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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】タイヤ成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/72 20060101AFI20240328BHJP
   B29D 30/22 20060101ALI20240328BHJP
   B60C 13/02 20060101ALN20240328BHJP
   B60C 13/00 20060101ALN20240328BHJP
【FI】
B29D30/72
B29D30/22
B60C13/02
B60C13/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020134982
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030764
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 謙介
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-176029(JP,A)
【文献】特開2006-305891(JP,A)
【文献】特開2010-76218(JP,A)
【文献】特開2016-88030(JP,A)
【文献】特開2014-4929(JP,A)
【文献】特開2006-103458(JP,A)
【文献】特開2007-131110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/20-30/22
B29D 30/28-30/30
B29D 30/72
B60C 13/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫成型後の空気入りタイヤにおいてタイヤサイド部を構成するサイドゴムを、第1ゴムと第2ゴムとに分割して準備し、
前記第1ゴムを、成形ドラムに巻き付け、
前記第2ゴムを、前記成形ドラムに巻き付けられた前記第1ゴムに対して、前記成形ドラムの中心軸方向において端部を重複させつつ積層するように、前記成形ドラムに巻き付けて、円筒状のカーカスバンドを形成し、
前記カーカスバンドをタイヤ径方向に膨出させて、外周側に配置されたトレッドバンドの内周面に結合させてグリーンタイヤを形成し、
前記グリーンタイヤにおいて、前記第1ゴムおよび前記第2ゴムが積層された積層部によって、前記加硫成型後の空気入りタイヤにおいて前記タイヤサイド部の外表面からタイヤ幅方向外側に突出する凸部に対応する部分の、ゴムボリュームを増大させる、タイヤ成形方法。
【請求項2】
前記第1ゴムは、前記成形ドラムの軸方向において、前記第2ゴムに対して重複する側の端部に、当該端部に向かって厚みが漸減する第1厚み漸減部を有し、
前記第2ゴムは、前記成形ドラムの軸方向において、前記第1ゴムに対して重複する側の端部に、当該端部に向かって厚みが漸減する第2厚み漸減部を有している、
請求項1に記載のタイヤ成形方法。
【請求項3】
前記第1厚み漸減部と、前記第2厚み漸減部とは、前記成形ドラムの軸方向における位置が重複していない、
請求項2に記載のタイヤ成形方法。
【請求項4】
前記成形ドラムの軸方向において、前記第1厚み漸減部および前記第2厚み漸減部の長さは、前記積層部の長さの30%以上70%以下である、
請求項2に記載のタイヤ成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤサイド部(例えばバットレス部)にトラクション要素および/またはデザイン要素として外表面からタイヤ幅方向外側に突出する凸部が形成された、空気入りタイヤが知られている。このような空気入りタイヤを製造する場合、上記空気入りタイヤを製造するためのグリーンタイヤにおいて、タイヤサイド部のうち上記凸部に対応する部分のゴムボリュームを増大させることを要する。
【0003】
特許文献1には、タイヤサイド部に凸部を備える空気入りタイヤの製造方法が開示されており、該方法によれば、まず、カーカスバンドをタイヤ径方向に膨出させて、トレッドバンドの内径部に付着させることによりグリーンタイヤを成形する。次いで、グリーンタイヤのタイヤサイド部に追加のゴム部材を巻き付けて環状凸部を形成することによって、空気入りタイヤにおける凸部に対応する部分のゴムボリュームを増大させ、該グリーンタイヤを加硫成型することによって、タイヤサイド部に凸部を備えた空気入りタイヤが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-039961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、成形されたグリーンタイヤのタイヤサイド部に追加のゴム部材を巻き付けることを要するが、タイヤサイド部は湾曲しているため、該湾曲に沿うように追加のゴム部材を貼り付けるのは容易ではない。
【0006】
本発明は、タイヤサイド部に凸部を備えた空気入りタイヤを成型するための、グリーンタイヤを容易に成形できる、タイヤ成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
加硫成型後の空気入りタイヤにおいてタイヤサイド部を構成するサイドゴムを、第1ゴムと第2ゴムとに分割して準備し、
前記第1ゴムを、成形ドラムに巻き付け、
前記第2ゴムを、前記成形ドラムに巻き付けられた前記第1ゴムに対して、前記成形ドラムの中心軸方向において端部を重複させつつ積層するように、前記成形ドラムに巻き付けて、円筒状のカーカスバンドを形成し、
前記カーカスバンドをタイヤ径方向に膨出させて、外周側に配置されたトレッドバンドの内周面に結合させてグリーンタイヤを形成し、
前記グリーンタイヤにおいて、前記第1ゴムおよび前記第2ゴムが積層された積層部によって、前記加硫成型後の空気入りタイヤにおいて前記タイヤサイド部の外表面からタイヤ幅方向外側に突出する凸部に対応する部分の、ゴムボリュームを増大させる、タイヤ成形方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、第2ゴムを、第1ゴムに対して、成形ドラムの中心軸方向において端部を重複させつつ積層させながら成形ドラムに巻き付けることによって、サイドゴムの厚みを積層部において容易に増大させることができる。第1ゴムおよび第2ゴムを、成形ドラムに巻き付けるので、グリーンタイヤの湾曲に沿わせて追加ゴム部材を巻き付ける場合に比して巻き付けやすく、タイヤサイド部のゴムボリュームを増大させたグリーンタイヤを容易に成形できる。
【0009】
また、サイドゴムを一体的に押し出し成型する場合、ゴムボリュームが大きくなると、口金より押し出されるゴム量にバラツキが生じやすく、サイドゴムの幅方向寸法にバラつきが生じやすい。サイドゴムの幅方向寸法のバラつきは、製造される空気入りタイヤにおける周方向における質量アンバランスの増大に至る。
【0010】
これに対し、本発明では、サイドゴムを第1ゴムと第2ゴムとに分割することによって、それぞれのゴムボリュームが小さくなる。この結果、サイドゴムを一体的に押し出し成型する場合に比して、第1ゴムおよび第2ゴムを口金から安定して押し出しやすく、幅方向寸法におけるバラつきを低減できる。よって、第1ゴムおよび第2ゴムを用いて製造される空気入りタイヤでは、第1ゴムおよび第2ゴムのタイヤ周方向における質量のバラつきが抑制されるので周方向における質量アンバランスを低減できる。
【0011】
また、サイドゴムを一体的に形成する場合に、押し出し速度を低減することによって押し出されるゴム量のバラつきを低減しようとすると生産性が悪化する。これに対して、本発明によれば、第1ゴムおよび第2ゴムはゴムボリュームが、これらが一体的に形成されるサイドゴムよりも小さいので、押し出し速度を低減しなくても、口金から第1ゴムおよび第2ゴムを安定して押し出しやすい。よって、生産性の悪化が抑制される。
【0012】
さらに、例えば、第1ゴムと第2ゴムとの成形ドラムの中心軸方向における重複量を調整することによって、積層部の大きさを調整できると共に、サイドゴムのタイヤ径方向の長さを調整できる。
【0013】
さらにまた、第1ゴムを成形ドラムに巻き付けたときの貼り始め端部と貼り終わり端部とを接合する第1ジョイント部と、第2ゴムを成形ドラムに巻き付けたときの貼り始め端部と貼り終わり端部とを接合する第2ジョイント部とを、例えば、成形ドラムの周方向における異なる位相で形成することによって、質量が増大しやすいジョイント部をタイヤ周方向に分散させることができる。よって、周方向における質量アンバランスをさらに低減できる。
【0014】
前記第1ゴムは、前記成形ドラムの軸方向において、前記第2ゴムに対して重複する側の端部に、当該端部に向かって厚みが漸減する第1厚み漸減部を有し、
前記第2ゴムは、前記成形ドラムの軸方向において、前記第1ゴムに対して重複する側の端部に、当該端部に向かって厚みが漸減する第2厚み漸減部を有していてもよい。
【0015】
本構成によれば、第1ゴムおよび第2ゴムは、互いに重複する側の端部に、第1厚み漸減部および第2厚み漸減部をそれぞれ有している。これによって、積層部における急激な厚みの増大が抑制されるので、該急激な厚みの変化に起因したエア入りが抑制される。
【0016】
前記第1厚み漸減部と、前記第2厚み漸減部とは、前記成形ドラムの軸方向における位置が重複していなくてもよい。
【0017】
本構成によれば、積層部において、厚みの急激な変化を抑制しつつゴムボリュームを効率的に増大させることができる。
【0018】
前記成形ドラムの軸方向において、前記第1厚み漸減部および前記第2厚み漸減部の長さは、前記積層部の長さの30%以上70%以下であってもよい。
【0019】
本構成によれば、第1厚み増減部および第2厚み増減部を長く形成することができ、より一層、厚みの急激な変化を抑制しつつゴムボリュームを増大させることができる。第1厚み漸減部および/または第2厚み漸減部の長さが、積層部の長さの30%より短いと、第1厚み漸減部および/または第2厚み漸減部において厚みが急激に変化しやすく、加硫成型されてなる空気入りタイヤにおいてエア入り不具合に至りやすい。また、第1厚み漸減部および/または第2厚み漸減部の長さが、積層部の長さの70%より長いと、第1厚み漸減部および第2厚み漸減部が、成形ドラムの中心軸方向における位置が重複する領域が広くなり、積層部における厚みを効率的に増大させにくい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、タイヤサイド部に突起を備えた空気入りタイヤを成型するための、グリーンタイヤを容易に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るカーカスバンド成形工程の一つを概念的に示す図。
図2図1に対して、第1ゴムを巻き付ける工程を概念的に示す図。
図3図2に対して、さらに第2ゴムを巻き付ける工程を概念的に示す図。
図4】カーカスバンドをトレッドバンドに結合させて、グリーンタイヤを成形する工程を概念的に示す図。
図5】グリーンタイヤを加硫成形して製造される空気入りタイヤを示す図。
図6】変形例に係るグリーンタイヤを示す図。
図7】変形例に係るカーカスバンドを示す図。
図8】さらなる変形例に係るカーカスバンドを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0023】
図1図3は、本発明の一実施形態に係るタイヤ成形方向のうち、カーカスバンド成形工程を概念的に示す図である。図1を参照して、まず、円筒状の第1成形ドラムD1の外周面にインナーライナ11が円筒状に巻き付けられている。以下の説明では、第1成形ドラムD1について、中心軸方向をドラム軸方向ADと称し、径方向をドラム径方向RDと称する。また、図1および他の図においては、第1成形ドラムD1、第2成形ドラムD2(図4参照)、カーカスバンド30(図3,4参照)、トレッドバンド40(図4参照)、グリーンタイヤ50(図4参照)、および空気入りタイヤ60(図5参照)は径方向の一方側のみ示されている。
【0024】
インナーライナ11の外周面にカーカスプライ12が円筒状に巻き付けられている。カーカスプライ12は、本実施形態では1枚であり、平行に配設された複数本のカーカスコードがトッピングゴムで被覆されて構成されている。
【0025】
カーカスプライ12の外周面には一対の環状のビード13が組み付けられている。一対のビード13は、カーカスプライ12の外周面のうち、ドラム軸方向ADの両側に離間してそれぞれ位置している。ビード13は、鋼線等の収束体をゴム被覆してなるビードコア14と、ビードコア14の外周面に貼り付けられた断面略三角形状をなす硬質ゴム製のビードフィラー15とを含んでいる。
【0026】
カーカスプライ12のうち一対のビード13よりもドラム軸方向ADの外側に位置する両側部は、一対のビード13の周りに内側に折り返されて、折り返し部12aが形成されている。
【0027】
次に、図2図3に示されるように、カーカスプライ12の外周面のうちドラム軸方向ADの両側部に、空気入りタイヤ60におけるタイヤサイド部62(図5参照)を構成する一対のサイドゴム20が円筒状にさらに巻き付けられて、カーカスバンド30が形成される。本実施形態では、サイドゴム20は、ドラム軸方向ADにおいて、内側に位置する第1ゴム21と、外側に位置する第2ゴム22とに二分割されている。
【0028】
図2に示されるように、まず、一対の第1ゴム21が、カーカスプライ12の外周面に円筒状に巻き付けられる。次いで、図3に示されるように、一対の第2ゴム22が、第1ゴム21に対して、ドラム軸方向ADの外側にずらしつつドラム軸方向ADにおける位置が部分的に重複するように、カーカスプライ12の外周面に円筒状に巻き付けられる。具体的には、第2ゴム22のドラム軸方向ADの内側に位置する内端部28が、第1ゴム21のドラム軸方向ADの外側に位置する外端部27に対して、径方向外側から覆うように巻き付けられている。
【0029】
図2に示されるように、第1ゴム21は、不図示の押し出し成型機により、ベルト下ゴム23と第1サイドウォールゴム24とが一体的に押し出されて断面略台形状に成形されている。ドラム軸方向ADにおいて、ベルト下ゴム23は内側に位置しており、第1サイドウォールゴム24は外側に位置している。
【0030】
ドラム軸方向ADにおいて、第1ゴム21は、第2ゴム22に対して重複する側の端部、すなわち外端部27に、ドラム軸方向ADの外側に向かってドラム径方向RDにおける厚みが漸減する第1厚み漸減部27aと、第1厚み漸減部27aに対してドラム軸方向ADの内側に連続しており厚みT1が略一定となる第1厚み一定部27bとを有している。第1厚み漸減部27aおよび第1厚み一定部27bは、第1サイドウォールゴム24に形成されている。
【0031】
図3に示されるように、第2ゴム22は、不図示の押し出し成型機により、第2サイドウォールゴム25とリムストリップゴム26とが一体的に押し出されて断面略台形状に成形されている。ドラム軸方向ADにおいて、第2サイドウォールゴム25は内側に位置しており、リムストリップゴム26は外側に位置している。第2サイドウォールゴム25は、第1サイドウォールゴム24と同じゴム材料である。
【0032】
ドラム軸方向ADにおいて、第2ゴム22は、第1ゴム21に対して重複する側の端部、すなわち内端部28に、ドラム軸方向ADの内側に向かってドラム径方向RDにおける厚みが漸減する第2厚み漸減部28aと、第2厚み漸減部28aに対してドラム軸方向ADの外側に連続しており厚みT2が略一定となる第2厚み一定部28bとを有している。第2厚み漸減部28aおよび第2厚み一定部28bは、第2サイドウォールゴム25に形成されている。
【0033】
図3の拡大図に示されるように、本実施形態では、第2ゴム22は、第2厚み漸減部28aが、第1厚み漸減部27aに対してドラム軸方向ADの位置が重複しないように、巻き付けられている。第1ゴム21と第2ゴム22とがドラム径方向RDに積層された積層部20aでは、ドラム軸方向ADにおいて、第1厚み漸減部27aが外側に位置しており、第2厚み漸減部28aが内側に位置している。すなわち、積層部20aのドラム軸方向ADにおける長さL0は、ドラム軸方向ADにおける第1厚み漸減部27aの外端点P1から第2厚み漸減部28aの内端点P2までの長さに相当する。
【0034】
また、積層部20aのドラム径方向RDにおける厚みT0は、第1厚み一定部27bの厚みT1と、第2厚み一定部28bの厚みT2との合計に相当する。
【0035】
すなわち、第1厚み漸減部27aおよび第2厚み漸減部28aのドラム軸方向ADにおける位置を適宜調整することによって、積層部20aを所望の長さL0に調整できると共に、サイドゴム20を所望の長さL3に調整できる。また、第1厚み一定部27bの厚みT1と第2厚み一定部28bの厚みT2とを適宜調整することによって、積層部20aの厚みT0を所望の厚さに調整できる。
【0036】
第1厚み漸減部27aおよび第2厚み漸減部28aは、ドラム軸方向ADの長さL1,L2が積層部20aの長さL0の30%以上70%以下となるように形成されている。
【0037】
本実施形態では、第1厚み漸減部27aと第2厚み漸減部28aとは、ドラム軸方向ADにおける位置が連続するように構成されている。すなわち、積層部20aは、ドラム軸方向ADにおいて第1厚み漸減部27aと第2厚み漸減部28aとが連続する位置P3において、厚みT0が最も厚くなり、位置P3からドラム軸方向ADの両側に離間するにつれて、厚みT0が漸減する。よって、積層部20aは、ドラム径方向RDの外側に三角形状に突出するように形成される。
【0038】
また、本実形態では、第1厚み漸減部27aおよび第2厚み漸減部28aは、ドラム軸方向ADにおける長さL1,L2が概ね等しく、ドラム径方向RDにおける厚みT1,T2が概ね等しくなるように形成されている。これによって、積層部20aを、位置P3を中心としてドラム軸方向ADの両側に向かってドラム径方向RDの内側へ略同じ角度で傾斜させることができるので、いずれか一方側において急角度になることが防止されている。また、厚みT1および厚みT2が概ね等しいので、第1ゴム21および第2ゴム22はいずれか一方が過度に厚くなることを抑制しやすく、押し出し成型しやすい。
【0039】
また、本実施形態では、第1ゴム21と第2ゴム22とは、ドラム軸方向ADにおける長さL4,L5が概ね同一となるように形成されている。これにより、第1ゴム21および第2ゴム22の一方が過大になることが抑制されるので、第1ゴム21および第2ゴム22を両方ともに、容易に押し出し成型により形成しやすい。なお、第1ゴム21および第2ゴム22の長さL4,L5は、それぞれ成形ドラムD1に巻き付けられる前の帯状部材での幅方向寸法を意味している。好ましくは、第1ゴム21の長さL4および第2ゴム22の長さL5はそれぞれ、L4とL5とを合計した合計長さの30%以上70%以下に設定するのが好ましい。長さL4およびL5の一方が、上記合計長さの30%未満(この場合、他方は70%を超える)となると、第1ゴム21および第2ゴム22において所定量必要であるベルト下ゴム23またはリムストリップゴム26の必要量を考慮すると、第1ゴム21に占める第1サイドウォールゴム24の量、または第2ゴム22に占める第2サイドウォールゴム25の量が不足する。
【0040】
次に、図4に示されるように、カーカスバンド30を第2成形ドラムD2に移載すると共に、この外周側に、カーカスバンド30に対して同心状にトレッドバンド40を配置する。トレッドバンド40は、第1ベルト41と、第2ベルト42と、トレッドゴム43とが、順に巻回されて成形されている。第2成形ドラムD2において、カーカスバンド30のうち一対のビード13の間に位置する部分を径方向外側に膨出させて、トレッドバンド40の内周面に結合させることによって、グリーンタイヤ50が形成される。
【0041】
次いで、グリーンタイヤ50を、不図示のタイヤ加硫金型において加硫成型することによって、空気入りタイヤ60(図5参照)が成型される。
【0042】
図5に示されるように、空気入りタイヤ60は、トレッド部61と、トレッド部61のタイヤ幅方向の外端部からタイヤ径方向内側に延びるタイヤサイド部62と、タイヤサイド部62のタイヤ径方向内端部に設けられたビード部63とを有する。
【0043】
タイヤサイド部62は、カーカスプライ12およびビード13のタイヤ幅方向外側に位置する部分が、サイドゴム20が加硫成型されて構成されている。タイヤサイド部62には、外表面62aからタイヤ径方向外側に突出する複数の凸部62b(図5の拡大図においては1つのみ示す)がタイヤ周方向に断続的に成型されている。凸部62bは、グリーンタイヤ50における積層部20a(図4参照)に対応する径方向位置に形成されている。
【0044】
本実施形態に係るタイヤ成形方法によれば、以下の作用効果を奏する。
【0045】
(1)第2ゴム22を、第1ゴム21の外端部27に対して、内端部28をドラム軸方向ADに重複させつつ積層させながら第1成形ドラムD1に巻き付けることによって、サイドゴム20の厚みを積層部20aにおいて容易に増大させることができる。第1ゴム21および第2ゴム22を、第1成形ドラムD1に巻き付けるので、グリーンタイヤ50の湾曲に沿わせて追加ゴム部材を巻き付ける場合に比して巻き付けやすく、タイヤサイド部52のゴムボリュームを増大させたグリーンタイヤ50を容易に成形できる。
【0046】
また、サイドゴム20を一体的に押し出し成型する場合、ゴムボリュームが大きくなると、口金より押し出されるゴム量にバラツキが生じやすく、サイドゴム20の幅方向寸法にバラつきが生じやすい。サイドゴム20の幅方向寸法のバラつきは、製造される空気入りタイヤ60における周方向における質量アンバランスの増大に至る。
【0047】
これに対し、上記実施形態では、サイドゴム20を第1ゴム21と第2ゴム22とに二分割することによって、それぞれのゴムボリュームが小さくなる。この結果、サイドゴム20を一体的に押し出し成型する場合に比して、第1ゴム21および第2ゴム22を口金から安定して押し出しやすく、幅方向寸法におけるバラつきを低減できる。よって、第1ゴム21および第2ゴム22を用いて製造される空気入りタイヤ60では、第1ゴム21および第2ゴム22のタイヤ周方向における質量のバラつきが抑制されるので周方向における質量アンバランスを低減できる。
【0048】
また、サイドゴム20を一体的に形成する場合に、押し出し速度を低減することによって押し出されるゴム量のバラつきを低減しようとすると生産性が悪化する。これに対して、上記実施形態では、第1ゴム21および第2ゴム22はゴムボリュームが、これらが一体的に形成されるサイドゴムよりも小さいので、押し出し速度を低減しなくても、口金から第1ゴム21および第2ゴム22を安定して押し出しやすい。よって、生産性の悪化が抑制される。
【0049】
さらに、例えば、第1ゴム21と第2ゴム22とのドラム軸方向ADにおける重複量を調整することによって、積層部20aの大きさを調整できると共に、サイドゴム20のタイヤ径方向の長さを調整できる。
【0050】
さらにまた、第1ゴム21を第1成形ドラムD1に巻き付けたときの貼り始め端部と貼り終わり端部とを接合する第1ジョイント部と、第2ゴム22を第1成形ドラムD1に巻き付けたときの貼り始め端部と貼り終わり端部とを接合する第2ジョイント部とを、例えば、第1成形ドラムD1の周方向における異なる位相で形成することによって、質量が増大しやすいジョイント部をタイヤ周方向に分散させることができる。よって、周方向における質量アンバランスをさらに低減できる。
【0051】
(2)第1ゴム21および第2ゴム22は、互いに重複する側の端部に、第1厚み漸減部27aおよび第2厚み漸減部28aをそれぞれ有している。これによって、積層部20aにおける急激な厚みの増大が抑制されるので、該急激な厚みの変化に起因したエア入りが抑制される。
【0052】
(3)第1厚み漸減部27aと、第2厚み漸減部28aとは、ドラム軸方向ADにおける位置が重複していないので、積層部20aにおいて、厚みの急激な変化を抑制しつつゴムボリュームを効率的に増大させることができる。
【0053】
(4)ドラム軸方向ADにおいて、第1厚み漸減部27aおよび第2厚み漸減部28aの長さL1,L2は、積層部20aの長さL0の30%以上70%以下であるので、第1厚み漸減部27aおよび第2厚み漸減部28aを長く形成することができ、より一層、厚みの急激な変化を抑制しつつゴムボリュームを増大させることができる。
【0054】
第1厚み漸減部27aおよび/または第2厚み漸減部28aの長さL1,L2が、積層部20aの長さL0の30%より短いと、第1厚み漸減部27aおよび/または第2厚み漸減部28aにおいて厚みが急激に変化しやすく、加硫成型されてなる空気入りタイヤにおいてエア入り不具合に至りやすい。また、第1厚み漸減部27aおよび/または第2厚み漸減部28aの長さが、積層部20aの長さL0の70%より長いと、第1厚み漸減部27aおよび第2厚み漸減部28aが、ドラム軸方向ADにおける位置が重複する領域が広くなり、積層部20aにおける厚みを効率的に増大させにくい。
【0055】
上記実施形態では、第1ゴム21の外端部27に対して、ドラム径方向RDの外側に第2ゴム22の内端部28を積層させる場合を例にとって説明したが、これに限らない。図6に示されるように、第2ゴム22の内端部28に対して、第1ゴム21の外端部27をドラム径方向RDの外側から積層させるように、第1ゴム21および第2ゴム22を第1成形ドラムD1に巻き付けるようにしてもよい。なお、カーカスバンド30に対してドラム軸方向ADの内側から外側へステッチャー(不図示)をかける場合、第1成形ドラムD1に第1ゴム21を巻き付けた後に第2ゴム22を巻き付けた方が、第1ゴム21と第2ゴム22との間に介在するエアを排出させやすい。一方、第1成形ドラムD1に第2ゴム22を巻き付けた後に第1ゴム21を巻き付けると、第2ゴム22の内端部28が第1ゴム21によってドラム軸方向ADの内側かつドラム径方向RDの外側から覆われるので、内端部28の周辺に介在するエアが排出されにくい。したがって、カーカスバンド30にステッチングする場合には、図3に示されるように、第1成形ドラムD1に第1ゴム21を巻き付けた後に第2ゴム22を巻き付けるほうが好ましい。
【0056】
また、上記実施形態では、第1厚み漸減部27aおよび第2厚み漸減部28aが、ドラム軸方向ADにおける位置が連続する場合を例にとって説明したが、これに限らない。図7に示されるように、第1厚み漸減部27aおよび第2厚み漸減部28aを、ドラム軸方向ADに離間させるように、第1ゴム21および第2ゴム22を第1成形ドラムD1に巻き付けるようにしてもよい。この場合、積層部20aの長さL11およびサイドゴム20の長さL31は、上記実施形態における積層部20aの長さL0およびサイドゴム20の長さL3よりもそれぞれ長くなる。
【0057】
また、上記実施形態では、第1厚み漸減部27aおよび第2厚み漸減部28aが、ドラム軸方向ADにおける位置が重複しないように、第1成形ドラムD1に巻き付けられている場合を例にとって説明したが、これに限らない。図8に示されるように、第1厚み漸減部27aおよび第2厚み漸減部28aを、ドラム軸方向ADにおける位置が重複するように、第1ゴム21および第2ゴム22を第1成形ドラムD1に巻き付けるようにしてもよい。この場合、積層部20aの長さL12およびサイドゴム20の長さL32は、上記実施形態における積層部20aの長さL0およびサイドゴム20の長さL3よりもそれぞれ短くなる。
【0058】
また、上記実施形態では、第1ゴム21および第2ゴム22を用いて、サイドゴム20を構成したが、このほか、3種類以上のゴム部材から複数選択して組み合わせてサイドゴムを構成するようにしてもよい。選択するゴム部材のドラム軸方向ADの長さ、厚み漸減部の厚みを種々組み合わせることによって、さまざまな形状のサイドゴムを構成することができる。これにより、サイドゴムそれぞれを押し出し成型するための専用の口金を設けることを不要にできる。
【0059】
また、上記実施形態では、カーカスプライ12の折り返し部12aに対して、ドラム径方向RDの外側から、第1ゴム21および第2ゴム22を巻き付ける場合を例にとって説明したがこれに限らない。第1成形ドラムD1の外周面に対して、直接に第1ゴム21および第2ゴム22を巻き付けてサイドゴム20を形成し、サイドゴム20の外周面にカーカスプライを巻き付ける場合に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0060】
11 インナーライナ
12 カーカスプライ
13 ビード
20 サイドゴム
20a 積層部
21 第1ゴム
22 第2ゴム
27 外端部
27a 第1厚み漸減部
27b 第1厚み一定部
28 内端部
28a 第2厚み漸減部
28b 第2厚み一定部
30 カーカスバンド
40 トレッドバンド
50 グリーンタイヤ
60 空気入りタイヤ
62 タイヤサイド部
62b 凸部
D1 第1成形ドラム
D2 第2成形ドラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8