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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】多層電極膜のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20240328BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20240328BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20240328BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01G11/26
H01G11/86
H01M4/02 Z
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2020522946
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 US2018058361
(87)【国際公開番号】W WO2019089696
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】62/580,956
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509316442
【氏名又は名称】テスラ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥオン ヒエウ ミン
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0287304(US,A1)
【文献】特表2017-517862(JP,A)
【文献】特表2013-502700(JP,A)
【文献】特開2014-049240(JP,A)
【文献】特開2006-210003(JP,A)
【文献】特表2015-524992(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0092954(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102629681(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02-04
H01M 4/13-4/62
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1活性材料および第1バインダを有する第1の活性層と、
第2活性材料および第2バインダを有する第2の活性層と、を備え
前記第1および第2の活性層は積層されて多層電極膜を形成し、
前記多層電極膜は自立膜であり、
前記第1の活性層及び前記第2の活性層は、溶媒残留物を実質的に含まず、
前記多層電極膜の厚さが少なくとも200μmであり、
前記第1の活性層および前記第2の活性層が実質的に同じ組成を有することを特徴とする多層電極膜。
【請求項2】
前記多層電極膜は、250~750μmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の多層電極膜。
【請求項3】
第3活性材料および第3バインダを有する第3の活性層をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の多層電極膜。
【請求項4】
前記第1および第2活性材料の少なくとも一方が金属酸化物又は金属硫化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の多層電極膜。
【請求項5】
第1面および第2面を備える集電体と、
前記集電体の前記第1面にラミネートされた請求項1~4のいずれか1項に記載の前記多層電極膜と、を含む多層電極。
【請求項6】
前記多層電極膜が、前記集電体の前記第1面に直接ラミネートされたことを特徴とする請求項5に記載の多層電極。
【請求項7】
前記多層電極膜と前記集電体との間に介在する接着層が設けられていないことを特徴とする請求項5に記載の多層電極。
【請求項8】
請求項5に記載の多層電極と、
前記集電体の前記第2面にラミネートされた第2の多層電極膜と、を含む両面多層電極。
【請求項9】
前記多層電極膜が、前記第2の多層電極膜と反対の極性であることを特徴とする請求項8に記載の両面多層電極。
【請求項10】
前記多層電極膜および前記第2の多層電極膜が、互いに対称であることを特徴とする請求項8に記載の両面多層電極。
【請求項11】
前記多層電極膜および前記第2の多層電極膜が、互いに非対称であることを特徴とする請求項8に記載の両面多層電極。
【請求項12】
前記多層電極膜が、前記第2の多層電極膜とは異なる数の層を備えることを特徴とする請求項11に記載の両面多層電極。
【請求項13】
前記集電体の前記第1面に直接隣接する前記多層電極膜の活性層は、前記集電体の前記第2面に直接隣接する前記第2の多層電極膜の活性層とは異なる組成を有することを特徴とする請求項11に記載の両面多層電極。
【請求項14】
第1活性材料および第1バインダを有し、自立膜である第1の活性層を提供することと、
第2活性材料および第2バインダを有し、自立膜である第2の活性層を提供することと、
前記第1の活性層を前記第2の活性層に積層して多層電極膜を形成すること、を含み、
前記多層電極膜は、厚さが少なくとも200μmの自立膜であり、
前記第1の活性層および前記第2の活性層が実質的に同じ組成を有し、
乾式の製造方法である、多層電極膜を製造する方法。
【請求項15】
前記第1の活性層の前記第2の活性層への積層は、カレンダー加工工程によっておこなわれることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の活性層の前記第2の活性層への積層は、プレス工程によっておこなわれることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項14~16のいずれか1項に記載の方法に従って多層電極膜を製造することと、
第1面および第2面を有する集電体を提供することと、
多層電極を形成するために、前記多層電極膜を前記集電体の前記第1面にラミネートすること、を含む多層電極を製造する方法。
【請求項18】
前記多層電極膜が、前記集電体の前記第1面に直接ラミネートされることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記多層電極膜と前記集電体との間に介在する接着層が提供されないことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記多層電極膜を前記集電体の前記第1面にラミネートすることが、カレンダー加工工程によっておこなわれることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記多層電極膜を前記集電体の前記第1面にラミネートすることが、プレス工程によっておこなわれることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
第2の多層電極膜を提供すること、および、
前記第2の多層電極膜を前記集電体の前記第2面にラミネートして両面多層電極を形成すること、をさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項23】
第1活性材料および第1バインダを有し、自立膜である第1の活性層を提供することと、
第2活性材料および第2バインダを有し、自立膜である第2の活性層を提供することと、
集電体を提供することと、
前記第1の活性層を前記第2の活性層に積層して多層電極膜を形成することであって、積層された前記第1の活性層及び前記第2の活性層は厚さが少なくとも200μmである、ことと、
前記第1の活性層を前記集電体にラミネートすること、を含み、
前記第1の活性層および前記第2の活性層が実質的に同じ組成を有し、
乾式の製造方法である、多層電極を製造する方法。
【請求項24】
前記第1の活性層を前記第2の活性層へ積層することに先行して、前記第1の活性層を前記集電体にラミネートすることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の活性層を前記集電体にラミネートすることに先行して、前記第1の活性層を前記第2の活性層に積層することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
第2の多層電極膜を提供することと、
前記第2の多層電極膜を前記集電体の第2面にラミネートして、両面多層電極を形成すること、を含む請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記多層電極膜が、前記第2の多層電極膜と反対の極性であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記多層電極膜および前記第2の多層電極膜が、互いに対称であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記多層電極膜および前記第2の多層電極膜が、互いに非対称であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記多層電極膜が、前記第2の多層電極膜とは異なる数の層を備えることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記集電体の第1面に直接隣接する前記多層電極膜の活性層は、前記集電体の第2面に直接隣接する前記第2の多層電極膜の活性層とは異なる組成を有することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の活性層は前記第2の活性層に直接隣接する、請求項1に記載の多層電極膜。
【請求項33】
前記第1の活性層と前記第2の活性層との間に層が設けられていない、請求項1に記載の多層電極膜。
【請求項34】
前記第1の活性層と前記第2の活性層との間に接着層が設けられていない、請求項1に記載の多層電極膜。
【請求項35】
接着層をさらに含む、請求項1に記載の多層電極膜。
【請求項36】
前記金属酸化物はリチウム金属酸化物である、請求項4に記載の多層電極膜。
【請求項37】
前記第1の活性層及び前記第2の活性層のいずれか1つは自立膜である、請求項1に記載の多層電極膜。
【請求項38】
前記リチウム金属酸化物は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムニッケルマンガン酸化物(LNMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、チタン酸リチウム及びリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)からなる群から選択される、又は、それらの組み合わせである、請求項36に記載の多層電極膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月2日に出願され、「多層電極膜のための組成物および方法」と題された米国仮出願第62/580,956号に基づく優先権の利益を主張し、当該出願の開示内容は全体として本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、一般的には、エネルギー貯蔵装置に関し、具体的には、多層電極膜のための材料および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電気エネルギー蓄電池は、電子、電気機械、電気化学および他の有用なデバイスに電力を供給するために広く使用されている。そのような電池には、一次化学電池および二次(充電式)電池などの電池、燃料電池およびウルトラキャパシタを含む様々な種類のキャパシタが含まれる。キャパシタやバッテリーなどのエネルギー貯蔵装置の動作電力とエネルギーを増やすことは、エネルギー貯蔵性能を高め、電力性能を高め、実際の使用例を広げるために望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補完的な属性を組み合わせた電極膜は、実際の用途におけるエネルギー貯蔵装置の性能を向上させることができる。さらに、既存の製造方法は、様々な構造的電極特性に実用上の制限を課す可能性がある。したがって、機械的特性が向上し、性能が向上した電極膜を製造するための新しい方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
先行技術を超えて達成される本発明とその優位性を要約する目的で、本明細書において本発明の特定の目的とその優位性について説明する。このような目的または優位性のすべてが本発明の特定の実施形態において達成されるわけではない。したがって、例えば、当業者は、本明細書において教示または示唆される他の目的または優位性を必ずしも達成する必要はなく、本明細書において教示される1つのまたは一群の優位性を達成または最適化する方法により、本発明を具体化または実行できることを認識する。
【0006】
第1の態様では、自己支持型電極膜が提供され、前記電極膜は、2つ以上の積み重ねられた複数の活性層を備える。いくつかの実施形態では、自己支持型電極膜は、第1の活性層および第2の活性層を備え、前記第1の活性層および前記第2の活性層は互いに対して異なる組成を有する。さらなる実施形態では、前記第1の活性層および前記第2の活性層は、それぞれ自己支持型膜である。さらに別の実施形態では、前記第1の活性層および前記第2の活性層は、異なる活性材料組成物および/またはバインダ材料組成物を備える。いくつかの実施形態では、前記電極膜は電極を形成するために集電体に接着される。いくつかの実施形態では、多層電極膜の活性層間および/または多層電極膜と集電体との間に、別個の接着層が提供されない。
【0007】
別の態様では、多層電極膜が提供される。いくつかの実施形態では、前記多層電極膜は第1活性材料および第1バインダを有する第1の活性層を備える。いくつかの実施形態では、前記多層電極膜は、第2活性材料および第2バインダを有する第2の活性層を備える。いくつかの実施形態では、第1および第2の活性層が積層されて、前記多層電極膜を形成する。いくつかの実施形態では、前記多層電極膜は自立膜である。
【0008】
別の態様では、多層電極が提供される。いくつかの実施形態では、前記多層電極は第1面および第2面を有する集電体を備える。いくつかの実施形態では、前記多層電極は、前記集電体の第1面にラミネートされた第1の多層電極膜を備える。
【0009】
別の態様では、両面多層電極が提供される。いくつかの実施形態では、前記両面多層電極は第1の多層電極膜を備える。いくつかの実施形態では、前記両面多層電極は、前記集電体の第2面にラミネートされた第2の多層電極膜を備える。
【0010】
別の態様では、多層電極を製造する方法が提供される。いくつかの実施形態では、前記方法は第1活性材料および第1バインダを有する第1の活性層の提供を含み、前記第1の活性層は自立膜である。いくつかの実施形態では、前記方法は第2活性材料および第2バインダを有する第2の活性層の提供を含み、前記第2の活性層は自立膜である。いくつかの実施形態では、前記方法は前記第1の活性層を前記第2の活性層に積層して多層電極膜を形成することを含み、前記多層電極膜は自立膜である。
【0011】
別の態様では、多層電極を製造する方法が提供される。いくつかの実施形態では、前記方法は、第1の多層電極膜の製造を含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、第1面および第2面を有する集電体の提供を含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記第1の多層電極膜を前記集電体の第1面にラミネートすることにより多層電極を形成することを含む。
【0012】
別の態様では、多層電極を製造する方法が提供される。いくつかの実施形態では、前記方法は、第1活性材料および第2バインダを有する第1の活性層の提供を含み、前記第1の活性層は自立膜である。いくつかの実施形態では、前記方法は、第2の活性材料および第2バインダを有する第2の活性層の提供を含み、前記第1の活性層は自立膜である。いくつかの実施形態では、前記方法は、集電体の提供を含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記第1の活性層を前記第2の活性層に積層することを含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記第1の活性層を前記集電体にラミネートすることを含む。
【0013】
これらの実施形態はすべて、本明細書に開示されている本発明の範囲内に示されている。本発明のこれらおよび他の実施形態は、添付図面を参照した好ましい実施形態についての以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになり、本発明は、開示される特定の好ましい実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1はエネルギー貯蔵装置の実施形態を示す。
図2A図2Aおよび図2Bは、電極に組み込まれた多層(1層からn層)の膜構造を示す。図2Aは電極膜にn層(3層以上)の活性層を備える片面電極を示す。
図2B図2Bは各電極膜にn層(3層以上)の活性層を備える両面電極を示す。図2Bでは、集電体の両側の活性層は同じ組成と順序を有する。
図3A図3Aおよび図3Bは、電極に組み込まれた多層(1層からn層、およびn-1層)膜構造を示す。図3Aは各電極膜にn層(3層以上)の活性層を備える両面電極を示す。図3Aでは集電体の両側の多層膜中の活性層は互いに順序が異なる。
図3B図3Bは集電体の片側の電極膜中のn-1層(2層以上)の活性層と、その反対側の電極膜中のn層(3層以上)の活性層とを備える両面電極を示す。
図4A図4Aは活性層を互いに積層するためのカレンダー加工工程を示す。
図4B図4Bは多層膜を集電体にラミネートするためのカレンダー加工工程を示す。
図5A図5Aは活性層を互いに積層するためのプレス工程を示す。
図5B図5Bは多層膜を集電体にラミネートするためのプレス工程を示す。
図6図6は本明細書に記載される多層電極膜を製造する方法を示すフローチャートを示す。
図7A図7Aは厚さ120μmの単層グラファイト電極の表面形態を示す。
図7B図7Bはそれぞれの厚さが120μmの3つの同一の活性層がカレンダー加工された3層グラファイト電極膜の表面形態を示す。
図8A図8Aは異なる組成の2つの単層グラファイト電極膜(層1および層2)および3層グラファイト電極膜(層121)の容量を示す。
図8B図8Bは異なる組成の2つの単層グラファイト電極膜(層1および層2)および3層グラファイト電極膜(層121)の効率を示す。
図9A図9Aは個々の層であるグラファイトおよび3層複合電極(例1による)の容量を示し、電極膜は層A(層1)、層B(層2)およびSi-C3層積層電極膜(層121)である。
図9B図9Bは個々の層であるグラファイトおよび3層複合電極(例1による)の効率を示し、電極膜は層A(層1)、層B(層2)およびSi-C3層積層電極膜(層121)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において使用される「バッテリー」および「キャパシタ」という用語は、当業者にとって一般的および習慣的な意味が与えられる。「バッテリー」および「キャパシタ」という用語は、互いに排他的ではない。キャパシタまたはバッテリーは、単独で、または、マルチセルシステムの構成要素として動作する単一の電気化学セルである。
【0016】
本明細書において使用される場合、エネルギー貯蔵装置の電圧は単一のバッテリーまたはキャパシタセルの動作電圧である。電圧は、定格電圧を超えるか、負荷を受けて定格電圧を下回るか、または、製造公差によって異なる。
【0017】
本明細書に記載されるように、「自己支持型」の電極膜または活性層は、電極膜または層が自立できるように、膜または層を支持し、その形状を維持するために十分なバインダマトリックス構造を組み込んだ電極膜または層である。エネルギー貯蔵装置に組み込まれる場合、自己支持型の電極膜または活性層は、そのようなバインダマトリックス構造を組み込んだものである。一般的に、および使用される方法によって、そのような電極膜または活性層は、集電体や他の膜などの外部の支持要素を用いることなくエネルギー貯蔵装置の製造工程で使用されるほど十分な強度を有する。例えば、「自己支持型」電極膜は、他の支持要素なしに電極製造工程中で、巻き取られ、取り扱われ、巻き出されるのに十分な強度を有することができる。
【0018】
本明細書に記載されるように、「溶剤を含まない」電極膜とは、検出可能な処理溶剤、処理溶剤残留物、または処理溶剤不純物を含まない電極膜である。処理溶剤または従来の溶剤には有機溶剤が含まれる。カソード電極膜またはアノード電極膜などの乾式電極膜は無溶剤であり得る。
【0019】
「湿式」電極または「湿式工程」電極は、活性材料、バインダおよび処理溶剤のスラリー、処理溶剤残留物、および/または処理溶剤不純物を含む少なくとも1つの工程によって製造された電極である。湿式電極は、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。
【0020】
本明細書では、複数の活性層から形成された電極膜を組み込んだ様々な実施形態が提供される。エネルギー貯蔵装置に使用される電極膜は、本明細書に提供されるように、複数の活性層から製造されていてもよい。さらに、エネルギー貯蔵装置は、本明細書に提供されるように、電極膜を形成するために複数の活性層を積層する方法によって構成されていてもよい。
【0021】
電極膜は、膜構成要素の機械的特性およびそれらの間の相互作用により性能が低下する可能性がある。例えば、機械的制限は、活性層と集電体の間の接着が不十分であること、および、活性層とバインダの間の結合が不十分であることが原因であると考えられる。そのような作用は、電力供給およびエネルギー貯蔵容量の両方において性能の低下につながる可能性がある。理論によって制限されることは望まないが、性能の低下は、例えば、イオン電導性、電気伝導性またはそれらの組み合わせの損失による、活性物質の失活が原因であると考えられる。例えば、活性層と集電体の間の接着力が低下すると、セル抵抗は増加する可能性がある。活性物質間の結合の低下は、セル抵抗の増加につながる可能性があり、場合によっては電気的接触が失われ、セル内のイオンおよび電気伝達サイクルからいくつかの活性物質が除去される可能性がある。理論によって制限されることは望まないが、活性物質の体積変化がそのような作用に寄与していると考えられる。例えば、セルサイクル中に著しい体積変化を受けるシリコンベース材料などの特定の活性材料を組み込んだ電極において更に低下することがある。リチウムのインターカレーション・デインターカレーション工程は、一部のシステムにおいてこのような体積変化に該当する場合がある。一般に、これらの機械的分解工程は、任意の電極、例えば、正極または負極、もしくはバッテリー電極、キャパシタ電極、ハイブリッド電極またはエネルギー貯蔵装置で観察されることがある。例えば、噴霧、スロットダイ、押し出しおよび印刷などの湿式膜形成工程では、基板は、状況によっては活性層の可能な組み合わせを制限することがある。
【0022】
さらに、湿式工程は、材料の選択が制限される可能性があり、結果として得られた湿式処理された電極膜も、例えば活性材料などの構成材料が不均一に分散する可能性がある。不均一性は膜密度が増加するにつれて悪化し、イオン電導性および/または電気伝導性が不十分になる可能性がある。また湿式工程は、一般的に効果で時間のかかる乾燥工程を必要とし、膜が厚くなるにつれて困難となる。そのため、湿式工程で製造した電極膜には厚さの限界もある。
【0023】
本明細書では、2つ以上の活性層を組み込んだ多層電極膜が提供される。活性膜は、2つ以上の活性層を積層して単一の電極膜を形成し、集電体にラミネートされて電極を形成するものであり、個別に取り扱い可能な自立膜であってもよい。そのような多層電極膜およびそれらに関連する処理技術は、上記の問題のいくつかに対処することが明らかとなった。例えば、活性層の順序は、より高い接着性の膜が集電体に隣接するように選択されてもよい。さらなる例として、より低い接着性の活性層は、より高い接着性の活性層の間に挟まれてもよく、その結果、例えば集電体への低い接着性の影響が低減される。いくつかの実施形態では、例えば、電力および/またはエネルギー性能等の電極膜の性能は、複数の活性層を選択された特性と組み合わせることによって調整することができる。有利なことに、本明細書で提供される多層膜は、製造するのに費用対効果が高い。例えば、湿式工程とは異なり、複数の活性層から最終的な電極膜を組み立てる前に、各活性層を並行して設計および製造できる。有利なことに、様々な活性層を備える電極膜は、容易に組み立てられ、試験されて、所望の特性を有する組み合わせを見つけることができる。場合によっては、活性層を選択した組み合わせで積層することにより、費用対効果の高いオーダーメイドによる応用の需要に対応することができる。
【0024】
電極膜に組み合わされる活性膜は互いに同じでも、異なっていてもよい。有利なことに、同じ組成の活性層が複数積層された例は、従来技術を用いた場合よりも厚い電極膜の製造を可能にし得る。有利なことに、製造された厚さの活性層において欠陥を低減可能であり、例えば不均一性などの欠陥を低減するためには、同じ組成の電極膜では、単一層として形成されたものよりも、積層された電極膜を形成した方がよい。さらに、3つの同一の活性膜による多層電極膜のいくつかの例は、同じ材料を備える従来の単層電極と比較して、より高密度の電極膜をもたらすだろう。いくつかの実施形態では、多層電極は、同様の組成および密度の従来の電極膜と比較して改善された細孔構造を電極膜の表面上に有する。いくつかの例では、同一の組成の活性層を単一の電極膜に積層することは、単一層として電極膜を形成することと比較して、より費用対効果が高い。厚い電極膜は、例えば、医療機器に使用される。したがって、本明細書で提供される多層電極膜は、医療機器への使用に適切である。
【0025】
さらに、本明細書で提供される多層電極膜は、典型的な電極膜、例えば、単一層のみを有する、または、全体にわたってほぼ同種の組成を有する電極膜よりも優れていることがわかった。例えば、異なる組成の活性層は異なる電気伝導性及びイオン電導性を有することが期待される。したがって、電極膜の全体的な性能は、集電体との近さによって特定の活性層を選択することにより改善される。さらに、異なる組成の活性層は、異なるエネルギー及び電力性能特性を有することが期待される。高出力および高エネルギーの活性層を単一の電極膜に組み合わせれば、各タイプの活性層を提供することが期待される。
【0026】
2つ以上の活性層を組み込んだ多層電極膜は、一般に、少なくとも1つの自己支持型乾式電極活性層を別の活性層に積層することにより製造される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される活性層は、構造的および/または機能的に電極膜と区別できない。したがって、各活性層は電極活性材料およびバインダを備え得る。いくつかの実施形態では、各活性層は自己支持型乾式電極活性層である。自己支持型活性層は、乾式の電極製造技術を用いて製造される。一般に、活性電極材料およびバインダは、組み合わされ、粉砕され、混合され、または、他の方法で処理されて活性層混合物を形成し、カレンダー加工またはプレスされて自己支持型活性層を形成する。いくつかの実施形態では、バインダはフィブリル化可能なポリマーバインダである。さらなる実施形態では、バインダはPTFEを含む、または、PTFEを主成分とする。さらなる実施形態では、電極膜製造のどの段階においても溶剤が使用されない。
【0027】
乾式の電極製造は、多層電極膜を製造するのに有効である。乾式の電極製造により、自己支持型にすることが可能であり、例えば、自立型の活性層を形成することができる。一般に、これらの活性層は、一連の所望の動作特性を達成するために必要に応じて組み合わせることができる。したがって、個々の活性層を製造する方法として、制限なしに自己支持型活性層を積層することができる。
【0028】
エネルギー貯蔵装置が両面電極、すなわち、両側に電極膜を有する集電体を備える場合、2つの電極膜は互いに同じまたは異なる組成であってもよい。
【0029】
一般に、電極膜に組み合わせ可能な活性層に制限はない。したがって、各活性層は、例えば、同じまたは異なる活性材料、同じまたは異なるバインダ、同じまたは異なる厚さ、同じまたは異なる寸法のものを、同じ電極膜内の別の活性層として備えることができる。一般に、単一の電極膜に組み合わせることが可能な活性層の数は、圧縮性やイオンおよび/または電気伝導性のような基本的な物理的特性には制限されず、エネルギー貯蔵装置の電極膜内の活性層の数に制限される。
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される多層電極膜の各活性層は、少なくとも1つの活性材料および少なくとも1つのバインダを備える。さらなる実施形態では、本明細書で提供される多層電極膜の各活性層は、自己支持型層である。少なくとも1つの活性材料は、この技術分野で知られている任意の活性材料とすることができる。少なくとも1つの活性材料は、例えば、黒鉛材料、黒鉛、グラフェン含有材料、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、および/またはカーボンナノチューブなどの炭素材料を含んでもよい。少なくとも1つの活性材料は、例えば、金属酸化物、金属硫化物またはリチウム金属酸化物などの電池活性物質を含んでもよい。例えば、電池活性物質は、リチウム金属酸化物、層状の遷移金属酸化物、スピネルマンガン酸化物またはかんらん石を含んでもよい。リチウム金属酸化物は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムニッケルマンガン酸化物(LNMO)、リチウム鉄リン酸塩(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、チタン酸リチウムおよび/またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)でもよい。炭素は、多孔質炭素、グラファイト、導電性炭素またはそれらの組み合わせであってもよい。バインダは、PTFE、ポリオレフィン、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、スチレン-ブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレンブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン-コアルキルメチルシロキサン、それらのコポリマーおよび/またはそれらの混合物でもよい。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のポリオレフィンが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、それらのコポリマーおよび/またはそれらの混合物を含んでもよい。バインダは、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロースを含んでもよい。特定の実施形態では、バインダはPTFEを含む、または、PTFEを主成分とする。いくつかの実施形態では、バインダはフィブリル化可能なポリマーを含む。
【0031】
本明細書に記載の2つ以上の活性層を組み込んだ多層電極膜は、単一の活性層のみを備えるものと比較して、改善された性能を有利に示すことができる。性能とは、例えば、クーロン効率、容量または導電率である。
【0032】
本明細書で提供される材料および方法は、様々なエネルギー貯蔵装置で実施することができる。本明細書で提供されるように、エネルギー貯蔵装置は、キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ(LIC)、ウルトラキャパシタ、バッテリー、または前記2つ以上の態様を組み合わせたハイブリッドエネルギー貯蔵装置であってもよい。いくつかの実施形態では、上記装置はバッテリーである。エネルギー貯蔵装置は、動作電圧によって特徴づけることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエネルギー貯蔵装置は、約2.2Vから約3.8Vの動作電圧を有することができる。さらなる実施形態では、動作電圧は、約2.7Vから約3V、約3.6Vから約3.7V、約2.7Vから約4.2V、約2.7Vから約4.3V、約2.7Vから約4.4Vまたはそれらの間で任意に選択された値とすることができる。いくつかの実施形態では、動作電圧は、約2.7V、約3V、約3.6V、約3.7V、約4.2V、約4.3V、約4.4Vもしくは約4.5V、またはそれらの間の任意の範囲の値とすることができる。
【0033】
本明細書で提供されるエネルギー貯蔵装置は、1つ以上の電極を備える。電極は、一般に、電極膜および集電体を備える。電極膜は、積層された活性層から構成することが可能であり、各活性層は、1つ以上のバインダと1つ以上の活性電極材料との活性層混合物から形成することができる。本明細書で提供される電極バインダおよびバインダを備える電極は、様々な実施形態において、1つ以上のバッテリー、キャパシタ、キャパシタ-バッテリーハイブリッド、燃料電池または他のエネルギー貯蔵システムもしくは装置、およびそれらの組み合わせなど、多くのエネルギー貯蔵装置およびシステムのいずれかと共に使用できることがわかった。いくつかの実施形態では、活性層混合物および本明細書に記載の活性層混合物から製造された電極は、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池、ウルトラキャパシタ、または前記2つ以上の態様を組み合わせたハイブリッドエネルギー貯蔵装置の構成要素であってもよい。
【0034】
本明細書で提供されるエネルギー貯蔵装置は、例えば、平面、らせん状に巻かれたもの、ボタン形状または袋状のような任意の適切な形状であってもよい。本発明で提供されるエネルギー貯蔵装置は、例えば、発電システム、無停電電源システム(UPS)、太陽光発電システム、例えば産業機械および/または輸送で使用するためのエネルギー回収システムなどのシステムの構成要素であってもよい。本明細書で提供されるエネルギー貯蔵装置は、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)および/または電気自動車(EV)を含む、様々な電子装置および/または自動車に電力を供給するために使用できる。
【0035】
本明細書で説明するエネルギー貯蔵装置は、装置の寿命に至るまで等価直列抵抗の増加が低減されることを有利な特徴とし、これにより、装置の寿命に至るまで電力密度が増加した装置を提供することができる。本明細書で説明するエネルギー貯蔵装置は、装置の寿命にわたって等価直列抵抗の上昇が低減することを有利に特徴とし、装置の寿命にわたって電力密度が増加した装置を提供することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるエネルギー貯蔵装置は、装置の寿命に至るまで容量の損失が減少することを特徴とする。様々な実施形態で実現されることが可能な更なる改良には、サイクル中の保存安定性の向上および容量低下の低減を含むサイクル性能の向上が含まれる。
【0036】
図1は、エネルギー貯蔵装置100の例の側断面概略図を示す。エネルギー貯蔵装置100は、例えば、キャパシタ、バッテリー、キャパシタ-バッテリーハイブリッドまたは燃料電池として分類され得る。
【0037】
装置は、第1電極102、第2電極104および第1電極102と第2電極104との間に配置されたセパレータ106を有することができる。第1電極102および第2電極104は、セパレータ106の対向する表面に隣接して配置されていてもよい。エネルギー貯蔵装置100は、エネルギー貯蔵装置100の電極102,104間のイオン伝達を促すために電解質118を備えていてもよい。例えば、電解質118は、第1の電極102、第2の電極104およびセパレータ106と接触していてもよい。電解質118、第1の電極102、第2の電極104およびセパレータ106は、エネルギー貯蔵装置のハウジング120内に入れられていてもよい。第1の電極102、第2の電極104、およびセパレータ106の1つもしくは複数、またはそれらの構成要素は、多孔質材料を含んでいてもよい。多孔性材料内の細孔は、ハウジング120内における電解質118との反応性のための抑制および/または増大した表面積を提供することができる。エネルギー貯蔵装置のハウジング120は、第1電極102、第2電極104およびセパレータ106の周りを密閉することが可能であり、周囲の環境から物理的に密閉されてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1電極102はアノード(負電極)とすることができ、第2電極104はカソード(正電極)とすることができる。セパレータ106は、第1電極102および第2電極104のように、セパレータ106の互いに反対側に隣接する2つの電極を電気的に絶縁し、同時に2つの隣接する電極間のイオン伝達を可能に構成することができる。セパレータ106は、適切な多孔質の電気絶縁材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、セパレータ106は、ポリマー材料を含むことができる。例えば、セパレータ106は、セルロース系材料(例えば、紙)、ポリエチレン(PE)材料、ポリプロピレン(PP)材料、および/またはポリエチレンおよびポリプロピレン材料を含むことができる。
【0039】
一般的に、第1電極102および第2電極104はそれぞれ、集電体および電極膜を含む。電極102および104は、それぞれ電極膜112および114を含む。電極膜112および114は、任意の適切な形状、サイズおよび厚さを有することができる。例えば、電極膜は、約30ミクロン(μm)から約250ミクロン、例えば、約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約250ミクロン、またはそれらの間の任意の範囲の値の厚さを有することができる。電極膜は、一般に、1つ以上の活性材料を含む。いくつかの実施形態では、電極膜112および114は、バインダ材料および少なくとも1つの活性材料を含む活性層を含むことができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つ活性材料は、炭素系材料または電池材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、電池活性材料は、リチウム金属酸化物および/または硫化リチウムを含むことができる。いくつかの実施形態では、電池活性材料は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムニッケルマンガン酸化物(LNMO)、リチウムリン酸鉄(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、チタン酸リチウム、および/またはリチウムニッケルコバルトコバルト酸化物(NCA)を含んでいてもよい。電極膜112および/または114は、本明細書で提供されるような多層電極膜であってもよく、本明細書で提供されるような有益な厚さなどの有益な特性を有する。第1電極102および/または第2電極104は、本明細書で提供されるような両面電極であってもよく、各電極は、集電体の両側にある電極膜を含む。
【0040】
炭素系材料は、黒鉛質炭素、多孔質炭素、活性炭、カーボンブラック、導電性カーボン、グラフェン含有カーボン、グラファイト、およびそれらの組み合わせから選択することができる。活性炭は、蒸気工程または酸/エッチング工程から得られる。いくつかの実施形態では、黒鉛質炭素は、表面処理された炭素であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、多孔質炭素は活性炭を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、階層構造の炭素を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、構造化カーボンナノチューブ、構造化カーボンナノワイヤーおよび/または構造化カーボンナノシートを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、多孔質炭素はグラフェンシートを含んでもよい。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、表面処理された炭素であってもよい。
【0042】
第1電極膜112および/または第2電極膜114は、本明細書で提供される1つまたは複数のバインダを含む活性層も含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、バインダは1つ以上のポリマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、バインダは、1つ以上のフィブリル化可能なバインダ成分を含んでいてもよい。バインダ成分はフィブリル化して多数のフィブリルを提供してもよく、フィブリルは膜の1つ以上の他の成分に所望の機械的支持を提供する。フィブリルは、マトリックス、格子、またはウェブを形成して、電極膜に機械的構造を提供できると考えられる。いくつかの実施形態では、バインダ成分は、様々な適当なフィブリル化可能なポリマー材料の1つまたは複数を含んでいてもよい。
【0043】
一般に、本明細書に記載されている活性層および/または電極膜は、変更された乾式製造工程を使用して製造することができる。例えば、本明細書で提供されるいくつかのステップは、米国特許公開第2005/0266298号および米国特許公開第2006/0146479号に記載されているとおりであってもよい。これら、およびここに記載されたその他の外部文書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書で使用されるように、乾式製造工程は、電極膜の形成において溶剤が使用されない、または、ほぼ溶剤が使用されない工程を参照することができる。例えば、炭素材料およびバインダを含む、活性層または電極膜の構成要素は、乾式粒子を含んでいてもよい。活性層または電極膜を形成するための乾式粒子を組み合わせて、乾式粒子活性層混合物を提供することができる。いくつかの実施形態では、活性層または電極膜は、活性層または電極膜の成分の重量パーセントと、乾式粒子活性層混合物の成分の重量パーセントが実質的に同じになるように、乾式粒子活性層混合物から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、乾式製造工程を使用して乾式粒子活性層混合物から形成された活性層または電極膜は、それから生じる溶剤および溶剤残留物などの処理添加剤を含まない、または、実質的に含まない。いくつかの実施形態では、得られる活性層または電極膜は、乾式子混合物から乾式工程を使用して形成される自己支持膜である。いくつかの実施形態では、得られる活性層または電極膜は、乾式粒子混合物から乾式工程を使用して形成される自立膜である。活性層または電極膜を形成するための工程は、膜がフィブリル化バインダを含むように、フィブリル化可能バインダ成分をフィブリル化することを含んでいてもよい。さらなる実施形態において、自立活性層または電極膜は、集電体が存在しない状態で形成されてもよい。さらに別の実施形態では、活性層または電極膜は、膜が自己支持するようにフィブリル化ポリマーマトリックスを含んでいてもよい。
【0044】
図1に示すように、第1電極102および第2電極104は、第1電極膜112と接触する第1集電体108、および第2電極膜114と接触する第2集電体110をそれぞれ含む。第1集電体108および第2集電体110は、対応する各電極膜と外部電気回路(図示せず)の間の電気的接続を容易にすることができる。第1集電体108および/または第2集電体110は、1つ以上の導電性材料を含み、対応する電極と外部電気回路と間の電荷の移動を促進するために選択される任意の適切な形状およびサイズを有することができる。例えば、集電体は、アルミニウム、ニッケル、銅、レニウム、ニオブ、タンタル、ならびに銀、金、プラチナ、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、およびそれらの合金および組み合わせといった貴金属を含む材料などの金属材料を含むことができる。例えば、第1集電体108および/または第2集電体110は、アルミニウム箔を含むことができる。アルミニウム箔は、対応する電極と外部電気回路との間の電荷の移動を提供する大きさの長方形または略長方形の形状を有することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池またはハイブリッドエネルギー貯蔵装置のカソード電極膜は少なくとも1つの活性材料を、約70重量%から約92重量%、または約70重量%から約88重量%を含む、約70重量%から約95重量%含んでもよい。いくつかの実施形態では、カソード電極膜は多孔質炭素材料を、約5重量%まで、または約1重量%から約5重量%を含む、約10重量%まで含まれてもよい。いくつかの実施形態では、カソード電極膜は、約1重量%から約3重量%を含む約5重量%までの導電性添加剤を含む。いくつかの実施形態では、カソード電極膜はバインダを、例えば、約1.5重量%から10重量%、約1.5重量%から5重量%、または約1.5重量%から3重量%を含む約20重量%まで含む。いくつかの実施形態では、カソード電極膜は、約1.5重量%から約3重量%のバインダを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、アノード電極膜は、少なくとも1つの活性材料、バインダ、および任意の導電性添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、導電性添加剤は、カーボンブラックなどの導電性炭素添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、アノードの少なくとも1つの活性材料は、合成グラファイト、天然グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラフェン、メソポーラスカーボン、シリコン、シリコン酸化物、スズ、スズ酸化物、ゲルマニウム、チタン酸リチウム、混合物、または前記材料の複合材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アノード電極膜は少なくとも1つの活物質を、約80重量%から約92重量%、または約80重量%から約90重量%を含む、約80重量%から約94重量%含むことができる。いくつかの実施形態では、アノード電極膜は導電性添加剤を、約1重量%から約3重量%を含む約5重量%まで含む。いくつかの実施形態では、アノード電極膜はバインダを、約1.5重量%から10重量%、約1.5重量%から5重量%、または約1.5重量%から3重量%を含む、最大約20重量%含む。いくつかの実施形態では、アノード電極膜は、約1.5重量%から約3重量%のバインダを含む。いくつかの実施形態では、アノード電極膜は、導電性添加剤を含まなくてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態は、ポリマーバインダ材料を含む1つ以上の活性層を有する、アノードおよび/またはカソードなどの電極膜を含む。いくつかの実施形態では、バインダは、PTFEおよび任意の1つまたは複数の追加のバインダ成分を含むことができる。いくつかの実施形態では、バインダは、1つ以上のポリオレフィンおよび/またはそれらのコポリマー、ならびにPTFEを含むことができる。いくつかの実施形態では、バインダは、PTFEおよび1つ以上のセルロース、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエーテルの前駆体、ポリシロキサン、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、バインダは、分岐ポリエーテル、ポリビニルエーテル、それらのコポリマー、および/またはそれらと同種のものを含むことができる。バインダは、ポリシロキサンおよびポリシロキサンのコポリマー、および/またはポリエーテル前駆体のコポリマーを含むことができる。例えば、バインダは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレンブロックポリ(エチレングリコール)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン-コアルキルメチルシロキサン、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のポリオレフィンは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含むことができる。バインダは、セルロース、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)を含むことができる。ポリマーの混合物は、前述のポリマーまたはコポリマーの相互浸透ネットワークを含み得る。
【0048】
バインダは、ポリマー成分の様々な適切な比率を含み得る。例えば、PTFEはバインダを、約20重量%から約80重量%、約30重量%から約70重量%、または約30重量%から約50重量%を含む約98重量%まで、例えば、約20重量%から約95重量%、約20重量%から約90重量%含んでもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの活性材料は処理された炭素材料を含み、処理された炭素材料は、米国特許公開第2014/0098464号に記載されるように、水素含有官能基、窒素含有官能基および/または酸素含有官能基の数の減少を含む。例えば、処理された炭素粒子は、処理された炭素の1つ以上の表面上の多くの1つ以上の官能基の減少を含むことができ、例えば、未処理の炭素表面と比較して1つ以上の官能基が約20%から約50%を含め約10%から約60%減少してもよい。処理された炭素は、減少した数の水素含有官能基、窒素含有官能基、および/または酸素含有官能基を含むことができる。処理された炭素は、減少した数の水素含有官能基、窒素含有官能基、および/または酸素含有官能基を含むことができる。いくつかの実施形態では、処理された炭素材料は水素を含む官能基を、約0.5%未満を含め、約1%未満含む。いくつかの実施形態では、処理された炭素材料は窒素を含む官能基を、約0.1%未満を含め約0.5%未満含む。いくつかの実施形態では、処理された炭素材料は酸素を含む官能基を、約3%未満を含め、約5%未満含む。さらなる実施形態では、処理された炭素材料は、未処理の炭素材料よりも約30%少ない水素含有官能基を含む。
【0050】
本明細書に記載される多層電極は、選択された条件下での動作を可能にするために、エネルギー貯蔵装置において別々にまたは組み合わせて使用され得る。
【0051】
リチウムイオンエネルギー貯蔵装置
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、リチウムイオンキャパシタまたはリチウムイオン電池などのリチウムイオンエネルギー貯蔵装置であってもよい。いくつかの実施形態では、リチウムイオンエネルギー貯蔵装置の電極の電極膜は、1つまたは複数の炭素材料、および本明細書で提供されるフィブリル化バインダマトリックスを含むことができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池またはハイブリッドエネルギー貯蔵装置のアノードの電極膜は、アノード活性材料を含むことができる。アノード活性材料は、例えば、挿入材料(炭素、グラファイト、および/またはグラフェンなど)、合金/非合金材料(シリコン、酸化シリコン、スズ、および/または酸化スズなど)、金属合金または化合物(Si-Al、および/またはSi-Snなど)、および/または変換材料(酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ニッケル、および/または酸化銅など)を含むことができる。アノード活物質を単独で、または混合して多相材料(Si-C、Sn-C、SiOx-C、SnOx-C、Si-Sn、Si-SiOx、Sn-SnOx、Si-SiOx-C、Sn-SnOx-C、Si-Sn-C、SiOx-SnOx-C、Si-SiOx-Sn、またはSn-SiOx-SnOxなど)を形成してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池またはハイブリッドエネルギー貯蔵装置のカソードの電極膜は、カソード活性材料、バインダ、任意に多孔質炭素材料、および任意に導電性添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、導電性添加剤は、カーボンブラックなどの導電性炭素添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素材料は活性炭を含むことができる。いくつかの実施形態では、カソード活性材料は、リチウム金属酸化物および/または硫化リチウムを含むことができる。いくつかの実施形態では、カソード活性材料は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムニッケルマンガン酸化物(LNMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、チタン酸リチウムおよび/またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)を含むことができる。カソード活性材料は、硫黄または硫化リチウム(LiS)などの硫黄を含む材料、または他の硫黄ベースの材料、またはそれらの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、カソード膜は、硫黄または硫黄活性材料を少なくとも50重量%の濃度で含む材料を含む。いくつかの実施形態では、硫黄または硫黄活性材料を含む材料を含むカソード膜は、少なくとも10mAh/cmの面積容量を有する。いくつかの実施形態では、硫黄または硫黄活性材料を含む材料を含むカソード膜は、1g/cmの電極膜密度を有する。いくつかの実施形態では、硫黄または硫黄活性材料を含む材料を含むカソード膜は、バインダをさらに含む。いくつかの実施形態では、硫黄または硫黄活性材料を含む材料を含むカソード膜のバインダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリエチレン(PE)、ポリアクリル酸(PAA)、ゼラチン、他の熱可塑性樹脂、またはそれらの任意の組み合わせから選択する。
【0054】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンエネルギー貯蔵装置の電極の電極膜は、リチウムイオンを可逆的に挿入するように構成された活性材料を含む。いくつかの実施形態では、リチウム挿入活性材料は、グラファイト、ハードカーボンおよび/またはソフトカーボンである。例えば、電極の電極膜は、バインダ材料、1つ以上のグラファイト、グラフェン含有カーボン、ハードカーボンおよびソフトカーボン、ならびに電気伝導促進材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、電極はリチウムイオンでプレドープされる。
【0055】
さらなる実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、適切なリチウム含有電解質で充電される。例えば、装置100は、リチウム塩、および非水性または有機溶剤などの溶剤を含むことができる。一般に、リチウム塩は、レドックス安定であるアニオンを含む。いくつかの実施形態では、アニオンは一価であってもよい。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、ヘキサフルオロホスフェート(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SOCF)、リチウムトリフルオロメタンスルホネート(LiSOCF)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(C10LiNO)(LiBETI)リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(FLiNO)(LiFSI)、およびそれらの組み合わせから選択することができる。いくつかの実施形態では、電解質は、四級アンモニウムカチオンならびにヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレートおよびヨウ化物からなる群から選択されるアニオンを含むことができる。いくつかの実施形態では、塩濃度は、約0.1mol/L(M)から約5M、約0.2Mから約3M、または約0.3Mから約2Mであってもよい。さらなる実施形態では、電解質の塩濃度は、約0.7Mから約1Mであってもよい。特定の実施形態では、電解質の塩濃度は、約0.2M、約0.3M、約0.4M、約0.5M、約0.6M、約0.7M、約0.8M、約0.9M、約1M、約1.1M、約1.2M、約1.3M、約1.4M、約1.5M、またはそれらの間の任意の範囲の値であってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるエネルギー貯蔵装置は、液体溶剤を含むことができる。本明細書で提供される溶剤は、電解質のすべての成分を溶解する必要はなく、また、いかなる成分も完全に溶解する必要はない。さらなる実施形態では、溶剤は有機溶剤であってもよい。いくつかの実施形態では、溶剤は、カーボネート、エーテルおよび/またはエステルから選択される1つ以上の官能基を含んでもよい。いくつかの実施形態では、溶剤は炭酸塩を含むことができる。さらなる実施形態では、カーボネートは、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、およびそれらの組み合わせなどの環状カーボネート、または、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびそれらの組み合わせなどの非環式カーボネートから選択することができる。特定の実施形態では、電解質は、LiPFおよび1つまたは複数の炭酸塩を含むことができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、少なくとも1つのカソード活性材料を含むカソードを含むリチウムイオン電池またはハイブリッドエネルギー貯蔵装置である。いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池は、約2から4.5V、約3から4V、または約3.6から3.7Vで動作するように構成されている。
【0058】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、本明細書に記載され、そして-30℃から約70℃、例えば、-30℃、-20℃、-10℃、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃またはそれらの間の任意の範囲の値における動作のために構成された1つ以上の多層電極を含むバッテリーである。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は70℃を超える温度で動作するように構成されている。
【0059】
ウルトラキャパシタ
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、約2.7V、2.8V、2.9V、3V、または3V以上、またはそれらの間の任意の範囲の値で動作するように構成されたウルトラキャパシタであってもよい。
【0060】
エネルギー貯蔵装置100は、任意の適切な電解質で充電することができる。例えば、装置100は、陽イオンおよび陰イオンを含む溶剤および塩を含むことができる。カチオンは、第四級アンモニウムカチオンであってもよい。一部の実施形態では、第四級アンモニウムカチオンは、テトラアルキルアンモニウムから選択することができる。いくつかの実施形態では、テトラアルキルアンモニウムカチオンは、例えば、スピロ-(1,1’)-ビピロリジニウムのような環状アンモニウム、ならびに、例えば、トリエチルメチルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、およびテトラエチルアンモニウムのような非環状アンモニウムから選択することができる。第四級アンモニウム塩は、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレートおよびヨウ化物からなる群から選択されるアニオンを含むことができる。電解質塩のカチオンは、例えば、カチオンスピロ-(1,1’)-ビピロリジニウムなどの対称のカチオンを含むことができる。いくつかの実施形態では、電解質塩のカチオンは、例えば、トリエチルメチルアンモニウムなどの非対称のカチオンを含むことができる。いくつかの実施形態では、塩は、例えば、対称または非対称のスピロ化合物などのスピロ化合物を含むことができる。例えば、スピロ化合物は、1つまたは複数の4、5、6または7員環を含むN-スピロ二環式化合物であってもよい。対称的なスピロカチオンは、スピロ-(1,1’)-ビピロリジニウムテトラフルオロボレートであってもよい。いくつかの実施形態では、塩は、不等サイズの環、または等サイズの環に異なる置換を有する非対称スピロ化合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、塩濃度は、約0.1mol/L(M)から約5M、約0.2Mから約3M、または約0.3Mから約2Mであってもよい。さらなる実施形態では、電解質の塩濃度は、約0.7Mから約1Mであってもよい。特定の実施形態では、電解質の塩濃度は、約0.2M、約0.3M、約0.4M、約0.5M、約0.6M、約0.7M、約0.8M、約0.9M、約1M、約1.1M、約1.2Mまたはそれらの間の任意の範囲の値であってもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるエネルギー貯蔵装置は、液体溶剤を含むことができる。本明細書で提供される溶剤は、電解質のすべての成分を溶解する必要はなく、また、いかなる成分も完全に溶解する必要はない。さらなる実施形態では、溶剤は有機溶剤であってもよい。いくつかの実施形態では、溶剤は、ニトリル、カーボネート、エーテルおよび/またはエステルから選択される1つ以上の官能基を含むことができる。いくつかの実施形態では、溶剤は、例えばアセトニトリルのようなニトリルを含むことができる。いくつかの実施形態では、溶剤はカーボネートを含むことができる。さらなる実施形態では、カーボネートは、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ビニレンカーボネート(VC)、およびそれらの組み合わせなどの環状カーボネート、または、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびそれらの組み合わせなどの非環式カーボネートから選択することができる。特定の実施形態では、電解質は、第四級アンモニウム塩およびアセトニトリルを含むことができる。
【0062】
さらなる実施形態では、ウルトラキャパシタは、米国特許公開第2014/0104752号に記載されているように、1モーラー(M)未満の濃度の第四級アンモニウム塩を含む電解質を含み、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。さらに別の実施形態では、ウルトラキャパシタは、米国特許公開第2014/0098463号に記載されているように、ハウジングの内側表面に配置された保護コーティングを含み、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。さらに別の実施形態では、ウルトラキャパシタは、米国特許公開第2014/0098465号に記載されているように、例えばメソ孔性またはミクロ孔性のように選択された多孔性を有する炭素系層を含む正極または負極を含み、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、ウルトラキャパシタは、米国特許公開第2014/0368973号に記載されているように、ウルトラキャパシタの構成要素の飽和量に対応するように選択された量の電解質を含み、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、3ボルト以上で動作するように構成された、本明細書で説明される1つまたは複数の多層電極を含むウルトラキャパシタである。さらなる実施形態では、ウルトラキャパシタは、2.7ボルト以上で動作するように構成される。いくつかの実施形態では、ウルトラキャパシタは、電圧および温度の選択された条件で動作するように構成されている。たとえば、ウルトラキャパシタは、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、もしくはそれ以上の温度、またはそれらの間の任意の範囲の値で動作するように構成できる。ウルトラキャパシタは、2.7V(60から85℃)、2.8V(60から85℃)、2.9V(60から85℃)、または3V(60から85℃)、またはその間の任意の選択された温度値における連続動作のために構成される。いくつかの実施形態では、電圧と温度の条件は、約2.7Vと約85℃、約2.8Vと約80℃、約2.9Vと約75℃、約3Vと約70℃、または約3.1Vと約65℃である。いくつかの実施形態では、ウルトラキャパシタは、少なくとも約500kのサイクルで、少なくとも約65℃の温度において約2.7から3ボルトの動作電圧のために構成される。いくつかの実施形態では、ウルトラキャパシタでは、約1500時間の操作および/または少なくとも500kサイクルの後に電極の顕著な分解は発生せず、有意性は装置の定格条件未満での操作を必要とする有害な作用の介入によって決定される。
【0064】
ウルトラキャパシタは、本明細書に記載されるように、ウルトラキャパシタが初期の静電容量の約80%を超える静電容量、および/または初期の等価直列抵抗の200%未満の静電容量を、約1500時間にわたって約2.7から3ボルトの電圧で動作し、および/または少なくとも500kサイクルで、および、少なくとも約65℃の温度で維持できるようにするため、1つ以上の多層電極を含み得る。他の実施形態では、ウルトラキャパシタは、初期容量の少なくとも75%、85%、90%、95%または99%を、約65℃以上で少なくとも1500時間、および/または少なくとも500kサイクル動作するときに維持するように構成されている。
【0065】
多層電極膜
本明細書では、複数の活性層から構成される電極膜のための組成物および方法が提供される。
【0066】
本明細書で提供される多層電極膜の様々な実施形態が、図2Aから2Bおよび図3Aから3Bに提示されている。図2Aおよび2Bは、電極に組み込まれた多層(層1から層n)膜構造を示す。図2Aは、電極膜に少なくとも3層の活性層を含む片面電極を示し、図2Bは、各電極膜に少なくとも3層の活性層を含む両面電極を示す。図2Bでは、集電体の両側の活性層は同じ組成と順序を有している。図2Bは、多層電極膜を含む対称的な両面電極を示す。
【0067】
図3Aおよび3Bは、電極に組み込まれた多層(層1から層n)膜構造を示す。図3Aは、各電極膜にn層、少なくとも3層の活性層を含む両面電極を示す。図3Aでは、集電体の両側にある多層膜の活性層の順序が互いに異なる。例えば、対応する各多層膜の集電体の対応する各面に直接隣接する活性層は、互いに対して異なる組成を有することができる。図3Bは、集電体の片側の電極膜中のn-1層、少なくとも2層の活性層、および反対側の電極膜中のn層、少なくとも3層の活性層を含む両面電極を示す。したがって、図3Bは、第2の多層電極膜とは異なる数の層を含む第1の多層電極膜を備えた両面多層電極を示す。図3Aおよび3Bは、多層電極膜を含む非対称の両面電極を示す。図2B、3Aおよび3Bは、異なる数の層を含むように変更を加えることができることが図面から理解されるであろう。例えば、3層以上の層を有するように示される多層電極膜は、2層以上の層を有してもよい。いくつかの実施形態は、集電体の片側に単一の(非多層)活性膜のみを有し、反対側に多層膜を有してもよい。さらに、示される層のいずれも、互いに対して同じまたは異なる組成を有してもよい。例えば、図2Bに示すように、「層1」は、集電体に隣接し、集電体の各面に異なる層を示すように表され、各層1の化学組成は、他のものと同じでも異なっていてもよい。また、図2Bから3Bに示す実施形態のように、双極エネルギー貯蔵装置構成で使用するための双極多層構成も同様に本発明の範囲内である。例えば、図2Bの集電体の上方に示される層1、層2および層nは正極性とすることができる、一方で図2Bの集電体の下方に示される層1、層2および層2は負極性とすることができ、逆もまた同様であり、図3Aおよび3Bについても同様である。双極エネルギー貯蔵装置構成では、セルはサンドイッチ構造で積み重ねられるため、1つのセルの負の電流コレクタが次のセルの正の電流コレクタとしても使用される。このようにして、両面電極は2つの直列結合電気化学セルによって共有され、両面電極の片側が1つのセルのアノードとして機能し、両面電極の反対側が次のセルのカソードとして機能する。両面電極のアノードおよびカソード極性は、電子伝導膜および直列接続として機能し、セル間のイオンの流れを妨げる仕切りとして機能する集電体によって分離されている。
【0068】
一般に、活性層は、1つの活性材料を含んでもよく、または2つ以上の活性材料を含む複合活性層であってもよい。例えば、複合活性層は、例えばグラファイトのような高出力材料である炭素などとともに例えば、シリコンなどの高いエネルギーの活性材料を含んでいてもよい。例えば、シリコンは約4000mA-h/g、または最大約4200mA-h/g有してもよく、グラファイトは約300mA-h/g、または最大約370mA-h/g有してもよい。これらの材料は、本明細書でさらに説明するように、2つの異なる活性層に対して異なる比率で多層電極膜に使用することができる。例えば、第1層は、エネルギーを増大させるために第2層に比べてシリコンを増大させ、第2層は、電力を増大させるために第1層に比べてグラファイトを増大させてもよい。
【0069】
一般に、多層電極膜は、複数の活性層を積層および/またはラミネートして電極膜を形成することにより作製され、電極膜は集電体にラミネートすることができる。自己支持型電極膜は、例えば、集電体にラミネートされる前に、積み重ねられた活性層から組み立てられてもよく、または活性層は、個別で、グループで、および/または順に集電体にラミネートされてもよい。例えば、2つの活性層を積み重ねて自己支持型電極膜を形成してもよく、電極膜を集電体にラミネートして電極を形成してもよい。あるいは、またはさらに、単一の第1の活性層を集電体にラミネートし、第2の活性層を第1の活性層上に積層して、集電体に接触する電極膜を形成してもよい。一般に、本明細書に記載されている組み立て工程は、両面電極または片面電極の集電体上で実行されることができる。したがって、ラミネーション工程は、1つ以上の活性層または電極膜と接触している集電体上で実行され得る。活性層または電極膜は、集電体の同じ側または反対側にあってもよい。
【0070】
多層電極膜は、特定の用途に適した選択された厚さを有することができる。動作可能な多層電極膜の厚さは、従来の工程によって調製された電極膜の厚さより厚くてもよい。いくつかの実施形態では、多層電極膜は、約250ミクロン、約300ミクロン、約350ミクロン、約400ミクロン、約450ミクロン、約500ミクロン、約750ミクロン、または約1mm、もしくは少なくともこれらの値、またはそれらの間の任意の範囲の値の厚さを有することができる。1つまたは複数の多層電極膜を含む電極は、約500ミクロン、約750ミクロン、または約1mm、または約2mm、もしくは少なくともこれらの値、またはそれらの間の任意の範囲の値の厚さを有することができる。
【0071】
本明細書で提供される活性層は、2つ以上の積み重ねられた同一のまたは実質的に同一の活性プレ層から製造することができる。いくつかの実施形態では、活性プレ層は、本明細書で提供されるように、自立型の自己支持型膜であってもよい。
【0072】
多層電極膜は、例えば、高出力活性層、高エネルギー活性層、高負荷活性層、ハイブリッド活性層、またはそれらの組み合わせを含むことができる。高エネルギー活性層は、比較的大きな容量を特徴とする活性材料を含むことができる。高出力活性層は、比較的大きい吐出性能を特徴とする活性材料を含むことができる。高負荷活性層は、従来の材料および方法を使用して調製された電極膜と比較して、活性層中に高含有量の活性材料、および/または電極膜中に高負荷の活性層を含むことができる。ハイブリッド活性層は、高エネルギー、高出力、または高負荷から選択される2つ以上の材料を含むことができる。高出力活性材料は、例えば、ハードカーボンを含むことができる。高エネルギー活性材料は、例えば、SiまたはSi-Cを含むことができる。ハイブリッド層は、例えば、Sn、Sn-C、Si、またはSi-Cを含むことができる。
【0073】
一般に、電極膜における活性層の積層順序は特に限定されず、任意の活性層の組成は、電極膜における他の活性層の組成と同じであっても異なっていてもよい。したがって、集電体と2つの活性層AおよびBの2層膜は次の順序を有し得る。集電体-A-B、または集電体-B-A。さらに、活性層AおよびBは、同じまたは異なる組成を有することができる。集電体と3つの活性層A、B、およびCの3層膜は次の順序を有し得る。集電体-A-B-C、集電体-A-C-B、集電体-B-C-A、集電体-B-A-C、集電体-C-B-A、または集電体-C-A-B。さらに、上記の活性層の各順序において、AはBまたはCと同じまたは異なる組成であってもよく、BはCまたはAと同じまたは異なる組成であってもよく、CはAまたはBと同じまたは異なる組成であってもよい。特定の実施形態では、A、B、および/またはCは、高出力活性層、高エネルギー活性層、高負荷活性層、ハイブリッド活性層、またはそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0074】
一般に、各積層および/またはラミネーション工程は、異なる温度で実行されてもよい。一般に、圧縮比、ラミネーションの反復回数、およびラミネーション温度も、最終的な電極膜の特性に影響する。例えば、層間の接着は、ラミネーション温度によって影響を受けると考えられている。
【0075】
活性層混合物は、高剪断および/または高圧工程によって処理することができる。高剪断および/または高圧工程は、ジェットミル処理、ブレンド処理などを含み得る。処理時間および/または供給速度は、一般に、バインダおよび/または活性物質の最終粒子サイズに影響を与える。いくつかの実施形態では、そのように形成された活性層および/または電極膜は、自己支持型の活性層および/または電極膜である。
【0076】
いくつかの実施形態では、活性層混合物は、選択されたサイズを有するバインダ粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、バインダ粒子は、約50nm、約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm、約500nm、約1μm、約5μm、約10μm、約50μm、またはその間の任意の範囲の値であってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、多層電極膜の層の数は、所望の電極膜の厚さおよび各活性層の厚さから選択されてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、活性層混合物は、米国特許公開第2015/0072234号に記載されているような、1つまたは複数の乾式電極工程が施される。いくつかの実施形態では、乾式電極が提供されるが、乾式電極は、溶剤などの汚染物質によって処理されず、そのため乾式電極は、本明細書で提供される方法および材料によって調製される。
【0079】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の材料および方法を使用して製造された電極は、改善された性能によって特徴付けることができる。さらなる実施形態では、第1の活性層および第2の活性層を含む多層電極膜の容量は、第1の活性層および第2の活性層のいずれかよりもそれぞれ大きい。さらなる実施形態では、第1の活性層および第2の活性層を含む多層電極膜のクーロン効率は、第1の活性層または第2の活性層のいずれかをそれぞれ上回る。
【0080】
いくつかの実施形態では、多層電極膜を含むエネルギー貯蔵装置を製造する方法が提供される。さらなる実施形態において、方法は、第1自立活性層および第2自立活性層を積み重ねて積層体を形成し、その積層体をプレスまたはカレンダー加工して多層電極膜を形成し、必要に応じて、多層電極膜を集電体にラミネートして電極を形成することを含む。積層された活性層をカレンダー加工またはプレスして電極膜を形成する方法、および積層された活性層を集電体にラミネートする方法は、一般に当技術分野で知られている方法である。
【0081】
図4Aは、活性層を互いに積み重ねるための、例えばカレンダー加工工程などのローリング処理を示す。図4Bは、多層膜を集電体にラミネートするためのカレンダー加工工程などのローリング処理を示す。
【0082】
図5Aは、活性層を互いに積み重ねるためのプレス工程を示す。図5Bは、多層膜を集電体にラミネートするためのプレス工程を示す。
【0083】
一般に、活性層を製造するための工程は、乾式電極製造技術を使用して電極膜を製造するための工程と違いはない。例えば、そのような技術は、米国特許公開第2005/0266298号および/または米国特許公開第2006/0146479号に記載されているようなものであってもよい。これら、および本明細書の外部文書へのその他の参照は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0084】
いくつかの実施形態では、自己支持型電極膜が提供され、電極膜は、本明細書で提供されるような積み重ねられた活性層を含む。さらなる実施形態において、第1の活性層および第2の活性層は自己支持型膜である。いくつかのさらなる実施形態において、自己支持型電極膜は、第1の活性層および第2の活性層を含み、第1の活性層および第2の活性層は異なる組成を有する。さらに別の実施形態では、第1の活性層および第2の活性層は、異なる活性材料組成物および/またはバインダ材料組成物を含む。
【0085】
図6は、本明細書で提供される多層電極膜を製造するための方法200を示すフローチャートである。ボックス205では、第1自立活性層が製造される。第1自立活性層は、任意の適切な方法によって製造されてもよい。一般に、製造方法は乾式の電極製造工程であってもよい。一般に、自立型乾式活性層の製造方法は、自立型乾式電極膜の製造方法と同様である。いくつかの実施形態では、第1自立活性層は、本明細書で提供される高エネルギー層、高出力層、高負荷層、またはハイブリッド層であってもよい。
【0086】
ボックス210では、第2自立活性層が製造される。第2自立活性層は、任意の適切な方法によって製造されてもよい。一般に、製造方法は乾式の電極製造工程であってもよい。第2自立活性層は、第1自立活性層と同じまたは異なる組成であってもよい。いくつかの実施形態では、第2自立活性層は、本明細書で提供される高エネルギー層、高出力層、高負荷層、またはハイブリッド層であってもよい。
【0087】
ボックス220では、第1および第2自立活性層が積層される。第1層の第2層への積層とは、電極の集電体の同じ側で用いられるそれらの間に介在する層がない状態で層を互いに接着することを示す。積層とは、第1層および第2層を互いにラミネートすることを含んでもよい。積層は、集電体がない状態で一方の2層を他方の2層にラミネートすることを含むか、または別のステップで、集電体に予めラミネートされた第2層に第1層をラミネートすることを含み得る。第1および第2自立活性層の積層は、2つの層を互いに接着するためのカレンダー加工工程またはプレス工程を含み得る。組み合わされた多層膜は、積層前の2つの層のそれぞれの厚さのほぼ合計、または2つの層の厚さの合計より薄い厚さを有してもよい。
【0088】
ボックス230では、積層された活性層から電極が形成される。電極の形成は、ボックス220で形成された積層活性層を集電体にラミネートすることを含み得る。いくつかの実施形態では、積層した活性層からの電極の形成は、積層した活性層を、接着剤層を含む集電体に、例えば接着などによってラミネートをすることを含み得る。さらなる実施形態では、積層した活性層からの電極の形成は、接着剤を使用せずに積層した活性層を集電体にラミネートすることを含んでもよい。さらなる実施形態では、積層した活性層からの電極の形成は、接着剤を使用して積層した活性層を集電体にラミネートすることを含んでもよい。方法200は、(ステップ205および210のような)第3以上の自立層を形成する追加工程や、(ステップ220のような)第3以上の追加の自立活性層を積層する追加工程を含むことができる。最終的な多層電極膜は、ステップ220の完了時に、または、2つ以上の層を持つ電極膜の場合、追加の自立活性層が第1層と第2層の上に積層された後に形成することができる。いくつかの実施形態では、ステップ220および230は同時に完了することができる。例えば、第1および第2の自立活性層は、ステップ205および210において形成することが可能であり、これらの2つの層のうちの1つは、その後、積層ステップ220を実行する前に集電体に取り付けることができる。続いて、第1層および第2層と、2つの層の一方に取り付けられた集電体とを、同時にラミネートして積層ステップ220および電極膜形成ステップ230を完了することができる。
【0089】
例1
第1の自立型単層電極膜は、120μmの厚さを有し、活性材料としてグラファイトを含むものであり、比較サンプルとして典型的な乾式電極技術によって製造された。第2の自立型多層電極膜は、それぞれ120μmの厚さでありグラファイト活性材料を含む3つの同一の活性層を含むものであり、本開示に従って製造された。図7Aに示されるように、第1電極膜と、図7Bに示されるように、第2電極膜のSEM画像が撮影され、均一な表面形態を示す。図7Aおよび7Bに示されるように、多層電極(図7B)は、電極膜の表面に開気孔を示し、開気孔は、液体電解質での湿潤に重要であり、電極性能の改善が期待される。従来の単層電極(図7A)は、表面の細孔が少なかったため、電極膜の中間層への電解質の拡散を制限することが期待される。図7Bの多層電極膜は、望ましい細孔構造を示しているにもかかわらず、その密度を保持していた。
【0090】
例2
3つのグラファイト電極膜を以下のように調製した。第1電極膜は、グラファイト、3重量%のCMCおよび3重量%のPTFEを含み(「層1」)、第2電極膜は、グラファイト、3重量%のポリ塩化ビニル(PVC)および3重量%のPTFEを含むもの(「層2」)とした。第3の多層電極膜は、以下の構成で3層の活性層、層1-層2-層1(「層121」)を含み、調製された。電極膜である層1、層2、層121の膜厚は、それぞれ132μm、132μm、256μmであった。図8Aおよび8Bは、層1、層2、層121の電極膜で測定された容量と効率のデータを提供する。
【0091】
図8Aに見られるように、層1は、充電容量が約325mAh/g、放電容量が約275mAh/gであり、層2は、充電容量が約350mAh/g、放電容量が約300mAh/gであり、層121は、充電容量が約400mAh/g、放電容量が約350mAh/gの放電容量であった。図8Bに示すように、層1の効率は約81.5%であり、層2の効率は約83%であり、層121の効率は約85%であった。
【0092】
例3
自己支持型の自立電極膜は、本開示に従って製造された。Si-C3層電極膜は、第1の活性層と第2の活性層の2つの活性層を作製することにより作製した。最初の活性層(A)は、94%のグラファイトと6%のバインダを含み、2番目の活性層(B)には、89.5%のグラファイト、4.5%のナノサイズのシリコンおよび6%のバインダが含まれていた。各電極膜のバインダは、3重量%のCMCと3重量%のPTFEを含んでいた。3つの同一のプレ層を積層し、カレンダー加工して、第1の活性層を形成した。電極膜は、厚さ120μmの2つの第1の活性層(A)の間に第2の活性層(B)を積層して形成した。したがって、活性層の順序は、A-B-Aであった。得られた積層活性層をカレンダー加工して、電極膜を形成した。図9Aおよび9Bは、例3のA-B-A3層積層電極膜の容量および効率データを提供する。
【0093】
図9Aに示すように、層1の充電容量は約250mAh/g、放電容量は約200mAh/gであり、層2の充電容量は約350mAh/g、放電容量は約275mAh/gであり、また、層121の充電容量は約375mAh/g、放電容量は約300mAh/gであることがわかった。図9Bに示すように、層1の効率は約83.5%であり、層2の効率は約77.5%であり、また、層121の効率は約82%であることがわかった。
【0094】
本発明の特定の実施形態を説明してきたが、これらの実施形態は例としてのみ提示されており、本開示の範囲を限定することを意図していない。実際、本明細書に記載されている新規の方法およびシステムは、さまざまな他の形態で具体化することができる。さらに、本明細書に記載のシステムおよび方法における様々な省略、置換、および変更は、本開示の主旨から逸脱することなく行われ得る。添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物は、本開示の範囲およびその主旨に含まれるような形態または改良を含むことを意図している。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義される。
【0095】
特定の態様、実施形態、または例に関連して説明された特徴、材料、特性、またはグループは、互換性がない限り、このセクションまたは本明細書の他の場所に記載された他の任意の態様、実施形態、または例に適用できると理解されるべきである。本明細書に開示されているすべての特徴(添付の請求項、要約および図面を含む)、および/またはそのように開示されている方法または工程のすべての工程は、そのような機能および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせとすることができる。保護は、前述の実施形態の詳細に限定されない。保護は、本明細書に開示された機能(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)の新しいもの、または新しい組み合わせ、または方法または工程のステップの新しいもの、または新しい組み合わせにまで及ぶ。
【0096】
さらに、別個の実装の状況で本開示に記載されている特定の機能は、単一の実装で組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実装の状況で説明されているさまざまな機能は、複数の実装で個別に実装することも、適切なサブコンビネーションで実装することもできる。さらに、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして上記で説明されているが、請求された組み合わせからの1つまたは複数の特徴は、場合によっては、組み合わせから削除することが可能であり、その組み合わせは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションのバリエーションとして請求されることが可能である。
【0097】
さらに、操作は、図面に示されるか、または特定の順序で明細書に記載されるが、そのような操作は、望ましい結果を達成するために、示される特定の順序または連続した順序で、またはすべての操作が実行される必要はない。図示または説明されていない他の操作は、例示的な方法および工程に組み込むことができる。例えば、1つまたは複数の追加の操作は、説明された操作のいずれかの前、後、同時、または間に実行することができる。さらに、他の実装では、操作を再配置または再配列することができる。当業者は、いくつかの実施形態では、図示および/または開示された工程で行われる実際のステップは、図に示されるものとは異なる場合があることを理解するであろう。実施形態に応じて、上記の特定の工程が削除されてもよく、他の工程が追加されてもよい。さらに、上記開示された特定の実施形態の特徴および属性は、追加の実施形態を形成するために異なる方法で組み合わせることができ、それらのすべては本開示の範囲内に含まれる。また、上記の実装におけるさまざまなシステムコンポーネントの分離は、すべての実装においてそのような分離が必要であると理解されるべきではなく、説明されているコンポーネントおよびシステムは、一般に、単一の製品に統合するか、複数の製品にパッケージ化できることが理解されるべきである。例えば、本明細書に記載されるエネルギー貯蔵システムの構成要素のいずれかは、別個に提供され得るか、または一緒に統合され(例えば、一緒にパッケージングされるか、または一緒に取り付けられ)、エネルギー貯蔵システムを形成し得る。
【0098】
本開示のために、特定の態様、優位性、および新規の特徴が本明細書で説明されている。必ずしもすべてのそのような利点が特定の実施形態に従って達成されるとは限らない。したがって、例えば、当業者は、本開示は、本明細書で教示または示唆され得る他の利点が必ずしも達成される必要はなく、本明細書で教示される1つの利点または一群の利点を達成する方法で具体化または実行されてもよいことを認識するであろう。
【0099】
「可能である」「し得る」「できる」「でもよい」などの条件付き文言は、一般的に、特に明記されていない限り、または使用されている文脈内で別に理解されていない限り、特定の実施形態は、他の実施形態は含まない一方で、特定の特徴、要素、および/またはステップを含むことを伝えることを意図している。したがって、そのような条件付き文言は、一般に、1以上の実施形態に機能、要素、および/またはステップが必要であること、または、1以上の実施形態がユーザーの入力もしくは指示の有無にかかわらず、これらの機能、要素、および/またはステップが特定の実施形態に含まれるかもしくは実行されるかどうかを決定するためのロジックを必ず含むことを意図するものではない。
【0100】
「X、Y、およびZの少なくとも1つ」などの接続詞は、特に明記されていない限り、品目や用語などを伝えるために一般的に使用される状況とは別に理解され、X、YまたはZのいずれか、も同じである。したがって、そのような接続詞は、特定の実施形態が少なくとも1つのX、少なくとも1つのY、および少なくとも1つのZの存在を必要とすることを示唆することを一般に意図するものではない。
【0101】
本明細書で使用される「およそ」、「約」、「一般的に」、および「実質的に」などの程度を示す語は、記載された値、量、または特性に近い値、量、または特性を示し、それでも所望の機能を実施するか、または所望の結果を達成するものを示す。
【0102】
本開示の範囲は、このセクションまたは本明細書の他の場所における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されることを意図せず、このセクションもしくはこの仕様の他の場所に提示されている、または将来提示される請求項によって定義される場合がある。請求項の文言は、請求項で使用される文言に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書に記載された例に限定されず、または出願の審査中に、その例は非限定的であると解釈されるべきである。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B