(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】作業車両の操作機構、及び作業車両
(51)【国際特許分類】
G05G 5/04 20060101AFI20240328BHJP
G05G 1/04 20060101ALI20240328BHJP
B60K 26/04 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
G05G5/04 B
G05G1/04 Z
B60K26/04
(21)【出願番号】P 2020154914
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】李 文天
(72)【発明者】
【氏名】村本 直哉
(72)【発明者】
【氏名】藤林 清和
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-013299(JP,U)
【文献】特開2004-288002(JP,A)
【文献】国際公開第2017/051932(WO,A1)
【文献】特開2018-145651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 5/04
G05G 1/04
B60K 26/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動操作可能な操作具と、
前記操作具を支持する第一支持部と、
前記第一支持部に着脱可能に設けられ、前記操作具が第一の範囲でのみ回動可能となるように、前記操作具の回動範囲を規制する第一規制部と、
を具備
し、
前記第一規制部は、
前記第一支持部に形成された貫通孔に挿通された状態で、前記第一支持部に固定可能である、
作業車両の操作機構。
【請求項2】
前記第一規制部と一体的に前記第一支持部に着脱可能であり、他の部材を支持可能な第二支持部をさらに具備する、
請求項1に記載の作業車両の操作機構。
【請求項3】
前記第一規制部は、
前記第一規制部を前記第一支持部に固定する際に用いられる締結具と平行に延びるように配置される、
請求項1又は請求項2に記載の作業車両の操作機構。
【請求項4】
前記第一規制部及び前記締結具は、
前記第一規制部が延びる方向から見て、前記第一支持部に設けられた前記操作具の回動支点と共に一直線上に並ぶように配置される、
請求項
3に記載の作業車両の操作機構。
【請求項5】
前記第一支持部は、
前記操作具が前記第一の範囲を含み、かつ前記第一の範囲よりも広い第二の範囲でのみ回動可能となるように、前記操作具の回動範囲を規制する第二規制部を具備する、
請求項1から請求項4
までのいずれか一項に記載の作業車両の操作機構。
【請求項6】
前記第二規制部は、
前記第一規制部を前記第一支持部に固定する際に用いられる締結具が締結される被締結部を含む、
請求項
5に記載の作業車両の操作機構。
【請求項7】
回動操作可能な操作具と、
前記操作具を支持する第一支持部と、
前記第一支持部に着脱可能に設けられ、前記操作具が第一の範囲でのみ回動可能となるように、前記操作具の回動範囲を規制する第一規制部と、
を具備し、
前記第一支持部は、
前記操作具が前記第一の範囲を含み、かつ前記第一の範囲よりも広い第二の範囲でのみ回動可能となるように、前記操作具の回動範囲を規制する第二規制部を具備し、
前記第二規制部は、
前記第一規制部を前記第一支持部に固定する際に用いられる締結具が締結される被締結部を含む、
作業車両の操作機構。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の作業車両の操作機構を具備する、
作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動操作可能な操作具を具備する作業車両の操作機構、及び作業車両の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回動操作可能な操作具を具備する作業車両の操作機構の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、支持部材と、支持部材に対して回動操作可能に設けられたアクセルレバーと、を具備する操作機構が開示されている。支持部材は、左右一対の側面(第1支持部及び第2支持部)と、この側面の後端同士を連接する後側面(連接部)と、具備する、平面視U字状に形成されている。
【0004】
このように構成された操作機構において、アクセルレバーがアイドリング位置まで回動操作されると、アクセルレバーの上側部分が支持部材の後側面に当接し、アクセルレバーの回動が規制される。またアクセルレバーが最速位置まで回動操作されると、アクセルレバーの下側部分が支持部材の後側面に当接し、アクセルレバーの回動が規制される。このように、支持部材が、アクセルレバーの回動範囲を規制するストッパとして機能するように構成されている。
【0005】
しかしながら、このようにアクセルレバーの回動範囲が規制されている場合、作業車両の製造上、不都合が生じる場合がある。以下、具体的に説明する。
【0006】
作業車両を製造する場合、作業車両の車体をクレーン等の搬送装置を用いて搬送しながら、各種部品を順次組み立てることが想定される。しかしながら、作業車両に組みつけられたアクセルレバーの回動範囲が上述のように規制されていると、このアクセルレバーが搬送装置(例えば、車体を吊り上げるためのベルト等)と干渉するおそれがある。また、アクセルレバーの回動範囲が規制されていると、他の部品の組み立てを阻害するおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、作業車両の製造時に、操作具が製造作業を阻害するのを防止することが可能な作業車両の操作機構、及び作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、回動操作可能な操作具と、前記操作具を支持する第一支持部と、前記第一支持部に着脱可能に設けられ、前記操作具が第一の範囲でのみ回動可能となるように、前記操作具の回動範囲を規制する第一規制部と、を具備し、前記第一規制部は、前記第一支持部に形成された貫通孔に挿通された状態で、前記第一支持部に固定可能であるものである。
【0011】
請求項2においては、前記第一規制部と一体的に前記第一支持部に着脱可能であり、他の部材を支持可能な第二支持部をさらに具備するものである。
【0012】
請求項3においては、前記第一規制部は、前記第一規制部を前記第一支持部に固定する際に用いられる締結具と平行に延びるように配置されるものである。
【0013】
請求項4においては、前記第一規制部及び前記締結具は、前記第一規制部が延びる方向から見て、前記第一支持部に設けられた前記操作具の回動支点と共に一直線上に並ぶように配置されるものである。
【0014】
請求項5においては、前記第一支持部は、前記操作具が前記第一の範囲を含み、かつ前記第一の範囲よりも広い第二の範囲でのみ回動可能となるように、前記操作具の回動範囲を規制する第二規制部を具備するものである。
【0015】
請求項6においては、前記第二規制部は、前記第一規制部を前記第一支持部に固定する際に用いられる締結具が締結される被締結部を含むものである。
【0016】
請求項7においては、回動操作可能な操作具と、前記操作具を支持する第一支持部と、前記第一支持部に着脱可能に設けられ、前記操作具が第一の範囲でのみ回動可能となるように、前記操作具の回動範囲を規制する第一規制部と、を具備し、前記第一支持部は、前記操作具が前記第一の範囲を含み、かつ前記第一の範囲よりも広い第二の範囲でのみ回動可能となるように、前記操作具の回動範囲を規制する第二規制部を具備し、前記第二規制部は、前記第一規制部を前記第一支持部に固定する際に用いられる締結具が締結される被締結部を含むものである。
【0017】
請求項8においては、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の作業車両の操作機構を具備するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、作業車両の製造時に、操作具が製造作業を阻害するのを防止することができる。また、第一規制部を第一支持部の貫通孔に挿通することで、第一規制部を強固に固定することができる。また、第一規制部を第一支持部に取り付ける際、第一規制部の位置決めが容易となる。
【0020】
請求項2においては、第一規制部と第二支持部の着脱を一括して行うことができ、製造作業の効率化を図ることができる。
【0021】
請求項3においては、第一規制部の位置決めをより正確に行うことができる。すなわち、平行に延びる第一規制部と締結具の少なくとも2点での位置決めができるため、より正確な位置決めを行うことができる。
【0022】
請求項4においては、第一規制部及び締結具を分かり易い位置(操作具の回動支点と一直線上)に配置することで、製造作業(組み立て作業等)を容易に行うことができる。
【0023】
請求項5においては、第一規制部を取り外した状態で、操作具が過剰に回動するのを防止することができる。
【0024】
請求項6においては、第一規制部を固定するための被締結部を第二規制部として利用することで、構造の簡素化、部品点数の削減、コストの低減等を図ることができる。
【0025】
請求項7においては、作業車両の製造時に、操作具が製造作業を阻害するのを防止することができる。また、第一規制部を取り外した状態で、操作具が過剰に回動するのを防止することができる。また、第一規制部を固定するための被締結部を第二規制部として利用することで、構造の簡素化、部品点数の削減、コストの低減等を図ることができる。
【0026】
請求項8においては、作業車両の製造時に、操作具が製造作業を阻害するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図。
【
図7】規制ピンを取り付けた状態のアクセルレバーの回動範囲を示す図。
【
図8】規制ピンを取り外した状態のアクセルレバーの回動範囲を示す図。
【
図9】本発明の第二実施形態に係る操作機構において、規制ピンを取り外した状態のアクセルレバーの回動範囲を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0029】
以下では、
図1を用いて本発明の第一実施形態に係るトラクタ1の全体構成について説明する。
【0030】
トラクタ1は、主としてフロントフレーム2、エンジン3、トランスミッションケース4、前輪5、後輪6、ボンネット7、ステアリングポスト8、ステアリングホイール9及び座席10を具備する。
【0031】
フロントフレーム2は、複数の板材を適宜組み合わせて形成される枠状の部材である。フロントフレーム2は、その長手方向を前後方向に向けてトラクタ1の前下部に配置される。フロントフレーム2の後部には、エンジン3が固定される。エンジン3の後部には、トランスミッションケース4が固定される。
【0032】
また、フロントフレーム2の前部はフロントアクスル機構(不図示)を介して左右一対の前輪5に支持される。トランスミッションケース4は、リアアクスル機構(不図示)を介して左右一対の後輪6に支持される。
【0033】
また、エンジン3は、ボンネット7に覆われる。ボンネット7の後方には、ステアリングポスト8(
図2以降を参照)に支持されたステアリングホイール9、座席10、各種の操作具等が配置される。
【0034】
エンジン3の動力は、トランスミッションケース4に収容された変速装置(不図示)で変速された後、前記フロントアクスル機構を経て前輪5に伝達可能とされると共に、前記リアアクスル機構を経て後輪6に伝達可能とされる。こうして、エンジン3の動力によって前輪5及び後輪6を回転駆動させ、トラクタ1は走行することができる。
【0035】
次に、トラクタ1が具備する操作機構100について説明する。
【0036】
図2及び
図3に示す操作機構100は、エンジン3の回転数を変更することが可能なものである。なお
図3では、便宜上、ステアリングホイール9の図示を省略している。操作機構100は、主としてレバーステー110、アクセルレバー120、ワイヤー130、着脱ステー140及び規制ピン150を具備する。
【0037】
図4から
図6に示すレバーステー110は、後述するアクセルレバー120及び着脱ステー140を支持するものである。レバーステー110は、板状の部材により形成される。レバーステー110は、板状の部材を屈曲させることで、平面視略L字状に形成される。具体的には、レバーステー110には、板面が左右方向を向くように形成された第一板部110aと、第一板部110aの前端から左方に向かって延びるように(板面が略前後方向を向くように)形成された第二板部110bと、が形成される。第二板部110bの左端部は、適宜の方法(例えば、溶接等)でステアリングポスト8に固定される。
【0038】
レバーステー110は、主として回動軸111、第一貫通孔112、第二貫通孔113及びナット114等を具備する。
【0039】
回動軸111は、後述するアクセルレバー120を回動可能に支持するもの(アクセルレバー120の回動支点)である。回動軸111は、軸線方向(長手方向)を左右に向けた略円柱状に形成される。回動軸111は、第一板部110aの上部に右方から挿通される。回動軸111は、適宜の方法(例えば、溶接等)で第一板部110aに固定される。このようにして、回動軸111は、第一板部110aから左方に向かって突出するように配置される。
【0040】
図4及び
図6に示す第一貫通孔112は、後述する規制ピン150が挿通される部分である。第一貫通孔112は、第一板部110aを左右に貫通するように形成される。第一貫通孔112は、側面視において回動軸111の前下方に形成される。
【0041】
第二貫通孔113は、後述する着脱ステー140をレバーステー110に固定するためのボルト143が挿通される部分である。第二貫通孔113は、第一板部110aを左右に貫通するように形成される。第二貫通孔113は、側面視において第一貫通孔112の前下方に形成される。
図6に示すように、回動軸111、第一貫通孔112及び第二貫通孔113は、側面視において一直線上に並ぶように配置される。
【0042】
図5及び
図6に示すナット114は、後述するボルト143が締結される部材である。ナット114は、第一板部110aの左側面に設けられる。ナット114は、側面視において第二貫通孔113と重複する位置に配置される。ナット114は、適宜の方法(例えば、溶接等)で第一板部110aに固定される。
【0043】
図4から
図6に示すアクセルレバー120は、エンジン3の回転数を変更するための操作具である。アクセルレバー120は、主として本体部121及びグリップ122等を具備する。
【0044】
本体部121は、アクセルレバー120の主要な構造体を形成する部分である。本体部121は、板状の部材により形成される。本体部121は、板面が左右方向に向くように配置される。本体部121は、概ね前下方から後上方に延びる長手状に形成される。本体部121の先端部(後上端部)は、外側(右側)に向けて屈曲される。本体部121の基端部(前下端部)には、主として貫通孔121a、突部121b及び連結部121c等が形成される。
【0045】
貫通孔121aは、回動軸111が挿通される部分である。貫通孔121aは、本体部121を左右に貫通するように形成される。
【0046】
突部121bは、後述する規制ピン150と当接する部分である。突部121bは、本体部121の外縁部を外側(より詳細には、側面視において貫通孔121aを中心とする径方向外側)に向けて突出させるようして形成される。突部121bは、本体部121の前下端に2つ形成される。2つの突部121bは、貫通孔121aを中心とする周方向に沿って、互いに所定の距離だけ離れた位置に形成される。
【0047】
連結部121cは、後述するワイヤー130と連結される部分である。連結部121cは、本体部121の外縁部を外側(より詳細には、側面視において貫通孔121aを中心とする径方向外側)に向けて突出させるようして形成される。連結部121cは、本体部121の前下端部から略後方に向かって突出するように形成される。連結部121cには、ワイヤー130と連結される連結ピン121dが設けられる。
【0048】
グリップ122は、アクセルレバー120を操作する際に、作業者が把持する部分である。グリップ122は、例えばゴム等の樹脂材料により形成される。グリップ122は、本体部121の先端(後上端)に設けられる。
【0049】
このように構成されたアクセルレバー120は、レバーステー110に回動可能となるように設けられる。具体的には、アクセルレバー120の貫通孔121aに、レバーステー110の回動軸111が挿通され、当該回動軸111の先端にナット123が締結される。この際、アクセルレバー120と、レバーステー110及びナット123と、の間には、適宜ワッシャや弾性部材等が設けられる。このようにしてアクセルレバー120は、所定の操作力によって回動操作可能となるように、回動軸111(レバーステー110)に支持される。
【0050】
ワイヤー130は、アクセルレバー120の操作に連動してエンジン3のスロットルレバー(不図示)を作動させるものである。ワイヤー130の一端は、アクセルレバー120の連結ピン121dに連結される。ワイヤー130の他端は、エンジン3のスロットルレバー(不図示)に連結される。
【0051】
着脱ステー140は、レバーステー110に着脱可能に設けられ、他の部材を支持することが可能なものである。着脱ステー140は、板状の部材により形成される。着脱ステー140は、板状の部材を屈曲させることで、平面視略L字状に形成される。具体的には、着脱ステー140には、板面が左右方向を向くように形成された第一板部140aと、第一板部140aの後端から右方に向かって延びるように(板面が略前後方向を向くように)形成された第二板部140bと、が形成される。
【0052】
着脱ステー140は、主として第一貫通孔141及び第二貫通孔142等を具備する。
【0053】
図4及び
図6に示す第一貫通孔141は、着脱ステー140をレバーステー110に固定するためのボルト143が挿通される部分である。第一貫通孔141は、第一板部140aを左右に貫通するように形成される。第一貫通孔141は、第一板部140aの前下部に形成される。
【0054】
第二貫通孔142は、着脱ステー140に他の部材を固定するためのボルト144が挿通される部分である。第二貫通孔142は、第二板部140bを前後に貫通するように形成される。
【0055】
図4から
図6に示す規制ピン150は、アクセルレバー120の回動範囲を規制するものである。規制ピン150は、軸線方向(長手方向)を左右に向けた略円柱状に形成される。規制ピン150は、着脱ステー140の第一板部140aの前上部に右方から挿通される。規制ピン150は、適宜の方法(例えば、溶接等)で第一板部140aに固定される。このようにして、規制ピン150は、第一板部140aから左方に向かって突出するように配置される。
【0056】
上述のように、規制ピン150は着脱ステー140に固定されることで、着脱ステー140と一体的にレバーステー110に着脱可能となっている。具体的には、着脱ステー140をレバーステー110に固定する場合、
図4及び
図5に示すように、まず規制ピン150がレバーステー110の第一貫通孔112に右方から挿通される。これによって、規制ピン150の左端部がレバーステー110の第一板部110aを貫通し、第一板部110aから左方へと突出する。この状態で、着脱ステー140の第一貫通孔141の位置を、レバーステー110の第二貫通孔113の位置に合わせ、ボルト143が右方から第一貫通孔141及び第二貫通孔113に挿通する。このように、互いに平行な方向(左右方向)に延びる規制ピン150とボルト143をレバーステー110に挿通することで、レバーステー110に対する着脱ステー140の位置決めを正確に行うことができる。また当該ボルト143をレバーステー110のナット114に締結することで、着脱ステー140及び規制ピン150をレバーステー110に固定することができる。
【0057】
着脱ステー140には、ボルト144を用いて、他の部材を適宜固定することができる。例えば、ステアリングポスト8を覆うカバーや、メーターパネル等を着脱ステー140に固定することができる。このように、着脱ステー140を介してレバーステー110(ひいては、ステアリングポスト8)に任意の部材を固定することができる。
【0058】
なお、ボルト143をナット114から取り外すことで、着脱ステー140及び規制ピン150を一体的にレバーステー110から取り外すことができる。
【0059】
以下では、上述の如く構成された操作機構100において、レバーステー110に取り付けられたアクセルレバー120が回動可能な範囲(回動範囲)について説明する。
【0060】
アクセルレバー120は、規制ピン150をレバーステー110に取り付けた状態(
図7参照)と、規制ピン150をレバーステー110から取り外した状態(
図8参照)とで、回動範囲が異なる。以下、具体的に説明する。
【0061】
図7に示すように、規制ピン150をレバーステー110に取り付けた状態では、規制ピン150がアクセルレバー120の2つの突部121bの間に位置するように配置される。この状態では、アクセルレバー120が後方(左側面視時計回り)に回動すると、所定の回動位置PB1で後側の突部121bが規制ピン150と当接する。これによって、アクセルレバー120の後方への回動が規制される。また、アクセルレバー120が前方(左側面視反時計回り)に回動すると、所定の回動位置PF1で前側の突部121bが規制ピン150と当接する。これによって、アクセルレバー120の前方への回動が規制される。このようにアクセルレバー120は、規制ピン150によって第一の範囲R1でのみ回動可能となるように、回動範囲が規制される。
【0062】
なお、本実施形態では、アクセルレバー120が回動位置PB1に操作されると、エンジン3の回転数が最低回転数(アイドリング)となるように調整される。また、アクセルレバー120が回動位置PF1に操作されると、エンジン3の回転数が最高回転数となるように調整される。
【0063】
一方、
図8に示すように、規制ピン150を着脱ステー140と共にレバーステー110から取り外した状態では、規制ピン150によってアクセルレバー120の回動が規制されることはない。この状態では、アクセルレバー120が後方(左側面視時計回り)に回動すると、前述の回動位置PB1(
図7参照)を越えた所定の回動位置PB2で連結部121cがナット114と当接する。これによって、アクセルレバー120の後方への回動が規制される。また、アクセルレバー120が前方(左側面視反時計回り)に回動すると、前述の回動位置PF1(
図7参照)を越えた所定の回動位置PF2で本体部121が第二板部110bの上端部と当接する。これによって、アクセルレバー120の前方への回動が規制される。このようにアクセルレバー120は、レバーステー110によって第二の範囲R2でのみ回動可能となるように、回動範囲が規制される。
【0064】
ここで、第二の範囲R2は第一の範囲R1を含む範囲であり、かつ第一の範囲R1よりも広い範囲になるように設定されている。すなわち、規制ピン150をレバーステー110から取り外した状態では、規制ピン150をレバーステー110に取り付けた状態と比べて、アクセルレバー120を大きく回動させることができる。
【0065】
このように着脱可能な規制ピン150を用いることで、トラクタ1の製造時に、アクセルレバー120が製造作業を阻害するのを防止することができる。具体的には、トラクタ1の製造時、特に、アクセルレバー120をレバーステー110に組み付けた状態において、規制ピン150をレバーステー110から取り外しておくことで、アクセルレバー120を比較的広い範囲(第二の範囲R2)で回動させることができる。このため、製造作業に応じてアクセルレバー120を任意に回動させて、他の部材(例えば、車体を吊り上げるためのベルト等)との干渉を容易に避けることができる。また、他の部品の組み立て作業の邪魔にならない位置までアクセルレバー120を回動させることで、製造作業を容易に行うことができる。
【0066】
一方、ある程度(アクセルレバー120を回動させて他の部材との干渉等を避ける必要がなくなる程度)までトラクタ1の組み立て作業が進んだ段階で、規制ピン150を着脱ステー140と共にレバーステー110に取り付けることで、アクセルレバー120の回動範囲を第一の範囲R1に制限することができる。これによって、アクセルレバー120の回動範囲を、実際にトラクタ1を使用する際に必要な範囲(エンジン3の回転数がアイドリングから最高回転数まで調整可能な範囲)に制限することができる。
【0067】
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車両)の操作機構100は、
回動操作可能なアクセルレバー120(操作具)と、
前記アクセルレバー120を支持するレバーステー110(第一支持部)と、
前記レバーステー110に着脱可能に設けられ、前記アクセルレバー120が第一の範囲R1でのみ回動可能となるように、前記アクセルレバー120の回動範囲を規制する規制ピン150(第一規制部)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、トラクタ1の製造時に、アクセルレバー120が製造作業を阻害するのを防止することができる。すなわち、規制ピン150を取り外した状態にすることで、アクセルレバー120の回動範囲の規制を解除し、第一の範囲R1よりも広い範囲で回動可能とすることができる。トラクタ1の製造作業(組み立て作業等)の際に、規制ピン150を取り外した状態でアクセルレバー120を邪魔にならない位置まで適宜回動させることで、アクセルレバー120が作業の邪魔になる(製造のための各種装置や、他の部材等と干渉する)のを防止することができる。
【0068】
また、操作機構100は、
前記規制ピン150と一体的に前記レバーステー110に着脱可能であり、他の部材を支持可能な着脱ステー140(第二支持部)をさらに具備するものである。
このように構成することにより、規制ピン150と着脱ステー140の着脱を一括して行うことができ、製造作業の効率化を図ることができる。
【0069】
また、前記規制ピン150は、
前記レバーステー110に形成された第一貫通孔112(貫通孔)に挿通された状態で、前記レバーステー110に固定可能なものである。
このように構成することにより、規制ピン150をレバーステー110の第一貫通孔112に挿通することで、規制ピン150を強固に固定することができる。また、規制ピン150をレバーステー110に取り付ける際、規制ピン150の位置決めが容易となる。
【0070】
また、前記規制ピン150は、
前記規制ピン150を前記レバーステー110に固定する際に用いられるボルト143(締結具)と平行に延びるように配置されるものである。
このように構成することにより、規制ピン150の位置決めをより正確に行うことができる。すなわち、平行に延びる規制ピン150とボルト143の少なくとも2点での位置決めができるため、より正確な位置決めを行うことができる。
【0071】
また、前記規制ピン150及び前記ボルト143は、
前記規制ピン150が延びる方向から見て(本実施形態においては、側面視)、前記レバーステー110に設けられた前記アクセルレバー120の回動支点(回動軸111)と共に一直線上に並ぶように配置されるものである。
このように構成することにより、規制ピン150及びボルト143を分かり易い位置(アクセルレバー120の回動支点と一直線上)に配置することで、製造作業(組み立て作業等)を容易に行うことができる。
【0072】
また、前記レバーステー110は、
前記アクセルレバー120が前記第一の範囲R1を含み、かつ前記第一の範囲R1よりも広い第二の範囲R2でのみ回動可能となるように、前記アクセルレバー120の回動範囲を規制するナット114及び第二板部110b(第二規制部)を具備するものである。
このように構成することにより、規制ピン150を取り外した状態で、アクセルレバー120が過剰に回動するのを防止することができる。
【0073】
また、前記第二規制部は、
前記規制ピン150を前記レバーステー110に固定する際に用いられるボルト143(締結具)が締結されるナット114(被締結部)を含むものである。
このように構成することにより、規制ピン150を固定するためのナット114を第二規制部として利用することで、構造の簡素化、部品点数の削減、コストの低減等を図ることができる。
【0074】
また、本実施形態に係るトラクタ1は、操作機構100を具備するものである。
このように構成することにより、トラクタ1の製造作業(組み立て作業等)において、アクセルレバー120の干渉を防止することができる。
【0075】
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、本発明に係る作業車両の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るレバーステー110は、本発明に係る第一支持部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る規制ピン150は、本発明に係る第一規制部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る着脱ステー140は、本発明に係る第二支持部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るボルト143は、本発明に係る締結具の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るナット114及び第二板部110bは、本発明に係る第二規制部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るナット114は、本発明に係る被締結部の実施の一形態である。
【0076】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0077】
例えば、本実施形態では、操作具の一例としてアクセルレバー120を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、その他種々の操作具(例えば、トランスミッションの変速段を変更可能な変速レバー等)に適用することが可能である。
【0078】
また、本実施形態では、第一支持部の一例として単一の部品であるレバーステー110を例示し、アクセルレバー120及び規制ピン150はレバーステー110に設けられるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、アクセルレバー120及び規制ピン150等が設けられる第一支持部は、レバーステー110のように単一の部品に限るものではなく、複数の部品からなる部材等、種々の部材により構成することが可能である。例えば、アクセルレバー120をレバーステー110に設け、規制ピン150をステアリングポスト8に設ける構成にすることも可能である。この場合、レバーステー110及びステアリングポスト8が、本発明に係る第一支持部に相当する。
【0079】
また、本実施形態では、規制ピン150と着脱ステー140とが一体的に形成された(一体的にレバーステー110に着脱可能な)例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、規制ピン150を単独でレバーステー110に着脱可能に構成することも可能である。
【0080】
また、本実施形態では、規制ピン150をレバーステー110の第一貫通孔112に挿通した状態で固定する例を示したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、規制ピン150の固定方法は限定するものではなく、必ずしもレバーステー110に挿通する必要はない。
【0081】
また、本実施形態では、レバーステー110にアクセルレバー120の回動範囲を規制する第二規制部(ナット114及び第二板部110b)を設けた例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、必ずしも第二規制部を設ける必要はない。
【0082】
また、本実施形態では、作業車としてトラクタ1を例示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば作業車は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であってもよい。
【0083】
以下では、本発明の第二実施形態(変形例)について説明する。
【0084】
図9には、第二実施形態に係る操作機構100を示している。第二実施形態に係る操作機構100は、ナット114が設けられている位置が異なる点で、第一実施形態(
図8等参照)と相違している。
【0085】
具体的には、第二実施形態に係る操作機構においては、ナット114が、第一実施形態のナット114に比べて低い位置に設けられている。なお、図示は省略しているが、ナット114の位置に応じて着脱ステー140の上下幅も大きく形成され、当該着脱ステー140のナット114と対向する位置に第一貫通孔141が形成される(
図5等参照)。
【0086】
第二実施形態においては、
図9に示すように、規制ピン150をレバーステー110から取り外した状態でアクセルレバー120が後方に回動した場合、連結部121cがナット114と接触することがない。このため、アクセルレバー120は第一実施形態に比べて後下方まで大きく回動することができる。当該アクセルレバー120は、連結部121cがレバーステー110の第二板部110bに当接するまで後下方に回動することができる。
【0087】
このように、第二実施形態では、共通する部材(レバーステー110の第二板部110b)によって、アクセルレバー120の前後両方向への回動を規制することができる。但し、本発明はこれに限るものではなく、アクセルレバー120の回動を任意の部材によって規制することが可能である。例えば、ナット114の位置や、アクセルレバー120の形状等を適宜調整することで、ナット114をアクセルレバー120の本体部121に当接させて、アクセルレバー120の後方への回動を規制することも可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 トラクタ
100 操作機構
110 レバーステー
110b 第二板部
112 第一貫通孔
114 ナット
120 アクセルレバー
140 着脱ステー
143 ボルト
150 規制ピン