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特許7461875病気の症状の治療又は予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)バインダー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】病気の症状の治療又は予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)バインダー
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240328BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20240328BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240328BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240328BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240328BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240328BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240328BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240328BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20240328BHJP
   C07K 16/26 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P1/08
A61P3/00
A61P9/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/06
A61P29/00
A61P37/00
C07K16/26 ZNA
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020517143
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018075987
(87)【国際公開番号】W WO2019057992
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】17192999.5
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17203370.6
(32)【優先日】2017-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514122410
【氏名又は名称】アドレノメト アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ベルクマン
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-521351(JP,A)
【文献】特表2015-502930(JP,A)
【文献】GEVEN, C.B.C.A.G. et al,Safety, tolerability and pharmacokinetics/-dynamics of the anti-adrenomedullin antibody Adrecizumab: a first in man study,Intensive Care Medicine Experimental ,2017年09月20日,Vol.5(suppl.2):44,0427
【文献】GEVEN, C. et al,Safety, tolerability and pharmacokinetics/pharmacodynamics of the adrenomedullin antibody adrecizumab in a first-in-human study and during experimental human endotoxaemia in healthy subjects,Br J Clin Pharmacol,2018年06月01日,Vol.84,pp.2129-2141
【文献】ClinicalTrials.gov[online],2017年03月20日,検索日:2022年9月1日、URL:https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT03083171?V_2=View#StudyPageTop
【文献】BLET, A. et al,Hemodynamics effects of adrecizumab in sepsis RAT,Intensive Care Medicine Experimental,2015年,Vol.3(Suppl.1),A618
【文献】THIELE, C. et al,Effects of a non-neutralizing humanized monoclonal anti-adrenomedullin antibody in a porcine two-hit model of hemorrhage and septic shock,Critical Care,2018年03月29日,Vol.22(Suppl.1):82,P107
【文献】北村 和雄,アドレノメデュリンの展開研究,心臓,2013年,Vol.45,pp.1496-1502
【文献】RAVI, V. et al,Correlation of Tumor Necrosis Factor Levels in the Serum adn Cerebrospinal Fluid With Clinical Outcome in Japanese Encephalitis Patients,Journal of Medical Virology,1997年,Vol.51,pp.132-136
【文献】PRADHAN, S. et al,The role of C-reactive protein as a diagnostic predictor of sepsis in a multidisciplinary Intensive Care Unit of a tertiary care center in Nepal,Indian J Crit Care Med,2016年,Vol.20,pp.417-420
【文献】SUZANA, M. A. et al,C-Reactive Protein Levels Correlate With Mortality and Organ Failure in Critically III Patients,CHEST,2003年,vol.123(6),pp.2043-2049
【文献】WEBER, J. et al,Sandwich Immunoassay for Bioactive Plasma Adrenomedullin,JALM,2017年09月01日,pp.222-233
【文献】MARINO, R. et al,Plasma adrenomedullin is associated with short-term mortality and vasopressor requirement in patients admitted with sepsis,Critical Care,2014年,Vol.18,R34
【文献】KIERS, D. et al.,Characterization of a model of systemic inflammation in humans in vivo elicited by continuous infusion of endotoxin.,Sci. Rep.,2017年01月05日,Vol.7 Article Number:40149,p.1-10
【文献】小林和道,Patient-Centeredの促進に伴うPatient Reported Outcomeの新薬開発への適用に関する研究,医薬産業政策研究所 リサーチペーパー・シリーズ,2015年03月,No.64,pp.1-124, https://www.jpma.or.jp/opir/research/rs_064/pb1snq0000001178-att/pdf_article_064_01.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61P 1/00-43/00
C07K 16/00-16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療又は予防を必要とする象における病気の症状を治療又は予防するための医薬組成物であって、抗アドレノメデュリン抗体又は抗アドレノメデュリン抗体断片を含み、ここで、前記対象がヒトであり、そして
前記病気の症状が、吐き気、頭痛、筋肉痛、背部痛、及び/又は震えからなる群から選択され、
前記病気が、サンプル中のC反応性タンパク質(CRP)の量が10mg/L以上であること、及び/又はサンプル中のTNFの量が50pg/ml以上であること、及び/又はサンプル中のバイオADMの量が43pg/ml以上であることを特徴とし
前記サンプルが、全血、血漿、血清からなる群から選択され、そして
前記抗体又は断片が、ADM又はその断片に結合するヒト化モノクローナル抗体又は断片であり、
ここで、重鎖は以下の配列:
CDR1: 配列番号5
GYTFSRYW
CDR2: 配列番号6
ILPGSGST
CDR3: 配列番号7
TEGYEYDGFDY
を含み、そして前記軽鎖が、以下の配列:
CDR1: 配列番号8
QSIVYSNGNTY
CDR2:
RVS
CDR3: 配列番号9
FQGSHIPYT
を含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
治療又は予防を必要とする対象において、病気の症状を治療もしくは予防するための、又はそのような症状を特徴とする病気を治療もしくは予防するための医薬組成物であって、抗アドレナメデュリン(ADM)抗体又は抗ADM抗体断片を含み、そのような症状又は病気の治療及び/又は予防を必要とする患者における病気が、炎症性疾患、自己免疫疾患、代謝性疾患、脳疾患、心血管疾患及び薬剤誘発性疾患を含む適応症の群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
治療又は予防を必要とする対象において病気の症状を治療もしくは予防するための医薬製剤であって、請求項1に記載の医薬組成物を含み、前記対象がヒトであり、そして
病気の症状が、吐き気、頭痛、筋肉痛、背部痛、及び/又は震えからなる群から選択され、ここで、前記疾患が、10mg/L以上である試料中のC反応性タンパク質(CRP)の量、及び/又は50pg/ml以上である試料中のTNFの量、及び/又は43pg/ml以上である試料中のバイオADMの量によって特徴付けられ、そしてここで、前記試料が、全血、血漿、血清からなる群から選択される、前記医薬製剤。
【請求項4】
治療又は予防を必要とする対象において、病気の症状を治療もしくは予防するための、又はそのような症状を特徴とする病気を治療もしくは予防するための、請求項3に記載の医薬製剤であって、そのような症状又は病気の治療及び/又は予防を必要とする患者における病気が、炎症性疾患、自己免疫疾患、代謝性疾患、脳疾患、心血管疾患及び薬物誘発性疾患を含む適応症の群から選択される、前記医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、かつ/又は前記(said)症状を特徴とする疾患の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は抗アドレノメデュリン抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドである。病気の症状は、対象における吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択されうる。前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、ADMのアミノ酸1-52(配列番号1)又はその断片に結合することができる。
【背景技術】
【0002】
多様な疾患又は病気は、共通の、部分的に非特異的な症状を有することがあり、その症状は、それを患っている個人にとって不快なものから耐えられないものまでさまざまでありうる。非常に多くの場合、複数の症状を経験している人は、これらの症状を緩和するために数種の薬を服用する必要がある。多くのさまざまな基礎疾患又は病気に関連する症状の治療又は予防の新しい形態に対する継続的な必要性が存在する。特に、基礎疾患又は病気に関連する複数の症状の治療又は予防に使用できる薬剤又は薬物を提供することが有用であろう。本発明は、その必要性に対処する。
【発明の概要】
【0003】
ペプチドアドレノメデュリン(ADM)は、1993年にヒト褐色細胞腫から単離された52アミノ酸からなる新規降圧ペプチドとして初めて報告された(Kitamura K. et al. 1993. Biochemical and Biophysical Research Communications Vol. 192 (2): 553-560)。同じ年に、185個のアミノ酸からなる前駆体ペプチドをコードするcDNAと、その前駆体ペプチドの完全なアミノ酸配列も報告された。とりわけ、N末端に21個のアミノ酸のシグナル配列を含む前駆体ペプチドは、「プレプロアドレノメデュリン」(プレプロADM)と呼ばれる。本明細書では、指定されるアミノ酸位置はすべて、通常、185個のアミノ酸を含むプレプロADMに関する。ペプチドアドレノメデュリン(ADM)は、52個のアミノ酸(配列番号1)を含むペプチドであって、プレプロADMからタンパク質分解的切断によって形成され、プレプロADMの95~146番目のアミノ酸を含むペプチドである。今のところ、プレプロADMの切断で形成されたペプチド断片のほんの少数の断片、具体的には生理学的に活性なペプチドであるアドレノメデュリン(ADM)及びプレプロADMの21個のシグナルペプチドの後に続く20個のアミノ酸(22-41)を含むペプチドである「PAMP」が、より正確に特徴付けられている。1993年のADMの発見及び特徴付けは、集中的な研究活動の引き金となり、その結果はさまざまな総説論文にまとめられており、本明細書に関連しては、特に「ペプチド」のADMをテーマとして扱う号に見出される論文を特に参照する(論説、Takahashi K. 2001. Peptides 22:1691)及び(Eto T. 2001. Peptides 22: 1693-1711)。さらなる総説は(Hinson et al. 2000. Endocrine Reviews 21(2):138-167)である。これまでの科学的研究で、とりわけADMは多機能調節ペプチドとみなされうることが分かっっている。ADMは、グリシンによって伸長された不活性型で循環系に放出される(Kitamura K. et al. 1998. Biochem. Biophys. Res. Commun. 244(2):551-555)。ADMに特異的で、おそらく同様にADMの効果を調節する結合タンパク質も存在する(Pio R. et al. 2001. The Journal of Biological Chemistry 276(15):12292-12300)。これまでの研究で最も重要であるADM及びPAMPの生理的効果は、血圧に影響を及ぼす効果であった。
【0004】
ADMは効果的な血管拡張因子であり、降圧効果をADMのC末端部分の特定のペプチドセグメントと関連付けることができる。さらに、プレプロADMから形成される上記のさらなる生理活性ペプチドPAMPも、ADMとは異なる作用機序を有するようであっても、同様に降圧作用を示すことが見出されている。
【0005】
さらに、循環中及び他の生物学的液体中で測定できるADMの濃度は、多くの病理学的状態において、健常対照者に見られる濃度よりも有意に高いことが見出されている。したがって、うっ血性心不全、心筋梗塞、腎臓病、高血圧性障害、糖尿病、ショックの急性期、並びに敗血症及び敗血症性ショックの患者におけるADMレベルは、程度はさまざまであるが、大幅に増加する。PAMP濃度もまた、上述の病理学的状態のいくつかで増加するが、血漿レベルはADMと比較して低い(Eto, T.、前掲)。さらに、敗血症において異常に高濃度のADMが観察され、敗血症性ショックにおいて最高濃度が観察されることが知られている((Eto, T.、前掲)並びに(Hirata et al. Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 1996. 81(4): 1449-1453、Ehlenz K. et al. 1997. Exp Clin Endocrinol Diabetes 105: 156-162 )、Tomoda Y. et al. 2001. Peptides 22: 1783-1794 、Ueda S. et al. 1999. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 160: 132-136、及びWang P. Peptides 2001. 22: 1835-1840を参照)。
【0006】
片頭痛におけるアドレノメデュリンの役割についての知見は限られている。アドレノメデュリンは脳循環内で血管拡張作用を有するので、片頭痛に関与すると仮定されている。一方、片頭痛を患う患者へのヒトADM静脈内注入の投与は、プラセボと比較して、有意に多くの頭痛又は片頭痛を誘発しなかった(Petersen et al. 2008. Cephalalgia 29: 23-30)。さらに、Akcaliらは、片頭痛患者の自然経過において血漿アドレノメデュリンレベルが低いことを報告した(Akcali A. 2016. Medical Science and Discovery 3(4): 153-158)。一方、Kisらは、抗片頭痛薬としてのADM媒介増殖作用を抑制するための潜在的な治療ツールとして、新規で、強力で、特異的で、かつ可能ならば非ペプチド性の受容体拮抗薬の開発が必要であると述べている(Kis et al. 2003. Hypertens Res 26 (Suppl): S61-S70)。
【0007】
定義
発明を詳細に記載する前に、明細書全体を通して使用される特定の技術用語の定義を提供することが便宜的であると考えられる。本発明を特定の実施形態に関して記載することになるが、この記載は限定的な意味で解釈されるべきではない。本発明の好ましい実施形態を詳細に記載する前に、本発明を理解するために重要な定義が与えられる。
【0008】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」及び「an」は、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、それぞれの複数形も含む。
【0009】
本発明に関連して、「約」及び「およそ」という用語は、当業者が問題の特徴の技術的効果を理解してさらに確実にするようになる精度の間隔を意味する。典型的には、この用語は、示された数値から±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、さらにより好ましくは±5%外れることを示す。
【0010】
「含む(comprising)」という用語は限定するものではないことが理解されるべきである。本発明では、から(of)「なる(consisting)」という用語は、を(of)「含む(comprising)」という用語の好ましい実施形態であると考えられる。以下、ある群が、少なくともある特定の数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはそれらの実施形態のみからなる群も包含することを意味する。
【0011】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになる本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0012】
本明細書で使用される場合、「吐き気」という用語は、不随意の嘔吐の衝動を伴う、胃上部の不調及び不快感の感覚を指す(Metz A. 2017. Australian Family Physician Vol. 36 (9): 688-692)。嘔吐の前に起こることもあるが、人は嘔吐を伴わない吐き気を催しうる。吐き気は長く続くと、弱くなる症状である。吐き気は非特異的な症状であり、考えられる原因が多くあることを意味する。吐き気のいくつかの一般的な原因には、乗り物酔い、めまい、片頭痛、失神、低血糖、胃腸炎(胃感染症)、又は食中毒がある。吐き気は、化学療法を含む多くの薬の副作用又は妊娠初期のつわりなどである。吐き気はまた、不安、嫌悪感、抑うつによって引き起こされることもある。
【0013】
本明細書で使用される場合、「頭痛」という用語は、頭又は首の領域のどこかにおける痛みの症状である。片頭痛(鋭い痛み又はずきずきする痛み)、緊張型頭痛、群発頭痛で起こる(Waldman et al. 2014. J Yoga Phys Ther 2014, 4:1)。重度の頭痛がある人では、抑うつのリスクも高くなる。頭痛は、重症であろうとなかろうと、多くの病態の結果として起こりうる。頭痛についてさまざまな分類体系が存在する。頭痛の原因としては、疲労、睡眠不足、ストレス、薬物の影響、レクリエーショナルドラッグの影響、ウイルス感染、大きな騒音、風邪、頭部負傷、非常に冷たい食物又は飲料の急速な摂取、歯又は副鼻腔の問題が挙げられうることがよく知られている。
【0014】
頭痛は「一次性」又は「二次性」に大別される(Oleson 2005. Functional Neurology 20(2): 61-68)。一次性頭痛は良性で反復性の頭痛であり、基礎疾患や器質的な問題によって生じるものではない。例えば、片頭痛は一次性頭痛の一種である。一次性頭痛は日常的に激しい痛みや障害を引き起こすことがあるが、危険ではない。一次性頭痛の4つのカテゴリーは次の通りである:片頭痛、緊張型頭痛(TTH)、群発頭痛及び他の三叉神経・自律神経性頭痛、並びに他の一次性頭痛。
【0015】
二次性頭痛は、器質性、代謝性、薬物誘発性のもので、感染症、頭部外傷、血管障害、脳出血、又は腫瘍のような基礎疾患によって引き起こされる。二次性頭痛は無害なことも危険なこともある。片頭痛は、中等度から重度であるの反復性の頭痛を特徴とする一次性頭痛疾患である(総説については、Diener et al. 2012. Nat Rev Neurol. 8(3):162-71を参照)。典型的には、頭痛は頭部の半分に起こり、拍動性で、2~72時間続く。関連症状としては、吐き気、嘔吐、及び光、音、又は匂いに対する過敏が挙げられうる。一般に痛みは身体活動によって悪化する。前兆がみられる人は1/3に及び、典型的には短期間の視覚障害で、頭痛がすぐに起こるであろうことを示す。時折、前兆の後に頭痛がほとんど又は全く起こらないことがある。
【0016】
本明細書で使用される場合、「筋肉痛(muscle aches)」又は「筋肉痛(muscle pain)」という用語は、「筋肉痛(myalgia)」とも呼ばれ、多くの疾患及び障害の症状を指す(総説については、Kyriakides et al. 2013. European Journal of Neurology 20: 997-1005を参照)。最も一般的な原因は、筋肉や筋肉群の使いすぎや伸ばしすぎである。外傷歴のない筋肉痛は、多くの場合ウイルス感染に起因する。長期にわたる筋肉痛は、代謝性ミオパシー、一部の栄養欠乏、又は慢性疲労症候群を示唆しうる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「背痛」という用語は、背中のどこか一部における痛みを伴う感覚を指す。背痛のエピソードは、持続期間に応じて急性、亜急性、又は慢性でありうる。鈍い痛み、突き抜けるような若しくは刺すような痛み、又は焼けるような痛みとして特徴付けられうる。痛みは脚又は足だけでなく腕や手にも広がり、感覚異常(明らかな原因のないチクチクする(tingling)痛み)、脚及び腕の運動機能低下又はしびれなどがみられることがある。背痛の解剖学的分類は脊椎の分節に従って行われる:頸部痛(頚椎)、中背部痛(胸椎)、下背部痛(腰椎)、又は尾骨痛(尾骨や仙骨の痛み)であり、腰椎領域は痛みに関して最も一般的である。痛みは、脊柱(背骨)の筋肉、神経、骨、関節、又は他の構造に由来しうるが、胆嚢や膵臓などの内部構造体が原因で背中に関連痛が生じることもある(Cohen et al. 2008. BMJ. 337:a2718)。
【0018】
本明細書で使用される場合、「震え」(「身震い(shuddering)」とも呼ばれる)という用語は、温血動物において早期低体温又は単に寒く感じることに応答する身体機能である。深部体温が低下すると、震え反射が誘発されて恒常性が維持される。骨格筋は小さな動きで震えるようになり、エネルギーを消費することによって温感を作り出す。人が寒気を感じることがあるので、震えは発熱に対する応答でもありうる。発熱時には視床下部の温度設定値が上昇する。設定値の上昇は体温を上昇させる(発熱)が、新たな設定値に達するまで患者は寒さを感じる。激しい震えを伴う重度の寒けを悪寒と呼ぶ。悪寒は、体温を新しい設定値まで上昇させようとする生理的な試みにおいて、患者の体が震えしているために起こる。震えは手術後に現れることもあり、麻酔後シバリングとして知られる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「嘔吐(vomiting)」という用語は、他の用語のなかでも、嘔吐(emesis)及び嘔吐(throwing up)としても知られており、不随意で強制的に、口を介して胃の内容物を排出すること、及びときに鼻を排出することである(Metz A. 2017. Australian Family Physician Vol. 36 (9): 688-692)。嘔吐はさまざまな病態が原因で起こる可能性があり、胃炎や中毒のような病気(ailments)に対する特異的な応答として、又は脳腫瘍や頭蓋内圧亢進から電離放射線への過剰暴露に至る障害の非特異的な続発症として現れうる。
【0020】
本明細書で使用される場合、そのような症状の治療及び/又は予防を必要とする患者における病気又は疾患の症状は、炎症状態、自己免疫疾患、代謝性疾患、脳疾患、心血管疾患、及び薬物誘発性疾患を含む疾患適応症の群から選択される。
【0021】
以下、本明細書に関連する症状及び病気のタイプが非限定的なリストの形で提供される。本明細書に記載の治療又は予防は、複数のタイプの症状に向けられうることに留意されたい。さらに、所与の医学的適応症、病気、又は疾患は、複数の症状と関連しうることに留意されたい。
【0022】
「吐き気」という症状は、腹部内の病気、例えば、閉塞性疾患(例えば、幽門閉塞、小腸閉塞、結腸閉塞、上腸間膜動脈症候群)、腸管感染症(例えばウイルスや細菌の感染)、炎症性疾患(胆嚢炎、膵炎、虫垂炎、肝炎など)、感覚運動機能障害(たとえば、胃不全麻痺、偽性腸閉塞、胃食道逆流症、慢性特発性の吐き気、機能性嘔吐、周期性嘔吐症候群、反芻症候群)、又は胆道仙痛;腹部外の病気、例えば、心肺障害、(心筋症、心筋梗塞など)、内耳疾患、(乗り物酔い、迷路炎、悪性腫瘍など)、脳内障害(例えば出血、膿瘍、水頭症、悪性腫瘍)、精神疾患(例えば、食欲不振や神経性過食症、抑うつ)、術後嘔吐、薬剤や薬物(例えば化学療法や生物製剤療法、抗生物質、抗不整脈薬、ジゴキシン、経口血糖降下薬、経口避妊薬)に伴う吐き気、内分泌/代謝疾患(例えば妊娠、尿毒症、ケトアシドーシス、甲状腺と副甲状腺の疾患、副腎機能不全)に伴う吐き気、肝不全、アルコール乱用による中毒による吐き気などと関連している可能性がある。
【0023】
「背痛」という症状は、炎症による病気、特に典型的には2週間から3カ月続く急性期に関連している可能性があり、腰痛、外傷、負傷、感染症、がん(特に乳がん、肺がん、前立腺がんのように脊椎に広がることが知られているがん)などに関連している可能性がある。
【0024】
「筋肉痛」又は「筋肉痛」という症状は、別個の負傷の保護を含む筋肉が過度にあまりにも頻繁に使われた捻挫、血腫、又は酷使を含む負傷又は外傷、慢性的な緊張、例えばウイルス感染に伴う横紋筋融解症による筋肉痛、圧迫損傷、例えばフィブラート及びスタチン、ACE阻害薬、コカイン、一部の抗レトロウイルス薬による薬物関連、重度のカリウム欠乏症、線維筋痛症、エーラス・ダンロス症候群、自己免疫疾患(混合性結合組織病、全身性エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症、例えば多発性筋炎、皮膚筋炎、及び封入体筋炎などの筋炎、多発性硬化症、筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)、家族性地中海熱、結節性多発動脈炎、デビック病、限局性強皮症、サルコイドーシスを含む)、代謝性疾患(カルニチンパルミトイル基転移酵II欠損症、コン症候群、副腎機能不全、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、糖尿病、性腺機能低下症)、並びにチャネル病、スティックラー症候群、低カリウム血症、緊張低下(低筋緊張)、運動不耐症、肥満細胞症、末梢神経障害、好酸球増多性筋痛症候群、バルコー熱(Barcoo Fever)、ヘルペス、鉄過剰症としても知られるヘモクロマトーシス、遅発性筋肉痛、エイズ、HIV感染症、腫瘍性骨軟化症、ビタミンD欠乏症、心筋梗塞に関連する可能性がある。
【0025】
「頭痛」という症状は一次性頭痛と関連しうる。すべての頭痛の90%が一次性頭痛である。一次性頭痛は通常、20~40歳のときに初めて起こる。一次性頭痛の最も一般的なタイプは片頭痛と緊張型頭痛である。これらは異なった特徴を有する。片頭痛は典型的に、拍動性の頭部痛、吐き気、羞明(光に対する過敏症)、及び音恐怖症(音に対する過敏症)を呈する。緊張型頭痛は通常、頭の両側に非拍動性「帯状の(bandlike)」の圧力を伴い、他の症状を伴わない。その他の非常にまれなタイプの一次性頭痛としては次のものが挙げられる。群発頭痛:重度の痛みが短期間(15~180分)起こり、通常は片目の周囲にみられ、自律神経症状(流涙、充血、鼻閉)が毎日同じ時間に起こる。群発頭痛はトリプタンで治療でき、プレドニゾン、エルゴタミン、又はリチウムで予防することができる。顔面の電撃痛、持続性片頭痛、すなわち、激しい痛みの発作を伴う持続性の片側性の痛みを特徴とする三叉神経痛又は後頭神経痛。一次性穿刺様頭痛(例えば「アイスピック痛(ice pick pain)」又は「ジャブとジョルト(jabs and jolts)」を1秒間から数分間、自律神経症状(流涙、充血、鼻閉)を伴わない再発性の頭痛。突然始まり、咳、くしゃみ、いきみ(頭の中の圧力を増加させうるもの)の後に数分間続く一次性の咳頭痛。「良性の」一次性咳頭痛の診断を下しうる前に、重篤な原因(二次性頭痛レッドフラグの項を参照)を除外しなければならない:ずきずきする拍動性の痛みを特徴とする一次性労作性頭痛で、運動中又は運動後に始まり、5分から24時間続く。これらの頭痛の背後にある機序は不明であるが、おそらく緊張によって頭部の静脈が拡張し、痛みが生じるためである;性行為中に始まりオーガズム時にさらに悪化する鈍い両側性頭痛を特徴とする一次性性行為時頭痛;催眠性頭痛;頭か首の他のところの問題によって引き起こされうる二次性頭痛。これらのなかには有害ではないものもあり、例えば、頸原性頭痛(首の筋肉から生じる痛み)、頭痛のために過剰な鎮痛剤を使用している人の薬物乱用頭痛、発熱と髄膜症、又は項部硬直を呈する髄膜の炎症を特徴とする髄膜炎;脳内出血(頭蓋内出血);くも膜下出血(急性の激しい頭痛、発熱を伴わない項部硬直);動脈瘤破裂、動静脈奇形、実質内出血;側頭動脈炎、すなわち高齢者(平均年齢70歳)に多い動脈の炎症性疾患、リウマチ性多発筋痛;急性閉塞隅角緑内障(眼球内圧の上昇);けいれん又は他のてんかんの後にてんかん後の期間(発作後の状態)の一部として起こる発作後の頭痛などであり、ヘリコバクター・ピロリ感染や、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、胃不全麻痺、肝胆道系障害を含む胃腸障害は頭痛を引き起こすことがある。胃腸障害の治療は頭痛の寛解又は改善につながる可能性がある。
【0026】
頭痛という用語は、一次性頭痛又は二次性頭痛として定義される。一次性頭痛は、片頭痛、緊張型頭痛(TTH)、群発頭痛及び他の三叉神経・自律神経性頭痛、並びに他の一次性頭痛と定義される。
【0027】
頭痛の診断又は評価は、当該技術分野において充分に確立されている。評価は、患者の症状の特徴づけなどの主観的な尺度に基づいて行うことができる。例えば、片頭痛は以下の基準に基づいて診断される。1)4~72時間続く発作的な頭痛;2)次の症状のうち2つを伴う:片側の痛み、ズキズキする痛み、運動時の増悪、及び中等度又は重度の強度の痛み;並びに3)次の症状のうちの1つ:吐き気又は嘔吐、及び羞明又は音恐怖症(Goadsby et al., N. Engl. J. Med. 346:257-270, 2002)。
【0028】
「震え」という症状は、発熱、寒冷過敏症、閉経、パニック発作、不安、細菌感染、リケッチア感染、ウイルス感染、薬物離脱などと関連している可能性がある。
【0029】
「嘔吐」という症状は、胃炎(胃壁の炎症)、胃腸炎、胃食道逆流症、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症、幽門狭窄、腸閉塞、過食、急性腹症及び/又は腹膜炎、イレウス、食物アレルギー(しばしばじんましんや腫れを伴う);胆嚢炎、膵炎、虫垂炎、肝炎;食中毒、牛乳タンパク質に対するアレルギー反応、例えば牛乳アレルギー又は乳糖不耐症;乗り物酔い、メニエール病、脳震盪、脳出血、片頭痛、脳腫瘍、良性頭蓋内圧亢進症及び水頭症、高カルシウム血症などの代謝障害、尿毒症性副腎機能不全、低血糖、高血糖、薬物反応、アルコール中毒、オピオイド取り込み、選択的セロトニン再取り込み阻害薬;化学療法薬の使用;さまざまなウイルス及び細菌、例えばノロウイルス、インフルエンザによって引き起こされる胃炎;又は神経性過食症及びパージ障害などの精神/行動疾患と関連する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】アドレシズマブ群とプラセボと比較して、病気スコアを示す。
図2図2は、T270(時点270分)及びT300(時点300分)における治療群別の病気スコアの分布をそれぞれ示す(図2A及びB)。
図3A-B】効果に対する単一病気スコア構成要素の寄与を図3に示す:A)吐き気、B)頭痛、C)筋肉痛、D)背痛、及びE)震え。
図3C-D】効果に対する単一病気スコア構成要素の寄与を図3に示す:A)吐き気、B)頭痛、C)筋肉痛、D)背痛、及びE)震え。
図3E】効果に対する単一病気スコア構成要素の寄与を図3に示す:A)吐き気、B)頭痛、C)筋肉痛、D)背痛、及びE)震え。
図4図4は別の評価を示す。ここで別のスコアである病気(Sickness)スコアは、全体的な病気に関する単一の質問を用いて、0から10までのスケールで評価された。
図5】健常ヒトにおけるNT-Hの投与後のADM値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を提供する。
実施形態は一般に、同じカテゴリー(製品、プロセス、使用、方法)の任意の他の実施形態と組み合わせることができることに留意されたい。
【0032】
本発明の一実施形態は、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防における使用のための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関する。症状は、それを必要とする対象における吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択されうる。前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、以下に詳述されるように、成熟ADM、例えばアミノ酸1-52(配列番号1)のADM、又は成熟ADMの断片、例えば中間領域(Mid-Regional)ADM(MR-ADM)(配列番号3)、又はN末端ADM(配列番号4)に結合する。
【0033】
したがって、本発明の別の実施形態は、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防における使用のための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、成熟ADM、例えばアミノ酸1-52(配列番号1)のADM又は上記で画定された断片に結合する。
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、それを必要とする対象における吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐などの症状を特徴とする病気の治療又は予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、成熟ADM、例えばアミノ酸1-52(配列番号1)のADM又は上記で画定された断片に結合する。
【0035】
さらなる実施形態では、本発明は、それを必要とする対象における病気の治療又は予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、成熟ADM、例えばアミノ酸1-52(配列番号1)のADM又は上記で画定された断片に結合し、病気は適応症から選択され、試料中のC反応性タンパク質の量(CRP)は≧10mg/Lであり、試料中のTNFの量は≧50pg/mlであり、かつ/又は試料中のバイオADMの量は≧43pg/mlであり、かつ/又は平均動脈圧は低下している。
【0036】
さらなる実施形態では、本発明は、それを必要とする対象における病気の治療又は予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、成熟ADM、例えばアミノ酸1-52(配列番号1)のADM又は上記で画定された断片に結合し、病気は片頭痛である。
【0037】
さらなる実施形態では、本発明は、それを必要とする対象における病気の治療又は予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、成熟ADM、例えばアミノ酸1-52(配列番号1)のADM又は上記に画定された断片に結合し、病気は片頭痛であり、それを必要とする対象の試料中のC反応性タンパク質の量(CRP)は≧10mg/Lであり、かつ/又は試料中のTNFの量は≧50pg/mlであり、かつ/又は試料中のバイオADMの量は≧43pg/mlであり、かつ/又は平均動脈圧は低下している。
【0038】
さらなる実施形態では、本発明は、それを必要とする対象における病気の治療又は予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、成熟ADM、例えばアミノ酸1-52(配列番号1)のADM又は上記に画定された断片に結合し、病気は片頭痛であり、それを必要とする対象の試料中のC反応性タンパク質の量(CRP)は≧10mg/Lであり、かつ/又は試料中のTNFの量は≧50pg/mlであり、かつ/又は試料中のバイオADMの量は≧43pg/mlであり、かつ/又は平均動脈圧は低下しており、それを必要とする対象は、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される疾患症状の少なくとも1つを示す。
【0039】
本発明の一実施形態では、試料は、全血、血漿、及び血清を含む群から選択される。
【0040】
平均動脈圧(MAP)は、1回の心周期における患者の動脈の平均血圧と定義される。重要臓器への灌流の指標と考えられている。70mmHg超のMAPが平均的な人の臓器を維持するのに充分であると考えられている。本発明に関連して、「平均動脈圧が低下している」という用語は、75mmHg未満のMAPを意味する。
【0041】
成熟アドレノメデュリンペプチドはアミド化ペプチド(ADM-NH2)であり、52個のアミノ酸(配列番号1)を含み、プレプロADM1-146のアミノ酸95-146を含み、プレプロADMからタンパク質分解的切断によって形成される。成熟ADM、バイオADM、及びADM-NH2は、本出願全体を通して同義的に使用され、配列番号1による分子である。
【0042】
本発明の別の実施形態は、前述の実施形態による、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体又は断片又はスキャフォールドはADMのN末端部(アミノ酸1-21):
YRQSMNNFQGLRSFGCRFGTC(配列番号4)
に結合する。
【0043】
本発明の別の実施形態は、必要に応じて前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又はADMに結合する抗ADM抗体断片又はADMに結合する抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体、抗体断片、又は非Igスキャフォールドは、アドレノメデュリンの中間領域部分、アミノ酸21-42:
CTVQKLAHQIYQFTDKDKDNVA(配列番号3)
に結合することを特徴とする。
【0044】
本発明の別の実施形態は、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体又は抗体断片又は非Igスキャフォールドが、単一特異性、特に単一クローン性である。
【0045】
本発明の別の実施形態は、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、ビアコア2000システムを使用したラベルフリー表面プラズモン共鳴で少なくとも10-7MのADMに対する結合親和性を示す。
【0046】
本発明の別の実施形態は、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、そこにおいて前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、ADM結合タンパク質1(補体H因子)ではない。
【0047】
本発明の別の実施形態は、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、ADMのN末端(アミノ酸1)を認識し、それに結合する。
【0048】
本発明の別の実施形態は、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、血清、血液、血漿中のADMの半減期(t1/2半滞留時間)を、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは>50%、最も好ましくは>100%増大させるADM安定化抗体又は断片又はスキャフォールドである。
【0049】
本発明の別の実施形態は、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、ヒト組換えADM受容体を発現しているCHO-K1細胞において、hADM22-52を参照拮抗薬として使用して、ADMの生物活性を80%以下、好ましくは50%以下遮断する。
【0050】
本発明の別の実施形態は、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又は対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記それを必要とする対象は、片頭痛、ウイルス感染症、薬物誘発性疾患症状(例えば、化学療法によって誘発される、又は生物製剤、抗生物質、抗ウイルス化合物などによる治療によって誘発される)を含む群から選択される疾患に罹患している対象の群から選択される。特定の実施形態では、疾患又は病気(これらの用語は交換可能に使用することができる)は片頭痛である。
【0051】
本発明の別の実施形態は、前述の実施形態の何れかによる、対象における吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療又は予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記対象はがん治療(化学療法)を受ける。
【0052】
化学療法は、標準化された化学療法レジメンの一部として、1つ又は複数の抗がん剤(化学療法剤)を使用するがん治療のカテゴリーである。化学療法剤としては次の薬物カテゴリーが挙げられうる:アルキル化剤、キナーゼ阻害剤、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、代謝拮抗剤、アロマターゼ阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、モノクローナル抗体や、サイトカイン、遺伝子治療ベクター、アンチセンス、ペプチド分子などの人工(engineered)抗がん剤。
【0053】
本発明の別の実施形態は、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又は対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関し、前記抗体又は断片は、ADMのN末端領域(アミノ酸1-21)(配列番号4)又はその断片に結合するヒトモノクローナル抗体若しくはその抗体断片であり、重鎖は配列:
CDR1:配列番号5
GYTFSRYW
CDR2:配列番号6
ILPGSGST
CDR3:配列番号7
TEGYEYDGFDY
を含み、軽鎖は配列:
CDR1:配列番号8
QSIVYSNGNTY
CDR2:
RVS
CDR3:配列番号9
FQGSHIPYT
を含む。
【0054】
本発明の別の実施形態は、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又は対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための、ADM又はその断片に結合するヒト化モノクローナル抗体又はその抗体断片に関し、前記抗体又は断片は、VH領域として、
配列番号10(AM-VH-C)
QVQLQQSGAELMKPGASVKISCKATGYTFSRYWIEWVKQRPGHGLEWIGEILPGSGSTNYNEKFKGKATITADTSSNTAYMQLSSLTSEDSAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTLTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKHHHHHH
配列番号11(AM-VH1)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSRYWISWVRQAPGQGLEWMGRILPGSGSTNYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKHHHHHH
配列番号12(AM-VH2-E40)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSRYWIEWVRQAPGQGLEWMGRILPGSGSTNYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKHHHHHH
配列番号13(AM-VH3-T26-E55)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKATGYTFSRYWISWVRQAPGQGLEWMGEILPGSGSTNYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKHHHHHH
配列番号14(AM-VH4-T26-E40-E55)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKATGYTFSRYWIEWVRQAPGQGLEWMGEILPGSGSTNYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKHHHHHH
を含む群より選択される配列を含み、VL領域として次の配列:
配列番号15(AM-VL-C)
DVLLSQTPLSLPVSLGDQATISCRSSQSIVYSNGNTYLEWYLQKPGQSPKLLIYRVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCFQGSHIPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号16(AM-VL1)
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQSIVYSNGNTYLNWFQQRPGQSPRRLIYRVSNRDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHIPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号17(AM-VL2-E40)
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQSIVYSNGNTYLEWFQQRPGQSPRRLIYRVSNRDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHIPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
を含む。
【0055】
本発明の別の実施形態は、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又は対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための、ADM又はその断片に結合するヒト化モノクローナル抗体又はその抗体断片に関し、前記抗体又は断片は、重鎖として次の配列:
配列番号22
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSRYWIEWVRQAPGQGLEWIGEILPGSGSTNYNQKFQGRVTITADTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFScSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
を含み、軽鎖として次の配列:
配列番号23
DVVLTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQSIVYSNGNTYLEWYLQRPGQSPRLLIYRVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHIPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
を含む。
【0056】
本発明の特定の実施形態では、本発明の抗体は、重鎖として次の配列:
配列番号22
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSRYWIEWVRQAPGQGLEWIGEILPGSGSTNYNQKFQGRVTITADTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
又はこの配列と>95%、好ましくは>98%、好ましくは>99%同一である配列を含み、軽鎖として次の配列:
配列番号23
DVVLTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQSIVYSNGNTYLEWYLQRPGQSPRLLIYRVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHIPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
又はこの配列と>95%、好ましくは>98%、好ましくは>99%同一である配列を含む。
【0057】
2つのアミノ酸配列間の同一性を評価するには、ペアワイズアラインメントが行われる。同一性は、アラインメントにおいて直接一致するアミノ酸の割合を定義する。
【0058】
上記に概説した抗体を含む医薬組成物。
【0059】
本発明の別の実施形態は、吐き気に対する既知の薬剤と組み合わせて使用される、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関する。
【0060】
本発明の別の実施形態は、頭痛に対する既知の薬剤と組み合わせて使用される、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関する。
【0061】
本発明の別の実施形態は、筋肉痛に対する既知の薬剤と組み合わせて使用される、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関する。
【0062】
本発明の別の実施形態は、震えに対する既知の薬剤と組み合わせて使用される、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関する。
【0063】
本発明の別の実施形態は、嘔吐に対する既知の薬剤と組み合わせて使用される、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関する。
【0064】
本発明の別の実施形態は、背痛に対する既知の薬剤と組み合わせて使用される、前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関する。
【0065】
本発明の別の実施形態は、前述の実施形態の何れかによる抗体又は断片又はスキャフォールドを含む、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための医薬製剤に関する。
【0066】
本発明の別の実施形態は、溶液、好ましくはすぐに使用できる溶液である、前述の実施形態による、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための医薬製剤に関する。
【0067】
本発明の別の実施形態は、凍結乾燥状態にある、前述の実施形態による、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又は対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための医薬製剤に関する。
【0068】
本発明の別の実施形態は、筋肉内に投与される、そのような製剤に関する前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための医薬製剤に関する。
【0069】
本発明の別の実施形態は、血管内に投与される、そのような製剤に関する前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための医薬製剤に関する。
【0070】
本発明の別の実施形態は、注入によって投与される、前述の実施形態による、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又は対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための医薬製剤に関する。
【0071】
本発明の別の実施形態は、全身投与されることになる、そのような製剤に関する前述の実施形態の何れかによる、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、嘔吐の群から選択される病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又は対象における片頭痛などのそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための医薬製剤に関する。
【0072】
本明細書で使用される場合、「病気スコア(illness score)」の定義は、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、及び嘔吐を含むLPS誘発性臨床症状に関する。これらの症状を1つのスコア(=病気スコア)にまとめた:一例として、嘔吐(直前の30分間に嘔吐したかに応じて、0又は3)を除く各症状を0~5のスケールで示した。病気スコアは、すべての症状の合計である(理論値0~28)。
【0073】
抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドに関する本明細書に記載の実施形態は、病気に関連する症状の治療又は予防のために適用されることが意図され、したがって、必ずしも、基礎疾患として考慮されるべき急性疾患又は急性病態自体に対する一次治療又は第一選択治療の何れの方法も対象としているわけではないことが強調されるべきである。これは、本発明が、例えば、がん、敗血症、敗血症性ショック、COPD、うっ血性心疾患(急性心不全)を癒す/治す方法を提供しないことを意味する。
【0074】
さらに、本発明の実施形態では、抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドは、単一特異性である。単一特異性抗ADM抗体又は単一特異性抗ADM抗体断片又は単一特異性抗ADM非Igスキャフォールドは、前記抗体又は抗体断片又は非Igスキャフォールドが、標的ADM内の少なくとも5個のアミノ酸を包含する1つの特定領域に結合することを意味する。単一特異性抗ADM抗体又は単一特異性抗ADM抗体断片又は単一特異性抗ADM非Igスキャフォールドは、すべてが同じ抗原に対して親和性を有する抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドである。
【0075】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、単一特異性抗ADM抗体又は単一特異性抗ADM抗体断片又は単一特異性抗ADM非Igスキャフォールドを提供し、前記抗体又は抗体断片又は非Igスキャフォールドは、標的ADM内の少なくとも4個のアミノ酸を包含する1つの特定領域に結合することを特徴とする。別の特別な実施形態では、抗ADM抗体又はADMに結合する抗体断片は、単一特異性抗体である。単一特異性とは、前記抗体又は抗体断片が、標的ADM内の好ましくは少なくとも4個又は少なくとも5個のアミノ酸を包含する1つの特定領域に結合することを意味する。単一特異的抗体又は断片は、すべて同じ抗原に対して親和性を有する抗体又は断片である。モノクローナル抗体は単一特異性であるが、単一特異性抗体は、共通の生殖細胞からそれらを産生する以外の手段によっても産生されうる。
【0076】
本発明による抗体は、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる1つ又は複数のポリペプチドを含むタンパク質である。認識される免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ(IgD)、イプシロン(IgE)、及びミュー(IgM)定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。全長免疫グロブリン軽鎖は、一般に、約25kDa又は214アミノ酸長である。全長免疫グロブリン重鎖は、一般に、約50kDa又は446アミノ酸長である。軽鎖は、NH2末端の可変領域遺伝子(約110アミノ酸長)及びCOOH末端のカッパ又はラムダ定常領域遺伝子によってコードされる。重鎖は可変領域遺伝子(約116アミノ酸長)と他の定常領域遺伝子の1つによって同様にコードされる。
【0077】
抗体の基本的な構造単位は一般に四量体であり、2つの同一の免疫グロブリン鎖の対からなり、それぞれの対は1つの軽鎖と1つの重鎖を有する。各対において、軽鎖及び重鎖可変領域が抗原に結合し、定常領域はエフェクター機能を媒介する。免疫グロブリンはまた、例えば、Fv、Fab、及び(Fab’)2、並びに二官能性ハイブリッド抗体、並びに単鎖を含むさまざまな他の形態で存在する(例えば、Lanzavecchia et al. 1987. Eur. J. Immunol. 17: 105;Huston et al 1988. PNAS 85:5879-5883;Bird et al. 1988. Science 242:423-426;Hood et al. 1984. Immunology, Benjamin, N.Y., 2nd ed.;Hunkapiller and Hood, 1986. Nature 323: 15-16)。免疫グロブリン軽鎖又は重鎖可変領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの超可変領域で途切れたフレームワーク領域を含む(Sequences of Proteins of Immunological Interest, E. Kabat et al, U.S. Department of Health and Human Services, 1983を参照)。上記のように、CDRは主に抗原のエピトープへの結合に関与する。免疫複合体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくはヒト抗体などの抗体、又は抗原に特異的に結合した機能性抗体断片である。
【0078】
キメラ抗体は、軽鎖及び重鎖遺伝子が、典型的には遺伝子工学によって、異なる種に属する免疫グロブリン可変領域及び定常領域遺伝子から構築された抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体の遺伝子の可変セグメントは、カッパ及びガンマ1又はガンマ3などのヒト定常セグメントに連結することができる。一例では、治療用キメラ抗体は、したがって、マウス抗体由来の可変又は抗原結合ドメイン及びヒト抗体由来の定常又はエフェクタードメインからなるハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種を使用することができ、又は可変領域は分子技術によって作製することができる。キメラ抗体を作製する方法は、当該分野で周知であり、例えば、米国特許第5,807,715号明細書を参照されたい。「ヒト化」免疫グロブリンは、ヒトフレームワーク領域及び非ヒト(マウス、ラット、又は合成など)の免疫グロブリン由来の1つ又は複数のCDRを含む免疫グロブリンである。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。一実施形態では、すべてのCDRはヒト化免疫グロブリンのドナー免疫グロブリンに由来する。定常領域は存在する必要はないが、存在する場合には、それらはヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に、すなわち、少なくとも約85~90%同一でなければならず、例えば約95%以上同一でなければならない。したがって、おそらくCDRを除いて、ヒト化免疫グロブリンのすべての部分は、天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖及びヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合する。ヒト化免疫グロブリン又は抗体のアクセプターフレームワークは、ドナーフレームワークから取られたアミノ酸による限定された数の置換を有しうる。ヒト化又は他のモノクローナル抗体は、抗原結合又は他の免疫グロブリン機能に実質的に影響を及ぼさないさらなる保存的アミノ酸置換を有することができる。例示的な保存置換は、グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシンなどの置換である。ヒト化免疫グロブリンは、遺伝子工学を用いて構築することができる(例えば、米国特許第5,585,089号明細書を参照)。ヒト抗体は、軽鎖及び重鎖遺伝子がヒト由来である抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で公知の方法を用いて作製することができる。ヒト抗体は、目的の抗体を分泌するヒトB細胞を不死化することによって産生することができる。不死化は、例えば、EBV感染によって、又はヒトB細胞を骨髄腫若しくはハイブリドーマ細胞と融合させてトリオーマ細胞を作製することによって達成することができる。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイ法(例えば、Dowerら,PCT国際公開第91/17271号パンフレット、McCaffertyら、PCT国際公開第92/001047号パンフレット、及びWinter、PCT国際公開第92/20791号パンフレットを参照)によって作ることができる、又はヒトコンビナトリアルモノクローナル抗体ライブラリー(Morphosysのウェブサイトを参照)から選択することができる。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子をもつトランスジェニック動物を使用することによって調製することもできる(例えば、PCT国際公開第93/12227号パンフレット及びPCT国際公開第91/10741号パンフレットを参照)。
【0079】
したがって、抗ADM抗体は、当該技術分野で公知のフォーマットを有することができる。例は、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体である。好ましい実施形態では、本発明による抗体は、例えば、IgG、典型的な全長免疫グロブリン、又は重鎖及び/又は軽鎖の少なくともF可変ドメインを含む抗体断片(断片抗原結合)、例えばこれらに限定されるものではないが、Fabミニボディを含むFab断片、一本鎖Fab抗体、エピトープタグを有する一価Fab抗体、例えばFab-V5S×2;CH3ドメインで二量化された二価Fab(ミニ抗体);例えば、異種ドメインを用いた多量化を介して、例えば、dHLXドメイン、例えばFab-dHLX-FS×2の二量化を介して形成される二価のFab又は多価のFab;F(ab’)2断片、scFv断片、多量化された多価又は/及び多特異的scFv断片、二価及び/又は二種特異的糖尿病性断片、BITE(二重特異性T細胞誘導抗体)、三価抗体、例えば、Gとは異なるクラスの多価抗体;単一ドメイン抗体、例えばラクダ又は魚の免疫グロブリンに由来するナノバイト、及び多数の他のものとして組換え的に作製された抗体である。
【0080】
抗ADM抗体にくわえて、他の生体高分子スキャフォールドは、標的分子を複合体化するために当該技術分野で周知であり、高度に標的化された特異的生体高分子の生成に使用されている。例として、アプタマー、シュピーゲルマー(spiegelmers)、アンチカリン、及びコノトキシンがある。抗体フォーマットの説明については、国際公開第2013/072513号パンフレットの図1a、1b、及び1cを参照されたい。
【0081】
本発明による抗体断片は、本発明による抗体の抗原結合断片である。
【0082】
好ましい実施形態では、ADM抗体フォーマットは、Fv断片、scFv断片、Fab断片、scFab断片、(Fab)2断片、及びscFv-Fc融合タンパク質を含む群から選択される。別の好ましい実施形態では、抗体フォーマットは、scFab断片、Fab断片、scFv断片、及びPEG化断片などのそのバイオアベイラビリティ最適化結合体を含む群から選択される。最も好ましいフォーマットの1つはscFabフォーマットである。
【0083】
非Igスキャフォールドは、タンパク質スキャフォールドであることができ、リガンド又は抗原に結合できるので、抗体模倣物として使用することができる。非Igスキャフォールドは、テトラネチンをベースとする非Igグロブリンスキャホールド(例えば米国特許出願公開第2010/0028995号明細書に記載)、フィブロネクチンスキャホールド(例えば欧州特許第1266025号明細書に記載)、リポカリンをベースとするスキャフォールド(例えば国際公開第2011/154420号パンフレットに記載、ユビキチンスキャホールド(例えば国際公開第2011/073214号パンフレットに記載)、トランスファリング(transferring)スカフォールド(例えば米国特許出願公開第2004/0023334号明細書に記載)、プロテインAスキャフォールド(例えば欧州特許第2231860号明細書に記載)、アンキリンリピートをベースとするスキャフォールド(例えば国際公開第2010/060748号パンフレットに記載)、マイクロタンパク質(好ましくはシスチンノットを形成するマイクロタンパク質)スキャフォールド(例えば欧州特許第2314308号明細書に記載)、Fyn SH3ドメインをベースとするスキャフォールド(例えば国際公開第2011/023685号パンフレットに記載)、EGFR-Aドメインをベースとする足場(例えば国際公開第2005/040229号パンフレットに記載)、及びクニッツドメインをベースとするスキャフォールド(例えば欧州特許第1941867号明細書に記載)を含む群から選択されうる。
【0084】
本発明の一実施形態では、本発明による抗体は次のように作製することができる:Balb/cマウスを、0日目及び14日目に100μgのADM-ペプチド-BSA-結合体(100μlの完全フロイントアジュバントに乳化)及び21日目及び28日目に50μg(100μlの不完全フロイントアジュバント中)で免疫した。融合実験を行う3日前に、100μl生理食塩水に溶かした50μgの結合体を、1回の腹腔内注射及び1回の静脈内注射として動物に投与した。免疫したマウス由来の脾細胞及び骨髄腫細胞株SP2/0の細胞を、1mlの50%ポリエチレングリコールと37℃で30秒間融合させた。洗浄後、細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種した。HAT培地(20%ウシ胎児血清及びHAT栄養補助剤(HAT-Supplement)を補充したRPMI1640培地)で増殖させることによってハイブリッドクローンを選択した。2週間後、HAT培地をHT培地に替え3回継代し、その後正常細胞培地に戻す。融合の3週間後に、細胞培養上清を抗原特異的IgG抗体について一次スクリーニングした。陽性の試験済みマイクロ培養物を、増殖のために24ウェルプレートに移した。再試験後、選択した培養物をクローン化し、限界希釈法を用いて再クローン化し、アイソタイプを決定した(Lane, R.D. 1985. J. Immunol. Meth. 81: 223-228、Ziegler B. et al. l996. Horm. Metab. Res. 28: 11-15も参照)。
【0085】
抗体はまた、次の手順に従ってファージディスプレイを用いて作製することができる:ADMペプチドに対する組換え一本鎖F-可変ドメイン(scFv)を単離するためにヒトナイーブ抗体遺伝子ライブラリーHAL7/8が使用される。2つの異なるスペーサーを介してADMペプチド配列に連結されたビオチンタグが入ったペプチドの使用を含むパニング法を用いて、抗体遺伝子ライブラリーをスクリーニングした。非特異的に結合した抗原及びストレプトアビジン結合した抗原を使用するパニングラウンドの混合物を使用して、非特異的バインダーのバックグラウンドを最小限にした。3ラウンド目のパニングからの溶出ファージが、モノクローナルなscFvを発現する大腸菌(E.coli)株を作り出すために使用されている。これらのクローン株の培養からの上清が抗原ELISA試験に直接使用されている(その全体が本明細書に援用される国際公開第2013/072513号パンフレットに引用されている参考文献を参照)。
【0086】
マウス抗体のヒト化は次の手順に従って行うことができる:マウス由来の抗体のヒト化のために、抗体配列を、相補的決定領域(CDR)を含むフレームワーク領域(FR)と抗原との構造的相互作用について分析する。構造モデリングに基づいて、ヒト由来の適切なFRを選択し、マウスCDR配列をヒトFRに移植する。CDR又はFRのアミノ酸配列の変異が、FR配列の種の転換によって消失した構造的相互作用を回復するために導入されてもよい。ADM抗体フォーマットが、Fv断片、scFv断片、Fab断片、scFab断片、F(ab)2断片、及びscFv-Fc融合タンパク質を含む群から選択される好ましい実施形態では、構造的相互作用のこの回復は、ファージディスプレイライブラリーを使用するランダムアプローチによって、又は分子モデリングに導かれる指向性(directed)アプローチによって達成することができる(Almagro and Fransson 2008. Front Biosci. 13: 1619-33)。別の好ましい実施形態では、抗体フォーマットは、scFab断片、Fab断片、scFv断片、及びPEG化断片などのそのバイオアベイラビリティ最適化結合体を含む群から選択される。最も好ましいフォーマットの1つはscFabフォーマットである。別の好ましい実施形態では、抗ADM抗体、抗ADM抗体断片、又は抗ADM非Igスキャフォールドは、全長抗体、抗体断片、又は非Igスキャフォールドである。
【0087】
好ましい実施形態では、抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドは、ADM中に含まれる少なくとも5アミノ酸長のエピトープに向けられ、それに結合することができる。
【0088】
別の好ましい実施形態では、抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドは、ADM中に含まれる少なくとも4アミノ酸長のエピトープに向けられ、それに結合することができる。
【0089】
本発明の1つの特定の実施形態では、抗ADM抗体又はADMに結合する抗ADM抗体断片又はADMに結合する抗ADM非Igスキャフォールドは、患者の急性疾患又は急性病態の治療に使用するために提供され、そこにおいて前記抗体又は断片又はスキャフォールドは、ADM結合タンパク質1(ADM-binding- Protein-1)(補体H因子)ではない。急性疾患又は急性病態は片頭痛でありうる。
【0090】
本発明の1つの特定の実施形態では、抗ADM抗体又はADMに結合する抗ADM抗体断片又はADMに結合する抗ADM非Igスキャフォールドは、患者の急性疾患又は急性病態の治療に使用するために提供され、前記抗体又は抗体断片又は非Igスキャフォールドは、成熟ヒトADMのアミノ酸1-42の配列内の好ましくは少なくとも4つ又は少なくとも5つのアミノ酸の領域に結合する。
【0091】
上記急性疾患又は急性病態は、頭痛、好ましくは一次性頭痛、最も好ましくは片頭痛でありうる。
【0092】
本発明の1つの特定の実施形態では、抗ADM抗体又はADMに結合する抗ADM抗体断片又はADMに結合する抗ADM非Igスキャフォールドは、患者の急性疾患又は急性病態の治療に使用するために提供され、前記抗体又は断片又はスキャフォールド、成熟ヒトADMのアミノ酸1-21の配列
YRQSMNNFQGLRSFGCRFGTC(配列番号4)
内の好ましくは少なくとも4個又は少なくとも5個のアミノ酸の領域に結合する。
【0093】
上記急性疾患又は急性病態は片頭痛でありうる。
【0094】
本発明の好ましい実施形態では、前記抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドは、ADMのN末端部(アミノ酸1-21)に位置するADMの領域に結合する。
【0095】
別の好ましい実施形態では、前記抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドは、ADMのN末端(アミノ酸1)を認識し、それに結合する。N末端は、配列番号1又は4の「Y」であるアミノ酸1が抗体結合に必須であることを意味する。前記抗体又は断片又は非Igスキャフォールドは、N末端伸長ADMにも、N末端修飾ADMにも、N末端分解ADMにも結合しないことになる。
【0096】
好ましい実施形態では、抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドは、ADM、好ましくはヒトADMに含まれる少なくとも5アミノ酸長のエピトープに向けられ、それに結合することができる。
【0097】
好ましい実施形態では、抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドは、ADM、好ましくはヒトADMに含まれる少なくとも4アミノ酸長のエピトープに向けられ、それに結合することができる。
【0098】
1つの特定の実施形態では、本発明による抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドを使用することが好ましく、前記抗ADM抗体又は前記抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドは、血清、血液、血漿中のADMの半減期(t1/2;半滞留時間)を、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは>50%、最も好ましくは>100%増大させるADM安定化抗体又はADM安定化抗体断片又はADM安定化非Igスキャフォールドである。ADMの半減期(半滞留時間)は、ADMの定量用イムノアッセイを使用して、ADM安定化抗体又はADM安定化抗体断片又はADM安定化非Igスキャフォールドの非存在下及び存在下で、それぞれヒト血漿中で決定することができる。
【0099】
以下のステップを行うことができる。
-ADMは、ADM安定化抗体又はADM安定化抗体断片又はADM安定化非IGスキャフォールドの不在下及び存在下で、ヒトクエン酸血漿にそれぞれ希釈でき、24℃でインキュベートすることができる。
-選択された時点(例えば24時間以内)でアリコートを採取し、-20℃で凍結することによってADMの分解を止めることができる。
-選択されたアッセイが安定化抗体によって影響されない場合、ADMの量はhADMイムノアッセイによって直接決定することができる。代替的に、アリコートを(HCIのような)変性剤で処理し、試料を(例えば遠心分離によって)除去した後、pHは中和でき、ADMはADMイムノアッセイによって定量することができる。代替的に、非イムノアッセイ技術(例えばRP-HPLC)をADM定量に使用することができる。
-ADMの半減期は、ADM安定化抗体又はADM安定化抗体断片又はADM安定化非IGスキャフォールドの非存在下及び存在下でインキュベートしたADMについて計算される。
-半減期の増大は、ADM安定化抗体又はADM安定化抗体断片又はADM安定化非Igスキャフォールドの不存在下でインキュベートされたADMと比較して、安定化ADMについて計算される。
【0100】
ADMの半減期の2倍の増加は、100%の半減期の増大である。半減期(半滞留時間)とは、特定の化学物質又は薬物の濃度が、特定の体液又は血液中のベースライン濃度の半分に低下するまでにかかる期間と定義される。
【0101】
特定の実施形態では、前記抗ADM抗体、抗ADM抗体断片、又は抗ADM非Igスキャフォールドは、非中和抗体、断片、又は非Igスキャフォールドである。中和抗ADM抗体、抗ADM抗体断片、又は抗ADM非Igスキャフォールドは、ADMの生物活性を、ほぼ100%、少なくとも90%超、好ましくは少なくとも95%超に遮断することになる。
【0102】
対照的に、非中和抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドは、ADMの生物活性を、100%未満、好ましくは95%未満、好ましくは90%未満、より好ましくは80%未満、さらにより好ましくは50%未満に遮断する。これは、非中和抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非IgスキャフォールドにしているADMの残存生物活性が、0%超、好ましくは5%超、好ましくは10%超、より好ましくは20%超、より好ましくは50%超であることになることを意味する。これに関連して、それが抗体、「非中和抗ADM活性」をもつ抗体又は抗体断片又は非Igスキャホールであり、本明細書では簡潔のためにまとめて「非中和」抗ADM抗体、抗体断片、又は非Igスキャフォールドと呼ばれ、例えばADMの生物活性を80%未満に遮断する分子は、ADMに結合する分子又は複数の分子(a molecule or molecules)と定義され、CRLR(カルシトニン受容体様受容体)及びRAMP3(受容体活性調節タンパク質3)からなる機能性ヒト組換えADM受容体を発現している真核細胞株の培養物への添加に際して、並行して添加されるヒト合成ADMペプチドの作用を通して、その細胞株によって産生されるcAMPの量を減少させ、前記添加ヒト合成ADMは、分析される非中和抗体の非存在下で、cAMP合成の半最大刺激(half-maximal stimulation)をもたらす量で添加され、前記ADM結合分子によるcAMPの減少は、分析されるADM結合非中和分子を、分析される非中和抗体で得られるcAMP合成の最大減少を得るのに必要とされる量の10倍の量で添加した場合でも、80%以下の程度で起こる。同じ定義が、他の範囲、95%、90%、50%などにも当てはまる。
【0103】
本発明の特定の実施形態では、抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドが使用され、前記抗体又は抗体断片又は非Igスキャフォールドは、(ベースライン値の)80%未満、好ましくは50%未満にADMの生物活性を遮断する。これは循環ADMをそれぞれ80%以下又は50%以下に遮断するという意味である。ADMの生物活性の前記の限定された遮断は、ADMに対する抗体、抗体断片、又は非Igスキャフォールドの過剰を意味する、抗体、抗体断片、又は非Igスキャフォールドの過剰濃度でさえ生じることが理解されている。前記の限定された遮断は、ADMバインダー自体の固有の特性である。これは、前記抗体、抗体断片、又は非Igスキャフォールドが、それぞれ80%又は50%の最大阻害を有することを意味する。暗にこれは、適切な量又は過剰量の抗体、抗体断片、又は非Igスキャフォールドがそれぞれ投与されても、20%又は50%の残存ADM生物活性が依存として存在することを意味する。
【0104】
好ましい実施形態では、前記抗ADM抗体、抗ADM抗体断片、又は抗ADM非Igスキャフォールドは、ADMの生物活性を少なくとも5%遮断することになる。暗にこれは、95%の残存循環ADM生物活性が依然として存在することを意味する。これは、前記抗ADM抗体、抗ADM抗体断片、又は抗ADM非Igスキャフォールドの投与後に残存する生物活性のより低い閾値である。生物活性とは、物質がその相互作用の後に、生体又は組織又は器官又は機能単位に対して生体内又はインビトロで(例えばアッセイにおいて)受ける影響と定義される。ADMの生物活性の場合、これはヒト組換えADM受容体cAMP機能アッセイにおけるADMの作用でありうる。したがって、本発明によれば、生物活性は、ADM受容体cAMP機能アッセイによって定義される。そのようなアッセイにおけるADMの生物活性を決定するために、以下のステップをおこなうことができる。
-用量反応曲線は、前記ヒト組換えADM受容体cAMP機能アッセイにおいてADMを用いて行われる。
-半最大cAMP刺激のADM濃度を計算することができる。
-一定の半最大cAMP刺激ADM濃度用量反応曲線(100μlの最終濃度まで)は、それぞれ、ADM安定化抗体又はADM安定化抗体断片又はADM安定化非Igスキャフォールドによって行われる。
【0105】
50%の前記ADM安定化抗体による(最大投与量での)最大阻害は、前記ADM抗体又は前記ADM抗体断片又は前記ADM非Igスキャフォールドが、それぞれ、生物活性をベースライン値の50%まで遮断することを意味する。80%の前記ADMバイオアッセイにおける最大阻害は、前記抗ADM抗体又は前記抗ADM抗体断片又は前記抗ADM非Igスキャフォールドが、それぞれ、ADMの生物活性を80%まで遮断することを意味する。これは、ADM生物活性を80%以下に遮断するという意味である。
【0106】
好ましい実施形態では、調節抗ADM抗体又は調節抗ADM抗体断片又は調節抗ADM非Igスキャフォールドが使用される。「調節」抗ADM抗体又は調節抗ADM抗体断片又は調節抗ADM非Igスキャフォールドは、血清、血液、血漿中のADMの半減期(t半滞留時間)を、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは>50%、最も好ましくは>100%増大させ、ADMの生物活性を80%未満、好ましくは50%未満に遮断する抗体又はADM抗体断片又は非Igスキャフォールドであり、前記抗ADM抗体、抗ADM抗体断片、又は抗ADM非Igスキャフォールドは、ADMの生物活性を少なくとも5%遮断することになる。生物活性の半減期及び遮断に関連するこれらの値を決定するために、これらの値を前述のアッセイとの関連で理解する必要がある。これは、循環ADMをそれぞれ80%以下又は50%以下に遮断するという意味である。これは、それぞれ20%の残存ADM生物活性が依然として存在する、又は50%の残存ADM生物活性が依然として存在することを意味する。このような調節抗ADM抗体又は調節抗ADM抗体断片又は調節抗ADM非Igスキャフォールドは、投与の投薬(the dosing of the administration)が促進されるという利点を提供する。ADM生物活性を部分的に遮断又は部分的に低下させることと、生体内半減期を増加させること(ADMの生物活性の増加)との組み合わせは、抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールド投薬の有益な簡便性をもたらす。過剰な内在性ADMの状況では、活性低下効果は抗体又は断片又はスキャフォールドの主要な効果であり、ADMの(負の)効果を制限する。低い又は正常な内在性ADM濃度の場合、抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドの生物学的効果は、(部分的に遮断することによる)低下と、ADM半減期の増加による増加との組み合わせである。したがって、非中和及び調節ADM抗体又はADM抗体断片又はADM非Igスキャフォールドは、ADMの生物活性をある特定の生理学的範囲内に保つためにADM生物活性バッファーのように作用する。
【0107】
本発明による抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドは、親和定数が10-7M超、好ましくは10-8M超であるヒトADMに対する親和性を示し、好ましい親和性は、10-9Mより大きく、最も好ましくは10-10Mより高い。当業者は、より高投与量の化合物を適用することによって、より低い親和性を補うと考えることができ、この手段は本発明の範囲外にはならないことを知っている。親和定数は、国際公開第2013/072513号パンフレットの実施例1に記載の方法に従って決定することができる。
【0108】
「ADM結合タンパク質」という用語は、ADM結合タンパク質1(補体H因子)を含むことが強調されるべきである。しかし、本発明による定義によるADM結合タンパク質は、非中和抗ADM抗体/抗体断片/非Igスキャフォールドでもなく、調節抗ADM抗体/抗体断片/非Igスキャフォールドでもない。さらに、本発明の主題は、本発明による患者の急性疾患又は急性病態の治療に使用するためのさらなる抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドであり、前記抗体又は抗体断片又は非Igスキャフォールドは、さらなる活性成分と組み合わせて使用することができる。
【0109】
さらに、本発明の主題は、本発明による抗ADM抗体又は抗ADM抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドを含む医薬製剤である。さらに、本発明の主題は本発明による医薬製剤であり、前記医薬製剤は、溶液、好ましくはすぐに使用できる溶液である。別の実施形態では、本発明の主題はさらに、本発明による医薬製剤であり、前記医薬製剤は、使用前に溶解される乾燥状態にある。前記医薬製剤は筋肉内に投与することができる。前記医薬製剤は、血管内に投与することができる。前記医薬製剤は、注入によって投与することができる。別の実施形態では、本発明の主題はさらに、本発明による医薬製剤であり、前記医薬製剤凍結乾燥状態にある。
【0110】
本発明の別のより好ましい実施形態では、本発明は、患者における病気の症状の治療又は予防に使用するための抗ADM抗体又はADMに結合する抗ADM抗体断片又はADMに結合する抗ADM非Igスキャフォールドを含む医薬製剤を提供し、前記医薬製剤は、それを必要とする患者に投与されることになる。
【0111】
本発明の別の実施形態では、本発明による医薬製剤は、上記で定義した病気に関連する症状の治療及び/又は予防のために患者に投与されることになり、ただし、前記患者がそのような治療を必要としていることを条件とする。
【0112】
一実施形態では、本発明によるADM抗体又はADM抗体断片又はADM非IGスキャフォールドは、非中和ADM抗体又は非中和ADM抗体断片又は非中和ADM非Igスキャフォールドである。
【0113】
本明細書で使用される場合、抗体フォーマットは、Fv断片、scFv断片、Fab断片、scFab断片、(Fab)2断片、及びscFv-Fc融合タンパク質を含む群から選択される。
【0114】
本発明の実施形態では、それを必要とする患者の治療に使用するための、前述の実施形態の何れかによるADM抗体又はADM抗体断片又は非Igスキャフォールド、そこにおいて、前記抗体又は断片は、少なくとも0.5mg/kg体重、具体的には少なくとも1.0mg/kg体重、より具体的には1.0~20.0mg/kg体重、例えば2.0~10mg/kg体重、2.0~8.0mg/kg体重、又は2.0~5.0mg/kg体重の投与量で投与することができる。
【0115】
本発明の実施形態では、本明細書で言及される病気の症状は、敗血症、糖尿病、がん、心不全(急性心不全)、及び敗血症性ショックを含む群から選択される何れの疾患とも関連しない。
【0116】
本発明の好ましい実施形態では、前述の実施形態の何れかによるADM抗体又はADM抗体断片又は非Igスキャフォールドの何れかを使用して治療又は予防される病気の症状は、片頭痛と関連する。
【0117】
本発明の好ましい実施形態では、前述の実施形態の何れかによるADM抗体又はADM抗体断片又は非Igスキャフォールドの何れかを使用して治療又は予防される病気の症状は、ウイルス感染と関連し、ウイルスは、ヘパドナウイルス科、アデノウイルス科、ヘルペスウイルス科、インフルエンザウイルス、アレナウイルス科、フィロウイルス科、トガウイルス科、ノロウイルス、フラビウイルス科、レトロウイルス科、麻疹ウイルス、レオウイルス科、エンテロウイルス科、ピコルナウイルス科、カリシウイルス科などを含む群から選択される。
【0118】
本発明の好ましい実施形態では、前述の実施形態の何れかによるADM抗体又はADM抗体断片又は非Igスキャフォールドの何れかを使用して治療又は予防される病気の症状は、化学療法、生物製剤(例えば抗体若しくはその断片)、抗生物質、又は上記の病気の症状の何れかを引き起こす任意の薬剤による療法などの原疾患の薬物治療と関連する。
【0119】
本発明のさらなる好ましい実施形態は、前述の実施形態の何れかによるADM抗体又はADM抗体断片又は非Igスキャフォールドを、それを必要とする対象に投与することを含む、前述の実施形態の何れかに定義される症状を治療する(例えば治療する、治す、緩和する、改善する、寛解するなど)又は予防する方法に関する。対象はヒトであることが好ましい。
【0120】
ADM抗体又はADM抗体断片又は非Igスキャフォールドの投与は、経口、静脈内、皮下、動脈内、筋肉内、心臓内、髄腔内、胸腔内、腹腔内、脳室内、舌下、経皮、及び/又は吸入を含む当該技術分野で公知の任意の手段によって行うことができる。投与は、全身的に、例えば静脈内で、又は局所的に行うことができる。
【0121】
一態様では、本発明は、有効量のADM抗体又はADM抗体断片又は非Igスキャフォールドを個人に投与することを含む、個人における頭痛、好ましくは一次性頭痛、より好ましくは片頭痛を治療又は予防する方法を提供する。
【0122】
さらなる実施形態では、本発明は、有効量のADM抗体又はADM抗体断片又は非Igスキャフォールドを個人に投与することを含む、個体における好ましくは一次性頭痛、より好ましくは片頭痛を改善する、制御する、その発生を減少させる、又はその発症若しくは進行を遅延させる方法を提供する。
【0123】
ADM抗体又はADM抗体断片又は非Igスキャフォールドは、頭痛の前、頭痛の間、かつ/又は頭痛の後に投与することができる。いくつかの実施形態では、ADM抗体又はADM抗体断片又は非Igスキャフォールドは、頭痛の発作の前に投与される。
【0124】
いくつかの実施形態では、ADM抗体又はADM抗体断片又は非Igスキャフォールドは、頭痛を治療するための別の薬剤などの別の薬剤と一緒に投与することができる。
【0125】
頭痛の「発症」又は「進行」は、初発症状及び/又はあとに続く障害の進行を意味する。頭痛の発症は、当該技術分野で周知の標準的な臨床技術を使用して検出及び評価することができる。しかし、発生はまた、検出不能な場合がある進行も指す。本発明では、発生又は進行は、症状の生物学的経過を指す。「進行」は、発生、再発、発症を含む。本明細書で使用される場合、頭痛の「発症」又は「発生」は、最初の発症及び/又は再発を含む。
【0126】
本明細書で使用される場合、薬物、化合物、又は医薬組成物の「有効投与量」又は「有効量」は、有益な又は所望の結果をもたらすのに充分な量である。予防的使用の場合、有益又は所望の結果は、疾患の生化学的症状、組織学的症状、及び/又は行動症状、その合併症、並びに疾患の発症中に現れる中間的な病理学的表現型を含む疾患のリスクを除去又は低減すること、重症度を軽減すること、又は開始を遅らせることなどの結果を含む。治療的使用の場合、有益な又は所望の結果は、痛みの強度、持続時間、又は頭痛発作の頻度を減少させること、並びに頭痛から生じる1つ又は複数の(生化学的、組織学的及び/又は行動)症状を減少させること、例えば、疾患の発症中に現れるその合併症及び中間的な病理学的表現型を減少させること、例えば、その合併症及び疾患の発症中に現れる中間的な病理学的表現型を減少させること、疾患を患う人々の生活の質を上げること、疾患を治療するために必要な他の薬剤の投与量を減少させること、別の薬剤の効果を増強すること、並びに/又は患者の疾患の進行を遅らせることなどの臨床結果を含む。有効投与量は、1回又は複数回の投与で投与することができる。本発明では、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効投与量は、直接的又は間接的に予防的又は治療的処置を達成するのに充分な量である。臨床的な状況において理解されるように、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効な投与量は、別の薬物、化合物、又は薬学的組成物と一緒に達成されてもよく、又は達成されなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ又は複数の治療剤を投与する状況で考えることができ、単一の薬剤は、1つ又は複数の他の薬剤と組み合わせて所望の結果が達成されうる、又は達成される場合、有効量で投与されると考えることができる。
【0127】
以下の実施形態が本発明の主題である。
1.病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は抗アドレノメデュリン抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールドであって、ADM(1-52;配列番号1)又はその断片に結合する抗体又は断片又はスキャフォールド。
2.ADMのN末端部(アミノ酸1-21):
YRQSMNNFQGLRSFGCRFGTC(配列番号4)
に結合する項目1による、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は抗アドレノメデュリン抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールド。
3.ADMのアミノ酸21-42:
CTVQKLAHQIYQFTDKDKDNVA(配列番号3)
からなる中間領域(MR-)ADMの部分に結合することを特徴とする、項目1~2の何れかによる、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又はADMに結合する抗ADM抗体断片又はアドレノメデュリンに結合する抗ADM非Igスキャフォールド。
4.病気の症状が、吐き気、頭痛、筋肉痛、背痛、震え、及び/又は嘔吐の群から選択される、項目1~3の何れかによる、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又はADMに結合する抗ADM抗体断片又はアドレノメデュリンに結合する抗ADM非Igスキャフォールド。
5.病気が、≧10mg/Lである試料中のC反応性タンパク質の量(CRP)を特徴とし、かつ/又は試料中のTNFの量が≧50pg/mlであり、かつ/又は試料中のバイオADMの量が≧43pg/mlであり、かつ/又は前記それを必要とする対象の平均動脈圧が低下している、項目1~4の何れかによる、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又はADMに結合する抗ADM抗体断片又はアドレノメデュリンに結合する抗ADM非Igスキャフォールド。
6.そのような症状又は病気の治療及び/又は予防を必要とする患者における病気が、炎症状態、自己免疫疾患、代謝性疾患、脳疾患、心血管疾患、及び薬物誘発性疾患を含む適応症の群から選択される、項目1~5の何れかによる、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又はADMに結合する抗ADM抗体断片又はアドレノメデュリンに結合する抗ADM非Igスキャフォールド。
7.病気が片頭痛である、項目1~5の何れかによる、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又はADMに結合する抗ADM抗体断片又はアドレノメデュリンに結合する抗ADM非Igスキャフォールド。
8.単一特異性である、項目1~7の何れか1つによる、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は抗アドレノメデュリン抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールド。
9.ビアコア2000システムを使用したラベルフリー表面プラズモン共鳴で少なくとも10-7MのADMに対する結合親和性を示す、項目1~8の何れかによる、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は抗アドレノメデュリン抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールド。
10.ADM結合タンパク質1(補体H因子)ではない、項目1~9の何れかによる、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は抗アドレノメデュリン抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールド。
11.ADMのN末端(アミノ酸1)を認識し、それに結合する、前述の請求項の何れかによる、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は抗アドレノメデュリン抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールド。
12.血清、血液、血漿中のADMの半減期(t1/2半滞留時間)を少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは>50%、最も好ましくは>100%増大させるADM安定化抗体又は断片又はスキャフォールドである、前述の請求項の何れかによる、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は抗アドレノメデュリン抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールド。
13.ヒト組換えADM受容体を発現しているCHO-K1細胞において、hADM22-52を参照拮抗薬として使用して、ADMの生物活性を80%以下、好ましくは50%以下遮断する、前述の項目の何れかによる、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は抗アドレノメデュリン抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールド。
14.前記対象が、化学療法、生物学的生物製剤(biological biologics)、抗生物質による治療、又は抗ウイルス化合物による治療を受ける、前述の項目の何れかによる、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は抗アドレノメデュリン抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールド。
15.前記抗体又は断片が、ADM又はその断片に結合するヒト化モノクローナル抗体又は断片であり、重鎖が配列:
CDR1:配列番号5
GYTFSRYW
CDR2:配列番号6
ILPGSGST
CDR3:配列番号7
TEGYEYDGFDY
を含み、軽鎖が配列:
CDR1:配列番号8
QSIVYSNGNTY
CDR2:
RVS
CDR3:配列番号9
FQGSHIPYT
を含む
前述の項目の何れかによる、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための抗アドレノメデュリン(ADM)抗体又は抗アドレノメデュリン抗体断片又は抗ADM非Igスキャフォールド。
16.VH領域として:
配列番号10(AM-VH-C)
QVQLQQSGAELMKPGASVKISCKATGYTFSRYWIEWVKQRPGHGLEWIGEILPGSGSTNYNEKFKGKATITADTSSNTAYMQLSSLTSEDSAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTLTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKHHHHHH
配列番号11(AM-VH1)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSRYWISWVRQAPGQGLEWMGRILPGSGSTNYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKHHHHHH
配列番号12(AM-VH2-E40)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSRYWIEWVRQAPGQGLEWMGRILPGSGSTNYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKHHHHHH
配列番号13(AM-VH3-T26-E55)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKATGYTFSRYWISWVRQAPGQGLEWMGEILPGSGSTNYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKHHHHHH
配列番号14(AM-VH4-T26-E40-E55)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKATGYTFSRYWIEWVRQAPGQGLEWMGEILPGSGSTNYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKHHHHHH
を含む群より選択される配列を含み、VL領域として以下の配列:
配列番号15(AM-VL-C)
DVLLSQTPLSLPVSLGDQATISCRSSQSIVYSNGNTYLEWYLQKPGQSPKLLIYRVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCFQGSHIPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号16(AM-VL1)
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQSIVYSNGNTYLNWFQQRPGQSPRRLIYRVSNRDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHIPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号17(AM-VL2-E40)
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQSIVYSNGNTYLEWFQQRPGQSPRRLIYRVSNRDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHIPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
を含む群より選択される配列を含む
項目15による、対象において、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための、ADM又はその断片に結合するヒト化モノクローナル抗体又は断片
17.重鎖として次の配列:
配列番号22
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSRYWIEWVRQAPGQGLEWIGEILPGSGSTNYNQKFQGRVTITADTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
又はこの配列と>95%同一である配列を含み、
軽鎖として次の配列:
配列番号23
DVVLTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQSIVYSNGNTYLEWYLQRPGQSPRLLIYRVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHIPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
又はこの配列と>95%同一である配列を含む
項目15による、対象において、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための、ADM又はその断片に結合するヒト化モノクローナル抗体又は断片
18.項目1~17の何れかによる抗体又は断片又はスキャフォールドを含む、病気の症状の治療若しくは予防に使用するための、又はそれを必要とする対象におけるそのような症状を特徴とする病気の治療若しくは予防に使用するための医薬製剤。
19.重鎖として次の配列:
配列番号22
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFSRYWIEWVRQAPGQGLEWIGEILPGSGSTNYNQKFQGRVTITADTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTEGYEYDGFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
又はこの配列と>95%、好ましくは>98%同一である配列を含み、軽鎖として次の配列:
配列番号23
DVVLTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQSIVYSNGNTYLEWYLQRPGQSPRLLIYRVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHIPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
又はこの配列と>95%、好ましくは>98%同一である配列を含む
抗体。
20.項目19による抗体を含む医薬組成物。
【実施例
【0128】
抗体の生成とその親和定数の決定
ヒト抗体及びマウス抗体をいくつか作製し、それらの親和定数を決定した(表1参照)。
【0129】
免疫のためのペプチド/結合体:
ペプチドのウシ血清アルブミン(BSA)への結合のための追加のN末端システイン(選択したADM配列内にシステインが存在しない場合)残基をもつ免疫用ペプチドを合成した(JPT Technologies、ベルリン、ドイツ)。表1を参照されたい。Sulfolinkカップリングゲル(Perbio Science、ボン、ドイツ)を使用することによってペプチドをBSAに共有結合させた。カップリング手順は、Perbioのマニュアルに従って行った。
【0130】
マウス抗体は以下の方法に従って生成した。
【0131】
Balb/cマウスを、0日目及び14日目に100μgのペプチド-BSA-結合体(100μlの完全フロイントアジュバントに乳化)及び21日目及び28日目に50μg(100μlの不完全フロイントアジュバント中)で免疫した。融合実験を行う3日前に、100μl生理食塩水に溶かした50μgの結合体を、1回の腹腔内注射及び1回の静脈内注射として動物に投与した。
【0132】
免疫したマウス由来の脾細胞及び骨髄腫細胞株SP2/0の細胞を、1mlの50%ポリエチレングリコールと37℃で30秒間融合させた。洗浄後、細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種した。HAT培地(20%ウシ胎児血清及びHAT栄養補助剤(HAT-Supplement)を補充したRPMI1640培地)で増殖させることによってハイブリッドクローンを選択した。2週間後、HAT培地をHT培地に替え3回継代し、その後正常細胞培地に戻す。
【0133】
融合の3週間後に、細胞培養上清を抗原特異的IgG抗体について一次スクリーニングした。陽性の試験済みマイクロ培養物を、増殖のために24ウェルプレートに移した。再試験後、選択した培養物をクローン化し、限界希釈法を用いて再クローン化し、アイソタイプを決定した(Lane, R.D. 1985. J. Immunol. Meth. 81: 223-228; Ziegler et al. 1996. Horm. Metab. Res. 28: 11-15も参照)。
【0134】
マウスモノクローナル抗体の作製:
抗体は、標準的な抗体作製法(Marx et al, 1997. Monoclonal Antibody Production, ATLA 25, 121)によって作成し、プロテインAで精製した。SDSゲル電気泳動分析に基づくと、抗体純度は>95%であった。
【0135】
ヒト抗体:
ヒト抗体は、ファージディスプレイを用いて以下の手順に従って作製した。
【0136】
ADMペプチドに対する組換え一本鎖F可変ドメイン(scFv)を単離するために、ヒトナイーブ抗体遺伝子ライブラリーHAL7/8を使用した。抗体遺伝子ライブラリーを、ADMペプチド配列に2つの異なるスペーサーを介して連結したビオチンタグが入ったペプチドの使用を含むパニング法でスクリーニングした。非特異的結合抗原及びストレプトアビジン結合抗原を用いたパニングラウンドの混合物を使用して、非特異的バインダーのバックグラウンドを最小限にした。モノクローナルscFv発現大腸菌株を作製するために、3ラウンド目のパニングから溶出したファージを使用した。これらのクローン株の培養からの上清は、抗原ELISA試験に直接使用されている(Hust et al. 2011. Journal of Biotechnology 152, 159-170; Schutte et al. 2009. PLoS One 4, e6625も参照)。
【0137】
抗原に対する陽性ELISAシグナル及びストレプトアビジンコートマイクロタイタープレートに対する陰性に基づいて陽性クローンを選択した。さらなる特徴付けのために、scFvオープンリーディングフレームを発現プラスミドpOPE107(Hust et al. 2011. Journal of Biotechnology 152, 159-170)にクローン化し、固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィーによって培養上清から捕捉し、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。
【0138】
親和定数:
ADMに対する抗体の親和性を決定するために、ビアコア2000システム(GEヘルスケア・ヨーロッパGmbH(フライブルグ、ドイツ)を使用したラベルフリー表面プラズモン共鳴を用いて、固定化抗体へのADMの結合のキネティクスを測定した。抗体の可逆的固定化は、製造業者の指示(マウス抗体捕捉キット;GEヘルスケア)に従って、CM5センサー表面に高密度で共有結合された抗マウスFc抗体を使用して行った(Lorenz et al. 2011. Antimicrob Agents Chemother. 55(1): 165-173)。
【0139】
モノクローナル抗体は、下記に示すヒト及びマウスのADMのADM領域に対してそれぞれ作製した。次の表は、さらなる実験で使用される、得られた抗体の選択を示す。選択は標的領域に基づいた。
【0140】
【表1】
【0141】
酵素消化による抗体断片の生成
Fab及びF(ab)2断片の生成は、マウス全長抗体NT-Mの酵素消化によって行った。抗体NT-Mを、a)ペプシンをベースとするF(ab)2調製キット(ピアス44988)及びb)パパインをベースとするFab調製キット(ピアス44985)を使用して消化した。断片化手順は、供給業者から提供された指示に従って行った。F(ab)2断片化の場合、消化を37℃で8時間行った。Fab断片化消化をそれぞれ16時間行った。
【0142】
Fab生成と精製の手順:
固定化パパインを、樹脂を0.5mlの消化バッファーで洗浄し、カラムを5000×gで1分間遠心分離することによって平衡化した。その後、バッファーを廃棄した。保存溶液を除去し、消化バッファーで洗浄し、その後、毎回1000×gで2分間遠心分離することによって脱塩カラムを調製した。0.5mlの調製したIgG試料を、平衡化固定化パパインが入ったスピンカラムチューブに加えた。消化反応のインキュベーション時間は、卓上ロッカーで37℃にて16時間行った。カラムを5000×gで1分間遠心分離して、固定化パパインから消化物を分離した。その後、樹脂を0.5mlのPBSで洗浄し、5000×gで1分間遠心分離した。洗浄画分を消化済み抗体に加え、その結果全試料体積は1.0mlであった。NAbプロテインAカラムをPBS及びIgG溶出バッファーを用いて室温で平衡化した。カラムを1分間遠心分離して保存溶液(0.02%アジ化ナトリウム含有)を除去し、2mlのPBSを加えることによって平衡化し、再び1分間遠心分離し、フロースルーを廃棄した。試料をカラムに載せ、反転によって再懸濁した。インキュベーションは、室温にて、転倒混合(end-over-end mixing)で10分間行った。カラムを1分間遠心分離し、Fab断片を含むフロースルーを保存した(参考文献:Coulter and Harris 1983. J. Immunol. Meth. 59, 199-203.;Lindner et al. 2010. Cancer Res. 70, 277-87;Kaufmann et al. 2010. PNAS. 107, 18950-5.;Chen et al. 2010. PNAS. 107, 14727-32;Uysal et al. 2009 J. Exp. Med. 206, 449-62;Thomas et al. 2009. J. Exp. Med. 206, 1913-27;Kong et al. 2009 J. Cell Biol. 185, 1275-840)。
【0143】
F(ab´)2断片の生成及び精製のための手順:
固定化ペプシンを、樹脂を0.5mlの消化バッファーで洗浄し、カラムを5000×gで1分間遠心分離することによって平衡化した。その後、バッファーを廃棄した。保存溶液を除去し、消化バッファーで洗浄し、その後、毎回1000×gで2分間遠心分離することによって脱塩カラムを調製した。0.5mlの調製したIgG試料を、平衡化固定化ペプシンが入ったスピンカラムチューブに加えた。消化反応のインキュベーション時間は、卓上ロッカーで37℃にて16時間行った。カラムを5000×gで1分間遠心分離して、固定化パパインから消化物を分離した。その後、樹脂を0.5mlのPBSで洗浄し、5000×gで1分間遠心分離した。洗浄画分を消化済み抗体に加え、その結果全試料体積は1.0mlであった。NAbプロテインAカラムをPBS及びIgG溶出バッファーを用いて室温で平衡化した。カラムを1分間遠心分離して保存溶液(0.02%アジ化ナトリウム含有)を除去し、2mlのPBSを加えることによって平衡化し、再び1分間遠心分離し、フロースルーを廃棄した。試料をカラムに載せ、反転によって再懸濁した。インキュベーションは、室温にて転倒混合で10分間行った。カラムを1分間遠心分離し、Fab断片を含むフロースルーを保存した(参考文献:Mariani et al. 1991. Mol. Immunol. 28: 69-77;Beale 1987. Exp Comp Immunol 11:287-96;Ellerson et al. 1972. FEBS Letters 24(3):318-22;Kerbel and Elliot 1983. Meth Enzymol 93:113-147;Kulkarni et al. 1985. Cancer Immunol Immunotherapy 19:211-4;Lamoyi 1986. Meth Enzymol 121:652-663;Parham et al. 1982. J Immunol Meth 53:133-73;Raychaudhuri et al. 1985. Mol Immunol 22(9):1009-19;Rousseaux et al. 1980. Mol Immunol 17:469-82;Rousseaux et al. 1983. J Immunol Meth 64:141-6;Wilson et al. 1991. J Immunol Meth 138:111-9)。
【0144】
NT-H抗体断片のヒト化:
抗体断片をCDRグラフト法(Jones et al. 1986. Nature 321, 522-525)によってヒト化した。
【0145】
以下のステップを実行してヒト化された配列を達成した。
-全RNA抽出:Qiagenキットを使用してNT-Hハイブリドーマから全RNAを抽出した。
-初回ラウンドRT-PCR:QIAGEN(登録商標)OneStep RT-PCRキット(カタログ番号210210)を使用した。RT‐PCRは重鎖と軽鎖に特異的なプライマーセットを用いて行った。各RNA試料について、12の個々の重鎖及び11の軽鎖RT-PCR反応を、可変領域のリーダー配列をカバーする変性フォワードプライマー混合物を使用してセットアップした。リバースプライマーは重鎖及び軽鎖の定常領域に位置する。制限部位はプライマーに設計しなかった。
-反応セットアップ:5.0μlの5×QIAGEN(登録商標)OneStep RT-PCRバッファー、0.8μlのdNTPミックス(10mMの各dNTPを含む)、0.5μlのプライマーセット、0.8μlのQIAGEN(登録商標)OneStep RT-PCR酵素ミックス、2.0μlの鋳型RNA、RNaseを含まない水で20.0μlにする。総体積20.0μl;PCR条件:逆転写:50℃、30分;PCRの初期活性化:95℃、15分、サイクル:94℃で25秒、54℃で30秒、72℃で30秒の20サイクル;最終伸長:72℃、10分;第2ラウンドセミネスティッドPCR:第1ラウンド反応からのRT-PCR産物を第2ラウンドPCRでさらに増幅した。12の個々の重鎖及び11の軽鎖RT-PCR反応を、抗体可変領域に特異的なセミネスティッドプライマーセットを用いてセットアップした。
-反応セットアップ:10μlの2×PCRミックス;2μlのプライマーセット;8μlの第1ラウンドPCR産物;総体積20μl;ハイブリドーマ抗体クローニング報告PCR条件:95℃で5分間の初期変性;95℃で25秒、57℃で30秒、68℃で30秒の25サイクル;最終伸長は68℃で10分。
-PCR終了後、PCR反応試料をアガロースゲルに流し、増幅したDNA断片を可視化する。ネスティッドRT-PCRによって増幅した15個以上のクローン化DNA断片を配列決定した後、いくつかのマウス抗体の重鎖及び軽鎖がクローン化され、正しいように思われる。タンパク質配列アラインメント及びCDR解析は、1つの重鎖及び1つの軽鎖を明らかにする。可変重鎖の位置26、40及び55上のアミノ酸並びに可変光の位置40上のアミノ酸は、結合特性にとって重要であるので、それらはマウス本来のものに復帰させることができる。結果として得られる候補を以下に示す(Padlan 1991. Mol. Immunol. 28, 489-498; Harris and Bajorath.1995. Protein Sci. 4, 306-310)。
【0146】
抗体断片配列についての注釈(配列番号10~17):太字及び下線は、N末端からC末端まで番号順にCDR1、2、3であり、斜体は定常領域であり、ヒンジ領域は太字の下線付き文字で強調表示され、C末端のヒスチジンタグは太字の斜体文字で強調表示されている。
【0147】
【化1】
【0148】
【化2】
【0149】
実施例2-実験的内毒素血症の健常男性被験者における抗ADM抗体(アドレシズマブ)(HAM8101)の漸増単回静脈内投与の安全性、忍容性、及び薬物動態/薬物力学に関する無作為化二重盲検プラセボ対照第I相試験
全体的試験デザイン
アドレシズマブの単回グループ毎漸増用量を、1時間かけて静脈内注入として投与した、実験的内毒素血症の間の健常男性ボランティアにおける無作為化二重盲検プラセボ対照第I相試験。連続LPS(リポ多糖)モデル;LPSの1ng/kgの初回ボーラス投与、それに続く1ng/kg/時で3時間の持続注入を使用して実験的内毒素血症を誘発した。被験者は、LPS投与開始1時間後に、試験薬物(アドレシズマブ又はプラセボ)による治療を1コース受けることになる。全身性炎症のモデルが最近報告されている(Kiers et al. 2017. Scientific Reports 7: 40149)。
【0150】
アドレシズマブは0.5mg/kgの投与量で1時間かけて単回注入し、後続の治療群では2.0及び8.0mg/kgまで増量した(表2を参照)。
【0151】
【表2】
【0152】
試験集団の選定
試験集団は健常若年(young)男性ボランティアから構成された。試験に組み入れられるためには、被験者はすべての組み入れ基準を満たし、どの除外基準も満たさなければならなかった。
【0153】
組み入れ基準
1.試験によって義務付けられた(study-mandated)どの手続よりも前の、本試験に参加することについての書面によるインフォームド・コンセント
2.18歳から35歳までの男性
3.被験者は、治験登録から治験薬投与後3カ月までの間、パートナーとの間で信頼性の高い避妊法の使用に同意しなければならない。
4.BMI18~30kg/m2、下限体重50kg、上限体重100kg
5.既往歴、身体診察、バイタルサイン、12誘導心電図、及び臨床検査パラメーターから判断して健康であること。
【0154】
除外項目
1.試験期間中及び試験日の7日前までに、薬物、レクリエーショナルドラッグ、又は抗酸化ビタミンサプリメントの投与を控える意思がないこと。
2.治療日の1日前までに喫煙又は飲酒を控える意思がないこと。
3.LPSが投与された試験への以前の参加。
4.治療日の3か月前までに著しい失血を伴う手術若しくは外傷又は献血。
5.心血管疾患の既往歴、徴候、又は症状、特に次のもの
・頻繁な血管迷走神経性虚脱又は起立性低血圧の病歴
・安静時脈拍数≦45又は≧100拍/分
・高血圧(RR収縮期>160又はRR拡張期>90mmHg)
・低血圧(RR収縮期<100又はRR拡張期<50mmHg)
・第1度房室ブロック又は複雑脚ブロックからなる心電図上の伝導異常
・何らかの慢性不整脈(PAC、PVCを除く)
6.腎機能障害:血漿クレアチニン>120μmol/L
7.肝機能検査値(アルカリホスファターゼ、AST、ALT、γ-GT)が正常値の上限の2倍を超えていること。
8.喘息の既往歴
9.アトピー体質
10.治療日の2週間前までに、CRPが正常値の上限の2倍以上、又は感染症を含む臨床的に重大な急性疾患であること。
11.投与日の30日前までの治験薬による治療又は他の治験への参加。
12.治験プロトコールを遵守できないことが判明しているか又はその疑いがあること。
13.使用する製剤の何れかの賦形剤に対して過敏であることがわかっていること。
14.書面によるインフォームド・コンセント(例えば、言語上又は精神上の理由のために)を自ら提供できない、かつ/又は試験に参加できないこと。
【0155】
エシェリキア・コーライ(Escherichia coli)O113型由来のリポ多糖類(LPS)
コントロールされた炎症状態を達成するために、リポ多糖類(LPS、米国レファレンスエンドトキシン[エシェリキア・コーライO:113、List Biological Laboratories Inc.、カリフォルニア州キャンベル、米国])を被験者に静脈内投与した。
【0156】
試験階層と時間枠
投与前の血液試料をT=0(ベースライン)で採取した。バイタルサインは、仰臥位又は半仰臥位で5分間安静後に測定した。血液試料及び対照群の来院のスケジュール(より詳細な情報については表2を参照):
・治療日(0日)に、予定時間±5分で採血した。
・24時間後(1日目)に、IMP投与後±1時間後にフォローアップ来院と採血を計画しなければならなかった。
・7日目には、±1日間の任意の時点でフォローアップ来院を計画することができた。
・14日目及び28日目には、±2日間の任意の時点でフォローアップ来院を計画することができた。
・60日目及び90日目には、±3日間の任意の時点でフォローアップ来院を計画することができた。
【0157】
臨床検査モニタリング
以下の血液学的パラメーターを分析した:ヘモグロビン、ヘマトクリット、RBC、MCV、MCH、MCHC、WBC、血小板、白血球百分率数。
【0158】
血液試料を血清分離管に採集し、次の生化学的パラメーター(CRP、AF、ALT、AST、γ‐GT、クレアチンキナーゼ、LDH、尿素‐N、クレアチニン、ナトリウム、カリウム、PT、及びAPTT)を分析した。
【0159】
プライマリーエンドポイント(主要評価項目)変数は次の通りである。有害事象;アドレシズマブ投与後の最初の10時間とフォローアップ期間(T=24時間、T=7日、T=14日、T=28日、T=60日、T=90日)のバイタルサイン、例えば心拍数、血圧、酸素飽和度、体温;静脈内注入部位の局所忍容性;安全性検査パラメーター(Hb、Ht、白血球、血小板、白血球分画、ナトリウム、カリウム、クレアチニン、尿素、アルカリホスファターゼ、ALT、AST、GGT、CK、CRP、PT、APTT);アドレシズマブ投与の2及び8時間後の12誘導心電図(ECG)。
【0160】
セカンダリーエンドポイント(副次的評価項目)は次の通りである。実験的内毒素血症の間のアドレシズマブの薬物動態(AUC、Cmax、T1/2、Cl、Vを含む);内毒素血症日の炎症性メディエーターの血漿中濃度(TNFα、IL-6、IL-8、IL-10を含むが、これらに限定されない);症状病気(Symptom Illness)スコア;任意選択で、腎障害マーカー(クレアチニンクリアランスや、プロエンケファリン、KIM-1を含むが、これらに限定されない)。
【0161】
【表3】
【0162】
重篤な有害事象(SAE)又は未知で重篤な副作用の疑い(Suspected Unsuspected Serious Adverse Reactions)(SUSAR)は、90日間のフォローアップ期間を含む試験の全期間中に観察されなかった。
【0163】
結果
アドレシズマブ群ではプラセボと比較して、病気スコアの低下が早かった。
【0164】
2mg/kg及び8mg/kgはともに、210分(T210)~450分(T450)の時点間でプラセボより有意に低い病気スコアを有する(それぞれp=0.011及び0.005;GLMの反復測定)(図1)。
【0165】
図2は、T270(時点270分)及びT300(時点300分)における治療群別の病気スコアの分布をそれぞれ示し(図2A及びB)、本発明の抗体の驚くべき有益な効果を裏付けている。
【0166】
効果に対する単一病気スコア構成要素の寄与を図3に示す:A)吐き気、B)頭痛、C)筋肉痛、D)背痛、及びE)震え。示されたすべての症状は、有意に効果に寄与する。嘔吐は2名の患者で、それぞれ1回生じたのみで、分析できなかった。
【0167】
図4は別の評価を示す。ここで別のスコアである病気(Sickness)スコアは、全体的な病気に関する単一の質問を用いて、0から10までのスケールで評価された。やはりこの場合も、抗ADM抗体(アドレシズマブ)を投与した患者では病気スコアがより早く低下する。
【0168】
健常ヒトにおけるNT-Hの投与
本試験は、健常男性被験者で無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験として行い、健常男性被験者(各群に、n=6の実薬、n=2のプラセボ)のそれぞれ8名の健常男性被験者(第1群:0,5mg/kg、第2群:2mg/kg、第3群:8mg/kg)の3つの逐次群において静脈内(i.v.)注入としてNT‐H抗体の単一漸増投与量を投与した。
【0169】
主な組み入れ基準は、書面によるインフォームド・コンセント、18歳~35歳、信頼できる避妊法を使用する同意、及び18~30kg/m2のBMIであった。
【0170】
被験者は、研究ユニットで1時間かけてゆっくり注入することによるNT-H抗体(0.5mg/kg、2mg/kg、8mg/kg)又はプラセボの単回静脈内投与を受けた。
【0171】
4つの群のベースラインADM値に差はなかった。ADM値の中央値は、プラセボ群で7.1pg/mL、第1治療群(0.5mg/kg)で6.8pg/mL、第2治療群(2mg/kg)で5.5pg/mL、第3治療群(8mg/mL)で7.1pg/mLであった。
【0172】
結果は、健常人ではNT-H抗体投与後最初の1.5時間以内にADM値が急激に上昇し、その後プラトーに達して緩やかに低下したことを示す(図5)。
【0173】
それぞれプラセボ及びNT-H抗体の単回投与を受ける前に、プラセボ群では2名の被験者、投与群では計3名の被験者が、片頭痛の症状を報告した。各時点の後、症状が再度求められた。NT‐H抗体を投与した被験者は、投与の4時間後に片頭痛のいかなる症状も報告しなかったが、プラセボを受けた2名の被験者は、注入前と同様に片頭痛の症状に苦しんだが依然としてあった。
図1
図2
図3A-B】
図3C-D】
図3E
図4
図5
【配列表】
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