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特許7461812サッカーシューズに用いる回転強化用シート及びそれを備えたサッカーシューズ
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  • 特許-サッカーシューズに用いる回転強化用シート及びそれを備えたサッカーシューズ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】サッカーシューズに用いる回転強化用シート及びそれを備えたサッカーシューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20240328BHJP
   A43B 5/02 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
A43B23/02 101Z
A43B5/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020113008
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011699
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】520203220
【氏名又は名称】日本ラバロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230100022
【弁護士】
【氏名又は名称】山田 勝重
(74)【代理人】
【識別番号】100084319
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 智重
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(74)【代理人】
【氏名又は名称】伊藤 浩平
(72)【発明者】
【氏名】金田 喜稔
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3050667(JP,U)
【文献】特開平08-332101(JP,A)
【文献】特開2008-073481(JP,A)
【文献】国際公開第2010/086672(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3195718(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/02
A43B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性及び高摩擦性を有する材料で一体に形成され、サッカーシューズの内側甲被部又は外側甲被部に粘着又は接着させて使用する、ボールの回転強化用シートであって、表面に多数の中空円盤状の吸盤が配置され、該吸盤は上端に円環端面を有し、サッカーシューズに貼り付けたときのシートの後側に主として配置されている吸盤の直径及び円環端面の肉厚が、シートの前側に主として配置されている吸盤の直径及び円環端面の肉厚よりも大きく形成されていることを特徴とするボールの回転強化用シート。
【請求項2】
吸盤は、パイプを輪切りにスライスした如き中空円盤形状である請求項1記載のシート。
【請求項3】
吸盤の底は、シートの表面と同じ高さである請求項2記載のシート
【請求項4】
吸盤は、凹球面状の吸着面を有する中空円盤形状である請求項1記載のシート。
【請求項5】
吸着面の中央は、シートの表面と同じ高さである請求項4記載のシート
【請求項6】
各吸盤の高さは等しい請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載のシート。
【請求項7】
吸盤の直径は大小2種類存在し、大きい方の吸盤の直径はほぼ同じであり、小さい方の吸盤の直径も同じである請求項1記載乃至請求項6のいずれか一項記載のシート。
【請求項8】
大きい方の吸盤の直径は12.0mmであり且つその前記円環端面の肉厚は2.0mmであって、小さい方の吸盤の直径は7.0mmであり且つその前記円環端面の肉厚は1.0mmである請求項7記載のシート。
【請求項9】
吸盤のシート表面からの高さは1.5mmである請求項1乃至請求項8のいずれか一項記載のシート。
【請求項10】
シートを切り取って、小さなシューズに大きさを合わせるための切り取り線が設けられている請求項1乃至請求項9のいずれか一項記載のシート。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項記載の回転強化用シートを備えたサッカーシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に小中高等学校の部活やクラブチームでサッカーを行うサッカー少年が使用するための、サッカーシューズに用いる回転強化用シート及びそれを備えたサッカーシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
プロサッカーの試合で選手がフリーキックをするときに、ボールに強力な回転をかけて大きくカーブさせ、相手選手の防御を外してゴールを決めるプレーは華麗であって、サッカー少年のあこがれである。このように、ボールに強力な回転をかけて大きくカーブさせることは高い技術力とパワーが必要で、少年たちが容易にできるプレーではない。しかし、仮にそのようなプレーを可能とする補助具があれば、それを使用することによりボールをカーブさせることができるから、プレーの幅が広がり、サッカーの楽しみが大いに増すことになる。それにより、ボールを蹴ってみようとする少年が増え、多くの少年がサッカーに興味を持つようになって、サッカーの底辺が広がりサッカー界をより盛り上げることが期待できる。
【0003】
ボールを滑らないように把持して自由にコントロールするために、シューズの甲被部に円柱又は円錐台形の柱状突起を多数設け、それらの突起の上面に凹弧状の凹みを形成したシューズが特許文献1に提案されている。このシューズは、大小の突起が甲被部に混在し、凹弧状の凹みの中央の深さに比して、突起の高さはその深さの5倍の長さである。そして、このシューズは、サッカーのみならず、ラグビー等の如き球技用の運動靴に使用されるものであり、その目的は、突起を柱状として柱がしなるように撓むことにより、ボールに対する当たりを柔らかくしてボール等の把持及びコントロールを良好にすることにあって、ボールに強力な回転をかけることを主目的としたものではない。
【0004】
実際のキックにおいて、キックしたボールに回転をかけてカーブさせるためには、主に内側甲被部が使用され、外側甲被部が使用されるときもあるが、いずれの場合も甲被部の側面が使用される。すなわち、ボールに回転をかけようとするキックの際にシューズの甲被部がボールに与える力は、ボールの表面に対して90°の垂直方向ではなく、ボールの表面に対して小さな角度でボールの表面を擦るように当たる。このため、シューズの甲被部がボール表面上で滑りを生じてキックした力が有効にボールに伝わりにくく、サッカー少年にとって強力な回転をかけることが困難なのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実公昭61-18727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、サッカーボールにサッカーシューズの甲被部が当たったときに、サッカーボールを回転させるための力を効率良くボールに伝えることによって、サッカー少年でもボールに強力な回転を容易にかけられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、柔軟性及び高摩擦性を有する材料で一体に形成され、サッカーシューズの内側甲被部又は外側甲被部に粘着又は接着させて使用する、ボールの回転強化用シートであって、表面に多数の中空円盤状の吸盤が配置され、該吸盤は上端に円環端面を有し、サッカーシューズに貼り付けたときのシートの後側に主として配置されている吸盤の直径及び円環端面の肉厚が、シートの前側に主として配置されている吸盤の直径及び円環端面の肉厚よりも大きく形成されている構成である。
【0008】
請求項2記載の発明は、吸盤が、パイプを輪切りにスライスした如き中空円盤形状である構成である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記吸盤の底が、シートの表面とほぼ同じ高さである構成である。
【0010】
請求項4記載の発明は、吸盤が、凹球面状の吸着面を有する中空円盤形状である構成である。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記吸着面の中央が、シートの表面とほぼ同じ高さである構成である。
【0012】
請求項6記載の発明は、各吸盤の高さがほぼ等しい構成である。
【0013】
請求項7記載の発明は、吸盤の直径は大小2種類存在し、大きい方の吸盤の直径はほぼ同じであり、小さい方の吸盤の直径もほぼ同じである構成である。
【0014】
請求項10記載の発明は、シートを切り取って、小さなシューズに大きさを合わせるための切り取り線が設けられている構成である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明は、表面に多数の中空円盤状の吸盤が配置され、該吸盤は上端に円環端面を有し、サッカーシューズに貼り付けたときのシートの後側に主として配置されている吸盤の直径及び円環端面の肉厚が、シートの前側に主として配置されている吸盤の直径及び円環端面の肉厚よりも大きく形成されている。本発明の吸盤は、柱状でなく円盤状であり、すなわち空飛ぶ円盤の如き平べったい形状であるから、ボールが斜め横から擦れるように当たったときに、柱状の突起であると上半部が倒れるように曲がって変形するが、円盤状の吸盤では倒れるように曲がることがほとんどない。したがって、しっかりとサッカーボールに吸着して、ボールに強力な回転力を与えることができる。
【0016】
また、吸盤は、上端に円環端面を有している。これに対して、特許文献1の柱状突起は、突起の上面に凹弧状の凹みを形成したものが開示されているが、凹弧状の凹みの外周と柱状突起の外周が一致しており、エッジ状をなしている。したがって、その部分に円環端面は存在せず、柱状突起にボールが斜め横から擦れるように当たったときに、前記エッジ状部分が容易に変形して凹弧状の凹みは簡単に形が崩れて吸盤本来の形状が維持されず、吸盤としての機能を十分に発揮できないので、ボールに強力な回転を与えることができない。これに対して、本発明の吸盤は、上端に円環端面を有しているので、吸盤本来の形状が崩れにくく、吸盤が十分に吸着力を発揮してボールに強力な回転力を与えることができる。
【0017】
さらに、プロサッカー選手がボールに強力な回転を与えるキックをするときは、サッカーシューズの内側甲被部を使用するが、ボールに最も強力に回転を与える場所は決まっていて、足先に近い内側甲被部はボールを擦るように当たってボールにやや回転を与える程度であって、ボールがその場所を通過した後に、その前で少し回転がついたボールを後側の内側甲被部がボールを擦るようにして蹴ると、ボールに強力な回転がつくのである。すなわち、ボールに最も強力に回転を与える場所は、足先に近い内側甲被部よりも後側の部分である。したがって、本発明では、ボールに対するグリップ力の大きい吸盤をシートの後側に主として配置したのである。すなわち、シートの後側に主として配置されている吸盤の直径及び円環端面の肉厚が、シートの前側に主としてされた吸盤の直径及び円環端面の肉厚よりも大きくなるように形成されている。これは、吸盤の直径及び円環端面の肉厚が大きい方が、小さい方の吸盤よりもグリップ力が大きいということを確認したからである。これにより、ボールに強力な回転を与えることができる。
【0018】
そして、シューズの足先に近い内側甲被部は、主にドリブルをするときに使用される部分である。ドリブルは軽いタッチでボールを運ぶプレーであるから、ボールにソフトに当たることが好ましく、前述した大きな吸盤では肉厚が大きいためドリブルのタッチではほとんど吸盤が変形せず、クッションがきかない。したがって、ドリブルをするときにボールをやや強く蹴って体から離れてしまうおそれがある。これは、通常のサッカーシューズと同じである。本発明は、サッカーシューズに貼り付けたときのシートの前側に主として配置されている吸盤の直径及び円環端面の肉厚が、後側の吸盤よりも小さく形成されているので、肉厚の薄い外周壁がクッションの役割を果たし、ボールのコントロールをしやすくしているのである。すなわち、本発明のシートは、その前側の吸盤と後側の吸盤の役目を明確に分けて、ボールのコントロールと、ボールに強力な回転をかけるために、それらのプレーに合った吸盤を、その吸盤の機能が十分に発揮できる場所に配置したものである。
【0019】
請求項2記載の発明は、吸盤が、パイプを輪切りにスライスした如き中空円盤形状である。したがって、吸盤の内周壁が外周壁と同様にシート表面から垂直に立ち上がっており、内周壁と円環端面の境界のなす角度は直角である。これにより、ボールが吸盤の吸着されたときにボールは前記境界に当たるが、境界の角度が直角であるから、ボールはこの境界からも大きなグリップ力を与えられ、強力な回転を得られる要素となる。
【0020】
請求項3記載の発明は、前記請求項2記載の吸盤の底が、シートの表面とほぼ同じ高さである。すなわち、吸盤の中空部の深さが外周壁の高さと同じである。したがって、外周壁のすべてを含んだ吸盤となるので、十分な吸着力を得ることができる。
【0021】
請求項4記載の発明は、吸盤が、凹球面状の吸着面を有する中空円盤形状である。すなわち、吸着面が、一般の吸盤に用いられている標準的な形状であり良好な吸着力を得ることができる。
【0022】
請求項5記載の発明は、前記請求項4記載の吸着面の中央が、シートの表面とほぼ同じ高さである。すなわち、吸盤の中空部の中央の深さが外周壁の高さと同じである。したがって、外周壁の全部が吸盤となるので、吸盤が浅い場合に比べて十分な吸着力を得ることができる。
【0023】
請求項6記載の発明は、各吸盤の高さがほぼ等しい。したがって、吸盤の影響を受けてボールが意図しない方向に進むことがなく、ボールを良好にコントロールすることができる。
【0024】
請求項7記載の発明は、吸盤の直径は大小2種類存在し、大きい方の吸盤の直径はほぼ同じであり、小さい方の吸盤の直径もほぼ同じである。大きい方の吸盤はグリップ力を重視してボールの回転力強化を図り、小さい方の吸盤はグリップ力のほかクッション性も重視してボールのコントロールを良くするものである。したがって、吸盤のサイズは最適なものに統一した方がそれらの効果を発揮しやすいと考えられるから、大きい方の吸盤も小さい方の吸盤も大きさをそれぞれ統一したのである。
【0025】
請求項10記載の発明は、シートを切り取って、小さなシューズに大きさを合わせるための切り取り線が設けられている。したがって、シューズの大きさに合わせて的確に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は本発明やや斜め下から見た正面図である。
図2図2は本発明のサッカーシューズを示す正面図である。
図3図3は大きい吸盤の断面図である。
図4図4は小さい吸盤の断面図である。
図5図5は大きい吸盤の他の実施例の断面図である。
図6図6は小さい吸盤の他の実施例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。シート1は、柔軟性及び高摩擦性を有する材料で、図1に示す如き形状に形成されている。図1の左側がシート1の前側であり、右側が後側である。材料は、シリコーンゴムであるがこれに限定されるものではなく、柔軟性及び高摩擦性を有する材料であればよい。なお、シート1の形状は図1の如き形状に限定されるものでないことは勿論である。
【0028】
シート1の表面には、多数の大きい吸盤2と小さい吸盤3の2種類の吸盤が、シート1と一体に形成されている。吸盤2,3は、パイプを輪切りにスライスした如き中空円盤形状である。図3に示すように、大きい吸盤2は外周壁4を有し、その外周壁4の上端に円環端面5を有している。外周壁4の外径L1は約12.0mmであり、内径L2は約8.0mmであり、高さL3は約1.5mmである。また、円環端面5の肉厚は約2.0mmである。シート1の厚みL4は一定であって約0.5mmである。本発明がこれらの数値に限定されないことは勿論である。本実施例では、大きい吸盤2のサイズは同一であるが、多少サイズの異なるものを含んでもよい。また、大きい吸盤2の底6は、シート1の表面と同じ高さであるが、これに限定されるものではない。シート1の裏面には両面テープ7とそれを覆う剥離紙8が取り付けられている。両面テープ7は、シート1の材料であるシリコーンゴムに貼り付かないので、それらの間にTPUフィルム9が介在している。シート1はシューズに貼り替えることを予定していないので、強力な粘着力を有する両面テープが用いられている。
【0029】
大きい吸盤2の外周壁4は、前述したように、高さL3が約1.5mmであり非常に低く、しかも肉厚が約2.0mmであって高さよりも大きく形成されている。したがって、ボールが当たったときに、大きい吸盤2の変形はわずかである。そして、図3に示すように、外周壁4の内周面10はシート1の表面から垂直に立ち上がっているので、円環端面5との境界11のなす角度は直角である。ボールに回転をかけるように蹴るときは、ボールが大きい吸盤2に斜め横から当たって吸盤の吸着力が生じ、さらに前記直角の境界11がボールに接してグリップ力が生じる。そして、大きい吸盤2の変形はわずかであるので、吸盤は吸着力を保持し、境界11はそのグリップ力を保持してボールに強力な回転をかけることができる。
【0030】
図4に示すように、小さい吸盤3は外周壁12を有し、その外周壁12の上端に円環端面13を有している。この外周壁12の外径L5は約7.0mmであり、内径L6は約5.0mmであり、高さL7は約1.5mmであって、この高さは大きい吸盤2の高さと同じである。また、円環端面13の肉厚は約1.0mmであって、大きい吸盤2の肉厚の半分である。前述したように、シート1の厚みは一定であるので、厚みL8は約0.5mmである。本発明がこれらの数値に限定されないことは勿論である。本実施例では、小さい吸盤3のサイズは同一であるが、多少サイズの異なるものを含んでもよい。また、小さい吸盤3の底14は、シート1の表面と同じ高さであるが、これに限定されるものではない。
【0031】
前述したように、小さい吸盤3の外周壁12は大きい吸盤2の高さと同じあるが、外周壁12の肉厚は大きい吸盤2の肉厚の半分である。肉厚が薄いので、ボールが当たったときに、小さい吸盤3は押し潰されるように変形する。押し潰されるように変形するということは、そのときにボールに対してクッション力が作用するということである。したがって、シューズのボールに対する当たりがソフトになり、ドリブルをするときに当たりがやや強くなっても、体から離れるほどボールが進むことを抑制し、ボールを良好にコントロールすることができる。また、小さい吸盤3であっても吸盤であることに変わりはなく、大きい吸盤2と同様に円環端面13と内周面24との境界25のなす角度は直角であるから、ボールに強力な回転をつけるための補助的作用もするのである。
【0032】
図1に示すように、シート1の前側には小さい吸盤3が主として配置され、後側には大きい吸盤2が主として配置されている。シート1の前側と後側はどこかということについては、厳格に定められるものではなく、例えば、中央付近に直線又は曲線の境界線を設定し、その境界線の前後で定めてもよい。あるいは、中央付近にやや幅の狭い中央領域を定め、その中央領域の前後で定めてもよい。この場合、シート1の前側と後側は中央領域により隔てられる。なお、中央領域は前側でも後側でもないがそこにも吸盤が配置されていることが好ましい。
【0033】
図1に示すように、境界線15をシート1の前後の境としたときは、その堺の前側には小さな吸盤3が30個と大きい吸盤2が3個形成されており、シート1の前側で小さい吸盤3の占める割合は90%である。したがって、シート1の前側に主として配置されている吸盤は小さい吸盤3である。また、堺の後側には大きな吸盤2が14個と小さい吸盤3が5個形成され、シート1の後側で大きい吸盤2が占める割合は74%である。したがって、シート1の後側に主として配置されている吸盤は大きい吸盤2である。本発明において、主としてとは、シート1の前側では小さい吸盤3が、シート1の後側では大きい吸盤2が、それぞれ65%以上、好ましくは70%以上、中でも85%以上、その中でも95%以上(100%を含む。)を占めることを意味するものである。
【0034】
次に、本発明のシート1の使用方法について説明する。図1に示すシート1は、図2に示す右足用のシューズ16の内側甲被部に粘着させて使用するものである。シート1には切り取り線17が設けられており、この図2の場合、当初のシート1がシューズ16よりも大きいので、切り取り線17で切断しシューズに合うように小さくしてある。図1に示すように、切り取り線はこのほかにも設けられており、シューズに合うように切り取ることができる。
【0035】
本発明は、シート1がシューズに貼り付けられたときに効果を発揮するものであるから、仮に、未使用のシートが非常に大きくて、そのシートの構成が本発明に含まれないような場合でも、実際に使用するときに、それを小さくしてシューズに貼り付け、図2のようになるのであれば本発明に含まれる。シート1はシューズ16の内側甲被部を主に覆うように貼付するが、シート1の前端部付近の部分が、シューズ16の先端部分も覆うように貼付する。これにより、シューズの先端部分を使ってのボールコントロールが良好となる。製造業者が、シートを貼り付けたシューズとして製造する場合は、シートを切り取り線で切る構成とすることなく、シューズのサイズごとのシートを製造してシューズに貼り付ければ効率的である。
【0036】
図5及び図6は、吸盤の他の実施例を示している。図5は大きい吸盤18であって、最初の実施例の大きい吸盤2とは吸盤の中空部の形状が異なっているだけである。すなわち、図5に示すように、中空部は、凹球面状の吸着面19を有し、その吸着面19の中央はシート1の表面と同じ高さである。大きい吸盤18の上端に円環端面20を有することは最初の実施例と同じである。また、大きい吸盤18の外径L9は約12.0mmであり、内径L10は約8.0mmであり、したがって、円環端面20の肉厚は約2.0mmであって、最初の実施例と同じサイズである。
【0037】
図6は小さい吸盤21であって、最初の実施例の小さい吸盤3とは吸盤の中空部の形状が異なっているだけである。すなわち、図6に示すように、中空部は、凹球面状の吸着面22を有し、その吸着面22の中央はシート1の表面と同じ高さであるが、これに限定されるものではない。小さい吸盤21の上端に円環端面23を有することは最初の実施例と同じである。また、小さい吸盤21の外径L11は約7.0mmであり、内径L12は約5.0mmであり、したがって、円環端面23の肉厚は約1.0mmであって、最初の実施例と同じサイズである。
【0038】
本実施例は、右足用シューズの内側甲被部に貼り付けて使用するものであるが、本発明は、形状等を変えて、そのシューズの外側甲被部に貼り付けて使用できるようにすることもできる。さらに、左側のシューズの内側又は外側の甲被部に貼り付けて使用できるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 シート、 2 大きい吸盤、 3 小さい吸盤、 4 外周壁、 5 円環端面、 6 底、 7 両面テープ、 8 剥離紙、 9 TPUフィルム、 10 内周面、 11 境界、 12 外周壁、 13 円環端面、 14 底、 15 境界線、 16 右足用シューズ、 17 切り取り線、 18 大きい吸盤、 19吸着面、 20 円環端面、 21 小さい吸盤、 22 吸着面、 23 円環端面、 24 内周面、 25 境界
図1
図2
図3
図4
図5
図6