配置され、前記摩擦材の前記軸方向の両側に配置され、前記摩擦材に前記軸方向の力を作用させる一対の作用部と、前記摩擦材を前記軸方向に貫通し、一対の前記作用部同士の前記軸方向の間隔を規制する間隔規制部とが備えられ、一対の前記作用部のうち一方は、前記第1部材の端部側に配置された第1作用部で構成され、一対の前記作用部のうち他方は、前記第1作用部より前記第2部材の端部側に配置された第2作用部で構成され、前記第1作用部に、前記第2部材が挿通される挿通穴が設けられたことを特徴とする。
【0009】
上記摩擦材は、軸方向の圧縮によって、軸方向に直交する直交方向の断面形状が変形する、具体的には、軸方向に直交する直交方向の直交断面積が増大するような弾性変形可能であり、所望の摩擦力を有する部材であれば、ゴムや樹脂などいずれの部材であってもよい。また、摩擦部材は、弾性変形可能なゴムや樹脂などの部材と、所定の摩擦力を有するものの弾性変形しない部材との複合材料であってもよい。
【0010】
この摩擦減衰装置の態様として、前記間隔規制部は、一対の前記作用部同士の間隔を調整可能な間隔調整部で構成されてもよい。
またこの摩擦減衰装置の態様として、前記第1作用部は、前記第1部材の端部付近に固定されてもよい。
【0011】
またこの摩擦減衰装置の態様として、前記第1作用部は、前記第1部材の端部付近に固定され、前記第2部材の端部付近に、前記第2作用部に係止して、前記作用部同士の間隔を狭める係止部が設けられてもよい。
【0012】
またこの摩擦減衰装置の態様として、前記第1部材の端部付近に、前記第1作用部に係止して、前記作用部同士の間隔を狭める第1係止部が設けられるとともに、前記第2部材の端部付近に、前記第2作用部に係止して、前記作用部同士の間隔を狭める第2係止部が設けられてもよい。
【0013】
またこの摩擦減衰装置の態様として、前記第2部材は、前記軸方向に直交する直交断面が十字状となる十字断面部材で構成され、前記摩擦材が十字断面部材に対して4方向に配置され、前記間隔規制部が前記摩擦材のそれぞれに対して設けられてもよい。
またこの摩擦減衰装置の態様として、前記第1部材は、十字断面部材で構成された前記第2部材を収容可能な矩形断面の矩形筒状部材で構成されてもよい。
【0014】
またこの摩擦減衰装置の態様として、前記摩擦材は、前記第2部材の外表面と、前記第1部材の内表面との摩擦力を異なるように構成されてもよい。
またこの摩擦減衰装置の態様として、前記摩擦材における前記第2部材の外表面と摺動する部分、前記第1部材の内表面と摺動する部分とで摩擦係数が異なるように構成されてもよい。
【0015】
またこの摩擦減衰装置の態様として、前記摩擦材は、編組パッキンで構成されてもよい。
なお、編組パッキンは、線材を編組し、特殊処理を施した紐状のパッキンであり、所定断面の編組パッキンを軸方向や周方向に沿って配置してもよいし、螺旋状に巻き回して所定断面且つ所定長さに形成して配置してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、部材の長手方向に直交する方向に大型化することなく所定の減衰効果を得ることができる摩擦減衰装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図7】さらに別の実施形態の摩擦減衰装置の説明図。
【
図8】さらに別の実施形態の摩擦減衰装置の斜視図。
【
図9】さらに別の実施形態の摩擦減衰装置の動作を説明する説明図。
【
図10】さらに別の実施形態の摩擦減衰装置の斜視図。
【
図11】さらに別の実施形態の摩擦減衰装置の動作を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
摩擦減衰装置1の一実施形態を以下図面とともに説明する。
摩擦減衰装置1の斜視図を示す
図1では、内部構造を詳細に図示するためシリンダ10、ロッド20、摩擦材30、圧縮プレート40、端部プレート50、及び通しボルト60の手前側の一部を切り欠いて図示している。
【0019】
図2(a)は摩擦減衰装置1の縦断面図を示し、
図2(b),
図2(c)は摩擦減衰装置1の横断面図を示している。より詳しくは、
図2(b)の左半はA-A矢視断面図を示し、右半はB-B矢視断面図を示し、
図2(c)はC-C矢視断面図を示している。
【0020】
また、摩擦減衰装置1の分解斜視図を示す
図3では4つある圧縮プレート40のひとつの圧縮プレート40及びシリンダ10の手前側の一部を切り欠いて図示している。
図4(a)は組み付け途中の摩擦材30の斜視図を示し、
図4(b)は組み付けられた摩擦材30の斜視図を示している。さらに、
図4(c)は別の構成の摩擦材30aの斜視図を示している。
【0021】
図5(a)は
図2(a)に図示する初期状態から、シリンダ10とロッド20とが相対移動して伸張した摩擦減衰装置1において、端部プレート50がシリンダ側ストッパ12に係止した状態の縦断面図を示している。
図5(b)は、
図5(a)に図示した状態からさらに伸張した摩擦減衰装置1において、圧縮プレート40がロッド側ストッパ22に係止した状態の縦断面図を示している。
【0022】
摩擦減衰装置1は、例えば、建造物における柱(以下において第1固定部材という)と梁(以下において第2固定部材という)との間において掛け渡すように配置され、入力された振動を減衰するためのものである。
【0023】
摩擦減衰装置1は、振動が入力される図示省略する第1部材に固定されるシリンダ10と、図示省略する第2部材に固定されるロッド20と、シリンダ10とロッド20との相対移動によって生じる摩擦力をシリンダ10及びロッド20に作用させる摩擦材30とを備えている。
【0024】
なお、シリンダ10とロッド20とは、長手方向に相対移動するが、その方向を
図1で示すように軸方向Lとし、シリンダ10に対してロッド20を設けた側を軸方向先端側Lf、ロッド20に対してシリンダ10を設けた側を軸方向基端側Lbとしている。
【0025】
さらに、
図2(b)における上下方向を高さ方向Hとし、左右方向を幅方向Wとしている。また、
図2(b)における高さ方向H及び幅方向Wのうちロッド20に対してシリンダ10が配置された側を高さ方向外側Ho及び幅方向外側Woとし、シリンダ10に対してロッド20が配置された側を高さ方向内側Hi及び幅方向内側Wiとしている。
【0026】
シリンダ10は、軸方向Lから視て(以下において軸方向視という)正方形状の中空断面の角形鋼管で構成され、軸方向Lに貫通する内部空間を収容空間11としている。また、シリンダ10における軸方向先端側Lfの端部をシリンダ先端部10aとしている。
【0027】
シリンダ10の内表面には、収容空間11に向かって、つまり幅方向内側Wi又は高さ方向内側Hiに突出するようにシリンダ側ストッパ12を備えている。
詳しくは、シリンダ側ストッパ12は、軸方向視正方形状の中空断面における各隅角部を跨ぐように隅角部の両側に配置され、1断面当たり8か所に設けている。
【0028】
また、シリンダ側ストッパ12は、シリンダ10の内表面においてシリンダ先端部10aから軸方向基端側Lbに所定間隔を隔てて配置された第1ストッパ12aと、さらに軸方向基端側Lbに所定間隔を隔てて配置された第2ストッパ12bとを設けている。
【0029】
ロッド20は、
図1における高さ方向Hに延びる縦リブ21aと幅方向Wに延びる横リブ21bとで軸方向視十字状となる十字断面部材で構成されている。
また、ロッド20における軸方向基端側Lbの端部をロッド先端部20aとし、ロッド先端部20aがシリンダ10のシリンダ先端部10aから収容空間11に挿入可能な大きさで構成している。
【0030】
また、縦リブ21aと横リブ21bとで十字状に形成されたロッド20における縦リブ21aと横リブ21bとの各角部を跨ぐように、各角部の両側の縦リブ21aと横リブ21bにロッド側ストッパ22を設けている。
【0031】
ロッド側ストッパ22は、1断面当たり8か所に設けられるとともに、ロッド先端部20aから軸方向先端側Lf(ロッド20の軸方向基端側)に所定間隔を隔てて配置された第1ストッパ22aと、それよりも軸方向基端側Lb(ロッド20の軸方向先端側)に所定間隔を隔てて配置された第2ストッパ22bとを設けている。なお、第1ストッパ22aと第2ストッパ22bとの軸方向Lの間隔は、シリンダ10の内表面に設けた第1ストッパ12aと第2ストッパ12bとの軸方向Lの間隔と同じ間隔で配置している。
【0032】
シリンダ側ストッパ12とロッド側ストッパ22とは、
図2(b),(c)に図示するように、摩擦材配置空間23において軸方向Lにおける略同位置で高さ方向Hと幅方向Wとで対向するように配置される。
【0033】
摩擦材30は、
図4(b)に図示するように、軸方向視正方形状であるとともに、軸方向Lに長い直方体状に形成されている。
上述のように軸方向Lに長い直方体状に形成された摩擦材30は、
図4(a)に図示するように、軸方向視正方形状の角型筒状体で構成された芯材31の周りに、軸方向Lに延びる編組パッキン32を複数配設して構成している。
【0034】
編組パッキン32は、線材を編組し、特殊処理を施した紐状のパッキンである。
なお、
図4(c)に図示するように、芯材31の周りに編組パッキン32を螺旋状に巻き回して摩擦材30aを構成してもよい。
【0035】
このように構成された摩擦材30は、収容空間11にロッド先端部20aを挿入したロッド20とシリンダ10とで囲まれた摩擦材配置空間23に配置できる大きさで形成している。
具体的には、シリンダ10の隅角部を跨ぐ内表面と、ロッド20によって十字状に分割された収容空間11の縦リブ21aと横リブ21bとで囲まれた摩擦材配置空間23が、
図1に図示するように、軸方向視において幅方向Wと高さ方向Hに二つずつ並んで計4か所に形成される。
【0036】
このようにして、収容空間11において4分割された摩擦材配置空間23のそれぞれに摩擦材30が配置される。
そして、各摩擦材配置空間23に配置された摩擦材30の軸方向基端側Lbに圧縮プレート40を設け、摩擦材30の軸方向先端側Lfに端部プレート50を設けている。
【0037】
圧縮プレート40は、
図3に図示するように、摩擦材30の外形と略同一の外形である軸方向視正方形状に形成され、軸方向視の中心に、後述する通しボルト60を挿通できる挿通穴41を設けている。また、圧縮プレート40における軸方向先端側Lfには、摩擦材30の芯材31の外形よりわずかに大きく、軸方向基端側Lbに向かって凹状となる凹部42を設けている。
このように構成した圧縮プレート40は、各摩擦材30に対応して全部で4つ設けられる。
【0038】
端部プレート50は、
図3に図示するように、収容空間11よりひとまわり小さな、軸方向視正方形状となる板材であり、十字状に形成されたロッド20が挿入できる十字スリット51を設けている。
また、収容空間11に収容した状態で、圧縮プレート40の挿通穴41に対応する箇所に、後述する通しボルト60を挿通できる挿通穴52を設けている。
【0039】
上述のように構成された各圧縮プレート40は各摩擦材30の軸方向基端側Lbの端部に配置され、端部プレート50は軸方向視4方向に配置された摩擦材30全体の軸方向先端側Lfに配置される。
このように摩擦材30の軸方向Lの両側に配置された圧縮プレート40と端部プレート50に対して、軸方向Lに沿う方向の通しボルト60を挿通して、圧縮プレート40と端部プレート50との軸方向Lの間隔を規制している。
【0040】
具体的には、通しボルト60を、圧縮プレート40の挿通穴41と、摩擦材30の芯材31の内部と、端部プレート50の挿通穴52とを挿通させて、その両側からナット61を螺合させる。これにより、圧縮プレート40と端部プレート50との軸方向Lの間隔が拡がることを規制している。また、さらにナット61を螺入することで、摩擦材30の両側のナット61同士は接近して両者の間隔が狭まり、圧縮プレート40と端部プレート50とによって挟まれる摩擦材30を軸方向Lに圧縮することができる。
【0041】
上述のように各要素が構成されているため、端部プレート50の十字スリット51にロッド20を挿通し、収容空間11にロッド20のロッド先端部20aを収容する。このような収容状態において摩擦材配置空間23を構成するロッド20の縦リブ21aと横リブ21bとの間のそれぞれに摩擦材30を配置する。そして、その摩擦材30の軸方向基端側Lbに圧縮プレート40を配置するとともに、挿通穴41、芯材31及び挿通穴52に通しボルト60を挿通してナット61を螺合して摩擦減衰装置1を構成している。
【0042】
このとき、軸方向Lの両側に圧縮プレート40及び端部プレート50を配置した摩擦材30を摩擦材配置空間23に配置した状態では、第1ストッパ12a,22aと第2ストッパ12b,22bとの間に配置されることとなる。しかしながら、摩擦材配置空間23における第1ストッパ12a,22aと第2ストッパ12b,22bとの間において、摩擦材30は軸方向Lの位置は規制されていない。
【0043】
そして、各摩擦材配置空間23に配置された摩擦材30の幅方向外側Woと高さ方向外側Hoの外表面はシリンダ10の内表面と当接し、摩擦材30の幅方向内側Wiと高さ方向内側Hiの外表面は収容空間11の縦リブ21a及び横リブ21bの外表面と当接することとなる。
【0044】
そのため、さらにナット61を螺入して、摩擦材30の両側の圧縮プレート40と端部プレート50とを接近させて両者の間隔を狭めて摩擦材30を軸方向Lに圧縮すると、摩擦材30は軸方向Lに直交する直交方向(幅方向W及び高さ方向H)に拡がろうとする。
【0045】
しかしながら、摩擦材30の外表面はシリンダ10の内表面やロッド20の外表面と接触するとともに、摩擦材30を構成する編組パッキン32の内側には芯材31が配置されている。換言すると、摩擦材30の外表面はシリンダ10の内表面やロッド20の外表面によって規制され、摩擦材30を構成する編組パッキン32の内側が芯材31によって規制されている。そのため、軸方向Lに圧縮された分、摩擦材30は直交方向(幅方向W及び高さ方向H)に拡がることはできず、直交方向の応力が増大する。よって、シリンダ10の内表面やロッド20の外表面と摩擦材30の外表面との当接圧力が上昇することとなる。
【0046】
このように構成された摩擦減衰装置1に外力が入力され、
図2(a)に図示する初期状態から伸張すると、
図5(a)において矢印で図示する方向にシリンダ10とロッド20とは相対移動する。このように、摩擦減衰装置1が伸張する方向にシリンダ10とロッド20とが相対移動すると、摩擦材配置空間23に配置された摩擦材30は、シリンダ10及びロッド20のうち少なくとも一方と摺動することとなる。
【0047】
シリンダ10及びロッド20のうち少なくとも一方と摩擦材30とが摺動すると、その摺動面(当接面)に摩擦が生じ、生じた摩擦によって入力された外力を吸収し、減衰効果を得ることができる。
【0048】
摩擦減衰装置1に対して伸張する方向の外力が入力されると、例えば、
図5(a)に示すように、ロッド20の矢印方向の移動に伴って摩擦材30がシリンダ10に対して摺動し、第1ストッパ12aに端部プレート50が係止することとなる。第1ストッパ12aに端部プレート50が係止すると、シリンダ10に対して摩擦材30が軸方向先端側Lfに摺動することが規制される。
【0049】
なお、第1ストッパ12aに端部プレート50が係止するまでのシリンダ10に対する摩擦材30の摺動によって、シリンダ10と摩擦材30との摺動面(当接面)に摩擦が生じ、生じた摩擦によって入力された外力をさらに吸収し、減衰効果をさらに発揮させることができる。
【0050】
当該状態よりさらに伸張する方向の外力が摩擦減衰装置1に入力されると、シリンダ10に対する相対移動が規制された摩擦材30に対して、さらに矢印方向にロッド20が摺動し、
図5(b)に示すように、第2ストッパ22bに圧縮プレート40が係止する。第2ストッパ22bに圧縮プレート40が係止すると、ロッド20に対して摩擦材30が軸方向基端側Lbに相対移動することが規制される。
【0051】
なお、第2ストッパ22bに圧縮プレート40が係止するまでのロッド20に対する摩擦材30の摺動によって、ロッド20と摩擦材30との摺動面(当接面)に摩擦が生じ、生じた摩擦によって入力された外力をより吸収し、減衰効果をさらに発揮させることができる。
【0052】
この状態から、さらに摩擦減衰装置1が伸張する方向の外力が作用すると、通しボルト60によって離間する方向が規制された圧縮プレート40と端部プレート50とは、第1ストッパ12aと第2ストッパ22bとによって、軸方向Lに圧縮する方向に挟み込まれる。
【0053】
圧縮プレート40と端部プレート50とが第1ストッパ12aと第2ストッパ22bとによって、軸方向Lに圧縮する方向に挟み込まれることで、摩擦材30はさらに軸方向Lに圧縮される。そのため、摩擦材30の外表面とシリンダ10の内表面やロッド20の外表面との当接圧力が増大し、シリンダ10やロッド20と摩擦材30との摺動によって生じる摩擦力は増大する。それにより、さらなる減衰効果を得ることができる。
【0054】
なお、上述の説明では、摩擦減衰装置1の伸張において、第1ストッパ12aに端部プレート50が係止した後、第2ストッパ22bに圧縮プレート40が係止した。しかしながら、第2ストッパ22bに圧縮プレート40が係止してから、第1ストッパ12aに端部プレート50が係止してもよい。また、第1ストッパ12aへの端部プレート50の係止と、第2ストッパ22bへの圧縮プレート40の係止がほぼ同じタイミングであってもよい。
【0055】
なお、このようなシリンダ10及びロッド20のうち少なくとも一方と摩擦材30との摺動による減衰効果は、摩擦減衰装置1が短縮する方向のシリンダ10とロッド20との相対移動であっても、同様のメカニズムで得ることができる。
具体的には、摩擦減衰装置1の短縮では、第1ストッパ22aに端部プレート50が係止するとともに、第2ストッパ12bに圧縮プレート40が係止することとなり、上述の減衰効果と同様の減衰効果を得ることができる。
【0056】
上述の摩擦減衰装置1についてまとめると、摩擦減衰装置1は軸方向Lに相対移動可能に組み付けられたシリンダ10及びロッド20と、摺動に伴う摩擦力をシリンダ10及びロッド20に作用させる摩擦材30とで構成している。
シリンダ10は、シリンダ先端部10aが開放された軸方向Lの収容空間11を内部に有する筒状部材である角型鋼管で構成されている。
【0057】
また、ロッド20は、収容空間11にロッド先端部20aを収容可能であり、摩擦材30は、収容空間11にロッド先端部20aが収容されたロッド20の外表面と、シリンダ10の内表面との間である摩擦材配置空間23に配置される。
【0058】
摩擦材30の軸方向Lの両側には、摩擦材に軸方向Lの力を作用させる圧縮プレート40及び端部プレート50(以下においてプレート40,50という)を配置している。
また、プレート40,50同士の軸方向Lの間隔を規制する通しボルト60が摩擦材30を軸方向Lに貫通している。
【0059】
端部プレート50は、シリンダ10のシリンダ先端部10aの近傍に配置され、圧縮プレート40は、端部プレート50より軸方向基端側Lbに配置され、端部プレート50に、ロッド20が挿通される十字スリット51を設けている。このように構成した摩擦減衰装置1は、軸方向Lに直交する高さ方向H及び幅方向Wに大型化することなく所定の減衰効果を得ることができる。
【0060】
詳述すると、シリンダ先端部10aが開放された軸方向Lの収容空間11を内部に有する角型鋼管で構成されたシリンダ10の収容空間11にロッド20のロッド先端部20aを収容している。収容空間11の摩擦材配置空間23に配置された摩擦材30の軸方向Lの両側に配置されたプレート40,50同士の軸方向Lの間隔を、摩擦材30を軸方向Lに貫通する通しボルト60によって規制している。そのため、高さ方向H及び幅方向Wに大型化することなく、プレート40,50によって軸方向Lの圧力を作用させた摩擦材30で摩擦力をシリンダ10及びロッド20に作用させて、所定の減衰効果を得ることができる。
【0061】
また、摩擦材30を軸方向Lに貫通する通しボルト60によってプレート40,50同士の間隔を規制している。そのため、部材外部から押付けられたプレート40,50によって摩擦材30に軸方向Lの圧力を作用させる場合に比べて、摩擦材30に確実に軸方向Lの圧力を作用させることができる。したがって、摩擦減衰装置1はシリンダ10とロッド20とが相対移動することによって生じる摩擦により所定の減衰効果を得ることができる。
【0062】
また、通しボルト60は、ナット61によってプレート40,50同士の間隔を調整可能に構成している。そのため、通しボルト60でプレート40,50同士の間隔を調整して、シリンダ10及びロッド20に作用させる摩擦材30の摩擦力を所望の摩擦力に調整することができる。
【0063】
また、シリンダ10及びロッド20における軸方向先端側Lf(ロッド20の軸方向基端側)に、端部プレート50に係止して、プレート40,50同士の間隔を狭める第1ストッパ12a,22aを設けている。さらに、シリンダ10及びロッド20における軸方向基端側Lb(ロッド20の軸方向先端側)に、圧縮プレート40に係止する第2ストッパ12b,22bを設けている。そのため、シリンダ10とロッド20とが相対移動することで、第1ストッパ12a,22aと第2ストッパ12b,22bの一方がプレート40,50のいずれかに係止し、さらなる相対移動によって、他方がプレート40,50のいずれかに係止する。これにより、プレート40,50同士の間隔が狭まり、シリンダ10及びロッド20に作用させる摩擦材30の摩擦力を増大させることができる。したがって、シリンダ10とロッド20とが相対移動した際の減衰効果を発揮させることができる。
【0064】
また、ロッド20は、軸方向Lに直交する直交断面が十字状となる十字断面部材で構成され、摩擦材30が十字断面部材に対して4方向の摩擦材配置空間23に配置され、通しボルト60が摩擦材30のそれぞれに対して設けられている。そのため、十字断面部材に対して4方向に配置された摩擦材30とロッド20の外表面との接触面積が増大する。したがって、シリンダ10とロッド20とが相対移動する際に摩擦材30によって生じる摩擦力が増大し、減衰効果をさらに発揮させることができる。
【0065】
また、シリンダ10は、十字断面部材で構成されたロッド20を収容可能な矩形断面の角型鋼管で構成しているため、十字断面部材に対して4方向に配置された摩擦材30とシリンダ10の内表面との接触面積が増大する。そのため、シリンダ10とロッド20とが相対移動する際に摩擦材30によって生じる摩擦力が増大し、減衰効果をさらに発揮させることができる。
また、摩擦材30は、編組パッキンで構成されているため、所望の摩擦力及び耐久性の高い摩擦材を構成することができる。
【0066】
なお、上述の摩擦減衰装置1では、摩擦材配置空間23に配置された摩擦材30は、第1ストッパ12a,22aと第2ストッパ12b,22bとの間において軸方向Lの位置は規制されていなかった。しかしながら、
図6に図示するように、端部プレート50aをシリンダ10のシリンダ先端部10aに固定した摩擦減衰装置1Aであってもよい。
【0067】
なお、
図6(a),
図6(b)は摩擦減衰装置1Aの縦断面図を示し、
図6(c),
図6(d)は摩擦減衰装置1Aの横断面図を示している。より詳しくは、
図6(a)は初期状態の摩擦減衰装置1Aの縦断面図を示している。
図6(b)は、
図6(a)に図示した初期状態から伸張した摩擦減衰装置1Aにおいて、圧縮プレート40がロッド側ストッパ22に係止した状態の縦断面図を示している。また、
図6(c)の左半はA-A矢視断面図を示し、右半はB-B矢視断面図を示し、
図6(d)はC-C矢視断面図を示している。
【0068】
摩擦減衰装置1Aは、端部プレート50aがシリンダ先端部10aに固定されていることに加え、シリンダ側ストッパ12及び第1ストッパ22aが備えられていない。なお、端部プレート50aの構成は、
図6(d)に図示するように、上述の摩擦減衰装置1の端部プレート50と同様の構成である。また、
図6(a),(d)に図示するように、シリンダ10、ロッド20、摩擦材30、圧縮プレート40及び通しボルト60は同じであるため、その詳細な説明を省略する。
【0069】
このような摩擦減衰装置1Aでは、摩擦材配置空間23に配置された摩擦材30は、端部プレート50aがシリンダ先端部10aに固定されているため、摩擦材配置空間23において軸方向Lの位置が規制される。
【0070】
このように構成された摩擦減衰装置1Aに外力が入力され、
図6(a)に図示する初期状態から伸張すると、
図6(b)において矢印で図示する方向にシリンダ10とロッド20とは相対移動する。このように、摩擦減衰装置1Aが伸張する方向にシリンダ10とロッド20とが相対移動すると、ロッド20と摩擦材30は摺動し、その摺動面(当接面)に摩擦が生じ、生じた摩擦によって入力された外力を吸収し、減衰効果を得ることができる。
【0071】
摩擦減衰装置1Aに対してさらに伸張する方向の外力が入力されると、例えば、
図6(b)に示すように、さらに矢印方向にロッド20が相対移動することで、第2ストッパ22bに圧縮プレート40が係止することとなる。第2ストッパ22bに圧縮プレート40が係止すると、ロッド20に対して摩擦材30が軸方向基端側Lbに摺動することが規制される。
【0072】
なお、第2ストッパ22bに圧縮プレート40が係止するまでのロッド20に対する摩擦材30の摺動によって、ロッド20と摩擦材30との摺動面(当接面)に摩擦が生じ、生じた摩擦によって入力された外力をより吸収し、減衰効果をより発揮させることができる。
【0073】
この状態から、さらに摩擦減衰装置1Aが伸張する方向の外力が作用すると、通しボルト60によって端部プレート50aに対し離間する方向が規制された圧縮プレート40は、第2ストッパ22bとによって、軸方向Lに圧縮する方向に押し込まれる。
【0074】
圧縮プレート40が第2ストッパ22bによって、軸方向Lに圧縮する方向に押し込まれることで、摩擦材30はさらに軸方向Lに圧縮される。これにより、上述したように摩擦材30の外表面とロッド20の外表面との当接圧力が増大する。そのため、ロッド20と摩擦材30との摺動によって生じる摩擦力は増大し、減衰効果をさらに発揮させることができる。
【0075】
なお、このようなロッド20と摩擦材30との摺動による減衰効果は、摩擦減衰装置1Aが短縮する方向のシリンダ10とロッド20との相対移動であっても、同様のメカニズムで得ることができる。
このように、摩擦減衰装置1Aは上述の摩擦減衰装置1と同様の効果を奏することができる。
【0076】
なお、端部プレート50aは、シリンダ10のシリンダ先端部10aの近傍に固定されている。軸方向基端側Lbに配置された圧縮プレート40に係止して、端部プレート50aに対して圧縮プレート40を接近させる(端部プレート50aと圧縮プレート40との間隔を狭める)第2ストッパ22bを設けている。そのため、シリンダ10のシリンダ先端部10aに固定された端部プレート50aを反力として通しボルト60によって間隔が規制された圧縮プレート40から摩擦材30に確実に軸方向Lの圧力が作用することとなる。また、ロッド20が相対移動することで、第2ストッパ22bが圧縮プレート40に係止して、端部プレート50aに対して圧縮プレート40が近接し、ロッド20に作用させる摩擦材30の摩擦力を増大させることができる。したがって、シリンダ10とロッド20とが相対移動した際の減衰効果を増大させることができる。
【0077】
上述の説明においては、軸方向視正方形状のシリンダ10の収容空間11に対して十字状のロッド20のロッド先端部20aを挿入し、摩擦材配置空間23に軸方向視正方形状の摩擦材30を配置して摩擦減衰装置1,1Aを構成した。これに対し、
図7に示すように、軸方向視円形状の円筒状の鋼管でシリンダ10bを構成し、シリンダ10bの内表面と十字状のロッド20との間の摩擦材配置空間23bに摩擦材30bを配置して摩擦減衰装置1Bを構成してもよい。
【0078】
なお、
図7(a),
図7(b)は摩擦減衰装置1Bの縦断面図を示し、
図7(c)は摩擦減衰装置1Bの横断面図を示している。より詳しくは、
図7(a)は初期状態の摩擦減衰装置1Bの縦断面図を示している。
図7(b)は、
図7(a)に図示した初期状態から伸張した摩擦減衰装置1Bにおいて、圧縮プレート40bがロッド側ストッパ22に係止した状態の縦断面図を示している。また、
図7(c)はA-A矢視断面図を示している。
【0079】
なお、摩擦減衰装置1Bは、摩擦減衰装置1と比べて端部プレート50bが円筒状の鋼管で構成されたシリンダ10bのシリンダ先端部10aに固定されるとともに、シリンダ側ストッパ12及び第1ストッパ22aを備えていない。なお、端部プレート50bの構成は上述の摩擦減衰装置1の端部プレート50と同様の構成である。
【0080】
圧縮プレート40bは、軸方向視円形の板材で構成している。
摩擦材30bは、
図7(c)に図示するように、円筒状の鋼管で構成されたシリンダ10bの内表面と十字状のロッド20との間に形成される軸方向視1/4円状の空間である摩擦材配置空間23bに配置されるように1/4円柱状に構成されている。
なお、1/4円柱状に構成されている摩擦材30bは、所定の摩擦力が生じるゴムで構成しているが、樹脂等で構成してもよい。
【0081】
また、1/4円柱状に構成されている摩擦材30bの軸方向Lの両側に配置された圧縮プレート40b及び端部プレート50bは、摩擦材30bを貫通する通しボルト60によって位置が規制されている。
【0082】
このような摩擦減衰装置1Bでは、摩擦材配置空間23bに配置された摩擦材30bは、端部プレート50bがシリンダ先端部10aに固定されているため、摩擦材配置空間23において軸方向Lの位置が規制される。
【0083】
このように構成された摩擦減衰装置1Bに外力が入力され、
図7(a)に図示する初期状態から伸張すると、
図7(b)において矢印で図示する方向にシリンダ10bとロッド20とは相対移動する。このように、摩擦減衰装置1Bが伸張する方向にシリンダ10bとロッド20とが相対移動すると、ロッド20と摩擦材30bは摺動し、その摺動面(当接面)に摩擦が生じ、生じた摩擦によって入力された外力を吸収し、減衰効果を得ることができる。
【0084】
なお、シリンダ10bのシリンダ先端部10aに固定されている端部プレート50を反力として通しボルト60によって間隔が規制された圧縮プレート40から摩擦材30bに確実に軸方向Lの圧力が作用する。このため、シリンダ10bとロッド20とが相対移動することで所定の減衰効果を得ることができる。
【0085】
なお、このようなロッド20と摩擦材30bとの摺動による減衰効果は、摩擦減衰装置1Bが短縮する方向のシリンダ10bとロッド20との相対移動であっても、同様のメカニズムで得ることができる。
このように、摩擦減衰装置1Bは上述の摩擦減衰装置1と同様の効果を奏することができる。
【0086】
なお、上述の説明では、摩擦減衰装置1、1Aは軸方向視正方形状に形成された角形鋼管でシリンダ10を構成し、摩擦減衰装置1Bは軸方向視円形となる円筒形状のシリンダ10bを用いたが、軸方向視長方形状であってもよいし、多角形状であってもよい。
【0087】
また、上述の説明では、軸方向視十字状のロッド20を用いたが、軸方向視H型のH型鋼、C型鋼、L型アングル材、フラットバー、あるいは鋼棒などロッドを構成してもよい。
【0088】
さらには、上述の説明では、摩擦減衰装置1A,1Bはシリンダ10,10bのシリンダ先端部10aに端部プレート50a,50bを固定し、摩擦材30,30bとロッド20の外表面との摺動によって生じる摩擦により減衰している。これに対し、ロッド20のロッド先端部20aに圧縮プレート40,40bを固定し、摩擦材30,30bとシリンダ10,10bの内表面との摺動によって生じる摩擦により減衰してもよい。
【0089】
なお、上述の摩擦減衰装置1に関する説明において、摩擦材30がシリンダ10側とロッド20側のいずれと先に摺動を開始するか、或いはいずれともほぼ同じタイミングで摺動を開始するかは、摩擦材30におけるシリンダ10の内表面との間の摩擦係数及びロッド20の外表面との間の摩擦係数に依存する。よって、これらの摩擦係数や摩擦力を調整することにより、挙動を制御することが可能である。
【0090】
具体的には、上述の摩擦減衰装置1では、シリンダ10の内周面と摩擦材30との接触面と、ロッド20と摩擦材30との接触面とがほぼ同じ面積であるため、摩擦材30はシリンダ10側とロッド20側とのいずれもほぼ同じタイミングで摺動を開始することとなる。
【0091】
これに対し、
図8,9に図示するように、シリンダ10の内周面と摩擦材30との接触面と、ロッド20と摩擦材30との接触面とがほぼ同じ面積であっても、摩擦材30における摩擦係数を調整することで、摩擦材30がシリンダ10側とロッド20側とのいずれかに対して先に摺動を開始することができる。
【0092】
なお、
図8(a)は摩擦減衰装置1Cの縦断面図を示し、
図8(b)の左半はA-A矢視断面図を示し、右半はB-B矢視断面図を示し、
図8(c)は摩擦材30cの縮小斜視図を示している。
以下における摩擦減衰装置1Cの説明において、上述の摩擦減衰装置1と同じ構成については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0093】
全周に亘って同じ編組パッキン32で構成した摩擦材30は、四面全てが同じ摩擦係数で構成されていたのに対し、摩擦減衰装置1Cにおける摩擦材30cは、摩擦材30と同様に角筒状に形成されているものの、四面のうち二面が高摩擦係数である高摩擦部30caと、残りの二面が低摩擦係数である低摩擦部30cbで構成している。
【0094】
このように高摩擦部30caと低摩擦部30cbとを有する摩擦材30cを、例えば、高摩擦部30caを縦リブ21a及び横リブ21bに対面させ、低摩擦部30cbをシリンダ10の内面に対面させる向きでシリンダ10の摩擦材配置空間23に収容する。
【0095】
シリンダ10の収容空間11において四分割された各摩擦材配置空間23において、上述の向きで摩擦材30cを収容することで、摩擦材30cにおいて高摩擦係数である高摩擦部30caはロッド20と対面し、低摩擦係数である低摩擦部30cbはシリンダ10の内面と対面することとなる。
【0096】
このように構成された摩擦減衰装置1Cに、伸長方向の外力が作用すると、
図9(a)において図示する矢印で示すように、低摩擦係数である低摩擦部30cbが対面するシリンダ10が、第1ストッパ12aが端部プレート50に係止するまで摺動し、シリンダ10と摩擦材30との摺動面(当接面)に摩擦が生じ、生じた摩擦によって入力された外力をより吸収し、減衰効果を発揮させることができる。
【0097】
摩擦減衰装置1Cに伸長方向の外力がさらに作用すると、
図9(b)において図示する矢印で示すように、高摩擦係数である高摩擦部30caが対面するロッド20が、第2ストッパ22bが圧縮プレート40に係止するまで摺動し、ロッド20と摩擦材30との摺動面(当接面)に摩擦が生じ、生じた摩擦によって入力された外力をより吸収し、減衰効果をさらに発揮させることができる。
【0098】
さらなる外力によって、プレート40,50同士の間隔が狭まり、シリンダ10及びロッド20に作用させる摩擦材30cの摩擦力を増大させることができる。したがって、シリンダ10とロッド20とが相対移動した際の減衰効果を発揮させることができる。
【0099】
このように、摩擦材30cに高摩擦部30caと低摩擦部30cbを設けることで、つまり摩擦係数に差を設けることで、低い外力に対して、あるいは外力に対して最初に摩擦係数の低い側を摺動させ、さらなる外力に対して、摩擦係数の高い側を摺動させることができる。
【0100】
また、摩擦減衰装置1Cにおいて、上述のようなシリンダ10及びロッド20と摩擦材30cとの摺動による減衰効果は、摩擦減衰装置1Cが短縮する方向のシリンダ10とロッド20との相対移動であっても、同様のメカニズムで得ることができる。
【0101】
なお、高摩擦係数である高摩擦部30caをシリンダ10の内面に対面させ、低摩擦部30cbをロッド20に対面させるように摩擦材30cを配置してもよい。この場合、外力に対して先ず、摩擦材30cに対してロッド20が摺動し、続いて摩擦材30cに対してシリンダ10が摺動するように構成することができる。
【0102】
上述の摩擦減衰装置1Cでは、摩擦材30cに摩擦係数の異なる高摩擦部30ca、低摩擦部30cbを備え、異なる摩擦係数を備えたが、一様な摩擦係数の摩擦材30dであっても、接触面積を調整することで、摩擦材30がシリンダ10側とロッド20側とのいずれかに対して先に摺動を開始するように構成してもよい。
【0103】
なお、
図10(a)は摩擦減衰装置1Dの縦断面図を示し、
図10(b)の左半はA-A矢視断面図を示し、右半はB-B矢視断面図を示し、
図10(c)は摩擦材30dの縮小斜視図を示している。
以下における摩擦減衰装置1Dの説明において、上述の摩擦減衰装置1及び摩擦減衰装置1Bと同じ構成については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0104】
摩擦減衰装置1Dは、摩擦減衰装置1Bにおけるシリンダ10bと、円柱状又は円筒状のロッド20dと、円筒状の摩擦材30dとを用いている。
摩擦減衰装置1Dは、シリンダ10b及びロッド20dに第1ストッパ12a,22a及び第2ストッパ12b,22bを備えている。
【0105】
円筒状の摩擦材30dは、内部にロッド20dを挿通する挿通空間33を有するとともに、挿通空間33の周囲に通しボルト60を挿通する挿通孔34を周方向に4箇所設けている。
このように構成した摩擦材30dの軸方向Lの両側には軸方向から視て円形の圧縮プレート40d及び端部プレート50dを備え、挿通孔34を挿通する通しボルト60の両端を圧縮プレート40d及び端部プレート50dの外側でナット61で螺合して組み付けている。
【0106】
このように構成した摩擦材30dの挿通空間33にロッド20dを挿通するとともに、シリンダ10bの収容空間11に収容して摩擦減衰装置1Dを構成する。
このように構成した摩擦減衰装置1Dの摩擦材30dの外周面と、(挿通空間33を形成する)内周面とは周面積が異なる。具体的には、シリンダ10bの内面と対面し、摺動する摩擦材30dの外周面は、ロッド20dの外周面と対面し、摺動する摩擦材30dの内周面より面積が広くなる。
【0107】
そのため、摩擦減衰装置1Dに、伸長方向の外力が作用すると、
図11(a)において図示する矢印で示すように、摩擦材30dの内周面が対面するロッド20dが、第2ストッパ22bが圧縮プレート40dに係止するまで摺動し、ロッド20dと摩擦材30dとの摺動面(当接面)に摩擦が生じ、生じた摩擦によって入力された外力をより吸収し、減衰効果を発揮させることができる。
【0108】
摩擦減衰装置1Dに伸長方向の外力がさらに作用すると、
図11(b)において図示する矢印で示すように、摩擦材30dの外周面が対面するシリンダ10bが、第1ストッパ12aが端部プレート50dに係止するまで摺動し、シリンダ10bと摩擦材30dとの摺動面(当接面)に摩擦が生じ、生じた摩擦によって入力された外力をより吸収し、減衰効果をさらに発揮させることができる。
【0109】
さらなる外力によって、プレート40d,50d同士の間隔が狭まり、シリンダ10b及びロッド20dに作用させる摩擦材30dの摩擦力を増大させることができる。したがって、シリンダ10bとロッド20dとが相対移動した際の減衰効果を発揮させることができる。
【0110】
このように、摩擦材30dが摺動する摺動面積が異なるように構成することで、低い外力に対して、あるいは外力に対して最初に摺動面積が狭い側を摺動させ、さらなる外力に対して、摺動面積が広い側を摺動させることができる。
【0111】
また、摩擦減衰装置1Dにおいて、上述のようなシリンダ10b及びロッド20dと摩擦材30dとの摺動による減衰効果は、摩擦減衰装置1Dが短縮する方向のシリンダ10bとロッド20dとの相対移動であっても、同様のメカニズムで得ることができる。
【0112】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、本発明の軸方向は軸方向Lに対応し、
以下同様に、
第1部材はシリンダ10,10bに対応し、
第2部材はロッド20,20dに対応し、
摩擦材は摩擦材30,30c,30dに対応し、
摩擦減衰装置は摩擦減衰装置1,1A,1B,1C,1Dに対応し、
一方側の端部はシリンダ先端部10aに対応し、
収容空間は収容空間11に対応し、
他方側の端部はロッド先端部20aに対応し、
作用部は圧縮プレート40,40b,40d、端部プレート50,50a,50b,50dに対応し、
間隔規制部及び間隔調整部は通しボルト60に対応し、
第1作用部は端部プレート50,50a,50b,50dに対応し、
第2作用部は圧縮プレート40,40b,40dに対応し、
挿通穴は十字スリット51に対応し、
係止部はシリンダ側ストッパ12に対応し、
第1係止部は第1ストッパ12a,22aに対応し、
第2係止部は第2ストッパ12b,22bに対応するも、上記実施形態に限定するものではない。
【0113】
また、上述の説明では、摩擦減衰装置1,1A,1Bを建造物における柱と梁との間において掛け渡すように配置した。これに対し、建造物における柱と大引きとの間に配置してもよいし、架台やラックにおける2つの構造部材の間に配置してもよい。さらには、何らかの装置における骨組みを構成する2つの構造部材の間に配置してもよい。
【0114】
また、摩擦材30,30a,30b、30c,30dは、弾性変形可能な編組パッキン32で構成したが、所定の摩擦力を有するものの弾性変形しない部材との複合材料であってもよい。
上述の説明では、第1部材にシリンダ10,10bが固定されるとともに、第2部材にロッド20,20dが固定されたが、第2部材にシリンダ10,10bが固定されるとともに、第1部材にロッド20,20dが固定されてもよい。
【0115】
さらに、摩擦材30,30a,30b,30c,30dの軸方向Lの両端部の一方に圧縮プレート40,40b,40dを配置し、他方に端部プレート50,50a,50b,50dを配置したが、両端部に圧縮プレート40,40b,40dを配置してもよいし、端部プレート50,50a,50b,50dを配置してもよい。また、摩擦材30,30a,30c,30b,30dの両端部の一方に端部プレート50,50a,50b,50dを配置し,他方に圧縮プレート40,40b,40dを配置してもよい。摩擦材30,30a,30b,30c,30dの両端部のうちすくなとも一方に、一体物である端部プレート50,50a,50b,50dを配置することで、摩擦材30,30a,30b,30c,30dはユニット化させることができるため、好ましい。
【符号の説明】
【0116】
1,1A,1B,1C,1D…摩擦減衰装置
10,10b…シリンダ
10a…シリンダ先端部
11…収容空間
12…シリンダ側ストッパ
12a、22a…第1ストッパ
12b、22b…第2ストッパ
20,20d…ロッド
20a…ロッド先端部
30,30a,30b,30c,30d…摩擦材
40,40b,40d…圧縮プレート
50,50a,50b,50d…端部プレート
51…十字スリット
60…通しボルト
L…軸方向