(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】タイヤ成形方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/20 20060101AFI20240328BHJP
B29D 30/24 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B29D30/20
B29D30/24
(21)【出願番号】P 2020139542
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 謙介
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-151763(JP,A)
【文献】特開2010-284846(JP,A)
【文献】特開2000-899(JP,A)
【文献】特開平2-70425(JP,A)
【文献】国際公開第2007/135720(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に移動可能に構成された、複数の第1セグメントと複数の第2セグメントとを有し、前記複数の第1セグメントのそれぞれと前記複数の第2セグメントのそれぞれとが周方向に交互に配置されたバンド成形ドラムを準備し、
前記複数の第1セグメントと前記複数の第2セグメントとを貼付け位置に移動させ、
前記バンド成形ドラムの外周面にバンド部材を貼付けてカーカスバンドを成形し、
ビード部材の径方向内側に前記カーカスバンドを移載し、
前記複数の第1セグメントと前記複数の第2セグメントとを、前記貼付け位置よりも径方向外側に位置する圧着位置に移動させることによって前記バンド成形ドラムを拡径させて、
前記カーカスバンドを前記ビード部材に圧着してビード付きバンド体を成形し、
前記複数の第1セグメントと前記複数の第2セグメントとを、前記貼付け位置よりも径方向内側に位置する剥離位置に移動させることによって前記バンド成形ドラムを縮径させて、
前記バンド成形ドラムから前記ビード付きバンド体を離脱させる
ことを含み、
前記カーカスバンドの成形から前記ビード付きバンド体の離脱までの間において、前記成形ドラムの拡縮動作を複数回実施し、
1回の前記拡縮動作は、
前記移載時に、前記貼付け位置に位置する前記複数の第1セグメント及び前記複数の第2セグメントの、一方を前記剥離位置に移動させた後に前記貼付け位置にもどし、他方を前記剥離位置に移動させた後に前記貼付け位置にもどす、移載時拡縮動作と、
前記圧着時に、前記圧着位置に位置する前記複数の第1セグメント及び前記複数の第2セグメントの、一方を前記剥離位置に移動させた後に前記圧着位置にもどし、他方を前記剥離位置に移動させた後に前記圧着位置にもどす、圧着時拡縮動作と、
のうちの少なくとも一方を含むタイヤ成形方法。
【請求項2】
前記圧着時拡縮動作を2回実施し、1回目の拡縮動作を2回目の拡縮動作よりも遅い速度で実施する請求項1に記載のタイヤ成形方法。
【請求項3】
前記移載時拡縮動作を1回実施し、前記圧着時拡縮動作を2回実施する請求項1又は請求項2に記載のタイヤ成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリーンタイヤは以下のように成形する。カーカスプライ等のバンド部材を第1成形ドラムに巻き付けてカーカスバンドを成形し、カーカスバンドの軸方向の両端部に一対のビードを組付けてビード付きバンド体を成形する。一方で、ベルト、トレッドゴム等のバンド部材を第2成形ドラムに巻き付けてトレッドバンドを成形する。
【0003】
次いで、ビード付きバンド体及びトレッドバンドを外周から把持した状態で第1及び第2成形ドラムからそれぞれ剥離させ、各移送手段によってビード付きバンド体の外径側にトレッドバンドが位置するように第3成形ドラムに移送する。そして、第3成形ドラムでは、ビード付きバンド体を径方向外側に膨出させてトレッドバンドの内周部に結合させ、カーカスバンドにおける一対のビードが組付けられた部分よりも軸方向外側の部分を、ビードを包み込むように折り返す(ターンアップする)ことによって、グリーンタイヤが成形される。
【0004】
特許文献1に開示された成形ドラムは、ビード付きバンド体を成形ドラムから離脱させるための構成を備えている。この成形ドラムは、周方向交互に配設された2種類の複数のセグメント(第1及び第2セグメント)により構成され、各セグメントは径方向に移動可能に設けられている。成形ドラムからビード付きバンド体を移送する際には、第1セグメントをバンド部材が貼付けられる貼付け位置よりも縮径させた後に、一旦貼付け位置(拡径状態)に戻す。次に、第2セグメントを縮径させる。これらの動作によりビード付きバンド体を成形ドラム外周面から剥離した後、第1及び第2セグメントの両方を縮径状態にしてビード付きバンド体を成形ドラムから離脱させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ビード付きバンド体は未加硫のゴム材であって、ビード付きバンド体の内周面が各セグメントの外周面に密着しやすいため、ビード付きバンド体を成形ドラムから容易に離脱させるためには改善の余地がある。
【0007】
本発明は、周方向に配設された複数のセグメントを備えた成形ドラムによって成形されたビード付きバンド体の当該成形ドラムからの離脱を容易にするタイヤ成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、径方向に移動可能に構成された、複数の第1セグメントと複数の第2セグメントとを有し、前記複数の第1セグメントのそれぞれと前記複数の第2セグメントのそれぞれとが周方向に交互に配置されたバンド成形ドラムを準備し、前記複数の第1セグメントと前記複数の第2セグメントとを貼付け位置に移動させ、前記バンド成形ドラムの外周面にバンド部材を貼付けてカーカスバンドを成形し、ビード部材の径方向内側に前記カーカスバンドを移載し、前記複数の第1セグメントと前記複数の第2セグメントとを、前記貼付け位置よりも径方向外側に位置する圧着位置に移動させることによって前記バンド成形ドラムを拡径させて、前記カーカスバンドを前記ビード部材に圧着してビード付きバンド体を成形し、前記複数の第1セグメントと前記複数の第2セグメントとを、前記貼付け位置よりも径方向内側に位置する剥離位置に移動させることによって前記バンド成形ドラムを縮径させて、前記バンド成形ドラムから前記ビード付きバンド体を離脱させることを含み、前記カーカスバンドの成形から前記ビード付きバンド体の離脱までの間において、前記成形ドラムの拡縮動作を複数回実施し、1回の前記拡縮動作は、前記移載時に、前記貼付け位置に位置する前記複数の第1セグメント及び前記複数の第2セグメントの、一方を前記剥離位置に移動させた後に前記貼付け位置にもどし、他方を前記剥離位置に移動させた後に前記貼付け位置にもどす、移載時拡縮動作と、前記圧着時に、前記圧着位置に位置する前記複数の第1セグメント及び前記複数の第2セグメントの、一方を前記剥離位置に移動させた後に前記圧着位置にもどし、他方を前記剥離位置に移動させた後に前記圧着位置にもどす、圧着時拡縮動作と、のうちの少なくとも一方を含むタイヤ成形方法を提供する。
【0009】
この構成によれば、第1セグメントを剥離位置に移動させるときには、第2セグメントを剥離位置よりも径方向外側の貼付け位置又は圧着位置に維持することで、第2セグメントによってカーカスバンド又はビード付きバンド体を内側から支持しながらカーカスバンド又はビード付きバンド体を第1セグメントから剥離できる。また、第2セグメントを剥離位置に移動させるときには、第1のセグメントを貼付け位置又は圧着位置に維持することでで、第1セグメントによってカーカスバンド又はビード付きバンド体を内側から支持しながらカーカスバンド又はビード付きバンド体を第1セグメントから剥離できる。この拡縮動作を複数回繰り返すことで、ビード付きバンド体材をバンド成形ドラムから離脱させやすい。
【0010】
圧着時拡縮動作が実施される場合、第1及び複数の第2セグメントは、剥離位置と圧着位置との間で移動するので、ビード部材にバンド部材を圧着しつつ、第1及び第2セグメントの径方向内側への移動によってカーカスバンドをバンド成形ドラムから剥離できる。
【0011】
移載時拡縮動作が実施される場合、第1及び第2セグメントは、剥離位置と貼付け位置との間で移動するので、必要以上にカーカスバンドを拡径させることなくカーカスバンドをバンド成形ドラムから剥離できる。また、拡縮動作を実施しながらカーカスプライが貼付けられたバンド成形ドラムをビード部材内に移載できるので、ビード付きバンド体の成形工程におけるサイクルタイムの増大を抑制できる。さらに、ビード部材に圧着される前に、拡縮動作をすることにより、ビード付きバンド体をバンド成形ドラムから剥離させやすい効果が得られる。
【0012】
前記圧着時拡縮動作を2回実施し、1回目の拡縮動作を2回目の拡縮動作よりも遅い速度で実施してもよい。
【0013】
この構成によれば、1回目の拡縮動作を遅くすることによって、バンド部材をビード部材に圧着させる時間が長くなり、バンド部材をビード部材に密着させやすい。
【0014】
前記移載時拡縮動作を1回実施し、前記圧着時拡縮動作を2回実施してもよい。
【0015】
この構成によれば、移載時拡縮動作のカーカスバンドのバンド成形ドラムからの剥離によるビード付きバンド体のバンド成形ドラムからの離脱性の向上に加え、圧着時拡縮動作によるカーカスバンドのビード部材に対する圧着性の向上及びビード付きバンド体のバンド成形ドラムからの離脱性の向上の効果が得られやすい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るタイヤ成形方法によれば、周方向に配設された複数のセグメントを備えた成形ドラムによって成形されるバンド部材を当該成形ドラムから容易に離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】カーカスプライを第1成形ドラムに巻き付ける工程を概略的に示す図。
【
図1B】ビードがカーカスバンドの径方向外側に位置するように第1成形ドラムを移載する工程を概略的に示す図。
【
図1C】トレッドを第2成形ドラムに巻き付ける工程を概略的に示す図。
【
図1D】カーカスバンドを第3成形ドラムに移送する工程を概略的に示す図。
【
図1E】トレッドバンドをカーカスバンドの径方向外側に位置するように移送する工程を概略的に示す図。
【
図1F】カーカスバンドを膨出させてシェーピングするとともにターンアップする工程を概略的に示す図。
【
図2A】第1及び第2セグメントの拡縮動作を示す模式図。
【
図2B】第1及び第2セグメントの他の拡縮動作を示す模式図。
【
図3A】第1成形ドラムにカーカスプライが巻き付けられた状態を示す模式図。
【
図3B】第1成形ドラムをビード搬送装置に移載するときの各第1及び各第2セグメントの拡縮動作を示す模式図。
【
図3C】第1成形ドラムをビード搬送装置に移載するときの各第1及び各第2セグメントの拡縮動作を示す模式図。
【
図4A】第1成形ドラムがビード搬送装置に移載された状態を示す模式図。
【
図4B】各第1及び各第2セグメントを圧着位置まで移動してカーカスバンドをビードに圧着する状態を示す模式図。
【
図5A】カーカスバンドがビードに結合される状態における各第1及び各第2セグメントの拡縮動作を示す模式図。
【
図5B】カーカスバンドがビードに結合される状態における各第1及び各第2セグメントの他の拡縮動作を示す模式図。
【
図5C】カーカスバンドが成形ドラムから剥離した状態における各第1及び各第2セグメントの拡縮動作を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0019】
図1A~
図1Fは、グリーンタイヤの成形工程を概略的に示す図である。なお、
図1A~
図1Fにおいては、各成形ドラムD1~D3の径方向の一方側のみが示されている。まず、
図1Aに示すように、第1成形ドラムD1に、インナーライナ2と、ラバーチェーファ及びサイドウォールゴムを含む一対のサイド部材3と、カーカスプライ(バンド部材)4とを順に巻き付けて、円筒状のカーカスバンド10を成形する。
【0020】
次に、
図1Bに示すように、カーカスバンド10の外周側に予めビードコアにビードフィラーを接合して成る一対のビード(ビード部材)5が配置されるように、第1成形ドラムD1を移載する。そして、第1成形ドラムD1によって移載されたカーカスバンド10を、ビード5の内周面に圧着させて、ビード付きバンド体15を成形する。ビード5は、カーカスバンド10の軸方向O1の両端部に組付けられる。一方、第2成形ドラムD2には、
図1Cに示すように、ベルト6、補強ベルト7、トレッドゴム8を順に巻き付けて、円筒状のトレッドバンド12を成形する。
【0021】
次に、
図1Dに示すように、ビード付きバンド体15を、第1成形ドラムD1から離脱させて一対の第3成形ドラムD3間に渡してこれらの外周面に保持させる。一方で、
図1Eに示すように、トレッドバンド12を第2成形ドラムD2から移送してビード付きバンド体15と同軸上且つこの径方向外側に位置するように保持する。
【0022】
ビード付きバンド体15及びトレッドバンド12の第1成形ドラムD1及び第2成形ドラムD2からの移送は、ビード付きバンド体15の外周部においてビード付きバンド体15を径方向に把持する把持装置20及びトレッドバンド12の外周部においてトレッドバンド12を径方向に把持する把持装置30により実施される。
【0023】
次に、
図1Fに示すように、一対の第3成形ドラムD3を互いに接近させながら、ビード付きバンド体15の内側に媒体を供給することによって、ビード付きバンド体15の一対のビード5の間の部分を径方向外側(矢印S)へトロイダル状に膨出させてシェーピングし、トレッドバンド12の内周部12aに結合させる。また、ビード付きバンド体15におけるビード5の配設位置よりも第3成形ドラムD3の軸方向O3外側の部分15aがそれぞれビード5を包むようにターンアップされて(矢印T参照)、グリーンタイヤが成形される。得られたグリーンタイヤを、加硫モールドに入缶し、加硫成型することにより空気入りタイヤが得られる。
【0024】
本実施形態のタイヤ成形方法は、グリーンタイヤを構成するカーカスプライ4が第1成形ドラムD1に巻き付けられてから第1成形ドラムD1からビード付きバンド体15を離脱させるまでの工程に関し、この工程について説明する。
【0025】
図2A及び
図2Bは、第1成形ドラム(バンド成形ドラム)D1を軸線方向O1から見た側面図である。
図2Aに示すように、第1成形ドラムD1の本体部1は、カーカスプライ4が巻き付けられる外周面が、第1セグメント1a及び第2セグメント1bによって構成されている。第1セグメント1a及び第2セグメント1bは、複数のセグメントによって構成されている。第1セグメント1aと、第2セグメント1bとは、周方向に交互に配設されている。以下、第1セグメント1a及び第2セグメント1bは、複数の第1セグメント及び複数の第2セグメントを意味する。
【0026】
図2Aに示すように、第1及び第2セグメント1a,1bは、例えば油圧シリンダ等を備える駆動手段40によって、第1成形ドラムD1の径方向移動可能に構成されている。第1成形ドラムD1は、第1及び第2セグメント1a,1bが径方向に移動することによって、外径が拡縮可能に構成されている。第1及び第2セグメント1a,1bは、
図3Aに示される貼付け位置A1と、
図3B及び
図3Cに示される剥離位置A21,A22と、
図4Bに示される圧着位置A3とに移動可能に構成されている。
【0027】
第1成形ドラムD1の外径は、第1及び第2セグメント1a,1bが
図2Aの実線で示す基準位置(貼付け位置)A1に位置する基準径P1と、第1及び第2セグメント1a,1bがそれぞれ基準位置A1よりも径方向内側の位置(剥離位置)A21,A22となる剥離径P21,P22(
図2A仮想線)と、第1及び第2セグメント1a,1bが基準位置A1よりも径方向外側の位置(圧着位置)A3となる圧着径P3(
図2B仮想線)との間で変更可能に構成されている。すなわち、駆動手段を制御することによって、第1成形ドラムD1の外径が剥離径P21,P22から圧着径P3までの間の任意の径に設定できるように、第1及び第2セグメント1a,1bは、移動可能に構成されている。
【0028】
基準径P1においては、各第1及び各第2セグメント1a,1bの外周部にわたって、カーカスプライ4等の複数のタイヤ構成部材が巻き付けられて、カーカスバンド10が成形される。換言すると、基準径P1は、ビード5の内径よりも小さくなるように設定されている。各第1及び各第2セグメント1a,1bに巻き付けられたカーカスバンド10は、各第1及び各第2セグメント1a,1bの外周部によって径方向内側から支持される。
【0029】
基準径P1においては、複数の第1及び複数の第2セグメント1a,1bは同一円周上に配置されている。このとき、隣接する第1セグメント1aと第2セグメント1bとは、周方向位置が重複することなく、且つ、隣接する第1セグメント1aと第2セグメント1bとの間の隙間G1が僅かとなるように設定されている。
【0030】
剥離径P21,P22においては、第1セグメント1aよりも第2セグメント1bが径方向内側に位置し、且つ、隣接する第1セグメント1aと第2セグメント1bとは周方向位置が重複するように設定されている。第1セグメント1aの剥離径P21は、第2セグメント1bの剥離径P22よりも大きく設定されている。これにより、剥離径P21,P22において、隣接し合う第1セグメント1aと第2セグメント1bとが干渉することが回避される。
【0031】
圧着径P3においては、第1セグメント1aと第2セグメント1bの間の隙間G2が基準径P1に比して大きくなる。圧着径P3は、カーカスバンド10の径方向外側に配置されるビード5の内径から圧着後のカーカスバンド10の厚みを差し引いた値と略同じ径(ビード5の内周面にカーカスバンド10が圧着され得る径)になるように設定されている。
【0032】
図3~
図5を参照しながら、本発明の一実施形態に係るタイヤ成形方法について説明する。
【0033】
まず、
図3Aに示すように第1セグメント1a及び第2セグメント1bを、同一円の外周面をなすように貼付け位置(第1成形ドラムD1の外径が基準径P1となる位置)A1に位置させる。この状態で、カーカスプライ4等のバンド部材が複数の第1及び複数の第2セグメント1a,1b(第1成形ドラムD1の外周面)に巻き付けられて、円筒状のカーカスバンド10が成形される。
【0034】
次に、
図1Bに示すように、ビード搬送装置(図示せず)によって保持された一対のビード5を、カーカスバンド10の径方向外側に位置させるように(より詳しくは、一対のビード5を、カーカスバンド10の軸方向(第1成形ドラムの軸方向O1と一致)の両端部に位置するように)、第1成形バンドD1をカーカスバンド10の一端側からビード搬送装置内に移載する。換言すると、第1成形ドラムD1に巻き付けられたカーカスバンド10が、一対のビード5が保持されているビード搬送装置(図示せず)内に移載される。このとき、第1成形ドラムD1は、第1及び第2セグメント1a,1bを径方向内外に移動させて、第1成形ドラムD1の外径を拡縮させる拡縮動作を実施しながらカーカスバンド10をビード搬送装置内に移載する、移載時拡縮動作を実施する。
【0035】
具体的には、
図3Bに示すように、移載時拡縮動作は、貼付け位置A1に位置する第1セグメント1aと第2セグメント1bのうち、第2セグメント1bを貼付け位置A1に維持した状態で、第1セグメント1aを剥離位置A21に移動させ、第1セグメント1aを再び貼付け位置A1に移動させる。その後、
図3Cに示すように、第1セグメント1aを貼付け位置A1に維持した状態で、第2セグメント1bを剥離位置A22に移動させ、第2セグメント1bを再び貼付け位置A1に移動させる。
【0036】
換言すると、移載時において、貼付け位置A1に位置する第1セグメント1aと第2セグメント1bとの一方を、剥離位置A21に移動させた後に、貼付け位置A1にもどし、貼付け位置A1に位置する第1セグメント1aと第2セグメント1bとの他方を剥離位置A21,A22に移動させた後に、貼付け位置A1にもどす。
【0037】
これにより、第1セグメント1aと第2セグメント1bとの一方は、貼付け位置A1に維持されて、カーカスバンド10を内側から支持しているので、カーカスバンド10の内方への変形を抑制でき、かつ第1セグメント1aと第2セグメント1bの他方からカーカスバンド10を容易に剥離できる。
【0038】
次いで、
図4Aに示すように、一対のビード5内に第1成型ドラムD1に巻き付けられたカーカスバンド10が配置された状態で、第1及び第2セグメント1a,1bを拡縮動作させることで、カーカスバンド10をビード5の内周面に圧着させる圧着時拡縮動作を実施する。この圧着時拡縮動作では、まず、
図4Bに示すように第1及び第2セグメント1a,1bを、圧着位置A3に移動させる。
【0039】
続いて、圧着位置A3に位置する第1及び第2セグメント1a,1bを交互に拡縮する拡縮動作を複数回、具体的には2回実施する。より詳しくは、
図5Aに示すように、第2セグメント1bを圧着位置A3に配置した状態で、第1セグメント1aを剥離位置A21に移動させ、第1セグメント1aを圧着位置A3に移動させる。その後、
図5Bに示すように、第1セグメント1aを圧着位置A3に配置した状態で、第2セグメント1bを剥離位置A22に移動させ、第2セグメント1bを圧着位置A3に移動させる。
【0040】
換言すると、圧着位置A3に位置する第1セグメント1aと第2セグメント1bの一方を、剥離位置A21,A22に移動させた後に、圧着位置A3にもどし、圧着位置A3に位置する第1セグメント1aと第2セグメント1bとの他方を剥離位置A21,A22に移動させた後に、圧着位置A3にもどす。
【0041】
これにより、第1セグメント1aと第2セグメント1bとの一方は、圧着位置A3に維持されて、カーカスバンド10を内側から支持しているので、カーカスバンド10の内方への変形を抑制でき、かつ第1セグメント1aと第2セグメント1bの他方からカーカスバンド10を容易に剥離できる。
【0042】
この第1セグメント1aと第2セグメント1bの拡縮動作を2回繰り返す。1回の拡縮動作は、第1及び第2セグメント1a,1bを圧着位置A3からそれぞれの剥離位置A21,A22に移動させた後に圧着位置A3に復元する動作を指す。本実施形態においては、2回の拡縮動作のうち、1回目の拡縮動作が2回目の拡縮動作に比して遅くなるように設定されている。具体的には、1回目の拡縮動作の速度は、2回目の拡縮動作の1/2の速度で実施される。例えば、2回目の拡縮動作の速度が3000mm/minである場合、1回目の拡縮動作の速度は1500mm/minに設定される。これにより、2回目の拡縮動作に比して1回目の拡縮動作を遅くできるので、カーカスバンド10がビード5の内周面に圧着される時間が増えて、より確実にカーカスバンド10とビード5とを圧着できる。また、2回目の拡縮動作によってカーカスバンド10を第1成形ドラムD1から剥離しやすくなる。
【0043】
続いて、
図5Cに示すように、第1及び第2セグメント1a,1bを再度、圧着位置A3から剥離位置A21,A22に移動させて、ビード付きバンド体15を第1成形ドラムD1から離脱させ、ビード付きバンド体15を次工程に移送する。なお、ビード付きバンド体15を次工程への移送するための移送手段は、例えば、ビード付きバンド体15を周方向外側から吸引して把持する把持手段(
図1D参照)によって構成される。
【0044】
この圧着工程では、成形されたカーカスバンド10をビード5に圧着させながら、カーカスバンド10から第1及び第2セグメント1a,1bを剥離することで、ビード付きバンド体15を第1成形ドラムD1から容易に離脱できる。そのため、ビード付きバンド体15を把持した状態で、第1成形ドラムD1から離脱させることができるので、成形されたビード付きバンド体15を移送装置により次工程に移送するのも容易になる。
【0045】
上記説明したタイヤの成形方法によれば、次のような効果が得られる。
【0046】
前述のように、第1成形ドラムD1にカーカスプライ4を巻き付けてから第1成形ドラムD1からビード付きバンド体15を剥離させるまでの間において、貼付け位置A1又は圧着位置A3に位置する第1セグメント1aおよび第2セグメント1bの一方を、貼付け位置A1よりも径方向内側に位置する剥離位置A21,A22に移動させた後に剥離位置A21,A22に移動する前の位置にもどし、次いで、他方を剥離位置A21,A22に移動させた後に剥離位置A21,A22に移動する前の位置にもどす、1回の拡縮動作を複数回実施する。
【0047】
この構成によれば、第1セグメント1aを剥離位置A21に移動させるときには、第2セグメント1bを貼付け位置A1又は圧着位置A3に維持することで、第2セグメント1bによってカーカスバンド10又はビード付きバンド体15を内側から支持しながらカーカスバンド10又はビード付きバンド体15を第1セグメント1aから剥離できる。また、第2セグメント1bを剥離位置A22に移動させるときには、第1セグメント1aを貼付け位置A1又は圧着位置A3に維持することで、第1セグメント1aによってカーカスバンド10又はビード付きバンド体15を内側から支持しながらカーカスバンド10又はビード付きバンド体15を第1セグメント1aから剥離できる。この拡縮動作を複数回繰り返すことで、ビード付きバンド体15を第1成形ドラムD1から離脱させやすい。
【0048】
また、圧着時拡縮動作が実施される場合、第1及び複数の第2セグメント1a,1bは、剥離位置A21,A22と圧着位置A3との間で移動するので、ビード5の内周面にカーカスバンド10を圧着しつつ、第1及び第2セグメント1a,1bの径方向内側への移動によってカーカスバンド10を第1成形ドラムD1から剥離できる。
【0049】
また、移載時拡縮動作が実施される場合、第1及び第2セグメント1a,2bは、剥離位置A21,A22と貼付け位置A1との間で移動するので、必要以上にカーカスバンド10を拡径させることなくカーカスバンド10を第1成形ドラムD1から剥離できる。また、拡縮動作を実施しながらカーカスバンド10が貼付けられた第1成形ドラムD1をビード5内に移載できるので、ビード付きバンド体15の成形工程におけるサイクルタイムの増大を抑制できる。さらに、カーカスバンド10をビード5に圧着する前に拡縮動作をすることにより、ビード付きバンド体15を第1成形ドラムD1から剥離させやすい。
【0050】
また、前述のように、圧着拡縮動作を2回実施し、1回目の拡縮動作を2回目の拡縮動作よりも遅い速度で実施する。1回目の拡縮動作を遅くすることによって、カーカスバンド10をビード5に圧着する時間が長くなり、カーカスバンド10をビード5に圧着させやすい。
【0051】
また、前述のように、移載時拡縮動作を1回実施し、圧着時拡縮動作を2回実施することで、移載時拡縮動作のカーカスバンド10の第1成型ドラムD1からの剥離によるビード付きバンド体15の第1成形ドラムD1からの離脱性の向上できる。さらに、圧着時拡縮動作によるカーカスバンド10のビード5に対する圧着性の向上及びビード付きバンド体15の第1成型ドラムD1からの離脱性の向上の効果が得られやすい。
【0052】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0053】
上記実施形態では、拡縮動作を移載中に1回及び圧着時に2回実施するように設定したがこれに限らない。拡縮動作は移載中と圧着時のどちらか一方で実施してもよいし、移載中に1回及び圧着時に1回実施されることで複数回拡縮動作が実施されてもよい。
【0054】
上記実施形態では、圧着時の拡縮動作のうち1回目の拡縮動作を2回目の拡縮動作よりも遅くするように設定したがこれに限らない。1回目の拡縮動作と2回目の拡縮動作は同じ速度であってもよい。
【0055】
上記実施形態では、圧着時の拡縮動作を2回実施するように設定したがこれに限らない。圧着時の拡縮動作は1回実施されてもよいし、3回実施されてもよい。
【実施例】
【0056】
比較例1,2および実施例1~8のタイヤ成形方法におけるビード付きバンド体15の成形方法について、ビード付きバンド体15の第1成形ドラムD1からの離脱のしやすさ及びビード5に対するカーカスバンド10の接着性の評価試験を行った。
【0057】
比較例1は、第1成形ドラムD1にカーカスプライ4を貼付けて円筒状のカーカスバンド10を成形してからビード付きバンド体15を次工程に移送するまでの間に、拡縮動作が1回実施される。比較例2は、第1及び第2セグメント1a,1bの拡縮動作が一方についてのみ複数回、実施される。比較例1及び比較例2は、いずれも圧着時に拡縮動作が中速で行われ、移載時には拡縮動作は実施されない。
【0058】
実施例1は、比較例1に対して、圧着時の拡縮動作が複数回(2回)実施される点で異なっている。実施例2は、実施例1に対して、圧着時の拡縮動作がさらに1回多く3回実施される点で異なっている。実施例3は、実施例1に対して、圧着時の拡縮速度が低速で実施される点で異なっている。実施例4は、実施例1に対して、圧着時の拡縮速度が高速で実施される点でことなっている。実施例5は、実施例1に対して、移載時にも1回拡縮動作が実施される点で異なっている。実施例6は、実施例1に対して、圧着時の拡縮動作が1回に減少する一方で、移載時にも1回拡縮動作が実施され、それぞれの拡縮動作が低速で実施される点で異なっている。実施例7は、実施例1に対して、1回目の拡縮動作が低速で実施される点で異なっている。実施例8は、実施例1に対して、移載時にも1回拡縮動作が実施され、1回目の拡縮動作が低速で実施される点で異なっている。
【0059】
拡縮速度は、低速、中速、高速の3段階で比較した。具体的には、低速の拡縮速度は1500mm/min、中速の拡縮速度は3000mm/min、高速の拡縮速度は4500mm/minにそれぞれ設定されている。なお、拡縮速度は、圧着時における拡縮動作の速度を示している。
【0060】
成形ドラムD1からの離脱性は、成形ドラムからビード付きバンド体を離脱させる際のバンド落ち回数により評価した。ここで、「バンド落ち回数」とは、ビード付バンド体を成形ドラムから離脱させる際に、ビード付きバンド体の状態から、カーカスバンドがビードの内周面から落下する回数を示す。バンド落ち回数が少ないほどカーカスバンドの内周面側への変形(落ち込み)が小さく、離脱性が優れていることを示している。
【0061】
ビード5に対する接着性は、成形ドラムからビード付きバンド体を接着させる際のバンド内面チェックにより評価した。「内面チェック」とは、ビード付バンド体を成形ドラムから離脱させる際に、ビードとバンドの接着(浮きがないか)を目視確認にて評価した。ビードとバンドの浮きが少ないほど接着性が優れていることを示している。
【0062】
離脱性及び接着性の評価は、比較例1を100として、比較例2、実施例1~8を指数により評価した。値が大きいほどビードに対する接着性、及び、成型ドラムからの離脱性が優れていることを示している。
【0063】
【0064】
表1の結果より、拡縮動作の回数と、拡縮動作の速度と、拡縮動作を実施するタイミングと、離脱性及び接着性との関係が確認できる。
【0065】
具体的には、比較例1、実施例1及び実施例2によれば、圧着時の拡縮回数を増やすことによって、離脱性及び接着性が向上する結果になった。実施例1と実施例3によれば、圧着時の拡縮動作の速度を遅くすることで、圧着性及び離脱性が向上する結果になった。実施例1と実施例2の評価と、実施例1と実施例3の評価とから、拡縮速度の方が拡縮回数よりも接着性及び離脱性への寄与度が大きい結果となった。一方、実施例1と実施例4によれば、圧着時の拡縮動作の速度を早くすることで、圧着性及び離脱性の向上代が小さくなる結果になった。
【0066】
実施例1と実施例5によれば、移載時にも拡縮動作を実施することによって、圧着性を確保しながら離脱性が向上する結果になった。実施例3と実施例6によれば、ビード付きバンド体の成形工程内における拡縮動作数が同じであっても、実施例6は拡縮動作が圧着時に1回しか実施されないため、実施例3に比して接着性が不足し、離脱性も劣る結果になった。
【0067】
実施例1と実施例7によれば、圧着時における1回目の拡縮速度を低速に設定し、2回目の拡縮速度を中速に設定することによって、カーカスバンドがビードに押圧される時間が長く設定されるので、圧着性が向上する結果となった。実施例7と実施例8によれば、移載時にも拡縮動作が実施されることによって、接着性に加えて離脱性も向上する結果となった。
【符号の説明】
【0068】
1a…1a 複数の第1セグメント
1b…1b 複数の第2セグメント
4 カーカスプライ(バンド部材)
5 ビード(ビード部材)
10 カーカスバンド
15 ビード付きバンド体
A1 貼付け位置
A21,A22 剥離位置
A3 圧着位置
D1 第1成形ドラム(バンド成形ドラム)
P1 基準径
P3 圧着径
P21,P22 剥離径