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特許7461896煙道ガスから二酸化炭素を回収するシステム、およびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】煙道ガスから二酸化炭素を回収するシステム、およびその方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20240328BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240328BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20240328BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20240328BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240328BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/96
B01D53/18 120
C01B32/50
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020572989
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 GB2019051772
(87)【国際公開番号】W WO2020002891
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】201811023872
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】1813839.6
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520439128
【氏名又は名称】カーボン クリーン ソリューションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】バム・プラティーク
(72)【発明者】
【氏名】ホール・ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】クマール・オースラ
(72)【発明者】
【氏名】ロヘア・シェイレッシュ
(72)【発明者】
【氏名】メイザー・リチャード
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-278336(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0157554(US,A1)
【文献】台湾特許公告第000619540(TW,B)
【文献】特開2014-113544(JP,A)
【文献】特表2009-521313(JP,A)
【文献】特開2011-057493(JP,A)
【文献】特開2011-125763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/62
B01D 53/78
B01D 53/96
B01D 53/14
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道ガスから二酸化炭素(CO2)を回収する処理であって、
CO2を含む煙道ガスを少なくとも1台の、回転式充填層(以下、「RPB」という。)を含む直接接触式冷却器(以下、「DCC」という。)へ供給して冷却するステップと、
前記少なくとも1台のDCCから放出された冷却後の煙道ガスを、回転している少なくとも1台の、RPBを含む吸収装置へ供給し、前記吸収装置の内周部を通して供給されたCO 2 の含有率が低い溶媒(以下、「CO 2 リーン溶媒」という。)を前記吸収装置の外周部へ向かって移動させ、逆方向へ流れる前記冷却後の煙道ガスと反応させて当該煙道ガスからCO 2 を除去することにより、CO 2 の含有率が高い溶媒(以下、「CO 2 リッチ溶媒」という。)を形成するステップと
前記吸収装置での処理後の煙道ガスを、RPBを含む水洗装置と酸洗装置とのいずれかまたは両方へ通して、当該煙道ガスの中に残存する前記CO 2 リーン溶媒を除去するステップと、
前記CO 2 リッチ溶媒を、RPBを含む剥離装置へ通して、当該CO 2 リッチ溶媒からCO 2 を剥ぎ取ることにより前記CO 2 リーン溶媒を形成するステップと
を備えている処理。
【請求項2】
前記溶媒を前記処理に再利用する目的で、CO2と反応した前記溶媒を熱再生するステップ
を更に備えた、請求項1に記載の処理。
【請求項3】
前記剥離装置から供給された前記CO 2 リーン溶媒を再沸器で加熱し、前記再沸器から前記剥離装置へ蒸気を供給するステップと、
前記吸収装置から供給される前記CO 2 リッチ溶媒と、前記再沸器から供給される前記CO 2 リーン溶媒との両方を熱交換器に通して、当該CO 2 リッチ溶媒を当該CO 2 リーン溶媒で加熱するステップと、
前記再沸器から前記熱交換器へ供給されるべき前記CO 2 リーン溶媒と、前記熱交換器から前記吸収装置へ供給されるべき前記CO 2 リーン溶媒とのいずれかを熱再生装置に通すステップと
を更に備えている、請求項1または請求項2に記載の処理。
【請求項4】
前記吸収装置のRPBのハウジングが回転可能な円盤の上に実装されている、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の処理。
【請求項5】
前記冷却後の煙道ガスを、回転している少なくとも1台の吸収装置へ供給するステップが、前記冷却後の煙道ガスを、2、3、4、5、または6台の、RPBを含む吸収装置へ供給するステップを含む、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の処理。
【請求項6】
前記2、3、4、5、または6台の吸収装置が、共通のシャフトに直列に配置されている、
請求項5に記載の処理。
【請求項7】
前記CO2リーン溶媒が前記回転している少なくとも1台の吸収装置へ再び導入される、請求項1に記載の処理。
【請求項8】
前記少なくとも1台の吸収装置から放出されたCO2リッチ溶媒を、RPBを含むO2除去装置、または固定式充填層を含むO2除去装置へ通して、当該溶媒中に溶存するO2を当該溶媒から除去するステップ
を更に備えた、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の処理。
【請求項9】
前記CO2リッチ溶媒をO2除去装置へ通して当該溶媒からO2を除去するステップでは、前記CO2リッチ溶媒の中に存在するO2を90%以上除去する、
請求項8に記載の処理。
【請求項10】
各RPBは、
半径が0.2mから1.25mまで、または0.2mから0.8mまでの範囲にあり、
軸方向の長さが0.02mから1.0mまで、または0.2mから0.6mまでの範囲にあり、
体積が0.04m3から4.9m3まで、または0.04m3から0.6m3までの範囲にある、
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の処理。
【請求項11】
煙道ガスからCO2を回収するシステムであって、
回転式充填層(以下、「RPB」という。)を含み、前記煙道ガスを冷却するように構成されている直接接触式冷却器(以下、「DCC」という。)と、
回転することにより、内周部を通して供給されたCO 2 の含有率が低い溶媒(以下、「CO 2 リーン溶媒」という。)を外周部へ向かって移動させ、逆方向へ流れる、前記DCCによって冷却された煙道ガスと反応させて当該煙道ガスからCO 2 を除去し、CO 2 の含有率が高い溶媒(以下、「CO 2 リッチ溶媒」という。)を形成するように構成されている、少なくとも1台の、RPBを含む吸収装置と
前記吸収装置での処理後の煙道ガスを通すことにより、当該煙道ガスの中に残存する前記CO 2 リーン溶媒を除去するように構成されている、RPBを含む水洗装置と酸洗装置とのいずれかまたは両方と、
前記CO 2 リッチ溶媒からCO 2 を剥ぎ取ることにより前記CO 2 リーン溶媒を形成するように構成されている、RPBを含む剥離装置と
を備えているシステム。
【請求項12】
前記溶媒を再利用する目的で、CO2と反応した前記溶媒を熱再生する要素
を更に備えた、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記剥離装置から供給された前記CO 2 リーン溶媒を加熱し、前記剥離装置へ蒸気を供給するように構成されている再沸器と、
前記吸収装置から供給される前記CO 2 リッチ溶媒を、前記再沸器から供給される前記CO 2 リーン溶媒で加熱するように構成されている熱交換器と、
前記再沸器から前記熱交換器へ供給されるべき前記CO 2 リーン溶媒と、前記熱交換器から前記吸収装置へ供給されるべき前記CO 2 リーン溶媒とのいずれかを通す熱再生装置と
を更に備えている、請求項11または請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記吸収装置のRPBのハウジングが回転可能な円盤の上に実装されている、
請求項11から請求項13までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
回転するように構成された、2、3、4、5、または6台の、RPBを含む吸収装置
を更に備えた、
請求項11から請求項14までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記2、3、4、5、または6台の吸収装置が、共通のシャフトに直列に配置されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記CO2リーン溶媒を前記回転している少なくとも1台の吸収装置へ再び導入するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1台の吸収装置から放出されたCO2リッチ溶媒からO2を除去するための、RPBを含むO2除去装置、または固定式充填層を含むO2除去装置
を更に備えた、請求項14から請求項17までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記O2除去装置は、前記CO2リッチ溶媒の中に存在するO2を90%以上除去するように構成されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
各RPBは、
半径が0.2mから1.25mまで、または0.2mから0.8mまでの範囲にあり、
軸方向の長さが0.02mから1.0mまで、または0.2mから0.6mまでの範囲にあり、
体積が0.04m3から4.9m3まで、または0.04m3から0.6m3までの範囲にある、
請求項14から請求項19までのいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学的処理に関し、特に、煙道ガスから二酸化炭素を回収する処理に関する。
【背景技術】
【0002】
「背景技術」欄で扱われる主題は、単に「背景技術」欄で言及されたという結果だけで先行技術とみなされるべきではない。同様に、「背景技術」欄で言及される課題、または「背景技術」欄の主題に関連する課題は、先行技術においてすでに認識されている課題とみなされるべきではない。「背景技術」欄の主題は、単に、異なる解決手段を表しているだけに過ぎず、これらの解決手段の一部が、更にはそれら自体が、請求の範囲に記載された技術の実施形態にも対応していてもよい。
【0003】
図1は、煙道ガスから二酸化炭素(CO2)を回収する従来の処理のブロック図100である。混合ガスからのCO2の分離には、CO2のみに反応する溶媒が使用される。この溶媒は、CO2と反応した後、熱再生によってCO2を解放することができるので、更なるCO2の処理に再利用可能である。CO2を含む煙道ガス102は固定式充填塔104の中で液状の溶媒と接触する。この液状の溶媒は固定式充填塔104の頂部から底部へ、重力によって滝のように落下し、その底部で配水だめに集められる。
【0004】
第2の固定式充填塔106は構造化された充填層を備え、溶媒と揮発性化学物質との除去を目的とする洗浄場所を複数含む。これらの洗浄場所をCO2の枯渇した混合ガスが通過すると、そのガス中に残存する溶媒と、そのガス中の溶媒成分の分解反応によって形成された揮発性化学物質とが除去される。その後、CO2の枯渇した混合ガス108は固定式充填塔104の頂部から放出される。洗浄場所はすべて、同じ構造化された固定式充填層の中にあり、水または酸が使用される。
【0005】
溶媒は剥離塔112の頂部に供給され、重力によって充填材の上方から剥離塔112の底部へ落下する。その底部では溶媒が再沸器114へ引き込まれる。再沸器114の内部では溶媒が、その中に存在する水が剥離塔112の作動圧力の下で気化する温度まで加熱される。水蒸気とCO2とは剥離塔112の頂部へ上昇し、その頂部で凝縮器により、摂氏約40度に冷却される。これにより、水蒸気が水116に凝縮し、ガス状のCO2118から分離される。凝縮した水116は還流ドラム120を通して剥離塔112へ戻され、ガス状のCO2118は下流の処理で利用される。一方、剥離塔112の底部に残った溶媒は熱交換器110を通して吸収装置へ、CO2の含有率が低い溶媒(CO2リーン溶媒)として回収され、上記のCO2吸収処理に繰り返し利用される。
【0006】
従来の処理で利用される固定式充填塔は、煙道ガスの中に存在するCO2を混ぜる効率が悪く、溶媒の流れが重力によるものに限られているので、水洗装置または酸洗装置へ搬送される溶媒の量が限られている。さらに、従来の処理で利用される固定式充填塔は大型であるので広い空間を必要とし、システムの設置と操作とにかかるコストが高い原因になっている。したがって、煙道ガスからCO2を回収するシステムと処理との改良が強く望まれている。
【発明の概要】
【0007】
以下では、本発明のいくつかの実施形態について、それらの特徴のすべてが示され、詳細に説明される。「備える」、「持つ」、「包含する」、「含む」等の語は意味が同じであり、いずれもオープンエンドである。すなわち、対象が後続の項目で尽きていることを意味するものでも、対象を列挙されている項目に限るものでもない。
【0008】
また、次のことにも注意しなければならない。以下と請求の範囲とにおいて単数形で表されるものは、文脈上そうでないことが明らかでない限り、複数である場合を含む。本発明の実施形態の実現と試行とには、以下に説明されるシステムおよび方法と同様な、または等価なものであればいずれも利用可能であるが、以下では、好ましいシステムおよび方法を説明する。
【0009】
本発明の1つの観点によれば、煙道ガスからCO2を回収するある処理が得られる。この処理は、CO2を含む煙道ガスを、回転している少なくとも1台の回転式充填層(RPB)吸収装置へ供給するステップを備えている。このステップでは、少なくとも1台のRPB吸収装置の内周部を通して供給された溶媒がそのRPB吸収装置の外周部へ向かって移動し、逆方向へ流れる煙道ガスと反応する。
【0010】
好ましくは、上記の処理が、溶媒をこの処理に再利用する目的で、CO2と反応した溶媒を熱再生するステップを更に備えている。
【0011】
更に好ましくは、上記の処理が、煙道ガスを水と酸とのいずれか、または両方で洗浄して、煙道ガスの中に残存する溶媒を除去するステップを更に備えている。必要に応じ、水洗と酸洗とのいずれか、または両方が別のRPBで行われる。
【0012】
好ましくは、RPBのハウジングが回転可能な円盤の上に実装されている。
【0013】
好ましくは、CO2を含む煙道ガスを、回転している少なくとも1台のRPB吸収装置へ供給するステップが、煙道ガスを、2、3、4、5、または6台のRPB吸収装置へ供給するステップを含む。
【0014】
更に好ましくは、上記の2、3、4、5、または6台のRPB吸収装置が、共通のシャフトに直列に配置されている。
【0015】
好ましくは、溶媒が、逆方向へ流れる煙道ガスと反応してその煙道ガスからCO2を除去し、CO2の含有率が高い溶媒(CO2リッチ溶媒)となる。
【0016】
好ましくは、上記の処理が、CO2リッチ溶媒を剥離装置へ通すステップを更に備えている。この剥離装置はCO2リッチ溶媒からCO2を剥ぎ取り、CO2リーン溶媒を形成する。
【0017】
好ましくは上記の剥離装置が、剥離塔、固定式剥離塔、またはRPB剥離装置である。
【0018】
好ましくは、CO2リーン溶媒が、回転している少なくとも1台のRPB吸収装置へ再び導入される。
【0019】
好ましくは、上記の処理が、少なくとも1台のRPB吸収装置から放出されたCO2リッチ溶媒をRPBO2除去装置または固定式充填層O2除去装置へ通して、この溶媒中に溶存するO2をこの溶媒から除去するステップを更に備えている。
【0020】
更に好ましくは、CO2リッチ溶媒をRPBO2除去装置または固定式充填層O2除去装置へ通してこの溶媒からO2を除去するステップでは、この溶媒中に存在するO2を90%以上除去する。
【0021】
好ましくは、各RPBは、半径が0.2mから1.25mまで、または0.2mから0.8mまでの範囲にあり、軸方向の長さが0.02mから1.0mまで、または0.2mから0.6mまでの範囲にあり、体積が0.04m3から4.9m3まで、または0.04m3から0.6m3までの範囲にある。
【0022】
本発明の別の観点によれば、煙道ガスからCO2を回収するあるシステムが得られる。このシステムは、回転するように構成された、少なくとも1台のRPB吸収装置を備えている。このRPB吸収装置が回転するとき、このRPB吸収装置の内周部を通して供給された溶媒がこのRPB吸収装置の外周部へ向かって移動して、逆方向へ流れる煙道ガスと反応し、CO2を回収する。
【0023】
好ましくは、上記のシステムが、溶媒を再利用する目的で、CO2と反応した溶媒を熱再生する要素を更に備えている。
【0024】
更に好ましくは、上記のシステムが、水洗装置と酸洗装置とのいずれか、または両方を更に備え、これらの水洗装置と酸洗装置とのいずれか、または両方に煙道ガスを通して、この煙道ガスの中に残存する溶媒を除去する。
【0025】
好ましくは、RPBのハウジングが回転可能な円盤の上に実装されている。
【0026】
好ましくは、上記のシステムが、回転するように構成された、2、3、4、5、または6台のRPB吸収装置を更に備えている。
【0027】
更に好ましくは、上記の2、3、4、5、または6台のRPB吸収装置が、共通のシャフトに直列に配置されている。
【0028】
好ましくは、溶媒が、逆方向へ流れる煙道ガスと反応してその煙道ガスからCO2を除去し、CO2リッチ溶媒となる。
【0029】
好ましくは、上記のシステムが、CO2リッチ溶媒からCO2を剥ぎ取ってCO2リーン溶媒を形成するように構成された剥離装置を更に備えている。
【0030】
更に好ましくは、上記の剥離装置がRPB剥離装置である。
【0031】
好ましくは、上記のシステムが、CO2リーン溶媒を、回転している少なくとも1台のRPB吸収装置へ再び導入するように構成されている。
【0032】
好ましくは、上記のシステムが、少なくとも1台のRPB吸収装置から放出されたCO2リッチ溶媒からO2を除去するためのRPBO2除去装置または固定式充填層O2除去装置を更に備えている。
【0033】
更に好ましくは、上記のRPBO2除去装置または固定式充填層O2除去装置は、CO2リッチ溶媒の中に存在するO2を90%以上除去するように構成されている。
【0034】
好ましくは、各RPBは、半径が0.2mから1.25mまで、または0.2mから0.8mまでの範囲にあり、軸方向の長さが0.02mから1.0mまで、または0.2mから0.6mまでの範囲にあり、体積が0.04m3から4.9m3まで、または0.04m3から0.6m3までの範囲にある。
【0035】
段落[0009]から段落[0021]までのいずれか1つに記載された処理、または段落[0022]から[0034]までのいずれか1つに記載されたシステムでは、溶媒が、第3級アミン、立体障害のあるアミン、ポリアミン、炭酸塩緩衝材、および/または(必要に応じて脱イオン化された)水を含む。必要に応じ、水の濃度が10重量%から70重量%までの範囲に設定される。
【0036】
好ましくは、溶媒の粘度が1cPから10cPまでの範囲に設定される。
【0037】
更に好ましくは、溶媒が、米国特許出願公開第2017/0274317号に開示された溶媒のいずれかであり、および/または、第3級アミンとして、N-メチル-ジエタノールアミン、および/または2-(ジエチルアミノ)エタノールを、立体障害のあるアミンとして、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、および/または2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを、ポリアミンとして、2-ピペラジン-1-エチルアミン、および/または1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジンを、炭酸塩緩衝材として炭酸カリウムを、および/または、脱イオン水を含む。
【0038】
好ましくは、溶媒が、束縛されたアミノアルコールであるアミノ-2-メチル-1-プロパノール、ポリアミンであるアミノエチルピペラジン、および水を含む。
【0039】
本発明の別の観点では、RPB吸収装置のある配列が得られる。この配列は、回転するように構成され、共通のシャフトに直列に配置された、2、3、4、5、または6台のRPB吸収装置を含む。
【0040】
本発明の別の観点では、CO2回収溶媒から、耐熱性塩化物、分解生成物、および他の汚染物質を除去するための真空溶媒熱再生システムが得られる。このシステムは、CO2回収溶媒の温度を上昇させるように構成された原料生成物交換器と、この原料生成物交換器から放出されたCO2回収溶媒の温度を更に上昇させて、耐熱性塩化物、分解生成物、および他の汚染物質が内部に蓄積されるように構成された再沸器と、原料生成物交換器から放出された洗浄後のCO2回収溶媒の温度を低下させる凝縮器とを備えている。原料生成物交換器と再沸器とは連通していて、CO2回収溶媒から、耐熱性塩化物、分解生成物、および他の汚染物質を除去する処理を、回分操作、または半回分操作で行う。
【0041】
本発明の別の観点では、CO2回収溶媒から、耐熱性塩化物、分解生成物、および他の汚染物質を除去するための真空溶媒熱再生システムが得られる。このシステムは、CO2回収溶媒の温度を上昇させて、耐熱性塩化物、分解生成物、および他の汚染物質が内部に蓄積されるように構成された再沸器を備えている。この再沸器は、CO2回収溶媒から、耐熱性塩化物、分解生成物、および他の汚染物質を除去する処理を、回分操作、または半回分操作で行うように構成されている。この再沸器は凝縮器に連通している。この凝縮器は、再沸器から放出された洗浄後のCO2回収溶媒の温度を低下させる。好ましくは、再沸器と凝縮器とが直結している。
【0042】
好ましくは、上記の真空溶媒熱再生システムが、段落[0022]から段落[0038]までのいずれか1つに記載されたシステムと連通している。
【0043】
本発明の別の観点では、煙道ガスからCO2を回収するある処理が得られる。この処理は次のステップを備えている。
CO2回収溶媒を供給するステップ。
CO2回収溶媒をRPB吸収装置とRPB剥離装置とへ、更に必要に応じてO2除去装置へ導入するステップ。
水蒸気を再沸器へ供給するステップ。
RPB剥離装置の中のCO2回収溶媒を所望の圧力にするステップ。
RPB吸収装置とRPB剥離装置との周辺からCO2回収溶媒をポンプでくみ出すステップ。
RPB吸収装置の中へ煙道ガスを導入するステップ。
RPB剥離装置からのCO2の出力を監視するステップ。
RPBO2除去装置または固定式充填層O2除去装置を起動するステップ。
RPB吸収装置へ向かう煙道ガスの流れを止めるステップ。
RPB剥離装置からのCO2の出力を、その出力が止まるまで監視するステップ。
再沸器への水蒸気の供給を止めるステップ。
溶媒の循環を止めるステップ。
RPB剥離装置、RPB吸収装置、水洗装置、酸洗装置、およびO2除去装置を停止させるステップ。
【図面の簡単な説明】
【0044】
添付の図面は、本発明によるシステム、方法、その他、様々な観点からの様々な実施形態を示している。これらの図に示されている要素の境界(箱、箱の集まり、その他の形等)が一例を表しているに過ぎないことは、当業者の誰もが理解するところであろう。1つの要素が複数の要素として設計された例があっても、複数の要素が1つの要素として設計された例があってもよい。1つの要素の内部を構成する部品として示されている要素が、別の要素にはその外部を構成する部品として組み込まれている例があってもよく、その逆の例があってもよい。さらに、要素が寸法どおりに描かれていなくてもよい。以下の図面を参照しながら行われる説明は、発明を限定するものではなく、発明の実施形態が説明されたもので尽きていることを表すものではない。図面の構成要素は寸法どおりである必要はなく、焦点は、図示されている原理に置かれている。
【0045】
図1】先行技術による、煙道ガスからCO2を回収する従来の処理のブロック図100である。
図2】ある実施形態による、煙道ガスからCO2を回収するシステムのブロック図200である。
図3A】別の実施形態による、煙道ガスからCO2を回収するシステムにおけるRPB吸収装置302の機能を示すブロック図300である。
図3B】煙道ガスからCO2を回収するシステムにおけるRPB吸収装置3020の機能を示すブロック図3000である。
図4A】ある実施形態による真空溶媒熱再生システムを表すブロック図400である。
図4B】ある実施形態による真空溶媒熱再生システムを表すブロック図4000である。
図5A】ある実施形態による、煙道ガスからCO2を回収する処理を示すフローチャート500である。
図5B】ある実施形態による、煙道ガスからCO2を回収する処理を示すフローチャート500である。
図6】あるRPB吸収装置を表すブロック図600である。
図7】摂氏40度においてガス中のCO2の分圧と溶媒中のCO2の量(すなわち濃度)との間に現れる気液平衡(VLE)関係を示すグラフである。
図8】1日あたり10トンのCO2を回収するシステム1200の設計図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を更に詳しく説明する。図面には実施形態の例が示されており、同様な要素に同様な符号が付されている。ただし、請求の範囲で定義される発明は多くの異なる形で実施可能であるので、発明の実施形態を以下で与えられる実施形態に限定するものとして、請求の範囲を解釈すべきではない。以下で与えられる実施形態は非限定的な例であり、多くの可能な例の中の一部に過ぎない。
【0047】
図2は、煙道ガスからCO2を回収するシステムのブロック図200である。まず、煙道ガス202が1台のRPB吸収装置204へ供給される。溶媒は、同じRPB吸収装置204の内周部を通して供給される。RPB吸収装置204の内部では、回転可能な円盤の中に充填層が収容されている。この円盤が高速で回転して遠心力を発生させ、この遠心力が溶媒に、それが充填層に分散した時点で作用する。この遠心力の作用により、溶媒が径方向へ移動して、RPB吸収装置204の内周部から外周部へ向かう。こうして溶媒が、CO2を含む煙道ガス202と向流接触する。RPB吸収装置204がこのように回転することにより、煙道ガス202と溶媒との混ざり具合が増すので、煙道ガス202の中から液相の溶媒へ移動するCO2の量が増大する。
【0048】
CO2が溶媒によって吸収された後、残りの煙道ガスは、1以上の水洗装置206、208、および/または1以上の酸洗装置210の中で洗浄される。場合によっては、充填層のうち水洗装置の部分が、上記のRPB吸収装置204とは別のRPB吸収装置と交換可能である。洗浄水はその別のRPB吸収装置の内周部から供給され、その装置の回転で生じる遠心力によって径方向へ流れ、充填層を通ってその装置の外周部に達する。CO2が枯渇した煙道ガスはその別のRPB吸収装置の外周部から導入され、その装置の内周部へ向かって流れる。これにより、洗浄水と、CO2が枯渇した煙道ガスとの間に向流接触が生じる。洗浄水が、適切に濃縮された酸性溶液と置き換えられることにより、同様な処理が酸洗装置に適用されてもよい。洗浄後、浄化された煙道ガス212は大気中へ排出される。
【0049】
ある実施形態では、RPB吸収装置204に代えて複数台のRPB吸収装置、すなわち第1RPB吸収装置と第2RPB吸収装置とが使用されてもよい。第1RPB吸収装置と第2RPB吸収装置とは半径が比較的小さく、共通のシャフトに直列に配置され、煙道ガス202の中に存在するCO2の除去に利用される。煙道ガス202は、そのCO2の一部が第1RPB吸収装置の中で除去された後、第1RPB吸収装置の出口から第2RPB吸収装置の入口へ流れる。第2RPB吸収装置の中では煙道ガス202が、剥離装置から出力されたCO2リーン溶媒と向流接触する。こうして第2RPB吸収装置から排出された煙道ガス202では、CO2が枯渇している。この煙道ガス202は、水洗装置へ送られた後、大気へ排出される。第1RPB吸収装置から排出されたCO2リッチ溶媒は、剥離装置へ送られて再生される。
【0050】
ある実施形態では、第2RPB吸収装置から出て第1RPB吸収装置へ入る溶媒が、第2RPB吸収装置から第1RPB吸収装置へ向かう際、熱交換器214の中で冷却されてもよい。RPB吸収装置204から放出されたCO2リッチ溶媒216はRPBO2除去装置218へ送られる。RPB吸収装置204の内部に存在する煙道ガス202は酸素(O2)を含む。O2は溶媒と反応して分解生成物を形成しうる。その結果、溶媒から形成された分解生成物を除去し、新たな溶媒と交換することが必要となる。RPB吸収装置204、RPB剥離装置226は固定式吸収装置、剥離装置よりもかなり小型であるので、溶媒とガスとの滞在時間がかなり短い。それ故、煙道ガスからCO2を回収する上記の処理の各サイクルにおいて、溶媒の分解が生じる割合がかなり低い。
【0051】
ある実施形態では、煙道ガス202の中に存在するO2の一部が、RPB吸収装置204の内部に存在する溶媒によって吸収される。O2のこのような吸収は、溶媒が酸化によって分解する、回収されるCO2がO2によって汚染される等、多くの理由で望ましくない。したがって、CO2リッチ溶媒から、その中に溶存するO2を除去するのに、RPBO2除去装置または固定式充填層O2除去装置218が使用されてもよい。この装置は、剥離装置から出力されたCO2ガスの小さな流れをCO2リッチ溶媒と向流接触させることにより、その溶媒からO2を剥ぎ取る。剥離装置から出力されたCO2ガスではO2の分圧が低いので、液状の溶媒中に溶存するO2がその溶媒からCO2ガスへ移動する。溶媒中に溶存していたO2をガスとして含む流れ220はRPBO2除去装置218の頂部から放出され、またはRPB吸収装置204へフィードバックされる。
【0052】
CO2リッチ溶媒の中には、それがRPB吸収装置204から出た時点で、5~10mg/Lまたは10~15mg/LのO2が溶存している。このO2は熱交換器222とRPB剥離装置226との中で溶媒を分解させる。したがって、CO2リッチ溶媒がRPB吸収装置から出た時点で、その溶媒からO2を剥ぎ取ることが望ましい。CO2リッチ溶媒の流れは12,500lb./h、すなわち25gpmである。O2のヘンリー定数は、摂氏50度では~20,000atm/モル分率である。したがって、95%のO2を除去するには15lb./hのCO2の流れが必要である。15lb./hのCO2により~0.1lb./hのO2が持ち去られるであろう。
【0053】
ある実施形態では、RPBO2除去装置218へ溶媒が、回転している充填層の中央から入ってもよい。上記のように、溶媒はその回転している充填層の中央から外周部へ、遠心力によって押し出される。溶媒は、充填層の端に達すると充填層のケーシングの壁に衝突し、配水だめへ流れ込む。O2剥離用のCO2の小さな流れ240はケーシングの壁の貫通口を通して供給され、溶媒とは逆に、充填層の外周部から中央へ流れるように加圧されている。充填層の中央には貫通口があり、これによりガスがRPBO2除去装置218から放出可能である。充填層の回転により、溶媒がO2剥離用ガスと激しく混ざる。CO2リッチ溶媒260はその後、RPBO2除去装置218から出て熱交換器222を通過する。
【0054】
別の実施形態では、CO2リッチ溶媒が従来の(固定式)充填層O2除去装置218へ、充填塔の頂部から入る。一方、この充填塔の底部からはO2剥離用のCO2の小さな流れ240が供給される。これにより、気相と液相との間に向流接触が生じる。充填層の中央には貫通口があってもよい。この貫通口により、ガスが従来のO2除去装置218から放出可能である。CO2リッチ溶媒260はその後、従来のO2除去装置218から出て熱交換器222を通過する。
【0055】
熱交換器222の中では、CO2リッチ溶媒260がCO2リーン溶媒242によって加熱されるので、高温のCO2リッチ溶媒224がRPB剥離装置226へ供給され、再生された溶媒228がRPB吸収装置204へフィードバックされる。高温のCO2リッチ溶媒224はRPB剥離装置226へ、そのRPBの内周部を通して供給される。RPB剥離装置226は回転して遠心力を発生させる。この遠心力は高温のCO2リッチ溶媒224に、それが充填層に分散した時点で作用する。この遠心力により、高温のCO2リッチ溶媒224が径方向へ移動し、充填層の内周部からRPBの外周部へ向かう。この移動の間に、高温のCO2リッチ溶媒224は激しい乱流によってかき混ぜられ、多くの液滴を形成する。これにより、CO2の移動が生じる有効表面積が増大する。RPBの外周部では、高温のCO2リッチ溶媒224がRPB剥離装置のケーシングの内壁を通して溶媒だめへ排出され、その中に集められる。
【0056】
ある実施形態では、溶媒だめに集められた溶媒230が、再沸器232へ送られてもよい。溶媒230は再沸器232の中で加熱される。再沸器232内の温度は、溶媒230中の水分が気化するように設定されている。水分はRPB剥離装置226の作動圧力の下で気化する。再沸器232内で形成された水蒸気は、RPB剥離装置226の外周部へ導入される。
【0057】
ある実施形態では、RPB剥離装置226の内周部に、水蒸気とCO2とをRPB剥離装置226の外へ排出するための剥奪点があってもよい。水蒸気とCO2とは凝縮器234へ送られる。凝縮器234の内部では、CO2と共に存在する水蒸気が凝縮液238、すなわち水に凝縮される。凝縮後の水は還流管236の中でCO2から分離される。凝縮器234内で水蒸気が凝縮されることにより、剥離装置内の充填層の内周部と外周部との間に圧力差が誘起される。この圧力差が、水とCO2とをRPB剥離装置226から出す推進力を与える。CO2は下流の装置240へ向かい、下流の処理を受ける。
【0058】
ある実施形態では、凝縮液238が、高温のCO2リッチ溶媒224に混合された後、RPB剥離装置226へ、その充填層の内周部から入れられてもよい。再沸器232の中で生成されたCO2リーン溶媒242は、熱交換器222を通して処理に戻される。
【0059】
図3Aは、煙道ガスからCO2を回収するシステムにおけるRPB吸収装置302の機能を示すブロック図300である。まず、煙道ガス304がRPB吸収装置302へ供給され、溶媒と反応する。RPB吸収装置302は回転可能な円盤の上に設置されており、回転することにより遠心力を受ける。これにより溶媒が、CO2を含む煙道ガスと向流接触する。CO2が溶媒に吸収された後、残りの煙道ガスは水洗装置および/または酸洗装置を使って洗浄される。
【0060】
ある実施形態では、洗浄水がRPB吸収装置302の内周部306を通して供給されてもよい。洗浄水は遠心力の作用により径方向へ流れ、RPB吸収装置302内の充填層を通ってRPB吸収装置302の外周部に達する。水洗の間、処理対象である、CO2が枯渇した煙道ガスはRPB吸収装置302の外周部から導入され、内周部306へ向かって流れる。これにより、洗浄水と、CO2が枯渇した煙道ガスとの間に向流接触が生じる。同様に濃縮酸性溶液が使用されて、CO2が枯渇した煙道ガスに対する酸洗が行われる。水洗と酸洗とが行われた後、CO2が枯渇した煙道ガス308は放出される。
【0061】
ある実施形態では、RPB吸収装置302に代えて複数台のRPB吸収装置、すなわち第1RPB吸収装置と第2RPB吸収装置とが使用されてもよい。第1RPB吸収装置と第2RPB吸収装置とは半径が比較的小さく、共通のシャフトに直列に配置されており、煙道ガス304の中に存在するCO2を除去する。煙道ガス304は、第1RPB吸収装置内でCO2の一部が除去された後、第1RPB吸収装置の出口から第2RPB吸収装置の入口へ流される。第2RPB吸収装置の内部では煙道ガス304が、剥離装置から出力されたCO2リーン溶媒と向流接触する。第2RPB吸収装置から排出された煙道ガス304では、CO2が枯渇している。この煙道ガス304は、水洗装置へ送られた後、大気へ放出される。第1RPB吸収装置から排出されたCO2リッチ溶媒は、剥離装置へ送られて再生される。
【0062】
ある実施形態では、CO2リッチ溶媒310がRPB吸収装置302から出た後、RPBO2除去装置312へ送られてもよい。煙道ガス304の中に存在するO2の一部は、RPB吸収装置302の内部に存在する溶媒によって吸収される。O2のこのような吸収は上記の理由で望ましくないので、RPBO2除去装置312を使ってCO2リッチ溶媒からO2が除去される。回収されたCO2ではO2の分圧が低いので、溶媒中に溶存するO2がその溶媒から気相へ移動する。RPBO2除去装置312の頂部からはガス314が放出される。一方、CO2リッチ溶媒316がRPBO2除去装置312から出て、熱交換器318へ与えられる。
【0063】
熱交換器318の中ではCO2リッチ溶媒316がCO2リーン溶媒350によって加熱される。その後、高温のCO2リッチ溶媒320はRPB剥離装置322へ与えられ、冷却されたCO2リーン溶媒324は、処理された後、RPB吸収装置302へ与えられる。RPB剥離装置322は回転して遠心力を発生させる。この遠心力は高温のCO2リッチ溶媒320に、それが充填層に分散した時点で作用する。これにより、高温のCO2リッチ溶媒320はRPB剥離装置のケーシングの内壁を通して排出され、溶媒だめに集められる。
【0064】
ある実施形態では、溶媒だめに集められた溶媒328が、再沸器330へ運ばれてもよい。溶媒328は再沸器330の中で加熱される。再沸器330の中で形成された水蒸気はRPB剥離装置322の外周部へ導入される。RPB剥離装置322の内周部には、水蒸気とCO2とをRPB剥離装置322の外へ排出するための剥奪点がある。水蒸気とCO2とは凝縮器へ運ばれ、CO2と共に存在する水蒸気が凝縮液に凝縮される。凝縮後の水はCO2から分離される。凝縮器内で水蒸気が凝縮されることにより、剥離装置内の充填層の内周部と外周部との間に圧力差が誘起される。この圧力差が、水とCO2とをRPB剥離装置322から出す推進力を与える。水から分離されたCO2332は下流の装置240へ向かう。そのCO2332のごく一部はO2除去装置312へ供給される。
【0065】
ある実施形態では、冷却されたCO2リーン溶媒324が、熱再生装置326を経由してRPB吸収装置302へ通される。
【0066】
図3Bは、煙道ガスからCO2を回収するシステムにおけるRPB吸収装置3020の機能を示すブロック図3000である。図3Aが示す構成とは異なり、熱再生装置3260が再沸器3300と熱交換器3180との間の接続点に設置されている。ある実施形態では、熱交換器3180とRPB吸収装置3020とが直結していてもよい。ブロック図3000の他の要素は図3Aの要素と対応するので、それぞれの参照番号の末尾に「0」が付加されている。たとえば、図3Aの312は図3Bの3120である。
【0067】
ある実施形態では、図4Aのブロック図400に示されているように、CO2リーン溶媒402が、冷却器の出口から排出された後、真空溶媒熱再生システムに取り込まれてもよい。この真空溶媒熱再生システムは、溶媒中の耐熱性塩化物(HSS)、分解生成物、および他の汚染物質の濃度が2重量%以上である間、それらを溶媒から除去するように操作される。この真空溶媒熱再生システムへ投入されたCO2リーン溶媒402は、原料生成物交換器404へ供給される。原料生成物交換器404は、再沸器408から送られる蒸気412で混合物を加熱することにより、その混合物の温度を摂氏40度から摂氏165度まで上昇させる。
【0068】
原料生成物交換器404から排出されたCO2リーン溶媒406は、その後、再沸器408へ通される。再沸器408は熱流体を内外で循環させ、溶媒の温度を摂氏165度から摂氏180度まで上昇させる。CO2回収溶媒からHSSと分解生成物とを遊離させる目的で、再沸器408の中に水酸化ナトリウムが追加されてもよい。ある実施形態では、操作の終了時点で残留物410が焼却炉へ送られ、廃棄されてもよい。混合物のうち蒸気成分412は、原料生成物交換器404を通して凝縮器416へ与えられる。蒸気成分412は液体418に凝縮された後、吸収装置へ送られる。真空溶媒熱再生システムは半回分モードで操作され、HSSと不純物とを再沸器408の中に集積させる。回分操作が完了した後、液面が低い場合、残留物410の廃棄を容易にする目的で、再沸器408の中に水が追加されてもよい。
【0069】
別の実施形態では、図4Bのブロック図4000に示されているように、ポンプから吐出されるCO2リーン溶媒4020が、真空溶媒熱再生システムに取り込まれてもよい。CO2リーン溶媒4020の温度は摂氏120度である。この真空溶媒熱再生システムは、溶媒中のHSS、分解生成物、および他の汚染物質の濃度が2重量%以上である間、それらを溶媒から除去するように操作される。この真空溶媒熱再生システムに投入されたCO2リーン溶媒4020は、再沸器4080へ供給される。
【0070】
再沸器4080は熱流体を内外で循環させ、溶媒の温度を摂氏120度から摂氏180度まで上昇させる。溶媒からHSSと分解生成物とを遊離させる目的で、再沸器4080の中に水酸化ナトリウム4200が追加されてもよい。ある実施形態では、再沸器4080の中に脱塩水4220が追加されてもよい。ある実施形態では、再沸器4080の中に中圧の蒸気4240が追加され、再沸器4080から中圧の蒸気4260が除去されてもよい。操作の終了時点では残留物4100が焼却炉へ送られ、廃棄される。混合物のうち蒸気成分4120は凝縮器4160へ通される。ある実施形態では、凝縮器4160の中に冷却水4300が加えられ、凝縮器4160から冷却水4320が除去されてもよい。蒸気成分4120は液体4180に凝縮された後、処理済みの溶媒として熱交換器を通して吸収装置へ送られてもよい(図示せず)。蒸気成分4120は真空ポンプ4280を通して吸収装置へ送られる。真空溶媒熱再生システムは半回分モードで操作され、HSSと不純物とを再沸器4080の中に集積させる。回分操作が完了した後、液面が低い場合、残留物4100の廃棄を容易にする目的で再沸器4080の中に水が追加されてもよい。
【0071】
固定式剥離塔の使用に比べ、RPB剥離装置の使用に固有な利点は、RPB剥離装置の中では混合の度合いが増す結果、より多量のCO2が液相から気相へ移動することにある。これにより、従来使用されていた剥離装置よりもずっと小型であるRPB剥離装置が使用可能である。煙道ガスからCO2を回収する上記のシステムおよび処理の使用には、更に次の利点がある。溶媒中の水分が少ないので、単位量のCO2の回収に必要なエネルギーが低い。CO2の回収率が高いので、CO2回収プラントの資本コストが低い。溶媒がO2に曝される時間が短いので、分解される溶媒の割合が低く、溶媒を補充する必要性が低い。中間段階での冷却により、溶媒に取り込まれるCO2の量が増えるので、単位量のCO2の回収に必要なエネルギーが低い。RPB吸収装置内の温度分布の均一性が高く、かつRPB吸収装置とRPB剥離装置との中に溶媒が滞在する時間が短いので、分解される溶媒の割合が低く、溶媒を補充する必要性が低い。
【0072】
煙道ガスからCO2を回収する上記のシステムおよび処理の使用には、更に次の利点がある。水洗装置と酸洗装置とが小型であるので、それらの資本コストが低い。RPB吸収装置、水洗装置、酸洗装置、および剥離装置が単一のシャフトに実装されることにより、資本コストが抑えられる。O2除去装置の資本コストが低い。RPB吸収装置内から温度の局所的な上昇が除去されるので、エアロゾルが形成される割合が低い。真空溶媒熱再生システムの使用により、分解される溶媒の割合が低く、回収される溶媒の割合が高い。
【0073】
図5は、ある実施形態による、煙道ガスからCO2を回収する処理のフローチャート500である。このフローチャート500を、先に説明した図面が開示する要素に関連付けて説明する。
【0074】
図5のフローチャート500は、煙道ガスからCO2を回収する処理に必要なシステムの基本設計概念、機能、および操作を示している。なお、別の実施形態には、ブロックの中に記載されている機能が、図面の中に示されている順序とは異なる順序で実行されるものもあることに注意すべきである。たとえば、図5では連続して示されている2つのブロックが、実際にはほぼ同時に実行されてもよく、それらのブロックが、関連する機能によっては逆の順序で実行される場合があってもよい。さらに、フローチャートにおける処理の記述またはブロックは、状態機械等のハードウェア構造によって行われる判断を表すものとして理解されるべきである。フローチャート500はステップ502から始まり、ステップ526まで進む。
【0075】
ステップ502では、システム内を洗浄水と酸性溶液とが循環し始める。ステップ504では、RPB吸収装置とRPB剥離装置とが回転を開始する。ステップ506では、再沸器と吸収装置の溶媒だめとに液状の溶媒が確保される。ステップ508では、再沸器に水蒸気が供給され、剥離装置の圧力が設定値に到達可能になる。ステップ510では、循環ポンプがCO2リッチ溶媒とCO2リーン溶媒との循環を開始する。ステップ512では、システムへの煙道ガスの流入が開始される。ステップ514では、RPB剥離装置からのCO2の出力が監視される。ステップ516では、RPB剥離装置から出力されるCO2が利用可能になった時点で、RPBO2除去装置が起動する。ステップ518では、煙道ガスの流れが停止する。ステップ520では、CO2の出力が止まるまでシステムが待機する。ステップ522では、再沸器への水蒸気の供給が停止する。ステップ524では、溶媒の循環が停止する。ステップ526では、RPB剥離装置、RPB吸収装置、水洗装置、酸洗装置、およびO2除去装置が停止する。
【0076】
図6は、ある実施形態によるRPB吸収装置の試作品を表すブロック図600である。この試作品は溶媒に対する実験を様々な条件下で行い、温度および流量を危険な箇所においても測定することができる。流量制御装置604を通過したCO2602を、流量制御装置612を通過した空気610に混ぜることにより、模擬煙道ガスが生成される。この模擬煙道ガスは、熱水源614を備えた加湿器606へ供給される。加湿器606での処理を終えた模擬煙道ガスの温度が、温度測定制御装置616によって測定される。その後、模擬煙道ガスはRPB吸収装置626へ供給される。このRPB吸収装置は内径が0.08m、外径が0.3mであり、径方向における充填層の深さが0.11mである。回転軸に沿った充填層の長さは0.02mである。RPB吸収装置626は、内径が0.36mであるポリプロピレンケースの中に収められている。RPB吸収装置626は、最高速が3000rpmである同期電動機によって駆動される。
【0077】
RPB吸収装置626にはアミン供給タンク608から溶媒が供給される。このタンク608の内部620では熱水システム622が、循環する熱水を利用して溶媒を加熱している。アミン供給タンク608からの溶媒の流量が流量計618によって測定され、アミン供給タンク608の温度が温度計628によって測定される。RPB吸収装置626から排出されたガス632の温度が温度計630によって測定され、そこから排出されたアミン636の温度が温度計634によって測定される。
実験例
実験例1:複数種の溶媒に対する動作条件の決定
【0078】
この実験例では、複数種の溶媒に対する動作条件が決定された。これらの動作条件は表1に示されている。
【0079】
溶媒の流量のある範囲と回転速度のある範囲とについて、CO2の吸収量が測定された。パラメーターの設定範囲は表1に示されている。
【表1】
【0080】
各実験では、供給されるCO2602が12モル%に保たれていた。この濃度は石炭燃料の煙道ガスの濃度と同程度である。液状の溶媒の温度は摂氏40度であった。CO2の回収処理において液ガス比は重要なパラメーターである。吸収装置にフラッディング(液状の溶媒が逆流する現象)が生じない限り、溶媒の流量が大きいほど、吸収装置が高い性能を示すからである。溶媒はCO2を少ししか吸収しないので、溶媒の増量と共に、剥離装置の負荷を増大させることが必要である。このことが考慮されることにより、溶媒の最適な流量が見出される。剥離装置の負荷の増大は、CO2の回収処理の遂行に必要なエネルギーを増大させる。表1に示されている実験結果からは必要な移動単位数(NTUOG)が計算可能である。30重量%のモノエタノールアミンに関する回転速度600rpm、液ガス比3.3の結果では、供給されるCO2が12.1%であり、排出されるCO2が9.1%であった。したがって、必要な移動単位数は
【数1】
さらに、充填層の高さは、ガス側の総括移動単位高さ(HTUOG)にガス側の総括移動単位数(NTUOG)を乗じた値に等しい。試作品の半径が0.11mであったので、充填層の高さは0.11mであり、NTUが0.28であったので、ガス側の総括移動単位高さは
【数2】
【0081】
ガス側の移動単位高さが0.39mであることがわかった。これは、ガス側の移動単位がRPB吸収装置では、固定式吸収装置よりもかなり縮小されることを示している。表2は、ある実施形態に従って5種類の溶媒で試した実験結果を示す。
【表2】
【0082】
各溶媒について複数の液ガス比と複数の回転速度とで実験が行われた。この実験は、600rpmで90%のCO2を回収するのに必要なRPB吸収装置のサイズを決定するための1つの方法を与えるものである。
実験例2:真空溶媒熱再生システムのシミュレーションによる、溶媒の回収量の最大化に必要な動作パラメーターの決定
【0083】
この実験例について、ある真空溶媒熱再生システムの実験結果が表3に示されている。稼働中のCO2回収プラントから得られた溶媒のサンプルが、実験用の設定で再生された。それにより再生された溶媒についての結果が、表3には示されている。さらに、感度分析についてシミュレーションが行われ、回収量が最大化し、かつ必要なエネルギーが最小化するように、動作パラメーターが最適化された。
【表3】
【0084】
この実験例では、ある真空溶媒熱再生システムのシミュレーションを用いて、溶媒CDRMaxの回収量の最大化に必要な動作パラメーターが決定された。表4は、ある実施形態に従って行われた、その真空溶媒熱再生システムのシミュレーションの結果を示す。表4には、摂氏165度、0.75bar(a)での最適な結果が表示されている。
【表4】
実験例3:摂氏40度における蒸気中のCO2の量と溶媒中のCO2の量(すなわち濃度)との間の関係
【0085】
この実験例では、摂氏40度における蒸気中のCO2の量と溶媒中のCO2の量(すなわち濃度)との間の関係が決定された。図7が示すグラフは、摂氏40度において蒸気中のCO2の分圧と溶媒中のCO2の量(すなわち濃度)との間に現れる気液平衡(VLE)関係を示すグラフである。
実験例4:CO2を取り込んでいない溶媒とCO2を取り込んだ溶媒との粘度
【0086】
この実験例では、CO2を取り込んでいない溶媒とCO2を取り込んだ溶媒との粘度が決定された。表5には、CO2を取り込んでいない溶媒とCO2を取り込んだ溶媒との、摂氏40度における粘度が示されている。
【表5】
表5では各値が重量%で表されている。各場合において、平衡を生じさせるのに脱塩水が使用されている。
実験例5:RPBの性能を高める目的でそのサイズを選択する方法論
【0087】
この実験例では、10体積%のCO2を含む「石炭系燃料」の煙道ガスから90%のCO2を回収して、1日あたり10tのCO2を回収可能なRPBのデザインが決定された。
【0088】
すなわち、この実験例では、実験で得られた関係を利用して、RPBの内径(di)、外半径(ro)、内半径(ri)、および軸方向の長さ(z)が決定された。これらのパラメーターは、RPBに必要な断面積と総容積との決定に利用された。
【0089】
RPBの内径(di)は、RPBが、液状の溶媒を分散させる機構用の空間を含む一方、RPBの動作中、過剰な速度のガスが溶媒を同伴することのないように選択された。
【0090】
RPBの軸方向の長さ(z)は、RPBにフラッディングを生じさせることなく、必要な量の物質を移動させるのには十分な体積を充填層に与えられる範囲の中から、許容可能な最小値に決定された。
【0091】
従来の固定式充填塔では、特定量の物質の移動に必要な充填層の高さ(H)が次式で決定される。すなわち、その高さ(H)は、ガス側の移動単位高さ(HTUOG)とガス側の移動単位数(NTUOG)との積である。
【数3】
【0092】
RPBでは、充填層に必要とされる条件が従来の固定式充填塔とは異なる。RPBの充填層は高さ方向に直線的ではないからである。したがって、次の類推が代用される。充填層の断面積(π(ro 2-ri 2))が、従来の固定式充填塔における充填層の高さ(H)に等価である。これは、ガス側の総括移動単位面積(ATUOG)とガス側の総括移動単位数(NTUOG)とを使って次式で表される。
【数4】
【0093】
充填層の断面積(π(ro 2-ri 2))を決定するには、ATUOGとNTUOGとの両方が既知でなければならない。これらは次式を用いて実験的に導出可能である。ここで、yinは、供給されるガスに含まれる吸収対象成分のモル分率であり、youtは、排出されるガスに含まれる吸収対象成分のモル分率であり、QGはガスの体積流量であり、zはRPBの軸方向の長さであり、KGaはガス側の物質移動係数である。
【数5】
【0094】
この実験例では、溶媒の試用がRPB吸収装置の試作品を使って行われた。実際のCO2回収プラントにおいて想定される状態をシミュレーションする目的で、CO2リーン溶媒として、CO2濃度が溶媒のアルカリ度1モルあたり0.1モルであるものが使用された。その結果、使用可能なCO2回収プラントの典型的な状態の下でガス側の物質移動係数が測定された。
【0095】
この実験例における溶媒の試用では、ガス側の物質移動係数の算出が必要であった。充填層の断面積、軸方向の長さ、およびガスの体積流量は既知であり、供給されるガスに含まれるCO2のモル分率(yin)と、排出されるガスに含まれるCO2のモル分率(yout)との両方が測定された。
【0096】
この実験例では、対象の溶媒のKGa値を使って、CO2濃度が10体積%である煙道ガスから90%のCO2を回収することが可能な充填層の径方向における深さが決定された。
実験例6:1日あたり1tのCO2を回収するRPBのサイズ
【0097】
この実験例では、1日あたり1tのCO2の回収を目標とするRPBのサイズが決定された。
【表6】
表6が示すとおり、RPB吸収装置、剥離装置の寸法はすべて1m未満である。このように、RPB吸着装置、剥離装置は比較的小さく、コンパクトである。
実験例7:1日あたり10tのCO2を回収するRPBのデザイン
【0098】
この実験例では、CO2濃度が10体積%である煙道ガスから回収率90%で1日あたり10tのCO2の回収を目標とするRPBのデザインが決定された。
【0099】
図8は、CO2を回収するシステム1200を示す。このシステム1200は、1日あたり10tのCO2を回収するのに利用される。図8内の実線は液状の溶媒の通路を示し、破線はガスの通路を示す。
【0100】
この実験例では、システム1200の入口に煙道ガス1201が入る。この煙道ガス1201は10体積%のCO2を含み、温度が摂氏140度である。煙道ガス1201はシステム1200へ入った後、ファン1202を通過する。このファン1202は、配管内と下流の処理とで生じる圧力低下を打開する目的で必要とされてもよい。
【0101】
この実験例では、CO2を回収するシステム1200において2つの操作が行われた。
【0102】
第1の操作では、煙道ガス1201が直接接触式冷却器(DCC)1203の中で冷却される。この冷却には、DCCのドラム1204、循環ポンプ1205、および熱交換器1206を通して循環する水が使用される。DCC1203はRPBであってもよい。冷却に使用される水は、熱交換器1206の中で冷却される。煙道ガス1201の中の余分な凝縮液は出口1207から排出される。
【0103】
第2の操作では、SOx塔1208が、アルカリ洗浄によってSOx、NOx等の酸性ガスを除去するのに使用される。SOx塔1208はRPBであってもよい。SOx塔のドラム1209、循環ポンプ1210、および冷却器1211を通して水が循環している。この水にはアルカリ成分1212が、ポンプ1213を使って投与されている。この水はSOx塔1208の中で煙道ガス1201と接触する。余分な液は循環路から出口1214を通して排出される。
【0104】
その後、煙道ガス1201がCO2吸収装置1215を通過する。このCO2吸収装置1215はRPBである。煙道ガス1201はCO2回収溶媒と向流接触する。CO2吸収装置1215は、内部で煙道ガス1201とCO2回収溶媒とが接触する充填層を2つ含む。これらの充填層の間ではCO2回収溶媒の温度が中間冷却用熱交換器によって制御される。この熱交換器は、熱交換器1218、ポンプ1217、およびドラム1216で構成されている。煙道ガス1201は、CO2が枯渇した状態でCO2吸収装置から出され、水洗装置1219へ通される。水洗装置1219はRPBであってもよい。CO2回収溶媒は、CO2の含有率が高い状態でCO2吸収装置から出され、CO2リッチ溶媒用のドラム1220へ通される。CO2回収溶媒は、このドラム1220からCO2リッチ溶媒用の昇圧ポンプ1221を経由してO2除去装置1222へ入る。
【0105】
この実験例では、CO2が枯渇した状態の煙道ガス1201が水洗装置1219へ入る。この水洗装置1219の中では煙道ガス1201が、2つの水洗用充填材1223、1226(直列に配置されている。)を通して循環する2本の水流と接触する。各充填材1223、1226を通る水は洗浄水用のポンプ1224、1227によって循環し、熱交換器1225、1228によって冷却された後、水洗装置1219へ戻される。こうして処理された煙道ガス1201は、出口1229から排出される。
【0106】
この実験例では、CO2回収溶媒が、CO2の含有率が高い状態でO2除去装置1222へ入る。O2除去装置1222はRPBであってもよい。O2除去装置1222の中ではCO2回収溶媒がCO2の流れと接触する。CO2のその流れと、それに同伴されるO2とは、CO2吸収装置1215へ戻される。CO2回収溶媒は、O2が除去された後、サージドラム1230、CO2リッチ溶媒用ポンプ1231、およびクロスオーバー熱交換器1232を通して剥離装置1233の中へ圧送される。クロスオーバー熱交換器1232とCO2吸収装置1215との間にはCO2リーン溶媒用冷却器1242が設置されていてもよい。
【0107】
この実験例では、再沸器1238の中で生成された蒸気が剥離装置1233へ供給されて、CO2回収溶媒を加熱し、その中からCO2を剥ぎ取るのに利用される。剥離装置1233はRPBであってもよい。蒸気は、水蒸気、気化した溶媒成分、およびCO2ガスで構成されており、剥離装置1233から還流交換器1234へ入る。その中では蒸気の温度が摂氏120度から摂氏40度まで降下する。これにより、水蒸気と溶媒成分とが液相へ凝縮する。その後、水蒸気は還流タンク1235へ通される。その中では、ガス状のCO2が液体成分から解放される。その後、液体成分は還流としてCO2回収処理へ戻される。還流が還流ポンプ1236によって剥離装置1233へ圧送される一方、CO2は、純度が95%を超える流れとなって、出口1237から還流交換器1234の外へ出される。CO2のこの流れはO2除去装置1222へ戻され、O2除去処理においてパージガスとして利用される。
【0108】
この実験例では、剥離装置の作動圧力が1バール(g)であり、再沸器へ入れられた水蒸気の動作時における圧力(飽和水蒸気圧)が3.5バール(g)であった。剥離装置、再沸器、還流交換器、還流タンク、水蒸気系統、および凝縮液系統の設計圧力は10バール(g)であった。
【0109】
この実験例では、CO2回収溶媒が(もはやCO2を含んでいない状態で)剥離装置1233から出て再沸器1238を通過し、CO2リーン溶媒用ポンプ1239を使って加圧されてクロスオーバー熱交換器1232を通り、CO2リーン溶媒用冷却器1242を経由してCO2吸収装置1215へ戻る。
【0110】
この実験例では、DCC1203、SOx塔1208、および水洗装置1219が別々のRPBのシャフトに配置されている。
実験例8:RPBを処理に利用する設備のサイズの選択
【0111】
この実験例では、従来技術による固定式充填層のサイズの選択に、(Optimized Gas Treating社製の)ProTreat(登録商標)等の工程シミュレーションソフトウェアが利用された。一方、RPBを利用する設備のサイズの選択には実験例5の方法論が採用された。
【0112】
表7は、CO2濃度が10体積%である煙道ガスから1日あたり10tのCO2を回収可能な設備の寸法を、RPBを利用する場合と従来の固定式充填層を利用する場合との間で比較したものである。
【表7】
【0113】
表7が示す、RPBを利用する設備の寸法データと、従来の固定式充填層を利用する設備の寸法データとを比較すると、CO2の回収率90%を達成するのに必要な充填層の体積は、RPBを利用する設備の方が、1桁、またはその近くまで低減している。
実験例9:RPBを含むシステムにおいて補助的な処理を行う設備のサイズの選択
【0114】
この実験例では、(Optimized Gas Treating社製の)ProTreat(登録商標)等の工程シミュレーションソフトウェアを使って、RPBを利用する実験例8による設備のサイズが選択された。
【0115】
表8、9、10は、RPBを利用して、CO2濃度が10体積%である煙道ガスから1日あたり10tのCO2を回収することが可能なプラントに含まれる設備の仕様を示す。特にこれらの表には、そのようなプラントに必要なポンプ、ファン、熱交換器、およびタンクの仕様が示されている。
【表8】
【表9】
【表10】
【0116】
以上の実施形態が示すように、RPBを利用する設備がCO2の回収率90%を達成するのに必要な充填層の体積は、1桁、またはその近くまで低減している。この事実は、設備投資額の削減と、CO2の回収性能を同程度以上にするサイズの低減とに繋がるので、有益である。上記の実施形態について説明したとおり、RPBの利用からは、既知のシステムを超える利益が得られる。
【0117】
以上、本発明の実施形態とその有利な効果とについて詳細に説明した。しかし、その実施形態に様々な変更、置換、および修正を加えることが、添付の請求の範囲で定義される発明の技術的範囲を逸脱することなく可能であることは理解されるべきである。さらに、上記の説明の意図は、本発明が利用する処理、機械、製法、物質の成分、方法、およびステップの例を、明細書に記載されている特定の例に限定することにはない。明細書に開示された内容から直ちに理解されるように、上記の例と実質的に同じ機能を発揮し、もしくは実質的に同じ効果を与える既存の、もしくは後発の処理、機械、製法、物質の成分、方法、またはステップが本発明に利用されてもよい。したがって、そのような処理、機械、製法、物質の成分、方法、またはステップが本発明の技術的範囲に属することを、添付の請求の範囲は意図している。
【0118】
「備える」、「有する」、「含む」、およびそれらの類義語は、この明細書と添付の請求の範囲とで使用される場合、特定の特徴、ステップ、または数が含まれることを意味する。しかし、これらの語は、他の特徴、ステップ、または要素の存在を排除するものとして解釈されるべきではない。
【0119】
必要に応じ、上記の説明、添付の請求の範囲、または添付の図面において特定の形状で表現されている特徴、特定の機能を発揮する手段として開示されている特徴、または特定の効果を与える方法もしくは処理として開示されている特徴が、他の特徴とは別に、または他の特徴と様々に組み合わされて利用されることにより、本発明が多様な形態で実現されてもよい。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8