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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】樹脂押出成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/885 20190101AFI20240328BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20240328BHJP
【FI】
B29C48/885
B29C48/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020189932
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079013
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂後 隆太
(72)【発明者】
【氏名】米田 善徳
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 修司
(72)【発明者】
【氏名】鈴川 正紘
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-234739(JP,A)
【文献】特開平07-040370(JP,A)
【文献】特開昭55-034957(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103057095(CN,A)
【文献】特開2017-196803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機からの溶融樹脂が押し出されるダイと、
前記ダイから押し出された溶融樹脂をローラ群で挟み込んで成形するロールユニットと、
前記ダイとロールユニットとが接近または離間する方向へダイおよびロールユニットの少なくとも一方を走行させ得る走行機構と、
前記ダイとロールユニットとの相対位置を微調整する微調整機構と
前記ダイとロールユニットとの距離を測定する距離測定器とを備え、
前記微調整機構は、前記距離測定器で測定されたダイとロールユニットとの距離に基づき、前記ダイとロールユニットとの相対位置を微調整することを特徴とする樹脂押出成形装置。
【請求項2】
押出機からの溶融樹脂が押し出されるダイと、
前記ダイから押し出された溶融樹脂をローラ群で挟み込んで成形するロールユニットと、
前記ダイとロールユニットとが接近または離間する方向へダイおよびロールユニットの少なくとも一方を走行させ得る走行機構と、
前記ダイとロールユニットとの相対位置を微調整する微調整機構と
前記ダイとロールユニットとの距離を測定する距離測定器とを備え、
前記距離測定器が、前記走行機構が走行する方向でのダイとロールユニットとの距離を測定する走行方向距離測定器を有し、
前記走行方向距離測定器が、複数であり、前記ローラ群の一端側および他端側のそれぞれで、前記ロールユニットに設けられたものであることを特徴とする樹脂押出成形装置。
【請求項3】
押出機からの溶融樹脂が押し出されるダイと、
前記ダイから押し出された溶融樹脂をローラ群で挟み込んで成形するロールユニットと、
前記ダイとロールユニットとが接近または離間する方向へダイおよびロールユニットの少なくとも一方を走行させ得る走行機構と、
前記ダイとロールユニットとの相対位置を微調整する微調整機構と
前記ダイとロールユニットとの距離を測定する距離測定器とを備え、
前記距離測定器が、
前記走行機構が走行する方向でのダイとロールユニットとの距離を測定する走行方向距離測定器と、
前記走行方向距離測定器よりも遠い距離で、前記走行機構が走行する方向でのダイとロールユニットとの距離を測定する走行用距離測定器とを有することを特徴とする樹脂押出成形装置。
【請求項4】
押出機からの溶融樹脂が押し出されるダイと、
前記ダイから押し出された溶融樹脂をローラ群で挟み込んで成形するロールユニットと、
前記ダイとロールユニットとが接近または離間する方向へダイおよびロールユニットの少なくとも一方を走行させ得る走行機構と、
前記ダイとロールユニットとの相対位置を微調整する微調整機構と
前記ダイとロールユニットとの距離を測定する距離測定器とを備え、
前記距離測定器が、
前記走行機構が走行する方向でのダイとロールユニットとの距離を測定する走行方向距離測定器と、
昇降方向でのダイとロールユニットとの距離を測定する昇降方向距離測定器とを有し、
前記走行方向距離測定器および昇降方向距離測定器が、走行方向距離センサおよび昇降方向距離センサであり、
前記走行方向距離センサおよび昇降方向距離センサが、前記ロールユニットに設けられたものであり、
前記ダイが、前記走行方向距離センサおよび昇降方向距離センサで距離を測定するためのターゲットを兼ねている測定用ドグを有することを特徴とする樹脂押出成形装置。
【請求項5】
走行機構が、ロールユニットをダイに接近または離間する方向へ走行させ得る走行架台であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の樹脂押出成形装置。
【請求項6】
微調整機構が、
走行機構が走行する方向にダイおよび/またはロールユニットの位置を微調整する走行方向微調整機構と、
昇降方向にダイおよび/またはロールユニットの位置を微調整する昇降方向微調整機構とを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の樹脂押出成形装置。
【請求項7】
距離測定器で測定されたダイとロールユニットとの距離に基づき、ダイから押し出された溶融樹脂をローラ群が挟み込んで成形する位置まで、自動でダイとロールユニットとの相対位置の微調整を行う、自動調整機構を備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の樹脂押出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂押出成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂押出成形装置は、例えば、溶融樹脂が固定式のダイ(以下、固定式ダイ)から押し出され、押し出された溶融樹脂をローラ群で挟み込んで成形する装置である。このような樹脂押出成形装置は、ローラ群が車体などの走行架台に搭載されて、当該走行架台が固定式ダイに接近または離脱する方向へ走行するように構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の樹脂押出成形装置は、その図2に示すように、固定式ダイ(押出成形ダイ11)から押し出された溶融樹脂(合成樹脂材料F0)を、キャスティングローラ12と無端状の成形スリーブ15とで挟み込んで成形するものである。この成形スリーブ15は、移動可能な支持ローラ16,17に掛け渡されることで、前記キャスティングローラ12との隔間を調整することができる。この隔間は挟み込まれる溶融樹脂(合成樹脂材料F0)の厚さになるので、前記特許文献1に記載の樹脂押出成形装置は、前記隔間を調整することにより、溶融樹脂(合成樹脂材料F0)から成形されるフィルムFの厚さを調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4441803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に樹脂押出成形装置は、固定式ダイの溶融樹脂を押し出す部分であるリップとローラ群との車輪転がり方向(以下、走行方向)の位置関係が非常に重要である。走行方向の位置関係により、バンク(樹脂だまり)の成形状態やローラと樹脂との密着性などが大きく変化するからである。また、リップとローラ群とのギャップが小さいほど好ましい。このギャップ(以下、エアギャップ)では、溶融樹脂が空気に晒されることで劣化するからである。前記特許文献1に記載の樹脂押出成形装置では、前記走行方向の位置を調整するため、フレーム14を車輪により適切な位置まで走行させる必要がある。ここで、車輪による走行では、作業者が走行の指示を与えると、まず車輪からブレーキが解除されて、その後に車輪が走行のために回転する。さらに、車輪と床面との滑りや駆動伝達誤差により、車輪による走行では、作業者が走行の指示を与えている時間と、車輪が走行のために回転する時間とが一致しないので、フレーム14を精密に適切な位置まで走行させることは極めて困難であった。特にエアギャップを短くした成形での車輪による走行位置の調整では、固定式ダイ(押出成形ダイ11)とローラ群(キャスティングローラ12および成形スリーブ15)との衝突を避けるために、余裕をもって、エアギャップを大きくせざるを得なかった。なお、車輪による走行に限らず、滑り機構など他の手段による走行でも、同様に走行方向におけるダイとローラ群との相対位置を高精度に調整することが極めて困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、ダイとローラ群との走行方向における相対位置を高精度に調整し得る樹脂押出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、第1の発明に係る樹脂押出成形装置は、押出機からの溶融樹脂が押し出されるダイと、
前記ダイから押し出された溶融樹脂をローラ群で挟み込んで成形するロールユニットと、
前記ダイとロールユニットとが接近または離間する方向へダイおよびロールユニットの少なくとも一方を走行させ得る走行機構と、
前記ダイとロールユニットとの相対位置を微調整する微調整機構と
前記ダイとロールユニットとの距離を測定する距離測定器とを備え、
前記微調整機構は、前記距離測定器で測定されたダイとロールユニットとの距離に基づき、前記ダイとロールユニットとの相対位置を微調整するものである。
【0008】
前記課題を解決するため、第2の発明に係る樹脂押出成形装置は、押出機からの溶融樹脂が押し出されるダイと、
前記ダイから押し出された溶融樹脂をローラ群で挟み込んで成形するロールユニットと、
前記ダイとロールユニットとが接近または離間する方向へダイおよびロールユニットの少なくとも一方を走行させ得る走行機構と、
前記ダイとロールユニットとの相対位置を微調整する微調整機構と、
前記ダイとロールユニットとの距離を測定する距離測定器とを備え、
前記距離測定器が、前記走行機構が走行する方向でのダイとロールユニットとの距離を測定する走行方向距離測定器を有し、
前記走行方向距離測定器が、複数であり、前記ローラ群の一端側および他端側のそれぞれで、前記ロールユニットに設けられたものである。
【0009】
前記課題を解決するため、第3の発明に係る樹脂押出成形装置は、押出機からの溶融樹脂が押し出されるダイと、
前記ダイから押し出された溶融樹脂をローラ群で挟み込んで成形するロールユニットと、
前記ダイとロールユニットとが接近または離間する方向へダイおよびロールユニットの少なくとも一方を走行させ得る走行機構と、
前記ダイとロールユニットとの相対位置を微調整する微調整機構と、
前記ダイとロールユニットとの距離を測定する距離測定器とを備え、
前記距離測定器が、
前記走行機構が走行する方向でのダイとロールユニットとの距離を測定する走行方向距離測定器と、
前記走行方向距離測定器よりも遠い距離で、前記走行機構が走行する方向でのダイとロールユニットとの距離を測定する走行用距離測定器とを有するものである。
【0010】
前記課題を解決するため、第4の発明に係る樹脂押出成形装置は、押出機からの溶融樹脂が押し出されるダイと、
前記ダイから押し出された溶融樹脂をローラ群で挟み込んで成形するロールユニットと、
前記ダイとロールユニットとが接近または離間する方向へダイおよびロールユニットの少なくとも一方を走行させ得る走行機構と、
前記ダイとロールユニットとの相対位置を微調整する微調整機構と、
前記ダイとロールユニットとの距離を測定する距離測定器を備え
前記距離測定器が、
前記走行機構が走行する方向でのダイとロールユニットとの距離を測定する走行方向距離測定器と、
昇降方向でのダイとロールユニットとの距離を測定する昇降方向距離測定器とを有し、
前記走行方向距離測定器および昇降方向距離測定器が、走行方向距離センサおよび昇降方向距離センサであり、
前記走行方向距離センサおよび昇降方向距離センサが、前記ロールユニットに設けられたものであり、
前記ダイが、前記走行方向距離センサおよび昇降方向距離センサで距離を測定するためのターゲットを兼ねている測定用ドグを有するものである。
【0011】
また、第5の発明に係る樹脂押出成形装置は、第1乃至第4のいずれかの発明に係る樹脂押出成形装置における走行機構が、ロールユニットをダイに接近または離間する方向へ走行させ得る走行架台であるものである。
【0012】
また、第6の発明に係る樹脂押出成形装置は、第1乃至第5のいずれかの発明に係る樹脂押出成形装置における微調整機構が、
走行機構が走行する方向にダイおよび/またはロールユニットの位置を微調整する走行方向微調整機構と、
昇降方向にダイおよび/またはロールユニットの位置を微調整する昇降方向微調整機構とを有するものである。
【0015】
また、第の発明に係る樹脂押出成形装置は、第1乃至第のいずれかの発明に係る樹脂押出成形装置において、
距離測定器で測定されたダイとロールユニットとの距離に基づき、ダイから押し出された溶融樹脂をローラ群が挟み込んで成形する位置まで、自動でダイとロールユニットとの相対位置の微調整を行う、自動調整機構を備えるものである。
【発明の効果】
【0016】
前記樹脂押出成形装置によると、ダイとローラ群との走行方向における相対位置を高精度に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る樹脂押出成形装置の概略側面図である。
図2】同樹脂押出成形装置のダイに向けて走行架台が走行している状態を示す概略側面図である。
図3】走行方向微調整機構によりロールユニットを走行方向に微調整している状態を示す概略側面図である。
図4】昇降方向微調整機構によりロールユニットを昇降方向に微調整している状態を示す概略側面図である。
図5】ロールユニットのローラ群がダイに十分近づけられた状態を示す概略側面図である。
図6】走行方向でのダイとロールユニットとの距離を測定する走行方向距離センサおよび走行用距離センサの配置を示す概略拡大斜視図である。
図7】ダイの好ましい形状を示す概略拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る樹脂押出成形装置について、図面に基づき説明する。
【0019】
図1に示すように、この樹脂押出成形装置1は、押出機10からの溶融樹脂Rが押し出されるダイ2と、このダイ2から押し出された溶融樹脂Rをローラ群30で挟み込んで成形するロールユニット3とを備える。前記ダイ2は、押出機10から押し出された溶融樹脂Rを成形して下端のリップ20から押し出すものである。なお、以下のダイ2は、所定の位置に固定される固定式として説明するが、移動可能な移動式でもよい。前記ローラ群30は、複数のローラ31から構成され、図1では3本のローラ31から構成される例を示すが、2本のローラ31から構成されてもよい。なお、前記ローラ群30は、図示しないが、無端状などのスチールベルトを複数のローラ31に掛け渡したものでもよい。各ローラ31は、いずれも軸32を中心に回転する。これらの複数のローラ31のうち、隣り合う2つのローラ31が、回転しながら前記ダイ2(具体的にはリップ20)からの溶融樹脂Rを挟み込んで成形する。このため、前記ダイ2のリップ20から押し出された溶融樹脂Rを2つのローラ31が挟み込んで成形している際に、前記ダイ2のリップ20と2つのローラ31とギャップが、エアギャップGとなる。
【0020】
また、前記樹脂押出成形装置1は、前記ロールユニット3を搭載してダイ2に接近または離間する方向へ走行し得る走行架台5(走行機構の一例である)と、前記ダイ2とロールユニット3との相対位置を微調整する微調整機構6とを有する。ここで、微調整とは、1mm以下の単位での位置の変更を意味する。図示しないが、前記ロールユニット3は、設置された複数のローラ31を回転させる回転機構と、前記溶融樹脂Rを挟み込むローラ31の隙間を調整する隙間調整機構とを有する。この隙間調整機構により、溶融樹脂Rを挟み込むローラ31の隙間が調整されることで、溶融樹脂Rから成形されるシートの厚さを調整することが可能になる。前記走行架台5は、走行するために、下部に車輪50,51を有してもよい。前記走行架台5が有する車輪50,51は、複数の場合、少なくとも1つが駆動輪51である。図1図5では、一例として、図面の右側に位置する車輪51を駆動輪51として示す。また、前記車輪50,51は、図示しないが、レール上を走行するものでもよい。なお、前記走行架台5は、走行するために、車輪50,51を有する場合に限られず、滑り機構などを有してもよい。
【0021】
前記微調整機構6は、前記ダイ2とロールユニット3との相対位置を微調整する機構であれば限定されないが、前記走行架台5が走行する方向にロールユニット3の位置を調整する走行方向微調整機構61と、昇降方向にロールユニット3の位置を微調整する昇降方向微調整機構66とを有することが好ましい。前記微調整機構6は、前記走行方向微調整機構61および昇降方向微調整機構66を有することで、簡素な構成でロールユニット3の位置が精密に微調整されるからである。ここで、前記走行架台5が走行する方向(以下、走行方向とも称する)は、水平方向に限定されないが、水平方向に近いほど好ましい。また、前記昇降方向は、鉛直方向(または走行方向に直交する方向)に限定されないが、鉛直方向(または走行方向に直交する方向)に近いほど好ましい。
【0022】
前記走行方向微調整機構61は、例えば、回転により走行架台5から走行方向に出退する走行方向ねじ62と、この走行方向ねじ62を回転させるサーボモータ63と、前記走行方向ねじ62に取り付けられたスライドフレーム64と、このスライドフレーム64をスライド自在に走行架台5から支持するリニアガイド65とを有する。前記昇降方向微調整機構66は、前記ロールユニット3に取り付けられて回転によりスライドフレーム64から昇降方向に出退する昇降方向ねじ67と、この昇降方向ねじ67を回転させるインバータモータ68とを有する。前記走行方向ねじ62および昇降方向ねじ67には、例えば、台形ねじ、ボールねじ、または、スクリューねじなどが採用される。勿論、前述した走行方向微調整機構61および昇降方向微調整機構66の構成は、一例に過ぎない。例えば、サーボモータ63とインバータモータ68には、他のアクチュエータが使用されてもよい。
【0023】
前記樹脂押出成形装置1は、前記ダイ2とロールユニット3との距離を測定する距離センサ7(距離測定器の一例である)を有することが好ましい。前記ダイ2とロールユニット3との距離が得られることで、前記ロールユニット3のローラ群30をダイ2に一層近づけられるからである。前記距離センサ7は、前記ダイ2、ロールユニット3および走行架台5のいずれに配置されてもよいが、温度上昇の小さい方であるロールユニット3および/または走行架台5に配置される方が好ましい。なお、図面では、前記距離センサ7がロールユニット3に配置されている例を示す。前記微調整機構6が走行方向微調整機構61および昇降方向微調整機構66を有するのであれば、前記距離センサ7は、走行方向でのダイ2とロールユニット3との距離を測定する走行方向距離センサ71(走行方向距離測定器の一例である)と、昇降方向でのダイ2とロールユニット3との距離を測定する昇降方向距離センサ76(昇降方向距離測定器の一例である)とを有することが好ましい。走行方向に関しては走行方向距離センサ71および走行方向微調整機構61により、昇降方向に関しては昇降方向距離センサ76および昇降方向微調整機構66により、前記ロールユニット3のローラ群30をダイ2に一層近づけられるからである。具体的には、当該構成により、走行方向および昇降方向にそれぞれ0.1mm以下の単位でロールユニット3の位置が微調整される。このため、当該ロールユニット3に設置されたローラ群30をダイ2に1mm以下まで近づけることが可能になる。
【0024】
前記距離センサ7は、さらに、前記走行方向距離センサ71よりも遠い距離で、走行方向でのダイ2とロールユニット3との距離を測定する走行用距離センサ75(走行用距離測定器の一例である)を有することが好ましい。当該走行用距離センサ75は、前記走行方向距離センサ71よりも遠い距離で測定する分、前記走行方向距離センサ71よりも精度を低くすることができる。これにより、ダイ2とロールユニット3との距離が遠い場合、すなわち、走行架台5が走行している際など低い精度の測定で足りる場合、前記走行用距離センサ75により距離を測定し、その後、ダイ2とロールユニット3との距離が近い場合、すなわち、前記ロールユニット3が走行方向微調整機構61により微調整されている際など高い精度の測定が必要な場合、前記走行方向距離センサ71により距離を測定することが可能になる。
【0025】
図1図5には、前記走行方向距離センサ71、走行用距離センサ75および昇降方向距離センサ76がロールユニット3に配置された例を示すが、これらの配置は一例であって限定されるものではない。しかしながら、前記走行方向距離センサ71および昇降方向距離センサ76は、他の部材と干渉しない位置でローラ群30(特に、溶融樹脂Rを挟み込む隙間)に近い方が、精度の面から好ましい。
【0026】
前記距離センサ7がロールユニット3または走行架台5に設けられている場合、前記ダイ2は、前記距離センサ7で距離を測定するためのターゲットとなる測定用ドグ24を有することが好ましい。前記距離センサ7は、前記測定用ドグ24をターゲットとすることで、高い精度の測定が可能になるからである。図1に示すように、前記距離センサ7がロールユニット3に配置されている場合、前記測定用ドグ24は、前記ダイ2に配置されるとともに、前記走行方向距離センサ71、走行用距離センサ75および昇降方向距離センサ76で距離を測定するためのターゲットを兼ねていることが好ましい。これにより、前記測定用ドグ24が簡素な構成になるからである。この場合、前記測定用ドグ24は、走行方向に直交して走行方向距離センサ71および走行用距離センサ75のターゲットとなる縦部材25と、この縦部材25の下端に設けられるとともに昇降方向に直交して昇降方向距離センサ76のターゲットとなる横部材26とを有する。
【0027】
前記樹脂押出成形装置1は、前記距離センサ7で測定されたダイ2とロールユニット3との距離に基づき、ダイ2から押し出された溶融樹脂Rをローラ群30が挟み込んで成形する位置までの、前記走行架台5の走行および微調整機構6によるロールユニット3の位置の微調整を手動で行ってもよい。しかしながら、前記走行架台5の走行および微調整機構6によるロールユニット3の位置の微調整は、自動で行われることが好ましい。この場合、前記樹脂押出成形装置1は、前述した自動のために、自動調整機構8を備える。
【0028】
前記自動調整機構8は、例えば、前記走行方向距離センサ71および走行用距離センサ75による測定の結果を得る走行方向測定部81と、前記ダイ2とローラ群30との走行方向における所望の距離が入力される走行方向入力部82と、前記走行方向測定部81で得られた測定の結果から走行方向入力部82に入力された所望の走行方向における距離を減算して必要な走行方向の移動距離を算出する走行方向移動距離算出部83とを有する。また、前記自動調整機構8は、例えば、前記昇降方向距離センサ76による測定の結果を得る昇降方向測定部86と、前記ダイ2とローラ群30との昇降方向における所望の距離が入力される昇降方向入力部87と、前記昇降方向測定部86で得られた測定の結果から昇降方向入力部87に入力された所望の昇降方向における距離を減算して必要な昇降方向の移動距離を算出する昇降方向移動距離算出部88とを有する。前記走行方向移動距離算出部83は、算出した必要な走行方向の移動距離だけ、前記走行架台5の走行および走行方向微調整機構61によるロールユニット3の位置(走行方向)の微調整を行う。前記昇降方向移動距離算出部88は、算出した必要な昇降方向の移動距離だけ、前記昇降方向微調整機構66によるロールユニット3の位置(昇降方向)の微調整を行う。
【0029】
以下、前記樹脂押出成形装置1の動作について説明する。
【0030】
まず、図2に示すように、当該ダイ2は、その下端のリップ20から、溶融樹脂Rの質が安定するまで押出機10により溶融樹脂Rが押し出され続ける。一方で、走行架台5に搭載された構成は、ダイ2から離れた位置で待機する。なお、予め、自動調整機構8の走行方向入力部82と昇降方向入力部87には、所望の走行方向および昇降方向における距離がそれぞれ入力されている。
【0031】
ダイ2から押し出される溶融樹脂Rの質が安定すると、走行用距離センサ75が測定用ドグ24によりダイ2との距離を測定し、測定された走行方向の距離が走行方向測定部81に送信される。走行方向移動距離算出部83は、走行方向測定部81で得られた測定の結果から走行方向入力部82に入力された所望の走行方向における距離を減算して必要な走行方向の移動距離を算出し、走行架台5をダイ2に接近する方向へ走行させた後、当該走行架台5を停止させる。
【0032】
必要な走行方向の移動距離だけ走行架台5を走行および停止させても、車輪50,51による走行および停止では微調整が困難なので、図3に示すように、ローラ群30が走行方向での所望の位置に到達しない場合もある。この場合、ローラ群30は、ダイ2のリップ20から押し出される溶融樹脂Rを挟み込める位置まで到達していない。これを解消するために、走行方向距離センサ71が測定用ドグ24によりダイ2との距離を測定し、測定された走行方向の距離が走行方向測定部81に送信される。走行方向移動距離算出部83は、走行方向測定部81で得られた測定の結果からさらに必要な走行方向の移動距離を算出し、ローラ群30が走行方向での所望の位置に到達するまで、走行方向微調整機構61により走行方向にロールユニット3の位置を微調整する。
【0033】
ローラ群30が走行方向での所望の位置に到達しても、図4に示すように、ローラ群30が昇降方向での所望の位置に到達しておらず、ダイ2のリップ20とローラ群30とは昇降方向に余分な距離がある。この余分な距離を解消するために、昇降方向距離センサ76が測定用ドグ24によりダイ2との距離を測定し、測定された昇降方向の距離が昇降方向測定部86に送信される。昇降方向移動距離算出部88は、昇降方向測定部86で得られた測定の結果から昇降方向入力部87に入力された所望の昇降方向における距離を減算して必要な昇降方向の移動距離を算出し、ローラ群30が昇降方向での所望の位置に到達するまで、昇降方向微調整機構66により昇降方向にロールユニット3の位置を微調整する。
【0034】
ローラ群30が昇降方向でも所望の位置に到達すれば、図5に示すように、ローラ群30がダイ2のリップ20に十分近づけられた状態となる。こうして、ダイ2のリップ20から溶融樹脂Rが押し出されて、ダイ2のリップ20から押し出された溶融樹脂Rがローラ群30で挟み込まれて成形される。
【0035】
樹脂押出成形装置1の前述した動作では、ダイ2から押し出される溶融樹脂Rの質が安定した後から、自動調整機構8により自動で動作することを説明したが、一連の運転立上げの動作を全て自動にしてもよい。運転立上げの動作だけでなく、運転立上げの逆動作である運転終了の動作も自動にしてもよい。勿論、前述した自動の動作に限定されるものではなく、部分的または全ての動作を手動にしてもよい。
【0036】
このように、前記樹脂押出成形装置1によると、走行架台5の走行により所望の位置にローラ群30を移動できなくても、微調整機構6によりロールユニット3とともにローラ群30の位置が微調整される。このため、ローラ群30をダイ2のリップ20に十分近づけた状態でも走行方向への微調整が可能となり、言い換えれば、ダイ2とローラ群30との走行方向における相対位置を高精度に調整することができる。これにより、溶融樹脂Rの落とし位置の調整による成形改善が容易にできる。また、ローラ群30を固定式ダイ2のリップ20に十分近づけることが可能となり、結果として、エアギャップGを低減することができる。
【0037】
また、距離センサ7がダイ2とロールユニット3との距離を得ることにより、ローラ群30をダイ2のリップ20に一層近づけることが可能となるので、エアギャップGを一層低減することができる。
【0038】
さらに、微調整機構6が有する走行方向微調整機構61および昇降方向微調整機構66により、ロールユニット3とともにローラ群30の位置が精密に微調整される。これにより、ローラ群30をダイ2のリップ20に一層近づけることが可能となり、結果として、エアギャップGを一層低減することができる。
【0039】
加えて、距離センサ7が走行方向距離センサ71および昇降方向距離センサ76を有することにより、走行方向微調整機構61および昇降方向微調整機構66による微調整が一層精密になる。これにより、ローラ群30をダイ2のリップ20に一層近づけることが可能となり、結果として、エアギャップGを一層低減することができる。
【0040】
また、距離センサ7が走行用距離センサ75も有することにより、不必要に精度の高い距離センサが不要になるので、簡素な構成にすることができる。
【0041】
また、自動調整機構8により動作が自動になることで、手動によるミスが防止される。これにより、ローラ群30をダイ2のリップ20に一層近づけることが可能となり、結果として、エアギャップGを一層低減することができる。
【0042】
ところで、前記実施の形態では、距離測定器の一例として距離センサ7について説明したが、距離を測定するものであれば特に限定されない。例えば、前記距離測定器は、前記距離センサ7の代わりに、前記ダイ2とロールユニット3とを撮影するカメラと、このカメラで撮影された画像の解析からダイ2とロールユニット3との距離を算出する画像解析部とを有してもよい。前記カメラおよび画像解析部により、前記ダイ2とロールユニット3との位置関係が精密に把握されるので、ローラ群30をダイ2のリップ20に一層近づけることが可能となり、結果として、エアギャップGを一層低減することができる。なお、前記カメラおよび画像解析部は、走行方向距離センサ71の代わりとなる走行方向距離測定部でもよく、昇降方向距離センサ76の代わりとなる昇降方向距離測定部でもよい。
【0043】
また、前記実施の形態では、前記走行方向距離センサ71および走行用距離センサ75の数について説明しなかったが、図6に示すように、前記走行方向距離センサ71は、ローラ31の一端側と他端側とにそれぞれ1つずつ、合計2つ配置されることが好ましい。このように走行方向距離センサ71が2つ配置されることで、ダイ2とロールユニット3との距離がローラ31の一端側と他端側とで不一致の場合を検出できる。この場合、すなわち、走行方向に直交する面に対してダイ2が傾斜している場合、走行方向微調整機構61によりロールユニット3の位置をローラ31の一端側と他端側とで微調整することにより、当該傾斜が解消される。この場合、前記走行方向微調整機構61は、ローラ31の一端側と他端側とで、走行方向にそれぞれ微調整が可能な駆動部を有する。なお、前記走行用距離センサ75は、1つで足りる。
【0044】
さらに、前記実施の形態では、ダイ2の形状について詳細に説明しなかったが、図7に示すように、ダイ2は、そのリップ20をローラ群30に一層近づけられる形状であることが好ましい。具体的には、前記リップ20に走行方向で隣接する部材21がなす角θを小さく、且つ、先端部の細い部分が長い方が好ましい。
【0045】
加えて、前記実施の形態では説明しなかったが、前記微調整機構6によるロールユニット3の微調整にインターロックが作動するよう構成してもよい。これにより、何らかの原因でローラ群30がダイ2に近づき過ぎた場合、インターロックが作動することで、ロールユニット3とともにローラ群30の移動が停止されるので、ローラ群30がダイ2に衝突することを防止できる。前記インターロックは、その基本値が、ローラ31の径、並びに、ダイ2の下端(リップ20)およびその近傍の形状を予め設定しておくことにより決定される。また、前記インターロックは、前記基本値に、ローラ31の隙間、走行方向の距離および昇降方向の距離が変数として入力される。このため、前記ダイ2の下端およびその近傍がローラ31の隙間に挿入されている量(昇降方向)によって、どの程度のオフセット(走行方向)を取れるかなどが容易に決定される。また、前記ダイ2の先端およびその近傍の形状を変更する場合なども、容易にロールユニット3の位置制御が可能になる。
【0046】
また、前記実施の形態では、前記走行機構として、前記ロールユニット3を走行させる走行架台5について説明したが、前記ダイ2および押出機10を走行させる機構でもよく、前記ロールユニット3とダイ2および押出機10との双方を走行させる機構でもよい。
【0047】
また、前記実施の形態では、前記微調整機構6として、前記ロールユニット3の位置を微調整するものについて説明したが、前記ダイ2の位置を微調整するものでもよく、前記ロールユニット3およびダイ2の双方を微調整するものでもよい。
【0048】
また、前記実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、前述した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。前記実施の形態で説明した構成のうち「課題を解決するための手段」での第1の発明として記載した構成以外については、任意の構成であり、適宜削除および変更することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
R 溶融樹脂
G エアギャップ
1 樹脂押出成形装置
2 ダイ
3 ロールユニット
5 走行架台
6 微調整機構
7 距離センサ
8 自動調整機構
20 リップ
24 測定用ドグ
30 ローラ群
50,51 車輪
61 走行方向微調整機構
66 昇降方向微調整機構
71 走行方向距離センサ
75 走行用距離センサ
76 昇降方向距離センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7