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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】検査ユニットおよび検体分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20240328BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20240328BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
G01N21/78 A
G01N35/04 E
G01N35/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020092864
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021188975
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】591029518
【氏名又は名称】テラメックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000120456
【氏名又は名称】栄研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141748
【弁理士】
【氏名又は名称】富永 浩司
(72)【発明者】
【氏名】小田 基浩
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特許第6379385(JP,B2)
【文献】特開2011-232205(JP,A)
【文献】特許第6043229(JP,B2)
【文献】特公昭59-000779(JP,B2)
【文献】特開2018-105693(JP,A)
【文献】特開平09-311109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0108865(US,A1)
【文献】特開2014-098645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/83
G01N 35/00-G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定部に照射された光を用いて前記測定部を検査する検査ユニットであって、
(a) 前記測定部に向けて拡散光を照射する照射部と、
(b) 前記測定部を撮像する撮像部と、
(c) 前記照射部および前記撮像部のそれぞれに対して、前記測定部を進退方向に沿って相対移動させる移動部と、
(d) 前記撮像部により取得された撮像データに基づいて、判定指標を生成する生成部と、
(e) 前記測定部に対応付けられた測定項目を、前記判定指標に基づいて判定する判定部と、
を備え、
前記照射部は、
(a-1) 各々が、独立して発光可能とされるとともに、前記進退方向と交差する配列方向に沿って配置された複数の光源と、
(a-2) 各光源から出射された出射光を透過させることによって、前記出射光を拡散させるレンズ拡散板と、
(a-3) 各光源および前記レンズ拡散板の間に設けられており、前記出射光を前記レンズ拡散板に導光する導光部と、
を有しており、
前記配列方向における前記レンズ拡散板の拡散角は、前記移動部により前記測定部が相対移動させられることによって、前記照射部からの光が前記測定部の各部に順次照射されるように設定されており、
前記照射部は、少なくとも、
前記複数の光源のうち、第1光源から出射される第1波長の光と、
前記複数の光源のうち、第2光源から出射され、かつ、前記第1波長と異なる第2波長の光とを、
交互に切り替えつつ繰り返し照射可能であり、
前記撮像部は、
複数の受光素子を前記配列方向に沿って一次元配置した撮像素子を有するとともに、
前記移動部により相対移動させられる前記測定部を撮像することによって、前記測定部に対応する二次元撮像データを取得し、
前記生成部は、前記二次元撮像データのうち、前記第1波長の光に基づいて撮像された第1撮像データと、前記第2波長の光に基づいて撮像された第2撮像データと、について、対応する画素データ毎に演算することにより、前記判定指標を生成することを特徴とする検査ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の検査ユニットにおいて、
前記照射部は、
前記第1波長の光と、
前記第2波長の光と、
前記複数の光源のうち、第3光源から出射され、かつ、前記第1および第2波長のそれぞれと異なる第3波長の光とを、
この順番に切り替えつつ繰り返し照射可能であり、
前記生成部は、
(i) 前記第1および第2撮像データについて、対応する画素データ毎に演算することにより、第1判定指標を生成するとともに、
(ii) 前記第2撮像データと、前記第3波長の光に基づいて撮像された第3撮像データと、について、対応する画素データ毎に演算することにより、第2判定指標を生成し、
前記判定部は、前記第1および第2判定指標の少なくとも一方を前記判定指標として、前記測定項目を判定することを特徴とする検査ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の検査ユニットにおいて、
前記出射光は、前記導光部に形成された導光孔を介して前記レンズ拡散板に導光され、
前記拡散光の照射方向と垂直な方向における前記導光孔の内周長さは、各光源から離隔するにしたがって増大していることを特徴とする検査ユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の検査ユニットにおいて、
前記撮像部は、前記測定部で反射した光を撮像することを特徴とする検査ユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の検査ユニットにおいて、
各光源は、点光源であることを特徴とする検査ユニット。
【請求項6】
検体分析装置であって、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の検査ユニットと、
試験体上に設けられた前記測定部に検体を吐出する検体処理ユニットと、
前記測定部に検体が供給された前記試験体を、前記検体処理ユニットから前記検査ユニットに移送する移送ユニットと、
を備えることを特徴とする検体分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査ユニットおよびこの検査ユニットを含む検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、尿などの検体中に含まれる成分の濃度を分析する場合において、画像処理により試験体に設けられた測定部の判定をする手法が知られている(例えば、特許文献1)。また、レンズ拡散板を用いた技術についても、従来知られている(例えば、特許文献2)。さらに、二波長測光法に関する技術も、従来知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6379385号公報
【文献】特許第6043229号公報
【文献】特公昭59-000779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、複数の光源が一方向に沿って配列されている場合、測定部上における注目点と各光源と、の間の距離(光路長)のそれぞれは、異なったものとなる。その結果、これら光源を用いた場合、二波長測光法に従った測定を良好に実行することができないという問題が生ずる。
【0005】
そこで、本発明では、一方向に沿って配置された複数の光源を用いる場合であっても、二波長測光法に基づいた測定を良好に実行できる検査ユニットおよび、この検査ユニットを含む検体分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、測定部に照射された光を用いて前記測定部を検査する検査ユニットであって、前記測定部に向けて拡散光を照射する照射部と、前記測定部を撮像する撮像部と、前記照射部および前記撮像部のそれぞれに対して、前記測定部を進退方向に沿って相対移動させる移動部と、前記撮像部により取得された撮像データに基づいて、判定指標を生成する生成部と、前記測定部に対応付けられた測定項目を、前記判定指標に基づいて判定する判定部とを備え、前記照射部は、各々が、独立して発光可能とされるとともに、前記進退方向と交差する配列方向に沿って配置された複数の光源と、各光源から出射された出射光を透過させることによって、前記出射光を拡散させるレンズ拡散板と、各光源および前記レンズ拡散板の間に設けられており、前記出射光を前記レンズ拡散板に導光する導光部とを有しており、前記配列方向における前記レンズ拡散板の拡散角は、前記移動部により前記測定部が相対移動させられることによって、前記照射部からの光が前記測定部の各部に順次照射されるように設定されており、前記照射部は、少なくとも、前記複数の光源のうち、第1光源から出射される第1波長の光と、前記複数の光源のうち、第2光源から出射され、かつ、前記第1波長と異なる第2波長の光とを、交互に切り替えつつ繰り返し照射可能であり、前記撮像部は、複数の受光素子を前記配列方向に沿って一次元配置した撮像素子を有するとともに、前記移動部により相対移動させられる前記測定部を撮像することによって、前記測定部に対応する二次元撮像データを取得し、前記生成部は、前記二次元撮像データのうち、前記第1波長の光に基づいて撮像された第1撮像データと、前記第2波長の光に基づいて撮像された第2撮像データと、について、対応する画素データ毎に演算することにより、前記判定指標を生成することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の検査ユニットにおいて、前記照射部は、前記第1波長の光と、前記第2波長の光と、前記複数の光源のうち、第3光源から出射され、かつ、前記第1および第2波長のそれぞれと異なる第3波長の光とを、この順番に切り替えつつ繰り返し照射可能であり、前記生成部は、前記第1および第2撮像データについて、対応する画素データ毎に演算することにより、第1判定指標を生成するとともに、前記第2撮像データと、前記第3波長の光に基づいて撮像された第3撮像データと、について、対応する画素データ毎に演算することにより、第2判定指標を生成し、前記判定部は、前記第1および第2判定指標の少なくとも一方を前記判定指標として、前記測定項目を判定することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の検査ユニットにおいて、前記出射光は、前記導光部に形成された導光孔を介して前記レンズ拡散板に導光され、前記拡散光の照射方向と垂直な方向における前記導光孔の内周長さは、各光源から離隔するにしたがって増大していることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の検査ユニットにおいて、前記撮像部は、前記測定部で反射した光を撮像することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の検査ユニットにおいて、各光源は、点光源であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6の発明は、検体分析装置であって、請求項1から請求項5のいずれかに記載の検査ユニットと、試験体上に設けられた前記測定部に検体を吐出する検体処理ユニットと、前記測定部に検体が供給された前記試験体を、前記検体処理ユニットから前記検査ユニットに移送する移送ユニットとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1から請求項6に記載の発明では、配列方向に沿って配置された各光源からの光を、レンズ拡散板に透過させることができる。これにより、照射部から測定部に照射される各波長の光の強度を、それぞれ均一化することができる。そのため、測定部上における注目点と各光源と、の間の距離(光路長)のそれぞれは、同一なものとして取り扱うことができる。その結果、複数の光源から出射される光を用いた場合であっても、二波長測光法に基づいた測定を良好に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態における検体分析装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態における検査ユニットの構成の一例を示す左側面図である。
図3】本発明の実施の形態における検査ユニットの構成の一例を示す底面斜視図である。
図4】本発明の実施の形態における検査ユニットの構成の一例を示す底面図である。
図5図4のB-B線から見た照射部の断面図である。
図6図2のA-A線から見た照射部の断面図である。
図7】複数の光源の構成の一例を示す図である。
図8】試験体の構成の一例を示す平面図である。
図9】試験体の構成の一例を示す側面図である。
図10】制御ユニットの構成の一例を示すブロック図である。
図11】各光源から出射された光の撮像タイミングを説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
<1.検体分析装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態における検体分析装置1の構成の一例を示すブロック図である。ここで、検体分析装置1は、尿や血液等の生体試料中の成分(例えば、ブドウ糖および蛋白質等)の濃度を検査する装置である。図1に示すように、検体分析装置1は、主として、検体処理ユニット10と、移送ユニット40と、検査ユニット70と、制御ユニット90と、を有している。
【0016】
なお、以降の各図には、図面に記載された各構成要素の理解を助けるため、必要に応じて適宜、Z軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系が、付されている。
【0017】
検体処理ユニット10は、例えば試験管等の検体収納容器(図示省略)から供給される検体を、所望の位置(例えば、移送ユニット40に載置された試験体7の測定部7a)に吐出する。移送ユニット40は、測定部7aに検体が供給された試験体7を、検体処理ユニット10から検査ユニット70へ移送する。
【0018】
検査ユニット70は、試験体7上に設けられた測定部7aを撮像するとともに、取得された撮像データに対して画像処理を施すことによって、測定部7aに対応する測定項目の判定を実行する。なお、検査ユニット70の詳細な構成については後述する。
【0019】
制御ユニット90は、信号線99を介して検体処理ユニット10、移送ユニット40、および検査ユニット70のそれぞれと電気的に接続されており、これら要素10、40、70の動作を制御する。なお、制御ユニット90の詳細な構成については、後述する。
【0020】
<2.検査ユニットの構成>
図2から図4は、それぞれ検査ユニット70の構成の一例を示す左側面図、底面斜視図、および底面図である。図5は、図4のB-B線から見た照射部85の断面図である。図6は、図2のA-A線から見た照射部85の断面図である。図7は、複数の光源86(86a、86b、86c)の構成の一例を示す図であり、各光源86(86a、86b、86c)をレンズ拡散板88側から見た図である。
【0021】
検査ユニット70は、試験体7に設けられた測定部7aの明度分布に基づいて、液状の検体を検査する。図2に示すように、検査ユニット70は、主として、移動部71と、撮像部80と、照射部85と、を有している。
【0022】
ここで、「明度」とは、物体面の明るさを表すものであり、本実施の形態では、撮像部80により撮像された各画素の値が明度値に対応し、各画素の値の分布(すなわち、撮像データ)が明度分布に対応する。
【0023】
移動部71は、撮像部80および照射部85を、進退方向(矢印AR1方向)に沿って移動させる。図2に示すように、移動部71は、撮像部80および照射部85の下方に配置されている。これにより、移動部71が駆動させられると、撮像部80および照射部85は、測定部7aの直上に移動させられる。
【0024】
撮像部80は、移動部71により進退方向(矢印AR1方向)に沿って移動させられることによって、測定部7aを撮像する。図2に示すように、撮像部80は、主として、撮像素子81と、レンズ系83と、を有している。
【0025】
レンズ系83は、例えば試験体7で反射された光を撮像素子81に結像させる。図2に示すように、撮像部80は、レンズ系83の光軸が矢印AR2と平行になるように、設定されている。
【0026】
撮像素子81は、グレースケールの画像を取得可能なラインセンサであり、複数の受光素子が配列方向(矢印AR4方向)に沿って一次元配置されている。これにより、撮像素子81は、レンズ系83により結像させられた光を、この光の強さに応じた電気信号に変換する。ここで、撮像素子81として、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサが採用されても良い。
【0027】
照射部85は、例えば試験体7の測定部7aに向けて拡散光を照射する。図2および図5に示すように、照射部85から照射される光の照射方向(矢印AR3方向)がレンズ系83の光軸(矢印AR2方向と平行)に対して傾くように、照射部85は、撮像部80の筐体80a(図2および図3参照)に固定されている。図6に示すように、照射部85は、主として、複数の光源86(86a、86b、86c)と、導光部87と、レンズ拡散板88と、を有している。ここで、「照射方向」とは、照射部85から照射される拡散光の中心軸と平行な方向を言うものとする。
【0028】
複数の光源86(86a、86b、86c)のそれぞれは、例えばLED(Light Emitting Diode)に構成される点光源であり、 各々は、独立して発光可能(発光制御可能)とされている。
【0029】
図5に示すように、光源86は、導光部87の上部に配置された板状の蓋体89に、固定されている。また、図6および図7に示すように、各光源86(86a、86b、86c)は、進退方向(矢印AR1方向)と交差する配列方向(矢印AR4方向)に沿って配置されている。
【0030】
なお、本実施の形態において、各光源86a、86b、86cからは、それぞれ赤色(R:第1波長)、緑色(G:第2波長)、青色(B:第3波長)に対応する波長の光が出射される。すなわち、各光源86a、86b、86cからは、互いに異なる波長の光が出射される。
【0031】
レンズ拡散板88は、各光源86(86a、86b、86c)から出射された出射光を透過させることによって、これら出射光を拡散させる。図5および図6に示すように、レンズ拡散板88は、直進孔87bを閉鎖するように、導光部87の下部に設けられている。
【0032】
レンズ拡散板88の入射面88a(図6参照)には、マイクロオーダーの微細なレンズアレイがランダムに多数配置されている。これにより、入射面88aに各光源86(86a、86b、86c)からの光が入射すると、これら入射光は、レンズアレイによる屈折機能によって、拡散角88bの範囲に散乱させられる。
【0033】
また、移動部71により試験体7の測定部7aが移動させられることによって、照射部85からの光が測定部7aの各部に順次照射されるように、配列方向(矢印AR4方向)におけるレンズ拡散板88の拡散角88bが設定されている。
【0034】
すなわち、図6に示すように、測定部7a上のうち、拡散角88bの範囲内となる部分(例えば、測定部7a上のうち、少なくとも、配列方向(矢印AR4方向)に沿って延びる楕円部分8)において、光源86aからの光の強度を均一化できる。また同様に、この楕円部分8において光源86b、86cからの光の強度も均一化できる。そのため、測定部7aが照射部85に対して移動させられることによって、各光源86(86a、86b、86c)からの光を測定部7a全体に良好に照射することができる。
【0035】
ここで、レンズ拡散板88でなく、例えば乳白アクリル板により形成された拡散板が、導光部87の下部に設けられている場合、本実施の形態の検査ユニット70では次のような問題が生ずる。
【0036】
すなわち、乳白アクリル板により形成された拡散板が採用される場合、この拡散板を透過する光は、全範囲に拡散する。その結果、この拡散板を用いた場合に測定部7aに到達する光の光量は、レンズ拡散板88を用いた場合と比較して、大幅に低下する。
【0037】
特に、本実施の形態の検査ユニット70のように、複数の光源86(86a、86b、86c)の光を、この順番に切り替えつつ繰り返し照射する場合、各光源86(86a、86b、86c)の点灯時間は、単一の光源を用いる場合の点灯時間と比較して、短くなる。そのため、本実施の形態の検査ユニット70に乳白アクリル板により形成された上述の拡散板を採用した場合、光量低下の問題は顕著となり、SN比の低下につながる。
【0038】
これに対して、本実施の形態の検査ユニット70のように、導光部87の下部に上述の拡散角88bを有するレンズ拡散板88が設けられた上で、照射部85に対して測定部7aが移動させられると、各光源86(86a、86b、86c)の光の照射は、主として測定部7aに限定される。すなわち、照射部85からの光の照射範囲を限定することによって、この照射範囲の光量低下を抑制でき、SN比の低下を防止できる。
【0039】
導光部87は、光源86から出射された出射光をレンズ拡散板88に導光する。図5および図6に示すように、導光部87は、照射方向に沿った導光孔87aおよび直進孔87bが形成された筒体であり、光源86およびレンズ拡散板88の間に設けられている。これにより、光源86から出射された出射光は、導光孔87aおよび直進孔87bを介してレンズ拡散板88に導光される。
【0040】
また、図5および図6に示すように、拡散光の照射方向(矢印AR3方向)と垂直な方向における導光孔87aの内周長(導光部87の内周壁87cに沿った長さ)は、光源86から離隔するにしたがって増大する。すなわち、導光孔87aは、光源86からレンズ拡散板88に向かって拡幅する。
【0041】
これにより、光源86から出射された出射光は、光源86からレンズ拡散板88に向かって拡幅する導光孔87aの内周壁87cと、直進孔87bの内周壁87cと、で反射されつつ、レンズ拡散板88に到達する。
【0042】
以上のように、移動部71が駆動させられると、試験体7は、検査ユニット70の撮像部80および照射部85に対して移動させられる。そのため、移動部71により移動させられる測定部7aが撮像されることによって、撮像部80は、この測定部7a(より具体的には、測定部7a上の測定面7c)(図8および図9参照)に対応する二次元撮像データを取得することができる。
【0043】
図8および図9は、それぞれ試験体7の構成の一例を示す平面図および側面図である。ここで、試験体7は、液状の検体に溶け込んだ成分の濃度を定性的または定量的に測定するための試験紙である。図8および図9に示すように、試験体7は、主として、測定部7aと、基部7bと、を有している。
【0044】
測定部7aは、特定の測定項目(例えば、検体に溶け込んだ特定の成分)と対応付けられている。測定部7a上の測定面7cに液状の検体が供給されると、測定面7cの明度は、対応する測定項目(成分)の濃度に応じて変化する。
【0045】
基部7bは、測定部7aを配置するための支持体であり、基部7bの色は、明度の高いもの(例えば、白色)に設定されている。そして、測定項目の判定では、基部7b上の基準面7dにおける明度の指標が、明度の基準値として用いられている。
【0046】
<3.検査ユニットによる測定項目の判定手順>
図10は、制御ユニット90の構成の一例を示すブロック図である。ここでは、図10を参照しつつ、測定項目の判定処理を説明する。図11は、各光源86(86a、86b、86c)から出射される光の撮像タイミングを説明するためのタイミングチャートである。図10に示すように、制御ユニット90は、主として、CPU91と、メモリ92と、通信制御部94と、を有している。
【0047】
CPU(Central Processing Unit)91は、メモリ92のプログラム92aに従った動作制御やデータ処理を実行する。また、図10中のCPU91内に記載されているブロック(それぞれ符号95、96が付与されている)に対応する演算機能は、CPU91により実現される。
【0048】
生成部95は、撮像部80により取得された撮像データに基づいて、判定部96で用いられる判定指標(第1および第2判定指標)を生成する。判定部96は、測定面7cに対応する測定項目を、生成部95で生成された判定指標(第1判定指標、および/または、第2判定指標)に基づいて判定する。
【0049】
ここで、生成部95は、光源86aの光(第1波長の光)に基づいて撮像された第1撮像データと、光源86bの光(第2波長の光)に基づいて撮像された第2撮像データと、を用いて、第1判定指標を生成する。また、生成部95は、この第2撮像データと、光源86cの光(第3波長の光)に基づいて撮像された第3撮像データと、を用いて、第2判定指標を生成する。
【0050】
さらに、生成部95および判定部96を有する制御ユニット90は、以下の手順によって測定項目の判定を実行する。図11に示すように、照射部85は、複数の光源86(86a、86b、86c)のうち、光源86a(第1光源)から出射される光(第1波長の光)と、光源86b(第2光源)から出射される光(第2波長の光)と、光源86c(第3光源)から出射される光(第3波長の光)とを、この順番に切り替えつつ繰り返し照射する。この場合、光源86a、86b、86cの切替処理が、この順番に繰り返されつつ、移動部71により測定部7aが撮像部80および照射部85の下方で移動させられると、光源86a、86b、86cからの光は、測定部7aの各部に順次照射される。
【0051】
また、図11に示すように、各光源86(86a、86b、86c)からの光が出射されたタイミングで、撮像部80は、撮像処理を実行する。
【0052】
これにより、各光源86a、86b、86cの光が測定部7aに照射されることになり、測定部7a全体が各光源86a、86b、86cにより照射される。そのため、各光源86a、86b、86cの光に基づいて撮像された測定面7cの二次元撮像データ(2次元配列データ)が、それぞれ第1から第3撮像データとして取得できる。
【0053】
このように、光源86a、86b、86cの下方において、試験体7の測定部7aが、進退方向(矢印AR1方向)に沿った一方向に1回移動させられることにより、光源86aの光(第1波長の光)に基づいて撮像された第1撮像データと、光源86bの光(第2波長の光)に基づいて撮像された第2撮像データと、光源86cの光(第3波長の光)に基づいて撮像された第3撮像データと、が取得できる。
【0054】
次に、生成部95は、各光源86a、86b、86cの光に基づいて撮像された基準面7dの撮像データ(1次元または2次元配列データ)を用いることにより、第1から第3波長のそれぞれに対応する明度基準(白基準)を演算する。そして、生成部95は、演算された各明度基準に基づいて、対応する第1から第3撮像データを補正する。
【0055】
続いて、生成部95は、明度基準により補正された第1および第2撮像データについて、対応する画素データ毎に演算することによって、第1判定指標(2次元配列データ)を生成する。また同様に、生成部95は、明度基準により補正された第2および第3撮像データについて、対応する画素データ毎に演算することによって、第2判定指標(2次元配列データ)を生成する。
【0056】
より具体的には、第1撮像データに含まれる各データがP1(i,j)と、第2撮像データに含まれる各データがP2(i,j)と、それぞれ表される場合、対応する画素データ同士の比(すなわち、第1撮像データのうち注目する画素P1(i1,j1)と、P1(i1,j1)に対応する画素P2(i1,j1)と、の比)を演算することによって、第1判定指標(2次元配列データ)を生成しても良い。
【0057】
また同様に、第3撮像データに含まれる各データがP3(i,j)と表される場合、対応する画素データ同士の比(すなわち、第2撮像データのうち注目する画素P2(i2,j2)と、P2(i2,j2)に対応する画素P3(i2,j2)と、の比)を演算することによって、第2判定指標(2次元配列データ)を生成しても良い。
【0058】
そして、判定部96は、第1および第2判定指標の少なくとも一方を判定指標として選択するとともに、この選択された判定指標に基づいて、測定項目を判定する。
【0059】
通信制御部94は、信号線99(図1参照)を介して接続された検査ユニット70内の移動部71、撮像素子81、および複数の光源86(86a、86b、86c)等に制御信号を送信することができる。これにより、通信制御部94は、これらの移動部71、撮像素子81、および光源86等を所定のタイミングで動作させることができる。
【0060】
<4.本実施の形態の検査ユニットの利点>
以上のように、本実施の形態の検査ユニット70では、配列方向(矢印AR4方向)に沿って離隔配置された各光源86(86a、86b、86c)からの光を、レンズ拡散板88に透過させることができる。これにより、照射部85から測定部7aに照射される各波長(第1から第3波長)の光の強度を、それぞれ均一化することができる。
【0061】
そのため、測定部7a上における各部と、各光源86(86a、86b、86c)と、の間の距離(光路長)のそれぞれは、同一なものとして取り扱うことができる。その結果、各光源86(86a、86b、86c)から出射される光を用いた場合であっても、二波長測光法に基づいた測定を良好に実行することができる。
【0062】
<5.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0063】
(1)本発明の実施の形態において、移動部71は、撮像部80および照射部85に対して試験体7を移動させるものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、撮像部80および照射部85が試験体7に対して移動させられても良いし、試験体7、撮像部80、および照射部85のそれぞれが移動させられても良い。すなわち、移動部71は、撮像部80および照射部85のそれぞれに対して、試験体7上に設けられた測定部7aを進退方向(矢印AR1方向)に沿って相対移動させる。
【0064】
(2)また、本発明の実施の形態において、試験体7に設けられた測定部7aは単一であるものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、試験体7に設けられた測定部7aは、複数(2以上)であっても良い。
【0065】
(3)また、本発明の実施の形態において、生成部95は、各明度基準に基づいて対応する第1から第3撮像データを補正した上で、第1および第2判定指標を生成するものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、生成部95は、この明度補正の施されていない第1から第3撮像データに基づいて、第1および第2判定指標を生成しても良い。
【0066】
(4)また、本発明の実施の形態において、撮像部80は、測定部7aで反射した光を撮像するものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、光を透過可能な測定部の場合、撮像部80は、この測定部を透過した光を撮像するとともに、この撮像処理により取得された撮像データを用いて判定指標を作成しても良い。
【0067】
(5)また、本発明の実施の形態において、照射部85に含まれる複数の光源86(86a、86b、86c)は、それぞれ赤色(R:第1波長)、緑色(G:第2波長)、青色(B:第3波長)に対応する波長の光を、この順番に切り替えつつ繰り返し照射するものとして説明したが、各光源86(86a、86b、86c)から出射される光の波長は、これに限定されるものでない。
【0068】
例えば、各光源86(86a、86b、86c)からは、
(A)それぞれ赤色(R:第1波長)、青色(B:第2波長)、および緑色(G:第3波長)に対応する波長の光、
(B)それぞれ緑色(G:第1波長)、赤色(R:第2波長)、および青色(B:第3波長)に対応する波長の光、
(C)それぞれ緑色(G:第1波長)、青色(B:第2波長)、および赤色(R:第3波長)に対応する波長の光、
(D)それぞれ青色(B:第1波長)、緑色(G:第2波長)、および赤色(R:第3波長)に対応する波長の光、並びに、
(E)それぞれ青色(B:第1波長)、赤色(R:第2波長)、緑色(G:第3波長)に対応する波長の光、
のいずれかが出射されても良い。
【0069】
(6)また、本発明の実施の形態において、照射部85に含まれる各光源86(86a、86b、86c)(図7参照)は、等間隔に設置されているものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、光源86a、86bの間隔と、光源86b、86cの間隔と、は異なっていても良い。
【0070】
(7)また、本発明の実施の形態において、照射部85に含まれる各光源86(86a、86b、86c)の大きさ(図7の場合:直径)は、同程度であるものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、各光源86(86a、86b、86c)の大きさは、異なっていても良い。
【0071】
(8)また、本発明の実施の形態において、生成部95は、波長の異なる3つの光(RGB)を用いて、判定指標を生成するものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、波長の異なる2つの光を用いて判定指標を作成しても良いし、波長の異なる4つ以上の光を用いて判定指標を作成しても良い。
【0072】
例えば、波長の異なる2つの光を用いる場合、次のように判定処理を実行しても良い。すなわち、照射部85は、複数の光源86(86a、86b、86c)のうち、光源86a(第1光源)から出射される光(第1波長の光)と、光源86b(第2光源)から出射される光(第2波長の光)と、を交互に切り替えつつ繰り返し照射する。この場合、光源86a、86bの切替処理が繰り返されつつ、移動部71により測定部7aが撮像部80および照射部85の下方で移動させられると、光源86a、86bからの光は、測定部7aの各部に順次照射される。
【0073】
このように、光源86a、86bの下方において、試験体7の測定部7aが、進退方向(矢印AR1方向)に沿った一方向に1回移動させられることにより、光源86aの光(第1波長の光)に基づいて撮像された第1撮像データと、光源86bの光(第2波長の光)に基づいて撮像された第2撮像データと、が取得できる。
【0074】
次に、生成部95は、各光源86a、86bの光に基づいて撮像された基準面7dの撮像データ(1次元または2次元配列データ)を用いることにより、第1および第2波長のそれぞれに対応する明度基準(白基準)を演算する。そして、生成部95は、演算された各明度基準に基づいて、対応する第1および第2撮像データを補正する。
【0075】
続いて、生成部95は、明度基準により補正された第1および第2撮像データについて、対応する画素データ毎に演算することにより、判定指標(2次元配列データ)を生成する。そして、判定部96は、この判定指標に基づいて、測定項目を判定する。
【0076】
なお、波長の異なる2つの光を用いる場合、光源86a、86bの組合せ以外にも、光源86b、86cの組合せが採用されても良いし、光源86a、86cの組合せが採用されても良い。
【0077】
(9)また、本実施の形態の生成部95では、第1および第2判定指標を生成するものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、生成部95は、第3撮像データのうち注目する画素P3(i3,j3)と、P3(i3,j3)に対応する画素P1(i3,j3)と、の比を演算することによって、第3判定指標(2次元配列データ)を生成しても良い。
【0078】
(10)さらに、本実施の形態において、生成部95および判定部96は、メモリ92に格納されたプログラム92aに基づいて、CPU91にてソフトウェア的に実現されるものとして説明したが、これに限定されるものでない。生成部95および判定部96は、例えば電子回路によりハードウェア的に実現されても良い。
【符号の説明】
【0079】
1 検体分析装置
7 試験体
7a 測定部
10 検体処理ユニット
40 移送ユニット
70 検査ユニット
71 移動部
80 撮像部
81 撮像素子
85 照射部
86 光源(86a、86b、86c)
87 導光部
87a 導光孔
88 レンズ拡散板
88b 拡散角
90 制御ユニット
91 CPU
95 生成部
96 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
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図11