(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】土地評価額算出装置、土地評価額算出方法および土地評価額算出プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20240101AFI20240328BHJP
【FI】
G06Q50/16
(21)【出願番号】P 2021006410
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2020056641
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 勝也
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【審査官】貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】特許第3590052(JP,B1)
【文献】特開2004-145874(JP,A)
【文献】特開2003-108707(JP,A)
【文献】特開2001-249989(JP,A)
【文献】特開2001-357116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備える土地評価額算出装置であって、
前記制御部は、
正面路線、側方路線、地区区分および年度毎に設定された路線価格を含む路線価格テーブル
、ならびに、正面路線、側方路線、地区区分および年度毎に設定された時点修正率を含む時点修正率テーブルから、評価対象となる土地についての指定された
正面路線又は側方路線および地区区分ならびに評価対象となる指定された年度と紐づく路線価格および時点修正率を取得する取得手段と、
前記取得手段で取得した
路線価格に時点修正率を乗算処理することで、前記指定された
正面路線又は側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正前の路線価格を算出する補正前路線価格算出手段と、
前記補正前路線価格算出手段で算出した前記指定された
正面路線又は側方路線および地区区分の単位面積あたりの補正前の路線価格に対して、所定の補正要素
である少なくとも奥行価格補正率及び路線影響加算率を乗算処理することで、前記指定された
正面路線又は側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を算出する補正後路線価格算出手段と、
前記補正後路線価格算出手段で算出した前記指定された
正面路線又は側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を合算することにより、前記評価対象となる土地についての単位面積あたりの土地評価額を算出する単位土地評価額算出手段と、
前記単位土地評価額算出手段で算出した前記単位面積あたりの土地評価額に、前記評価対象となる土地の面積を乗じることにより、前記評価対象となる土地についての土地評価額を算出する土地評価額算出手段と、
を備えること、
を特徴とする土地評価額算出装置。
【請求項2】
前記時点修正率テーブルには、
前記時点修正率が2つ以上設定されており、当該設定された2つ以上の時点修正率は、前記地区区分および前記年度が同一であるが前記
正面路線又は前記側方路線である路線が異なること、
を特徴とする請求項1に記載の土地評価額算出装置。
【請求項3】
制御部を備える情報処理装置で実行される土地評価額算出方法であって、
前記制御部で実行される、
正面路線、側方路線、地区区分および年度毎に設定された路線価格を含む路線価格テーブル
、ならびに、正面路線、側方路線、地区区分および年度毎に設定された時点修正率を含む時点修正率テーブルから、評価対象となる土地についての指定された
正面路線、側方路線、および地区区分ならびに評価対象となる指定された年度と紐づく路線価格および時点修正率を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した
路線価格に時点修正率を乗算処理することで、前記指定された
正面路線、側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正前の路線価格を算出する補正前路線価格算出ステップと、
前記補正前路線価格算出ステップで算出した前記指定された
正面路線、側方路線および地区区分の単位面積あたりの補正前の路線価格に対して、所定の補正要素
である少なくとも奥行価格補正率及び路線影響加算率を乗算処理することで、前記指定された
正面路線、側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を算出する補正後路線価格算出ステップと、
前記補正後路線価格算出ステップで算出した前記指定された
正面路線、側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を合算することにより、前記評価対象となる土地についての単位面積あたりの土地評価額を算出する単位土地評価額算出ステップと、
前記単位土地評価額算出ステップで算出した前記単位面積あたりの土地評価額に、前記評価対象となる土地の面積を乗じることにより、前記評価対象となる土地についての土地評価額を算出する土地評価額算出ステップと、
を含むこと、
を特徴とする土地評価額算出方法。
【請求項4】
制御部を備える情報処理装置に実行させるための土地評価額算出プログラムであって、
前記制御部に実行させるための、
正面路線、側方路線、地区区分および年度毎に設定された路線価格を含む路線価格テーブル
、ならびに、正面路線、側方路線、地区区分および年度毎に設定された時点修正率を含む時点修正率テーブルから、評価対象となる土地についての指定された
正面路線、側方路線および地区区分ならびに評価対象となる指定された年度と紐づく路線価格および時点修正率を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した
路線価格に時点修正率を乗算処理することで、前記指定された
正面路線、側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正前の路線価格を算出する補正前路線価格算出ステップと、
前記補正前路線価格算出ステップで算出した前記指定された
正面路線、側方路線および地区区分の単位面積あたりの補正前の路線価格に対して、所定の補正要素
である少なくとも奥行価格補正率及び路線影響加算率を乗算処理することで、前記指定された
正面路線、側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を算出する補正後路線価格算出ステップと、
前記補正後路線価格算出ステップで算出した前記指定された
正面路線、側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を合算することにより、前記評価対象となる土地についての単位面積あたりの土地評価額を算出する単位土地評価額算出ステップと、
前記単位土地評価額算出ステップで算出した前記単位面積あたりの土地評価額に、前記評価対象となる土地の面積を乗じることにより、前記評価対象となる土地についての土地評価額を算出する土地評価額算出ステップと、
を含むこと、
を特徴とする土地評価額算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土地評価額算出装置、土地評価額算出方法および土地評価額算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、グラフィカルユーザインターフェースを通じて、土地を評価するための評価属性を把握し、簡易かつ客観的に土地評価を実行できる技術が開示されている(特許文献1の0005段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
土地評価において路線価評価方式を採用する場合には、路線価個別の変動額から時点修正率を算出するが、この場合に、上記特許文献1に記載の技術では、正面路線以外の路線価の変動を加味できなかった。このため、従来においては、正面路線についての時点修正率のみを用いて土地評価額を算出しており、側面等の路線価の変動幅が大きい場合に、評価額の妥当性を担保できない可能性があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、路線毎の時点修正率を用いることで、より精緻な土地評価額を算出することができる土地評価額算出装置、土地評価額算出方法および土地評価額算出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る土地評価額算出装置は、制御部を備える土地評価額算出装置であって、前記制御部は、正面路線、側方路線、地区区分および年度毎に設定された路線価格を含む路線価格テーブル、ならびに、正面路線、側方路線、地区区分および年度毎に設定された時点修正率を含む時点修正率テーブルから、評価対象となる土地についての指定された正面路線又は側方路線および地区区分ならびに評価対象となる指定された年度と紐づく路線価格および時点修正率を取得する取得手段と、前記取得手段で取得した路線価格に時点修正率を乗算処理することで、前記指定された正面路線又は側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正前の路線価格を算出する補正前路線価格算出手段と、前記補正前路線価格算出手段で算出した前記指定された正面路線又は側方路線および地区区分の単位面積あたりの補正前の路線価格に対して、所定の補正要素である少なくとも奥行価格補正率及び路線影響加算率を乗算処理することで、前記指定された正面路線又は側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を算出する補正後路線価格算出手段と、前記補正後路線価格算出手段で算出した前記指定された正面路線又は側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を合算することにより、前記評価対象となる土地についての単位面積あたりの土地評価額を算出する単位土地評価額算出手段と、前記単位土地評価額算出手段で算出した前記単位面積あたりの土地評価額に、前記評価対象となる土地の面積を乗じることにより、前記評価対象となる土地についての土地評価額を算出する土地評価額算出手段と、を備えること、を特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る土地評価額算出装置は、前記時点修正率テーブルには、前記時点修正率が2つ以上設定されており、当該設定された2つ以上の時点修正率は、前記地区区分および前記年度が同一であるが前記正面路線又は前記側方路線である路線が異なること、を特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る土地評価額算出方法は、制御部を備える情報処理装置で実行される土地評価額算出方法であって、前記制御部で実行される、正面路線、側方路線、地区区分および年度毎に設定された路線価格を含む路線価格テーブル、ならびに、正面路線、側方路線、地区区分および年度毎に設定された時点修正率を含む時点修正率テーブルから、評価対象となる土地についての指定された正面路線、側方路線、および地区区分ならびに評価対象となる指定された年度と紐づく路線価格および時点修正率を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した路線価格に時点修正率を乗算処理することで、前記指定された正面路線、側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正前の路線価格を算出する補正前路線価格算出ステップと、前記補正前路線価格算出ステップで算出した前記指定された正面路線、側方路線および地区区分の単位面積あたりの補正前の路線価格に対して、所定の補正要素である少なくとも奥行価格補正率及び路線影響加算率を乗算処理することで、前記指定された正面路線、側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を算出する補正後路線価格算出ステップと、前記補正後路線価格算出ステップで算出した前記指定された正面路線、側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を合算することにより、前記評価対象となる土地についての単位面積あたりの土地評価額を算出する単位土地評価額算出ステップと、前記単位土地評価額算出ステップで算出した前記単位面積あたりの土地評価額に、前記評価対象となる土地の面積を乗じることにより、前記評価対象となる土地についての土地評価額を算出する土地評価額算出ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る土地評価額算出プログラムは、制御部を備える情報処理装置に実行させるための土地評価額算出プログラムであって、前記制御部に実行させるための、正面路線、側方路線、地区区分および年度毎に設定された路線価格を含む路線価格テーブル、ならびに、正面路線、側方路線、地区区分および年度毎に設定された時点修正率を含む時点修正率テーブルから、評価対象となる土地についての指定された正面路線、側方路線および地区区分ならびに評価対象となる指定された年度と紐づく路線価格および時点修正率を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した路線価格に時点修正率を乗算処理することで、前記指定された正面路線、側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正前の路線価格を算出する補正前路線価格算出ステップと、前記補正前路線価格算出ステップで算出した前記指定された正面路線、側方路線および地区区分の単位面積あたりの補正前の路線価格に対して、所定の補正要素である少なくとも奥行価格補正率及び路線影響加算率を乗算処理することで、前記指定された正面路線、側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を算出する補正後路線価格算出ステップと、前記補正後路線価格算出ステップで算出した前記指定された正面路線、側方路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を合算することにより、前記評価対象となる土地についての単位面積あたりの土地評価額を算出する単位土地評価額算出ステップと、前記単位土地評価額算出ステップで算出した前記単位面積あたりの土地評価額に、前記評価対象となる土地の面積を乗じることにより、前記評価対象となる土地についての土地評価額を算出する土地評価額算出ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、路線毎の時点修正率を用いることで、より精緻な土地評価額を算出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、土地評価額算出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、評価対象となる土地の一例を示すイメージ図である。
【
図3】
図3は、路線価格テーブルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、従来における土地評価額の計算の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における土地評価額の計算の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る土地評価額算出装置、土地評価額算出方法および土地評価額算出プログラムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0013】
[1.概要]
融資判断において企業の将来性が重要視される中、担保評価業務について効率性が求められており、簡易的に評価を算出可能な路線評価方式を採用する金融機関が増加している。
【0014】
しかしながら、従来の方法では、路線評価方式において路線価個別の変動額から時点修正率を算出する場合に、正面路線価以外の路線価の変動を加味できないという問題があった。このため、側面等の路線価の変動幅が大きい場合に、評価額の妥当性を担保できない可能性があった。
【0015】
そこで、本実施形態においては、例えば、方路(路線)毎の路線価時点修正率を格納する時点修正率テーブルを追加し、更に、当該時点修正率を加算するタイミングを改良することで、正面の路線価だけではなく、側面および裏面等の路線価についても土地評価額の算出の際に加味できるようにした。これにより、より精緻化された土地評価額を効率的に算出できるようになった。以下、具体的な構成および動作について説明する。
【0016】
[2.構成]
本実施形態に係る土地評価額算出装置100の構成の一例について、
図1を参照して説明する。
図1は、土地評価額算出装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
土地評価額算出装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、土地評価額算出装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。
【0018】
土地評価額算出装置100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。土地評価額算出装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0019】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、土地評価額算出装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、土地評価額算出装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。なお、後述する各種マスタ等のデータは、例えばサーバ200に格納されてもよい。
【0020】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0021】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブルおよびファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。
【0022】
記憶部106は、例えば、路線価格テーブル106aと、時点修正率テーブル106bと、を備えている。
【0023】
ここで、路線価とは、相続税等の申告の便宜及び課税の公平を図る観点から、国税局が全国の民有地について毎年公開する、土地等の評価額の基準となる金額のことである。路線価は、路線(方路)毎に決定される。例えば、
図2に示す評価対象となる土地(種類:角地、路線価年度:2019年、評価日:2019/10/1)においては、(A)の方路の路線価は350千円であり、(B)の方路の路線価は300千円である。金額が高い方の路線価を有する路線を正面路線といい、金額が低い方の路線価を有する路線を側方路線という。
図2の例では、(A)が正面路線であり、(B)が側方路線である。
【0024】
路線価格テーブル106aは、路線、地区区分および年度毎に設定された路線価格を含むテーブルである。
図3に示す路線価格テーブル106aにおいて、路線価キーは、路線(種別)および地区区分毎に設定されるキーである。「A」のキーは、路線「正面路線」および地区区分「高度商業地区」に対応し、「B」のキーは、路線「側方路線」および地区区分「高度商業地区」に対応する。
【0025】
図3の路線価格テーブル106aを参照すると、路線「正面路線」、地区区分「高度商業地区」および2019年度については、路線価として350千円が設定されており、路線「正面路線」、地区区分「高度商業地区」および2018年度については、路線価として350千円が設定されており、路線「側方路線」、地区区分「高度商業地区」および2019年度については、路線価として300千円が設定されており、路線「側方路線」、地区区分「高度商業地区」および2018年度については、路線価として200千円が設定されている。
【0026】
時点修正率テーブル106bは、路線、地区区分および年度毎に設定された時点修正率を含むテーブルである。
図5の時点修正率テーブル106bを参照すると、路線「正面路線」、地区区分「高度商業地区」および2019年度については、「A」のキーで特定される行に示すように、前記時点修正率として100.00%が設定されおり、路線「側方路線」、地区区分「高度商業地区」および2019年度については、「B」のキーで特定される行に示すように、前記時点修正率として125.00%が設定されている。このように、時点修正率テーブル106bには、前記時点修正率が2つ以上設定されており、当該設定された2つ以上の時点修正率は、前記地区区分および前記年度が同一であるが前記路線が異なるものであることが好ましい。
【0027】
時点修正とは、評価対象となる土地についての時間の経過による価値の変動を考慮して価格を修正することをいう。前記時点修正率とは、当該時点修正をする際に使用する率のことをいう。前記時点修正率について、
図5の時点修正率テーブル106bを例にとって説明する。
図5の時点修正率テーブル106bにおいて「A」のキーで特定される行(正面路線に対応する行)については、前年路線価格は350,000円であり、当年路線価格も350,000円であるため、月間変動率は0.00%となり、時点修正率は100.00%(変動なし)となる。これに対して、
図5の時点修正率テーブル106bにおいて「B」のキーで特定される行(側方路線に対応する行)については、前年路線価格は200,000円であるのに対して、当年路線価格は300,000円であるため、月間変動率は12.5%となり、時点修正率は125.00%(変動あり)となる。本実施形態においては、このように、正面路線だけではなく側方路線についても時点修正率を設定可能であることが特徴である。
【0028】
制御部102は、土地評価額算出装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0029】
制御部102は、機能概念的に、例えば、(1)路線、地区区分および年度毎に設定された路線価格を含む路線価格テーブルならびに路線、地区区分および年度毎に設定された時点修正率を含む時点修正率テーブルから、評価対象となる土地についての指定された路線および地区区分ならびに評価対象となる指定された年度と紐づく路線価格および時点修正率を取得する取得手段としての取得部102aと、(2)前記取得手段で取得した路線価格および時点修正率に基づいて、前記指定された路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正前の路線価格を算出する補正前路線価格算出手段としての補正前路線価格算出部102bと、(3)前記補正前路線価格算出手段で算出した前記指定された路線および地区区分の単位面積あたりの補正前の路線価格に対して、所定の補正要素を考慮した計算を行うことにより、前記指定された路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を算出する補正後路線価格算出手段としての補正後路線価格算出部102cと、(4)前記補正後路線価格算出手段で算出した前記指定された路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を合算することにより、前記評価対象となる土地についての単位面積あたりの土地評価額を算出する単位土地評価額算出手段としての単位土地評価額算出部102dと、(5)前記単位土地評価額算出手段で算出した前記単位面積あたりの土地評価額に、前記評価対象となる土地の面積を乗じることにより、前記評価対象となる土地についての土地評価額を算出する土地評価額算出手段としての土地評価額算出部102eと、を備えている。各部が実行する処理の詳細については、以下の[3.処理の具体例]で説明する。
【0030】
[3.処理の具体例]
本項目では、本実施形態に係る処理の具体例を主に説明する。最初に、比較として従来における土地評価額の計算例を[3-1]で説明し、次に、本実施形態における土地評価額の計算例を[3-2]で説明する。
【0031】
[3-1.従来における土地評価額の計算例]
最初に、従来における土地評価額の計算例について、
図4を用いて説明する。
【0032】
まず、
図4に示すように、路線の種別「正面路線」および地区区分「高度商業地区」については補正前の路線価が350,000円/平方メートルであり、路線の種別「側方路線」および地区区分「高度商業地区」については補正前の路線価が300,000円/平方メートルであるとする。この場合、所定の補正要素(奥行価格補正、路線影響加算、路線加重平均、間口狭小補正および奥行長大補正等)を考慮した計算が行われることにより、種別「正面路線」および地区区分「高度商業地区」については補正後の路線価格が350,000円/平方メートルと計算され、種別「側方路線」および地区区分「高度商業地区」については補正後の路線価格が29,400円/平方メートルと計算される。
【0033】
次に、
図4に示すように、前記計算された補正後の路線価格350,000円/平方メートルと29,400円/平方メートルを合算した金額である379,400円に対して、崖地補正1、道路幅員1、建付地減価1および正面路線についての時点修正率1を乗じることにより、単位面積(1平方メートル)あたりの土地評価額である379,400円が算出される。そして、当該算出された379,400円に土地の面積200平方メートルを乗じることにより、75,880,000が算出される。
【0034】
このように、従来の方法では、正面路線についての時点修正率のみを用いて(=側方路線についての時点修正率は用いずに)、土地評価額の算出を行うことが特徴であった。このため、側面等の路線価の変動幅が大きい場合に、評価額の妥当性を担保できない可能性があった。
【0035】
[3-2.本実施形態における土地評価額の計算例]
次に、本実施形態における土地評価額の計算例について、
図3および
図5を用いて説明する。なお、本項目においては、路線価格テーブル106aは
図3に示す内容で予め設定されており、時点修正率テーブル106bは
図5に示す内容で予め設定されているものとする。
【0036】
(1)取得処理
取得部102aは、路線価格テーブル106aおよび時点修正率テーブル106bから、評価対象となる土地についての指定された路線および地区区分ならびに評価対象となる指定された年度と紐づく路線価格および時点修正率を取得する。
【0037】
具体的には、「A」の路線価キーに対応する情報としての路線の種別「正面路線」および地区区分「高度商業地区」ならびに評価対象年度「2019年度」と、「B」の路線価キーに対応する情報としての路線の種別「側方路線」および地区区分「高度商業地区」ならびに評価対象年度「2019年度」と、がオペレータによって指定されるものとする。この場合、取得部102aは、
図3の路線価格テーブル106aから、「A」の路線価キーおよび「2019年度」と紐づく路線価格として350千円を取得し、また、
図5の時点修正率テーブル106bから、「A」の路線価キーおよび「2019年度」と紐づく時点修正率として100.00%を取得する。また、取得部102aは、
図3の路線価格テーブル106aから、「B」の路線価キーおよび「2019年度」と紐づく路線価格として300千円を取得し、また、
図5の時点修正率テーブル106bから、「B」の路線価キーおよび「2019年度」と紐づく時点修正率として125.00%を取得する。
【0038】
(2)補正前路線価格算出処理
次に、補正前路線価格算出部102bは、取得部102aで取得した路線価格および時点修正率に基づいて、前記指定された路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正前の路線価格を算出する。
【0039】
具体的には、取得部102aが(1)において路線の種別「正面路線」および地区区分「高度商業地区」について取得した路線価格および時点修正率は、それぞれ、350千円および100.00%であるため、補正前路線価格算出部102bは、路線の種別「正面路線」および地区区分「高度商業地区」についての単位面積(1平方メートル)あたりの補正前の路線価格を、350千円×100.00%=350,000円と算出する。当該計算結果を、
図5の路線価(時点修正後)として示している。
【0040】
また、取得部102aが(1)において路線の種別「側方路線」および地区区分「高度商業地区」について取得した路線価格および時点修正率は、それぞれ、300千円および125.00%であるため、補正前路線価格算出部102bは、路線の種別「側方路線」および地区区分「高度商業地区」についての単位面積(1平方メートル)あたりの補正前の路線価格を、300千円×125.00%=375,000円と算出する。当該計算結果を、
図5の路線価(時点修正後)として示している。
【0041】
このように、本実施形態においては、「正面路線」についての時点修正率100.00%だけではなく、「側方路線」についての時点修正率125.00%も計算に使用できることが特徴である。これにより、側面等の路線価の変動幅が大きい場合においても評価額の妥当性を担保することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、[3-1]で説明した従来例のように合算後の金額に前記時点修正率を乗じるのではなく、スタートの路線価格に前記時点修正率を乗じることも特徴の一つである。要するに、本実施形態においては、前記時点修正率を用いるタイミングを変更した。
【0043】
(3)補正後路線価格算出処理
次に、補正後路線価格算出部102cは、補正前路線価格算出部102bで算出した前記指定された路線および地区区分の単位面積あたりの補正前の路線価格に対して、所定の補正要素を考慮した計算を行うことにより、前記指定された路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を算出する。
【0044】
具体的には、補正前路線価格算出部102bが(2)において路線の種別「正面路線」および地区区分「高度商業地区」について算出した単位面積(1平方メートル)あたりの補正前の路線価格は、350,000円である。補正後路線価格算出部102cは、当該350,000円に対して、前記所定の補正要素(奥行価格補正、路線影響加算、路線加重平均、間口狭小補正および奥行長大補正等)を考慮した計算を行うことにより、路線の種別「正面路線」および地区区分「高度商業地区」についての単位面積(1平方メートル)あたりの補正後の路線価格を350,000円と算出する。当該計算結果を、
図5の路線価格(円/m
2)として示している。
【0045】
また、補正前路線価格算出部102bが(2)において路線の種別「側方路線」および地区区分「高度商業地区」について算出した単位面積(1平方メートル)あたりの補正前の路線価格は、375,000円である。補正後路線価格算出部102cは、当該375,000円に対して、前記所定の補正要素(奥行価格補正、路線影響加算、路線加重平均、間口狭小補正および奥行長大補正等)を考慮した計算、具体的には、375,000円×0.98×0.1という計算を行うことにより、路線の種別「側方路線」および地区区分「高度商業地区」についての単位面積(1平方メートル)あたりの補正後の路線価格を36,750円と算出する。当該計算結果を、
図5の路線価格(円/m
2)として示している。
【0046】
(4)単位土地評価額算出処理
単位土地評価額算出部102dは、補正後路線価格算出部102cで算出した前記指定された路線および地区区分毎の単位面積あたりの補正後の路線価格を合算することにより、前記評価対象となる土地についての単位面積あたりの土地評価額を算出する。
【0047】
具体的には、補正後路線価格算出部102cが(3)において、路線の種別「正面路線」および地区区分「高度商業地区」について算出した単位面積(1平方メートル)あたりの補正後の路線価格は350,000円であり、また、路線の種別「側方路線」および地区区分「高度商業地区」について算出した単位面積(1平方メートル)あたりの補正後の路線価格は36,750円である。このため、単位土地評価額算出部102dは、当該350,000円と当該36,750円を合算することにより、前記評価対象となる土地についての単位面積(1平方メートル)あたりの土地評価額を386,750円と算出する。当該計算結果を、
図5の「評価路線価格(1)+(2)」として示している。
【0048】
(5)土地評価額算出処理
最後に、土地評価額算出部102eは、単位土地評価額算出部102dで算出した前記単位面積あたりの土地評価額に、前記評価対象となる土地の面積を乗じることにより、前記評価対象となる土地についての土地評価額を算出する。
【0049】
具体的には、単位土地評価額算出部102dが(4)において算出した前記評価対象となる土地についての単位面積(1平方メートル)あたりの土地評価額は、386,750円である。前記評価対象となる土地の面積が、200平方メートルであるとすると、土地評価額算出部102eは、前記評価対象となる土地についての最終的な土地評価額を、386,750円×200=77,350,000と算出する。当該計算結果を、
図5の土地評価額として示している。
【0050】
なお、本実施形態においては、(2)の最終段落で説明したように、スタートの路線価格に前記時点修正率を乗じているため、合算後の土地評価額386,750円に対しては前記時点修正率を乗じない。このことを、
図5において、時点修正率およびその数値(1.00)に取消線を付すことにより示している。
【0051】
[4.本実施形態のまとめ]
以上説明してきたように、本実施形態に係る土地評価額算出装置100によれば、路線毎の時点修正率を用いることで、より精緻な土地評価額を算出することができる。
【0052】
[5.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0055】
[6.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0056】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0057】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0058】
また、土地評価額算出装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0059】
例えば、土地評価額算出装置100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて土地評価額算出装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0060】
また、このコンピュータプログラムは、土地評価額算出装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0061】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0062】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0063】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0064】
また、土地評価額算出装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、土地評価額算出装置100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0065】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、例えば、金融業界等において有用である。
【符号の説明】
【0067】
100 土地評価額算出装置
102 制御部
102a 取得部
102b 補正前路線価格算出部
102c 補正後路線価格算出部
102d 単位土地評価額算出部
102e 土地評価額算出部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 路線価格テーブル
106b 時点修正率テーブル
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 サーバ
300 ネットワーク