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特許7461821モータ駆動制御装置、アクチュエータ、および通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置、アクチュエータ、および通信システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 8/40 20060101AFI20240328BHJP
【FI】
H02P8/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020120582
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022017809
(43)【公開日】2022-01-26
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】貝本 浩之
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-189075(JP,A)
【文献】特開2008-155906(JP,A)
【文献】特開平07-131997(JP,A)
【文献】特開2018-033203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H1/00-3/06
H02P4/00-8/42
21/00-31/00
H04L12/28
12/44-12/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスを介してマスタと接続可能にされ、モータの駆動を制御するとともに前記マスタに対するスレイブとして動作可能なモータ駆動制御装置であって、
前記バスから受信した信号に基づいて、前記モータの回転を制御するための駆動制御信号を生成するとともに、前記スレイブとしてのアドレスを決定するモータ制御回路と、
前記駆動制御信号に基づいて前記モータに通電するモータ駆動回路と、を有し、
前記モータ制御回路は、前記モータを駆動させたときの前記モータの駆動に関する物理量を測定し、前記物理量の測定値に基づいて前記アドレスを決定し、
前記物理量は、前記モータの負荷の大きさを含む
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
バスを介してマスタと接続可能にされ、モータの駆動を制御するとともに前記マスタに対するスレイブとして動作可能なモータ駆動制御装置であって、
前記バスから受信した信号に基づいて、前記モータの回転を制御するための駆動制御信号を生成するとともに、前記スレイブとしてのアドレスを決定するモータ制御回路と、
前記駆動制御信号に基づいて前記モータに通電するモータ駆動回路と、を有し、
前記モータ制御回路は、前記モータを駆動させたときの前記モータの駆動に関する物理量を測定し、前記物理量の測定値に基づいて前記アドレスを決定し
前記物理量は、前記モータが駆動可能な範囲を示す可動距離と前記モータの負荷の大きさとを含み、
前記モータ制御回路は、測定した前記可動距離と前記負荷の大きさの組み合わせに基づいて、前記アドレスを決定する
モータ駆動制御装置。
【請求項3】
バスを介してマスタと接続可能にされ、モータの駆動を制御するとともに前記マスタに対するスレイブとして動作可能なモータ駆動制御装置であって、
前記バスから受信した信号に基づいて、前記モータの回転を制御するための駆動制御信号を生成するとともに、前記スレイブとしてのアドレスを決定するモータ制御回路と、
前記駆動制御信号に基づいて前記モータに通電するモータ駆動回路と、を有し、
前記モータ制御回路は、前記モータを駆動させたときの前記モータの駆動に関する物理量を測定し、前記物理量の測定値に基づいて前記アドレスを決定し
前記物理量は、前記モータが駆動可能な範囲を示す可動距離を含み、
前記モータ制御回路は、前記モータを第1方向に回転させて前記モータの脱調を検出してから前記モータを第2方向に回転させて前記モータの脱調を検出するまでの前記モータの回転数を測定し、前記回転数の測定値に基づいて前記可動距離を算出する
モータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記モータ制御回路は、前記物理量と前記モータ駆動制御装置を一意に識別するためのノード識別子との対応関係を示す対応関係情報を有し、前記対応関係情報を参照して、前記物理量の測定値に対応する前記ノード識別子を前記アドレスとする
モータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項またはに記載のモータ駆動制御装置において、
前記モータ制御回路は、前記モータを回転させたときの前記モータの逆起電圧と電流の少なくとも一方を測定し、測定した値に基づいて前記負荷の大きさを決定する
モータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置と、
前記モータと、
前記モータの回転力を駆動対象に伝達する動力伝達機構と、を備えるアクチュエータ。
【請求項7】
マスタと、
バスと、
前記バスを介して前記マスタと接続され、モータを有する複数のスレイブと、を備え、
前記マスタは、前記スレイブのアドレス設定の開始を指示するリクエストを前記バスに送信し、
前記スレイブは、前記バスから受信した前記リクエストに応じて、前記モータを駆動させて前記モータの駆動に関する物理量を測定し、前記物理量の測定値に基づいて前記スレイブとしての自身のアドレスを設定し、
前記物理量は、前記モータが駆動可能な範囲を示す可動距離を含み、
前記スレイブは、前記モータを第1方向に回転させて前記モータの脱調を検出してから前記モータを第2方向に回転させて前記モータの脱調を検出するまでの前記モータの回転数を測定し、前記回転数の測定値に基づいて前記可動距離を算出する
通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置、アクチュエータ、および通信システムに関し、例えば、マスタとの間で通信を行うスレイブとして動作可能なモータ駆動制御装置、当該モータ駆動制御装置を備えたアクチュエータ、およびマスタとスレイブとを含む通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用途の空調ユニットとして、HVAC(Heating Ventilation and Air-Conditioning)が知られている。HVACは、空間内を快適に保つために、熱交換器で除湿、冷房、暖房等された空気をファンやモータで送風する空調ユニットである。一般に車載用途のHVACシステムは、1台のマスタとしてのECU(Electronic Control Unit)と複数のスレイブとが1本の通信線であるバスライン(以下、「LINバス」とも称する。)を介して互いに接続されたLIN(Local Interconnect Network)通信ネットワークを構成している。
【0003】
HVACシステムにおけるスレイブは、例えば、ダンパアクチュエータ等のHVACシステムで使用可能なアクチュエータである。アクチュエータは、モータ(例えばステッピングモータ)と、モータの駆動を制御するモータ駆動制御装置と、モータの回転力を駆動対象に伝達する動力伝達機構とを含む。動力伝達機構は、HVACシステムにおける空調装置の可動部に連結されており、モータの回転力を空調装置の可動部に伝達することにより、当該可動部を駆動する。
【0004】
アクチュエータは、LINバスを介してマスタECUから送信された制御フレームに基づいて動作する。具体的には、アクチュエータにおけるモータ駆動制御装置が、LINバスを介してマスタECUとの間で通信を行い、マスタECUから受信した制御フレームに基づいてモータの駆動を制御することにより、アクチュエータの動作を制御する。
【0005】
一般に、LIN通信では、マスタが指定したスレイブに向けてリクエスト(トークン)をLINバスに送信し、LINバスからリクエストを受信した各スレイブは、そのリクエストが自身に向けられている場合に、リクエストに応じたデータ(レスポンス)をマスタに向けてLINバスに送信する。そのため、各スレイブは、自身を一意に識別するためのノード識別子がLIN通信のシステム内のアドレスとして設定されている必要がある。
【0006】
従来、LIN通信におけるスレイブのアドレスを設定する方法として、種々の技術が知られている。例えば、特許文献1には、スレイブとマスタ(ECU)とがスレイブ毎に対応して設けられたシャント抵抗を介してデイジーチェーン接続されたLIN通信システムにおいて、各スレイブがシャント抵抗に流れる電流を検出する電流検出回路を有し、マスタが、各スレイブの電流検出回路によって検出された電流値に基づいて、各スレイブのアドレスを設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7091876号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、シャント抵抗に流れる電流を検出するための電流検出回路を各スレイブに設ける必要があり、回路規模の増大を招く。また、電流を高精度に検出するために高分解能のA/D変換回路が必要となり、部品コストの増大を招く。更に、特許文献1に開示された技術は、電流検出をマスタとの通信に同期して行うための複雑なタイミング制御が必要となる。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、マスタと複数のスレイブとが一つの通信線で接続された通信システムにおいて、スレイブのアドレスを簡単に設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、バスを介してマスタと接続可能にされ、モータの駆動を制御するとともに前記マスタに対するスレイブとして動作可能であって、前記バスから受信した信号に基づいて、前記モータの回転を制御するための駆動制御信号を生成するとともに、前記スレイブとしてのアドレスを決定するモータ制御回路と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータに通電するモータ駆動回路と、を有し、前記モータ制御回路は、前記モータを駆動させたときの前記モータの駆動に関する物理量を測定し、前記物理量の測定値に基づいて前記アドレスを決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るモータ駆動制御装置によれば、マスタと複数のスレイブとが一つの通信線で接続された通信システムにおいて、スレイブのアドレスを簡単に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係るモータ駆動制御装置を備えたアクチュエータを含む通信システムの構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係るアクチュエータの構造の一例を示す分解斜視図である。
図3】実施の形態1に係るモータ駆動制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態1に係る制御回路の機能ブロック構成を示す図である。
図5】アクチュエータにおけるステッピングモータの可動距離を説明するための図である。
図6】実施の形態1に係る対応関係情報の一例を示す図である。
図7】通信システムにおけるアクチュエータのアドレスの設定の流れを示すシーケンス図である。
図8】実施の形態1に係るモータ駆動制御装置によるアドレス設定時のキャリブレーションの流れを示すフローチャートである。
図9】実施の形態2に係るモータ駆動制御装置の構成を示すブロック図である。
図10】実施の形態2に係る対応関係情報の一例を示す図である。
図11】実施の形態2に係るモータ駆動制御装置によるアドレス設定時のキャリブレーションの流れを示すフローチャートである。
図12】実施の形態3に係るモータ駆動制御装置の構成を示すブロック図である。
図13】実施の形態3に係る対応関係情報の一例を示す図である。
図14】実施の形態3に係るモータ駆動制御装置によるアドレス設定時のキャリブレーションの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0014】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(10,10A,10B)は、バス(3)を介してマスタ(2)と接続可能にされ、モータ(20)の駆動を制御するとともに前記マスタに対するスレイブとして動作可能であって、前記バスから受信した信号に基づいて、前記モータの回転を制御するための駆動制御信号(Sd)を生成するとともに、前記スレイブとしてのアドレスを決定するモータ制御回路(11)と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータに通電するモータ駆動回路(13)とを有し、前記モータ制御回路は、前記モータを駆動させたときの前記モータの駆動に関する物理量を測定し、前記物理量の測定値に基づいて前記アドレスを決定することを特徴とする。
【0015】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記モータ制御回路は、前記物理量と前記モータ駆動制御装置を一意に識別するためのノード識別子との対応関係を示す対応関係情報(125,125A,125B)を有し、前記対応関係情報を参照して、前記物理量の測定値に対応する前記ノード識別子を前記アドレスとしてもよい。
【0016】
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記物理量は、前記モータが駆動可能な範囲を示す可動距離を含んでもよい。
【0017】
〔4〕上記〔1〕または〔2〕に記載のモータ駆動制御装置(10A)において、前記物理量は、前記モータの負荷の大きさを含んでもよい。
【0018】
〔5〕上記〔1〕または〔2〕に記載のモータ駆動制御装置(10B)において、前記物理量は、前記モータが駆動可能な範囲を示す可動距離と前記モータの負荷の大きさとを含み、前記モータ制御回路は、測定した前記可動距離と前記負荷の大きさの組み合わせに基づいて、前記アドレスを決定してもよい。
【0019】
〔6〕上記〔3〕または〔5〕に記載のモータ駆動制御装置(10,10B)において、前記モータ制御回路は、前記モータを第1方向(R1)に回転させて前記モータの脱調を検出してから前記モータを第2方向(R2)に回転させて前記モータの脱調を検出するまでの前記モータの回転数を測定し、前記回転数の測定値に基づいて前記可動距離を算出してもよい。
【0020】
〔7〕上記〔4〕または〔5〕に記載のモータ駆動制御装置(10B)において、前記モータ制御回路は、前記モータを回転させたときの前記モータの逆起電圧と電流の少なくとも一方を測定し、測定した値に基づいて前記負荷の大きさを決定してもよい。
【0021】
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係るアクチュエータ(1_1~1_n)は、上記〔1〕乃至〔7〕の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置(10,10A,10B)と、前記モータ(20)と、前記モータの回転力を駆動対象に伝達する動力伝達機構(30~33,35)とを備えることを特徴とする。
【0022】
〔9〕本発明の代表的な実施の形態に係る通信システム(100)は、マスタ(2)と、バス(3)と、前記バスを介して前記マスタと接続され、モータ(20)を有する複数のスレイブ(1_1~1_n)と、を備え、前記マスタは、前記スレイブのアドレス設定の開始を指示するリクエストを前記バスに送信し、前記スレイブは、前記バスから受信した前記リクエストに応じて、前記モータを駆動させて前記モータの駆動に関する物理量を測定し、前記物理量の測定値に基づいて前記スレイブとしての自身のアドレスを設定することを特徴とする。
【0023】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0024】
≪実施の形態1≫
図1は、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置を備えたアクチュエータを含む通信システムの構成を示す図である。
【0025】
図1に示される通信システム100は、例えば、マスタとしての一つの上位装置2と、スレイブとしての複数のアクチュエータ1_1~1_n(nは2以上の整数)と、上位装置2と各スレイブ1_1~1_nとを互いに接続するバス3とを備えている。
【0026】
通信システム100は、例えば、上位装置2と複数のアクチュエータ1_1~1_nとが、LINバスとしてのバス3によって互いに接続されたLIN通信ネットワークを構成している。例えば、通信システム100は、車載用途の空調ユニットとしてのHVAC(Heating Ventilation and Air-Conditioning)システムである。
【0027】
上位装置2は、スレイブとしての複数のアクチュエータ1_1~1_nの動作を統括的に制御するマスタとして機能する装置である。上位装置2は、例えば、車載用途のHVACシステムにおけるECUである。上位装置2は、バス3を介して指定したアクチュエータ1_1~1_nに制御信号(リクエスト)を送信することにより、指定したアクチュエータ1_1~1_nの動作を制御する。
【0028】
アクチュエータ1_1~1_nは、例えば、車載用途のHVACシステムにおける空調装置を駆動するための装置である。アクチュエータ1_1~1_nとしては、ダンパアクチュエータ、弁アクチュエータ、ファンアクチュエータ、ポンプアクチュエータ等のHVACシステムで使用可能な各種のアクチュエータを例示することができる。
【0029】
以下の説明において、各アクチュエータ1_1~1_nを区別しない場合には、単に、「アクチュエータ1」と表記する場合がある。
【0030】
図2は、実施の形態1に係るアクチュエータ1の構造の一例を示す分解斜視図である。
図2に示されるように、アクチュエータ1は、ケース51とカバー52とで覆われている。アクチュエータ1の内部には、モータ20と、モータ20の駆動を制御するモータ駆動制御装置10と、モータ20の回転力を駆動対象に伝達する動力伝達機構としての2次ギヤ31、3次ギヤ32、および出力ギヤ33とが収納されている。
【0031】
モータ20は、アクチュエータ1の駆動力を発生させる。モータ20は、例えばステッピングモータである。以下、モータ20をステッピングモータ20とも表記する。ステッピングモータ20は、例えば、A相及びB相の2相励磁で駆動する。ステッピングモータ20は、A相のコイル(不図示)及びB相のコイル(不図示)を有する。ステッピングモータ20は、モータ駆動制御装置10から各相のコイルに駆動電力が供給されて動作する。
【0032】
ステッピングモータ20の出力軸25には、1次ギヤ30が取り付けられている。ステッピングモータ20の1次ギヤ30は、2次ギヤ31と噛み合う。2次ギヤ31は、3次ギヤ32と噛み合う。3次ギヤ32は、出力ギヤ33と噛み合う。ケース51の底面には、出力ギヤ33に設けられている外部出力ギヤが露出し、この外部出力ギヤが駆動対象に連結されている。
【0033】
モータ駆動制御装置10は、バス3(LINバス)を介して上位装置2との間で通信を行い、上位装置2から受信した制御フレーム(指令)に基づいてステッピングモータ20の駆動を制御することにより、アクチュエータ全体の動作を制御する。モータ駆動制御装置10が上位装置2からの指令に基づいてモータ20を駆動すると、ステッピングモータ20の出力軸25に接続された1次ギヤ30が回転する。1次ギヤ30の回転による駆動力が2次ギヤ31、3次ギヤ32、出力ギヤ33、外部出力ギヤと順に伝達され、外部出力ギヤが駆動対象である空調装置の可動部を駆動する。
【0034】
モータ駆動制御装置10は、ハードウェア資源として、プリント基板42や、プリント基板42とステッピングモータ20のモータ端子29とを接続するフレキシブルプリント基板43等を有している。プリント基板42には、後述するモータ制御回路11、モータ駆動回路13、および複数の外部接続端子が設けられている。複数の外部接続端子としては、例えば、モータ駆動制御装置10に電源を供給するための電源端子17、グラウンド電位に接続されるグラウンド端子18、モータ駆動制御装置10が上位装置2とLIN通信を行うための通信用端子15等を例示することができる。図2に示すように、各外部接続端子は、ケース51及びカバー52の外側に露出している。
【0035】
なお、ケース51及びカバー52の内部に収納される回路は、例えばモータ駆動回路13だけであってもよい。例えば、モータ制御回路11は、ケース51およびカバー52の内部に設けられたモータ駆動回路13と、ケース51およびカバー52の外部に設けられたモータ制御回路11とによって構成されるようにしてもよい。
【0036】
図3は、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10の構成を示すブロック図である。
本実施の形態において、各アクチュエータ1_1~1_nは同一の構成を有しているものとする。図3には、一例として、アクチュエータ1_1~1_nのうちアクチュエータ1_1の内部構成が代表的に示されている。
【0037】
図3に示すように、モータ駆動制御装置10は、モータ制御回路11、モータ駆動回路13、通信用端子15、電源端子17、およびグラウンド端子18を備えている。
【0038】
電源端子17には、例えばバッテリから直流の入力電圧V_subが入力される。グラウンド端子18は、グラウンド電位GNDに接続される。
【0039】
モータ制御回路11は、上位装置2からの指令に基づいて、モータ20の回転を制御するための駆動制御信号Sdを生成してモータ駆動回路13を制御することにより、モータ20の回転を制御する。駆動制御信号Sdは、例えばPWM信号である。モータ制御回路11の詳細については後述する。
【0040】
モータ駆動回路13は、モータ制御回路11から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、ステッピングモータ20に通電する。モータ駆動回路13は、モータ駆動部131と電流センサ132とを有する。
【0041】
モータ駆動部131は、駆動制御信号Sdに基づいて、ステッピングモータ20の各相のコイルに電圧を印加する。本実施の形態では、モータ駆動回路13とステッピングモータ20とは、A相の正極(+)、A相の負極(-)、B相の正極(+)、B相の負極(-)の4つのラインで接続されている。モータ駆動部131は、例えば、複数のトランジスタを含むインバータ回路である。モータ駆動部131は、駆動制御信号Sdに応じて、これらの各ラインを介してステッピングモータ20に駆動電力を供給する。ステッピングモータ20の駆動電力は、駆動制御信号SdとしてのPWM信号のデューティ比に応じて変化する。
【0042】
電流センサ132は、ステッピングモータ20の各相のコイルに流れる電流(コイル電流)をセンシングする。電流センサ132は、例えばシャント抵抗である。電流センサ132は、コイル電流のセンシング結果を、電流測定部112に出力する。
【0043】
次に、モータ制御回路11について詳細に説明する。
モータ制御回路11は、主に、バス3を介して上位装置2とLIN通信を行う通信機能と、駆動制御信号Sdを生成する駆動制御機能と、LIN通信システムにおけるスレイブとしてのアクチュエータ1(モータ駆動制御装置10)自身のアドレスを設定するアドレス設定機能とを有している。
【0044】
特に、モータ制御回路11は、アドレス設定機能として、ステッピングモータ20を駆動させたときのステッピングモータ20の駆動に関する物理量を測定し、物理量の測定値に基づいてアドレスを決定する。具体的には、モータ制御回路11は、モータ駆動制御装置10(アクチュエータ1)を一意に識別するためのノード識別子と上記物理量の対応関係を示す対応関係情報125を有し、モータ制御回路11は、対応関係情報125を参照して、物理量の測定値に対応するノード識別子をモータ駆動制御装置1自身のアドレスとして決定する。
【0045】
図3に示すように、モータ制御回路11は、例えば、制御回路110、温度測定部111、電流測定部112、入力電圧測定部113、逆起電圧測定部114、および通信回路115を含む。
【0046】
温度測定部111は、例えば、モータ制御回路11の内部温度を測定する温度センサである。温度測定部111は、モータ制御回路11の温度を示す温度情報を制御回路110に出力する。
【0047】
電流測定部112は、ステッピングモータ20のコイル電流を測定する。電流測定部112は、電流センサ132から出力されたコイル電流のセンシング結果を受け付ける。電流測定部112は、入力されたセンシング結果に基づいてコイル電流を測定する。電流測定部112は、コイル電流の測定結果を、制御回路110に出力する。電流測定部112は、例えばA/D変換回路を含んで構成されている。
【0048】
入力電圧測定部113は、モータ駆動制御装置10の電源端子17に入力される電源電圧としての入力電圧V_subを測定する。入力電圧V_subは、例えば、バッテリから供給される直流電圧である。入力電圧測定部113は、入力電圧の測定結果を制御回路110に出力する。入力電圧測定部113は、例えばA/D変換回路を含んで構成されている。
【0049】
逆起電圧測定部114は、ステッピングモータ20の複数相のコイルのうち、通電が停止しているコイルに誘起される逆起電圧を測定する。本実施の形態において、逆起電圧測定部114は、モータ駆動回路13とステッピングモータ20とを接続する4つのラインの夫々に接続されている。逆起電圧測定部114は、逆起電圧の測定結果を、制御回路110に出力する。逆起電圧測定部114は、例えばA/D変換回路を含んで構成されている。
【0050】
通信回路115は、通信用端子15から信号を受信するとともに、通信用端子15に信号を送信する回路である。通信回路115は、例えばLINトランシーバである。以下、通信回路115をLINトランシーバ115とも称する。
【0051】
制御回路110は、モータ制御回路11における統括的な制御を行うための回路である。制御回路110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の各種メモリ、タイマ、カウンタ、A/D変換回路、入出力I/F回路、およびクロック生成回路等のハードウェア要素を有し、各構成要素がバスや専用線を介して互いに接続されたプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ:MCU(Micro Control Unit))によって構成されている。
【0052】
なお、上述した温度測定部111、電流測定部112、入力電圧測定部113、および逆起電圧測定部114は、制御回路110を構成するMCU内のA/D変換回路を用いて実現されていてもよいし、MCUとは別に設けられたA/D変換回路を含むIC(Integrated Circuit)によって実現されていてもよい。
【0053】
制御回路110は、例えば、入出力I/F回路としてUART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)を有する。制御回路110は、UARTを介してLINトランシーバ115と接続されている。制御回路110は、UARTおよびLINトランシーバ115を介して、バス3に接続された上位装置2とLIN通信を行う。
【0054】
制御回路110は、上述したモータ制御回路11による通信機能、駆動制御機能、およびアドレス設定機能を実現するために、図4に示す機能ブロックを有している。
【0055】
図4は、実施の形態1に係る制御回路110の機能ブロック構成を示す図である。
図4に示すように、制御回路110は、通信機能、駆動制御機能、およびアドレス設定機能を実現するための機能ブロックとして、通信部120、駆動制御信号生成部121、物理量測定部122、アドレス設定部123、および記憶部124を有している。これらの機能ブロックは、上述したMCU内のCPUがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算を実行して、タイマ、カウンタ、A/D変換回路、および入出力I/F回路等を制御することによって実現される。
【0056】
通信部120は、LINトランシーバ115を制御して、上位装置2とLIN通信を行うための機能部である。通信部120は、マスタとしての上位装置2から送信されたリクエスト(ヘッダ)を受信するとともに、リクエストに対するレスポンス(データ)を送信する。
【0057】
駆動制御信号生成部121は、駆動制御信号Sdを生成するための機能部である。駆動制御信号生成部121は、温度測定部111、電流測定部112、入力電圧測定部113、および逆起電圧測定部114による夫々の測定結果と、通信部120によって受信した上位装置2からのリクエストと、に基づいてPWM信号を生成し、駆動制御信号Sdとして出力する。
【0058】
物理量測定部122は、ステッピングモータ20を駆動させたときのステッピングモータ20の駆動に関する物理量を測定するための機能部である。
【0059】
本実施の形態において、ステッピングモータ20の駆動に関する物理量は、例えば、モータ20が駆動可能な範囲を示す可動距離を含む。以下、可動距離について説明する。
【0060】
図5は、アクチュエータ1におけるステッピングモータ20の可動距離を説明するための図である。図5には、ステッピングモータ20を含むアクチュエータ1をHVACシステムに組み込んだときの配置例が示されている。
【0061】
例えば、図5に示すように、アクチュエータ1の出力ギヤ33に駆動対象としての軸部品35が接続されており、軸部品35の位置P0を初期位置としたとき、軸部品35は初期位置P0から第1方向R1(図5における左回りの方向)と第2方向R2(図5における右回りの方向)とに回転可能であるとする。また、アクチュエータ1は、軸部品35(ステッピングモータ20)の可動範囲を制限する2つの仕切り部品6,7に挟まれて設置されているものとする。
【0062】
この場合において、アクチュエータ1に接続された軸部品35は、第1方向R1において、仕切り部品6と接触する位置(メカニカルエンド)Pe1まで回転可能である。また、軸部品35は、第2方向R2において、仕切り部品7と接触する位置(メカニカルエンド)Pe2まで回転可能である。すなわち、軸部品35は、メカニカルエンドPe1からメカニカルエンドPe2までの距離Dだけ移動することができる。
そこで、本実施の形態において、物理量測定部122は、例えば、軸部品35の回転可能な距離Dに応じたモータ20の回転数をカウントし、カウントした回転数に基づいて、ステッピングモータ20の可動距離を算出する。
例えば、物理量測定部122は、軸部品35をメカニカルエンドPe1からメカニカルエンドPe2までの距離Dだけ駆動させたときのステッピングモータ20の回転数、すなわちステップ数を測定し、そのステップ数を可動距離の測定値とする。
【0063】
なお、可動距離は、ステッピングモータ20のステップ数に基づく値であればよく、可動距離の算出方法は特に限定されない。例えば、上述したように、可動距離はステッピングモータ20のステップ数そのものであってもよいし、アクチュエータ1の動力伝達機構としての各種ギアのギア比等を用いて距離Dを算出し、算出した距離Dを可動距離としてもよい。
【0064】
制御回路110において、物理量測定部122は、ステッピングモータ20を第1方向R1に回転させてステッピングモータ20の脱調を検出してからステッピングモータ20を第2方向R2に回転させてステッピングモータ20の脱調を検出するまでのステッピングモータのステップ数(回転数)を測定し、ステップ数の測定値に基づいて可動距離を決定する。
【0065】
なお、物理量測定部122によるステップ数の測定は、例えば、駆動制御信号生成部121によって生成される駆動制御信号Sdのパルス数をカウントすることによって行えばよい。
【0066】
記憶部124は、LIN通信システムにおけるスレイブとしてのアクチュエータ1自身のアドレスを設定するためのアドレス設定処理に必要な各種情報を記憶するための機能部である。例えば、記憶部124には、アドレス設定処理において利用される対応関係情報125や、上位装置2から受信したリクエスト(ヘッダ)に含まれるステッピングモータ20の目標回転速度の情報等が記憶される。
【0067】
ここで、対応関係情報125とは、上述したように、モータ駆動制御装置10(アクチュエータ1)を一意に識別するためのノード識別子とステッピングモータ20の駆動に関する物理量の対応関係を示すデータである。
【0068】
図6は、実施の形態1に係る対応関係情報125の一例を示す図である。
図6に示すように、対応関係情報125は、例えば、ステッピングモータ20の駆動に関する物理量としての可動距離の範囲毎に、固有のノード識別子が割り当てられたテーブルである。以下、対応関係情報125を「テーブル125」とも称する。
【0069】
アドレス設定部123は、モータ駆動制御装置10(アクチュエータ1)にLIN通信システムにおけるスレイブとしてのアドレスを設定するための機能部である。アドレス設定部123は、記憶部124に記憶されているテーブル125と物理量測定部122によって測定された物理量(可動距離)とに基づいて、モータ駆動制御装置10(アクチュエータ1)自身のアドレスを設定する。
【0070】
具体的には、アドレス設定部123は、テーブル125を参照して、物理量測定部122によって測定された可動距離に対応するノード識別子をモータ駆動制御装置10(アクチュエータ1)自身のアドレスとして設定する。
より具体的には、アドレス設定部123は、物理量測定部122によって測定された可動距離に対応するノード識別子をテーブル125から読み出し、読み出したノード識別子をモータ駆動制御装置10(アクチュエータ1)自身のアドレスとして設定する。例えば、図6に示すテーブル125が記憶部124に記憶されており、物理量測定部122によって測定された可動距離の測定値が“1700”であった場合、アドレス設定部123は、可動距離の範囲“1500~2000”に対応するノード識別子“0x30”をテーブル125から読み出して、モータ駆動制御装置10(アクチュエータ1)のアドレスとして設定する。
【0071】
次に、通信システム100におけるアクチュエータ1のアドレス設定の流れについて説明する。
【0072】
図7は、通信システム100におけるアクチュエータ1のアドレスの設定の流れを示すシーケンス図である。
ここでは、理解の容易化のために、通信システム100が2つのアクチュエータ1_1,1_2を備えているものとして説明する。
【0073】
例えば、HVACシステムとしての通信システム100の製造工程において、上位装置2とアクチュエータ1_1,1_2とが組み込まれて通信システム100が構築された場合、先ず、上位装置2が、スレイブとしてのアクチュエータ1_1,1_2のアドレス設定の開始を指示するリクエスト(アドレス設定開始メッセージ)を、ブロードキャストによりバス3に送信する(ステップS1)。
【0074】
次に、各アクチュエータ1_1,1_2において、制御回路110の通信部120がアドレス設定開始メッセージをバス3から受信すると、各アクチュエータ1_1,1_2の制御回路110が、アドレス設定のためにステッピングモータ20を駆動する制御(以下、「キャリブレーション」とも称する。)を実行する(ステップS2)。
【0075】
図8は、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置1によるアドレス設定時のキャリブレーションの流れを示すフローチャートである。
【0076】
キャリブレーションでは、先ず、各アクチュエータ1_1,1_2の駆動制御信号生成部121が駆動制御信号Sdを生成してステッピングモータ20を第1方向R1に回転させる(ステップS21)。これにより、図5に示すように、アクチュエータ1の軸部品35が初期位置P0から第1方向R1に回転を始める。
【0077】
次に、駆動制御信号生成部121が、逆起電圧測定部114によって測定された逆起電圧を監視することにより、ステッピングモータ20の脱調の有無を判定する(ステップS22)。脱調が発生していない場合(ステップS22:NO)、駆動制御信号生成部121は、ステッピングモータ20が引き続き第1方向R1に回転するように、駆動制御信号Sdを生成する(ステップS21)。
【0078】
一方、軸部品35が仕切り部品6に接触してメカニカルエンドPe1に到達し、ステッピングモータ20の脱調が発生した場合(ステップS22:YES)、駆動制御信号生成部121が、第1方向R1と反対方向の第2方向R2にステッピングモータ20を回転させるように駆動制御信号Sdを生成する(ステップS23)。これにより、アクチュエータ1の軸部品35がメカニカルエンドPe1から第2方向R2に回転を始める。
【0079】
また、このとき、駆動制御信号生成部121は、可動距離の測定開始を物理量測定部122に指示する。これにより、ステッピングモータ20がメカニカルエンドPe1から第2方向R2に回転を始めてからのステップ数を、物理量測定部122はカウントし始める(ステップS24)。
【0080】
次に、駆動制御信号生成部121が、逆起電圧測定部114によって測定された逆起電圧を監視することにより、ステッピングモータ20の脱調の有無を判定する(ステップS25)。脱調が発生していない場合(ステップS25:NO)、引き続き、駆動制御信号生成部121がステッピングモータ20を第2方向R2に回転させるように駆動制御信号Sdを生成するとともに、物理量測定部122が、ステッピングモータ20のステップ数のカウントを継続する(ステップS23、ステップS24)。
【0081】
一方、軸部品35が仕切り部品7に接触してメカニカルエンドPe2に到達し、ステッピングモータ20の脱調が発生した場合(ステップS25:YES)、駆動制御信号生成部121が、ステッピングモータ20の回転を停止させるとともに、物理量測定部122が、ステッピングモータ20のステップ数のカウント値に基づいて、上述した手法により可動距離を算出する(ステップS26)。
【0082】
次に、アドレス設定部123が、ステップS26で算出された可動距離に対応するノード識別子を記憶部124に記憶されているテーブル125から読み出す(ステップS27)。これにより、キャリブレーション(ステップS2)の一連の処理が終了する。
【0083】
その後、図7に示すように、各アクチュエータ1_1,1_2のモータ駆動制御装置10は、ステップS27で取得したノード識別子を自身のアドレスとして設定する(ステップS3)。
【0084】
一方、上位装置2は、ステップS1でアドレス設定開始メッセージを送信した後、各アクチュエータ1_1,1_2においてアドレス設定が完了したか否かを確認するために、定期的に、アドレス設定が完了したことを示すアドレス設定完了メッセージの送信を指示するリクエストをブロードキャストによりバス3に送信する。
【0085】
例えば、図7に示すように、各アクチュエータ1_1,1_2が、自身のアドレスを設定する前(例えばキャリブレーション中)のタイミングにおいて、上位装置2がアドレス設定完了メッセージの送信を指示するリクエストを送信した場合には(ステップS4)、各アクチュエータ1_1,1_2は、アドレス設定完了メッセージを送信することなく、キャリブレーションを継続する。
【0086】
一方、図7に示すように、各アクチュエータ1_1,1_2が、自身のアドレスを設定した後のタイミングにおいて、上位装置2がアドレス設定完了メッセージの送信を指示するリクエストを送信した場合には(ステップS5)、各アクチュエータ1_1,1_2は、そのリクエストに応じて、アドレス設定完了メッセージとともに自身に設定したアドレスの情報(ノード識別子)をバス3を介して上位装置2に返信する(ステップS6)。
これにより、上位装置2は、各アクチュエータ1_1,1_2のアドレス設定が完了したことを認識し、各アクチュエータ1_1,1_2のアドレスの情報を取得することができる。
【0087】
なお、上記のアドレスの設定では、通信システム100が構築された場合について説明したが、各アクチュエータ1_1,1_2等の修理が行われた場合に上記のアドレスの設定が実行されてもよい。
【0088】
以上、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10は、モータ20を駆動させたときのモータ20の駆動に関する物理量としてモータ20の可動距離を測定し、可動距離の測定値に基づいて、通信システム100におけるスレイブとしてのアドレスとしてのノード識別子を決定する。
【0089】
これによれば、例えば、通信システム100がアクチュエータ1毎にモータ20の可動距離が異なる場合には、その可動距離が各アクチュエータ1の固有値となるので、その固有値を用いることにより、各アクチュエータ1のアドレスを簡単に設定することが可能となる。
【0090】
また、モータ駆動制御装置10によれば、上述した特許文献1に係るLIN通信システムのように、スレイブのアドレス設定を行うためにスレイブ毎に電流検出回路を設ける必要がなく、電流値を高精度に検出するための高分解能のA/D変換回路等も設ける必要がない。したがって、モータ駆動制御装置10によれば、スレイブ側の回路構成をより簡素にすることが可能となり、アドレス設定機能の追加に伴う部品コストの増大を抑えることが可能となる。
【0091】
また、モータ駆動制御装置10は、特許文献1に係るLIN通信システムのような、電流検出をマスタとの間の通信に同期して行うための複雑なタイミング制御が不要であるので、モータ駆動制御装置10の制御回路110(マイクロコントローラ)に実装するプログラムを単純にすることができる。したがって、モータ駆動制御装置10によれば、アドレス設定機能の追加に伴うソフトウェアの開発工数の増大を抑えることが可能となる。
【0092】
また、モータ駆動制御装置10は、物理量としての可動距離とノード識別子の対応関係を示す対応関係情報125(例えばテーブル)を有し、可動距離の測定値に対応するノード識別子を対応関係情報125から読み出して、アクチュエータ1のアドレスとして設定する。
これによれば、可動距離からアドレスとしてのノード識別子を算出するために複雑な演算が不要となるので、アドレス設定機能の追加に伴うソフトウェアの開発工数の増大を更に抑えることが可能となる。
【0093】
また、モータ駆動制御装置10は、モータ20を第1方向R1に回転させてモータ20の脱調を検出してからモータ20を第2方向R2に回転させてモータ20の脱調を検出するまでのモータ20の回転数(例えばステップ数)を測定し、回転数の測定値に基づいてモータ20の可動距離を算出する。
【0094】
これによれば、モータ20(アクチュエータ1)の可動範囲を確実に特定することができるので、可動距離の測定が容易となる。また、1回目の脱調検出点(メカニカルエンドPe1)から2回目の脱調検出点(メカニカルエンドPe2)までのモータ20のステップ数を測定することにより、アクチュエータ1の駆動部(軸部品35)の初期位置P0が不明であったとしても、可動距離を正確に測定することが可能となる。
【0095】
≪実施の形態2≫
図9は、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置10Aの構成を示すブロック図である。
実施の形態2に係るモータ駆動制御装置10Aは、ステッピングモータ20の駆動に関する物理量としてステッピングモータ20の負荷の大きさを測定し、測定した負荷の大きさに基づいてアドレスを設定する点において、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10と相違し、その他の点においては実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10と同様である。
【0096】
図9に示すように、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置10Aにおける制御回路110Aは、通信部120、駆動制御信号生成部121、物理量測定部122A、アドレス設定部123A、および記憶部124Aを有している。これらの機能ブロックは、実施の形態1に係る制御回路110と同様に、上述したMCU内のCPUがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算を実行して、タイマ、カウンタ、A/D変換回路、および入出力I/F回路等を制御することによって実現される。
【0097】
物理量測定部122Aは、ステッピングモータ20を駆動させたときのステッピングモータ20の駆動に関する物理量を測定する。本実施の形態において、ステッピングモータ20の駆動に関する物理量は、例えば、ステッピングモータ20の負荷の大きさを含む。
【0098】
物理量測定部122Aは、逆起電圧測定部114によって測定された逆起電圧に基づいて負荷の大きさを測定する。具体的には、物理量測定部122Aは、逆起電圧の測定値に応じて負荷のレベルを判定する。例えば、物理量測定部122Aは、逆起電圧の測定値に応じて負荷のレベルを“大”、“中”、“小”の何れかに認定する。
【0099】
なお、負荷の大きさは、ステッピングモータ20の負荷の大きさによって変化する物理量に基づいて算出すればよく、当該物理量は逆起電圧に限定されない。例えば、物理量測定部122Aは、電流測定部112によるモータ20の電流の測定値に基づいて負荷の大きさを算出してもよい。例えば、物理量測定部122Aは、電流の測定値に基づいて、負荷のレベルを“大”、“中”、“小”の何れかに認定してもよいし、逆起電圧と電流の双方の測定値を用いて負荷の大きさを算出してもよい。
【0100】
記憶部124Aは、実施の形態1に係る記憶部124と同様に、LIN通信システムにおけるスレイブとしてのアクチュエータ1自身のアドレスを設定するためのアドレス設定処理に必要な各種情報を記憶する。例えば、記憶部124Aは、ステッピングモータ20の負荷の大きさとノード識別子の対応関係を示す対応関係情報125Aを記憶している。
【0101】
図10は、実施の形態2に係る対応関係情報125Aの一例を示す図である。
図10に示すように、対応関係情報125Aは、例えば、ステッピングモータ20の負荷の大きさ毎に固有のノード識別子が割り当てられたテーブルである。以下、対応関係情報125Aを「テーブル125A」とも称する。
【0102】
アドレス設定部123Aは、実施の形態1に係るアドレス設定部123と同様に、アクチュエータ1(モータ駆動制御装置10A)にLIN通信システムにおけるスレイブとしてのアドレスを設定する。アドレス設定部123Aは、記憶部124Aに記憶されているテーブル125Aと物理量測定部122Aによって測定された物理量(負荷の大きさ)とに基づいて、アクチュエータ1自身のアドレスを設定する。
【0103】
具体的には、アドレス設定部123Aは、物理量測定部122Aによって測定された負荷の大きさに対応するノード識別子をテーブル125Aから読み出し、読み出したノード識別子をアクチュエータ1(モータ駆動制御装置10A)自身のアドレスとして設定する。例えば、図10に示すテーブル125Aが記憶部124Aに記憶されており、物理量測定部122Aによって測定された負荷の大きさが“小”であった場合、アドレス設定部123Aは、負荷の大きさ“小”に対応するノード識別子“0x20”をテーブル125Aから読み出して、アクチュエータ1(モータ駆動制御装置10A)のアドレスとして設定する。
【0104】
次に、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置10Aによるアドレス設定の流れについて説明する。なお、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置10Aによるアドレスの設定の全般的な流れは、図7に示した実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10と同様であり、ステップS2のキャリブレーションの処理内容が実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10と相違する。以下では、図7に示すアドレス設定全体の流れについては説明を省略し、モータ駆動制御装置10Aによるキャリブレーションの処理手順について説明する。
【0105】
図11は、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置10Aによるアドレス設定時のキャリブレーションの流れを示すフローチャートである。
【0106】
実施の形態2に係るキャリブレーションにおいて、先ず、モータ駆動制御装置10Aが、ステッピングモータ20(軸部品35)を第1方向R1に回転させてステッピングモータ20の脱調の検出後に、第2方向R2にステッピングモータ20を回転させるまでの処理(ステップS21~S23)は、実施の形態1に係るキャリブレーションと同様である。
【0107】
ステップS23において、ステッピングモータ20を第2方向R2に回転させるとき、駆動制御信号生成部121は、ステッピングモータ20の負荷の測定開始を物理量測定部122Aに指示する。これにより、物理量測定部122Aが、ステッピングモータ20の逆起電圧(または電流)の測定を開始する(ステップS24A)。
【0108】
次に、駆動制御信号生成部121が、逆起電圧測定部114によって測定された逆起電圧を監視することにより、ステッピングモータ20の脱調の有無を判定する(ステップS25)。脱調が発生していない場合(ステップS25:NO)、引き続き、駆動制御信号生成部121がステッピングモータ20を第2方向R2(例えば、図5において右回り)に回転させるように駆動制御信号Sdを生成するとともに、物理量測定部122Aが、ステッピングモータ20の逆起電圧(または電流)の測定を継続する(ステップS23、ステップS24A)。
【0109】
一方、軸部品35が仕切り部品7に接触してメカニカルエンドPe2に到達し、ステッピングモータ20の脱調が発生した場合(ステップS25:YES)、駆動制御信号生成部121が、ステッピングモータ20の回転を停止させるとともに、物理量測定部122Aが、ステッピングモータ20の逆起電圧(または電流)の測定値に基づいて、上述した手法によりステッピングモータ20の負荷の大きさを算出する(ステップS26A)。
【0110】
次に、アドレス設定部123AがステップS26Aで算出された負荷の大きさに対応するノード識別子を記憶部124Aに記憶されているテーブル125Aから読み出す(ステップS27A)。これにより、実施の形態2に係るキャリブレーション(ステップS2)の一連の処理が終了する。
【0111】
その後、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10と同様に、モータ駆動制御装置10Aは、ステップS27Aで取得したノード識別子を自身のアドレスとして設定する(図7のステップS3)。
【0112】
以上、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置10Aは、モータ20を駆動させたときのモータ20の駆動に関する物理量としてモータ20の負荷の大きさを測定し、その測定値に基づいて、通信システム100におけるスレイブのアドレスとしてのノード識別子を決定する。
【0113】
これによれば、例えば、通信システム100においてアクチュエータ1毎にモータ20の負荷が異なる場合には、その負荷の大きさが各アクチュエータ1の固有値となるので、その固有値を用いることにより、各アクチュエータ1のアドレスを簡単に設定することが可能となる。
【0114】
また、モータ駆動制御装置10Aによれば、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10と同様に、スレイブ側の回路構成や制御回路110Aに実装するプログラムを簡素にすることが可能となり、アドレス設定機能の追加に伴う部品コストやソフトウェアの開発工数の増大を抑えることが可能となる。
【0115】
≪実施の形態3≫
図12は、実施の形態3に係るモータ駆動制御装置10Bの構成を示すブロック図である。
実施の形態3に係るモータ駆動制御装置10Bは、ステッピングモータ20の駆動に関する物理量として可動距離およびステッピングモータ20の負荷の大きさを測定し、測定した可動距離および負荷の大きさに基づいてアドレスを設定する点において、実施の形態1,2に係るモータ駆動制御装置10,10Aと相違し、その他の点においては実施の形態1,2に係るモータ駆動制御装置10,10Aと同様である。
【0116】
図12に示すように、実施の形態3に係るモータ駆動制御装置10Bにおける制御回路110Bは、通信部120、駆動制御信号生成部121、物理量測定部122B、アドレス設定部123B、および記憶部124Bを有している。これらの機能ブロックは、実施の形態1,2に係る制御回路110,110Aと同様に、上述したMCU内のCPUがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算を実行して、タイマ、カウンタ、A/D変換回路、および入出力I/F回路等を制御することによって実現される。
【0117】
物理量測定部122Bは、ステッピングモータ20を駆動させたときのステッピングモータ20の駆動に関する物理量を測定する。本実施の形態において、ステッピングモータ20の駆動に関する物理量は、例えば、可動距離とステッピングモータ20の負荷の大きさとを含む。
【0118】
物理量測定部122Bは、実施の形態1に係る物理量測定部122と同様に、ステッピングモータ20のステップ数に基づいて可動距離を測定する。また、物理量測定部122Bは、実施の形態2に係る物理量測定部122Aと同様に、ステッピングモータ20の逆起電圧(または電流)に基づいて負荷の大きさを測定する。
【0119】
記憶部124Bは、実施の形態1,2に係る記憶部124,124Aと同様に、LIN通信システムにおけるスレイブとしてのアクチュエータ1自身のアドレスを設定するためのアドレス設定処理に必要な各種情報を記憶する。例えば、記憶部124Bは、可動距離およびステッピングモータ20の負荷とノード識別子の対応関係を示す対応関係情報125Bを記憶している。
【0120】
図13は、実施の形態3に係る対応関係情報125Bの一例を示す図である。
図13に示すように、対応関係情報125Bは、例えば、可動距離とステッピングモータ20の負荷の大きさとの組み合わせ毎に、固有のノード識別子が割り当てられたテーブルである。以下、対応関係情報125Bを「テーブル125B」とも称する。
【0121】
アドレス設定部123Bは、実施の形態1,2に係るアドレス設定部123,123Aと同様に、アクチュエータ1にLIN通信システムにおけるスレイブとしてのアドレスを設定する。アドレス設定部123Bは、記憶部124Bに記憶されているテーブル125Bと物理量測定部122Bによって測定された物理量(可動距離および負荷の大きさ)とに基づいて、アクチュエータ1(モータ駆動制御装置10B)自身のアドレスを設定する。
【0122】
具体的には、アドレス設定部123Bは、物理量測定部122Bによって測定された可動距離と負荷の大きさとの組み合わせに対応するノード識別子をテーブル125Bから読み出し、読み出したノード識別子をアクチュエータ1自身のアドレスとして設定する。
例えば、図13に示すテーブル125Bが記憶部124Bに記憶されており、物理量測定部122Bによって測定された負荷の大きさが“大”、可動距離が“1000~1500”であった場合、アドレス設定部123Bは、負荷の大きさ“大”と可動距離“1000~1500”との組み合わせに対応するノード識別子“0x70”をテーブル125Bから読み出して、アクチュエータ1(モータ駆動制御装置10B)のアドレスとして設定する。
【0123】
次に、実施の形態3に係るモータ駆動制御装置10Bによるアドレス設定の流れについて説明する。なお、実施の形態3に係るモータ駆動制御装置10Bによるアドレスの設定の全般的な流れは、図7に示した実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10と同様であり、ステップS2のキャリブレーションの処理内容が実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10と相違する。以下の説明では、図7に示すアドレス設定全体の流れについては説明を省略し、モータ駆動制御装置10Bによるキャリブレーションの処理手順について説明する。
【0124】
図14は、実施の形態3に係るモータ駆動制御装置10Bによるアドレス設定時のキャリブレーションの流れを示すフローチャートである。
【0125】
実施の形態3に係るキャリブレーションにおいて、先ず、モータ駆動制御装置10Bがステッピングモータ20(軸部品35)を第1方向R1に回転させて、ステッピングモータ20の脱調の検出後に、第2方向R2にステッピングモータ20を回転させるまでの処理(ステップS21~S23)は、実施の形態1に係るキャリブレーションと同様である。
【0126】
ステップS23において、ステッピングモータ20を第2方向R2に回転させるとき、駆動制御信号生成部121は、可動距離とステッピングモータ20の負荷の測定開始を物理量測定部122Bに指示する。これにより、物理量測定部122Bが、ステッピングモータ20のステップ数の測定を開始するとともに(ステップS24)、ステッピングモータ20の逆起電圧(または電流)の測定を開始する(ステップS24A)。
【0127】
次に、駆動制御信号生成部121が、逆起電圧測定部114によって測定された逆起電圧を監視することにより、ステッピングモータ20の脱調の有無を判定する(ステップS25)。脱調が発生していない場合(ステップS25:NO)、引き続き、駆動制御信号生成部121がステッピングモータ20を第2方向R2(例えば、図5において右回り)に回転させるように駆動制御信号Sdを生成するとともに、物理量測定部122Bが、ステッピングモータ20の逆起電圧(または電流)およびステップ数の測定を継続する(ステップS23~ステップS24A)。
【0128】
一方、軸部品35が仕切り部品7に接触してメカニカルエンドPe2に到達し、ステッピングモータ20の脱調が発生した場合(ステップS25:YES)、駆動制御信号生成部121が、ステッピングモータ20の回転を停止させるとともに、物理量測定部122Bが、ステッピングモータ20のステップ数の測定値に基づいて、上述した手法により可動距離を算出する(ステップS26)。また、物理量測定部122Bが、ステッピングモータ20の逆起電圧(または電流)の測定値に基づいて、上述した手法によりステッピングモータ20の負荷の大きさを算出する(ステップS26A)。
【0129】
次に、アドレス設定部123BがステップS26で算出された可動距離とステップS26Aで算出された負荷の大きさとの組み合わせに対応するノード識別子を記憶部124Bに記憶されているテーブル125Bから取得する(ステップS27B)。これにより、実施の形態3に係るキャリブレーション(ステップS2)の一連の処理が終了する。その後、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10と同様に、モータ駆動制御装置10Bは、ステップS27Bで取得したノード識別子を自身のアドレスとして設定する(図7のステップS3)。
【0130】
以上、実施の形態3に係るモータ駆動制御装置10Bは、モータ20を駆動させたときのモータ20の駆動に関する物理量として可動距離とモータ20の負荷の大きさを測定し、測定した可動距離と負荷の大きさの組み合わせに基づいて、通信システム100におけるスレイブのアドレスとしてのノード識別子を決定する。
【0131】
これによれば、例えば、通信システム100を構成するアクチュエータ1_1~1_n間で可動距離やモータ20の負荷の範囲が一致するものが存在する場合であっても、可動距離と負荷の大きさの組み合わせは各アクチュエータ1の固有のものとなり得るので、その固有の組み合わせを用いることにより、各アクチュエータ1のアドレスを簡単に設定することが可能となる。
【0132】
また、モータ駆動制御装置10Bによれば、実施の形態1,2に係るモータ駆動制御装置10,10Aと同様に、スレイブ側の回路構成や制御回路110Bに実装するプログラムを簡素にすることが可能となり、アドレス設定機能の追加に伴う部品コストやソフトウェアの開発工数の増大を抑えることが可能となる。
【0133】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0134】
例えば、上記実施の形態では、ステッピングモータ20に関する物理量としての可動距離を、軸部品35のメカニカルエンドPe1からメカニカルエンドPe2までの距離Dに基づいて測定する場合を例示したが、これに限られない。例えば、軸部品35(ステッピングモータ20)の回転可能な角度(範囲)が予め決まっている場合には、その範囲の限界値(下限値および上限値)に基づいて可動距離を算出してもよい。すなわち、可動距離の測定は、実施の形態1で説明したように軸部品35(ステッピングモータ20)の物理的な限界値を用いて算出してもよいし、モータ駆動制御装置1内部に設定されている限界値(下限値および上限値)に基づいて算出してもよい。
【0135】
また、実施の形態1において、軸部品35のメカニカルエンドPe1からメカニカルエンドPe2までの距離Dが同一であるアクチュエータ1_1~1_nがHVACシステム内に複数存在する場合には、アドレス設定時において、各アクチュエータ1_1~1_nの可動距離が相違するように、軸部品35の可動範囲を物理的に制限する仕切り部材をアクチュエータ1の軸部品35の周囲に別途設置し、アドレス設定完了後に、その仕切り部材を取り除いてもよい。
【0136】
これによれば、可動距離が同一のアクチュエータ1_1~1_nがHVACシステム内に複数存在する場合であっても、各アクチュエータ1_1~1_nのアドレスを重複することなく適切に設定することが可能となる。
【0137】
また、上記実施の形態において、モータ20がステッピングモータである場合を例示したが、これに限られず、モータ20は、ブラシレスモータ等の他の種類のモータであってもよい。
【0138】
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【0139】
また、上記の実施形態において、アドレス設定機能として、モータ制御回路11は、ノード識別子を対応関係情報(テーブル)125から読み出して、モータ駆動制御装置1自身のアドレスとして設定する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、モータ制御回路11は、対応関係情報125(125A,125B)を参照して、物理量の測定値に対応するノード識別子に、アドレスが設定されたことを示す論理値を設定するように構成されてもよい。例えば、アドレス設定部123(123A,123B)は、対応関係情報125(125A,125B)に記憶されている複数のノード識別子のうち物理量の測定値に対応するノード識別子のみを有効にすることにより、有効にしたノード識別子を自身のアドレスとする。これによれば、モータ制御回路11は、ノード識別子を対応関係情報125から読みだすことなく、モータ駆動制御装置1自身のアドレスを設定することが可能になる。
【0140】
また、上記実施の形態において、上位装置2とアクチュエータ1_1~1_nとは、バス3によってデイジーチェーン接続されていてもよい。具体的には、上位装置2と各アクチュエータ1_1~1_nとは、バス3を構成する信号線であるバスラインを介して直列的に接続されていてもよい。この場合には、例えば、モータ駆動制御装置10において、上位装置2とLIN通信を行うための通信用端子15を2つ設け、一方の通信端子15をバス3の上位側のバスラインに接続し、他方の通信端子15をバス3の下位側のバスラインに接続する。なお、2つ通信用端子15間にスイッチを設けてもよい。これによれば、スイッチのオン・オフを切り替えることにより、上位装置2に接続すべき下位側のモータ駆動制御装置10を選択することが可能となる。
【符号の説明】
【0141】
1,1_1~1_n…アクチュエータ(スレイブ)、2…上位装置(マスタ)、3…バス、6,7…仕切り部品、10…モータ駆動制御装置、11…モータ制御回路、13…モータ駆動回路、15…通信用端子、17…電源端子、18…グラウンド端子、20…モータ(ステッピングモータ)、25…出力軸、29…モータ端子、30…1次ギヤ(動力伝達機構)、31…2次ギヤ(動力伝達機構)、32…3次ギヤ(動力伝達機構)、33…出力ギヤ(動力伝達機構)、35…軸部品、42…プリント基板、43…フレキシブルプリント基板、51…ケース、52…カバー、100…通信システム、110,110A,110B…制御回路、111…温度測定部、112…電流測定部、113…入力電圧測定部、114…逆起電圧測定部、115…通信回路(LINトランシーバ)、120…通信部、121…駆動制御信号生成部、122,122A,122B…物理量測定部、123,123A,123B…アドレス設定部、124,124A,124B…記憶部、131…モータ駆動部、132…電流センサ、Sd…駆動制御信号、V_sub…入力電圧、GND…グラウンド電位。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13
図14