(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】ワークテーブル
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/10 20060101AFI20240328BHJP
B23B 15/00 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B23Q7/10
B23B15/00 A
(21)【出願番号】P 2020120551
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 三紀彦
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-072933(JP,U)
【文献】特開平10-135311(JP,A)
【文献】特開2019-117828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00- 7/18
B23B15/00
B23Q 3/18
B65G57/00
H01L21/68
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平なZ軸方向に往復移動可能なローダとの間でワークの受け渡しが行われるワーク受け渡し位置に順次割り出されるように所定の循環経路を移動させられる複数のパレットを備えており、
前記複数のパレットは、それぞれ、上面にワーク載置部を有している昇降可能なリフトテーブルと、前記ワーク載置部に載置された前記ワークを水平方向の移動が規制されるように保持する垂直上向きの3本のガイドバーとを有しており、
前記3本のガイドバーは、前記リフトテーブルに対する水平方向の位置が固定された2本の固定ガイドバーと、段取り替え時に前記リフトテーブルに対して所定の水平な直動方向に移動可能となされた1本の可動ガイドバーとよりな
り、
前記ワーク受け渡し位置において前記3本のガイドバーによって保持されている前記ワークの中心が、前記ワークの大きさにかかわらず、平面より見て前記ローダに備えられたワーク保持体の中心が移動するZ軸上に位置するように、前記リフトテーブルに対する前記3本のガイドバーの水平方向の位置および前記可動ガイドバーの前記直動方向が設定されている、ワークテーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋盤や複合加工機等の工作機械に、ローダによってワークを搬送する自動ワーク交換システムにおいて、多数のワークをローダに順次受け渡し可能にストックするために用いられるワークテーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤等の工作機械によってワークを加工するに当たり、工作機械に隣接して設置されたワークテーブルに多数のワークをストックしておき、水平なZ軸方向に往復移動可能なローダによってワークテーブルからワークを1つずつ取り出して工作機械に搬送する事により、ワークの連続加工を無人で行うことを可能とした自動ワーク交換システムが知られている。
【0003】
例えば特許文献1、2に示すように、ワークテーブルは、ローダとの間でワークの受け渡しが行われるワーク受け渡し位置に順次割り出されるように所定の循環経路を移動させられる複数のパレットを備えている。各パレットは、ワーク載置部を上面に有する昇降可能なリフトテーブルと、垂直上方にのびた複数本のガイドバーとを備えている。ワーク載置部に積み重ね状に載置された複数のワークは、複数本のガイドバーによって、水平方向の移動が規制されるように保持されている。
【0004】
ここで、工作機械により加工されるワークを、例えば外径が異なる他種のワークに変更する場合、ワークの大きさに応じて、ワーク載置部に対する複数本のガイドバーの位置を変更調整する作業が必要となる。
このような段取り替えに対応するため、従来のワークテーブルでは、例えば特許文献1、2に記載されているように、各パレットに、複数本のガイドバーをリフトテーブルの中心から半径方向に等距離ずつ水平移動させる機構が設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平6-42041号公報
【文献】特開平9-234644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動ワーク交換システムにおいて、旋盤等によるワークの加工効率を上げるためには、ワークテーブルによるワークのストック数をなるべく多くする必要がある。そのため、ワークテーブルには、通常10~20個のパレットが備えられている。
しかしながら、従来のワークテーブルの場合、段取り替えに際して、各パレットにおける複数本のガイドバー全ての位置を変更調整する必要があるため、段取り替えに多くの手間と時間を要し、作業効率に問題があった。
【0007】
この発明の目的は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、段取り替えに要する手間と時間を軽減して作業効率を向上させることができるワークテーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0009】
1)水平なZ軸方向に往復移動可能なローダとの間でワークの受け渡しが行われるワーク受け渡し位置に順次割り出されるように所定の循環経路を移動させられる複数のパレットを備えており、
前記複数のパレットは、それぞれ、上面にワーク載置部を有している昇降可能なリフトテーブルと、前記ワーク載置部に載置された前記ワークを水平方向の移動が規制されるように保持する垂直上向きの3本のガイドバーとを有しており、
前記3本のガイドバーは、前記リフトテーブルに対する水平方向の位置が固定された2本の固定ガイドバーと、段取り替え時に前記リフトテーブルに対して所定の水平な直動方向に移動可能となされた1本の可動ガイドバーとよりなる、ワークテーブル。
【0010】
2)前記ワーク受け渡し位置において前記3本のガイドバーによって保持されている前記ワークの中心が、前記ワークの大きさにかかわらず、平面より見て前記ローダに備えられたワーク保持体の中心が移動するZ軸上に位置するように、前記リフトテーブルに対する前記3本のガイドバーの水平方向の位置および前記可動バーの前記直動方向が設定されている、前記1)のワークテーブル。
【発明の効果】
【0011】
前記1)のワークテーブルによれば、段取り替えを行う際、変更するワークの大きさに合わせて、各パレットの1本の可動ガイドテーブルを所定の水平な直動方向に移動させてその位置を変更調整するだけでよいので、従来技術と比べて段取り替えに要する手間と時間が大幅に軽減され、作業効率が向上する。
【0012】
前記2)のワークテーブルによれば、ワーク受け渡し位置において3本のガイドバーにより保持されたワークの中心は、ワークの大きさに応じて移動するものの、平面より見てローダに備えられたワーク保持体の中心が移動するZ軸上に常に位置するため、ローダのティーチングポイントの変更を行うことで段取り替えに対応することが可能であり、ティーチング作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施形態に係るワークテーブルを旋盤およびローダと組み合わせてなる自動ワーク交換システムの概略を示す垂直断面図である。
【
図3】同ワークテーブルのワーク受け渡し位置に割り出されたパレットを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施形態を、
図1ないし
図3を参照して以下に説明する。
以下の説明において、
図1ないし
図3の各左右を「左右」といい、また、
図2および
図3の各下を「前」といい、同各上を「後」というものとする。
【0015】
図1および
図2に示すように、この実施形態のワークテーブル(4)は、旋盤(2)およびローダ(3)と組み合わせて自動ワーク交換システム(1)を構成するものである。
【0016】
旋盤(2)は、加工室(20)内に配置された主軸(21)と刃物台(22)を有している。
主軸(21)は、左右方向にのびる水平な主軸軸線を中心として回転可能に設置されている。主軸(21)の先端部には、ワーク(W)を把持するためのチャック(21a)が設けられている。
図示の刃物台(22)は、加工室(20)において、水平なZ軸方向(左右方向)およびこれと直交するX軸方向に移動自在となされているとともに、複数の工具を装着可能な工具ホルダ(22a)が、左右方向にのびる水平な旋回軸線を中心として旋回可能に設けられている。
加工室(20)の上部を覆っている上部カバー(23)には、ワーク(W)を出し入れするための開口部(23a)が設けられている。開口部(23a)は、ワーク加工時にスライドドア(24)によって閉鎖される。
【0017】
ローダ(3)は、旋盤(2)およびワークテーブル(4)の上方にまたがるように設けられた門型のものであって、左右方向にのびた水平なビーム(31)に往復走行自在に取り付けられているキャリア(32)と、キャリア(32)に上下昇降自在に取り付けられている垂直なアーム(33)と、アーム(33)の下端部に設けられてワーク(W)を着脱自在に保持するワークハンド(34)(ワーク保持体)とを備えている。ワークハンド(34)は、チャックによってワーク(W)を把持するものとなされている。なお、上記ワークハンド(34)に代えて、例えば電磁石によってワーク(W)を吸着保持する仕様のワーク保持体を使用することも可能である。
図示のローダ(3)の場合、ワークハンド(34)は、アーム(33)の下端部において左斜め下45°に傾斜した旋回軸線を中心として旋回可能な旋回体(35)に2つ取り付けられている。2つのワークハンド(34)は、一方が主軸(21)側の水平左方を向くとともに、他方が垂直下方を向くように旋回体(35)に取り付けられており、旋回体(35)が180°旋回することで両ワークハンド(34)の位置が入れ替わるようになっている。
上記のローダ(3)によれば、加工前のワーク(W)および加工後のワーク(W)を、旋盤(2)の主軸(21)と、ワークテーブル(4)のワーク受け渡し位置に割り出されたパレットとの間で交互に搬送させることができる。搬送中、各ワークハンド(34)により保持されたワーク(W)の中心は、平面より見て旋盤(2)の主軸軸線と一致するZ軸上を移動するようになっている。
なお、この発明によるワークテーブルは、図示のような2軸ローダ(3)と組み合わせる場合に限らず、ワークをZ軸方向にのみ搬送可能な1軸ローダや、ワークをZ軸方向およびY軸方向に加えてX軸方向(前後方向)にも搬送可能な3軸ローダと組み合わせる場合にも、同様に適用可能である。
【0018】
ワークテーブル(4)は、前後に長い基台(41)の天板(41a)上をループ状に移動させられる複数(
図2では10個)のパレット(5)を備えている。
各パレット(5)は、基台(41)の天板(41a)上を移動可能なベースプレート(51)を有している。ベースプレート(51)は、例えばその底部に車輪(図示略)を取り付けることにより、天板(41a)上を走行可能な構成とすることができる。
基台(41)の天板(41a)の下方には、垂直軸線を中心として回転可能な前後2つのスプロケット(42)と、両スプロケット(42)に掛け渡されたチェーン(43)とが配置されている。各パレット(5)のベースプレート(51)は、連結手段(図示略)を介して、チェーン(43)に所定間隔おきに連結されている。そして、一方のスプロケット(42)を図示しないモータ等で回転駆動させることにより、チェーン(43)が水平面内で回転させられると、各パレット(5)のベースプレート(51)が天板(41a)上の循環経路(R)を移動させられるようになっている。
また、各パレット(5)は、上面にワーク載置部(52a)を有している昇降可能なリフトテーブル(52)と、ワーク載置部(52a)に載置されたワーク(W)を水平方向の移動が規制されるように保持する垂直上向きの3本のガイドバー(531)(532)とを有している。
3本のガイドバーは、リフトテーブル(52)に対する水平方向の位置が固定された2本の固定ガイドバー(531)と、段取り替え時にリフトテーブル(52)に対して所定の水平な直動方向に移動可能となされた1本の可動ガイドバー(532)とよりなる。
図2に示すように、パレット(5)の循環経路(R)における左右の直線部の各前端が、ローダ(3)との間でワーク(W)の受け渡しが行われるワーク受け渡し位置(P1)(P2)となされている。具体的には、例えば、右側のワーク受け渡し位置(P1)において、パレット(5)のワーク載置部(52a)に載置された加工前のワーク(W)が、ローダ(3)の一方のワークハンド(34)によって取り出され、左側のワーク受け渡し位置(P2)において、ローダ(3)の他方のワークハンド(34)に保持された加工後のワーク(W)が、パレット(5)のワーク載置部(52a)に戻される。
【0019】
リフトテーブル(52)は、例えば円板状のものであって、ベースプレート(51)の上に配置されている。
リフトテーブル(52)のワーク載置面(52a)には、加工前または加工後のワーク(W)が積み重ね状に複数個載置されるようになっている。
【0020】
図3に示すように、リフトテーブル(52)には、3本のガイドバー(531)(532)が上下相対移動可能に挿通される3つの垂直な挿通孔(521)(522)が形成されている。リフトテーブル(52)は、これらのガイドバー(531)(532)に案内されながら垂直方向に昇降させられる。
リフトテーブル(52)の3つの挿通孔のうち固定ガイドバー(531)が挿通される2つの挿通孔(521)は、通常、固定ガイドバー(531)の外径より若干大きい孔径を有する円孔によって構成される。可動ガイドバー(532)が挿通される残りの1つの挿通孔(522)は、可動ガイドバー(532)の直動方向に沿って長くのびた長孔によって構成される。可動ガイドバー(532)は、この挿通孔(522)の長さの範囲内で、直動可能となされる。
なお、リフトテーブル(52)には、固定ガイドバー(531)が挿通される2つの挿通孔(521a)に代えて、外周部に平面より見て円弧状の2つの切欠部が形成され、2本の固定ガイドバー(531)が、これらの切欠部に上下相対移動可能に配置されていてもよい。また、ワークテーブル(52)に、長孔よりなる挿通孔(522)に代えて、外周から中心に向かって半径方向にのびるスリットを形成し、同スリットに可動ガイドバー(532)を直動可能に配置してもよい。
【0021】
リフトテーブル(52)は、各パレット(5)がワーク受け渡し位置(P1)(P2)に割り出された時に、その下方に配置された図示しない昇降装置によって昇降させられることにより、ワーク(W)の受け渡しに適した所要高さに移動可能となされている。昇降装置は、例えば、ワーク割り出し位置(P1)(P2)において、モータ等の駆動装置(図示略)により基台(41)の天板(41a)を貫通して昇降駆動させられる垂直な昇降ロッド(図示略)を有するものとなされ、同昇降ロッドを上昇させてその上端でリフトテーブル(52)を押し上げることにより、リフトテーブル(52)が上昇させられ、昇降ロッドを下降させると、リフトテーブル(52)が下降させられるように構成することができる。
【0022】
2本の固定ガイドバー(531)は、これらの下端部がベースプレート(51)に固定状に取り付けられている。
可動ガイドバー(532)は、その下端部が、リフトテーブル(52)の挿通孔(522)の長さに対応する範囲内で水平方向に直動可能に取り付けられており、例えばベースプレート(51)の下方に配置されたモータ等の駆動手段(図示略)により、または手動で、位置の変更調整を行うことができるようになっている。
これらのガイドバー(531)(532)は、ローダ(3)のワークハンド(34)との取り合いを考慮すると、それぞれ横断面の外周が円形である丸棒によって構成されているのが好ましい。
【0023】
図3に示すように、ワーク受け渡し位置(P1)(P2)において3本のガイドバー
(531)(532)により保持されたワーク(W)の中心(W1)は、ワーク(W)の大きさにかかわらず、平面より見てローダ(3)に備えられたワークハンド(34)(ワーク保持体)の中心が移動するZ軸(Z)上に常に位置するようになっている。
上記のようなワーク(W)の芯出しは、リフトテーブル(52)に対する3本のガイドバー
(531)(532)の水平方向の位置および可動
ガイドバー
(532)の直動方向を適宜設定することで可能となる。より詳細に言うと、
図3に示すように、2本の固定ガイドバー
(531)は、パレット(5)がワーク受け渡し位置(P1)(P2)に割り出されている時に、平面より見てこれらの中心どうしを結ぶ直線(L1)が同直線(L1)の長さ中央においてZ軸(Z)と直交するように配置されている。また、可動ガイドバー
(532)は、パレット(5)がワーク受け渡し位置(P1)(P2)に割り出されている時に、平面より見てその中心がZ軸(Z)上に配置されているとともに直動方向がZ軸(Z)と一致させられている。
3本のガイドバー
(531)(532)の位置決めに際しては、まず2本の固定ガイドバー
(531)にワーク(W)の外周部を当接させた状態で、可動ガイドバー
(532)を直動方向に移動させてワーク(W)の外周部に当接させるだけで、ワーク(W)の芯を保持することができる。また、ワーク(W)の大きさに応じてローダ(3)のティーチングポイントの変更を行えば、それによって芯出しを行うことができるので、ティーチング作業が容易である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明は、旋盤等の工作機械およびローダと組み合わせて自動ワーク交換システムを構成するためのワークテーブルとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0025】
(1):自動ワーク交換システム
(2):旋盤(工作機械)
(20):加工室
(21):主軸
(22):刃物台
(3):ローダ
(32):キャリア
(33):アーム
(34):ワークハンド(ワーク保持体)
(4):ワークテーブル
(5):パレット
(52):リフトテーブル
(52a):ワーク載置部
(531):固定ガイドバー
(532):可動ガイドバー