(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】マスターバッチの重合に含有させるためのバイオ炭の高温炭化、ミクロン研削および分級
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20240328BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
C01B32/05
C08J3/22
(21)【出願番号】P 2020560321
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 US2019029287
(87)【国際公開番号】W WO2019210132
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-26
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597177242
【氏名又は名称】トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Thomas Jefferson University
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】サンダーランド,マーク
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-518413(JP,A)
【文献】特表2013-517204(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0107334(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0272946(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0098827(US,A1)
【文献】特表2013-540167(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084578(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101967416(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C08J 3/22
H01G 11/44
B02C 17/18,17/186、23/12
C08K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻茎の一部を粗切断することと、
炭化材を作成するために前記麻茎の一部を1100°Cを超える温度で炭化させることと、
前記炭化材を粉砕して粉砕炭を作成することと、
前記粉
砕炭を10ミクロン未満のサイズの分級システムで分級してわずかな麻炭粒子を作成することと、
前記麻炭粒子の分級システムから所望のわずかな量の麻炭粒子を収集することとを含む、ミクロンサイズの炭化麻の混合物を作る方法。
【請求項2】
前記粗切断の前に前記麻茎を乾燥させる第1ステップを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記1100℃を超える温度が少なくとも1時間保持され、加熱室に非酸素ガスを加えることによって前記
麻茎の一部が炭化される、請求項1の方法。
【請求項4】
前記粉砕が高エネルギーボールミルで行われる、請求項1の方法。
【請求項5】
前記分級システムが2ミクロン以下の分級を含む、請求項1の方法。
【請求項6】
前記分級システムからの前記所望のわずかな量がポリマーと混和する、請求項1の方法。
【請求項7】
前記分級システムからの前記所望のわずかな量が、2ミクロン未満の特定分級サイズを95%含み、1.5ミクロンが釣鐘曲線95%に含まれる、請求項1の方法。
【請求項8】
1100℃以上の炉内で、少なくとも60分間、麻茎の一部を炭化させ、
炭化材料を作ることと、
前記炭化材料を集め、前記炭化材料をボールミルで粉砕して炭粉を作ることと、
2ミクロン分級篩を少なくとも1つ含む分級システムで前記炭粉を分級することであって、2ミクロン未満の炭粒子が前記2ミクロン分級篩を通過することと、
前記2ミクロン分級篩を通過した前記2ミクロン未満の炭粒子を回収し、前記2ミクロン未満の炭粒子を少なくとも1つのポリマーとマスターバッチに加えることとを含む、2ミクロン未満の特定分級サイズを90%を超えて有する2ミクロンサイズ以下の麻炭粒子の混合物を生成する方法。
【請求項9】
麻材の一部を炉内で炭化させることであって、前記炉は窒素で洗浄した後1100℃以上に加熱され
、1100℃を超える温度が少なくとも60分間保たれ、炭を作るための低酸素環境を維持するために、窒素流を少なくとも60分保つことと、
前記炭を前記炉から取り出し、前記炭を冷やすことと、
2ミクロン未満の平均粒径を有する複数の粒子に縮小させるために少なくとも60分間、粉砕工程によって前記炭を粉砕し、2ミクロン未満の炭粒子を作成することと、
2ミクロン未満の平均粒径を有する前記炭粒子を、少なくとも1つのポリマーと組み合わせることであって、前記炭粒子とポリマーの比率が10:90~50:50であることと、
前記ポリマーと前記炭粒子とを混合してマスターバッチを形成することとを含む、複数の麻炭粒子および単一ポリマーを含むマスターバッチを作成する方法。
【請求項10】
全炭粒子の少なくとも90%が2ミクロン未満のサイズである、請求項9の方法。
【請求項11】
前記炭粒子の前記平均
粒径が1~2ミクロンであり、
全ての炭粒子の少なくとも95%が2ミクロン未満のサイズである、請求項9の方法。
【請求項12】
前記粉砕工程がボールミルである、請求項9の方法。
【請求項13】
前記粉砕工程が湿式粉砕工程である、請求項9の方法。
【請求項14】
前記湿式粉砕工程が非水溶媒を含む、請求項13の方法。
【請求項15】
2ミクロン未満の平均粒径を有する前記炭粒子を分級し、2ミクロンを超える粒径の粒子を除去する、請求項9の方法。
【請求項16】
切断された麻茎を畑で7日間未満乾燥させることと、
前記乾燥
させた麻茎を600~1500℃で熱分解させ、炭を作成することと、
研削容器に前記炭を加え、前記炭を1~16時間の時間研削することと、
2ミクロンの篩で前記研削
された炭を篩別し、2ミクロン未満の篩別炭を作ることと、
前記2ミクロン未満の篩別炭を捕獲することとを含む、50%を超える粒子が1~2ミクロンのサイズを有する炭化麻粒子を形成する方法。
【請求項17】
前記研削容器が鋼製の研削ボールを有する鋼製の容器である、請求項16の方法。
【請求項18】
前記研削が乾式研削である、請求項16の方法。
【請求項19】
前記研削が湿式研削である、請求項16の方法。
【請求項20】
前記湿式研削を1~16時間の第1持続時間実行し、次いで乾燥して凝集研削炭を作成し、前記凝集研削炭を乾式研削工程で再研削するステップが続く、請求項19の方法。
【請求項21】
前記2ミクロンの篩
によって、前記
研削された炭を、2ミクロン未満の粒子と2ミクロンより大きい粒子とに分離することと、
2ミクロンより大きい粒径を有する粒子を再研削することとをさらに含む、請求項16の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許商標庁に対し2018年4月27日に出願された米国仮特許出願第62/663,731号および2019年1月10日に出願された米国仮特許出願第62/790,722号の利益を主張しており、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の属する技術分野】
【0002】
本出願は一般に、ミクロンサイズの炭化粒子の形成を通じて、繊維および他の材料で使用するために物理特性および/または導電特性を強化した炭化材料を使うマスターバッチ工程で利用することができる、炭化麻系材料を形成するための工程および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
炭は、セルロース系材料を低酸素環境下で600~700℃の温度で加熱することにより作られ、現在の加工ニーズにおいてそれ以上の温度は不要である。この処理には通常12~72時間かかるが、それ以上の時間をかけることも可能であり、この工程では、水、メタン、水素、タールなどの揮発性化合物を燃焼させる。商用加工においては、大規模なコンクリート製または鋼製サイロ内の酸素がほとんど存在しない状態で燃焼が行われ、材料が灰になる前に燃焼が停止する。この工程では、元重量の25%程度の黒塊および粉末が残る。
【0004】
従来、炭は木炭のことを指し、調理や暖房に使用されていた。炭を作る工程は古来から存在し、約3万年前までさかのぼる考古学的な炭生産の証拠がある。炭作りは現代でも世界中で行われている。実際、個人レベルでは、低酸素条件下で燃焼または炭化させたセルロース系物質を利用して、木炭を生成している。発火すると、木炭に含まれる炭素は酸素と結合し、二酸化炭素、一酸化炭素、水、その他のガス、および大量のエネルギーを発生させる。木炭に凝縮される1オンスあたりの潜在エネルギーは原木よりも大きいため、そのエネルギーの量は顕著な特徴である。さらに、木炭は安定して高温燃焼し、煙および危険ガスの発生が少ない。木炭は木材よりも高温かつ清潔で均一に燃焼するため、諸使用のうち高炉で鉄鉱石の溶融を行う製錬所や、鋼の成形および造形を行う鍛冶屋などで使われた。
【0005】
世界中の多くの社会では、他の熱源が容易に利用できない場合に調理や暖房の目的で木炭が使用される。現代の大都市でも、「有機」食品が流行しているのと同じ理由で硬材の塊炭が流行しており、木炭は、より自然で風味が増し、より良い調理方法である。木炭には75を超えるブランドがあり、サクラ、メスキート、ココナッツシェル、タマリンドなどを含む品種もある。これらの品種はそれぞれ、植物起源と、独特の香りと原料を定義する微量の油が異なることを除けば、本質的に同一である。
【0006】
硬材の塊炭は、製材所や床材、家具、建材メーカーの硬材の端材から作られることが多い。しかしながら、そのような端材がない場合、素材を作るための材料源として枝、小枝、角材、トリム、その他のスクラップなどが含まれることが多い。このような多様な材料の結果は、大きさが不規則な塊りで、よく大枝や材木のように見える。大きさが違えば材料間で燃焼度合および温度に違いが発生するため、多くの場合、このような材料は異なる程度に炭化される。製造された炭のように結合剤がないのであまり灰が残らないため、塊炭は料理用として重宝され、従って残される副産物が製造された炭よりも少なく、料理に自然な風味を与えることができるとされているためである。炭の中には、燃焼を助長させるための充填剤や促進剤が含まれているものもあれば、備長炭のように、その特殊な加工により、さらに高温で燃焼するものもある。
【0007】
興味深いことに、木材およびその他のセルロース系材料が炭化すると、単純な炭素構造に構造的に変化する。歴史的には、例えば廃水のろ過および体内毒素の結合など、その吸着性が活用されてきた。多くの産業において、多量の炭素がこれらの目的で利用されている。さらに場合によって、これらの構造は少量の電荷を貯蔵または伝導できるが、非炭素化セルロース系材料は電気を伝導しない。しかし、このような電気特性のために炭化物が現在使用されているとしてもわずかであり、それはこれらの材料が、金属系材料のような電荷を伝送または蓄積するための古典的な伝達物質の伝送レートをそれでも下回っているためである。
【0008】
麻を原料とした炭素製品は、これまで軽視されてきた。植物の機械的構造による著しい難しさ、浸漬中の茎への粘着性のある樹脂物質の発生、小さい質量や密度、特定の代謝物やカンナビノイドの存在を含む理由によるものであり、これらの理由が一般にその使用を不可能にしてきた。本明細書に記載された工程および方法は、その他の使用のうち、繊維形成、フィルム形成、および複合体形成を含む、特定の産業工程用のマスターバッチで有利に利用される、麻系セルロース系材料からミクロンサイズの粒子を生成するための新規な方法および工程を有利に提供する。
【発明の概要】
【0009】
低酸素条件下で少なくとも900℃の温度で麻を炭化させ炭を生成することと、前記炭を粉砕して粉砕炭を生成することと、前記粉砕炭を2ミクロン以上の大きさの少なくとも一勾配を有する分級システムを用いて分級することと、大きさが2ミクロン未満の前記材料を捕獲することとを含む、実質的に均一な粒度の麻炭混合物の生成工程。好ましい実施形態では、1100℃未満での炭化は賦活化のステップがさらに必要となる。
【0010】
好ましい実施形態では、サイズが2ミクロンより大きい材料が未粉砕の炭に加えられ、その材料のサイズを小さくするために再粉砕され、好ましくは2ミクロン未満の炭が収集される。好ましい実施形態では、炭が単一の分級システムにより処理され、その際の分級勾配または篩は2ミクロンである。
【0011】
好ましい実施形態では、分級システムは1つめは約2ミクロン、2つめは約5ミクロン、といった少なくとも2つの勾配を有し、5ミクロンを超える材料が除去され、2~5ミクロンの材料が捕獲され、2ミクロン未満の材料が捕獲される。
【0012】
好ましい実施形態では、5ミクロンを超えるサイズの材料が炭に加えられ、材料のサイズを縮小するために再粉砕される。
【0013】
好ましい実施形態では、麻を炭化するための温度が少なくとも1100℃である。
【0014】
好ましい実施形態では、麻は7日以内に切断および乾燥された乾燥麻である。
【0015】
好ましい実施形態では、粉砕工程は乾式粉砕工程を含む。
【0016】
好ましい実施形態では、粉砕工程は、ボールミル粉砕、エアジェット粉砕、超微研削、研削、またはそれらの組み合わせを用いる乾式粉砕工程を含む。
【0017】
好ましい実施形態では、実質的に均質な粒子は2ミクロン未満のサイズの粒子を99%含む。
【0018】
好ましい実施形態では、2ミクロン未満のサイズの実質的に均質な粒子は、1~2ミクロンの粒子を少なくとも50%含む。
【0019】
好ましい実施形態では、実質的に均質な粒子は、1~2ミクロンの粒子を少なくとも70%含む。
【0020】
好ましい実施形態では、2ミクロン未満のサイズの実質的に均質な粒子は、1~2ミクロンの粒子を少なくとも90%含む。
【0021】
好ましい実施形態では、粉砕工程には、炭の温度を-100℃未満まで下げ、炭を-100℃未満で粉砕するさらなるステップが含まれる。
【0022】
好ましい実施形態では、粉砕工程には、(粉砕材料)の水分含有量を5%未満にまで低減する乾燥工程がさらに含まれる。
【0023】
好ましい実施形態では、粉砕工程には凍結粉砕工程が含まれ、通常液体窒素または温度-100℃未満のその他の液体を用いて粉砕機が-100℃未満に冷却される。
【0024】
好ましい実施形態では、粉砕工程が湿式粉砕工程であり、湿式溶媒は5%未満の水を含み、最も好ましくは非水溶媒である。
【0025】
好ましい実施形態における、麻茎の一部を1100℃を超える温度で炭化させ、炭化麻茎を収集することと、炭化麻茎を十分な時間粉砕して、ミクロンサイズの麻炭の一部を生成することと、ミクロンサイズの麻炭の一部を、10ミクロン未満の少なくとも1つの分級篩を含む分級システムに配置することと、分級されたミクロンサイズの麻炭の断片を収集することとを含む、特定分級サイズを有するミクロンサイズの炭の混合物を作成する工程。好ましい実施形態では、麻茎は炭化前に粗切断される。好ましい実施形態では、分級篩は5ミクロン未満または2ミクロン未満である。好ましい実施形態では、分級されたわずかなミクロンサイズの麻炭を収集することは、所望のわずかな麻炭を収集することと、サイズを縮小するために再粉砕される取り除かれたわずかな量を収集することとを含む。
【0026】
好ましい実施形態における、粒子は炭化され、ミクロンサイズに研削され、例えば、繊維、糸、または織物に織り込む、編み込む、あるいは結合させるのに適した他の材料を生産するためにこれをさらに使用することができるポリマー基板とマスターバッチで組み合わせることができる高い導電特性を備えることができる、セルロース系材料の特定分級サイズのナノ粒子を生成するための熱エネルギー工程。好ましくは、セルロース系材料は麻であり、最も好ましくは、麻は麻茎(繊維およびハードを含むもの)を含む。好ましい実施形態では、ミクロンサイズとは、10ミクロン未満、5ミクロン未満、または2ミクロン未満である。
【0027】
好ましい実施形態は、麻茎をポリマー基板と組み合わせて炭化する工程のために行われ、炭化麻茎が2ミクロン未満のサイズに粉砕され、マスターバッチでポリマーと組み合わされ、前記炭化麻およびポリマーは導電性を有することができる。
【0028】
好ましい実施形態は、炉内で麻を炭化し、前記炉を窒素で洗浄し、次に60分で1100℃に加熱する(14.6℃/分の熱ランプ)ことであって、1100℃を少なくとも60分間保ち、低酸素環境を維持するため加熱時間、待機時間にわたり窒素の流れを維持することと、麻を炉から取り出し、室温まで冷却することと、冷却麻を10ミクロン未満の粒径に粉砕することと、粉砕麻をポリマーに組み合わせ、繊維を押し出すこととを含む、導電性を有することができる非金属繊維を生成する工程のために行われる。好ましくは、粒径が5ミクロン未満であり、より好ましくは、算術最頻値粒径が1~2ミクロンであり、より好ましくは、算術中央値粒径が1~2ミクロンである。好ましい実施形態において、粉砕麻はミクロンサイズの分級篩で分級され、分級された材料はマスターバッチ処理のための所望のサイズにより、分割して収集される。
【0029】
好ましい実施形態における、麻粒子の少なくとも90%が10ミクロン未満であり、またはより好ましくは、粒子の少なくとも99%が10ミクロン未満である工程。好ましい実施形態では、粉砕麻は、押し出された繊維の総重量の1~50%含まれ、より好ましくは、粉砕麻は、押し出された繊維の総重量の1%~25%含まれる。特定の実施形態では、粉砕麻は、押し出された繊維の総重量の1~10%含まれ、押し出された繊維はポリマーを含有する。
【0030】
さらなる実施形態は、炉で麻材料の一部を炭化し、前記炉を窒素で洗浄し、次に約60分で1100℃に加熱し(少なくとも10℃/分の熱ランプ、通常の加熱は14.6℃以上/分の熱ランプ)、1100℃を60~90分間保ち、低酸素環境を維持するために加熱時間、保持時間にわたり窒素の流れを維持することと、麻を炉から取り出し、室温まで冷却することと、麻を50ミクロン未満の平均粒径にまで縮小するのに十分な時間粉砕工程にかけることにより冷却麻を10ミクロン未満の粒径に粉砕することと、粉砕麻を1以上のポリマーに組み合わせることであって、麻粒子とポリマーの割合が10:90~50:50であることと、ポリマーと麻粒子を混ぜることと、繊維を押し出すこととを含む、炭化粒子の一部と少なくとも1つのポリマーを有する非金属繊維を製造する方法のために行われる。
【0031】
好ましい実施形態では、平均粒径は25ミクロン未満であって、全粒子の少なくとも90%はサイズが50ミクロン未満であり、より好ましくは、平均粒径は10ミクロン未満、かつ全粒子の少なくとも90%はサイズが25ミクロン未満である。他の実施形態において、平均粒径が1~2ミクロンであり、全粒子の少なくとも90%はサイズが10ミクロン未満である繊維を生成することが好ましく、平均粒径が2ミクロン未満であり、全粒子の少なくとも95%はサイズが2ミクロン未満であることが最も好ましい。
【0032】
好ましい実施形態は、平均粒径が25ミクロン未満、かつ全粒子の少なくとも90%が50ミクロン未満であり、該炭化麻粒子を適切なポリマーと組み合わせ、後続処理で繊維、毛糸、またはポリマーを生成する炭化麻粒子を含む。
【0033】
好ましい実施形態における、麻茎の一部を粗切断することと、炭化材を作成するために前記麻茎の一部を1100°Cを超える温度で炭化させることと、前記炭化材を粉砕して粉砕炭を作成することと、前記粉砕炭を10ミクロン未満のサイズの分級システムで分級してわずかな量の麻炭粒子を作成することと、前記麻炭粒子の分級システムから所望のわずかな量の麻炭粒子を収集することとを含む、ミクロンサイズの炭化麻の混合物を作る工程。
【0034】
さらなる実施形態では、前記工程は粗切断の前に前記麻茎を乾燥させる第1ステップをさらに含む。
【0035】
さらなる実施形態における、1100℃を超える温度が少なくとも1時間保持され、加熱室に非酸素ガスを加えることによって前記炭化工程が行われる工程。
【0036】
さらなる実施形態における、粉砕が高エネルギーボールミルで行われる工程。
【0037】
さらなる実施形態における、分級システムが2ミクロン以下の分級を含む工程。
【0038】
さらなる実施形態における、前記分級システムからの前記所望のわずかな量がポリマーと混和する工程。さらなる実施形態における、ポリマーと混和する前記分級システムからの前記所望のわずかな量が、100Ω未満の抵抗を有する電荷を伝達する工程。
【0039】
さらなる実施形態における、前記分級システムからの前記所望のわずかな量が、2ミクロン未満の特定分級サイズを95%含み、1.5ミクロンが釣鐘曲線95%に含まれる工程。
【0040】
さらなる実施形態における、1100℃以上の炉内で、材料を炭化させるのに十分な時間、麻茎の一部を炭化させ、炭化材料を作ることと、前記炭化材料を集め、前記炭化材料をボールミルで粉砕して炭粉を作ることと、2ミクロン分級篩を少なくとも1つ含む分級システムで前記炭粉を分級することであって、2ミクロン未満の炭粒子が前記2ミクロン分級篩を通過することと、前記2ミクロン分級篩を通過した前記2ミクロン未満の炭粒子を回収し、前記2ミクロン未満の炭粒子を少なくとも1つのポリマーとマスターバッチに加えることとを含む、2ミクロン未満の特定分級サイズを90%を超えて有するナノサイズの麻炭粒子の混合物を生成する工程。
【0041】
さらなる実施形態における、麻材の一部を炉内で炭化させることであって、前記炉は窒素で洗浄した後1100℃以上に加熱され、前記1100℃を超える温度が少なくとも60分間保たれ、炭を作るための低酸素環境を維持するために、窒素流を少なくとも60分保つことと、前記炭を前記炉から取り出し、前記炭を冷やすことと、2ミクロン未満の平均粒径を有する複数の粒子に縮小させるために十分な時間、粉砕工程によって前記炭を粉砕し、2ミクロン未満の炭粒子を作成することと、2ミクロン未満の平均粒径を有する前記炭粒子を、少なくとも1つのポリマーと組み合わせることであって、前記炭粒子とポリマーの比率が10:90~50:50であることと、前記ポリマーと前記炭粒子とを混合してマスターバッチを形成することとを含む、複数の麻炭粒子および単一ポリマーを含むマスターバッチを作成する工程。
【0042】
さらなる実施形態における、全炭粒子の少なくとも90%が2ミクロン未満のサイズである工程。
【0043】
さらなる実施形態における、炭粒子の前記平均粒径が1~2ミクロンであり、前記全粒子の少なくとも95%が2ミクロン未満のサイズである工程。
【0044】
さらなる実施形態における、前記粉砕工程がボールミルである工程。
【0045】
さらなる実施形態における、前記粉砕工程が湿式粉砕工程である工程。さらなる実施形態における、前記湿式粉砕工程が非水溶媒を含む工程。
【0046】
さらなる実施形態における、2ミクロン未満の平均サイズを有する炭粒子が、2ミクロンを超えるサイズの粒子を除去するために分級される工程。
【0047】
さらなる実施形態における、切断された麻茎を畑で7日間未満乾燥させることと、前記乾燥麻茎を600~1500℃で熱分解させ、炭を作成することと、研削容器に前記炭を加え、前記炭を1~16時間の時間粉砕することと、2ミクロンの篩で前記粉砕炭を篩別し、2ミクロン未満の篩別炭を作ることと、2ミクロン未満の前記篩別炭を捕獲することとを含む、50%を超える粒子が1~2ミクロンのサイズを有する炭化麻粒子を形成する工程。
【0048】
さらなる実施形態における、前記研削容器が鋼製の研削ボールを有する鋼製の容器である工程。
【0049】
さらなる実施形態における、前記粉砕が乾式粉砕である工程。
【0050】
さらなる実施形態における、前記研削が湿式研削である工程。さらなる実施形態における、前記湿式研削を1~16時間の第1持続時間実行することと、次いで乾燥して凝集研削炭を作成し、前記凝集研削炭を乾式研削工程で再研削するステップが続く、工程。
【0051】
さらなる実施形態において、2ミクロンの篩から得た前記材料を、2ミクロン未満の粒子と2ミクロンより大きい粒子とに分離することと、2ミクロンより大きい粒径を有する粒子を再研削するステップとをさらに含む工程。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】物質の形成を防ぐための麻を畑から切り取る工程のフローチャートを示す。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、麻の炭化および分級工程のフローチャートを示す。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、共にわずかな量のナノ粒子麻を作成する工程の拡張フローチャートを示す。
【発明の詳細な説明】
【0053】
麻は産業用途としての長い歴史があり、植物の繊維部分を粗利用するために世界中で広く栽培されていた。他の農作物に比べて麻には多くの利点があり、つまり、この植物自体が雑草に対する抵抗力が強く、年に2~3回の収穫が可能で、農薬や除草剤を使わずに栽培できるという利点がある。その深い根系は、麻の植物は栽培に必要な窒素(肥料)および水が、綿のような他の作物と比較してもはるかに少なくて済むことを意味している。さらに農家は、他の作物用に畑を整地する代わりに、麻植物を利用できる。平均的な麻植物は、6フィートから16フィートの高さにまで成長し、約70日から110日で成熟するため、毎年世界中の多くの地域で複数収穫する機会を促進している。麻作物は、二酸化炭素収支がマイナスである状態を維持しながら、収穫ごとに1エーカーあたり3~8トンの乾燥茎を収穫できる可能性を秘めている。
【0054】
麻は、多くの双子葉植物と同様に、師部(ハード)と師部の周囲繊維(靭皮繊維)を含む。靭皮繊維の内側は、麻植物の木材のような部分である、中空芯を囲むハードである。どの種類の麻でも、繊維よりもかなり多くのハードバイオマスが存在する。残念ながら、植物の主要バイオマスであるにもかかわらず、ハードの使用は今まで敬遠されてきた。したがって、ハードの扱いと利用法は、さもなくば無駄になるこのセルロース系製品の利用において重要なステップとして機能するだろう。
【0055】
繊維は単体で使用されることが多く、それには機械的(例えば剥皮術)または化学的性質により繊維をハードから分離する必要があり、その後、カーペット、毛、ロープ、網、マットなどのような繊維製品を含む任意の繊維材料に利用できる。
【0056】
しかしながら、繊維の単体使用によって、茎および/またはハードから廃棄副産物が大量に発生し、広範囲にわたって栽培するという可能性が制限される。これに対してハードは比較的その利用が難しく、これまでは製紙、パーティクルボード、コンクリート混合物、建設用複合材などの粗加工や、動物用寝具にしか利用されなかった。
【0057】
大麻については、植物内のテトラヒドロカンナビノイド(THC)の量に関する懸念により、20世紀中その普及が激減した。しかしながら、麻植物には、精神活性化合物であるTHCの含有量が少ないものと多い異なる株・栽培品種がたくさんあるので、低THCからゼロTHCの植物を含んで、特定の栽培法および所望するTHC含有量に合わせて栽培を最適化できる。どんなバイオマスも使用に適するかもしれないが、ここでは早い成長速度と高い総バイオマスが望まれる。これらの形質は、当業者に既知のように、株および交雑によって自然に得られても良いし、遺伝子的に改変されても良い。
【0058】
究極的に、麻は二酸化炭素の収支がマイナスの植物として機能し、大規模利用、特に下流領域における用途が特定できる場合には非常に魅力的である。これらの特徴により、麻は魅力的な栽培の選択肢であるが、この植物の多くの問題により、これまでどのような規模においてもその使用が控えられてきた。麻のエコシステムに欠けているのは、成長後に麻材を消費するための工程および方法であり、それらがあれば、植物の繊維材を商業的に実現可能な事業で利用できる。
【0059】
したがって、さまざまなマスターバッチ工程での使用に適した、持続可能で環境に配慮したバイオ炭材料を追求しようと努力して、また、任意数の商業製品における、より高価で時間/工程のかかるCNT(カーボンナノチューブ)およびグラフェンの代替品として、出願人は、ナノ粒子バイオ炭麻系材料と、それを生成するための工程を特定した。
【0060】
セルロース系農業廃棄物の熱分解から生産されるバイオ炭は、CNTと同様の電気特性を示す非晶質炭化固体をもたらす。本明細書の方法、工程および製品は、セルロース系材料として炭化麻を利用して50ミクロン未満の粒径を有する炭化物を作り、これをマスターバッチで利用できる材料に組み込み、紡糸繊維、紡糸または押し出しされた繊維およびフィルム、複合材料を生成するか、当業者に既知の他の後処理ステップを通じて生成する。好ましい実施形態では、粒径は好ましくは25ミクロン未満、好ましくは20ミクロン未満、好ましくは15ミクロン未満、好ましくは10ミクロン未満、好ましくは5~10ミクロン、好ましくは2~7ミクロン、好ましくは2~5ミクロンであり、最も好ましくは2ミクロン未満である。一旦このような材料が生成されると、ミクロンサイズの炭を任意の数のマスターバッチ手順および後処理用途に利用できる。実際、特定の処理ステップに基づいて、当該材料は、改善された機械的特性/構造的特性を生み出し、ならびに特定の電気的特性および/または導電性を有する材料を生成する、複合材料などのマスターバッチから生成される材料に機能を付与できる。
【0061】
麻は、麻系バイオ炭を生成するための原料となる。
図1に示されるように、工程は一般的に、麻を栽培し(1)、麻を切り取り(2)、麻を乾燥させ(3)、乾燥した麻を粗切断する(4)ことと定義される。これらのステップのいくつかは、下流の産業用途に適した特性を備えたナノ粒径のバイオ炭を生成するために、追加のステップおよび工程にさらに細分される。
【0062】
麻の栽培(1)は、単にバイオマスを成長させることを前提としている。カンナビス・サティバ植物の様々な栽培品種のいずれかおよび麻の成長からのバイオ廃棄物を利用できる。このようにして、種子や葉菜類の加工に関心のある他産業からのバイオマスを活用し、茎からの繊維およびハードの両方を活用できる。実際、本明細書では、従来の使用よりも価値の高い用途で繊維とハードの両方を利用できる工程が説明されている。本明細書の工程では、優れた炭材料を生成するために、繊維とハードの両方を一緒に利用することが好ましいことが記載されている。これまで、麻繊維は通常麻のハードから分離され、繊維は特定の材料に使用され、ハードおよび残留バイオマスは、コンクリート充填剤、動物用寝具、および単に堆肥化するか廃棄物として燃焼されることを含む他の用途などの低価値用途に使用されていた。しかし、複合加工により廃棄物が削減し、繊維とハードを併用することで、より効率的で価値のある加工が可能になる。
【0063】
麻の切り取り(2)は、単に成長中の麻を取って茎の根元を切断するか、地面から麻を取り除いて乾燥工程を始めるだけである。一旦麻を切り取ると、ほぼすぐに乾燥工程が始まる(3)が、乾燥工程では湿気が大敵である。したがって、麻を切り取り(2)、畑で0~7日間乾燥させてからそれらを収集し、管理環境下で乾燥工程を完了させることが適切であると考えられる。これは単に温室または倉庫内であれば良く、材料が雨やその他の湿気にさらされないようにして乾燥を促進させ、カビ、腐敗、または他の真菌の増殖を防ぐ。
【0064】
さらに、麻が乾燥して麻茎が畑に留まる時間が長くなるほど、水分に曝される。水分に曝される工程により、ハードと繊維が自然に分離する。しかし、ハードと繊維が分離すると、樹脂により茎の粘着性が増し、この工程により、高スループットに必要な連続供給バイオ炭システムで材料を利用することが、不可能ではないにしても困難となる。したがって、麻材が水分に曝されることおよび樹脂の形成を防止するため、収穫後の特定の時間枠内で活用されることが好ましい。この粘着性樹脂材料は、一度形成されると、麻を効率的に炭化する能力を低下させ、2ミクロン未満のサイズで生成される粉砕炭の収量をさらに低下させる。
【0065】
そのため、麻を最も効率的に処理するには、前処理を適切に実施する必要がある。したがって、特定の処理システムで材料を利用できることを確実にするには、適切な乾燥工程が必要である。よって好ましいステップは、茎が切断された状態で1週間以上地面に横たえておくべきではないというものである。これを適切に実施するには、腐敗を防ぐために、気象情報およびカット材の管理が必要である。好ましい実施形態では、水分に曝される前に、茎は管理された環境で切断および乾燥され、熱分解される。水分に曝された場合、処理を可能にするために繊維とハードを分離しなければならない場合がある。これにより処理のコストおよび時間が増加し、それゆえ持続可能性が低下する。さらに、表2に示すように、繊維またはハードを別々に熱分解した場合よりも、繊維とハードを一緒に熱分解した方が導電性が高く、よって導電性が望まれる炭製品用には、麻茎の単一処理が重要となる。
【0066】
麻の加工または粗切断(4)には、1以上のステップを含んでもよい。最も単純な形態では、乾燥麻(3)を単純に収集し、炭化のために炉に入れる。他のステップでは、例えば
図7のように、加工では麻茎(71)を取り、茎を粗切り(4)、研削(72)もしくはストリップ(73)にするか、または材料を炉(11)に加える前に研削(72)およびストリップ(73)処理を両方行う。これにより、炉内で炭化するのに適したサイズの材料を実現し、均一な炭化材料を実現する単純な工程がもたらされる。炭化工程は、これは、
図2(a)、2(b)、3、5(a)、および5(b)を含む追加図に詳述されるように、さらに粉砕または研削することができる炭素バイオ炭材料を生成することである。
【0067】
既存の炭は、椰子の殻、泥炭、硬木および軟木、亜炭、瀝青炭、オリーブの種および各種炭素質の特殊材料から最も一般的に生産される。多くの産業用途では、炭は薬品処理または水蒸気処理で賦活化される。賦活化させると、炭は通常、炭素原子を主成分とする複雑な構造を有する高多孔質の吸着媒体になる。これらの材料は、その吸着性により大粒径で使用されることが多い。これは、賦活化された炭の細孔ネットワークが、共有結合で結合し、不均等に積層されている炭素原子の無秩序な層の硬質な骨格内に作成されたチャネルであることに起因し、炭素層の間にくぼみ、割れ目、隙間や亀裂の高度に多孔質の構造を形成し、特定の追加分子の高度な結合を可能にしている。
【0068】
しかし、粗粒径かつ大粒径の材料は、例えば、ポリマーと組み合わせて繊維を作る場合、または混合物内に実質的に均一なサイズのナノサイズ粒子を必要とする他の用途の場合などである、マスターバッチでの使用には矛盾したものである。しかしながら、材料を10ミクロン、5ミクロン、および/または2ミクロン未満のサイズに加工し、粒子の混合物に特定分級サイズを有するようにする処理の実現は困難であり、本明細書の実施形態に記載の工程の以前には達成されていない。
【0069】
(正確なサイズ変動を有する麻のミクロン粒子を生成工程)
特定のセルロース系材料は容易に炭化しやすく、その後ミリ単位の粒度に縮小できるが、ミクロン単位への縮小は麻では非常に困難であった。第一に、ミクロン単位の粒子は本明細書に記載する工程によって生成され、具体的に、粒径10ミクロン未満、5ミクロン未満、および2ミクロン未満の場合に固有の考慮事項が発生する。第二に、価値の高い材料を作成するために必要な小さいサイズと合わせた材料の低密度が、粉砕および分級工程を非常に困難にする。表1に詳述されるように、麻の密度は一般的な炭製品よりも劇的に低く、それが結果として得られた材料を粉砕および分級する能力に影響を与える。いくつかの工程を試した結果、一貫性と収量に関してさまざまなレベルの成功を収めた。最終製品は、最小粒子径を満たすだけでなく、混合物内の全粒子内の平均粒子径も正確でなければならない。したがって、これを特定分級サイズ、つまり、全粒子が正確なサイズ(許容範囲内)であるもの、または実質的にサイズが均一であると表現する。
【0070】
【0071】
好ましい実施形態では、工程で麻茎を利用するが、完全麻茎、切断された完全麻茎、細断した完全麻茎、完全ハード、切断されたハード、細断したハード、研削ハード、分離したハードおよび繊維、分離した切断ハードおよび繊維、分離した細断ハードおよび繊維、分離した研削ハード、ならびに分離した研削繊維を含む広範囲の麻材が特定用途に利用できる。以下および表2に詳細が示されるように、ハードと繊維を組み合わせることにより、電気特性に優れた材料がもたらされる。
【0072】
(熱分解)
熱分解を行う場合、バイオ炭化は、好ましくは約600℃~約1500℃の温度で、バッチ処理または連続フロー工程を通じて実施できる。
図2(a)に見られるように、粗切断された麻(4)を炉(11)に加え、次に1100℃以上に加熱する(13)。中間的論点は、麻を薬品賦活する必要があるかどうか(19)であり、もし「必要がある」のであれば薬品賦活され(20)、その後、炉(11)に加えられる。特に、加熱工程は低酸素度で実施されるが、これは当業者に既知の通り、材料の完全燃焼を防止するためである。したがって、加熱室は、炭化工程中に1以上の不活性ガスで満たされる。材料の炭化には少なくとも600℃の温度があれば十分であるものの、材料の燃焼および炭化が不均等になる。さらに重要なことに、温度スケールの下限で処理を実施すると、それ自体で導電性が低下する。さらに、材料をナノ粒径にする後続処理において、炭が不均等であると、任意の合理的な収量で実質的に均一な粒径に効果的に研削することができない。約1100℃~約1500℃で熱分解すると、均一な炭化材料が得られるだけでなく、低温で処理した場合よりも高い導電性を有する材料が得られる。したがって、600℃より高温だが約1100℃より低温で処理する場合(51)に可能な1つの方法が
図5(a)に詳述されており、典型的には水蒸気賦活(14)または薬品賦活(20)である賦活化ステップを通じて、細胞構造を改変するために炭素をさらに賦活化する必要がある。本賦活化ステップは高温熱分解ほど効率的でない。
【0073】
本明細書の工程は、いくつかの点で独特である。まず、
図2(a)に定義されているように、賦活化工程は、低酸素条件下で、好ましくは1100℃以上(13)で実施される。ほとんどのバイオ炭化(木炭形成)は、このような高温では行われない。さらに、表1に詳述されるように、麻は、その物理的特性により、ミクロンサイズの粒子を適切な収量で後続処理することが非常に困難である。表1は、麻が、炭生産に使用される他の一般的なセルロース系材料よりもはるかに低密度であることと、麻の軽量で低密度であるという性質により、本明細書に記載する特定材料での使用に必要となる均一かつ小粒径への加工がより困難になることとを示している。
【0074】
(水蒸気賦活)
1100℃を超える温度が好ましいが、いくつかの実施形態では、より低い温度で炭を賦活化することが最適である場合がある。本工程には、薬品賦活または水蒸気賦活を含めてもよいが、賦活化が実行される場合は、水蒸気賦活が好ましい。
図5(a)に示されるように、600℃を超えるが600℃~1100℃の温度に加熱する場合、材料を賦活化する必要がある(14)。炭の賦活化段階では、細孔構造が拡大され、内部表面積が増加するため、利用しやすくなる。水蒸気賦活化中、炭化物は600℃~1200℃の水蒸気で賦活化される。炭素と水蒸気の間の化学反応は炭素の内面で起こり、細孔壁から炭素を除去し、それにより細孔を拡大する。水蒸気賦活工程により、細孔径を容易に変更でき、特定の最終用途に合わせて炭素を生産できる。
【0075】
(薬品賦活)
水蒸気賦活とは対照的に、薬品賦活は、熱分解前の炭を膨潤させてセルロース構造を開くために、賦活化剤と共に原料を処理して混合する。好ましい薬品賦活剤として、酸、塩基または塩などが含まれるが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、安息香酸、リン酸、硝酸、塩酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、過塩素酸などの酸、塩基または塩、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムなどの塩基、塩化カルシウム、塩化亜鉛などの販売、および当業者に既知のその他の薬品賦活剤を含む。したがって、工程には薬品賦活が必要かどうかを尋ね(19)、「必要である」場合は(20)、賦活化剤を添加する。原料に薬剤を含浸させると、含浸された原料は炉に加える(11)ことで炭化され、多くの場合、600℃~900℃の温度範囲の下限で、活性炭が産出される。炭化の際、薬剤は支持体として作用し、産出した炭を収縮させない。薬剤により原料が脱水し、炭化と償却が結果として起こり、多孔質構造と拡張表面積を形成する。
【0076】
活性は、原料と使用する試薬の比率を変えることで制御できる。活性は、試薬濃度が高いほど増加し、温度や調理時間にも影響される。
【0077】
したがって、
図2(a)および
図5(a)で定義されるように、加熱/賦活化点におけるフローチャートが必要である(19)。1100℃超に加熱する場合(13)、賦活化は必要ない。1100℃未満に加熱する場合、炭化前に必要な最初の薬品添加ステップ(20)と共に賦活化工程についての決定が必要であり、薬品賦活が未完の場合は、水蒸気賦活化工程(14)(
図5(a))が必要となる。いずれの場合も、一旦温度が決定したら、材料を低酸素環境に置き、温度を徐々に上昇させ、十分な時間保持することで材料が炭化される。通常、これには2~12時間要する。
【0078】
賦活化する場合、他の好ましい実施形態としての水蒸気賦活および薬品賦活と共に、高温での賦活化が好ましい。高温賦活が最も持続性が高いが、いずれも炭の表面積を広げるには十分であり、これにより湿気管理、帯電防止特性、摩擦特性、および美観性が向上する。実際、材料が加工されると、炭素1グラムにつき32,000平方フィートの表面積になる。
【0079】
したがって、麻材を熱分解および賦活化する工程は、材料に特定の物性を与えるために重要である。これは、ハードと繊維を1100℃以上の温度で一緒に加工することによって最適化され、それにより、以下の表2に示すように、改善した電気特性または導電特性をもたらす。実際、木炭は、熱(例えば、炭の上を歩く)および電気を伝導しないことが一般的に知られるが、出願人は、伝導性および電気特性を生成する工程および実質的に均質な大きさおよび構造を有する材料を作り出した。実際、サイズおよび構造が小さいことにより、特定の状況下で一定の電荷を適切に発生させ、伝えることができる。
【0080】
表2に電気特性の概要を示す。出願人は、20%炭化した麻材を含む材料を通して電荷の伝達能力を試験した。表2の結果に詳述したように、炭化麻材と炭の温度を変化させ、最適な製造工程を決定した。要約すると、1100℃以上で炭化したハードと繊維の複合材は、繊維またはハード単独の場合、または1100℃未満で炭化した場合と比較して、結果が改善している。
【0081】
【0082】
したがって、バイオ炭化麻材では、麻材を不活性(低酸素条件、通常は別のガスの添加による)雰囲気中で加熱し、炭素の脱水・脱揮が起こるようにしている。本工程の最適化では、1100℃を超える温度でハードと繊維の複合材を利用する。次に、麻の炭化により、原料の揮発性成分が20%未満に減少し、コークスが産出される。次に、材料を粉砕することでコークスがさらに操作され、材料がその後下流のマスターバッチでポリマー基質とともに使用可能になる。
【0083】
炭化物の脆い性質のため、複合材の粒子としての好適な使用のためにミクロン寸法の粒径を有する微粉末に直接粉砕する(15)。例えば、炭化物を粉砕機に入れて粉砕する(15)ことにより、実質的に均一な粒径を有した実質的に均質な粒子粉末まで粒径が急速に減少することになる。
【0084】
(粉砕)
続いて
図2(a)および2(b)を参照し、1100℃を超える温度に加熱した後、
図2(b)の粉砕(15)に工程は続く。材料を特定分級サイズに粉砕または研削すると、特定分級サイズを持たない製品よりもより多く活用できる良い製品を作ることができる。ある実施形態では、範囲内の粒径分布は、算術平均や算術最頻値などによって定義することもできる。本明細書で使用されるように、「特定分級サイズ」という用語は、分級サイズと比較して、所定与点内の粒子の割合を指す。例えば、特定分級サイズの2~5ミクロンは、全粒子の少なくとも90%が2~5ミクロンであることを意味する。より好ましくは、特定分級サイズが95%、特定分級サイズが99%、特定分級サイズが99%超は、それぞれ95%、99%、または99%を超える粒子が2~5ミクロンのサイズであることを意味する。
【0085】
さらに、特定のミクロンサイズと釣鐘曲線を定義することにより、特定分級サイズをさらに絞り込むことができる。例えば、特定分級サイズ2~5ミクロンが99%で3.5ミクロンの釣鐘曲線95%は、99%の粒子が2~5ミクロンであり、全粒子の95%が3.5ミクロンから2標準偏差以内にあることを意味する。これは、全粒子のサイズが均一であることを目標として、複数の粒子内の粒径に関して、粒子を正確なものにすることを目的としている。釣鐘曲線は、50%、75%、90%、95%、99%、または99%を超える釣鐘分布であってよい。本質的に、釣鐘曲線がきつくなるほど、粒径がより均一なサイズになる。均一性を高めると、特に5ミクロン未満の粒子、2ミクロン未満の粒子ならなおさら、より良い製品を生み出すことがきる。好ましい実施形態では、粒子は、特定分級サイズ2ミクロン未満を90%有し、1ミクロン、1.25ミクロン、または1.5ミクロンにおいて90%の釣鐘曲線を有する。これにより、特定分級サイズ2ミクロン未満が90%、1.5ミクロンにおける90%の釣鐘曲線となり、平均粒径が1~2ミクロンとなる。
【0086】
分級工程、例えば、
図2(a)、2(b)、3、4、5(a)および5(b)では、適切な収量では、特定の下流工程での使用に適した2ミクロン未満の特定分級サイズを生成することは特に困難であることが証明された。粒子の90%が2ミクロン未満で、平均粒径が1~2ミクロンの材料を形成するために、材料の粉砕後に篩別または分級工程が利用され、2ミクロンを超える粒子を除去する。例えば、
図2(b)に詳述されるように、粉砕ステップ(15)の次に分級ステップ(16)が続き、ここで、所望のわずかな量の材料(17)が捕獲され、取り除かれたわずかな量(18)が再粉砕され、より小粒径を達成する。
【0087】
適切のわずかな量を生成し、適切なサイズの粒子を形成するために、好ましくは工程にボールミルを利用し、ステップを1つ追加してもよい。ボールミルでは、材料を容器に加え、容器内に1以上のボールを含ませ、ボールと材料とを一緒に振るために振動させる。
図3は、炭化麻(21)を捕獲することにより始まり、次にボールミル(31)に追加する粉砕工程の実施形態を詳述している。炭化麻はボールミル(32)で研削または粉砕される。次に、材料を分級し(16)、所望断片を捕獲し(17)、取り除かれたわずかな量(18)は、ボールミル(31)に再度加えられ、工程が再開する。所望のわずかな量は下流工程にためにマスターバッチ(34)に加えられる。
【0088】
ある実施形態では、炭麻は凍結粉砕(33)に適している。凍結粉砕では、液体窒素またはその他の物質下で、通常-100℃未満の温度において材料を粉砕する。材料の温度を下げることにより、炭化麻の温度を材料が脆くなる温度よりも低くし、この温度で粉砕することにより、炭化麻の破壊が促進され、特に、10ミクロン未満、5ミクロン未満、および2ミクロン未満のサイズの用途に適したナノ粒子になる。凍結粉砕工程は、除外したり、通常の粉砕に置き換えたり、通常の粉砕に加えて完了できる。
【0089】
最後に、粒子を大きさで選別する。したがって、
図2(b)では、材料は粉砕され(15)、次に分級される(16)。次に、分級工程により材料が適切なわずかな量に分離され、所望のわずかな量が捕獲される(17)。取り除かれたわずかな量の材料(18)は粉砕機(15)に戻り再粉砕され、より小さなサイズになる。捕獲された材料には、アパレル/繊維および織物用途(58)での使用のために、2ミクロン未満(55)の粒子が含まれることが好ましい。2~5ミクロン(53)の追加断片は、例えば家庭用家具(56)に使用できる。5~10ミクロン(54)のわずかな量の粒子の場合は、工業用繊維・繊維用途(47)に使用できる。10ミクロンを超えるわずかな量(52)は、例えば複合材料(59)に使用できる。これらのわずかな量は、必要に応じて、これらの下流用途のためにマスターバッチ重合(60)に有利に加えられる。
【0090】
図4は、分級篩セットの例を定義している。第1分級篩(42)を備えた第1分級容器(41)は、第1材料(52)を捕獲し、第2分級容器(43)および第2分級篩(44)は、第2材料(54)を捕獲し、第3番分級容器(45)および第3分級篩(46)は、第3材料(53)を捕獲し、最後に第4容器(47)は、第3分級篩(46)を通りぬけるいかなる材料(55)をも捕獲する。
【0091】
一例として、第1分級篩は10ミクロンであり、第2分級篩は5ミクロンであり、第3分級篩は2ミクロンである。炭化粉砕麻を第1容器(41)に加えることにより、10ミクロンを超えるあらゆる材料(52)が第1容器(41)に捕獲される。これにより、10ミクロンより小さく5ミクロンより大きい材料(54)が第2容器(43)で捕獲される。5ミクロンより小さく2ミクロンより大きい材料(53)が容器(45)に捕獲され、最後に2ミクロンより小さい全材料(55)が第3分級篩(46)を通過して第4容器(47)に入る。
【0092】
2ミクロンサイズの収量は、粉砕工程の時間を基に最適化できる。最適化された収量は、サイズが2ミクロン未満の材料の少なくとも50%である。例えば、10kgの炭から始めると、2ミクロン未満の材料が少なくとも5kg得られる。以下の実験で詳述されているように、この量の収量を達成することは意外と困難であった。
【0093】
好ましい実施形態では、好ましい粒径は2ミクロンである。このサイズの粒子の生成は、ほぼすべての用途における利用に適した改良繊維を作るために最適化される。しかし、均質または実質的に均一な粒径でこのサイズに到達することは非常に困難であった。2ミクロン未満のサイズの粒子の形成は、材料を乳鉢と乳棒で手動粉砕することによって達成できる。しかし、このシステムを商業用途に使用することはできない。たとえそうであっても、そのような工程では、2ミクロンサイズで使用可能な材料を得るために広範囲の粒径を篩別する必要が生じる。
【0094】
商業的用途に移行するために、粉砕にはエアジェット研削機、湿式処理装置、小バッチ高エネルギーボール粉砕機、乾式攪拌媒体粉砕機、圧力研削、および当業者に既知の他の研削および粉砕工程などのあらゆる研削手段が含まれてもよい。これらの研削機は、所定の回転数で回転してもよいし、特定の周波数(Hz)で振動してもよい。粉砕工程にかかる時間は、その間全ての時間を含む約1時間から約16時間までの間である。2ミクロンまで粉砕する商業的な試みは容易に実現可能であることが示唆されたが、許容範囲(精度)および収量範囲内で実際にこのサイズに加工することは困難であると証明された。
【0095】
よって、好ましい実施形態は、
図2(a)および2(b)、または
図5(a)および5(b)の工程に従う。例えば、
図5(a)および5(b)が詳述するのは、乾燥(
図1を参照)および粗切断(4)された切断麻(2)である。粗切断された麻(4)は、薬品賦活が必要かどうかが判断され、「必要である」であれば次に材料を薬品賦活(20)し、「必要なし」であれば直接材料を炉に加える(11)。600℃を超えた温度(12)で加熱し、好ましくは1100℃を超えた温度で加熱する(13)。温度が600℃~1100℃の場合、次に上述の通り薬品賦活(20)か、または本明細書に記載のように水蒸気賦活(14)により、製品を賦活する必要がある(14)。その後、材料を粉砕できる(15)。
図5(b)が次に詳述するのは、材料をボールミルに加え(31)、十分な時間ボールミル内で粉砕(32)し、ボールミル内で粉砕した後に材料を分級する(16)ことである。分級された材料は、取り除かれたわずかな量(18)、10ミクロンより大きい(52)、5~10ミクロン(54)、2~5ミクロン(53)、または2ミクロン未満(55)のいずれかである。このような材料の例的用途としては、複合材料(59)、工業用繊維/織物用途(57)、家庭用家具(56)、またはアパレル用繊維/織物用途(58)が定義される。これは、炭のミクロンサイズに直接対応する繊維のあり得るデニールサイズに基づいて決定され、アパレル繊維/織物用途(58)用の2ミクロンサイズ未満の炭の形成(55)が、バイオ炭の基本終点であることを示している。
【0096】
小粒で実質的に均一な粒径を生成する上での一番の問題は、麻炭が他のセルロース系炭化材に比べて嵩密度が低いため、乾式粉砕では乾式研削機の中で炭素が浮遊し、実際に研削することが困難であるということである。したがって、2ミクロン未満のサイズの材料を適正な収量で生成するために粉砕および分級工程を最適化すべく、いくつかの異なる工程および方法を試験した。
【0097】
(実験1 乳鉢と乳棒による手動粉砕)
麻茎(ハードおよび繊維)材料から作った炭化麻10gを乳鉢に入れ、乳棒で手挽きした。約3分間の研削を行い、材料を小さな塊から微粉末に変化させた。次に、本粉末材料のサイズを顕微鏡で確認した。大部分の材料は小さいサイズまで十分に研削されているが、処理が不完全であるために大きいサイズの材料はかなりの量が存在した。2ミクロン未満の材料を定量化するために、2ミクロンの篩を用い、材料の約45%が2ミクロン未満であった。
【0098】
2ミクロンを超える材料をさらに3分間再研削し、再篩別した。さらに2ミクロン未満の材料が生成された。この工程を数回繰り返し、2回の研削の後、平均6.5gの原料が2ミクロン未満になり、総収量が約80%となり、それは手動工程では、こぼれや篩別工程および搬送工程における粒子の空気混和などにより、約20%の原料が失われたか、2ミクロン未満まで研削されなかった。
【0099】
(実験2 分級なしの乾式粉砕)
実験的研削に3mmの寒天ボールを用い寒天瓶内で乾燥研削を含めた。この実験では、炭化材の約50%(「約」とは数の±10%を意味する)が2ミクロン未満に粉砕された。本適用における研削タイミングは、通常3~7時間であったが、時間を3時間から7時間に増やしても、結果として得られる粒径にほとんど差がなかった。さらに、鋼製の瓶やボールに変更しても、同様の処理となった。材料の約50%が2ミクロンを超え、2ミクロンを超える50%の中で、大きさに100ミクロンまでのばらつきがあるため、この工程単体はサイズが2ミクロン未満の均一材料を生成するのに十分ではなく、マスターバッチで使用するための精度公差を満たさないと判断した。
【0100】
4つの試験のうち、3つは寒天瓶を使用しており、2ミクロン未満の材料の総量が47%、51%、および52%で、鋼瓶を使った場合は、49%であった。
【0101】
(実験3 1段階分級による乾式粉砕)
上記の実験2では、サイズ均一性の高い材料が生成されなかったため、サイズ別の選別に役立つ分級ステップを追加した。実験的研削として、3mmの寒天ボールを用い寒天瓶内で乾燥粉砕を実施した。これにより、実験2と同様に炭化材の約50%が2ミクロン未満に研削された研削物が得られた。本適用における研削タイミングは、通常3~7時間であったが、時間を3時間から7時間に伸ばしても、結果として得られる粒径にほとんど差がなかった。3時間、5時間、7時間の粉砕では、それぞれ2ミクロン未満の粒径が材料全体の約50%得られた。2ミクロン未満の材料を50%得られる工程から始めることで、2ミクロン以下の材料を収集できる篩別または分級システムを使用でき、残る50%の2ミクロンを超える大きな材料を、後続処理で再粉砕する。本工程を、2ミクロン以下の材料が十分な量得られるまで繰り返す。このような小粒径で篩別する場合、より大きな粒径の材料が通過することがあるが、約70%、約80%、約90%の材料、好ましくは約95%、最も好ましくは約99%の材料が2ミクロン以下の粒径であることにより、高精度な特定分級サイズと釣鐘曲線を有する粒子の混合物を得ることができる。例えば、特定分級サイズ2ミクロン未満が99%で1.5ミクロンの釣鐘曲線が95%であるということは、全粒子の95%が1.5ミクロンから2標準偏差以内を達成したことを意味し、約50%の収量であり、材料を再粉砕した後の収量はさらに増加した。本工程は、非水溶媒がマスターバッチでの使用に適していない場合に最適である。
【0102】
(実験4 多段階分級による乾式粉砕)
実験3の工程を繰り返したが、2ミクロンの篩を1つ使用する代わりに、例えば
図4に示されるように、3つの篩別工程を使用した。多段階篩別工程では追加のわずかな量を捕獲できたが、材料の一部がより大きな篩に捕獲され、及びその他の損失が発生するため、収量はわずかに低下する。この損失が2%未満であったため、圧縮空気や真空処理など、篩から材料を押し出すための追加工程は使用しなかった。揺動システムを利用して分級篩を通して材料を優しく押し出し、材料を捕獲した。最初の分級工程を通過後の収量は、2ミクロン未満の材料が約50%という結果になった。材料を再研削すれば材料が追加で生成されるが、単純により大きな材料を炭化材の新しいバッチに追加し、1作業ごとに総質量の60%を継続的に生成させることが最も有利である。この工程は、非水溶媒がマスターバッチに適さない場合や、異なった用途またはマスターバッチ向けに様々なサイズの材料が好適な場合の使用に最適である。
【0103】
(実験5 水による湿式粉砕)
(水による湿式粉砕)湿式粉砕では、実験3で詳述したように、粉砕を行う前に粉砕槽に水を加える。これは、炉に麻材を加える(11)
図6に詳述されている。この炭化材を粉砕機に加え(61)、次に粉砕機に水を加える(62)。次に、水を60%と麻炭を40%の比率で材料を30Hzで3~7時間、湿式処理する(63)。次に、湿った材料を噴霧乾燥し(64)、再凝集のために再粉砕して分級する必要がある(65)。湿式粉砕の結果、非常に均一性の高い材料が得られ、95%を超える材料が2ミクロン未満に生産された。しかし、乾式粉砕工程より収量が50%も低く(総収量は約25%)、持続性の数値はあらゆる乾式粉砕工程と比べて激減した。収量低下の原因としては、湿式処理後、材料を噴霧乾燥する必要があり(64)、これにより各種試験で50%以上の炭素が失われたためである。実際、噴霧乾燥工程は単に微細粒子を吹き飛ばすだけであり、噴霧乾燥工程の屑領域からこれを捕獲する必要がある。これにより、材料の捕獲において困難になるほか、費用がかかる。さらに、材料の分級が困難であることが判明し、以前に湿式研削した炭の凝集を減らすため、乾燥条件下でさらに再粉砕(66)が必要となった。各ステップはどちらも費用がかかり、生産持続性に欠ける材料の損失が発生する。
【0104】
(実験6 非水溶媒を使用した湿式粉砕)
水でない液体で粉砕する工程は、
図6に示すように単純化されている。
図6に示されるように、材料は、水で粉砕し、次いで乾燥、その後分級する代わりに、単純に液体溶媒で粉砕し(66)、粉砕し(67)、次いでマスターバッチに直接加える(68)ことができる。湿式粉砕工程は、多くの用途において優れており、粉砕工程で麻が「浮く」能力を低下させ、2ミクロン以下の多量の材料を産出し、実際には材料の50%以上が1ミクロン未満であり、90%以上、95%以上、98%以上の材料が2ミクロン未満であった。2ミクロンを超える材料を除去するために、液体を使用した分級工程を実施することもできるが、本ステップにより収量が低下するため、最適化プロトコルでは必要ない。アルコール溶媒、アセトン、油、他の極性溶媒または非極性溶媒、またはそれらを組み合わせて使用することにより、粉砕材料をマスターバッチに直接加えることができた。好ましくは、最終マスターバッチに適合する油または溶媒を利用する。本工程を使用すると、材料の総収量およびサイズが2ミクロン未満の材料の総収量が最大になり、これは、粉砕工程および分級工程で、微細乾燥材料がほとんど失われないためである。本工程は、このような非水溶媒をマスターバッチに加えることが適している場合に最適である。
【0105】
(実施例7 1100℃以下の燃焼)
(麻の炭化)外径1インチのチューブを収容でき、1000℃の温度性能を有するサーモサイエンティフィック社のリンドバーグチューブ炉を使用する。ステンレス鋼管には、圧縮継手と1/8インチの窒素ラインが設置されている。大きさが均一な麻茎7~10gをチューブに詰め、窒素で洗い流し、60分で25℃から1000℃まで加熱する(14.6℃/分の熱ランプ)。1000℃を60~90分間保持する。窒素の流れは、加熱時間および保持時間にわたって維持される。
【0106】
【0107】
(炭素ナノ粒子)
一旦材料を炭化して(必要に応じて)賦活化し、特定分級内の適切なナノ粒子サイズまで粉砕すると、マスターバッチのような下流工程で適切に利用できる。例えば、ポリマーまたは粒子形成内の材料を用いて、機械特性(強度、重量、剛性等)などの物理的特性または電気特性を改質することが好ましい。導電率を改善する要素には、高温熱分解、構造、および多孔性が含まれる。粒子が小さく形状が比較的均一である場合、そうでない場合よりも粒子の表面積が大きく、粒子間のより大きな接触面積により、電荷を生成または蓄積できる。高構造とは、炭素が凝集して長く分岐した鎖を形成することを意味する。このような構造は、導電性化合物に最適である。粒子は、多孔性が高いほど導電率が良く、これは温度上昇処理(つまり、1100℃以上)によって実現する。
【0108】
したがって、好ましい実施形態では、炭化麻は粉砕される。麻炭は、1~2ミクロンのサイズに粉砕され、微粉末となる。さらに、粒径の中央値は好ましくは1~2ミクロンであり、2ミクロン未満のサイズの粒子の50%、60%、70%、80%、90%、または99%有する。より大きなミクロンサイズを用いる場合、若干サイズのばらつきが増えることがある。しかしながら、この好ましい2ミクロン未満のサイズでは、材料の粒径に関する精度は、図示の通り2ミクロン未満での割合で求める。好ましくは、この工程には、2ミクロンより大きい粒子を除去するか、または実質的に均一な粒径を生成する篩別または分級工程が含まれる。2ミクロン以下の粒子は、特定のポリマーを使用した材料の生産に最適であり、より大きな粒子は再研削工程にかけ、小粒子を得る。本明細書に記載の工程によれば、材料からより高い収量を得ることが可能であり、2ミクロン未満のサイズの炭化麻を60%以上生成でき、2ミクロン未満の材料の全粒子の50%、50%、70%、80%、90%、95%、および99%を超える粒子のサイズが1ミクロン以上2ミクロン以下である。
【0109】
好ましい実施形態は、麻の一部を処理することと、前記麻を低酸素条件下で1100℃以上の温度で炭化し炭を得ることと、前記炭を5%未満の水を含む溶媒の一部と共に粉砕機に入れることと、前記材料を少なくとも30分以上粉砕してナノ粒子炭を生成することと、前記ナノ粒子炭をポリマーと組み合わせてマスターバッチにすることとを含む、湿式粉砕工程からなる。好ましい実施形態では、溶媒は、油、分岐または直鎖アルコール、好ましくはC1~C10アルコール、アセトンまたは他の適当な非水溶媒である。
【0110】
好ましい実施形態は、複数の麻粒子を1~50パーセント含み、前記複数の麻粒子は、1~2ミクロンの平均粒径を有し、少なくとも1つのポリマーを50~99パーセント含む。材料は、均一になるまでマスターバッチに混和させ、後続の材料に配合される。
【0111】
好ましい実施形態は、窒素下約900℃の温度で60~90分間炭化させることによりセルロース系材料を炭化させることと、前記材料を10ミクロン未満の粒子90%の粒子サイズを、好ましくは約1~2ミクロンの平均粒子径を有する粒子径を粉砕することにより炭化セルロース系材料の粒子径を減少させることと、粒子の一部を少なくとも第2成分と組み合わせることであり、前記粒子および前記第2成分を、後続の材料を形成するためのマスターバッチに形成することとを含む、特に麻からの炭化セルロース系材料を含むマスターバッチ用の麻炭化材を生産する方法に向けられている。好ましい実施形態では、上記の方法は、約1~50%の麻粒子と、約50~99%の少なくとも1つのポリマーとを含む。