(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】油圧ショベル駆動システム
(51)【国際特許分類】
F15B 11/02 20060101AFI20240328BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20240328BHJP
F15B 21/14 20060101ALI20240328BHJP
F15B 11/028 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
F15B11/02 F
E02F9/22 M
F15B21/14 A
F15B11/028 G
(21)【出願番号】P 2020100636
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】村岡 英泰
(72)【発明者】
【氏名】東出 善之
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-315312(JP,A)
【文献】特開2012-241803(JP,A)
【文献】特開2004-019806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22;21/14
E02F 3/42- 3/43; 3/84- 3/85; 9/20- 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームシリンダのヘッド側室と接続された、電動機により駆動される第1ポンプと、
アームシリンダとバケットシリンダの少なくとも一方へ作動油を供給する第2ポンプと、
ブーム上げ操作時に前記ブームシリンダのロッド側室をタンクと連通させる第1位置に位置し、車体持上げ操作時に前記ロッド側室を前記第2ポンプと連通させる第2位置に位置する切換弁と、
ブーム操作装置、アーム操作装置およびバケット操作装置と、
前記電動機および前記切換弁を制御する制御装置と、を備え、
前記切換弁は、前記第2位置では前記第2ポンプと前記ロッド側室の間の開口面積が変更可能に構成されており、
前記制御装置は、前記切換弁が前記第2位置に位置するとき、前記アーム操作装置と前記バケット操作装置のどちらもが操作されない場合は前記切換弁の前記開口面積が最大となり、前記アーム操作装置と前記バケット操作装置のどちらかが操作される場合は前記切換弁が絞りとして機能するように、前記切換弁を制御する、油圧ショベル駆動システム。
【請求項2】
前記切換弁は、ブーム下げ操作時に前記第1位置に位置する、請求項1に記載の油圧ショベル駆動システム。
【請求項3】
前記ブーム操作装置は、ブーム上げ方向およびブーム下げ方向に操作される操作レバーを含
み、
前記制御装置は、前記ブーム操作装置の操作レバーがブーム下げ方向に操作されている間に前記電動機により生成される回生電流が所定値を下回ったときに、車体持上げ操作が開始されたと判定し、前記切換弁を前記第1位置から前記第2位置へ切り換える、請求項2に記載の油圧ショベル駆動システム。
【請求項4】
前記ブーム操作装置は、ブーム上げ方向およびブーム下げ方向に操作される操作レバーを含
み、
前記ブームシリンダのヘッド側室の圧力を検出する圧力セン
サを備え、
前記制御装置は、前記ブーム操作装置の操作レバーがブーム下げ方向に操作されている間に前記圧力センサで検出される圧力が所定値を下回ったときに、車体持上げ操作が開始されたと判定し、前記切換弁を前記第1位置から前記第2位置へ切り換える、請求項2に記載の油圧ショベル駆動システム。
【請求項5】
前記切換弁は、ブーム下げ操作時に前記第2位置に位置する、請求項1に記載の油圧ショベル駆動システム。
【請求項6】
前記ブーム操作装置は、ブーム上げ方向およびブーム下げ方向に操作される操作レバーを含
み、
前記制御装置は、車体持上げ操作時に、前記ブーム操作装置の操作レバーの操作量に応じて前記第2ポンプの吐出流量を調整する、請求項1~
5の何れか一項に記載の油圧ショベル駆動システム。
【請求項7】
前記切換弁は、ロッド側ラインにより前記ブームシリンダのロッド側室と接続され、タンクラインにより前記タンクと接続され、中継ラインにより前記第2ポンプから延びる供給ラインと接続されており、
前記切換弁または前記中継ラインには、少なくとも車体持上げ操作時に前記第2ポンプから前記ロッド側室へ向かう流れは許容するがその逆の流れは禁止する逆止弁が設けられている、請求項1~
6の何れか一項に記載の油圧ショベル駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルでは、旋回体に対して俯仰するブームの先端にアームが揺動可能に連結され、アームの先端にバケットが揺動可能に連結される。この油圧ショベルに搭載される駆動システムは、ブームを俯仰させるブームシリンダ、アームを揺動させるアームシリンダおよびバケットを揺動させるバケットシリンダなどを含み、これらの油圧アクチュエータには、ポンプから作動油が供給される。
【0003】
例えば、特許文献1には、油圧ショベル用のブームシリンダ駆動装置が開示されている。このブームシリンダ駆動装置では、ブームシリンダのヘッド側室が、電動機により駆動されるポンプと直接的に接続されている。このため、ブーム下げ操作時には、電動機が発電機として機能し、ブームの位置エネルギが回生される。
【0004】
一方、ブームシリンダのロッド側室は、切換弁を介してタンクおよび油圧源と接続されている。切換弁は、ブームシリンダのロッド側室をタンクと連通させる通常位置と、ロッド側室を油圧源と連通させるオフセット位置との間で切り換えられる。切換弁は、ブームシリンダのヘッド側室の圧力に応じて制御される。
【0005】
より詳しくは、ヘッド側室の圧力が所定値よりも大きいときは、切換弁が通常位置に位置し、ブームシリンダのロッド側室からタンクへまたはそれとは逆に作動油が流れる。逆に、ヘッド側室の圧力が所定値よりも小さいときは、切換弁がオフセット位置に切り換えられ、油圧源からブームシリンダのロッド側室へ作動油が供給される。これにより、ブームシリンダのロッド側室の圧力を高くすることができる。
【0006】
なお、ヘッド側室の圧力が所定値よりも大きいときの代表例はブーム上げ操作時及びブーム下げ操作時であり、ヘッド側室の圧力が所定値よりも小さいときの代表例は、ブームの外力による下降が不可となったバケットの接地後でもブームシリンダを短縮させようとする車体持上げ操作時(特許文献1では「本体ジャッキアップ」と表記)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のブームシリンダ駆動装置では、車体持上げ操作などのヘッド側室の圧力が比較的に小さいときの操作に専用の圧力源が必要である。
【0009】
そこで、本発明は、車体持上げ操作に専用の圧力源を用いることなく、車体持上げ操作時にブームシリンダのロッド側室の圧力を高くすることができる油圧ショベル駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の油圧ショベル駆動システムは、ブームシリンダのヘッド側室と接続された、電動機により駆動される第1ポンプと、アームシリンダとバケットシリンダの少なくとも一方へ作動油を供給する第2ポンプと、ブーム上げ操作時に前記ブームシリンダのロッド側室をタンクと連通させる第1位置に位置し、車体持上げ操作時に前記ロッド側室を前記第2ポンプと連通させる第2位置に位置する切換弁と、を備える、ことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、車体持上げ操作時には、アームシリンダおよび/またはバケットシリンダ用の第2ポンプから吐出された作動油がブームシリンダのロッド側室へ供給される。従って、車体持上げ操作に専用の圧力源を用いることなく、車体持上げ操作時にブームシリンダのロッド側室の圧力を高くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車体持上げ操作に専用の圧力源を用いることなく、車体持上げ操作時にブームシリンダのロッド側室の圧力を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る油圧ショベル駆動システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、本発明の一実施形態に係る油圧ショベル駆動システム1を示し、
図2に、その駆動システム1が搭載された油圧ショベル10を示す。
【0015】
図2に示す油圧ショベル10は自走式であり、走行体11を含む。また、油圧ショベル10は、走行体11に旋回可能に支持された旋回体12と、旋回体12に対して俯仰するブームを含む。ブームの先端にはアームが揺動可能に連結されており、アームの先端にはバケットが揺動可能に連結されている。旋回体12には、運転席が設置されたキャビン16が設けられている。なお、油圧ショベル10は自走式でなくてもよい。
【0016】
図1に示すように、駆動システム1は、油圧アクチュエータとして、ブームシリンダ13、アームシリンダ14およびバケットシリンダ15を含む。
図2に示すように、ブームシリンダ13はブームを俯仰させ、アームシリンダ14はアームを揺動させ、バケットシリンダ15はバケットを揺動させる。なお、図略の旋回モータおよび左右一対の走行モータは、駆動システム1に含まれてもよいし、別の駆動システムに含まれてもよい。
【0017】
また、駆動システム1は、ブームシリンダ13用の第1ポンプ22と、アームシリンダ14およびバケットシリンダ15用の第2ポンプ32を含む。第1ポンプ22は、ブーム上げ操作時にブームシリンダ13へ作動油を供給する。第2ポンプ32は、アーム操作時(アーム引き操作時およびアーム押し操作時)にアームシリンダ14へ作動油を供給し、バケット操作時(バケット掘削操作時およびバケットダンプ操作時)にバケットシリンダ15へ作動油を供給する。
【0018】
ただし、第2ポンプ32は、必ずしもアームシリンダ14とバケットシリンダ15の双方へ作動油を供給する必要はなく、どちらか一方へ作動油を供給してもよい。例えば、第2ポンプ32がアームシリンダ14のみへ作動油を供給する場合、バケットシリンダ15へは第3ポンプから作動油が供給されてもよい。
【0019】
より詳しくは、第2ポンプ32は、アーム制御弁41を介してアームシリンダ14へ作動油を供給するとともに、バケット制御弁42を介してバケットシリンダ15へ作動油を供給する。第2ポンプ32は、吸入ライン31によりタンクと接続されているとともに、供給ライン33によりアーム制御弁41およびバケット制御弁42と接続されている。換言すれば、供給ライン33は、第2ポンプ32から延びており、途中で分岐してアーム制御弁41およびバケット制御弁42につながっている。
【0020】
アーム制御弁41は、アームシリンダ14に対する作動油の供給および排出を制御する。アーム制御弁41は、一対の給排ライン34,35によりアームシリンダ14と接続されているとともに、タンクライン36によりタンクと接続されている。
【0021】
同様に、バケット制御弁42は、バケットシリンダ15に対する作動油の供給および排出を制御する。バケット制御弁42は、一対の給排ライン37,38によりバケットシリンダ15と接続されているとともに、タンクライン39によりタンクと接続されている。
【0022】
本実施形態では、アーム制御弁41およびバケット制御弁42のそれぞれがパイロット圧により作動する。アーム制御弁41の一対のパイロットポートは図略の一対の電磁比例弁とそれぞれ接続され、バケット制御弁42の一対のパイロットポートは図略の一対の電磁比例弁とそれぞれ接続されている。アーム制御弁41およびバケット制御弁42のそれぞれは、上記の一対の電磁比例弁を介して後述する制御装置7により制御される。
【0023】
ただし、アーム制御弁41およびバケット制御弁42のそれぞれは、電気信号により作動してもよい。この場合、アーム制御弁41およびバケット制御弁42のそれぞれが制御装置7により直接的に制御される。
【0024】
ブームシリンダ13用の第1ポンプ22は、吸入吐出ライン21によりタンクと接続されているとともに、ヘッド側ライン23によりブームシリンダ13のヘッド側室13aと直接的に接続されている。ブームシリンダ13のロッド側室13bは、ロッド側ライン24により切換弁51と接続されている。切換弁51は、タンクライン25によりタンクと接続されているとともに、中継ライン52により上述した供給ライン33と接続されている。
【0025】
本実施形態では、切換弁51が、ブーム上げ操作時およびブーム下げ操作時にブームシリンダ
13のロッド側室13bをタンクと連通させる第1位置(
図1の左側位置、本実施形態では中立位置)に位置し、車体持ち上げ操作時にロッド側室13bを第2ポンプ32と連通させる第2位置(
図1の右側位置)に位置する。なお、ブーム下げ操作とは、バケットが空中にある状態でブームを下げる操作であり、車体持上げ操作とは、バケットを地面等に押し付けて自身の車体(走行体11および旋回体12)を持上げる操作である。
【0026】
本実施形態では、切換弁51が単一の弁である。ただし、切換弁51は、必ずしも単一の弁である必要はなく、複数の弁で構成されてもよい。例えば、図示は省略するが、ブームシリンダ13のロッド側室13bがロッド側ラインによりタンクと接続され、そのロッド側ラインが中継ラインにより供給ライン33と接続される場合には、ロッド側ラインに設けられた開閉弁と中継ラインに設けられた開閉弁により上記の通路の接続関係が切り換えられるように、切換弁51が構成されてもよい。
【0027】
切換弁51は、第1位置では中継ライン52をブロックするとともにロッド側ライン24をタンクライン25と連通させ、第2位置ではタンクライン25をブロックするとともにロッド側ライン24を中継ライン52と連通させる。
【0028】
切換弁51は、第2位置では第2ポンプ32とロッド側室13bの間の開口面積が変更可能に構成されている。本実施形態では、切換弁51がパイロット圧に応じて作動する。切換弁51のパイロットポートは図略の電磁比例弁と接続されている。そして、切換弁51は、第2位置ではパイロット圧が高くなるほど第2ポンプ32とロッド側室13bの間の開口面積が大きくなるように構成されている。切換弁51は、上記の電磁比例弁を介して制御装置7により制御される。
【0029】
上述したように、切換弁51は、車体持上げ操作時に第2位置に位置するが、車体持上げ操作時以外は第1位置に位置する。従って、中継ライン52には、車体持上げ操作時にだけ作動油が流れる。
【0030】
中継ライン52には、車体持上げ操作時に第2ポンプ32からロッド側室13bへ向かう流れは許容するがその逆の流れは禁止する逆止弁53が設けられている。なお、逆止弁53は、切換弁51に設けられ(組み込まれ)てもよい。
【0031】
第1ポンプ22は第1電動機61により駆動され、第2ポンプ32は第2電動機62により駆動される。第1電動機61および第2電動機62は、それぞれインバータ63,64を介してバッテリ65と接続されている。すなわち、第1電動機61が第1ポンプ22を駆動するときはバッテリ65から第1電動機61へ電力が供給され、第2電動機62が第2ポンプ32を駆動するときはバッテリ65から第2電動機62へ電力が供給される。なお、バッテリ65の代わりにキャパシタが用いられてもよい。また、第1電動機61および第2電動機62は、それぞれインバータ63,64を介して制御装置7により制御される。
【0032】
キャビン16内には、ブーム操作装置81、アーム操作装置82およびバケット操作装置83が配置されている。ブーム操作装置81は、ブーム上げ方向およびブーム下げ方向に操作される操作レバーを含み、アーム操作装置82は、アーム引き方向およびアーム押し方向に操作される操作レバーを含み、バケット操作装置83は、バケット掘削方向およびバケットダンプ方向に操作される操作レバーを含む。そして、ブーム操作装置81、アーム操作装置82およびバケット操作装置83のそれぞれは、操作レバーの操作方向および操作量(傾倒角)に応じた操作信号を出力する。
【0033】
具体的に、ブーム操作装置81は、操作レバーがブーム上げ方向に操作されたときにその操作量に応じたブーム上げ操作信号を出力し、操作レバーがブーム下げ方向に操作されたときにその操作量に応じたブーム下げ操作信号を出力する。同様に、アーム操作装置82は、操作レバーがアーム引き方向またはアーム押し方向に操作されたときにその操作量に応じたアーム操作信号(アーム引き操作信号またはアーム押し操作信号)を出力し、バケット操作装置83は、操作レバーがバケット掘削方向またはバケットダンプ方向に操作されたときにその操作量に応じたバケット操作信号(バケット掘削操作信号またはバケットダンプ操作信号)を出力する。
【0034】
本実施形態では、ブーム操作装置81、アーム操作装置82およびバケット操作装置83のそれぞれが、操作信号として電気信号を出力する電気ジョイスティックである。ただし、アーム操作装置82およびバケット操作装置83は、操作信号としてパイロット圧を出力するパイロット操作弁であってもよい。この場合、アーム制御弁41の一対のパイロットポートがアーム操作装置82と接続され、バケット制御弁42の一対のパイロットポートがバケット操作装置83と接続されてもよい。
【0035】
ブーム操作装置81、アーム操作装置82およびバケット操作装置83から出力される操作信号(電気信号)は、制御装置7へ入力される。例えば、制御装置7は、ROMやRAMなどのメモリと、HDDやSSDなどのストレージと、CPUを有するコンピュータであり、ROMまたはストレージに記憶されたプログラムがCPUにより実行される。
【0036】
制御装置7は、アーム操作装置82からアーム操作信号が出力されるとき(アーム操作時)、アーム操作装置82の操作レバーの操作量が大きくなるほどアーム制御弁41の開口面積が大きくなるように図略の電磁比例弁を介してアーム制御弁41を制御する。なお、制御装置7は、アーム操作装置82の操作レバーだけが操作される場合は、その操作量が大きくなるほど第2ポンプ32の吐出流量が増大するようにインバータ64を介して第2電動機62の回転数を調整してもよいし、第2電動機62の回転数は一定としてもよい。
【0037】
同様に、制御装置7は、バケット操作装置83からバケット操作信号が出力されるとき(バケット操作時)、バケット操作装置83の操作レバーの操作量が大きくなるほどバケット制御弁42の開口面積が大きくなるように図略の電磁比例弁を介してバケット制御弁42を制御する。なお、制御装置7は、バケット操作装置83の操作レバーだけが操作される場合は、その操作量が大きくなるほど第2ポンプ32の吐出流量が増大するようにインバータ64を介して第2電動機62の回転数を調整してもよいし、第2電動機62の回転数は一定としてもよい。
【0038】
ブーム操作装置81からブーム上げ操作信号が出力されるとき(ブーム上げ操作時)、制御装置7は、ブーム操作装置81の操作レバーの操作量が大きくなるほど第1ポンプ22の吐出流量が増大するようにインバータ63を介して第1電動機61の回転数を調整する。
【0039】
上述したように、切換弁51は車体持上げ操作時以外は第1位置に位置するので、ブーム上げ操作時、ブームシリンダ13のロッド側室13bから排出される作動油は、ロッド側ライン24、切換弁51およびタンクライン25を通じてタンクへ流入する。
【0040】
ブーム操作装置81からブーム下げ操作信号が出力されるときは、制御装置7は、ブーム下げ操作と車体持上げ操作のどちらが行われたかを判定する。本実施形態では、制御装置7が、ブームシリンダ13のヘッド側室13aの圧力Phを検出する圧力センサ71と電気的に接続されている。図例では圧力センサ71がヘッド側ライン23に設けられているが、圧力センサ71はブームシリンダ13のヘッド側室13aに設けられてもよい。
【0041】
制御装置7は、ブーム操作装置81からブーム下げ操作信号が出力され、かつ、圧力センサ71で検出される圧力Phが所定値(例えば、0.5~10MPaの範囲内で設定)よりも大きい場合には、ブーム下げ操作が行われたと判定する。逆に、ブーム操作装置81からブーム下げ操作信号が出力され、かつ、圧力センサ71で検出される圧力Phが前記所定値よりも小さい場合には、制御装置7は、車体持上げ操作が行われたと判定する。すなわち、制御装置7は、ブーム操作装置81の操作レバーがブーム下げ方向に操作されている間に圧力センサ71で検出される圧力Phが前記所定値を下回ったときに、車体持上げ操作が開始されたと判定する。そして、制御装置7は、車体持ち上げ操作が開始されたと判定すると、図略の電磁比例弁を介して切換弁51を第1位置から第2位置へ切り換える。
【0042】
ただし、ブーム操作装置81からブーム下げ操作信号が出力されるときにブーム下げ操作と車体持上げ操作のどちらが行われたかを判定する方法はこれに限られるものではない。例えば、制御装置7は、ブーム操作装置81からブーム下げ操作信号が出力され、かつ、第1電動機61により生成される回生電流が所定値よりも大きい場合は、ブーム下げ操作が行われたと判定し、ブーム操作装置81からブーム下げ操作信号が出力され、かつ、第1電動機61により生成される回生電流が前記所定値よりも小さい場合は、車体持上げ操作が行われたと判定してもよい。すなわち、制御装置7は、ブーム操作装置81の操作レバーがブーム下げ方向に操作されている間に第1電動機61により生成される回生電流が前記所定値を下回ったときに、車体持上げ操作が開始されたと判定してもよい。
【0043】
あるいは、制御装置7は、ブーム操作装置81からブーム下げ操作信号が出力され、かつ、ブームシリンダ13のロッド側室13bの圧力Prが所定値よりも小さい場合は、ブーム下げ操作が行われたと判定し、ブーム操作装置81からブーム下げ操作信号が出力され、かつ、ロッド側室13bの圧力Prが前記所定値よりも大きい場合は、車体持上げ操作が行われたと判定してもよい。
【0044】
ブーム下げ操作時、ブームシリンダ13のヘッド側室13aから排出される作動油により第1ポンプ22がモータとして駆動される。これにより、第1電動機61が発電機として機能し、ブームの位置エネルギが回生される。発電された電力は、バッテリ65に蓄積される。ブーム下げ操作時、制御装置7は、ブーム操作装置81の操作レバーの操作量が大きくなるほど第1電動機61の回生トルク(ブレーキ力)を低減する。
【0045】
上述したように、切換弁51は車体持上げ操作時以外は第1位置に位置するので、ブーム下げ操作時、タンクから、タンクライン25、切換弁51およびロッド側ライン24を通じてブームシリンダ13のロッド側室13bへ作動油が流入する。
【0046】
車体持上げ操作時、制御装置7は切換弁51を第2位置に切り換える。このため、第2ポンプ32から吐出された作動油が、供給ライン33、中継ライン52、切換弁51およびロッド側ライン24を介してブームシリンダ13のロッド側室13bへ供給される。このとき、制御装置7は、ブーム操作装置81の操作レバーの操作量に応じて第2ポンプ32の吐出流量を調整する。例えば、アーム操作装置82とバケット操作装置83のどちらも操作されていなければ、制御装置7は、車体持上げ操作時、ブーム操作装置81の操作レバーの操作量が大きくなるほど第2ポンプ32の吐出流量が増大するようにインバータ64を介して第2電動機62の回転数を調整する。
【0047】
また、制御装置7は、車体持上げ操作時、アーム操作装置82とバケット操作装置83のどちらもが操作されない場合は切換弁51の第2ポンプ32とロッド側室13bの間の開口面積が最大となり、アーム操作装置82とバケット操作装置83のどちらかが操作される場合は切換弁51が絞りとして機能するように、図略の電磁比例弁を介して切換弁51を制御する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の油圧ショベル駆動システム1では、車体持上げ操作時には、アームシリンダ14およびバケットシリンダ15用の第2ポンプ32から吐出された作動油がブームシリンダ13のロッド側室13bへ供給される。従って、車体持上げ操作に専用の圧力源を用いることなく、車体持上げ操作時にブームシリンダ13のロッド側室13bの圧力を高くすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、車体持上げ操作時に第2ポンプ32の吐出流量が調整されるので、第2ポンプ32によりブームシリンダ13の速度を制御することができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、中継ライン52に逆止弁53が設けられているので、車体持上げ操作がアーム操作またはバケット操作と同時に行われたときでもブームシリンダ13の伸長を防止することができる。
【0051】
また、本実施形態では、車体持ち上げ操作時、アーム操作装置82とバケット操作装置83のどちらもが操作されなければ、切換弁51の第2ポンプ32とロッド側室13bの間の開口面積が最大となることにより、第2ポンプ32からロッド側室13bへ供給される作動油に対する切換弁51での圧力損失を抑制することができる。一方、アーム操作装置82とバケット操作装置83のどちらかが操作されれば、切換弁51が絞りとして機能することで、第2ポンプ32の吐出圧を確保することができる。
【0052】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0053】
例えば、前記実施形態では、切換弁51が、ブーム下げ操作時に第1位置に位置するが、ブーム下げ操作時に第2位置に位置してもよい。ブーム下げ操作時にロッド側室13bへの作動油の吸い込みが不足するとキャビテーションを引き起こす。従って、ブーム下げ操作時に切換弁51を第2位置に切り換えて第2ポンプ32から吐出される作動油(圧油)をロッド側室13bへ供給すれば、そのようなキャビテーションを防止することができる。
【0054】
なお、ブーム下げ操作時に切換弁51が第2位置に位置する場合、切換弁51の第2ポンプ32とロッド側室13bの間の開口面積に関してはブーム下げ操作時にも車体持ち上げ操作時と同様の制御が行われる。すなわち、制御装置7は、ブーム下げ操作時、アーム操作装置82とバケット操作装置83のどちらもが操作されない場合は切換弁51の第2ポンプ32とロッド側室13bの間の開口面積が最大となり、アーム操作装置82とバケット操作装置83のどちらかが操作される場合は切換弁51が絞りとして機能するように、図略の電磁比例弁を介して切換弁51を制御する。
【0055】
これにより、前記実施形態の車体持ち上げ操作時と同様に、ブーム下げ操作時にも、アーム操作装置82とバケット操作装置83のどちらもが操作されなければ切換弁51での圧力損失を抑制することができ、アーム操作装置82とバケット操作装置83のどちらかが操作されれば第2ポンプ32の吐出圧を確保することができる。なお、ブーム下げ操作時に切換弁51が第2位置に位置する場合、ブーム下げ操作時にも逆止弁53が機能する。
【0056】
また、前記実施形態では、切換弁51が図略の電磁比例弁を介して制御装置7により制御されるが、切換弁51は、制御装置7により制御されなくてもよい。例えば、ヘッド側ライン23の圧力により作動する開閉弁を別途設けるとともにその開閉弁を切換弁51のパイロットポートと接続し、ヘッド側ライン23の圧力が設定値よりも小さい場合に開閉弁を開いて切換弁51を第1位置から第2位置へ切り替えてもよい。
【0057】
あるいは、切換弁51は、パイロット圧ではなく電気信号により作動してもよい。
【0058】
また、第1ポンプ22および第2ポンプ32は、必ずしも固定容量型のポンプである必要はなく、可変容量型のポンプであってもよい。第2ポンプ32が可変容量型のポンプである場合、第2ポンプ32はエンジン(内燃機関)により駆動されてもよい。
【0059】
第2ポンプ32が可変容量型のポンプである場合、制御装置7は、第2ポンプ32の傾転角を変更することで、ブーム操作装置81の操作レバーの操作量に応じて第2ポンプ32の吐出流量を調整してもよい。
【0060】
(まとめ)
本発明の油圧ショベル駆動システムは、ブームシリンダのヘッド側室と接続された、電動機により駆動される第1ポンプと、アームシリンダとバケットシリンダの少なくとも一方へ作動油を供給する第2ポンプと、ブーム上げ操作時に前記ブームシリンダのロッド側室をタンクと連通させる第1位置に位置し、車体持上げ操作時に前記ロッド側室を前記第2ポンプと連通させる第2位置に位置する切換弁と、を備える、ことを特徴とする。
【0061】
上記の構成によれば、車体持上げ操作時には、アームシリンダおよび/またはバケットシリンダ用の第2ポンプから吐出された作動油がブームシリンダのロッド側室へ供給される。従って、車体持上げ操作に専用の圧力源を用いることなく、車体持上げ操作時にブームシリンダのロッド側室の圧力を高くすることができる。
【0062】
例えば、前記切換弁は、ブーム下げ操作時に前記第1位置に位置してもよい。この場合、上記の油圧ショベル駆動システムは、ブーム上げ方向およびブーム下げ方向に操作される操作レバーを含むブーム操作装置と、前記電動機および前記切換弁を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ブーム操作装置の操作レバーがブーム下げ方向に操作されている間に前記電動機により生成される回生電流が所定値を下回ったときに、車体持上げ操作が開始されたと判定し、前記切換弁を前記第1位置から前記第2位置へ切り換えてもよい。
【0063】
前記切換弁がブーム下げ操作時に前記第1位置に位置する場合、上記の油圧ショベル駆動システムは、ブーム上げ方向およびブーム下げ方向に操作される操作レバーを含むブーム操作装置と、前記ブームシリンダのヘッド側室の圧力を検出する圧力センサと、前記電動機および前記切換弁を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ブーム操作装置の操作レバーがブーム下げ方向に操作されている間に前記圧力センサで検出される圧力が所定値を下回ったときに、車体持上げ操作が開始されたと判定し、前記切換弁を前記第1位置から前記第2位置へ切り換えてもよい。
【0064】
あるいは、前記切換弁は、ブーム下げ操作時に前記第2位置に位置してもよい。
【0065】
上記の油圧ショベル駆動システムは、ブーム操作装置、アーム操作装置およびバケット操作装置と、前記電動機および前記切換弁を制御する制御装置と、を備え、前記切換弁は、前記第2位置では前記第2ポンプと前記ロッド側室の間の開口面積が変更可能に構成されており、前記制御装置は、前記切換弁が前記第2位置に位置するとき、前記アーム操作装置と前記バケット操作装置のどちらもが操作されない場合は前記切換弁の前記開口面積が最大となり、前記アーム操作装置と前記バケット操作装置のどちらかが操作される場合は前記切換弁が絞りとして機能するように、前記切換弁を制御してもよい。この構成によれば、切換弁が第2位置に位置する場合、アーム操作装置とバケット操作装置のどちらもが操作されなければ、切換弁の開口面積が最大となることにより、第2ポンプからロッド側室へ供給される作動油に対する切換弁での圧力損失を抑制することができる。一方、アーム操作装置とバケット操作装置のどちらかが操作されれば、切換弁が絞りとして機能することで、第2ポンプの吐出圧を確保することができる。
【0066】
上記の油圧ショベル駆動システムは、ブーム上げ方向およびブーム下げ方向に操作される操作レバーを含むブーム操作装置と、前記電動機を制御するとともに前記第2ポンプの吐出流量を調整する制御装置と、を備え、前記制御装置は、車体持上げ操作時に、前記ブーム操作装置の操作レバーの操作量に応じて前記第2ポンプの吐出流量を調整してもよい。この構成によれば、第2ポンプによりブームシリンダの速度を制御することができる。
【0067】
前記切換弁は、ロッド側ラインにより前記ブームシリンダのロッド側室と接続され、タンクラインにより前記タンクと接続され、中継ラインにより前記第2ポンプから延びる供給ラインと接続されており、前記切換弁または前記中継ラインには、少なくとも車体持上げ操作時に前記第2ポンプから前記ロッド側室へ向かう流れは許容するがその逆の流れは禁止する逆止弁が設けられてもよい。この構成によれば、車体持上げ操作がアーム操作またはバケット操作と同時に行われたときでもブームシリンダの伸長を防止することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 油圧ショベル駆動システム
10 油圧ショベル
13 ブームシリンダ
13a ヘッド側室
13b ロッド側室
14 アームシリンダ
15 バケットシリンダ
22 第1ポンプ
23 ヘッド側ライン
24 ロッド側ライン
25 タンクライン
32 第2ポンプ
33 供給ライン
51 切換弁
52 中継ライン
53 逆止弁
61 第1電動機
62 第2電動機
7 制御装置
71 圧力センサ
81 ブーム操作装置
82 アーム操作装置
83 バケット操作装置