(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】クレーン機構
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20240328BHJP
E21F 13/02 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
E21D11/40 C
E21F13/02
(21)【出願番号】P 2021001527
(22)【出願日】2021-01-07
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英典
(72)【発明者】
【氏名】川内 大輔
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-125893(JP,A)
【文献】特開平11-336489(JP,A)
【文献】特開2006-214186(JP,A)
【文献】特開2006-009343(JP,A)
【文献】特開平11-324600(JP,A)
【文献】実開昭64-001163(JP,U)
【文献】特開平09-077463(JP,A)
【文献】特開2006-342574(JP,A)
【文献】特開2001-107700(JP,A)
【文献】特開2018-159244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/40
E21F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機の後方において、内面中央部に把持孔の形成された六角形セグメントで構築されたシールド坑に設置されるクレーン機構であって、
前記シールド坑の延伸方向に沿って設置された複数のレール支持体と、
複数の前記レール支持体に架設され、搬送機が走行可能なホイストレールとを有し、
前記レール支持体は、前記六角形セグメントの複数の前記把持孔に固定されて前記シールド坑の内壁に沿って設置されている、
ことを特徴とするクレーン機構。
【請求項2】
前記レール支持体は、
相対的に上方に位置する1カ所の前記把持孔に固定されて前記シールド坑の上下方向に延びて前記ホイストレールを支持するアーム部、および相対的に下方に位置する2カ所の前記把持孔に固定されて前記アーム部の下側端面を支持する支持部を備える、
ことを特徴とする請求項1記載のクレーン機構。
【請求項3】
前記支持部は、
相対的に下方に位置する2カ所の前記把持孔に固定されて横方向に延びる横行竿と、
前記アーム部の下側端面と前記横行竿の両端との間にそれぞれ斜めに配置された2本の斜行竿とを備える、
ことを特徴とする請求項2記載のクレーン機構。
【請求項4】
前記アーム部は、前記シールド坑の内壁面に沿って湾曲して形成され、
前記斜行竿は、前記シールド坑の内壁面との間に隙間を形成するように直線状に形成されている、
ことを特徴とする請求項3記載のクレーン機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン機構に関し、特に、シールド工法により構築されたシールド坑内に設置されるクレーン機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は、切羽の安定を図りながら切羽に押し当てられたカッタ盤を回転させることにより地山を掘削する一方、掘削された坑の内周にセグメントを環状に組み立てることによりシールド坑(トンネル)を構築する機器である。
【0003】
このようなシールド工法においては、畜電車のバッテリやケーブル類などを搬送するために、シールド坑内にクレーン機構が設置される。そして、例えば設置されたクレーン機構にバッテリを吊って予備置き場に運んでストックしておくことで坑内でバッテリ交換が行えるようにし、立坑下において天井クレーンを使用してバッテリ交換を行う場合よりも短時間で交換作業を行えるようにしている。
【0004】
シールド坑内にクレーン機構を設置する場合には、例えば特開2006-009403号公報に記載のように、門型の架台間に、ホイストやチェーンブロックなどの搬送機が走行するホイストレールを掛け渡す門型構造の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、シールド坑の内径が小さい(例えば、5000mm以下)場合、前述した門型構造のクレーン機構ではホイストレールの設置高さが低くなってしまうために、搬送機の吊り代を確保することができない場合が発生する。
【0007】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、小径のシールド坑であっても搬送機の吊り代を確保することが可能なクレーン機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載のクレーン機構は、シールド掘進機の後方において、内面中央部に把持孔の形成された六角形セグメントで構築されたシールド坑に設置されるクレーン機構であって、前記シールド坑の延伸方向に沿って設置された複数のレール支持体と、複数の前記レール支持体に架設され、搬送機が走行可能なホイストレールとを有し、前記レール支持体は、前記六角形セグメントの複数の前記把持孔に固定されて前記シールド坑の内壁に沿って設置されている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の本発明のクレーン機構は、請求項1記載の発明において、前記レール支持体は、相対的に上方に位置する1カ所の前記把持孔に固定されて前記シールド坑の上下方向に延びて前記ホイストレールを支持するアーム部、および相対的に下方に位置する2カ所の前記把持孔に固定されて前記アーム部の下側端面を支持する支持部を備える、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の本発明のクレーン機構は、請求項2記載の発明において、前記支持部は、相対的に下方に位置する2カ所の前記把持孔に固定されて横方向に延びる横行竿と、前記アーム部の下側端面と前記横行竿の両端との間にそれぞれ斜めに配置された2本の斜行竿とを備える、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載のクレーン機構は、請求項3記載の発明において、前記アーム部は、前記シールド坑の内壁面に沿って湾曲して形成され、前記斜行竿は、前記シールド坑の内壁面との間に隙間を形成するように直線状に形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬送機が走行可能なホイストレールを支持するレール支持体が、六角形セグメントの複数の把持孔に固定されてシールド坑の内壁に沿って設置されているので、ホイストレールを高い位置に設置することができ、小径のシールド坑であっても搬送機の吊り代を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態であるシールド掘進機の後胴部の内部を側面から透かして見た構成図である。
【
図2】
図1のシールド掘進機に設けられたエレクタ装置を後方から見た図である。
【
図3】本実施の形態で組み立てられる六角形セグメントの平面図である。
【
図6】
図3の六角形セグメントを組み立てて構築されたリング状のシールド坑を側面から示す図である。
【
図7】本実施の形態のシールド坑の内部を側面から透かして示す説明図である。
【
図8】本実施の形態のシールド坑の内部を平面から透かして示す説明図である。
【
図9】クレーン機構を構成するレール支持体のシールド坑に対する固定の態様を示す説明図である。
【
図10】クレーン機構の要部をトンネルの側面から見た図である。
【
図11】クレーン機構をシールド坑の径方向断面で示した断面図である。
【
図12】(a)はクレーン機構を構成するアーム部の側面図、(b)はクレーン機構を構成するアーム部をトンネルの側面から見た図である。
【
図13】(a)はクレーン機構を構成するホイストレールの側面図、(b)はクレーン機構を構成するホイストレールの正面図である。
【
図14】本実施の形態の変形例としてのクレーン機構を構成するレール支持体のシールド坑に対する固定の態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
図1に示す本実施の形態のシールド掘進機Mは、カッタヘッドで掘削されてチャンバ内に取り込まれた土砂に粘性を有する泥水を注入して泥水圧を発生させ、その泥水圧を切羽の土圧に対抗させた状態で掘削坑を構築する泥水式のシールド掘進機である。シールド掘進機Mは、連結胴部10を介して互いに連結された前胴部(図示せず)および後胴部11aからなる筒状のシールドフレーム11を有している。
【0016】
図示は省略されているが、前胴部には、地盤を掘削する複数のビットを備えたカッタヘッドが進行方向先端に回転可能に設置され、その後方には、シールドフレーム11の内部をチャンバ側と機内側とに区画する隔壁が当該シールドフレーム11に固定されて設けられている。そして、カッタヘッドと隔壁との間が、カッタヘッドで掘削された土砂が取り込まれるチャンバになっている。また、隔壁には、チャンバ内の泥水を排出するための排泥管の前端開口部、およびチャンバ内に粘性を有する泥水を供給するための送泥管の前端開口部が形成されている。
【0017】
さて、
図1に示すように、後胴部11aの前端部内周面には、六角形セグメントSGを環状に組み立てたシールド坑SLをシールドフレーム11の後方に向けて押し出して当該シールドフレーム11を前方に進めるための推進ジャッキ(図示せず)の反力をとるリングガーダ12が設置されている。このリングガーダ12には、六角形セグメントSGを組み立てて掘削坑の内周面を覆うシールド坑SLを構築するエレクタ装置13が設けられている。なお、本実施の形態では、このように六角形セグメントSGが用いられるが、その詳細については後述する。
【0018】
シールドフレーム11を構成する後胴部11aの進行方向後端部の内周面には、鋼製のワイヤや発泡ウレタンなどからなる複数本のテールブラシ14が、当該進行方向に対して間隔を開けて環状に設けられている。テールブラシ14は、シールド坑SLの外周面と接触するような長さで内方に延びており、シールドフレーム11の内周面とシールド坑SLの外周面との間に、シール材が充填されるシール室14aを形成する。
【0019】
さて、
図1および
図2において、エレクタ装置13は、リングガーダ12の後部に設置されたエレクタリング13a、エレクタリング13aに取り付けられた支持ユニット13b、および支持ユニット13bに支持されて六角形セグメントSGを把持する機能を備えたセグメント把持ユニット13cとを備えている。
【0020】
エレクタリング13aは、外周にギア13aaが形成されており、当該ギア13aaがリングガーダ12内に設置されたエレクタモータ13dの出力軸に取り付けられた駆動ギア13daと噛み合うことでエレクタリング13aが駆動され、シールドフレーム11の周方向に旋回するようになっている。
【0021】
支持ユニット13bは、エレクタリング13aの旋回中心を挟んで左右一対に設けられている。この支持ユニット13bは、エレクタリング13aに固定されて上下に開口した支持筒13baと、シールドフレーム11の軸方向に延びるエレクタアーム部13bbと、エレクタアーム部13bbと直角をなすように当該エレクタアーム部13bbの一方端に固定されるとともに支持筒13baに摺動可能に嵌め込まれたロッド13bcとを備えている。
【0022】
また、支持筒13baとエレクタアーム部13bbとの間には、ロッド13bcを摺動させて支持ユニット13bをシールドフレーム11の軸方向と交差する方向に往復動させる伸縮ジャッキ13bdが取り付けられている。さらに、左右一対になったエレクタアーム部13bbには、セグメント把持ユニット13c(詳しくは、セグメント把持ユニット13cのフレーム部13ca)が摺動可能に嵌め込まれており、セグメント把持ユニット13cと伸縮ジャッキ13bdとの間には、当該セグメント把持ユニット13cをエレクタアーム部13bbに沿って往復動させるスライドジャッキ13beが取り付けられている。
【0023】
セグメント把持ユニット13cの前述したフレーム部13caは、正面視で下方に湾曲した形状を呈しており、一対のエレクタアーム部13bbに跨がって設置されて当該エレクタアーム部13bbに沿って往復動可能となっている。フレーム部13caの中央には、六角形セグメントSGを把持する把持部13cbが揺動可能に取り付けられている。
【0024】
さらに、フレーム部13caには、先端で把持部13cbを押して揺動させる一対の揺動ジャッキ13ccが、把持部13cbの揺動支点の両側に配置されている。
【0025】
把持部13cbは、センタピン13cb1に固定されて揺動支点と同軸上に設けられて六角形セグメントSGを吊り下げる吊下部13cb2と、揺動支点の両側に配置されて吊下部13cb2に吊り下げられた六角形セグメントSGの内面を押圧するサポートジャッキ13cb3とを備えている。このサポートジャッキ13cb3は、揺動支点の両側にそれぞれ2台ずつ、合計4台配置されている。
【0026】
吊下部13cb2は、六角形セグメントSGの内面中央に形成された把持孔H1に嵌め込まれたアンカロッド15と係合して当該六角形セグメントSGを吊り下げるようになっており、アンカロッド15が水平方向から進入してアンカロッド15の先端に形成されたフランジ15aを係止する係合溝を備えている。吊下部13cb2で吊り下げられた六角形セグメントSGの内面をサポートジャッキ13cb3で押圧することにより、六角形セグメントSGは把持部13cbに拘束された状態で把持される。
【0027】
ここで、トンネルの施工に用いられる本実施の形態の六角形セグメントについて、
図3~
図5を用いて説明する。
【0028】
これらの図面に示すように、六角形セグメントSGは、トンネル周方向に湾曲して平面視で六角形状に形成されており、相互に対向して形成されて平面視で平行になった2つの長辺接合部J1、および長辺接合部J1の両側に突出形成されたV字状の傾斜接合部J2を有している。また、内面の中央部には、前述したエレクタ装置13の把持部13cbで把持されるときのアンカロッド15(
図1,2)が挿入される把持孔H1が形成されている。
【0029】
六角形セグメントSG内には、傾斜接合部J2の一方の傾斜面と平行に、斜辺間継手ボルトが貫通するシース管Tが埋設され、一方の長辺接合部J1には、斜辺間継手ボルトを締め付けるための締付孔H2がシース管Tと連続して形成されている。また、傾斜接合部J2の他方の傾斜面と平行に、接合される他の六角形セグメントSGのシース管Tを貫通した斜辺間継手ボルトとねじ結合するインサートアンカF1が埋設されている。さらに、他方の長辺接合部J1から内部に向けて、六角形セグメントSGを吊す際に用いられる吊り用インサートF2が埋設されている。
【0030】
そして、六角形セグメントSGの外周面には、他の六角形セグメントSGと凹凸嵌合して位置合わせを行うための部位として、凹部であるリング間ソケットR1ならびに凸部であるリング間プラグR2が形成されている。
【0031】
なお、六角形セグメントSGは、本実施の形態では鉄筋コンクリート製であるが、鋼製であってもよい。
【0032】
そして、把持部13cbのアンカロッド15を把持孔H1に挿入してサポートジャッキ13cb3で六角形セグメントSGの内面を押圧することで当該六角形セグメントSGを把持した状態でエレクタリング13aを所定の角度まで旋回させ、ロッド13bcを伸長させるとともにセグメント把持ユニット13cの位置を調整することで、六角形セグメントSGがセグメント取付位置に嵌め込まれる。そして、この状態を保持したままで、新たに設置される六角形セグメントSGと既設の六角形セグメントSGとをボルトで締結することで、六角形セグメントSGの組み付け作業が完了する。
【0033】
このような六角形セグメントSGを掘削坑の周方向に千鳥状に組み立てて、
図6に示す環状のシールド坑SLが構築される。シールド坑SLにおいて、六角形セグメントSGの長辺接合部J1が掘削坑の前後(つまり、切羽側と坑口側)を向くように配置されており、前後方向に位置する六角形セグメントSGにおける傾斜接合部J2同士が交互に連結されることで、切羽に近い凸部と、この凸部から六角形セグメントSGの半分の幅分窪んだ台形状の凹部とが周方向に沿って交互に形成(凹凸形成)される。そして、形成された凹部に次の六角形セグメントSGの前半部を軸挿入して嵌合されている。
【0034】
次に、このようにして構築された本実施の形態のシールド坑の内部構造およびシールド坑内に設けられたクレーン機構30について、
図7および
図8を用いて説明する。ここで、
図7は本実施の形態のシールド坑の内部を側面から透かして示す説明図、
図8は本実施の形態のシールド坑の内部を平面から透かして示す説明図である。
【0035】
本実施の形態のシールド坑SLの内径は例えば4900mmであり、これらの図面において、坑内の低い位置(例えば内壁最下部から900mmの高さ)には、例えばH形鋼からなり横断方向に掛け渡された横桁20が、シールド坑SLの延伸方向に沿って一定の間隔おきに設置されている。そして、横桁20の上には作業用の足場になる覆工板21が敷き詰められ、また、台車22等が走行するためのレール23が敷設されている。レール23は、立坑側が複線になっており、切羽側の途中位置で一方のレール23aが切替ポイント24を介して他方のレール23bに合流して単線になっている。
【0036】
レール23の合流地点の前後所定長(例えば18000mm)に渡って、荷の上げ下げを行う電気ホイストや電動チェーンブロックなど搬送機25が走行可能な走行梁であるホイストレール32が設けられている。このホイストレール32は例えばI(アイ)形鋼からなり、搬送機25は当該I形鋼の下フランジに吊り下げられた状態で走行する。なお、本実施の形態においてホイストレール32は直線形であるが、曲線形やループ形などであってもよい。
【0037】
ホイストレール32はシールド坑SLの幅方向の片側に寄せて(例えば径方向中心から1200mm片側に寄せて)坑内の高い位置(例えば横桁から2800mmの高さ)に設置されており、全長の約半分は合流側のレール23aの直上となり、残りの約半分はレール23の存在しないエリア(バッテリ置き場:ストックヤード)の直上となっている。
【0038】
なお、本実施の形態においては、坑外でフル充電されたバッテリ22aを台車22でホイストレール32の位置まで運搬し、そこで搬送機25で吊り上げてバッテリ置き場まで運搬してストックしておく。そして、後続台車を牽引する畜電車(図示せず)のバッテリが少なくなった場合に、当該畜電車をバッテリ置き場まで移動させてストックされているフル充電されたバッテリ22aと交換するようにしている。これにより、地上の天井クレーンを使用して立坑下でバッテリ交換作業を行う必要がなくなり、蓄電車の移動距離を短くすることで、天井クレーンの作業に余裕を持たせるとともに、シールド掘進機の掘進サイクルタイムの短縮化を図っている。なお、本実施の形態では、搬送されるバッテリの重量は、例えば2.7tである。
【0039】
また、本実施の形態では、搬送機25でバッテリを搬送しているが、被搬送物はバッテリに限定されるものではなく、例えばポンプの予備部品等様々なものがある。したがって、ストックヤードもバッテリ置き場である必要はなく、様々な資材置き場として利用することが可能である。
【0040】
さて、
図7に示すように、本実施の形態のシールド坑SLには、搬送機25が走行するホイストレール32を含んだクレーン機構30が設置されている。
【0041】
このクレーン機構30は、前述した六角形セグメントSGで構築されたシールド坑SLと、シールド坑SLの延伸方向に沿って所定間隔(例えば6000mm)おきに設置された複数のレール支持体31と、これら複数のレール支持体31に架設されて、搬送機25が走行可能な前述のホイストレール32とを有している。なお、本実施の形態では、ホイストレール32の全長が18000mmで、レール支持体31の間隔が6000mmであることから、レール支持体31は4台設置されている。但し、ホイストレール32の全長やレール支持体31の間隔およびそれに伴うレール支持体31の設置数は本実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて自由に設定することができる。
【0042】
次に、シールド坑SLに設置されたクレーン機構30について、
図9~
図14を用いて説明する。ここで、
図9はクレーン機構を構成するレール支持体のシールド坑に対する固定の態様を示す説明図、
図10はクレーン機構の要部をトンネルの側面から見た図、
図11はクレーン機構をシールド坑の径方向断面で示した断面図、
図12(a)はクレーン機構を構成するアーム部の側面図、
図12(b)はクレーン機構を構成するアーム部をトンネルの側面から見た図、
図13(a)はクレーン機構を構成するホイストレールの側面図、
図13(b)はクレーン機構を構成するホイストレールの正面図である。
【0043】
前述したように、シールド坑SLを構成する六角形セグメントSGの内面中央部には、シールド坑SLの構築作業時において、エレクタ装置13の把持部13cbで把持されるときのアンカロッド15が挿入される把持孔H1が形成されている。そこで、
図9に示すように、ボルトB(
図11)によってレール支持体31を把持孔H1に固定することにより、当該レール支持体31はシールド坑SLの内壁に沿って設置されている、
【0044】
図9において、レール支持体31は、相対的に上方に位置する1カ所の把持孔H1に固定されてシールド坑SLの上下方向に延び、搬送機25が走行するホイストレール32を支持するアーム部31aと、相対的に下方に位置する2カ所の把持孔H1に固定されてアーム部31aの下側端面を支持する支持部31bとを備えている。また、支持部31bは、前述した相対的に下方に位置する2カ所の把持孔H1に固定されて横方向に延びる横行竿31baと、アーム部31aの下側端面と横行竿31baの両端との間にそれぞれ斜めに配置された2本の斜行竿31bbで構成され、全体として三角形を形成している。
【0045】
図10および
図11において、アーム部31aは溝形鋼で形成されており、ウェブ31aaが壁面に当たるようにしてシールド坑SLの内壁面に沿って湾曲している。
図12に詳しく示すように、アーム部31aの上下端部および長さ方向の略中央に形成されたボルト止め孔31a-1の上下には、補強用の横リブ31a-2が溶接されている。このアーム部31aの上部には、ホイストレール32を吊した状態で支持するための垂下金具31a-3が鉛直方向を向くように溶接されている。一方、
図13に示すように、ホイストレール32の上フランジ32aには、垂下金具31a-3の図示しないボルト孔に対応したボルト孔33aが形成された固定金具33が、シールド坑SLの延伸方向に沿って設置されたレール支持体31の間隔と等間隔に溶接されている。したがって、ホイストレール32を持ち上げて垂下金具31a-3のボルト孔と固定金具33のボルト孔33aとを位置合わせしてボルト止めすることで、ホイストレール32がレール支持体31に架設される。
【0046】
さて、
図10および
図11において、支持部31bも溝形鋼で形成されているが、アーム部31aよりも幅が狭く、高さも低い溝形鋼が選定されている。前述のように、支持部31bは1本の横行竿31baと2本の斜行竿31bbとで三角形を形成しており、三角形の上部頂点である2本の斜行竿31bbの上端部に溶接された接合リブがアーム部31aの下端部に設けられた横リブ31a-2とボルト接合されている。また、2本の斜行竿31bbの下端部が、2カ所の把持孔H1に固定された横行竿31baの両端部にそれぞれ溶接されている。
【0047】
なお、斜行竿31bbは、シールド坑SLの内壁面との間に隙間を形成するように直線状に形成されている。これは、斜行竿31bbはシールド坑SLの内壁面に対して斜めになっているため、シールド坑SLの内壁面に接するように構成すると、アーム部31aの荷重により曲げモーメントが生じて座屈しやすくなるからである。但し、斜行竿31bbをシールド坑SLの内壁面に接触するように設置してもよい。
【0048】
さて、本実施の形態のクレーン機構30では、前述のように、シールド坑SLの延伸方向に沿って設置された複数のレール支持体31が、シールド坑SLを構成する六角形セグメントSGの把持孔H1に固定されてシールド坑SLの内壁に沿って設置されている。そして、このような複数のレール支持体31に、搬送機25が走行可能なホイストレール32が架設されている。
【0049】
したがって、シールド坑SLの内径が小さい場合であっても、門型構造のクレーン機構に比較して、搬送機25が走行するホイストレール32を高い位置に設置することができる。本実施の形態では、内径が4900mmのシールド坑SLに対して、横桁から2800mmという高い位置にホイストレール32を設置することができる。これにより、搬送機25の吊り代を確保することが可能になり、畜電車のバッテリのように比較的大型の資材設備を搬送機25で搬送することができる。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0051】
例えば、本発明のレール支持体は複数の把持孔H1に固定されてシールド坑SLの内壁に沿って設置されていれば足り、本実施の形態に示すレール支持体31に限定されるものではない。すなわち、本実施の形態では、支持部31bは1本の横行竿31baと2本の斜行竿31bbとで三角形を形成しているが、
図14に示すように、斜行竿31bbの下端部を把持孔H1にボルト止めすることにより、横行竿31baを省略するようにしてもよい。あるいは、アーム部31aを横行竿31baの位置まで延ばし、斜行竿31bbを省略して、アーム部31aを横行竿31baのみで支持するようにしてもよい。
【0052】
また、本実施の形態ではトンネル切羽方向を向いた状態に対して左側のみに設置する場合について説明したが、右側にのみ設置してもよく、左右両方に設置してもよい。
【0053】
さらに、前述した様々な数値、寸法は一例であり、本発明がこれらの数値や寸法に限定されないことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、内面中央部に把持孔(シールド坑の構築時にエレクタで把持するための孔)が形成された六角形セグメントを環状に組み立てて構築されたシールド坑に設置されるクレーン機構である。したがって、シールド掘進機については、泥土圧シールド掘進機であっても泥水式シールド掘進機であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
11 シールドフレーム
13 エレクタ装置
13c セグメント把持ユニット
20 横桁
21 覆工板
22 台車
22a バッテリ
23,23a,23b レール
24 切替ポイント
25 搬送機
30 クレーン機構
31 レール支持体
31a アーム部
31a-1 ボルト止め孔
31a-2 横リブ
31a-3 垂下金具
31aa ウェブ
31b 支持部
31ba 横行竿
31bb 斜行竿
32 ホイストレール
32a 上フランジ
33 固定金具
33a ボルト孔
H1 把持孔
M シールド掘進機
SG 六角形セグメント
SL シールド坑