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特許7461835支承装置における支承部材及びその組付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】支承装置における支承部材及びその組付け方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20240328BHJP
   E01D 19/04 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
F16F15/04 E
E01D19/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020144445
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039432
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】長峰 洋一
(72)【発明者】
【氏名】林 圭介
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-225016(JP,A)
【文献】特開2013-213547(JP,A)
【文献】特開2003-301883(JP,A)
【文献】特開2001-124138(JP,A)
【文献】特開2002-364704(JP,A)
【文献】特開平11-036557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
E01D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1建造物と第2建造物との各対向部分に配設される第1沓と第2沓とを有し、
前記第1沓と前記第2沓との一方に、摺動面を構成する滑り部材と、該滑り部材を保持する保持凹部を有する保持部とが備えられた支承装置における支承部材の組付け方法であって、
前記滑り部材よりも小さな複数のピースを仮止めシートに対して前記滑り部材の形成領域を覆うように並べて貼付ける貼付け工程と、
前記仮止めシートに貼付けられた複数のピースを前記滑り部材の形状に裁断する裁断工程と、
前記保持部の前記保持凹部又は前記ピースの少なくとも一方に接着剤を塗布する塗布工程と、
前記仮止めシートで保持された複数のピースを前記保持凹部に配置する配置工程と、
前記保持凹部に配置された複数のピースから前記仮止めシートを剥離除去するシート除去工程とを行なって前記滑り部材を構成する
支承部材の組付け方法。
【請求項2】
前記滑り部材よりも小さな複数のピースは、それぞれ同一形状に形成された
請求項1に記載の支承部材の組付け方法。
【請求項3】
前記滑り部材よりも小さな複数のピースは、方形状に形成された
請求項2に記載の支承部材の組付け方法。
【請求項4】
前記滑り部材よりも小さな複数のピースは、摩擦係数が異なる
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の支承部材の組付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、橋梁等における橋脚等の下部建造物で、主桁等の上部建造物を支持する支承装置における支承部材及びその組付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、橋梁、免震建造物、あるいは、固定建造物同士を接続する接続部分等の振動や相対変位が生じる建造物において、可動支持する支承装置がある。このような、支承装置は、主桁等の被支持建造物と、橋脚等の支持建造物との間に配設され、被支持建造物に固定された上沓と、支持建造物に固定された下沓との境界面、つまり、摺動面が摺動することで、境界面における面内方向に変位可能に支持することができる。
【0003】
このような支承装置の沓を構成する支承部材90としては、例えば、図12に示すものがある。
具体的には、上沓を構成する支承部材90は、摺動面を構成する合成樹脂製の滑り部材であるスライドベアリング91と、このスライドベアリング91を嵌め込んで保持する保持凹部92aを有するベアリングホルダ92とが備えられている。
【0004】
従来の支承部材90は、図13に示すように、滑り部材であるスライドベアリング91を形成する方形かつ単一の樹脂板93の中央部を、図13(a)に仮想線βで示す円形に沿って、図13(b)に示すように裁断して、単一のスライドベアリング91が形成されている。
円形に打抜かれた中央部以外の樹脂板93aは、スライドベアリング91として使用されないため、材料ロスが多く、歩留まりが極めて悪いという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-301883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、材料ロスを低減し、歩留まりを大幅に改善できる支承装置における支承部材及びその組付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、第1建造物と第2建造物との各対向部分に配設される第1沓と第2沓とを有し、前記第1沓と前記第2沓との一方に、摺動面を構成する滑り部材と、該滑り部材を保持する保持凹部を有する保持部とが備えられた支承装置における支承部材の組付け方法であって、前記滑り部材よりも小さな複数のピースを仮止めシートに対して前記滑り部材の形成領域を覆うように並べて貼付ける貼付け工程と、前記仮止めシートに貼付けられた複数のピースを前記仮止めシートごと前記滑り部材の形状に裁断する裁断工程と、前記保持部の前記保持凹部又は前記ピースの少なくとも一方に接着剤を塗布する塗布工程と、前記仮止めシートで保持された複数のピースを前記保持凹部に配置する配置工程と、前記保持凹部に配置された複数のピースから前記仮止めシートを剥離除去するシート除去工程とを行なって前記滑り部材を構成することを特徴とする。
【0008】
上記第1建造物及び第2建造物は、例えば、主桁を第1建造物とし、橋脚を第2建造物とする橋梁、ビルを第2建造物とし、ビルとビルとを連絡する渡り廊下を第1建造物とする連絡通路、柱を第2建造物とし、トラス屋根を第1建造物とする屋根構造、あるいは、ビルを第2建造物とし、別のビルを第1建造物とするエキスパンション構造における建造物としてもよい。
【0009】
上記第1沓及び第2沓は、第1建造物及び第2建造物を上下方向に配置した場合における上沓と下沓とで構成してもよい。
上記支承装置は、可動支承であり、摺動面における面内方向の任意の方向に可動する全方向可動支承、あるいは、面内方向の一方向に可動する一方向可動支承としてもよい。
【0010】
上記面内方向は、例えば、第1沓及び第2沓との対向部分における摺動面が平面である場合、摺動面を構成する平面に平行な方向であり、該平面に交差する方向を含まない概念である。
上記滑り部材は、ポリアミド樹脂(PA)やポリ四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、あるいはその他の樹脂や、金属、グラファイト、セラミックス等の樹脂以外の材質であってもよい。
【0011】
この発明により、滑り部材よりも小さい複数のピースを仮止めシートに並べて貼付け、滑り部材の形状に裁断して保持凹部に配置するため、材料ロスを低減し、歩留まりを大幅に改善できる。
また、保持凹部に配置された複数のピース間における目地に潤滑剤が保持されるため、潤滑剤の保持量を増加することができる。
【0012】
この支承部材の組付け方法の態様として、前記滑り部材よりも小さな複数のピースは、それぞれ同一形状に形成されてもよい。
この発明により、前記貼付け工程で、複数のピースを仮止めシートに並べて貼付ける際、複数のピースを容易に並べることができる。
【0013】
この支承部材の組付け方法の態様として、前記滑り部材よりも小さな複数のピースは、方形状に形成されてもよい。
上記方形状は、正方形状または長方形状の何れであってもよい。
この発明により、前記貼付け工程における各ピースの貼付け作業性が向上する。
【0014】
この支承部材の組付け方法の態様として、前記滑り部材よりも小さな複数のピースは、摩擦係数が異なってもよい。
またこの発明は、第1建造物と第2建造物との各対向部分に配設される第1沓と第2沓とを有し、前記第1沓と前記第2沓との一方に、摺動面を構成する滑り部材と、該滑り部材を保持する保持凹部を有する保持部とが備えられた支承装置における支承部材であって、前記滑り部材よりも小さく、かつ、摩擦係数が異なる複数のピースを並列配置して前記滑り部材が構成されたことを特徴とする。
【0015】
この発明により、摩擦係数が異なるピースを用いるため、摩擦係数が異なる複数のピースで構成する滑り部材の摩擦係数を任意の摩擦係数に調整することができ、支承装置の使用条件に応じた所望の摩擦係数の滑り部材を形成することができる。
【0016】
詳述すると、支承装置は使用条件により任意の摩擦係数で構成することを求められる場合があるが、摩擦係数は滑り部材の素材に起因するため、滑り部材の摩擦係数を任意の摩擦係数に調整することが困難であった。
【0017】
これに対し、摩擦係数が異なる複数のピースを前記保持凹部に配置して滑り部材を構成するため、滑り部材の摩擦係数を容易に調整でき、支承装置又は支承部材の使用条件に応じて、任意の摩擦係数の滑り部材を形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、材料ロスを低減し、歩留まりを大幅に改善できる支承装置における支承部材及びその組付け方法の提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】支承装置の概略断面図
図2】上沓の分解斜視図
図3】支承部材の説明図
図4】支承部材の組付け方法を示すフローチャート
図5】支承部材の組付け方法を説明する説明図
図6】裁断工程を説明する平面図
図7】支承部材の組付け方法を説明する説明図
図8】他の実施形態の支承部材の説明図
図9】他の実施形態の支承部材の説明図
図10】他の実施形態の支承部材の説明図
図11】他の実施形態の支承部材の説明図
図12】従来の支承部材の説明図
図13】従来のスライドベアリングの形成方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
図1は支承装置1の概略断面図を示し、図2は上沓10の分解斜視図を示し、図3(a)はベアリング35の底面図を示し、図3(b)は図3(a)のA-A線矢視断面図を示している。
【0021】
また、図4はベアリング35の組付け方法を示すフローチャートを示し、図5(a)はピース形成工程を示す平面図、図5(b)は貼付け工程(ステップS1)を示す平面図である。さらに、図6は裁断工程(ステップS2)を示す平面図であり、図7(a)は図6のB-B線矢視断面図を示し、図7(b)は配置工程(ステップS4)を説明する断面図を示している。
なお、図2において、各要素の形状について理解を容易にするため手前側の一部を切欠いて図示している。
【0022】
支承装置1は、上部建造物と下部建造物との間に配設されて免震構造を構成する免震装置である。この支承装置1は、上部建造物に固定された上沓10と、下部建造物に固定された下沓20とで構成される。上沓10と下沓20との境界面、つまり、摺動面(10a,20a)が摺動することで、境界面(摺動面)における面内方向に変位可能に支持し、例えば、地震や強い風等によって接続部分に生じるエネルギーを剛結合よりも小さくすることができる。
【0023】
詳しくは、支承装置1は、図1に示すように、上部建造物(図示省略)の底面に固定された上沓10と、下部建造物(図示省略)の上面に固定された下沓20とで構成している。
下沓20は、下部建造物の上面に固定されたソールプレート21と、ソールプレート21の上部に装着されたスライドプレート22とで構成している。スライドプレート22の上面で、上沓10の上沓摺動面10aと摺動する下沓摺動面20aを構成している。なお、スライドプレート22は、ステンレス板で構成している。
【0024】
上沓10は、上部建造物の底面に固定される鋼製のベースポット11と、ベースポット11の底面側中央の装着凹部11aに配置した平面視円形状の摺動部30とで構成している。
ベースポット11の装着凹部11aに装着される摺動部30は、図2に示すように、上から順に、弾性プレート31、シム32、シールリング33、ピストン34及びベアリング35で構成している。
【0025】
弾性プレート31は、平面視円形のゴム製のプレートである。
シム32は、弾性プレート31と同じ径の平面視円形形状で形成したフッ素樹脂製の薄板である。
【0026】
シールリング33は、径外側が垂直面となり、径内側が下方に向かって径外側に傾斜する傾斜面である片断面台形状の円形リングであり、外径が弾性プレート31及びシム32と同じ径で形成している。
ピストン34は、ステンレス製の略円柱形状であり、シールリング33を嵌合できる円形凹部34aを上面の外周縁に沿って形成している。
【0027】
支承部材として機能するベアリング35は、後述する滑り部材であるスライドベアリング37を底面側に保持する平面視円形のベアリングホルダ36と、ベアリングホルダ36の保持凹部36aに保持されるスライドベアリング37とで構成している。
【0028】
ベアリングホルダ36は、スライドベアリング37を保持する保持凹部36aを底面側に有する金属製の円盤状である。保持凹部36aは、スライドベアリング37の厚みよりも浅い円形凹部である。
【0029】
滑り部材であるスライドベアリング37は、自己潤滑性を有する、ポリアミド樹脂、またはポリ四フッ化エチレン樹脂で平面視円形に形成されている。スライドベアリング37の底面37aは、下沓20のスライドプレート22の表面である下沓摺動面20aと摺動する上沓摺動面10aを構成している。
【0030】
なお、ベアリングホルダ36が設けられず、ピストン34の底面に直接スライドベアリング37が設けられていてもよい。この場合、ピストン34の底面に保持凹部が設けられ、保持凹部にスライドベアリング37が取り付けられる。
【0031】
このように構成したベアリング35を含めた摺動部30を上述の順でベースポット11の装着凹部11aに組み付けて構成した上沓10と、下沓20とを、図1に示すように、上沓摺動面10aと下沓摺動面20aとが摺動可能となるように対向させて、上沓10と下沓20とを組み付けて支承装置1を構成している。
【0032】
上沓10の上沓摺動面10aと下沓20の下沓摺動面20aとが摺動可能に対向する支承装置1は、上部建造物の荷重を下部建造物で支承している。詳しくは、上部建造物の荷重が作用した上沓10の上沓摺動面10aは、下部建造物に備えた下沓20の下沓摺動面20aに対して、上部建造物の荷重に応じた接触圧で接触している。換言すると、下沓20の下沓摺動面20aは、上沓摺動面10aを上部建造物の荷重に応じた支圧で支持している。
【0033】
図3に示すように、スライドベアリング37は、スライドベアリング37よりも小さな複数のピース40を組み付けて構成している。具体的には、スライドベアリング37は、図5(a)に示す樹脂板41を同一形状に細分化して構成した複数のピース40をベアリングホルダ36の保持凹部36aに、縦横に並列配置し、図示しない接着剤で接着固定して構成している。
【0034】
続いて、図4乃至図7とともに、支承装置1におけるベアリング35の組付け方法について説明する。
予め、図5(a)に示すように、スライドベアリング37を構成する材料である樹脂板41を縦横の切断ラインL1,L2に沿って切断し、同一形状の正方形に複数分割して、細分化した複数のピース40を形成する。なお、並列配置してスライドベアリング37を構成するピース40を細分化して形成する樹脂板41は、自己潤滑性を有する、ポリアミド樹脂、またはポリ四フッ化エチレン樹脂製の板材である。
【0035】
このように樹脂板41を細分化して形成した複数のピース40を、図5(b)に示すように、仮止めシート50に対して滑り部材であるスライドベアリング37の形成領域αを覆い、かつ縦横に配列される状態に並べて貼付ける(貼付け工程(ステップS1))。
【0036】
上述の仮止めシート50は、貼付けたピース40をシート除去工程(ステップS5)で剥離可能に貼付けることができる貼付け面を片面に有する接着シートや粘着シートを用いている。
なお、仮止めシート50に並べて貼付けられたピース40は、外縁となる一辺が他のピース40の一辺と当接され、ピース40同士の間には、目地42が形成される。
【0037】
このように仮止めシート50に貼付けられた複数のピース40を、図6に示すように、仮止めシート50ごとスライドベアリング37の形状である円形に裁断する(裁断工程(ステップS2))。
裁断工程(ステップS2)によって、複数のピース40は、ベアリングホルダ36の保持凹部36aの形状と一致する平面視円形状となる。
【0038】
続いて、ベアリングホルダ36の保持凹部36aにおいて、複数のピース40が接着固定される底面に接着剤を塗布する(塗布工程(ステップS3))。なお、仮止めシート50に貼付けられ、裁断された複数のピース40における、仮止めシート50と反対側の面に接着剤を塗布してもよいし、保持凹部36aにおける底面との両方に接着剤を塗布してもよい。
【0039】
図7(b)に示すように、仮止めシート50貼付けられたままの状態で複数のピース40を、底面に接着剤が塗布された保持凹部36aに配置し、ピース40を保持凹部36aに接着固定する(配置工程(ステップS4))。なお、各ピース40をひとつずつ保持凹部36aに配置して接着固定してもよい。しかしながら仮止めシート50で保持された状態のまま複数のピース40を保持凹部36aに配置するため、効率よく、且つ容易に、複数のピース40を保持凹部36aに配置して接着固定することができる。
【0040】
そして、仮止めシート50ごと複数のピース40を保持凹部36aに配置し、接着固定したピース40から仮止めシート50を剥離して除去して(シート除去工程(ステップS5))、支承部材であるベアリング35の組付けを完了する。
【0041】
上述のようにして組み付けられるベアリング35は、スライドベアリング37よりも小さな複数のピース40を仮止めシート50に対してスライドベアリング37の形成領域αを覆うように並べて貼付ける貼付け工程(ステップS1)と、仮止めシート50に貼付けられた複数のピース40をスライドベアリング37の形状に裁断する裁断工程(ステップS2)と、ベアリングホルダ36の保持凹部36aに接着剤を塗布する塗布工程(ステップS3)と、仮止めシート50で保持された複数のピース40を保持凹部36aに配置する配置工程(ステップS4)と、保持凹部36a配置された複数のピース40から仮止めシート50を剥離除去するシート除去工程(ステップS5)とを行なってスライドベアリング37を構成することにより、材料ロスを低減し、歩留まりを大幅に改善できる。
【0042】
詳しくは、図5(a)に示す領域X内の複数のピース40はひとつのベアリング35に使用されるが、図5(a)に示す領域X外の複数のピース40は他の支承部材の形成に有効利用することができるため、材料ロスの低減を図り、歩留まりの向上を図ることができる。
また、保持凹部36aに配置された複数のピース40同士の間に形成される目地42に潤滑剤が保持されるため、潤滑剤の保持量を増加することができる。
【0043】
また、スライドベアリング37よりも小さな複数のピース40は、それぞれ同一の正方形状に形成されているため、貼付け工程(ステップS1)で、複数のピース40を仮止めシート50に並べて貼付ける際、複数のピース40を容易に並べることができ、貼付け作業性が向上する。
【0044】
上述の説明では、複数のピース40を同一形状且つ同一のものを用いてスライドベアリング37を構成したが、異なるピース40を用いてスライドベアリング37を構成してもよい。
例えば、図8に示すように、摩擦係数が異なるピース40a,40bを用いてスライドベアリング37を形成してもよい。
【0045】
図8(a)は摩擦係数が異なる複数の正方形のピース40a,40bによるベアリング35の底面図、図8(b)は図8(a)のC-C線矢視断面図を示している。
なお、図8において、図1乃至図7を用いて説明した上述のベアリング35と同一の構成については、同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0046】
図8(a)に示すように、この実施形態のスライドベアリング37は、同一形状の正方形に形成しているが摩擦係数の異なる複数のピース40a,40bで形成されている。
各ピース40a,40bは、μB>μCとなる摩擦係数μB,μCで形成し、図8(a)においては図示の便宜上、摩擦係数が相対的に大きいピース40aにハッチングを施して図示している。
【0047】
このように摩擦係数が異なるピース40a,40bを、図8(a)に示すように、市松模様状に配列してスライドベアリング37を構成している。なお、摩擦係数が異なるピース40a,40bの配列はこれに限定されず、様々な配置で構成してもよい。
【0048】
このように、ピース40a,40bで構成したスライドベアリング37において、全体の面積に対して摩擦係数が大きいピース40aの占有面積の比率を増加すると、摩擦係数はμB,μC間において大きい方に調整される。逆に、摩擦係数が大きいピース40aの占有面積の比率を減少させると、スライドベアリング37の摩擦係数はμB,μC間において小さい方に調整することができる。
【0049】
つまり、スライドベアリング37の面積に対するピース40a,40bの占有比率を変更することにより、スライドベアリング37の摩擦係数をμB,μC間において任意に設定することができる。
このように、摩擦係数が異なるピース40a,40bを用いたことにより、スライドベアリング37の摩擦係数を容易に調整でき、支承装置1の使用条件に応じて、任意の摩擦係数のスライドベアリング37を形成することができる。
【0050】
また、図9乃至図11に示すように、スライドベアリング37を構成するピース40は正方形に限定されず、様々な形状で形成することができる。
なお、図9乃至図11において、図1乃至図7を用いて説明した上述のベアリング35と同一の構成については、同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
また、図9乃至図11に図示するベアリング35は、図1乃至図7を用いて説明した上述のベアリング35と同様の作用効果を奏するため、その説明を省略している。
【0051】
例えば、図9(a)に示すように長方形の複数のピース40c,40dを用いてスライドベアリング37を形成してもよいし、図9(b)に示すように正六角形の複数のピース40e,40fを用いてスライドベアリング37を形成してもよい。
【0052】
また、図10(a)に示すように、二等辺三角形の複数のピース40g,40hを用いてスライドベアリング37を形成してもよいし、図10(b)に示すように、台形の複数のピース40i,40jを用いてスライドベアリング37を形成してもよい。
【0053】
さらに、図11(a)に示すように、平行四辺形の複数のピース40k,40lを用いてスライドベアリング37を形成してもよいし、図11(b)に示すように、扁平六角形の複数のピース40m,40nを用いてスライドベアリング37を形成してもよい。
【0054】
なお、ピース40の形状は、上述の形状に限定されることなく、様々な形状で形成することができるが、スライドベアリング37の摩擦係数を所望の摩擦係数とするために異なる摩擦係数のピース40における占有率を容易に調整できる形状で形成すればよい。なお、図9乃至図11で示すスライドベアリング37は異なる摩擦係数のピース40を用いたが摩擦係数が同じピース40を用いてスライドベアリング37を構成してもよい。
さらには、スライドベアリング37を同じ形状のピース40を並列配置して構成したが、少なくとも2種類の異なる形状のピース40を並列配置してスライドベアリング37を構成してもよい。
【0055】
この発明の構成と、前述の実施態様との対応において、この発明の第1建造物は実施形態の上部建造物に対応し、
以下同様に、
第2建造物は、下部建造物に対応し、
第1沓は、上沓10に対応し、
第2沓は、下沓20に対応し、
支承装置は、支承装置1に対応し、
摺動面は、上沓摺動面10aに対応し、
滑り部材は、スライドベアリング37に対応し、
保持部は、ベアリングホルダ36に対応し、
支承部材は、ベアリング35に対応し、
保持凹部は、保持凹部36aに対応し、
ピースは、ピース40~40nに対応し、
仮止めシートは、仮止めシート50に対応し、
貼付け工程は、貼付け工程(ステップS1)に対応し、
裁断工程は、裁断工程(ステップS2)に対応し、
塗布工程は、塗布工程(ステップS3)に対応し、
配置工程は、配置工程(ステップS4)に対応し、
シート除去工程は、シート除去工程(ステップS5)に対応するも、
この発明は、上記実施形態の構成のみに限定されるもためはなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0056】
上述の説明においては、免震構造における摺動面(10a,20a)の面内方向の任意方向に可動する全方向可動支承である支承装置1について説明したが、面内方向の一方向に可動する一方向可動支承としてもよいし、水平面内の回転を許容する固定支承としてもよい。
【0057】
また、支承装置は、例えば、橋脚で主桁を支持する場合の支承装置、ビルとビルとを連絡する渡り廊下をビルから支持する場合の支承装置、トラス屋根を柱で支持する場合の支承装置、あるいは、ビル同士を接続するエキスパンション構造における支承装置として用いてもよい。また、建物と基礎の間に設けられる免震支承装置として用いることもできる。
【0058】
さらに、上述の説明における上沓10の構成を下沓に備え、下沓20の構成を上沓に備えた支承装置を構成してもよい。
さらにまた、前記ピースの形状は例示した正方形、長方形、正六角形、二等辺三角形、台形、平行四辺形、六角形に代えて、菱形、正三角形、直角三角形などの他の形状としてもよい。
また、上述の説明においては、摩擦係数が異なる2種類のピースにより滑り部材を構成したが、当該滑り部材は摩擦係数が異なる3種類以上のピースにより構成してもよい。
【0059】
また、上述の説明では、裁断工程(ステップS2)において、仮止めシート50に貼付けられた複数のピース40を仮止めシート50ごとスライドベアリング37の形状に裁断したが、複数のピース40のみをスライドベアリング37の形状に裁断してもよい。
【0060】
また、スライドベアリング37は円形状のみならず、楕円状、小判状、方形状など様々な形状で形成してもよい。
【0061】
また、スライドベアリング37の材質はポリアミド樹脂またはポリ四フッ化エチレン樹脂のみならず、その他の樹脂や、金属、グラファイト、セラミックス等の樹脂以外の材質であってもよいし、スライドベアリング37を構成するピース40間で材質が異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…支承装置
10…上沓
10a…上沓摺動面
20…下沓
35…ベアリング
36…ベアリングホルダ
36a…保持凹部
37…スライドベアリング
40~40n…ピース
50…仮止めシート
S1…貼付け工程
S2…裁断工程
S3…塗布工程
S4…配置工程
S5…シート除去工程
図1
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