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特許7461848モータ駆動制御装置およびモータ駆動制御装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置およびモータ駆動制御装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/30 20160101AFI20240328BHJP
【FI】
H02P6/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020169234
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061309
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】青木 政人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 智敬
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-38189(JP,A)
【文献】特開2008-86180(JP,A)
【文献】特開昭62-33354(JP,A)
【文献】特開2002-8251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部に対して駆動制御信号を出力する制御回路部と、
を備え、
前記制御回路部は、
前記モータの回転により生じる磁束の変化を検出可能な第1の位置に設けられた第1のホール素子から出力された、正の出力信号の大きさと負の出力信号の大きさとを比較することにより、第1の極性信号を生成する第1の比較素子と、
前記モータの回転により生じる磁束の変化を検出可能な第2の位置に設けられた第2のホール素子から出力された正または負の出力信号の大きさと比較対象の比較用信号の大きさとを比較することにより、第2の極性信号を生成する第2の比較素子と、
前記第1の極性信号の変遷と前記第2の極性信号の変遷とを比較することにより前記モータの回転方向を判別する回転方向判別部とを有する、
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のモータ駆動制御装置であって、
前記回転方向判別部は、前記第1の極性信号および前記第2の極性信号のうちの一方の極性が変化したときに、当該変化した極性信号の変化方向と、当該変化の際における他方の極性信号の極性との比較結果に基づいて前記モータの回転方向を判別する、
モータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項2記載のモータ駆動制御装置であって、
前記第2の比較素子は、前記第1のホール素子から出力された、前記正の出力信号または前記負の出力信号を前記比較用信号として用いる、
モータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項2記載のモータ駆動制御装置であって、
前記第2の比較素子は、所定の基準電圧の信号を前記比較用信号として用いる、
モータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項3記載のモータ駆動制御装置であって、
前記回転方向判別部は、
前記第1の極性信号が第1の極性から第2の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第2の極性であり、かつ前記第1の極性信号が第2の極性から第1の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第1の極性である場合、前記モータは正回転していると判別し、
前記第1の極性信号が第1の極性から第2の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第1の極性であり、かつ前記第1の極性信号が第2の極性から第1の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第2の極性である場合、前記モータは逆回転していると判別する、
モータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項3記載のモータ駆動制御装置であって、
前記回転方向判別部は、
前記第1の極性信号が第2の極性から第1の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第1の極性であり、かつ前記第1の極性信号が第1の極性から第2の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第2の極性である場合、前記モータは正回転していると判別し、
前記第1の極性信号が第2の極性から第1の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第2の極性であり、かつ前記第1の極性信号が第1の極性から第2の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第1の極性である場合、前記モータは逆回転していると判別する、
モータ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項4記載のモータ駆動制御装置であって、
前記回転方向判別部は、
前記第2の極性信号が第2の極性から第1の極性に変化するタイミングで、前記第1の極性信号が第2の極性であり、かつ前記第2の極性信号が第1の極性から第2の極性に変化するタイミングで、前記第1の極性信号が第1の極性である場合、前記モータは正回転していると判別し、
前記第2の極性信号が第2の極性から第1の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第1の極性であり、かつ前記第2の極性信号が第1の極性から第2の極性に変化するタイミングで、前記第1の極性信号が第2の極性である場合、前記モータは逆回転していると判別する、
モータ駆動制御装置。
【請求項8】
請求項1記載のモータ駆動制御装置であって、
前記回転方向判別部は、前記第1の極性信号の変化の半周期内において、前記第2の極性信号の極性の変化が生じるタイミングより前記モータの回転方向を判別する、
モータ駆動制御装置。
【請求項9】
モータを駆動するモータ駆動部と、前記モータ駆動部に対して駆動制御信号を出力する制御回路部と、を備えたモータ駆動制御装置の制御方法であって、
前記モータの回転により生じる磁束の変化を検出可能な第1の位置に設けられた第1のホール素子から出力された、正の出力信号の大きさと負の出力信号の大きさとを比較することにより、第1の極性信号を生成する第1の比較ステップと、
前記モータの回転により生じる磁束の変化を検出可能な第2の位置に設けられた第2のホール素子から出力された正または負の出力信号の大きさと比較対象の比較用信号の大きさとを比較することにより、第2の極性信号を生成する第2の比較ステップと、
前記第1の極性信号の変遷と前記第2の極性信号の変遷とを比較することにより前記モータの回転方向を判別する回転方向判別ステップとを含む、
モータ駆動制御装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置およびモータ駆動制御装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、3相を有する多相モータの回転方向を判別する方法としては、モータの回転時に巻線に発生する誘起電圧から判別する方法、あるいは、磁気センサと誘起電圧から判別する方法など、誘起電圧を用いて回転方向を判別するいくつかの手法が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、誘起電圧をモニターしてロータの位置を推定し、推定したロータの位置の推定結果に基づいて通電相を切り替えるようにしたセンサレスブラシレスモータの制御装置が開示されている。特許文献1のような位置センサレス方式の場合、無通電時、または、正確な通電パターンで通電している場合には、誘起電圧で回転方向を判別可能であるが、通電時において、通電パターンと回転方向があっていない場合、ゼロクロスの検出が困難であり、誘起電圧から回転方向を推定することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-13121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような誘起電圧を用いて回転方向を判別する手法とは異なり、位置センサを用いれば、通電パターンが乱れている場合でも回転方向を判別することができる。例えば、モータの回転方向に沿って配置された2つの位置センサにおいて、回転により生じる磁束の変化を電気信号として検出することによって、回転方向を判定することができる。
【0006】
このような位置センサとしては、例えばホール素子などを用いることができる。それぞれのホール素子で発生した電気信号を、各ホール素子から2本の引き出し線を介して正負の出力信号として制御回路に出力し、制御回路で2つのホール素子のそれぞれについて極性信号を生成する必要がある。
【0007】
このように、2つの位置センサを用いて回転方向を検出するためには、少なくとも4本の引き出し線を介して制御回路に入力する必要があり、装置の構成が複雑化するおそれがあった。
【0008】
本発明は上記従来の問題に鑑みなされたものであって、本発明の課題は、位置センサからの引き出し線を削減した簡易な構成でありながらモータの回転方向を判別可能なモータ駆動制御装置、及びモータ駆動制御装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、一実施形態に記載されたモータ駆動制御装置は、モータを駆動するモータ駆動部と、前記モータ駆動部に対して駆動制御信号を出力する制御回路部と、を備え、前記制御回路部は、前記モータの回転により生じる磁束の変化を検出可能な第1の位置に設けられた第1のホール素子から出力された、正の出力信号の大きさと負の出力信号の大きさとを比較することにより、第1の極性信号を生成する第1の比較素子と、前記モータの回転により生じる磁束の変化を検出可能な第2の位置に設けられた第2のホール素子から出力された正または負の出力信号の大きさと比較対象の比較用信号の大きさとを比較することにより、第2の極性信号を生成する第2の比較素子と、前記第1の極性信号の変遷と前記第2の極性信号の変遷とを比較することにより前記モータの回転方向を判別する回転方向判別部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のモータ駆動制御装置およびモータ駆動制御装置の制御方法によれば、位置センサからの引き出し線を削減した簡易な構成でありながらモータの回転方向を判別可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態のモータ駆動制御装置1の回路構成を大まかに示す図である。
図2】モータ駆動制御装置における2つのホール素子の配置を示す図である。
図3】第1の実施形態の制御回路部3の構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態における正回転/逆回転の判別方法を説明するための信号波形図である。
図5】第1の実施形態における回転方向判別手順の一例を示すフローチャートである。
図6】正回転/逆回転の判別方法の第1パターンを説明するための図である。
図7】正回転/逆回転の判別方法の第2パターンを説明するための図である。
図8】第2の実施形態の制御回路部3の構成を示すブロック図である。
図9】第2の実施形態における回転位置検出部において入力される信号波形の関係を示す図である。
図10】第2の実施形態における回転方向判別手順の一例を示すフローチャートである。
図11】第3の実施形態の制御回路部3の構成を示すブロック図である。
図12】第3の実施形態における正回転/逆回転の判別方法を説明するための信号波形図である。
図13】第3の実施形態における回転方向判別手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0013】
〔1〕本発明の代表的な実施形態に係るモータ駆動制御装置(1)は、モータ(20)を駆動するモータ駆動部(2)と、前記モータ駆動部(2)に対して駆動制御信号(Sd)を出力する制御回路部(3)と、を備え、前記制御回路部(3)は、前記モータ(20)の回転により生じる磁束の変化を検出可能な第1の位置に設けられた第1のホール素子(H1)から出力された、正の出力信号(H1)の大きさと負の出力信号(H1)の大きさとを比較することにより、第1の極性信号(S5)を生成する第1の比較素子(C1)と、前記モータ(20)の回転により生じる磁束の変化を検出可能な第2の位置に設けられた第2のホール素子(H2)から出力された正または負の出力信号(H2)の大きさと比較対象の比較用信号の大きさとを比較することにより、第2の極性信号(S6)を生成する第2の比較素子(C2)と、前記第1の極性信号(S5)の変遷と前記第2の極性信号(S6)の変遷とを比較することにより前記モータの回転方向を判別する回転方向判別部(37)とを有する。
【0014】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置であって、前記回転方向判別部は、前記第1の極性信号および前記第2の極性信号のうちの一方の極性が変化したときに、当該変化した極性信号の変化方向と、当該変化の際における他方の極性信号の極性との比較結果に基づいて前記モータの回転方向を判別してもよい。
【0015】
〔3〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御装置であって、前記第2の比較素子は、前記第1のホール素子から出力された、前記正の出力信号または前記負の出力信号を前記比較用信号として用いてもよい。
【0016】
〔4〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御装置であって、前記第2の比較素子は、所定の基準電圧の信号を前記比較用信号として用いてもよい。
【0017】
〔5〕上記〔3〕に記載のモータ駆動制御装置であって、前記回転方向判別部は、前記第1の極性信号が第1の極性から第2の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第2の極性であり、かつ前記第1の極性信号が第2の極性から第1の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第1の極性である場合、前記モータは正回転していると判別し、前記第1の極性信号が第1の極性から第2の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第1の極性であり、かつ前記第1の極性信号が第2の極性から第1の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第2の極性である場合、前記モータは逆回転していると判別してもよい。
【0018】
〔6〕上記〔3〕に記載のモータ駆動制御装置であって、前記回転方向判別部は、前記第1の極性信号が第2の極性から第1の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第1の極性であり、かつ前記第1の極性信号が第1の極性から第2の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第2の極性である場合、前記モータは正回転していると判別し、前記第1の極性信号が第2の極性から第1の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第2の極性であり、かつ前記第1の極性信号が第1の極性から第2の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第1の極性である場合、前記モータは逆回転していると判別してもよい。
【0019】
〔7〕上記〔4〕に記載のモータ駆動制御装置であって、前記回転方向判別部は、前記第2の極性信号が第2の極性から第1の極性に変化するタイミングで、前記第1の極性信号が第2の極性であり、かつ前記第2の極性信号が第1の極性から第2の極性に変化するタイミングで、前記第1の極性信号が第1の極性である場合、前記モータは正回転していると判別し、前記第2の極性信号が第2の極性から第1の極性に変化するタイミングで、前記第2の極性信号が第1の極性であり、かつ前記第2の極性信号が第1の極性から第2の極性に変化するタイミングで、前記第1の極性信号が第2の極性である場合、前記モータは逆回転していると判別してもよい。
【0020】
〔8〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置であって、前記回転方向判別部は、前記第1の極性信号の変化の半周期内において、前記第2の極性信号の極性の変化が生じるタイミングより前記モータの回転方向を判別してもよい。
【0021】
〔9〕本発明の代表的な実施形態に係るモータ駆動制御装置の制御方法は、モータを駆動するモータ駆動部と、前記モータ駆動部に対して駆動制御信号を出力する制御回路部と、を備えたモータ駆動制御装置の制御方法であって、前記モータの回転により生じる磁束の変化を検出可能な第1の位置に設けられた第1のホール素子から出力された、正の出力信号の大きさと負の出力信号の大きさとを比較することにより、第1の極性信号を生成する第1の比較ステップと、前記モータの回転により生じる磁束の変化を検出可能な第2の位置に設けられた第2のホール素子から出力された正または負の出力信号の大きさと比較対象の比較用信号の大きさとを比較することにより、第2の極性信号を生成する第2の比較ステップと、前記第1の極性信号の変遷と前記第2の極性信号の変遷とを比較することにより前記モータの回転方向を判別する回転方向判別ステップとを含む。
【0022】
2.実施形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0023】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態のモータ駆動制御装置およびモータ駆動制御装置の制御方法について説明する。
【0024】
図1は、第1の実施形態のモータ駆動制御装置1の回路構成を大まかに示す図である。
【0025】
モータ駆動制御装置1は、モータ20を駆動させる。本実施の形態において、モータ20は、例えば3相のブラシレスモータである。モータ駆動制御装置1は、モータ20の電機子コイルLu,Lv,Lwに周期的に駆動電流を流すことで、モータ20を回転させる。
【0026】
モータ駆動制御装置1は、モータ駆動部2と、制御回路部3と、第1のホール素子H1と、第2のホール素子H2とを有している(H1,H2は、以下、単にホール素子ということがある)。なお、図1に示されているモータ駆動制御装置1の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置1は、図1に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。
【0027】
本実施の形態において、モータ駆動制御装置1は、一部(例えば、制御回路部3及び後述のプリドライブ回路2b)がパッケージ化された集積回路装置(IC)である。なお、モータ駆動制御装置1の全部が1つの集積回路装置としてパッケージ化されていてもよいし、他の装置と一緒にモータ駆動制御装置1の全部又は一部がパッケージ化されて1つの集積回路装置が構成されていてもよい。
【0028】
モータ駆動部2は、インバータ回路2a及びプリドライブ回路2bを有する。モータ駆動部2は、制御回路部3から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、モータ20に駆動信号を出力し、モータ20を駆動させる。
【0029】
プリドライブ回路2bは、制御回路部3による制御に基づいて、インバータ回路2aを駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路2aに出力する。インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bから出力された出力信号に基づいてモータ20に駆動信号を出力し、モータ20が備える電機子コイルLu,Lv,Lwに通電する。インバータ回路2aは、例えば、直流電源Vccの両端に設けられた2つのスイッチ素子の直列回路の対が、電機子コイルLu,Lv,Lwの各相(U相、V相、W相)に対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点に、モータ20の各相の端子が接続されている(図示せず)。プリドライブ回路2bは、制御回路部3から後述のようにして出力される駆動制御信号Sdに基づいて、出力信号として、例えば、インバータ回路2aの各スイッチ素子に対応する6種類の信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlを出力する。これらの出力信号が出力されることで、それぞれの出力信号に対応するスイッチ素子がオン、オフ動作を行い、モータ20に駆動信号が出力されてモータ20の各相に電力が供給される(図示せず)。
【0030】
速度指令信号Scは、例えば、外部から制御回路部3に入力される。速度指令信号Scは、モータ20の回転速度に関する信号である。例えば、速度指令信号Scは、モータ20の目標回転速度に対応するPWM(パルス幅変調)信号である。換言すると、速度指令信号Scは、モータ20の回転速度の目標値に対応する情報である。なお、速度指令信号Scとして、クロック信号が入力されてもよい。
【0031】
第1のホール素子H1は、モータ20の回転により生じる磁束の変化を検出可能な第1の位置に設けられており、第2のホール素子H2は、モータ20の回転により生じる磁束の変化を検出可能な第2の位置に設けられている。すなわち、第1のホール素子H1と第2のホール素子H2とはモータの回転により生じる磁束の変化を検出可能な別々の位置に設けられている。
【0032】
図2は、本実施形態のモータ駆動制御装置1における2つのホール素子H1,H2の配置を示す図である。
【0033】
本実施形態のモータ駆動制御装置1では、6つのスロットを有するモータ20の回転子の回りに円周方向において離れた位置に2つのホール素子H1とH2とを配置している。第1のホール素子H1は、モータ20の回転により生じる磁束の変化を検出可能な任意の位置(第1の位置)に配置されており、第2のホール素子H2は、第1の位置からモータ20の正回転(CW)方向に60度の機械角を有する位置(第2の位置)に配置されている。モータ20は6スロットを有しているので、第1のホール素子H1と第2のホール素子H2とは、互いに120度の電気角を有していることとなる。第1のホール素子H1は、ロータ(図示せず)の磁極を検出し、第1の正のホール信号(正の出力信号の一例)H1,第1の負のホール信号(負の出力信号の一例)H1を出力する。第2のホール素子H2は、ロータ(図示せず)の磁極を検出し、第2の負のホール信号(負の出力信号の一例)H2を出力する(以下、H1,H1,H2は、単にホール信号ということがある)。
【0034】
図1に戻って、本実施の形態において、制御回路部3には、モータ20に設けられたホール素子H1、H2から、3つのホール信号H1,H1,H2が入力される。制御回路部3は、ホール信号H1,H1,H2を用いてモータ20のロータの実際の回転数に関する実回転数情報及び回転位置情報を得る。
【0035】
制御回路部3は、例えば、マイクロコンピュータやデジタル回路等で構成されている。制御回路部3は、第1のホール素子H1から入力する第1の正のホール信号H1,第1の負のホール信号H1と第2のホール素子H2から入力する第2の負のホール信号H2と、外部から入力する速度指令信号Scととに基づいて、駆動制御信号Sdをモータ駆動部2(プリドライブ回路2b)に出力する。
【0036】
制御回路部3は、駆動制御信号Sdを出力することで、モータ20が速度指令信号Scに対応する回転数で回転するようにモータ20の回転制御を行う。すなわち、制御回路部3は、モータ20を駆動させるための駆動制御信号Sdをモータ駆動部2に出力し、モータ20の回転制御を行う。
【0037】
図3は、制御回路部3の構成を示すブロック図である。
【0038】
制御回路部3は、例えば、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等の各種メモリ、タイマ(カウンタ)、A/D変換回路、入出力I/F回路、およびクロック生成回路等のハードウェア要素を有し、各構成要素がバスや専用線を介して互いに接続されたプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ:MCU)によって構成されている。
【0039】
制御回路部3は、プロセッサがメモリ等の記憶装置(図示せず)に記憶されたプログラムに従って各種演算を行うとともにA/D変換回路および入出力I/F回路等の周辺回路を制御することによって図3に示す各機能部の構成を実現している。すなわち、図3に示すように、制御回路部3は、機能部として、回転数算出部31と、速度指令解析部32と、PWM指令部33と、PWM信号生成部35と、回転位置検出部36と、回転方向判別部37と、回転異常検出部38とを備える。
【0040】
回転数算出部31には、第1のホール素子H1からホール信号H1,H1が入力される。回転数算出部31は、入力されたホール信号H1,H1に基づいて、第1のホール素子H1が設けられた相とロータとの位置関係を示す位置信号を出力する。また、回転数算出部31は、ホール信号H1,H1に基づいて、位置信号の周期に対応する実回転数情報を生成して出力する。すなわち、回転数算出部31は、モータ20のロータの実際の回転数に関する実回転数情報を出力する。図3においては、位置信号と実回転数情報とを合わせて、実回転信号S2が示されている。実回転信号S2は、PWM指令部33に出力される。
【0041】
速度指令解析部32には、速度指令信号Scが入力される。速度指令解析部32は、速度指令信号Scに基づいて、モータ20の目標回転数を示す目標回転数信号S1(以下、単に目標回転数S1ということがある)を出力する。目標回転数S1は、速度指令信号Scに対応するデューティ比を示すPWM信号である。目標回転数S1は、PWM指令部33に出力される。
【0042】
PWM指令部33には、回転数算出部31から出力された実回転信号S2と、速度指令解析部32から出力された速度指令信号Scに対応する目標回転数S1とが入力される。PWM指令部33は、実回転信号S2すなわち位置信号及び実回転数情報と、目標回転数S1とに基づいて、PWM設定指示信号S3を出力する。PWM設定指示信号S3は、駆動制御信号Sdを出力するためのデューティ比を示す情報である。PWM設定指示信号S3は、PWM信号生成部35に出力される。
【0043】
PWM指令部33は、目標回転数S1と、モータ20の回転数に対応する実回転数情報とを比較し、モータ20の回転速度が目標回転数S1に対応するものとなるように、PWM設定指示信号S3を生成する。
【0044】
PWM信号生成部35には、PWM設定指示信号S3が入力される。PWM信号生成部35は、PWM設定指示信号S3に基づいて、モータ駆動部2を駆動させるためのPWM信号S4を生成する。PWM信号S4は、例えば、デューティ比がPWM設定指示信号S3と同一となる信号である。換言すると、PWM信号S4は、PWM設定指示信号S3に対応するデューティ比を有する信号である。
【0045】
PWM信号生成部35から出力されたPWM信号S4は、駆動制御信号Sdとして制御回路部3からモータ駆動部2に出力される。これにより、モータ駆動部2からモータ20に駆動信号が出力され、モータ20が駆動される。
【0046】
回転位置検出部36は、モータ20に配置された2つのホール素子(第1,第2のホール素子)H1、H2から出力されるホール信号H1,H1,H2を入力として、回転位置を検出できる信号を生成する。具体的には、第1のホール素子H1から入力される第1の正のホール信号H1,第1の負のホール信号H1および第2のホール素子H2から入力される第2の負のホール信号H2は、モータ20の回転により生じる磁束の変化を示しているので、これらの信号を処理することによりモータ20の回転位置を検出することができる。本実施形態では、第1の正のホール信号H1の値と第1の負のホール信号H1の値とを比較した結果得られる信号である第1の位置検出用信号S5(第1の極性信号の一例)と第1の負のホール信号H1を反転した値(比較対象の比較用信号の一例)と第2の負のホール信号H2の値とを比較した結果得られる第2の位置検出用信号S6(第2の極性信号の一例)とを回転位置を検出できる信号として出力する。
【0047】
回転位置検出部36は、例えば、図3に示すように、2つの比較器C1,C2(第1の比較素子、第2の比較素子の一例)を有している。回転位置検出部36は、第1の比較器C1に入力されるホール信号H1,H1の値を比較して、その比較出力を第1の位置検出用信号S5として出力する。回転位置検出部36は、第2の比較器C2に入力されるホール信号H1,H2の値を比較して、その比較出力を第2の位置検出用信号S6として出力する。
【0048】
回転方向判別部37は、第1の位置検出用信号S5の変遷と第2の位置検出用信号S6の変遷とを比較することによりモータ20の回転方向を判別する。具体的には、回転位置検出部36から出力された回転位置を示す第1の位置検出用信号S5および第2の位置検出用信号S6に基づいてモータ20の回転方向が正回転(CW)であるか逆回転(CCW)であるかを判別し、回転方向判別信号S7を回転異常検出部38に出力する。
【0049】
図4は、第1の実施形態における正回転/逆回転の判別方法を説明するための信号波形図である。図4において、(a)は回転位置検出部36において入力される信号波形と出力される信号波形との関係を示し、(b)は第1の位置検出用信号S5および第2の位置検出用信号S6の信号波形に基づいて正転(正回転)と逆転(逆回転)とを判定する判定条件を示し、(c)は判定条件をさらに詳細に示している。
【0050】
図4(a)に示すように、回転位置検出部36の第1の比較器C1において、第1の正のホール信号H1の値と第1の負のホール信号H1の値とを比較してその結果を第1の位置検出用信号S5の値として出力し、第2の比較器C2において、第1の負のホール信号H1を反転した値と第2の負のホール信号H2の値とを比較してその結果を第2の位置検出用信号S6の値として出力する。回転方向判別部37は、図4(b)、(c)に示す判定条件に基づいて、第1の位置検出用信号S5が変化したタイミングで、第2の位置検出用信号S6の値がいずれであるのかを判定し、モータ20が正回転であるのか逆回転であるのかを判別する。図4(a)に示す信号波形は、モータ20が正回転の時は紙面の左から右に進みように変化し、モータ20が逆回転の時は紙面の右から左に進むように変化する。
【0051】
図5は、第1の実施形態における回転方向判別手順の一例を示すフローチャートである。
【0052】
回転方向判別部37は、まず第1の位置検出用信号S5の値を監視し、第1の位置検出用信号S5の値に変化があるか否かを判定する(ステップS101)。第1の位置検出用信号S5の値に変化があったと判定した場合(ステップS101:YES)に、その変化が信号の立ち上がり、すなわち値が「0」(第1の極性の一例)から「1」(第2の極性の一例)への変化であるか否かを判定する(ステップS102)。第1の位置検出用信号S5の変化が立ち上がりであると判定した場合(ステップS102:YES)は、第2の位置検出用信号S6の値がH(ハイ)レベル「1」であるか否かを判定する(ステップS103)。
【0053】
回転方向判別部37は、ステップS103において第2の位置検出用信号S6の値がHレベル「1」であったと判定した場合(ステップS103:YES)は、モータ20は正回転(CW)であると判別する(ステップS104)。一方で、回転方向判別部37は、ステップS103において第2の位置検出用信号S6の値がHレベル「1」でなかったと判定した場合(ステップS103:NO)は、モータ20は逆回転(CCW)であると判別する(ステップS105)。
【0054】
同様に、回転方向判別部37は、ステップS102において、第1の位置検出用信号S5の値の変化が立ち上がりでない(すなわち立ち下がりである)と判定した場合(ステップS102:NO)は、第2の位置検出用信号S6の値がL(ロー)レベル「0」であるか否かを判定する(ステップS106)。回転方向判別部37は、第2の位置検出用信号S6の値がLレベル「0」であったと判定した場合(ステップS106:YES)は、モータ20は正回転(CW)であると判別する(ステップS107)。一方で、回転方向判別部37は、第2の位置検出用信号S6の値がLレベル「0」でなかったと判定した場合(ステップS106:NO)は、モータ20は逆回転(CCW)であると判別する(ステップS108)。なお、ステップS101において第1の位置検出用信号S5の値に変化がなかった場合(ステップS101:NO)は、回転方向判別は行わず、処理を終了する。
【0055】
回転方向判別部37は、正回転または逆回転の判別結果を、回転方向判別信号S7として、回転異常検出部38に出力する。
【0056】
回転方向判別部37における判別方法は、回転位置検出部36における2つの比較器C1、C2の設定によって異なる判定条件に基づいて判別することができる。
【0057】
図6は、正回転/逆回転の判別方法の第1パターンを説明するための図であり、図7は、正回転/逆回転の判別方法の第2パターンを説明するための図である。図6、7において(a)はそれぞれのパターンにおいて回転位置検出部36において入力される信号波形と出力される信号波形との関係を示し、(b)、(c)は第1の位置検出用信号S5および第2の位置検出用信号S6の信号波形に基づいて正転(正回転)と逆転(逆回転)とを判別する判別条件を示している。
【0058】
第1パターンは、第1の比較器C1において、H1>H1のときの第1の位置検出用信号S5がL(0)レベル(ローレベル)となり、H1<H1のときの第1の位置検出用信号S5がH(1)レベル(ハイレベル)となるように設定がされている場合の判別条件を示す図である。この場合、さらに、第2の比較器C2の設定によってパターン1とパターン2とがある。第2の比較器C2の第2の位置検出用信号S6がH1>H2のときにL(0)レベル、H1<H2のときにH(1)レベルとなる場合がパターン1であり、この逆の第2の比較器C2の第2の位置検出用信号S6がH1>H2のときにH(1)レベル、H1<H2のときにL(0)レベルとなる場合が、パターン2である。
【0059】
第2パターンは、第1の比較器C1において、H1>H1のときの第1の位置検出用信号S5がH(1)レベルとなり、H1<H1のときの第1の位置検出用信号S5がL(0)レベルとなるように設定がされている場合の判別条件を示す図である。この場合、さらに、第2の比較器C2の設定によってパターン3とパターン4とがある。第2の比較器C2の第2の位置検出用信号S6がH1>H2のときにH(1)レベル、H1<H2のときにL(0)レベルとなる場合がパターン3であり、この逆の第2の比較器C2の第2の位置検出用信号S6がH1>H2のときにL(0)レベル、H1<H2のときにH(1)レベルとなる場合が、パターン4である。
【0060】
このように、2つの比較器C1,C2の設定によって、判別のパターンが異なるが、回転方向判別部37は、これらのパターンに基づいて、第1,第2の位置検出用信号S5、S6の値を判定することによって回転方向を判別することができる。
【0061】
図3に示す回転異常検出部38は、回転方向判別部37から正回転または逆回転の判別結果を示す回転方向判別信号S7を受け取ると、その判別結果が回転異常に該当するかを判定し、回転異常であると判定した場合は、回転異常検出信号S8をPWM指令部33に出力する。PWM指令部33は、回転異常検出信号S8を受け取ると、例えば、必要に応じてPWM信号生成部35に対して、PWM信号の生成をストップする指令をすることができる。
【0062】
このように本実施形態のモータ駆動制御装置およびモータ駆動制御装置の制御方法によれば、位置センサからの引き出し線を削減して簡易な構成でありながらモータの回転方向を判別可能となる。
【0063】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態のモータ駆動制御装置およびモータ駆動制御装置の制御方法について説明する。
【0064】
図8は、第2の実施形態の制御回路部3Aの構成を示すブロック図である。
【0065】
第1の実施形態のモータ駆動制御装置1では、回転位置検出部36に、ホール信号H1,H1,H2を入力する構成であったが、この実施形態のモータ駆動制御装置1Aでは、図8に示すように、回転位置検出部36には、ホール信号H1,H1,H2に加えて、所定の電位を有する基準電圧(比較対象の比較用信号の一例)を入力する構成である点が異なる。また、回転方向判別部37Aが、これらの入力に応じた第1の位置検出用信号S5の変遷と第2の位置検出用信号S6の変遷とを第1の実施形態とは異なる判定基準に従って比較することによりモータの回転方向を判別する点も異なる。その他の構成については、第1の実施形態のモータ駆動制御装置1およびモータ駆動制御装置1の制御方法と同様であるので、その説明を省略する。
【0066】
図9は、第2の実施形態における回転位置検出部36Aにおいて入力される信号波形の関係を示す図である。図9において、(a)は正回転の場合の入力信号波形であり、(b)は逆回転の場合の入力信号波形である。
【0067】
図10は、第2の実施形態における回転方向判別手順の一例を示すフローチャートである。
【0068】
なお、本実施形態では、第1の比較器C1では、H1>H1のときの第1の位置検出用信号S5がH(1)レベルとなり、H1<H1のときの第1の位置検出用信号S5がL(0)レベルとなるように設定されている。同様に、第2の比較器C2では、H2>(基準電圧)のときの第2の位置検出用信号S6がH(1)レベルとなり、H2<(基準電圧)のときの第2の位置検出用信号S6がL(0)レベルとなるように設定されている。
【0069】
まず、図9(a)の時点T1における、回転方向判別部37Aによる回転方向判別動作について説明する。回転方向判別部37Aは、まず、第2の位置検出用信号S6に割り込みが発生したか否かを判定する(ステップS201)。ここで、割り込みが発生するとは、第2の位置検出用信号S6の値が変化することである。回転方向判別部37Aは、時点T1において、割り込みが発生したと判定し(ステップS201:YES)、さらに、割り込みにより立ち上がりが発生したのか否かを判定する(ステップS202)。ここで、回転方向判別部37Aは、時点T1においては、第2の位置検出用信号S6は「0」から「1」に変化したので、立ち上がりが発生したと判定し(ステップS202:YES)、第1の位置検出用信号S5の値がH1>H1であることを示しているか否かを判定する(ステップS203)。回転方向判別部37Aは、時点T1において、第1の位置検出用信号S5の値がH1>H1であることを示していない場合(ステップS203:NO)、正回転(CW)であると判別する(ステップS205)。
【0070】
なお、図9(b)の時点T4でも、回転方向判別部37Aは、ステップS203までは時点T1と同様な判定に至るが、ステップS203において、時点T4における第1の位置検出用信号S5の値がH1>H1であることを示している場合(ステップS203:YES)、逆回転(CCW)であると判別する(ステップS204)。
【0071】
図9(b)の時点T3における、回転方向判別部37Aによる回転方向判別動作について説明する。回転方向判別部37Aは、まず、時点T3において、第2の位置検出用信号S6に割り込みが発生したと判定し(ステップS201:YES)、さらに、割り込みにより立ち上がりが発生したのか否かを判定する(ステップS202)。ここで、回転方向判別部37Aは、時点T3においては、第2の位置検出用信号S6は「1」から「0」に変化したので、立ち上がりが発生していないと判定し(ステップS202:NO)、第1の位置検出用信号S5の値がH1<H1であることを示しているかを判定する(ステップS206)。回転方向判別部37Aは、時点T3において、第1の位置検出用信号S5の値がH1<H1であることを示している場合(ステップS206:YES)、逆回転(CCW)であると判別する(ステップS208)。
【0072】
なお、図9(a)の時点T2でも、回転方向判別部37Aは、ステップS206までは時点T3と同様な判定に至るが、ステップS206において、時点T2における第1の位置検出用信号S5の値が1<H1であることを示していない場合(ステップS206:YES)、正回転(CW)であると判別する(ステップS207)。
【0073】
第2の実施形態のモータ駆動制御装置1Aおよびモータ駆動制御装置1Aの制御方法でも第1の実施形態と同様に、位置センサからの引き出し線を削減して簡易な構成でありながらモータの回転方向を判別可能となる。
【0074】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態のモータ駆動制御装置およびモータ駆動制御装置の制御方法について説明する。
【0075】
図11は、第3の実施形態の制御回路部3Bの構成を示すブロック図である。
【0076】
上記実施形態のモータ駆動制御装置1,1Aでは、回転方向判別部37、37Aが回転位置検出部36から受け取った第1の位置検出用信号S5、第2の位置検出用信号S6のうちの一方の出力が変化したときに、当該変化の方向(「0」から「1」に変化したのか、「1」から「0」に変化したのか)と、当該変化の際における他方の位置検出用信号S5またはS6の出力(「0」か「1」か)との比較結果に基づいて前記モータの回転方向を判別していた。本実施形態のモータ駆動制御装置1Bでは、回転方向判別部37Bは、第1の位置検出用信号S5の変遷と第2の位置検出用信号S6の変遷とを第1、2の実施形態とは異なる判定基準に従って比較する。回転方向判別部37Bは、第1の位置検出用信号S5の変化の半周期内において、第2の位置検出用信号S6の出力の変化が生じるタイミングよりモータの回転方向を判別する構成を有する。その他の構成については、第1の実施形態のモータ駆動制御装置1およびモータ駆動制御装置1の制御方法と同様であるので、その説明を省略する。
【0077】
図12は、回転位置検出部36において入力される信号波形の関係を示す図である。図12において、(a)は逆回転の場合の入力信号波形であり、(b)は正回転の場合の入力信号波形である。
【0078】
図13は、第3の実施形態における回転方向判別手順の一例を示すフローチャートである。
【0079】
なお、本実施形態では、第1の比較器C1では、H1>H1のときの第1の位置検出用信号S5がH(1)レベルとなり、H1<H1のときの第1の位置検出用信号S5がL(0)レベルとなるように設定されている。同様に、第2の比較器C2では、H2>H1のときの比較出力S6がH(1)レベルとなり、H2<H1のときの比較出力S6がL(0)レベルとなるように設定されている。
【0080】
まず、図12(a)の逆回転の時点T5における、回転方向判別部37Bによる回転方向判別動作について説明する。回転方向判別部37Bは、タイマ39を用いて、まず、第1の位置検出用信号S5の半周期の時間すなわち第1の位置検出用信号S5の値が変化する時間(電気角で180度移動する時間)を測定する(ステップS301)。回転方向判別部37Bは、ステップS301において測定した半周期の時間を保存する。
【0081】
回転方向判別部37Bは、第1の位置検出用信号S5が変化した時点(通電切り替えタイミング)から、第2の位置検出用信号S6が変化した時点T5(H2-,H1切り替えタイミング)までの経過時間を、タイマ39を用いて測定し(ステップS302)、測定した時点T5までの経過時間がステップS301において保存した半周期の時間(電気角180度の時間)の3分の1以下(判別条件の一例)であるか否かを判定する(ステップS303)。図12(a)に示す例では、第1の位置検出用信号S5が変化した時点から時点T5までは、半周期の時間の3分の1以下である(ステップS303:Yes)ので、モータは逆回転(CCW)であると判別する(ステップS304)。
【0082】
次に、図12(b)の正回転の時点T6における、回転方向判別部37Bによる回転方向判別動作について説明する。ステップS301とステップS302とは上記と同じように処理を実行する。
【0083】
回転方向判別部37Bは、第1の位置検出用信号S5が変化した時点(通電切り替えタイミング)から、第2の位置検出用信号S6が変化した時点T6(H2-,H1切り替えタイミング)までの経過時間を、タイマ39を用いて測定し(ステップS302)、測定した時点T6までの経過時間がステップS301において保存した半周期の時間(電気角180度の時間)の3分の1以下(判別条件の一例)であるか否かを判定する(ステップS303)。図12(a)に示す例では、第1の位置検出用信号S5が変化したタイミングから時点T6は、半周期の時間の3分の1以下ではない(ステップS303:No)ので、さらに、第1の位置検出用信号S5が変化した時点から時点T6は、半周期の時間の3分の2以上であるかを判定する(ステップS305)。回転方向判別部37Bは、第1の位置検出用信号S5が変化した時点から時点Tまで6は、半周期の時間の3分の2以上である(ステップS305:Yes)ので、正回転(CW)であると判別できる(ステップS306)。
【0084】
第3の実施形態のモータ駆動制御装置およびモータ駆動制御装置の制御方法でも他の実施形態と同様に、位置センサからの引き出し線を削減して簡易な構成でありながらモータの回転方向を判別可能となる。
【0085】
(実施形態の変形例)
以上の実施形態において、モータ駆動制御装置の構成は図1の構成に限定されず、モータ駆動制御装置における2つのホール素子の配置の構成は図2の構成に限定されない。例えば、以上の実施形態では、3相のブラシレスモータを例に挙げて説明したが、モータの種類や相数は特に限定されない。また、例えば、2つのホール素子を配置する位置は特に限定されないが、ホール素子の配置条件によって第1の位置検出用信号S5と第2の位置検出用信号S6の波形が決まる。
【0086】
さらに、制御回路部の構成も図3、8、11の構成に限定されない。
【0087】
以上の実施形態において、図5、10、13に示した処理フローは具体例であって、処理フローはこれらに限定されない。例えば、判別条件に応じて異なる判定処理を行うこととしてもよい。この際、第2の実施形態および第3の実施形態の判別条件は、第1の実施形態の判別条件と同様に、第1の比較器C1および第2の比較器C2の設定を変えることによって、異なる判別条件を用いることができる。また、第3の実施形態の判別条件として、半周期の時間の3分の1以下であることの判定や半周期の時間の3分の2以上であることの判定に代えて、2つのホール素子の配置条件に応じた比率を判定条件とすることができる。
【符号の説明】
【0088】
1,1A,1B…モータ駆動制御装置、2…モータ駆動部、2a…インバータ回路、2b…プリドライブ回路、20…モータ、3,3A,3B…制御回路部、31…回転数算出部、32…速度指令解析部、33…PWM指令部、35…PWM信号生成部、36…回転位置検出部、37,37A,37B…回転方向判別部、38…回転異常検出部、Sd…駆動制御信号、Sc…速度指令信号、S1…目標回転数(目標回転数信号)、S2…実回転数信号、S3…PWM設定指示信号、S4…PWM信号、S5…第1の位置検出用信号(第1の極性信号の一例)、S6…第2の位置検出用信号(第2の極性信号の一例)、S7…回転方向判別信号、S8…回転異常検出信号、H1…第1のホール素子、H2…第2のホール素子、H1…第1の正のホール信号(正の出力信号の一例)、H1…第1の負のホール信号(負の出力信号の一例)、H2…第2の負のホール信号(負の出力信号の一例)、C1…第1の比較器(第1の比較素子の一例)、C2…第2の比較器(第2の比較素子の一例)、Lu,Lv,Lw…電機子コイル、Vcc…直流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13