(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/24 20180101AFI20240328BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240328BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20240328BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20240328BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240328BHJP
B32B 27/22 20060101ALI20240328BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240328BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
C09J7/24
C09J7/38
C09J133/04
C08L27/06
B32B27/00 M
B32B27/22
B32B27/30 101
B32B27/30 A
B32B27/26
(21)【出願番号】P 2020122451
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2019166330
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 瑛
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏人
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-106990(JP,A)
【文献】特開2006-199843(JP,A)
【文献】特開2010-037519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08L 27/00- 27/08
B32B 27/00- 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に配置された粘着剤層と、を備え、
前記基材は、塩化ビニル系樹脂、エポキシ基を有する樹脂、及びポリエステル系可塑剤を含み、かつ、前記塩化ビニル系樹脂100
グラムに対する前記エポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が、0.005モル~0.05モルである基材であり、
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1質量部~2.0質量部の金属キレート系架橋剤と、を含
み、
前記(メタ)アクリル系共重合体における前記カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、前記(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して0.5質量%~15質量%である粘着剤組成物により形成された粘着剤層であ
り、
被着面が、車両の塗装面である粘着シート。
【請求項2】
前記被着面が、メラミン塗装、アルキド塗装、アルキドメラミン塗装、アクリル塗装、ウレタン塗装又はエポキシ塗装による塗装面である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記基材における前記ポリエステル系可塑剤の含有量が、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、15質量部~65質量部である請求項1又は請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記エポキシ基を有する樹脂の重量平均分子量が、0.5万~10万である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記エポキシ基を有する樹脂が、アクリル系樹脂である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記基材の厚みが、50μm~300μmである請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂を含む基材を備える粘着シートは、柔軟性及び印刷適性に優れ、かつ、耐候性も良好であるため、車両(例えば、自動車及び自動二輪車)の装飾用ステッカー、各種看板、各種標識等に広く用いられている。塩化ビニル系樹脂を含む基材を備える粘着シートでは、一般に、可塑剤の配合により柔軟性が付与され、熱安定剤の配合により耐熱性が改善される。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩化ビニル系重合体と、ポリエステル系可塑剤と、エポキシ樹脂と、脂肪酸カルシウム、脂肪酸亜鉛、及び脂肪酸バリウムから選ばれる少なくとも1種の金属石ケンと、ハイドロタルサイトとからなる粘着シート用基材フィルムが開示されている。特許文献1の記載によれば、特定の重量平均分子量を有するエポキシ樹脂と金属石ケンとハイドロタルサイトとの組み合わせが、熱安定剤として機能している。
また、特許文献2には、可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂フィルムに、C4~C8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体と、カルボキシ基を有するラジカル重合体単量体と、酢酸ビニルと、アクリル酸メチルとからなるアクリル系共重合体、及び、金属キレート架橋剤を配合してなる粘着剤組成物から形成される粘着層が積層されている装飾用粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-106990号公報
【文献】特開2006-199843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、塩化ビニル系樹脂を含む基材を備える粘着シートを、車両の塗装面を保護するための保護フィルム〔所謂、PPF(ペイントプロテクションフィルム)〕に適用することが検討されている。PPFは、車両を被着体とするため、三次元形状に対して良好に追随することが求められる。このため、PPFに適用する粘着シートにおいても、基材に対し、可塑剤を配合することで、柔軟性を付与している。
しかし、可塑剤を含む基材を備える粘着シートは、熱が付与されると、基材中の可塑剤が粘着剤層に移行しやすくなる。例えば、PPF、装飾用ステッカー等に適用される粘着シートの表面には、意匠性を付与するための装飾層、防汚性を付与するための機能層等が設けられることが多い。このような層を設ける工程では、例えば、乾燥工程を経るため、粘着シートに対し、熱が付与される場合がある。
基材中の可塑剤が粘着剤層に移行すると、粘着剤層の粘着力が低下し得る。また、基材中の可塑剤が粘着剤層に移行すると、粘着剤層が柔らかくなるため、使用後に粘着シートを被着体から剥がす際に、粘着剤層が被着体に転着(所謂、糊残り)する不具合が生じ得る。例えば、PPFに適用される粘着シートでは、長期間(例えば、3年)使用した後に車両から剥離されるが、粘着剤層に可塑剤が移行すると、剥離の際に車両に糊残りが生じやすい。また、耐熱性の改善のために基材に配合される熱安定剤についても、粘着剤層に移行する場合があり、粘着剤層の粘着力を低下させる原因となり得る。
【0006】
このため、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、及び熱安定剤を含む基材を備える粘着シートに対しては、熱が付与される工程を経た場合でも良好な粘着力が維持され、かつ、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りが生じ難いことが求められる。
【0007】
また、塩化ビニル系樹脂を含む基材を備える粘着シートを屋外で使用すると、塩化ビニル系樹脂が経時で劣化し、黄変するという不具合が生じ得る。
このため、塩化ビニル系樹脂を含む基材を備える粘着シートに対しては、高温環境下に長期間曝された場合でも黄変し難いことが求められる。
また、例えば、PPFに適用される粘着シートには、一般に、透明性が求められる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、熱が付与される工程を経た場合でも良好な粘着力が維持され、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りが生じ難く、かつ、耐熱性及び透明性に優れる粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 基材と、上記基材上に配置された粘着剤層と、を備え、
上記基材は、塩化ビニル系樹脂、エポキシ基を有する樹脂、及びポリエステル系可塑剤を含み、かつ、上記塩化ビニル系樹脂100グラムに対する上記エポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が、0.005モル~0.05モルである基材であり、
上記粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1質量部~2.0質量部の金属キレート系架橋剤と、を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層である、粘着シート。
<2> 上記(メタ)アクリル系共重合体における上記カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、上記(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して0.5質量%~15質量%である<1>に記載の粘着シート。
<3> 上記基材における上記ポリエステル系可塑剤の含有量が、上記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、15質量部~65質量部である<1>又は<2>に記載の粘着シート。
<4> 上記エポキシ基を有する樹脂の重量平均分子量が、0.5万~10万である<1>~<3>のいずれか1つに記載の粘着シート。
<5> 上記エポキシ基を有する樹脂が、アクリル系樹脂である<1>~<4>のいずれか1つに記載の粘着シート。
<6> 上記(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率に対する上記基材中の上記エポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量〔即ち、上記基材中の上記エポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量/上記(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率〕が、0.024~7.210である<1>~<5>のいずれか1つに記載の粘着シート。
<7> 上記基材の厚みが、50μm~300μmである<1>~<6>のいずれか1つに記載の粘着シート。
<8> 被着面が、車両の塗装面である<1>~<7>のいずれか1つに記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱が付与される工程を経た場合でも良好な粘着力が維持され、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りが生じ難く、かつ、耐熱性及び透明性に優れる粘着シートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0012】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された下限値又は上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値又は上限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された下限値又は上限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリル系共重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位〔即ち、(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位〕の50質量%以上である共重合体を意味する。
【0014】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0015】
本明細書において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0016】
本発明において、「耐熱性」とは、高温環境下に長期間曝された場合でも黄変し難い性質を意味する。ここでいう「高温環境」とは、屋外環境を想定しているが、実施例では、200℃の環境下に静置する加熱促進試験により、粘着シートの耐熱性を評価している。
【0017】
[粘着シート]
本発明の粘着シートは、基材と、上記基材上に配置された粘着剤層と、を備え、
上記基材は、塩化ビニル系樹脂、エポキシ基を有する樹脂、及びポリエステル系可塑剤を含み、かつ、上記塩化ビニル系樹脂100グラムに対する上記エポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が、0.005モル~0.05モルである基材であり、
上記粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体〔以下、「特定(メタ)アクリル系共重合体」ともいう。〕と、上記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1質量部~2.0質量部の金属キレート系架橋剤と、を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層である。
本発明の粘着シートは、熱が付与される工程を経た場合でも良好な粘着力が維持され、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りが生じ難く、かつ、耐熱性及び透明性に優れる。
本発明の粘着シートがこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本発明の粘着シートを限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0018】
一般に、エポキシ基を有する化合物は、塩化ビニル系樹脂をフィルムに加工する際に、主に加熱によって発生するHClに由来するH+及びCl-を捕捉し、塩化ビニル系樹脂の変色(詳細には、黄変)を抑制する、所謂、熱安定剤として機能する。従来、エポキシ基を有する化合物である熱安定剤としては、エポキシ化大豆油が多用されている。
これに対し、本発明における基材は、エポキシ基を有する樹脂を含む。エポキシ基を有する樹脂は、塩化ビニル系樹脂の熱安定剤として機能する。エポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が特定量以上であるため、本発明の粘着シートは、耐熱性に優れる。また、エポキシ基を有する樹脂は、エポキシ化大豆油のような低分子化合物と比較して、基材から粘着剤層に移行し難い。このため、本発明の粘着シートは、熱が付与される工程を経た場合でも、良好な粘着力が維持されると推測される。
また、本発明における粘着剤層は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む特定(メタ)アクリル系共重合体と、特定(メタ)アクリル系共重合体に対して特定範囲の量の金属キレート系架橋剤と、を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層である。金属キレート系架橋剤は、架橋反応が速く、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のカルボキシ基と速やかに、かつ、十分に架橋反応することで、基材から粘着剤層への可塑剤の移行が抑制される。このため、本発明の粘着シートは、熱が付与される工程を経た場合でも、良好な粘着力が維持されると推測される。
本発明の粘着シートにおいて、基材中のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ基の一部は、基材の粘着剤層との界面付近に存在し、粘着剤層中のカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のカルボキシ基の一部は、粘着剤層の基材との界面付近に存在すると考えられる。本発明の粘着シートは、基材の粘着剤層との界面付近に存在するエポキシ基と粘着剤層の基材との界面付近に存在するカルボキシ基とが、基材と粘着剤層との界面で反応し、基材と粘着剤層との密着性が向上するため、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りが生じ難いと推測される。
【0019】
塩化ビニル系樹脂の可塑剤としては、DOP〔フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)〕が多用されている。これに対し、本発明における基材は、ポリエステル系可塑剤を含む。ポリエステル系可塑剤は、DOPのような低分子化合物と比較して、基材から粘着剤層に移行し難い。このため、本発明の粘着シートは、熱が付与される工程を経た場合でも、良好な粘着力が維持されるとともに、基材の柔軟性の低下が抑制されると推測される。また、本発明の粘着シートは、基材から粘着剤層への可塑剤の移行が抑制されるため、粘着剤層が可塑剤を含み、柔らかくなることに起因する、剥離の際の被着体への糊残りの発生が抑制されると推測される。
【0020】
また、本発明の粘着シートは、エポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が特定量以下であるため、透明性が損なわれず、透明性に優れると推測される。
【0021】
〔基材〕
本発明の粘着シートは、基材を備える。
本発明の粘着シートが備える基材は、塩化ビニル系樹脂、エポキシ基を有する樹脂、及びポリエステル系可塑剤を含み、かつ、上記塩化ビニル系樹脂100グラムに対する上記エポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が、0.005モル~0.05モルである。
【0022】
<塩化ビニル系樹脂>
本発明の粘着シートが備える基材は、塩化ビニル系樹脂を含む。
本明細書において、「塩化ビニル系樹脂」とは、塩化ビニルに由来する構成単位を含む重合体を意味する。また、「塩化ビニルに由来する構成単位」とは、塩化ビニルが付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0023】
塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体(即ち、ポリ塩化ビニル)、及び、塩化ビニルと他の単量体(詳細には、塩化ビニルと共重合可能な他の単量体)との共重合体が挙げられる。
塩化ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルに代表されるビニルエステル化合物、エチレン及びプロピレンに代表されるオレフィン化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びメタクリル酸メチルに代表される(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイン酸ジブチル及びマレイン酸ジエチルに代表されるマレイン酸ジエステル化合物、フマル酸ジブチル及びフマル酸ジエチルに代表されるフマル酸ジエステル化合物、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル化合物、塩化ビニリデン及び臭化ビニルに代表されるハロゲン化ビニル化合物、並びに、メチルビニルエーテル及びエチルビニルエーテルに代表されるビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0024】
塩化ビニル系樹脂における塩化ビニルに由来する構成単位の含有率(即ち、割合;以下、同じ。)は、特に制限されないが、例えば、塩化ビニル系樹脂の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましく、60質量%~100質量%であることが更に好ましく、70質量%~100質量%であることが更に好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましく、90質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0025】
塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に制限されないが、例えば、500~1700であることが好ましく、700~1400であることがより好ましく、800~1300であることが更に好ましい。
塩化ビニル系樹脂の平均重合度が、上記範囲内であると、適度な柔軟性を示し、かつ、コシがある基材となるため、被着体からの剥離性がより良好となる傾向がある。
塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、JIS K6721に準じた方法により測定される値である。なお、後述のとおり、塩化ビニル系樹脂としては、市販品を使用できる。塩化ビニル系樹脂として市販品を用いる場合には、塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、市販品のカタログ値を優先して採用する。
【0026】
塩化ビニル系樹脂としては、市販品を使用できる。
塩化ビニル系樹脂の市販品の例としては、カネビニール(登録商標)S1001N〔商品名、平均重合度:1050、(株)カネカ〕、カネビニール(登録商標)S1008〔商品名、平均重合度:800、(株)カネカ〕、カネビニール(登録商標)S1003〔商品名、平均重合度:1300、(株)カネカ〕、ZEST PQLT〔商品名、平均重合度:800、新第一塩ビ(株)〕、ZEST P31D〔商品名、平均重合度:1000、新第一塩ビ(株)〕、ZEST PQHC〔商品名、平均重合度:1300、新第一塩ビ(株)〕、TK-1000〔商品名、平均重合度:1030、信越化学工業(株)〕、TK-800〔商品名、平均重合度:800、信越化学工業(株)〕、TK-1300〔商品名、平均重合度:1300、信越化学工業(株)〕等が挙げられる。
【0027】
基材は、塩化ビニル系樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0028】
基材における塩化ビニル系樹脂の含有率は、特に制限されないが、例えば、基材の全質量に対して、55質量%~90質量%であることが好ましく、60質量%~85質量%であることがより好ましく、65質量%~80質量%であることが更に好ましい。
基材における塩化ビニル系樹脂の含有率が、基材の全質量に対して、上記範囲内であると、適度な柔軟性を示す基材となる傾向がある。
【0029】
<エポキシ基を有する樹脂>
本発明の粘着シートが備える基材は、エポキシ基を有する樹脂を含む。
エポキシ基を有する樹脂は、熱安定剤として寄与する。
【0030】
エポキシ基を有する樹脂の種類は、特に制限されない。
エポキシ基を有する樹脂としては、アクリル系樹脂、ビスフェノールとエピクロルヒドリンとの反応物である樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、エポキシ基を有する樹脂としては、アクリル系樹脂が好ましい。
エポキシ基を有する樹脂がアクリル系樹脂であると、塩化ビニル系樹脂との相溶性がより良好となり、粘着シートの外観及び透明性がより優れる傾向がある。
【0031】
本明細書において、「アクリル系樹脂」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を意味する。また、「(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリロイル基を有する単量体の単独重合体、及び、(メタ)アクリロイル基を有する単量体と他の単量体(詳細には、(メタ)アクリロイル基を有する単量体と共重合可能な他の単量体)との共重合体が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、特に制限されず、例えば、後述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が挙げられる。
アクリル系樹脂における(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に制限されず、例えば、アクリル系樹脂の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましく、60質量%~100質量%であることが更に好ましく、70質量%~100質量%であることが更に好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましく、90質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0032】
エポキシ基を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば、0.5万~10万であることが好ましく、1万~10万であることがより好ましく、3万~10万であることが更に好ましく、5万~10万であることが特に好ましい。
エポキシ基を有する樹脂の重量平均分子量が0.5万以上であると、粘着剤層への移行がより抑制される傾向がある。
エポキシ基を有する樹脂の重量平均分子量が10万以下であると、塩化ビニル系樹脂との相溶性がより良好となり、粘着シートの外観及び透明性がより優れる傾向がある。
【0033】
エポキシ基を有する樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として測定される値である。なお、後述のとおり、エポキシ基を有する樹脂としては、市販品を使用できる。エポキシ基を有する樹脂として市販品を用いる場合には、エポキシ基を有する樹脂の重量平均分子量は、市販品のカタログ値を優先して採用する。
【0034】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8020 GPC、東ソー(株)〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)〕
カラム:TSKguardcolumnHXL-H〔商品名、東ソー(株)〕 1本、
TSKgel-GMHXL〔商品名、東ソー(株)〕 2本、及び
TSKgel-G2000XL〔商品名、東ソー(株)〕 1本
カラムサイズ:7.8mmID×30cm
カラム温度:38℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:4mg/mL
注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0035】
エポキシ基を有する樹脂としては、市販品を使用できる。
エポキシ基を有する樹脂の市販品の例としては、メタブレン(登録商標)P-1901〔商品名、重量平均分子量:68000、エポキシ当量(カタログ値):170g/eq、アクリル系樹脂、三菱ケミカル(株)〕、マープルーフ(登録商標)G-01100〔商品名、重量平均分子量:12000、エポキシ当量(カタログ値):170g/eq、アクリル系樹脂、日油(株)〕、マープルーフ(登録商標)G-0150M〔商品名、重量平均分子量:10000、エポキシ当量(カタログ値):310g/eq、アクリル系樹脂、日油(株)〕、マープルーフ(登録商標)G-0130SP〔商品名、重量平均分子量:9000、エポキシ当量(カタログ値):530g/eq、アクリル系樹脂、日油(株)〕等が挙げられる。
【0036】
基材は、エポキシ基を有する樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0037】
塩化ビニル系樹脂100グラムに対するエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量は、0.005モル~0.05モルであり、0.008モル~0.05モルであることが好ましく、0.010モル~0.05モルであることがより好ましく、0.012モル~0.05モルであることが更に好ましい。
塩化ビニル系樹脂100グラムに対するエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が0.005モル以上であると、耐熱性に優れる粘着シートを実現し得る。
塩化ビニル系樹脂100グラムに対するエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が0.05モル以下であると、透明性に優れる粘着シートを実現し得る。
【0038】
本明細書において、「エポキシ官能基量」とは、塩化ビニル系樹脂100グラムに対するエポキシ基を有する樹脂の含有量(単位:グラム)を、エポキシ基を有する樹脂のエポキシ当量で除した値を意味する。
エポキシ基を有する樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数、単位:g/eq)は、JIS K 7236:2009に準じた方法により測定される値である。なお、エポキシ基を有する樹脂として市販品を用いる場合には、エポキシ基を有する樹脂のエポキシ当量は、市販品のカタログ値を優先して採用する。
【0039】
基材におけるエポキシ基を有する樹脂の含有量は、塩化ビニル系樹脂100グラムに対するエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が、0.005モル~0.05モルとなる量であれば、特に制限されない。
基材におけるエポキシ基を有する樹脂の含有量は、例えば、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、1質量部~10質量部であることが好ましい。
【0040】
<ポリエステル系可塑剤>
本発明の粘着シートが備える基材は、ポリエステル系可塑剤を含む。
ポリエステル系可塑剤は、基材への柔軟性の付与に寄与する。
【0041】
ポリエステル系可塑剤としては、特に制限はなく、例えば、フタル酸系ポリエステル、アジピン酸系ポリエステル、及びセバシン酸系ポリエステルが挙げられる。
これらの中でも、ポリエステル系可塑剤としては、アジピン酸系ポリエステル及びセバシン酸系ポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、アジピン酸系ポリエステルがより好ましい。
ポリエステルとしては、ポリアルキレングリコールジエステルが好ましい。
ポリアルキレングリコールジエステルとしては、ポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレンポリプロピレングリコールジエステル等が挙げられる。
【0042】
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量は、特に制限されないが、例えば、1000~3000であることが好ましく、1200~3000であることがより好ましく、1500~3000であることが更に好ましい。
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量が、上記範囲内であると、粘着シートを長期間使用した場合における基材から粘着剤層へのポリエステル系可塑剤の移行をより抑制できる傾向がある。
【0043】
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として測定される値である。なお、後述のとおり、ポリエステル系可塑剤としては、市販品を使用できる。ポリエステル系可塑剤が市販品である場合には、ポリエステル系可塑剤の数平均分子量(Mn)は、市販品のカタログデータを優先して採用する。
【0044】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8020 GPC、東ソー(株)〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)〕
カラム:TSKguardcolumnHXL-H〔商品名、東ソー(株)〕 1本、
TSKgel-GMHXL〔商品名、東ソー(株)〕 2本、及び
TSKgel-G2000XL〔商品名、東ソー(株)〕 1本
カラムサイズ:7.8mmID×30cm
カラム温度:38℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:4mg/mL
注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0045】
ポリエステル系可塑剤としては、市販品を使用できる。
ポリエステル系可塑剤の市販品の例としては、アデカサイザー(登録商標)PN-350〔商品名、数平均分子量:3000、(株)ADEKA〕、アデカサイザー(登録商標)PN-446〔商品名、数平均分子量:2000、(株)ADEKA〕、アデカサイザー(登録商標)PN-150〔商品名、数平均分子量:1000、(株)ADEKA〕、D623〔商品名、数平均分子量:約1800、三菱ケミカル(株)〕、D645〔商品名、数平均分子量:約2200、三菱ケミカル(株)〕等が挙げられる。なお、上記市販品は、いずれもアジピン酸系ポリエステルである。
【0046】
基材は、ポリエステル系可塑剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0047】
基材におけるポリエステル系可塑剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、15質量部~65質量部であることが好ましく、20質量部~60質量部であることがより好ましく、25質量部~55質量部であることが更に好ましく、25質量部~50質量部であることが特に好ましい。
基材におけるポリエステル系可塑剤の含有量が、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して15質量部以上であると、基材がより柔軟になるため、三次元形状を有する被着体(例えば、自動車、自動二輪車等の車両)に対し、粘着シートをより追随させやすくなり、貼付後の被着体からの浮きをより抑制できる傾向がある。
基材におけるポリエステル系可塑剤の含有量が、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して65質量部以下であると、基材の弾性率が適度となるため、三次元形状を有する被着体(例えば、自動車、自動二輪車等の車両)への貼付作業をより改善できる傾向がある。
【0048】
<その他の成分>
本発明の粘着シートが備える基材は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述の成分以外の成分(所謂、他の成分)を含んでいてもよい。
他の成分としては、安定剤、滑剤、帯電防止剤、加工助剤、着色防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、改質剤、充填剤、希釈剤等が挙げられる。
【0049】
安定剤としては、特に制限されず、例えば、バリウム系安定剤、カルシウム系安定剤、スズ系安定剤、亜鉛系安定剤、複合安定剤〔例えば、カルシウム/亜鉛系(Ca/Zn系)安定剤、及びバリウム/亜鉛系(Ba/Zn系)安定剤〕等の安定剤が挙げられる。また、金属石ケン(例えば、脂肪酸カルシウム、脂肪酸亜鉛、及び脂肪酸バリウム)、シリカ化合物等についても、安定剤として機能し得る。
基材は、安定剤を含む場合、安定剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0050】
滑剤としては、特に制限されず、例えば、金属石鹸系滑剤(例えば、ステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、及びステアリン酸カルシウム)、脂肪酸エステル系滑剤(例えば、ブチルステアレート、ブチルラウレート、及びステアリルステアレート)、脂肪酸系滑剤(例えば、ステアリン酸、ベヘン酸、及びモンタン酸)、アミド系滑剤(例えば、エチレンビスステアロアミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、及びベヘニン酸アミド)、炭化水素系滑剤(例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、及びポリエチレンワックス)等の滑剤が挙げられる。また、アニオン系界面活性剤についても、滑剤として機能し得る。
基材は、滑剤を含む場合、滑剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0051】
〔基材の作製方法〕
本発明における基材の作製方法は、特に制限されない。
本発明における基材の好ましい作製方法の一例について、詳細に説明する。なお、既述の基材と共通する事項、例えば、基材の材料及びその量の詳細については、説明を省略する。
【0052】
塩化ビニル系樹脂と、エポキシ基を有する樹脂と、ポリエステル系可塑剤と、必要に応じて、安定剤、滑剤等のその他の成分と、を混合し、混合物を得る。
混合手段は、特に制限されず、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブルミキサー等の混合装置が挙げられる。
混合温度は、特に制限されず、例えば、材料の種類及び量に応じて、適宜設定できる。
混合時間は、特に制限されず、例えば、材料の種類及び量に応じて、適宜設定できる。
【0053】
次いで、得られた混合物を溶融混練し、溶融混練物を得る。
溶融混練手段は、特に制限されず、例えば、1軸(所謂、単軸)の混練押出機、2軸の混練押出機、2本ロール等の溶融混練機が挙げられる。
溶融混練の条件は、特に制限されず、例えば、材料の種類に応じて、適宜設定できる。
【0054】
次いで、得られた溶融混練物を用いて、フィルム状に成形し、基材を得る。
フィルム状の基材の形成方法は、特に制限されず、例えば、押出し法であることが好ましく、Tダイ法であることがより好ましい。
押出し法には、Tダイ付単軸押出機を好適に使用できる。
シリンダー温度は、特に制限されず、例えば、140℃~180℃に設定できる。
ダイ温度は、特に制限されず、例えば、180℃~220℃に設定できる。
【0055】
本発明における基材の厚みは、特に制限されず、目的に応じて、適宜設定できる。
本発明における基材の厚みは、例えば、50μm~300μmであることが好ましく、50μm~250μmであることがより好ましく、100μm~250μmであることが更に好ましく、100μm~200μmであることが特に好ましい。
本発明における基材の厚みが50μm以上であると、エポキシ基を有する樹脂及びポリエステル系可塑剤の含有量が比較的多くなる。本発明の粘着シートは、基材の厚みが50μm以上であっても、これら添加剤に起因する粘着力の低下、糊残りの発生等の不具合が生じ難い傾向を示す。
本発明における基材の厚みが300μm以下であると、三次元形状を有する被着体(例えば、自動車、自動二輪車等の車両)に対し、粘着シートをより追随させやすくなる傾向がある。
【0056】
〔粘着剤層〕
本発明の粘着シートは、既述の基材上に配置された粘着剤層を備える。
本発明の粘着シートが備える粘着剤層は、特定(メタ)アクリル系共重合体と、特定量の金属キレート系架橋剤と、を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層である。
【0057】
<粘着剤組成物>
本発明における粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系共重合体と、特定量の金属キレート系架橋剤と、を含む。
以下、粘着剤組成物の各成分について、詳細に説明する。
【0058】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体>>
本発明における粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系共重合体を含む。
特定(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、及び、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体を含む。
【0059】
-(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位-
特定(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、粘着力の調整に寄与する。
【0060】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、含まれない。
【0061】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に制限されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、例えば、粘着力の観点から、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましい。
【0062】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、凝集力及び粘着力を調整しやすいという観点から、n-ブチルアクリレート(n-BA)、メチルアクリレート(MA)、及び2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0063】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0064】
特定(メタ)アクリル系共重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に制限されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%~99.5質量%であることがより好ましく、60質量%~99.5質量%であることが更に好ましく、70質量%~99.5質量%であることが更に好ましく、80質量%~99.5質量%であることが更に好ましく、85質量%~99.5質量%であることが特に好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0065】
-カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位-
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む。
カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のカルボキシ基は、後述の金属キレート系架橋剤と速やかに架橋反応する。また、既述したとおり、粘着剤層の基材との界面付近に存在する、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のカルボキシ基は、基材の粘着剤層との界面付近に存在する、エポキシ基を有する樹脂のエポキシ基と、基材と粘着剤層との界面で反応する。
【0066】
本明細書において、「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0067】
カルボキシ基を有する単量体の種類としては、特に制限はない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート(例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート)、コハク酸エステル(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)等が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、共重合性の観点から、アクリル酸(AA)が好ましい。
【0068】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0069】
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に制限されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して、0.5質量%~15質量%であることが好ましく、0.5質量%~13質量%であることがより好ましく、0.8質量%~10質量%であることが更に好ましく、1質量%~10質量%であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して0.5質量%以上であると、後述の金属キレート系架橋剤との架橋反応がより速やかに、かつ、より十分になされ、粘着剤層の架橋密度がより適度に高くなり、基材からのポリエステル系可塑剤の移行をより低減できるため、熱が付与される工程を経た場合でも良好な粘着力がより良好に維持され、かつ、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りがより生じ難い粘着シートを実現し得る。また、特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して0.5質量%以上であると、基材と粘着剤層との界面において、基材中のエポキシ基と反応するカルボキシ基がより十分に存在し、基材と粘着剤層との密着性がより向上するため、粘着シートは、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りがより生じ難い傾向を示す。
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位に対して15質量%以下であると、粘着剤層の架橋密度が過度に高くならず、粘着剤層がより適度な凝集力を示すため、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りがより生じ難い粘着シートを実現し得る。
【0070】
また、特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率に対する基材中のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量〔基材中のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量/特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率〕は、0.024~7.210であることが好ましく、0.050~5.320であることがより好ましく、0.086~3.429であることが更に好ましく、0.086~1.538であることが特に好ましい。
基材中のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量/特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率が、上記範囲内であると、基材と粘着剤層との界面において、基材中のエポキシ基と粘着剤層中のカルボキシ基との反応がより適切となるため、基材と粘着剤層との密着性がより向上するとともに、粘着剤層の架橋密度が過度に高くならず、粘着剤層がより適度な凝集力を示すため、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りがより生じ難い粘着シートを実現し得る。
【0071】
特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率は、特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のモル比率、及び、特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位中のカルボキシ基の個数(所謂、価数)から、以下の計算式により求める。
【0072】
特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率
=[特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)×特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位中のカルボキシ基の個数(価数)/特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基を有する単量体の分子量(g/モル)]
【0073】
本発明の粘着シートにおける「特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率」は、例えば、以下の方法により確認できる。
粘着シートから、粘着剤層のみを剥ぎ取る。次いで、剥ぎ取った粘着剤層について、酢酸エチルを抽出溶媒として用いることにより、可溶分を抽出する。この抽出により、未架橋の(メタ)アクリル系共重合体を可溶分として得ることができる。次いで、得られた可溶分について、JIS K5601-2-1:1999に準じた方法により、酸価を測定する。得られた酸価の値から、以下の計算式により、「特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率」を求める。なお、「酸価」とは、樹脂1g中の遊離酸を中和するために必要な水酸化カリウム(KOH)の質量(単位:mg)を意味する。
【0074】
特定(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率
=[粘着剤層の可溶分の酸価(単位:mgKOH/g)×100]/[56.11(水酸化カリウムの分子量)×1000]
【0075】
また、本発明の粘着シートにおける「基材中のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量」は、例えば、以下の方法により確認できる。
粘着シートから粘着剤層を除去した後の基材について、ジエチルエーテルを抽出溶媒として用いることにより、可溶分を抽出する。この抽出により残存した不溶分について、JIS K7236:2009に準じた方法により、エポキシ当量を測定する。得られた不溶分のエポキシ当量の値から、以下の計算式により、「単位質量あたりの塩化ビニル系樹脂に対するエポキシ官能基量」を求める。
【0076】
単位質量あたりの塩化ビニル系樹脂に対するエポキシ官能基量
=1/[不溶分のエポキシ当量(単位:g/eq)×不溶分中の塩化ビニル系樹脂の含有率(単位:質量%)/100]
【0077】
不溶分中の塩化ビニル系樹脂の含有率は、不溶分について、JIS K7229:1995に準じた方法により、不溶分中の塩素含有率を測定し、得られた不溶分中の塩素含有率の値から、以下の計算式より求める。
【0078】
不溶分中の塩化ビニル系樹脂の含有率
=[不溶分中の塩素含有率(単位:質量%)]×[62.5(塩化ビニルの分子量)/35.45(塩素の原子量)]
【0079】
「単位質量あたりの塩化ビニル系樹脂に対するエポキシ官能基量」から、以下の計算式により、塩化ビニル系樹脂100gに対する「基材中のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量」を求める。
基材中のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量
=単位質量あたりの塩化ビニル系樹脂に対するエポキシ官能基量(単位:mol/g)×100(単位:g)
【0080】
-その他の構成単位-
特定(メタ)アクリル系共重合体は、本発明の効果が発揮される範囲内において、既述の構成単位、即ち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、及び、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含んでいてもよい。
【0081】
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
また、その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートに代表される水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0082】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、特に制限されないが、例えば、30万~150万であることが好ましく、35万~130万であることがより好ましく、40万~120万であることが更に好ましく、45万~100万であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が30万以上であると、粘着剤層の凝集力が低すぎず、より適度なものとなる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が150万以下であると、粘着剤層の凝集力が高すぎず、より適度なものとなる傾向がある。
【0083】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系共重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定(メタ)アクリル系共重合体の質量割合を意味する。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量を測定する。
【0084】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)〕
カラム:TSK-GEL GMHXL〔商品名、東ソー(株)〕を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0085】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0086】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率>>
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、特に制限されないが、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、70質量%~99.9質量%であることが好ましく、80質量%~99.9質量%であることがより好ましく、85質量%~99.9質量%であることが更に好ましく、90質量%~99.9質量%であることが特に好ましい。
本明細書において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
【0087】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法>>
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法は、特に制限されない。
特定(メタ)アクリル系共重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合することにより製造できる。
重合方法としては、製造後に本発明の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0088】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、例えば、窒素気流中、有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0089】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
【0090】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶媒の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系共重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0091】
重合反応時には、有機溶媒を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0092】
重合開始剤としては、通常の溶液重合で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特に、アゾ化合物の使用が好ましい。
【0093】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0094】
重合開始剤の使用量は、特に制限されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0095】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0096】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に制限されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0097】
重合温度は、特に制限されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0098】
<<金属キレート系架橋剤>>
本発明における粘着剤組成物は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1質量部~2.0質量部の金属キレート系架橋剤を含む。
特定(メタ)アクリル系共重合体に対して特定量の金属キレート系架橋剤は、基材に含まれるポリエステル系可塑剤の粘着剤層への移行の抑制に寄与する。
【0099】
本明細書において、「金属キレート系架橋剤」とは、架橋剤として機能する金属キレート化合物(以下、単に「金属キレート化合物」ともいう。)を指す。
【0100】
金属キレート化合物としては、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、及びアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)に代表されるアルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、コバルトキレート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、金属キレート化合物としては、アルミニウムキレート化合物が好ましい。
【0101】
金属キレート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
金属キレート系架橋剤の市販品の例としては、アルミキレートA〔商品名、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、川研ファインケミカル(株)〕、アルミキレートD〔商品名、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、川研ファインケミカル(株)〕、及びALCH-TR〔商品名、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、川研ファインケミカル(株)〕が挙げられる。
【0102】
本発明における粘着剤組成物は、金属キレート系架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0103】
本発明の粘着剤組成物における金属キレート系架橋剤の含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1質量部~2.0質量部であり、0.15質量部~2.0質量部であることが好ましく、0.2質量部~2.0質量部であることがより好ましく、0.2質量部~1.8質量部であることが更に好ましく、0.2質量部~1.5質量部であることが特に好ましい。
本発明の粘着剤組成物における金属キレート系架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1質量部以上であると、架橋反応が速やかに、かつ、十分になされ、粘着剤層の架橋密度が適度に高くなり、基材からのポリエステル系可塑剤の移行を低減できるため、熱が付与される工程を経た場合でも良好な粘着力が維持され、かつ、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りが生じ難い粘着シートを実現し得る。
本発明の粘着剤組成物における金属キレート系架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して2.0質量部以下であると、粘着剤層の架橋密度が過度に高くならず、粘着剤層が適度な凝集力を示す。また、粘着剤層中のカルボキシ基が、金属キレート系架橋剤と必要以上に架橋反応せず、基材中のエポキシ基と十分に反応することで、基材と粘着剤層との密着性が向上する。このため、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りが生じ難い粘着シートを実現し得る。
【0104】
<<有機溶媒>>
本発明における粘着剤組成物は、例えば、塗布性向上の観点から、有機溶媒を含んでいてもよい。
有機溶媒としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重合反応時に用いられる有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0105】
本発明における粘着剤組成物は、有機溶媒を含む場合、有機溶媒を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0106】
本発明における粘着剤組成物が有機溶媒を含む場合、有機溶媒の含有量は、特に制限されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0107】
<<他の成分>>
本発明における粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、他の成分)を含んでいてもよい。
他の成分としては、特定(メタ)アクリル系共重合体以外の重合体、架橋触媒、粘着付与剤、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0108】
本発明における粘着剤組成物がこれらの他の成分を含む場合、他の成分の含有量は、本発明の効果が発揮される範囲内において、適宜設定できる。
【0109】
<架橋後のゲル分率>
本発明における粘着剤組成物の架橋後のゲル分率(所謂、粘着剤層のゲル分率)は、特に限定されないが、例えば、40質量%以上であることが好ましく、40質量%~90質量%であることがより好ましく、40質量%~85質量%であることが更に好ましく、40質量%~80質量%であることが特に好ましい。
本発明における粘着剤組成物の架橋後のゲル分率が40質量%以上であると、粘着剤層の凝集力が適切なものとなり、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りがより生じ難い粘着シートを実現し得る。
【0110】
本明細書において、「粘着剤組成物の架橋後のゲル分率」は、酢酸エチルを抽出溶媒に用いて測定される溶媒不溶分の割合である。粘着剤組成物の架橋後のゲル分率は、具体的には、下記(1)~(4)に従って測定する。
(1)精密天秤にて質量を正確に測定した250メッシュの金網(100mm×100mm)に、架橋後の粘着剤組成物(即ち、粘着剤層)を約0.15g貼付し、ゲル分が漏れないように、貼付した粘着剤層を内側にして、金網を5回折り畳み、試料とする。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(2)得られた試料を酢酸エチル80mLに3日間浸漬する。
(3)試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(4)下式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(単位:質量%)=(Z-X)/(Y-X)×100
但し、Xは金網の質量(単位:g)、Yは粘着剤層を貼付した金網の浸漬前の質量(単位:g)、Zは浸漬後乾燥させた、粘着剤層を貼付した金網の質量(単位:g)である。
【0111】
〔粘着剤層の厚み〕
本発明における粘着剤層の厚みは、特に制限されず、目的に応じて、適宜設定できる。
本発明における粘着剤層の厚みは、例えば、10μm~100μmであることが好ましく、10μm~75μmであることがより好ましく、10μm~50μmであることが更に好ましく、20μm~50μmであることが特に好ましい。
一般に、粘着剤層の厚みが厚いほど、糊残りが生じやすい傾向がある。これに対し、本発明の粘着シートは、例えば、粘着剤層の厚みが100μmであっても、糊残りが生じ難い傾向を示す。
【0112】
〔剥離フィルム〕
本発明の粘着シートは、粘着剤層の基材とは反対側の面に、剥離フィルムを備えていてもよい。
剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離を容易に行えるものであれば、特に制限はなく、例えば、少なくとも片面に剥離処理剤による易剥離処理が施された樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。
剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤(例えば、シリコーン)、ワックス系剥離処理剤(例えば、パラフィンワックス)、フッ素系剥離処理剤(例えば、フッ素系樹脂)等が挙げられる。
【0113】
剥離フィルムの厚みは、特に制限されず、例えば、100μm~300μmであることが好ましい。
【0114】
本発明の粘着シートにおいて、剥離フィルムは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0115】
〔その他の層〕
本発明の粘着シートは、基材、粘着剤層、及び、必要に応じて備えていてもよい剥離フィルム以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、意匠性を付与するための層(所謂、装飾層)、機能(例えば、防汚性)を付与するための層(所謂、機能層)等の層(所謂、その他の層)を備えていてもよい。
その他の層は、目的に応じて、適宜選択できる。
なお、このような層を設ける工程では、乾燥工程のように、通常、熱が付与される場合が多い。
【0116】
[粘着シートの用途]
本発明の粘着シートの用途は、特に制限されない。
本発明の粘着シートは、熱が付与される工程を経た場合でも良好な粘着力が維持され、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りが生じ難く、かつ、耐熱性及び透明性に優れるため、例えば、車両(例えば、自動車及び自動二輪車)、列車、農機具、船外機等の塗装を保護するためのフィルム(所謂、ペイントプロテクションフィルム)、車両(例えば、自動車及び自動二輪車)に使用されるステッカー、屋外に設置される各種看板又は各種標識等の用途に好適である。
本発明の粘着シートは、例えば、メラミン塗装、アルキド塗装、アルキドメラミン塗装、アクリル塗装、ウレタン塗装、エポキシ塗装等による塗装面に対して、好適に使用できる。
【0117】
[粘着シートの製造方法]
本発明の粘着シートの製造方法は、特に制限されない。
本発明の粘着シートは、例えば、以下の方法により製造できる。
基材の面上に、粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥し、粘着剤層を得る。次いで、粘着剤層の露出した面と、剥離フィルムの面とを貼り合わせることにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する粘着シートを製造できる。
【0118】
別の方法としては、例えば、以下の方法も挙げられる。
剥離フィルムの面上に、粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させて、粘着剤層付きフィルムを作製する。次いで、粘着剤層付きフィルムの粘着剤層の面と、基材の面とを貼り合わせることにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する粘着シートを製造できる。
【0119】
基材又は剥離フィルムの面上に、粘着剤組成物を塗布する方法は、特に制限されない。
粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
基材又は剥離フィルムの面上への粘着剤組成物の塗布量は、例えば、形成する粘着剤層の厚みに応じて、適宜設定される。
【0120】
塗布膜を乾燥させる方法は、特に制限されない。
塗布膜を乾燥させる方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に制限されず、例えば、塗布膜の厚さ、及び塗布膜中の有機溶媒の量に応じて、適宜設定される。
【0121】
本発明の粘着シートでは、基材の粘着剤層との界面付近に存在するエポキシ基と粘着剤層の基材との界面付近に存在するカルボキシ基とが、基材と粘着剤層との界面で反応するため、粘着シートの製造に際して、例えば、基材面に対してコロナ処理を施したり、基材上に下塗層を設けたりしなくても、基材と粘着剤層との密着性が良好となる。
【実施例】
【0122】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0123】
[粘着シートの製造]
〔実施例1〕
1.基材の作製
塩化ビニル系樹脂〔商品名:カネビニール(登録商標)S1001N、平均重合度:1050、(株)カネカ〕100質量部と、エポキシ基を有する樹脂〔商品名:メタブレン(登録商標)P-1901、エポキシ当量(カタログ値):170g/eq、三菱ケミカル(株)〕2.0質量部(エポキシ官能基量:0.012モル相当)と、ポリエステル系可塑剤〔商品名:アデカサイザー(登録商標)PN-446、アジピン酸系ポリエステル、固形分:100質量%、数平均分子量:2000、(株)ADEKA〕40質量部と、安定剤〔商品名:アデカスタブ(登録商標)AC-258、バリウム/亜鉛系(Ba/Zn系)安定剤、固形分:100質量%、ADEKA(株)〕2.7質量部と、安定剤〔商品名:アデカスタブ(登録商標)CPL-1563、カルシウム/亜鉛系(Ca/Zn系)安定剤、固形分:100質量%、ADEKA(株)〕1.2質量部と、外部滑剤〔商品名:AC-6A、ポリエチレンワックス、ハネウェル社〕0.2質量部と、内部滑剤〔商品名:ブチルステアレート、川研ファインケミカル(株)〕2.0質量部とを、ヘンシェルミキサー〔三井三池化工機(株)〕を用いて、90℃になるまで混合し、混合物を得た。次いで、得られた混合物を、Tダイ付単軸押出機(シリンダー径:40mm、L/D:28)を用いて、シリンダー温度140℃~180℃、及びダイ温度200℃の条件にて押出し、厚み150μmの基材を形成した。
なお、基材の作製において、塩化ビニル系樹脂100質量部は、塩化ビニル系樹脂100gに対応し、エポキシ基を有する樹脂2.0質量部は、エポキシ基を有する樹脂2.0gに対応する。
【0124】
2.粘着剤組成物の調製
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート(n-BA;アクリル酸アルキルエステル単量体)90質量部、アクリル酸(AA;カルボキシ基を有する単量体)10質量部、及び酢酸エチル75質量部を入れて混合し、混合物を得た後、反応器内を窒素置換した。次いで、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後、酢酸エチル120質量部に2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN;重合開始剤〕0.02質量部を溶解させた溶液を、4時間かけて逐次滴下し、滴下終了後に2時間反応させた。反応終了後、反応混合物を、酢酸エチルを用いて希釈し、固形分濃度が30質量%である(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得た。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系共重合体の溶液に占める、(メタ)アクリル系共重合体の質量割合を意味する。
次いで、(メタ)アクリル系共重合体の溶液100質量部(固形分換算値)と、金属キレート系架橋剤〔商品名:アルミキレートA、川研ファインケミカル(株)〕0.25質量部(固形分換算値)と、を十分に混合して、粘着剤組成物を得た。
【0125】
3.粘着シートの製造
上記にて調製した粘着剤組成物を、剥離フィルム〔商品名:PET75GS、リンテック(株)〕の面上に、乾燥後の厚みが30μmとなるように、アプリケーターを用いて塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃、90秒間の乾燥条件で乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤層を得た。
次いで、粘着剤層の露出した面を、上記にて作製した基材の面に、重ねて貼り合わせた後、ハンドローラーを用いて圧着することにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する粘着シートを得た。
【0126】
〔実施例2~実施例5、及び実施例18〕
実施例2~実施例5、及び実施例18では、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物の組成を、表1に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着シートを得た。
【0127】
〔実施例6~実施例10、実施例15、及び実施例16〕
実施例6~実施例10、実施例15、及び実施例16では、基材を作製するための原料のうち、安定剤、外部滑剤、内部滑剤以外の成分を、表1に示す組成に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、粘着シートを得た。
【0128】
〔実施例11~実施例14〕
実施例11~実施例14では、基材を作製するための原料のうち、安定剤、外部滑剤、内部滑剤以外の成分を、表1に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着シートを得た。
【0129】
〔実施例17及び実施例19〕
実施例17及び実施例19では、基材を作製するための原料のうち、安定剤、外部滑剤、内部滑剤以外の成分を、表1に示す組成に変更したこと以外は、実施例18と同様の操作を行い、粘着シートを得た。
【0130】
〔比較例1、比較例2、及び比較例8~比較例11〕
比較例1、比較例2、及び比較例8~比較例11では、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物の組成を、表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着シートを得た。
【0131】
〔比較例3~比較例7〕
比較例3~比較例7では、基材を作製するための原料のうち、安定剤、外部滑剤、内部滑剤以外の成分を、表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、粘着シートを得た。
【0132】
実施例1~実施例19、比較例1、及び比較例3~比較例11における(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、60万であり、比較例2における(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、50万であった。
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0133】
実施例1~実施例19、比較例1、比較例2、及び比較例4~比較例9の粘着シートにおける、(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率に対する基材中のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量〔基材中のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量/(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率〕を、表1及び表2に示す。
基材中のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量/(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率は、既述の方法により計算した。以下、一例として、実施例1の粘着シートにおける計算方法を示す。
【0134】
(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率
=[(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)×(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位中のカルボキシ基の個数(価数)/(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基を有する単量体の分子量(g/モル)]
=[10(質量部)/100(質量部)×100(%)/1×72.1(g/モル)]
=0.13869・・・≒0.1387
【0135】
基材中のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量/(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率
=0.012/0.1387
=0.0865・・・≒0.0865
【0136】
なお、表1及び表2では、「(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率に対する基材中のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量〔基材中のエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量/(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基のモル比率〕」を「エポキシ官能基量/カルボキシ基のモル比率」と表記した。
【0137】
【0138】
【0139】
表1及び表2に記載の基材に含まれる各成分の詳細は、以下に示すとおりである。
<塩化ビニル系樹脂>
「カネビニールS1001N」〔商品名、平均重合度:1050、(株)カネカ〕
上記「カネビニール」は、登録商標である。
【0140】
<エポキシ基を有する化合物>
(樹脂)
「メタブレンP-1901」〔商品名、重量平均分子量:68000、エポキシ当量(カタログ値):170g/eq、アクリル系樹脂、三菱ケミカル(株)〕
「マープルーフG-01100」〔商品名、重量平均分子量:12000、エポキシ当量(カタログ値):170g/eq、アクリル系樹脂、日油(株)〕
「マープルーフG-0150M」〔商品名、重量平均分子量:10000、エポキシ当量(カタログ値):310g/eq、アクリル系樹脂、日油(株)〕
「マープルーフG-0130SP」〔商品名、重量平均分子量:9000、エポキシ当量(カタログ値):530g/eq、アクリル系樹脂、日油(株)〕
上記「メタブレン」及び上記「マープルーフ」は、いずれも登録商標である。
(樹脂以外)
「エポキシ化大豆油」〔商品名:ニューサイザー510R、分子量:946、日油(株)〕
上記「ニューサイザー」は、登録商標である。
【0141】
<可塑剤>
(ポリエステル系可塑剤)
「アデカサイザーPN-446」〔商品名、アジピン酸系ポリエステル、固形分:100質量%、数平均分子量:2000、(株)ADEKA〕
「アデカサイザーPN-150」〔商品名、アジピン酸系ポリエステル、固形分:100質量%、数平均分子量:1000、(株)ADEKA〕
「アデカサイザーPN-350」〔商品名、アジピン酸系ポリエステル、固形分:100質量%、数平均分子量:3000、(株)ADEKA〕
上記「アデカサイザー」は、登録商標である。
(その他の可塑剤)
「DOP」〔商品名、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、(株)ジェイ・プラス〕
【0142】
表1及び表2に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
「n-BA」:n-ブチルアクリレート
「2EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート
「MA」:メチルアクリレート
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート
「AA」:アクリル酸
【0143】
表1及び表2に記載の架橋剤の詳細は、以下に示すとおりである。
<架橋剤>
(金属キレート系架橋剤)
「アルミキレートA」〔商品名、川研ファインケミカル(株)〕
(その他の架橋剤)
「TETRAD-C」〔商品名、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ系架橋剤、固形分:100質量%、三菱ガス化学(株)〕
「コロネートL-45E」〔商品名、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、イソシアネート系架橋剤、固形分:45質量%、東ソー(株)〕
「デュラネートE405-80T」〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソシアネート系架橋剤、固形分:80質量%、旭化成(株)〕
上記の「TETRAD」、「コロネート」、及び「デュラネート」は、いずれも登録商標である。
【0144】
<架橋触媒>
「アデカスタブOT-1」〔商品名、ジオクチル錫ジラウレート、(株)ADEKA)〕
上記「アデカスタブ」は、登録商標である。
【0145】
表1及び表2中、「-」は、その欄に該当するものがないことを意味する。
表1及び表2中、「配合量」の欄に記載の数値は、いずれも固形分換算値であり、また、基材ごと、粘着剤組成物ごとに示したものである。
【0146】
[測定及び評価]
1.ゲル分率の測定
実施例1及び実施例2における各粘着剤層について、下記(1)~(4)に従って、ゲル分率を測定した。
【0147】
(1)精密天秤にて質量を正確に測定した250メッシュの金網(100mm×100mm)に、粘着剤層を約0.15g貼付し、ゲル分が漏れないように、貼付した粘着剤層を内側にして、金網を5回折り畳み、試料とする。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(2)得られた試料を酢酸エチル80mLに3日間浸漬する。
(3)試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(4)下式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(単位:質量%)=(Z-X)/(Y-X)×100
但し、Xは金網の質量(単位:g)、Yは粘着剤層を貼付した金網の浸漬前の質量(単位:g)、Zは浸漬後乾燥させた、粘着剤層を貼付した金網の質量(単位:g)である。
【0148】
その結果、実施例1における粘着剤層のゲル分率は、55質量%であり、実施例2における粘着剤層のゲル分率は、65質量%であった。
【0149】
2.粘着力の維持率
実施例1~実施例19、比較例1~比較例9、及び比較例11の各粘着シートについて、粘着力の維持率の評価を行った。なお、比較例10の粘着シートについては、架橋反応が進行していないことが確認されたため、評価を行わなかった。
まず、粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を6枚準備した。準備した6枚の評価用粘着シート片のうち、3枚を初期の粘着力の測定に用い、残りの3枚を熱処理後の粘着力の測定に用いた。
【0150】
(1)初期の粘着力
雰囲気温度23℃、50%RHの環境下で、3枚の評価用粘着シート片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、それぞれ別のステンレス板(SUS板)〔商品名:SUS304(BA)、(株)パルテック〕の面に、重ねて貼り合わせた後、2kgのゴムローラーを1往復させて圧着することにより、積層体を作製した。作製した積層体は、粘着フィルム片(基材/粘着剤層)/SUS板の積層構造を有する。次いで、作製した積層体を、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に24時間静置し、3個の試験片を作製した。
3個の試験片について、SUS板から粘着フィルム片(基材/粘着剤層)を長辺(150mm)方向に180°剥離した場合の粘着力(単位:N/25mm)を、シングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225、(株)エー・アンド・デイ〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。測定値を算術平均した後、小数点以下2桁目を四捨五入し、得られた値を初期の粘着力とし、評価に用いた。結果を表3及び表4に示す。
【0151】
(2)熱処理後の粘着力
3枚の評価用粘着シート片を、50℃に設定した恒温槽内に72時間静置した。次いで、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下で、静置後の3枚の評価用粘着シート片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、それぞれ別のステンレス板(SUS板)〔商品名:SUS304(BA)、(株)パルテック〕の面に、重ねて貼り合わせた後、2kgのゴムローラーを1往復させて圧着することにより、積層体を作製した。作製した積層体は、粘着フィルム片(基材/粘着剤層)/SUS板の積層構造を有する。次いで、得られた積層体を、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に24時間静置し、3個の試験片を作製した。
3個の試験片について、SUS板から粘着フィルム片(基材/粘着剤層)を長辺(150mm)方向に180°剥離した場合の粘着力(単位:N/25mm)を、シングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225、(株)エー・アンド・デイ〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。測定した値は、算術平均した後、小数点以下2桁目を四捨五入した。そして、得られた値を熱処理後の粘着力とし、評価に用いた。結果を表3及び表4に示す。
【0152】
(3)維持率の算出
初期の粘着力及び熱処理後の粘着力から、下記の式に基づき、粘着力の維持率(単位:%)を算出した。なお、算出値は、小数点以下1桁目を四捨五入し、粘着力の維持率の評価に用いた。
粘着力の維持率(単位:%)=[熱処理後の粘着力(単位:N/25mm)/初期の粘着力(単位:N/25mm)]×100
【0153】
評価基準は、下記のとおりである。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題がないと判断した。
結果を表3及び表4に示す。
【0154】
-評価基準-
A:粘着力の維持率が70%以上である。
B:粘着力の維持率が50%以上70%未満である。
C:粘着力の維持率が50%未満である。
【0155】
3.糊残り
実施例1~実施例19、比較例1~比較例9、及び比較例11の各粘着シートについて、長期間使用した場合における糊残りの評価を行った。なお、比較例10の粘着シートについては、架橋反応が進行していないことが確認されたため、評価を行わなかった。
まず、長期間使用した粘着シートの糊残りを評価するための加熱促進試験を行った。
粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を3枚準備した。次いで、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下で、3枚の評価用粘着シート片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、それぞれ別のアルキドメラミン白色塗装板(以下、単に「塗装板」と称する。)の面に、重ねて貼り合わせた後、2kgのゴムローラーを1往復させて圧着することにより、積層体を作製した。作製した積層体は、粘着フィルム片(基材/粘着剤層)/塗装板の積層構造を有する。次いで、作製した積層体を、80℃に設定した恒温槽内に168時間静置した後、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に24時間静置し、3個の試験片を作製した。
加熱促進試験後の3個の試験片について、シングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225、(株)エー・アンド・デイ〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で、塗装板から粘着フィルム片(基材/粘着剤層)を長辺(150mm)方向に180°剥離し、剥離後の塗装板の表面を目視にて観察した。
【0156】
評価基準は、下記のとおりである。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題がないと判断した。
結果を表3及び表4に示す。
【0157】
-評価基準-
A:3個の試験片の全てにおいて、塗装板の表面に糊残りが全く確認されなかった。
B:3個の試験片のいずれかにおいて、塗装板の表面の一部に糊残りが確認された。
C:3個の試験片のいずれかにおいて、塗装板の表面全体に糊残りが確認された。
【0158】
4.耐熱性
実施例1~実施例19、及び比較例1~比較例11の各粘着シートについて、耐熱性の評価を行った。
粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を3枚準備した。この準備した3枚の評価用粘着シート片を、200℃に設定したギアオーブン内に静置した。そして、ギアオーブン内に静置した評価用粘着シート片を、10分ごとに目視にて観察し、3枚の評価用粘着シート片のうち、少なくとも1枚の評価用粘着シート片について黄変が確認されるまでの時間を測定した。そして、得られた値を黄変するまでの時間とし、耐熱性の評価に用いた。
【0159】
評価基準は、下記のとおりである。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題がないと判断した。
結果を表3及び表4に示す。
【0160】
-評価基準-
A:黄変するまでの時間が100分以上である。
B:黄変するまでの時間が50分以上100分未満である。
C:黄変するまでの時間が50分未満である。
【0161】
5.透明性
実施例1~実施例19、及び比較例1~比較例11の各粘着シートについて、透明性の評価を行った。
粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を3枚準備した。この準備した3枚の評価用粘着シート片から剥離フィルムを剥離し、ヘイズメーター〔型番:NDH 5000SP、日本電色工業(株)〕を用いて、ヘイズ(単位:%)を測定した。測定した値は、算術平均した後、小数点以下2桁目を四捨五入した。そして、得られた値を透明性の評価に用いた。
【0162】
評価基準は、下記のとおりである。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題がないと判断した。
結果を表3及び表4に示す。
【0163】
-評価基準-
A:ヘイズが3.0%未満である。
B:ヘイズが3.0%以上5.0%未満である。
C:ヘイズが5.0%以上である。
【0164】
【0165】
【0166】
表4中、「-」は、その欄に該当する測定及び評価を行わなかったことを意味する。
【0167】
表3に示すように、実施例1~実施例19の粘着シートは、熱処理後においても良好な粘着力が維持されることが確認された。また、実施例1~実施例19の粘着シートは、長期間使用した場合でも剥離の際に被着体への糊残りが生じ難いことが確認された。また、実施例1~実施例19の粘着シートは、耐熱性及び透明性に優れることが確認された。
【0168】
一方、表4に示すように、金属キレート系架橋剤以外の架橋剤を用いて形成された粘着剤層を備える比較例1及び比較例2の粘着シートは、熱処理後に粘着力が顕著に低下し、熱処理前の粘着力を良好に維持できないことが確認された。
エポキシ基を有する樹脂を含まない基材を備える比較例3の粘着シートは、長期間使用すると剥離の際に被着体への糊残りが生じやすいことが確認された。また、比較例3の粘着シートは、実施例の粘着シートと比較して、耐熱性が劣ることが確認された。
ポリエステル系可塑剤を含まない基材を備える比較例4の粘着シートは、熱処理後に粘着力が顕著に低下し、熱処理前の粘着力を良好に維持できないことが確認された。
塩化ビニル系樹脂100グラムに対するエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が、0.005モル未満である基材を備える比較例5の粘着シートは、実施例の粘着シートと比較して、耐熱性が劣ることが確認された。
塩化ビニル系樹脂100グラムに対するエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が、0.05モルを超える基材を備える比較例6の粘着シートは、実施例の粘着シートと比較して、透明性が劣ることが確認された。
エポキシ基を有する樹脂の代わりにエポキシ化大豆油を含む基材を備える比較例7の粘着シートは、熱処理後に粘着力が顕著に低下し、熱処理前の粘着力を良好に維持できないことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対する金属キレート系架橋剤の含有量が、0.1質量部未満である粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える比較例8の粘着シートは、熱処理後に粘着力が顕著に低下し、熱処理前の粘着力を良好に維持できないことが確認された。また、比較例8の粘着シートは、長期間使用すると剥離の際に被着体への糊残りが生じやすいことが確認された。比較例8の粘着シートにおいて、糊残りが生じやすい理由としては、粘着剤層の架橋が不十分であり、長期間の使用により粘着剤層の凝集力が低下したためと推測される。
(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対する金属キレート系架橋剤の含有量が、2.0質量部を超える粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える比較例9の粘着シートは、長期間使用すると剥離の際に被着体への糊残りが生じやすいことが確認された。比較例9の粘着シートにおいて、糊残りが生じやすい理由としては、金属キレート系架橋剤が多すぎることで、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のカルボキシ基が、金属キレート系架橋剤と必要以上に架橋反応し、基材と粘着剤層との界面において基材中のエポキシ基と反応するカルボキシ基が少なくなり、基材と粘着剤層との密着性が十分に得られないためと推測される。
カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まない(メタ)アクリル系共重合体と金属キレート系架橋剤とを含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える比較例10の粘着シートは、架橋が進行せず、粘着力及び糊残りの評価を行うことができなかった。
カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まない(メタ)アクリル系共重合体とイソシアネート系架橋剤と架橋触媒とを含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える比較例11の粘着シートは、熱処理後に粘着力が顕著に低下し、熱処理前の粘着力を良好に維持できないことが確認された。