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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】蓄電デバイスモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/653 20140101AFI20240328BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20240328BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240328BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20240328BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240328BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20240328BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20240328BHJP
   H01G 2/08 20060101ALN20240328BHJP
【FI】
H01M10/653
H01G4/38 A
H01M10/613
H01M10/643
H01M10/647
H01M10/6554
H01M50/20
H01G2/08 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020082144
(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公開番号】P2021177461
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】根橋 聡智
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3172194(JP,U)
【文献】特開2020-017355(JP,A)
【文献】特開2014-157763(JP,A)
【文献】特開2019-220291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52 - 10/667
H01M 50/20 - 50/298
H01G 4/38
H01G 2/08
H01M 50/50 - 50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状を有しており、その軸方向の一方側の端部に一対の端子が設けられた複数の蓄電デバイスセルと、
各蓄電デバイスセルの前記一対の端子が取り付けられ、前記複数の蓄電デバイスセルが前記軸方向と直交する配列方向に沿って配列された状態で実装される基板と、
前記軸方向および前記配列方向の両方に直交する直交方向の一方側において、前記基板に実装された前記複数の蓄電デバイスセルの側面を覆う平板状の第1被覆部が設けられたフレームと、
前記直交方向の前記一方側とは反対の他方側において、前記基板に実装された前記複数の蓄電デバイスセルの側面を覆う第2被覆部、および、前記第2被覆部における前記配列方向の両端から前記第1被覆部側に向かってそれぞれ延びた固定部が設けられたカバーと、
前記複数の蓄電デバイスセルと前記第1被覆部との間および前記複数の蓄電デバイスセルと前記第2被覆部との間にそれぞれ配置された熱伝導性エラストマーと、を備えており、
前記フレームの前記第1被覆部を取り付け対象物に接触させた状態で、前記カバーの前記固定部を前記取り付け対象物に固定することで前記取り付け対象物に取り付けられることを特徴とする蓄電デバイスモジュール。
【請求項2】
前記フレームは、前記第1被覆部における前記軸方向の前記一方側の端から延びており、前記基板を覆う第3被覆部が設けられており、
前記熱伝導性エラストマーは、前記基板と前記第3被覆部との間にも配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイスモジュール。
【請求項3】
前記フレームは、前記第3被覆部の前記第1被覆部側とは反対側からの端から前記軸方向において前記蓄電デバイスセル側に延びるとともに前記直交方向に関して前記第1被覆部から離れるように、前記軸方向および前記配列方向の両方に平行な面に対して傾斜した傾斜部が設けられており、
前記傾斜部は、前記カバーの前記第2被覆部によって前記第1被覆部側に押さえつけられることを特徴とする請求項2に記載の蓄電デバイスモジュール。
【請求項4】
前記複数の蓄電デバイスが実装された前記基板および前記フレームを2つずつ備えており、
前記2つの基板は、各基板に実装された前記複数の蓄電デバイスの前記軸方向および前記配列方向が平行であり、かつ、実装面とは反対側の面が前記2つのフレームの前記第3被覆部を挟んで対向するように配置され、
前記カバーは、前記2つの基板にそれぞれ実装された前記複数の蓄電デバイスセルの側面をそれぞれ覆う2つの前記第2被覆部が一体に形成されており、かつ、前記2つの基板を挟み付けるスリットが形成された挟持部が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の蓄電デバイスモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電デバイスセルを備えた蓄電デバイスモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ、コンデンサ、蓄電池などの蓄電デバイスは、必要に応じて複数の蓄電デバイスセルを接続しモジュール化して用いられる。特許文献1には、放熱体に固定された複数のキャパシタを備えたキャパシタモジュールが開示されている。
【0003】
上述のキャパシタモジュールにおいては、耐振動性を高めるために、複数のキャパシタを1つずつ固定ネジによって放熱体に固定している。また、上述のキャパシタモジュールにおいては、放熱性を高めるために、放熱体の内部に冷却水を流通させる冷却通路を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/126082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のキャパシタモジュールにおいては、複数のキャパシタを1つずつ固定ネジで固定しているので、組み立て性が低い。また、液冷の要素をモジュールに取り入れている点からも、組み立て性が低い。また、液冷の要素をモジュールに取り入れているので、水密封止についての品質および製造管理や性能検証が必要であり、設計の難易度が上昇する。
【0006】
本発明の目的は、組立性を低下させることなく、かつ、設計の難易度を抑えつつ、高い耐振動性および放熱性を有する蓄電デバイスモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蓄電デバイスモジュールは、柱状を有しており、その軸方向の一方側の端部に一対の端子が設けられた複数の蓄電デバイスセルと、各蓄電デバイスセルの前記一対の端子が取り付けられ、前記複数の蓄電デバイスセルが前記軸方向と直交する配列方向に沿って配列された状態で実装される基板と、前記軸方向および前記配列方向の両方に直交する直交方向の一方側において、前記基板に実装された前記複数の蓄電デバイスセルの側面を覆う平板状の第1被覆部が設けられたフレームと、前記直交方向の前記一方側とは反対の他方側において、前記基板に実装された前記複数の蓄電デバイスセルの側面を覆う第2被覆部、および、前記第2被覆部における前記配列方向の両端から前記第1被覆部側に向かってそれぞれ延びた固定部が設けられたカバーと、前記複数の蓄電デバイスセルと前記第1被覆部との間および前記複数の蓄電デバイスセルと前記第2被覆部との間にそれぞれ配置された熱伝導性エラストマーと、を備えており、前記フレームの前記第1被覆部を取り付け対象物に接触させた状態で、前記カバーの前記固定部を前記取り付け対象物に固定することで前記取り付け対象物に取り付けられる。
【0008】
この構成によると、複数の蓄電デバイスセルと第1被覆部との間および複数の蓄電デバイスセルと第2被覆部との間にそれぞれ配置された熱伝導性エラストマーにより、耐振動性および放熱性を高めることができる。さらに、複数の蓄電デバイスセルをフレームに設けられた第1被覆部とカバーに設けられた第2被覆部とで挟み込み、カバーに設けられた固定部を取り付け対象物に固定することで、複数の蓄電デバイスセルをまとめて固定することができる。よって、高い耐振動性および放熱性を得つつも組み立て性が低下することがない。また、平板状の第1被覆部を取り付け対象物の平面に接触させた状態で取り付け対象物に取り付けることができるので、汎用の冷却部品に取り付けることができる。したがって、放熱性を高めるために構造を複雑化させることがないので、設計の難易度を抑えることができる。
【0009】
また、上述の蓄電デバイスモジュールにおいて前記フレームは、前記第1被覆部における前記軸方向の前記一方側の端から延びており、前記基板を覆う第3被覆部が設けられており、前記熱伝導性エラストマーは、前記基板と前記第3被覆部との間にも配置されている。
【0010】
この構成によると、基板と第3被覆部との間に配置された熱伝導性エラストマーにより、耐振動性および放熱性をさらに高めることができる。
【0011】
さらに、上述の蓄電デバイスモジュールにおいて前記フレームは、前記第3被覆部の前記第1被覆部側とは反対側からの端から前記軸方向において前記蓄電デバイスセル側に延びるとともに前記直交方向に関して前記第1被覆部から離れるように、前記軸方向および前記配列方向の両方に平行な面に対して傾斜した傾斜部が設けられており、前記傾斜部は、前記カバーの前記第2被覆部によって前記第1被覆部側に押さえつけられる。
【0012】
この構成によると、傾斜部が板バネとして機能し、傾斜部の付勢力によってフレームを取り付け対象物に押し付けることができる。したがって、耐振動性をさらに高めることができる。
【0013】
加えて、上述の蓄電デバイスモジュールは、前記複数の蓄電デバイスが実装された前記基板および前記フレームを2つずつ備えており、前記2つの基板は、各基板に実装された前記複数の蓄電デバイスの前記軸方向および前記配列方向が平行であり、かつ、実装面とは反対側の面が前記2つのフレームの前記第3被覆部を挟んで対向するように配置され、前記カバーは、前記2つの基板にそれぞれ実装された前記複数の蓄電デバイスセルの側面をそれぞれ覆う2つの前記第2被覆部が一体に形成されており、かつ、前記2つの基板を挟み付けるスリットが形成された挟持部が設けられている。
【0014】
この構成によると、カバーに設けられた挟持部のスリットにより2つのフレームの第3被覆部を挟む2つの基板を挟み付けることで、容易に2つの基板同士および2つのフレーム同士を固定することができる。よって、組み立て性に優れている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、組立性を低下させることなく、かつ、設計の難易度を抑えつつ、高い耐振動性および放熱性を有する蓄電デバイスモジュールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態にかかる蓄電システムモジュールの分解斜視図である。
図2】一方のセル群に対応する基板およびフレームを示す斜視図であり、(a)はキャパシタセルを基板に実装した状態、(b)はキャパシタセルをフレームに搭載した状態を示す。
図3】他方のセル群に対応する基板およびフレームを示す斜視図であり、(a)はキャパシタセルを基板に実装した状態、(b)はキャパシタセルをフレームに搭載した状態を示す。
図4】カバーを取り付ける前の状態を示す斜視図である。
図5】取り付け対象物に固定した状態を示す斜視図である。
図6図5のVI-VI線矢視図である。
図7】組み立て手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
本実施形態にかかるキャパシタモジュール1は、複数のキャパシタセル2を取り付け対象物10(図5参照)に取り付けるためのものである。本実施形態においては、上方を向く水平面に対してキャパシタモジュール1が取り付けられることとする。
【0019】
図1に示すように、キャパシタセル2は、略円柱状を有しており、その軸方向の一方側の端部に正極端子および負極端子からなる一対の端子21が設けられている。図4および図5に示すように、キャパシタモジュール1においては、複数のキャパシタセル2は、その軸方向と直交する配列方向に沿って配列された状態で固定される。キャパシタモジュール1において、複数のキャパシタセル2は、いずれも配列方向に沿って配列された6つのキャパシタセル2からなり、軸方向に並んだ2つのセル群2a、2bを構成する。以降の説明において、キャパシタセル2の軸方向および配列方向の両方に直交する方向を「上下方向」と称する。
【0020】
図1に示すように、キャパシタモジュール1は、複数のキャパシタセル2、基板3、フレーム4、カバー5および熱伝導性エラストマー6を主に備えている。基板3およびフレーム4は、2つのセル群2a、2bにそれぞれ対応して2つ備えられている。以降の説明において、必要に応じて、セル群2aに対応する基板3を「基板3a」と称し、セル群2bに対応する基板3を「基板3b」と称する。また、必要に応じて、セル群2aに対応するフレーム4を「フレーム4a」と称し、セル群2bに対応するフレーム4を「フレーム4b」と称する。熱伝導性エラストマー6は、各セル群2a、2bに対して3つずつ、合計6つ備えられている。
【0021】
基板3は、プリント配線基板であり、図2(a)および図3(a)に示すように、配列方向に長尺な矩形形状を有している。基板3には、図1に示すように、各キャパシタセル2の一対の端子21が挿通される複数の孔31が形成されている。セル群2aに対応する基板3aには、キャパシタセル2の一対の端子21が挿通される2つの孔31が上下方向に並ぶように形成されている。一方、セル群2bに対応する基板3bには、キャパシタセル2の一対の端子21が挿通される2つの孔31が基板3bの長手方向(配列方向)に並ぶように形成されている。
【0022】
図2(a)および図3(a)に示すように、基板3には、各キャパシタセル2の一対の端子21が孔31に挿通された状態ではんだ9により取り付けられる。これにより、各基板3には、6つのキャパシタセル2が配列方向に配列された状態で実装される。基板3に実装されたキャパシタセル2同士は、一対の端子21がはんだ9を介して基板3のパターン(図示せず)にそれぞれ接続されることで、直列または並列の回路を構成する。
【0023】
2つの基板3a、3bは、キャパシタセル2が実装される実装面とは反対の裏面32が2つのフレーム4a、4bの後述する基板被覆部43を挟んで対向するように配置される。このとき、各基板3a、3bに実装された複数のキャパシタセル2の軸方向および配列方向が平行となる。すなわち、セル群2aに属するキャパシタセル2の軸方向とセル群2bに属するキャパシタセル2の軸方向とは平行である。より詳細には、軸方向に延び、かつ、セル群2aに属する6つのキャパシタセル2の中心をそれぞれ通る6本の直線が、セル群2bに属する6つのキャパシタセル2の中心をそれぞれ通るように、12個のキャパシタセル2が配置される。また、セル群2aに属する複数のキャパシタセル2の配列方向とセル群2bに属する複数のキャパシタセル2の配列方向とは平行である。
【0024】
2つのセル群2a、2bにそれぞれ対応して備えられている2つのフレーム4a、4bは、同一形状を有している。フレーム4は、アルミニウム合金や銅などの金属製の平板を折り曲げることで形成されている。フレーム4は、セル被覆部(第1被覆部)41、基板被覆部(第3被覆部)43および傾斜部47を主に有している。
【0025】
セル被覆部41は、平板状であり、図2(b)および図3(b)に示すように、基板3に実装された6つのキャパシタセル2の側面を下方側から覆う。セル被覆部41は、配列方向において6つのキャパシタセル2に跨っている。セル被覆部41は、軸方向においてキャパシタセル2の端子21が設けられていない方の端部付近から、キャパシタセル2が実装された基板3付近まで延びている。
【0026】
基板被覆部43は、図2(b)および図3(b)に示すように、セル被覆部41における軸方向の基板3側の端から上方に向かって延びている。基板被覆部43は、基板3におけるキャパシタセル2が実装される実装面とは反対側の裏面32を覆う。
【0027】
基板被覆部43は、第1部分43a、第2部分43bおよび第3部分43cを有している。第1部分43a、第2部分43bおよび第3部分43cは、図2(b)および図3(b)に示すように、裏面32側から見た基板3における最も左に位置するキャパシタセル2、左から3番目に位置するキャパシタセル2および左から5番目に位置するキャパシタセル2の3つのキャパシタセル2が取り付けられている部分をそれぞれ覆う。
【0028】
第1部分43a、第2部分43bおよび第3部分43cには、はんだ9のフィレットによる熱伝導性エラストマー6(後述)の盛り上がりを逃すための4つの孔45がそれぞれ形成されている。4つの孔45は、上方および下方、ならびに、配列方向の一方および他方に配置されており、十字状(十字の先端)に並んでいる。
【0029】
2つの基板3a、3bが2つのフレーム4a、4bの基板被覆部43を挟んで対向するように配置されたとき、4つの孔45のうち、上方および下方に配置された2つの孔45は、セル群2aに対応する基板3aのはんだ9のフィレットによる熱伝導性エラストマー6の盛り上がりを逃す。また、4つの孔45のうち、配列方向の一方および他方に配置された2つの孔45は、セル群2bに対応する基板3aのはんだ9のフィレットによる熱伝導性エラストマー6の盛り上がりを逃す。
【0030】
基板被覆部43には、第1部分43aと第2部分43bとの間に形成された開口44a、および、第2部分43bと第3部分43cとの間に形成された開口44bが設けられている。基板被覆部43には、第3部分43cの開口44bが形成されている側とは反対側に形成された切欠44cが設けられている。
【0031】
上述のように、2つの基板3a、3bは、裏面32が2つのフレーム4a、4bの基板被覆部43を挟んで対向するように配置される。このとき、セル群2aに対応するフレーム4aにおける基板被覆部43の第1部分43aは、セル群2bに対応するフレーム4bにおける基板被覆部43の切欠き44c内に位置する。また、フレーム4aにおける基板被覆部43の第2部分43bは、フレーム4bにおける基板被覆部43の開口44b内に位置する。さらに、フレーム4aにおける基板被覆部43の第3部分43cは、フレーム4bにおける基板被覆部43の開口44a内に位置する。
【0032】
同様に、フレーム4bにおける基板被覆部43の第1部分43aは、フレーム4aにおける基板被覆部43の切欠き44c内に位置する。また、フレーム4bにおける基板被覆部43の第2部分43bは、フレーム4aにおける基板被覆部43の開口44b内に位置する。さらに、フレーム4bにおける基板被覆部43の第3部分43cは、フレーム4aにおける基板被覆部43の開口44a内に位置する。
【0033】
傾斜部47は、図2(b)および図3(b)に示すように、基板被覆部43の上端、すなわち基板被覆部43のセル被覆部41側とは反対側の端から、軸方向に沿ってキャパシタセル2側に延びている。基板被覆部43の下端に接続されたセル被覆部41と上端に接続された傾斜部47とは、上下に対向する。傾斜部47は、配列方向において6個のキャパシタセル2に跨っている。傾斜部47は、キャパシタセル2の端子21が設けられている方の端部の側面を覆っている。
【0034】
傾斜部47は、図6に示すように、軸方向および配列方向の両方に平行な面に対して傾斜している。より詳細には、傾斜部47は、基板被覆部43とは反対側の端が、基板被覆部43側の端よりも上下方向においてセル被覆部41から離れるように傾斜している。
【0035】
カバー5は、図6に示すように、セル群2a、2bに共通に設けられている。カバー5は、アルミニウム合金や銅などの金属製の平板を折り曲げることで形成されている。カバー5は、図4に示すように、セル被覆部(第2被覆部)51、固定部53および挟持部55を主に有している。
【0036】
セル被覆部51は、図5および図6に示すように、基板3a、3bにそれぞれ実装された合計12個のキャパシタセル2の側面を上方から覆う。すなわち、カバー5には、2つの基板3a、3bにそれぞれ実装された複数のキャパシタセル2の側面をそれぞれ覆うセル被覆部51が一体に形成されている。セル被覆部51は、配列方向において6つのキャパシタセル2に跨っている。セル被覆部51は、軸方向において基板3aに実装されたキャパシタセル2の端子21が設けられていない方の端部付近から、基板3bに実装されたキャパシタセル2の端子21が設けられていない方の端部付近まで延びている。
【0037】
セル被覆部51は、軸方向の中央部に形成された2つの段差部51aを有している。2つの段差部51aは、いずれも配列方向に延びており、軸方向に並んで設けられている。セル被覆部51における2つの段差部51aの間の部分は、2つの段差部51aの外側の部分よりも上方に盛り上がった膨出部52となっている。膨出部52は、図6に示すように、カバー5がフレーム4に取り付けられたとき、フレーム4の傾斜部47を下方に(セル被覆部41側に)押さえつける。
【0038】
固定部53は、セル被覆部51における配列方向の両端から下方(セル被覆部41側)に向かってそれぞれ延びている。固定部53は、セル被覆部51における基板3aに実装されたキャパシタセル2を覆う部分の配列方向の両端と、基板3bに実装されたキャパシタセル2を覆う部分の配列方向の両端と、に設けられている。つまり、固定部53は、合計4つ設けられている。固定部53の下端部は、配列方向に沿って外側に折り曲げられており、この折り曲げられた部分にネジ孔53aが形成されている。
【0039】
挟持部55は、セル被覆部51の膨出部52における配列方向の両端から下方に向かってそれぞれ延びている。2つの挟持部55には、上下方向に延びるスリット55aがそれぞれ形成されている。スリット55aは、2つの基板3a、3bを軸方向の両側から挟み付けるためのものである。2つの挟持部55に形成されたスリット55aは、同一形状であり、配列方向に沿う一直線上に並んでいる。
【0040】
熱伝導性エラストマー6は、例えばシリコーン系やフッ素系のゴム状弾性体である。熱伝導性エラストマー6は、少なくとも空気よりも高い熱伝導率を有し、熱伝導率は0.1~2.5W/m・Kが好ましい。熱伝導性エラストマー6は、熱伝導率が高くなると硬度が高くなる傾向があり、熱伝導性エラストマー6とキャパシタセル2、フレーム4、カバー5各々との密着性を高めて熱伝導しやすいように、熱伝導率は1.5~2.0W/m・Kがより好ましい。熱伝導性エラストマー6は、各セル群2a、2bに対して3つずつ、合計6つ備えられている。
【0041】
セル群2aに対して備えられた3つの熱伝導性エラストマー6は、図2(b)および図4に示すように、セル群2aを構成する6つのキャパシタセル2とフレーム4aのセル被覆部41との間、セル群2aを構成する6つのキャパシタセル2とカバー5のセル被覆部51との間、および、基板3aの裏面32とフレーム4aの基板被覆部43との間、に配置されている。これら3つの熱伝導性エラストマー6は、いずれもセル群2aを構成する6つのキャパシタセル2に跨っている。
【0042】
セル群2bに対して備えられた3つの熱伝導性エラストマー6は、図3(b)および図4に示すように、セル群2bを構成する6つのキャパシタセル2とフレーム4bのセル被覆部41との間、セル群2bを構成する6つのキャパシタセル2とカバー5のセル被覆部51との間、および、基板3bの裏面32とフレーム4bの基板被覆部43との間、に配置されている。これら3つの熱伝導性エラストマー6は、いずれもセル群2bを構成する6つのキャパシタセル2に跨っている。
【0043】
熱伝導性エラストマー6は、絶縁体としても機能する。キャパシタセル2とフレーム4bのセル被覆部41との間に配置された熱伝導性エラストマー6により、キャパシタセル2とフレーム4との間を絶縁することができる。キャパシタセル2とカバー5のセル被覆部51との間に配置された熱伝導性エラストマー6により、キャパシタセル2とカバー5との間を絶縁することができる。基板3にけるはんだ9が設けられる裏面32とフレーム4の基板被覆部43との間に配置された熱伝導性エラストマー6により、キャパシタセル2とフレーム4との間を絶縁することができる。
【0044】
次に、図7を参照しつつ、キャパシタモジュール1の組み立て手順の一例について説明する。
【0045】
まず、図2(a)および図3(a)に示すように、基板3a、3bに対して、キャパシタセル2の端子21をはんだ9により取り付けることで、キャパシタセル2を6つずつ実装する(ステップS1)。さらに、フレーム4a、4bのセル被覆部41の上面に対して、熱伝導性エラストマー6をそれぞれ貼り付ける(ステップS2)。
【0046】
次に、図2(b)および図3(b)に示すように、フレーム4a、4bにおけるセル被覆部41の熱伝導性エラストマー6が貼り付けられた上面に対して、基板3a、3bに実装されたキャパシタセル2をそれぞれ搭載する(ステップS3)。このとき、基板3aとフレーム4aの基板被覆部43との間、および、基板3bとフレーム4bの基板被覆部43との間に、それぞれ熱伝導性エラストマー6を挟み込んだ状態で、フレーム4a、4bにキャパシタセル2をそれぞれ搭載する。
【0047】
続いて、図4に示すように、基板3a、3bの裏面32がフレーム4a、4bの基板被覆部43を挟んで対向するように配置する。このとき、フレーム4における平板状のセル被覆部41を取り付け対象物10の平面に接触させた状態とする。そして、セル群2aを構成する6つのキャパシタセル2の上面と、セル群2bを構成する6つのキャパシタセル2の上面とに、熱伝導性エラストマー6をそれぞれ貼り付ける(ステップS4)。
【0048】
さらに、図5および図6に示すように、キャパシタセル2が搭載されたフレーム4a、4bにカバー5を取り付ける(ステップS5)。フレーム4a、4bにカバー5を取り付けることで、カバー5の挟持部55に形成されたスリット55aにより、2つの基板3a、3bが軸方向の両側から挟み付けられる。このとき、基板3の裏面32とフレーム4の基板被覆部43との間に配置された熱伝導性エラストマー6は、はんだ9と接する部分がフィレットにより盛り上がる。この熱伝導性エラストマー6のフィレットにより盛り上がった部分は、基板被覆部43に形成された孔45の中に逃げる。
【0049】
最後に、図5に示すように、4本のネジ8を、カバー5に設けられた4つの固定部53にそれぞれ形成されたネジ孔53aにそれぞれ取り付けることで、固定部53を取り付け対象物10に固定する(ステップS6)。このとき、カバー5の膨出部52によりフレーム4の傾斜部47が下方に押さえつけられる。傾斜部47は板バネとして機能するので、傾斜部47の付勢力によりフレーム4が取り付け対象物10に押し付けられる。
【0050】
以上のように、本実施形態のキャパシタモジュール1は、略円柱状を有しており、その軸方向の一方側の端部に一対の端子21が設けられた複数のキャパシタセル2と、各キャパシタセル2の一対の端子21が取り付けられ、複数のキャパシタセル2が軸方向と直交する配列方向に沿って配列された状態で実装される基板3と、基板3に実装された複数のキャパシタセル2の側面を下方側から覆う平板状のセル被覆部41が設けられたフレーム4と、基板3に実装された複数のキャパシタセル2の側面を上方から覆うセル被覆部51、および、セル被覆部51における配列方向の両端から下方に向かってそれぞれ延びた固定部53が設けられたカバー5と、複数のキャパシタセル2とセル被覆部41との間および複数のキャパシタセル2とセル被覆部51との間にそれぞれ配置された熱伝導性エラストマー6とを備えている。そして、フレーム4のセル被覆部41を取り付け対象物に接触させた状態で、カバー5の固定部53を取り付け対象物10に固定することで取り付け対象物10に取り付けられる。
【0051】
上述の構成によると、複数のキャパシタセル2とセル被覆部41との間および複数のキャパシタセル2とセル被覆部51との間にそれぞれ配置された熱伝導性エラストマー6により、耐振動性および放熱性を高めることができる。さらに、複数のキャパシタセル2をフレーム4に設けられたセル被覆部41とカバー5に設けられたセル被覆部51とで挟み込み、カバー5に設けられた固定部53を取り付け対象物10に固定することで、複数のキャパシタセル2をまとめて固定することができる。よって、高い耐振動性および放熱性を得つつも組み立て性が低下することがない。また、平板状のセル被覆部41を取り付け対象物10の平面に接触させた状態で取り付け対象物10に取り付けることができるので、水冷プレート、シートタイプのヒートパイプ、ペルチェモジュールなどの汎用の冷却部品に取り付けることができる。したがって、放熱性を高めるために構造を複雑化させることがないので、設計の難易度を抑えることができる。
【0052】
本実施形態のキャパシタモジュール1では、フレーム4は、セル被覆部41における軸方向の基板3側の端から上方に向かって延びており、基板3の裏面32を覆う基板被覆部43が設けられている。熱伝導性エラストマー6は、基板3と基板被覆部43との間にも配置されている。したがって、基板3と基板被覆部43との間に配置された熱伝導性エラストマー6により、耐振動性および放熱性をさらに高めることができる。
【0053】
本実施形態のキャパシタモジュール1では、フレーム4は、基板被覆部43の上端から、軸方向においてキャパシタセル2側に延びた傾斜部47が設けられている。傾斜部47は、基板被覆部43とは反対側の端が、基板被覆部43側の端よりも上下方向においてセル被覆部41から離れるように、軸方向および配列方向の両方に平行な面に対して傾斜している。傾斜部47は、カバー5のセル被覆部51に設けられた膨出部52によって下方に押さえつけられる。したがって、傾斜部47が板バネとして機能し、傾斜部47の付勢力によってフレーム4を取り付け対象物10に押し付けることができる。よって、耐振動性をさらに高めることができる。
【0054】
本実施形態のキャパシタモジュール1は、複数のキャパシタセル2が実装された基板3およびフレーム4を2つずつ備えている。2つの基板3a、3bは、各基板3a、3bに実装された複数のキャパシタセル2の軸方向および配列方向が平行であり、かつ、実装面とは反対側の裏面32が2つのフレーム4a、4bの基板被覆部43を挟んで対向するように配置される。カバー5は、2つの基板3a、3bにそれぞれ実装された複数のキャパシタセル2の側面をそれぞれ覆うセル被覆部51が一体に形成されており、かつ、2つの基板3a、3bを挟み付けるスリット55aが形成された挟持部55が設けられている。したがって、カバー5に設けられた挟持部55のスリット55aにより2つのフレーム4a、4bの基板被覆部43を挟む2つの基板3a、3bを挟み付けることで、容易に2つの基板3a、3b同士および2つのフレーム4a、4b同士を固定することができる。よって、組み立て性に優れている。
【0055】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0056】
上述の実施形態では、熱伝導性エラストマー6が、複数のキャパシタセル2とセル被覆部41との間および複数のキャパシタセル2とセル被覆部51との間に加えて、基板3と基板被覆部43との間に配置されている場合について説明したが、これに限定されない。熱伝導性エラストマー6は、少なくとも複数のキャパシタセル2とセル被覆部41との間、および、複数のキャパシタセル2とセル被覆部51との間に配置されていればよい。
【0057】
上述の実施形態では、フレーム4に対して取り付け対象物10に押し付ける方向の付勢力を付与する板バネとして機能する傾斜部47がフレーム4に設けられている場合について説明したが、これには限定されない。フレーム4に対して取り付け対象物10に押し付ける方向の付勢力を付与する付勢部材が、フレーム4以外に設けられていてもよい。また、このような付勢部材はなくてもよい。
【0058】
上述の実施形態では、複数のキャパシタセル2が実装された基板3およびフレーム4を2つずつ備えている場合について説明したが、基板3およびフレーム4は1つであってもよい。
【0059】
上述の実施形態においては、2つの基板3a、3bにそれぞれ実装された複数のキャパシタセル2の側面をそれぞれ覆うセル被覆部51が一体に形成されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、基板3aに実装されたキャパシタセル2の側面を覆うセル被覆部51が形成されたカバー5と、基板3bに実装されたキャパシタセル2の側面を覆うセル被覆部51が形成されたカバー5とが別部材であってもよい。
【0060】
上述の実施形態においては、2つの基板3a、3bを挟み付けるスリット55aが形成された挟持部55がカバー5に設けられている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、2つの基板3a、3bを挟み付けるスリット55aが、カバー5とは別の部材に形成されていてもよい。また、スリット55a自体形成されていなくてもよい。
【0061】
上述の実施形態においては、2つのフレーム4a、4bが同一形状を有している場合について説明したが、2つのフレーム4a、4bの形状は同一でなくてもよい。ただし、2つのフレーム4a、4bの形状が同一である場合には、組み立て作業を行う際に2つのフレーム4a、4bを区別する必要がないので、組み立て作業が容易である。したがって、組立性の観点から、2つのフレーム4a、4bの形状が同一であることが好ましい。
【0062】
上述の実施形態においては、セル群2a、2bがそれぞれ6つのキャパシタセル2で構成されている場合について説明したが、セル群2a、2bを構成するキャパシタセル2の個数はこれに限定されるものではない。ただし、セル群2a、2bを構成するキャパシタセル2の個数が奇数である場合、2つのフレーム4a、4bにおける基板被覆部43が互いに異なる形状となる。したがって、2つのフレーム4a、4bの形状を同一にする観点から、セル群2a、2bを構成するキャパシタセル2の個数は偶数であるのが好ましい。
【0063】
上述の実施形態においては、取り付け対象物10の上方を向く水平面に対してキャパシタモジュール1が取り付けられる場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、例えばキャパシタモジュール1は下方を向く水平面や垂直面に取り付けられてもよい。
【0064】
上述の実施形態においては、固定部53に形成されたネジ孔53aにネジ8を取り付けて、固定部53を取り付け対象物に固定する場合について説明したが、固定部53の固定方法はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば取り付け対象物10に形成された固定ピンを固定部53に形成された孔に挿通することで、固定部53を取り付け対象物に固定してもよい。
【0065】
上述の実施形態においては、キャパシタセル2の端子21を基板3に形成された孔31に挿通してはんだ9により取り付ける、いわゆるスルーホール実装を行う場合について説明したが、キャパシタセル2の基板3への実装方法はこれに限定されるものではない。すなわち、基板3の実装面にキャパシタセル2の端子21を取り付ける表面実装であってもよい。
【0066】
上述の実施形態においては、略円柱状を有する複数のキャパシタセル2を取り付け対象物10に取り付けるためのキャパシタモジュール1について説明したが、本発明は、コンデンサや蓄電池を含む蓄電デバイス全般に適用することができる。蓄電デバイスの形状は、円柱状に限定されるものではなく、例えば角柱状など断面形状が多角形となるような柱状であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 キャパシタモジュール(蓄電デバイスモジュール)
2 キャパシタセル(蓄電デバイスセル)
3 基板
4 フレーム
5 カバー
6 熱伝導性エラストマー
21 端子
41 セル被覆部(第1被覆部)
43 基板被覆部(第3被覆部)
47 傾斜部
51 セル被覆部(第2被覆部)
53 固定部
55 挟持部
55a スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7